説明

無励磁作動形ブレーキ

【課題】制動時における異音(いわゆる「鳴き」)の発生を抑制・防止することができ、安定した動作を長期に亘って維持可能な実用性に優れた無励磁作動形ブレーキを提供する。
【解決手段】ヨーク11内に励磁コイル12を設けた電磁石部1と、被制動軸Sの軸方向に沿って摺動可能であって且つ電磁石部1と共に磁気回路を形成し得るアーマチュア2と、被制動軸Sの軸方向に沿ってアーマチュア2と対向する位置に配されるプレート4とを備えた無励磁作動形ブレーキXにおいて、電磁石部1とアーマチュア2との間に亘って、コイル部12のうちアーマチュア2に対向する面である第2対向面1Bと、ヨーク11のうちアーマチュア2に対向する面である第1対向面1Aとの段差1Dを利用して、第2対向面1B全体を被覆する粘弾性体6を圧縮状態で配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制動力が働く状態と制動力が働かない状態との間で切替可能な無励磁作動形ブレーキに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、制動力が働く状態と制動力が働かない状態との間で切替可能な無励磁作動形ブレーキとしては、例えば、ヨーク内に励磁コイルを設けた電磁石部と、被制動軸の軸方向に摺動可能なアーマチュアと、被制動軸の軸方向に沿ってアーマチュアと対向する位置に設けたプレートと、アーマチュアとプレートとの間に配設され、且つ被制動軸を回転方向に拘束する摩擦板と、アーマチュアをプレート側に付勢するバネ等の付勢部材とを備え、励磁コイルが無励磁状態である場合に、アーマチュアが付勢部材によって摩擦板を介してプレート側に付勢されることにより、被制動軸に制動力が働くものが知られている。このような無励磁作動形ブレーキは、励磁コイルが励磁状態である場合、アーマチュアが電磁石部と共に磁気回路を形成し、この磁気回路を通る磁束によって発生する吸引力により、アーマチュアが付勢部材の付勢力に抗して電磁石部に接触する位置まで電磁石部側に吸引され、摩擦板が開放されることにより摩擦板に対して回転方向に拘束された被制動軸に制動力が働かない(制動力が開放される)ように構成されている。
【0003】
そして、このような無励磁作動形ブレーキの中には、制動力が働く状態から制動力を開放した状態に切り替えた際にアーマチュアが電磁石部に吸着することに起因する衝突音の発生を防止・抑制するための手段が講じられているものもある。例えば、下記特許文献1には、ヨークとアーマチュアとの対向する端面の何れか一方に、部分的な凹部(環状溝)を形成し、この凹部にOリングをその一部が端面よりも突出するように埋設した態様が開示されており、また、下記特許文献2には、ヨークの端面に凹溝を複数形成し、各凹溝に半球形状の弾性体を、その半球面の一部が凹溝から突出するように埋設した態様が開示されている。このような態様を採用すれば、Oリング又は半球状の弾性体がアーマチュアに接触することにより、アーマチュアが電磁石部に吸着することに起因する衝突音の発生を防止・抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−219535号公報
【特許文献2】特開2000−220666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、無励磁作動形ブレーキは、制動した際、すなわち、アーマチュアが磁束から釈放されて電磁石部から開放された際に異音(いわゆる「鳴き」)が発生している。しかしながら、上述した従来技術は制動状態から非制動状態に切り替えた際の衝突音の発生を防止・抑制することが可能であるものの、制動した際における異音の発生を防止・抑制するための対策は一切講じられていない。
【0006】
本発明は、このような背景技術及び新規な課題に着目してなされたものであり、主たる目的は、制動時における異音の発生を防止・抑制することが可能な無励磁作動形ブレーキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、ヨーク及びこのヨーク内にコイル部を設けた電磁石部と、被制動軸の軸方向に沿って摺動可能であって、且つ電磁石部と共に磁気回路を形成し得るアーマチュアと、被制動軸の軸方向に沿ってアーマチュアと対向する位置に配されるプレートと、アーマチュアとプレートとの間に配設され、且つ被制動軸を回転方向に拘束する摩擦板とを備え、ヨークのうちアーマチュアに対向する面である第1対向面に開口させて形成した凹部に設けたコイル部が無励磁状態である場合に摩擦板を介してアーマチュアがプレートに押圧することによって前記被制動軸に制動力が働く無励磁作動形ブレーキである。ここで、「押圧」とは、接触した状態で押し付けて圧することを意味する。また、「摩擦板」は、励磁コイルが励磁状態である場合に、プレートのうちアーマチュアに対向する面に接触しているもの(プレートのうちアーマチュアに対向する面に取り付けられている場合も含む)、又はアーマチュアのうちプレートに対向する面に接触しているもの(アーマチュアのうちプレートに対向する面に取り付けられている場合も含む)、或いはアーマチュア及びプレートの何れにも接触しない位置に配されるもの、これら何れの態様であってもよく、何れの態様であっても、無励磁状態において摩擦板がアーマチュアとプレートとの間に挟み込まれることによって、本発明の無励磁作動形ブレーキは被制動軸の回転動作を規制(制動)することができる。
