説明

無励磁作動型電磁ブレーキ

【課題】十分な磁路及び磁気吸引力を確保することができ、消費電力及び発熱量を増大させにくく、従来に比べてより小型化された無励磁作動型電磁ブレーキの新規な構造を提供する。
【解決手段】励磁コイル4を備えたヨーク2と、ヨーク2に対向配置されたプレート6と、ヨーク2とプレート6との間に配置されヨーク2の基準軸線C回りに回動可能に設けられた制動部8と、ヨーク2と制動部8との間に配置され基準軸線C回りに回動不能かつ基準軸線C方向に移動可能に配置されたアーマチュア10と、プレート6をヨーク2に締結する締結部材12と、を具備する無励磁作動型電磁ブレーキ1において、基準軸線Cに略直交する方向からみて、励磁コイル4と締結部材12とが重ならず、基準軸線C方向からみて、励磁コイル4と締結部材12の少なくとも一部とが重なっている構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無励磁作動型電磁ブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、サーボモータや各種ロボットに用いられる無励磁作動型電磁ブレーキに関して、小型化、低消費電力化及び高トルク化に向けて、種々の無励磁作動型電磁ブレーキの構造が提案されている。
【0003】
現在、無励磁作動型電磁ブレーキは、例えば30φ程度の直径を有する程度までに小型化が実現しており、例えば特許文献1記載のような無励磁作動型電磁ブレーキがあり、また、例えば図2に表わされるような構造が採用されている。図2は、従来の小型無励磁作動型電磁ブレーキの構造を示す概略縦断面図である。
【0004】
従来の小型無励磁作動型電磁ブレーキ100は、図2に示すように、ヨーク102、ヨーク102に内蔵されたコイル体104、ヨーク102に対向配置されたプレート106、ヨーク102とプレート106との間に配置されヨーク102の基準軸線C回りに回動可能に設けられた制動部108、ヨーク102と制動部108との間に配置され基準軸線C回りに回動不能かつ基準軸線C方向に移動可能に配置されたアーマチュア110、プレート106及びアーマチュア110をヨーク102に締結するボルト112、を具備している。
【0005】
ヨーク102は、基準軸線C回りにおいて中心部に設けられた開口部102aと、基準軸線Cからみて開口部102aの外側に設けられた環状の凹部102bと、で構成されており、凹部102bに内蔵されたコイル体104は、ボビン(芯体)104aとボビン104aに捲回された励磁コイル104bとで構成されている。
【0006】
また、基準軸線Cからみて凹部102bの外側には、開口部102cが設けられており、ここには、図示しないが、アーマチュア110を制動部108に対して付勢する圧縮バネが内蔵されている。更に、ボルト112は、カラー116を介してプレート106及びアーマチュア110をヨーク102に締め付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願平5−22730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記のような従来の小型無励磁作動型電磁ブレーキ100では、基準軸線に略直交する方向からみて、コイル体104と締結部材112とが重なるような位置関係を有するように構成されており、また、ボルト112がカラー116を介して取り付けられていることから、基準軸線C方向においても基準軸線Cからみた径方向においても小型化に限界があるという問題があった(小型化)。
【0009】
更に、上記の従来の小型無励磁作動型電磁ブレーキ100においては、凹部102bに内蔵されたコイル体104が、ボビン104aを含んでいるところ、小型化のためには、基準軸線Cからみた径方向においてヨーク102の中心の円筒形部分102dの幅や凹部102bの幅(即ち、励磁コイル104bのスペース)を確保しにくい。
【0010】
その結果、励磁コイル104bの捲回数を増大させることができず、圧縮バネの付勢力より大きな磁気吸引力をアーマチュア110に作用させるためには、励磁コイル104bに大きな電流を流すしかなく、消費電力及び発熱量を増大するという問題があった(小型化に相反する、大磁気吸引力、低消費電力及び低発熱量)。
【0011】
