説明

無停電電源装置

【課題】 起動時並びに復旧時にラッシュカレント、およびそれによるノイズを発生させない無停電電源装置を提供する。
【解決手段】 この発明の無停電電源装置10は、充電制御装置を商用電源認識部13と、充電制御部18と、出力制御部21とから構成し、商用電源認識部が商用交流電源の供給または供給停止を認識し、商用電源認識部の認識に基づいて、充電制御部がバッテリ20への充電を緩やかに行うように制御し、出力制御部21が商用電源認識部の認識に基づいて、バッテリから整流器14への放電を負荷装置23への交流電源MAの供給に不足がないように制御する。したがって、整流器出力にラッシュカレントを発生させず、負荷装置23への交流電源に重畳されるノイズを低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無停電電源装置に関し、特に、第1の交流電源からの交流を整流するとともに、バッテリからの直流をも受けて直流の整流器出力を出力する整流器と、整流器出力を受け、その整流器出力を再び交流に変換し、変換した交流を第2の交流電源として負荷装置に供給するインバータと、整流器出力の一部分を利用してバッテリを充電する充電器とを有する無停電電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、この種の無停電電源装置の従来例を示す構成図である。図7の無停電電源装置50は、商用電源プラグ51と、フィルタ52と、整流器54と、インバータ55と、フィルタ56と、交流電源コンセント57と、充電器58と、ヒューズ59と、バッテリ60とを有する。無停電電源装置50は、実際の使用に際しては、商用電源プラグ51は、不図示の商用電源コンセントに挿入接続され、商用交流電源(商用電源)の供給を受け、交流電源コンセント57には、負荷装置63に接続された交流電源プラグ62が挿入接続され、負荷装置63に交流電源を供給する。
【0003】
交流電源プラグ51に供給された商用交流電源は、フィルタ52を通過する際にノイズが除去されて整流器54に引き渡される。整流器54は、フィルタ52からの商用交流電源を整流するとともに、バッテリ60からの直流を受けて、直流電源を出力する。整流器54の出力は、主にインバータ55に与えられるが、一部分は充電器58に与えられ、バッテリ60の充電に用いられる。インバータ55は、与えられた直流電源を交流電源に変換し、フィルタ56と、交流電源コンセント57と、交流電源プラグ62を介して交流電源を負荷装置63に供給する。
次に、無停電電源装置50の起動時と、商用交流電源の供給停止時と、復旧時とにおける動作について図8ないし図10を参照して説明する。電源スイッチ(不図示)が図10に示されるように、時刻t20に“オン”にされると、整流器54の直流出力は、図8に示されるように、インバータ55およびフィルタ56などを通って交流電源MBとして負荷装置63に与えられるとともに、充電器58を通って、消費された電荷を補充するための充電電流SBとしてバッテリ60に流れ込み(図8,図10の太い実線)、時刻t20〜t21の間にラッシュカレントを発生させる。このラッシュカレントは、フィルタ56の能力を超えて交流電源MBにノイズを重畳させることとなる。
【0004】
その後、時刻t23において、何らかの原因で商用交流電源の供給が停止されると、バッテリ60から整流器54へ放電電流DBが供給され、整流器出力として出力される(図9の太い実線)。時刻t25に商用交流電源が復旧されると、商用交流電源に基づく整流器54の出力は、図8に示されるように、再び交流電源MBとして負荷装置63に与えられるとともに、充電器58を通って、消費された電荷を補充するための充電電流SBとしてバッテリ60に供給される。したがって、時刻t25〜t27の間において、ラッシュカレントを発生させ、このラッシュカレントがフィルタ56の能力を超えて交流電源MBにノイズを重畳させる恐れがある。
【0005】
なお、このように一つの装置のラッシュカレントに係わるものではないが、出力トランジスタへの悪影響を避けるために、出力上昇を遅延させる技術が下記の特許文献1に、複数の機器のラッシュカレントを低減するために、複数の機器の一部分ずつに順次電源を供給する技術が下記の特許文献2,3にそれぞれ提案されている。