そこで、本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、十分な磁路及び磁気吸引力を確保することができ、消費電力及び発熱量を増大させにくく、従来に比べてより小型化された無励磁作動型電磁ブレーキの新規な構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、無励磁作動型電磁ブレーキの構造において、ヨークの縦断面の略法線方向からみて、コイルとボルトとが重ならない位置関係を有するような構成を採用することができれば、基準軸線C方向においても基準軸線Cからみて径方向においても小型化を改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
上記の課題を解決すべく、本発明は、
励磁コイルを備えたヨークと、
前記ヨークに対向配置されたプレートと、
前記ヨークと前記プレートとの間に配置され前記ヨークの基準軸線回りに回動可能に設けられた制動部と、
前記ヨークと前記制動部との間に配置され前記基準軸線回りに回動不能かつ前記基準軸方向に移動可能に配置されたアーマチュアと、
前記プレートを前記ヨークに締結する締結部材と、
を具備し、
前記基準軸線に略直交する方向からみて、前記励磁コイルと前記締結部材とが重ならず、前記基準軸線方向からみて、前記励磁コイルと前記締結部材の少なくとも一部とが重なっている構成を有する無励磁作動型電磁ブレーキを提供する。
【0014】
このような構成を有する本発明の無励磁作動型電磁ブレーキにおいては、基準軸線に略直交する方向からみて、励磁コイルと締結部材とが重ならない位置関係を有することから、基準軸線Cからみて径方向において、励磁コイルと締結部分とが重なる構成となって、無励磁作動型電磁ブレーキの幅が励磁コイルの幅と締結部分との幅の合計よりも小さくなり、小型化を実現することが可能である。
【0015】
上記の本発明の無励磁作動型電磁ブレーキにおいては、前記ヨークが、フランジ状部分を有する筒状部材で構成された第一ヨーク部と、前記第一ヨーク部を覆う筒状部材で構成された第二ヨーク部と、で構成されており、前記励磁コイルが、前記第一ヨーク部の前記筒状部分に直接捲回されていることが好ましい。なお、ここでいう「筒状部分に直接捲回」とは、励磁コイルがボビン等の芯体に捲回されていないことを意味し、例えば膜状絶縁体等を介して筒状部分に捲回されている態様を含むものである。
【0016】
このような構成を有する本発明の無励磁作動型電磁ブレーキにおいては、励磁コイルが、第一ヨーク部の筒状部分に直接捲回されていることから、ヨークの縦断面の略法線方向からみて、基準軸線Cからみた径方向において更なる小型化を実現することが可能であり、また、これまで使用されていたボビンの容積や幅の分だけ、基準軸線Cからみた径方向においてヨークの幅やコイルスペースを確保することができ、小型化を犠牲にせずに大磁気吸引力、低消費電力及び低発熱量を実現することができる。
【0017】
また、上記の本発明の無励磁作動型電磁ブレーキにおいては、前記第一ヨーク部2aと前記第二ヨーク部2bとが一体的になって前記ヨーク2を構成していてもよい。
【0018】
このような構成を有する本発明の無励磁作動型電磁ブレーキにおいては、部品点数を削減することができ、例えば製造工程・管理においてメリットがある。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、十分な磁路及び磁気吸引力を確保することができ、消費電力及び発熱量を増大させにくく、従来に比べてより小型化された無励磁作動型電磁ブレーキの新規な構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の無励磁作動型電磁ブレーキの一実施形態の概略縦断面図である。
【図2】従来の無励磁作動型電磁ブレーキの概略縦断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の代表的な実施形態について説明する。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。また、各図面における各部材の形状や寸法は、実際に本発明の作用効果を奏するための形状や寸法を必ずしも高精度で表していない場合もある。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の無励磁作動型電磁ブレーキ1は、励磁コイル4を備えたヨーク2と、ヨーク2に対向配置されたプレート6と、ヨーク2とプレート6との間に配置されヨーク2の基準軸線C回りに回動可能に設けられた制動部8と、ヨーク2と制動部8との間に配置され基準軸線C回りに回動不能かつ基準軸線C方向に移動可能に配置されたアーマチュア10と、プレート6をヨーク2に締結する締結部材であるボルト12と、励磁コイル4に通電するための電源に接続されるリード線14と、アーマチュア10を制動部8に圧接するように付勢する付勢部である圧縮バネ18と、を具備している。
【0023】
また、ボルト12は、カラー16を介してプレート6及びアーマチュア10をヨーク2(2a)に締め付けている。
【0024】
ヨーク2は、鉄等の強磁性体からなり、第一ヨーク部2aと第二ヨーク部2bとで構成された、いわゆる2体構造を有しており、第一ヨーク部2aに捲回された励磁コイル4を第一ヨーク部2aと第二ヨーク部2bとの間において内蔵されている。第一ヨーク部2aと第二ヨーク部2bとは、例えば、接着剤等の化学的な連結手段、ボルトとナットの組合せ、又は凹部と凸部の組合せ若しくはこれらと嵌合部との組合せ、圧入、焼きばめ等の物理的な連結手段等、従来公知の接合手段で連結すればよい。
【0025】
第一ヨーク部2aは、基準軸(中心軸乃至はモータの回転軸と一致する。)線Cに略直交し互いに略平行に対向する外側端面2a1と係合端面2a2とを有しかつフランジ状部分を有する筒状部材で構成されている。また、第二ヨーク部2bは、第一ヨーク部2aのフランジ状部分に当接して第一ヨーク部2aを覆う筒状部材と、当該筒状部材のアーマチュア10側の端部に設けられており、ボルト12を受ける凹部2b1及び圧縮バネ18を内蔵する凹部2b2を有する段差部2b3と、で構成されている。段差部2b3のアーマチュア10側には係合端面2b4が位置する。
【0026】
励磁コイル4は、ボビン等には捲回されず、第一ヨーク部2aを構成する筒状部材に直接捲回されている。励磁コイル4を構成する金属線としては、種々の断面を有するものを採用することができるが、捲回密度や第一ヨーク部2aの筒状部材との接触面積を最大限にして磁気吸引力を高めることができるという観点から、断面矩形のいわゆる平角線を用いるのが好ましい。
【0027】
プレート6は略円盤状に形成されたものであり、第一ヨーク部2aの係合端面2a2及第二ヨーク部2bのび2b4側に対向させて配置されており、基準軸線C上においてプレート6の中心部にはモータの回転軸を挿通するための貫通した開口6aが形成されている。本発明はこれに限定されるわけではないが、本実施形態におけるこの開口6aの開口径はヨーク2の開口2cの開口径よりも大きい。そして、プレート6のヨーク2側には基準軸線C回りに制動部8が設けられている。
【0028】
制動部8は、プレート6よりも外径が小さい略円盤状であり、基準軸線C上において制動部8の中心部には、モータの回転軸を挿通するための貫通した開口8aが形成されている。本発明はこれに限定されるわけではないが、本実施形態におけるこの開口8aの開口径は、ヨーク2の開口2cの開口径よりも大きくプレート6の開口6aの開口径よりも小さい。
【0029】
第一ヨーク部2aの係合端面2a2及び第二ヨーク部2bの2b4と制動部8との間には、ヨーク2に対して基準軸線C回りに回動不能で、かつ、基準軸線C方向に移動可能に支持されたアーマチュア10が配置されている。アーマチュア10は、円盤状に形成された鉄等の強磁性体からなり、基準軸線C上においてアーマチュア10の中心部には、モータの回転軸を挿通するための貫通した開口10aが形成されている。本発明はこれに限定されるわけではないが、本実施形態におけるこの開口10aの開口径は、第一ヨーク2aの開口2cと略一致している。
【0030】
第二ヨーク部2bの係合端面2b4には凹部2b2が形成されており、アーマチュア10に対する付勢部である圧縮バネ18が内蔵されている。基準軸線C方向に移動可能に支持されたアーマチュア10は、この圧縮バネ18によって、制動部8に押圧されることになる。図1においては、便宜上、1つの凹部2b2及び圧縮バネ18が表わされているが、実際には、複数個の1つの凹部2b2及び圧縮バネ18が、第二ヨーク部2bの係合端面2b4において周方向に等間隔に配置されている。この圧縮バネ18の数や圧縮強度、配置等については、無励磁作動型電磁ブレーキ1の本来の作用効果を奏するように適宜選択すればよい。
【0031】
そして、第二ヨーク部2bの係合端面2b4には別に凹部2b1が形成されており、プレート6に設けられた貫通孔6b及びアーマチュア10に設けられた貫通孔10bを挿通されたボルト12がこの凹部2b1に締め付けられており、プレート6及びアーマチュア10をヨーク2に固定している。
【0032】