【特許文献1】特開平6−4157号公報 (要約、第1図)
【特許文献2】特開2000−197267号公報 (要約、第1図)
【特許文献3】特開平5−236674号公報 (第2―3頁、第1図) しかしながら、無停電電源装置という単独の装置の中でラッシュカレントを防止あるいは低減するための技術には応用が困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の従来の無停電電源装置は、起動時および復旧時にインバータおよび充電器に対して短時間に多大な電流を供給しなければならず、ラッシュカレントを発生させ、負荷装置に供給する交流電源に対して、ラッシュカレントを原因とするノイズを重畳させてしまい、ひいては、電子回路に誤動作などを発生させる恐れがある。
【0007】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、無停電電源装置の起動時並びに復旧時にラッシュカレントを発生させず、ひいては、負荷装置に供給する交流電源にラッシュカレントによるノイズを重畳させない無停電電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明に係る無停電電源装置は、第1の交流電源からの交流を整流するとともに、バッテリからの直流をも受けて直流の整流器出力を出力する整流器と、前記整流器の出力を受け、該整流器出力を再び交流に変換し、変換した交流を第2の交流電源として負荷装置に供給するインバータと、前記整流器の出力の一部分を利用してバッテリを充電する充電器と、前記充電器がバッテリへの充電を開始する時には、充電電流を緩やかな傾斜をもって増加させるように充電器を制御する充電制御装置とを有する。
【0009】
このような構成によれば、起動時や復旧時に充電制御装置は、バッテリへの充電を開始する時に、充電電流を緩やかな傾斜をもって増加させるように充電器を制御するので、ラッシュカレントは発生せず、負荷装置に供給される交流電源に重畳されるノイズが軽減される。
【0010】
前記充電制御装置は、第1の交流電源の供給または供給停止を認識することができる商用電源認識部と、商用電源認識部の認識に基づいて、充電器によるバッテリへの充電を制御する充電制御部と、商用電源認識部の認識に基づいて、バッテリから整流器への放電を制御する出力制御部とを有し、商用電源認識部が第1の交流電源の供給開始を認識した場合、商用電源認識部はその旨を充電制御部と出力制御部とに通知し、通知を受けた充電制御部は第1の遅延時間が経過した後に充電器による充電を開始させ、充電開始後は緩やかな第1の傾斜をもって充電電流を増加させ、通知を受けた出力制御部はバッテリからの放電を停止させ、商用電源認識部が、供給されていた第1の交流電源が停止されたことを認識した場合、商用電源認識部は、第2の遅延時間が経過した後に、その旨を充電制御部と出力制御部とに通知し、通知を受けた充電制御部は第1の遅延時間が経過した後に充電器による充電を開始させ、充電開始後は緩やかな第1の傾斜をもって充電電流を増加させ、通知を受けた出力制御部はバッテリからの放電を停止させるように構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
以上に詳述したように本発明によれば、起動時や復旧時にバッテリへの充電を開始する時に、充電制御装置は充電電流を緩やかな傾斜をもって増加させるように充電器を制御するので、ラッシュカレントは発生せず、負荷装置に供給される交流電源に重畳されるノイズが軽減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施の形態の無停電電源装置を示すブロック図、図2は、図1の無停電電源装置の起動時の動作を示すブロック図、図3は、図1の無停電電源装置の商用交流電源の供給が停止された場合の動作を示すブロック図、図4は、図1の無停電電源装置の復旧時の初期の動作を示すブロック図、図5は、図1の無停電電源装置の復旧時の図4の動作に続く動作を示すブロック図、図6は、図1の無停電電源装置の起動時から復旧時までの時系列の動作を示すグラフである。
【0013】