このように、本実施形態においては、基準軸線Cに略直交する方向からみて、励磁コイル4とボルト12及び圧縮バネ18(更にはボルト12を内蔵する凹部2b1及び圧縮バネ18を内蔵する凹部2b2)とが重ならない位置関係(基準軸線C方向からみて、励磁コイル4とボルト12及び圧縮バネ18(更にはボルト12を内蔵する凹部2b1及び圧縮バネ18を内蔵する凹部2b2)とが重なる位置関係)を有しているため、基準軸線Cからみた径方向において小型化を実現されている。
【0033】
また、本実施形態においては、ヨーク2が、第一ヨーク部2aと第二ヨーク部2bとで構成されており、励磁コイル4がボビン等を用いず第一ヨーク部2aの筒状部分に直接捲回されているため、基準軸線Cからみた径方向において更なる小型化を実現されており、また、省略されたボビンの容積や幅の分だけ、基準軸線Cからみた径方向においてヨーク2の幅やコイルスペースが確保されており、小型化を犠牲にせずに大磁気吸引力、低消費電力及び低発熱量が実現されている。
【0034】
以上、本発明の無励磁作動型電磁ブレーキの代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲において種々の設計変更が可能である。
【0035】
例えば第一ヨーク2aに、基準軸線C方向からみて励磁コイル4と重なる位置に、他の機器へ無励磁作動型電磁ブレーキ1をネジで固定するためのネジ穴や、このネジ穴を形成するためのネジ穴しろが形成されている態様であってもよい。図2に示す従来の無励磁作動型電磁ブレーキ100に比べて、図1に示す無励磁作動型電磁ブレーキ1においては、第一ヨーク2aの左側部分が厚肉であるため、このような態様も好適に採用することができる。
【0036】
また、例えば、上記実施形態においては、便宜上図1の同じ縦断面図において、同じ断面位置に、ボルト12を内蔵する凹部2b1及び圧縮バネ18を内蔵する凹部2b2が表れるように図示される態様について説明したが、圧縮バネ18の数や位置及びボルト12の位置は、適宜変更可能である。
【0037】
また、上記実施形態においては、第一ヨーク2aと第二ヨーク2bとが別部材である態様について説明したが、第一ヨーク2aと第二ヨーク2bとが一体的な構造を有していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の無励磁作動型電磁ブレーキは、小型無励磁作動型電磁ブレーキとして、特にサーボモータやロボット用モータ等の小型モータの無励磁作動型電磁ブレーキとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0039】
1、100・・・無励磁作動型電磁ブレーキ、
2、102・・・ヨーク、
2a・・・第一ヨーク、
2b・・・第二ヨーク、
4、104b・・・励磁コイル、
6、106・・・プレート、
8、108・・・制動部、
10、110・・・アーマチュア、
12、112・・・ボルト、
14、114・・・リード線、
16、116・・・カラー、
18・・・圧縮バネ、
104a・・・ボビン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁コイルを備えたヨークと、
前記ヨークに対向配置されたプレートと、
前記ヨークと前記プレートとの間に配置され前記ヨークの基準軸線回りに回動可能に設けられた制動部と、
前記ヨークと前記制動部との間に配置され前記基準軸線回りに回動不能かつ前記基準軸方向に移動可能に配置されたアーマチュアと、
前記プレートを前記ヨークに締結する締結部材と、
を具備し、
前記基準軸線に略直交する方向からみて、前記励磁コイルと前記締結部材とが重ならず、前記基準軸線方向からみて、前記励磁コイルと前記締結部材の少なくとも一部とが重なっている構成を有する無励磁作動型電磁ブレーキ。
【請求項2】
前記ヨークが、フランジ状部分を有する筒状部材で構成された第一ヨーク部と、前記第一ヨーク部を覆う筒状部材で構成された第二ヨーク部と、で構成されており、
前記励磁コイルが、前記第一ヨーク部の前記筒状部分に直接捲回されている、
請求項1記載の無励磁作動型電磁ブレーキ。
【請求項3】
前記第一ヨーク部と前記第二ヨーク部とが一体的に前記ヨークを構成している、
請求項1又は2記載の無励磁作動型電磁ブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−149527(P2011−149527A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12792(P2010−12792)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】