図1の無停電電源装置10は、商用電源プラグ11と、フィルタ12と、商用電源認識部13と、整流器14と、インバータ15と、フィルタ16と、交流電源コンセント17と、充電器18aを含む充電制御部18と、ヒューズ19と、バッテリ20と、出力制御部21とを有する。実際の使用に際しては、商用電源プラグ11は、不図示の商用電源コンセントに挿入接続され、商用交流電源の供給を受け、交流電源コンセント17には、負荷装置23に接続された交流電源プラグ22が挿入接続され、負荷装置23に交流電源を供給する。
【0014】
次に、無停電電源装置10の動作について図2ないし図6を参照して説明する。図2に示されるように、交流電源プラグに供給された商用交流電源は、フィルタ12を通過する際にノイズが除去され、商用電源認識部13を経て整流器14に引き渡される。商用電源認識部13は、フィルタ12から出力される商用交流電源の状態に基づいて、制御信号C1を充電制御部18に、制御信号C2を出力制御部21にそれぞれ与える。整流器14は、商用電源認識部13からの商用交流電源を整流して直流電源を出力するとともに、出力制御部21からバッテリ20の直流電源を与えられる場合には、そのバッテリ直流電源をも出力する。整流器14の出力は、主にインバータ15に与えられるが、一部分は充電制御部18に与えられる。
【0015】
インバータ15は、整流器14の直流出力を用いて交流電源を生成する。フィルタ16は、インバータ15が生成した交流電源からノイズを除去し、交流電源コンセント17および交流電源プラグ22を介して負荷装置23に交流電源を供給する。充電制御部18は、整流器14の直流出力を用い、過電流防止のヒューズ19を介してバッテリ20を充電する。この場合、後述するように、充電制御部18は、制御信号C1に応じて、ラッシュカレントを抑えるようにバッテリ20を充電する。また、出力制御部21は、制御信号C2に応じて、ラッシュカレントを抑えるようにバッテリ20から整流器への直流供給を制御する。
【0016】
上述の充電制御部18および出力制御部21の制御動作について図6を参照して更に詳しく説明する。無停電電源装置10の電源スイッチ(不図示)が時刻t0に“オン”にされると、無停電電源装置10に商用交流電源が供給される。商用交流電源が供給されると、商用電源認識部13は、商用交流電源が供給された旨を制御信号C1,C2として充電制御部18および出力制御部21にそれぞれ伝達する。充電制御部18は、時刻t0に制御信号C1を受けると、時刻t0〜t1の間は、遅延時間ΔT1として充電器18aの充電動作開始を遅延させる。出力制御部21は、時刻t0に制御信号C2を受けると、バッテリ20から整流器14への直流電源供給を開始させない。したがって、時刻t0〜t1においては、商用交流電源は主に、整流器14,インバータ15,フィルタ16を介して交流電源MA(図2)として負荷装置23に供給され、バッテリ20の充電電流SAとしてはほとんど使用されず、バッテリ20へのラッシュカレントも発生しない。したがって、交流電源MAに重畳されるラッシュカレントによるノイズも発生しない。
【0017】
時刻t1が経過すると、充電制御部18は、充電器18aを制御し、実線で示されるように、徐々に充電電流SAを大きくし、時刻t3に規定の充電電流値CRに到達したら、その充電電流SAの値を維持する。時刻t1〜t3において、充電電流SAの立ち上がりは、従来の場合よりも緩やかな傾きを有しているのでラッシュカレントを発生させることがないので交流電源MAに重畳されるラッシュカレントによるノイズも軽減される。時刻t5において、異常が発生し商用交流電源の供給が停止されると、商用電源認識部13は、商用交流電源の供給が停止されたことを認識し、その旨を制御信号C1,C2として充電制御部18および出力制御部21にそれぞれ伝達する。
【0018】
充電制御部18は時刻t5において、商用交流電源の供給が停止された旨の制御信号C1を受け取ると、時刻t5〜t7の間に充電電流SAを0(ゼロ;図3)にする。他方、出力制御部21は、商用交流電源の供給が停止された旨の制御信号C2を受け取ると、時刻t5〜t7の間に放電電流DAを規定の放電電流値まで立ち上げる。したがって、図3に示されるように、整流器14からは、商用交流電源を整流した直流電源の代わりに、バッテリ20から供給された放電電流が用いられ、整流器14から直流電源として出力され、インバータ15によって交流電源MAに変換され、負荷装置23に供給されることとなる。
【0019】
時刻t9において、それまで停止されていた商用交流電源の供給が復旧されると、商用電源認識部13は、この商用交流電源の復旧を認識する。この復旧を認識した商用電源認識部13は、時刻t9〜t11の遅延時間ΔT2だけ遅延させた後に、商用交流電源の供給が復旧されたことを制御信号C1,C2として充電制御部18および出力制御部21にそれぞれ伝達する。すなわち、時刻t11において、充電制御部18および出力制御部21は、商用交流電源の供給が復旧された旨の制御信号C1,C2をそれぞれ受け取る。したがって、時刻t9〜t11においては、図4に示されるように、充電制御部18による充電は停止されているが、出力制御部21による整流器14へのバッテリ放電は継続され、整流器14は、商用交流電源とバッテリ20からの直流電源とを使用して直流電源をインバータ15に供給する。
【0020】
時刻t11において、商用交流電源の供給が復旧された旨の制御信号C1を受け取った充電制御部18は、時刻t11〜t13の遅延時間ΔT1だけ遅延させた後に、時刻t13が経過した時点より充電器18aを制御してバッテリ20への充電を開始させ、時刻t15迄に充電電流SAを立ち上げる。この場合、図5に示されるように、時刻t13〜t15の充電電流の立ち上げは、時刻t1〜t3の場合と同様に、従来の場合よりも緩やかな傾きを有しているのでラッシュカレントを発生させることがない。また、出力制御部21は、充電電流の立ち上がりとは逆になるように、時刻t13に開始したバッテリ20から整流器14への放電電流を徐々に小さくして行き、時刻t15に停止する。この場合、時刻t11〜t13の間(ΔT1)においては、時刻t9〜t11(ΔT2)の場合と同様な動作が行われ、合計で時刻t9〜t13(ΔT1+ΔT2)の間においては、商用交流電源とバッテリ直流電源とが過渡状態として並列で整流器14に供給されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の無停電電源装置の実施の形態の一例を示すブロック図である。
【図2】図1の無停電電源装置の起動時の動作を示すブロック図である。
【図3】図1の無停電電源装置の商用交流電源の供給が停止された場合の動作を示すブロック図である。
【図4】図1の無停電電源装置の復旧時の初期の動作を示すブロック図である。
【図5】図1の無停電電源装置の復旧時の図4の動作に続く動作を示すブロック図である。
【図6】図1の無停電電源装置の起動時から復旧時までの時系列の動作を示すグラフである。
【図7】無停電電源装置の従来例を示すブロック図である。
【図8】図7の無停電電源装置の起動時の動作を示すブロック図である。
【図9】図7の無停電電源装置の商用交流電源の供給が停止された場合の動作を示すブロック図である。
【図10】図7の無停電電源装置の起動時から復旧時までの時系列の動作を示すグラフである。
【符号の説明】
【0022】
10 無停電電源装置、11,22 交流電源プラグ、12,16 フィルタ、13 商用電源認識部、14 整流器、15 インバータ、17 交流電源コンセント、18 充電制御部、18a 充電器、19 ヒューズ、20 バッテリ、21 出力制御部、23 負荷装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の交流電源からの交流を整流するとともに、バッテリからの直流をも受けて直流の整流器出力を出力する整流器と、
前記整流器の出力を受け、該整流器出力を再び交流に変換し、変換した交流を第2の交流電源として負荷装置に供給するインバータと、
前記整流器の出力の一部分を利用してバッテリを充電する充電器と、
前記充電器がバッテリへの充電を開始する時には、充電電流を緩やかな傾斜をもって増加させるように充電器を制御する充電制御装置と、
を有することを特徴とする無停電電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−20431(P2006−20431A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−196229(P2004−196229)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】