【0008】
そして、本発明に係る無励磁作動形ブレーキは、電磁石部とアーマチュアとの間に亘って、第1対向面とコイル部のうちアーマチュアに対向する面である第2対向面との段差を利用して、第2対向面の少なくとも一部を被覆する粘弾性体を圧縮させた状態で配設していることを特徴としている。
【0009】
このように、制動時においても電磁石部とアーマチュアとの間に圧縮した粘弾性体が介在する構成を採用することによって、粘弾性体が減衰として作用するため、制動した際、つまりアーマチュアが磁束から釈放されて電磁石部から離間した直後の状態において生じ易い異音の発生を効果的に防止・抑制できる。しかも、磁極面における第1対向面(ヨークのうちアーマチュアに対向する面)と第2対向面(コイル部のうちアーマチュアに対向する面)との段差を利用して粘弾性体を電磁石部とアーマチュアとの間に配置しているため、粘弾性体を配置するための専用の凹部等を電磁石部又はアーマチュアに形成する必要がなく、構造の単純化及び製造コストの削減を図ることができる。
【0010】
さらに、本発明の無励磁作動形ブレーキは、粘弾性体を少なくとも第2対向面の一部を被覆する位置に配しているため、電磁石部のうちアーマチュアに対向する面に占める粘弾性体の表出面積を比較的大きく確保することができる。その結果、制動時における粘弾性体の受圧面積を大きくすることができるので、粘弾性体に作用する圧縮応力を相対的に小さく抑えることができ、粘弾性体の経年劣化を可及的に抑えることが可能になる。このように、電磁石部のうちアーマチュアに対向する面全体に占める粘弾性体の表出面積を比較的大きく確保することによって、制動時における異音発生の防止・抑制効果を長期に亘って発揮するものとなる。
【0011】
また、本発明の無励磁作動形ブレーキでは、ヨークの凹部に設けたコイル部として、励磁コイルと、この励磁コイルを充填するための樹脂モールドとによって構成することも可能であるが、励磁コイル単体で構成することも可能である。本発明の無励磁作動形ブレーキにおいて、後者の場合、つまり、コイル部を励磁コイルのみで構成した場合、粘弾性体の弾性復帰力によって励磁コイルを凹部の反開口部側(奥方側)へ押し付けることが可能であるため、凹部内に励磁コイルを配置した後に、この励磁コイルを樹脂モールドで固着する必要がなく、製造工程の簡素化、製造効率の向上及び軽量化をも図ることができる。さらに、制動時から非制動時へ切り替えた際に、アーマチュアが電磁石部の第1対向面に押圧し得るが、アーマチュアが圧縮状態の粘弾性体に常に接触し、粘弾性体をさらに弾性変形させながら電磁石部側に移動するため、粘弾性体のクッション性且つ減衰作用が機能し、アーマチュアとヨークの第1対向面との衝突音を防止・抑制することもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電磁石部とアーマチュアとの間に、電磁石部における第1対向面(ヨークのうちアーマチュアに対向する面)と第2対向面(コイル部のうちアーマチュアに対向する面)との段差を利用して粘弾性体を圧縮させた状態で配設するという斬新な技術的思想に基づいて、制動時における異音の発生を効果的に抑制・防止することができるとともに、製作工程の簡素化及び製作コストの低廉化を有効に図ることができ、安定した動作を長期に亘って維持可能な実用性に優れた無励磁作動形ブレーキを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る無励磁作動形ブレーキ(無励磁状態)を一部破断して示す全体概略図。
【図2】同実施形態に係る無励磁作動形ブレーキ(無励磁状態)の模式断面図。
【図3】同実施形態に係る無励磁作動形ブレーキ(励磁状態)の模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0015】
本実施形態に係る無励磁作動形ブレーキXは、図1及び図2に示すように、無励磁状態において後述する付勢部材3の付勢力(バネ力)により制動力が作用する乾式の無励磁作動形ブレーキである。この無励磁作動形ブレーキXは、ヨーク11内にコイル部12を設けた電磁石部1と、被制動軸Sの軸方向(スラスト方向)に沿って摺動可能であって且つ電磁石部1と共に磁気回路を形成し得るアーマチュア2と、アーマチュア2を電磁石部1から離間する方向に付勢する付勢部材3と、被制動軸Sの軸方向に沿ってアーマチュア2と対向する位置に配されるプレート4と、アーマチュア2とプレート4との間に配される摩擦板5とを備えたものである。
【0016】
電磁石部1は、アーマチュア2側に開口する断面視コ字状の凹部11aが形成されたリング状のヨーク11と、凹部11a内に収容されるコイル部12とを備えたものであり、フィールドコア或いはマグネット組立体等とも称される。ヨーク11の中心部には被制動軸Sが挿通可能な挿通孔11bを形成している。本実施形態では、コイル部12を励磁コイルのみによって構成している。本実施形態における電磁石部1は、アーマチュア2に対向する面を、励磁コイル12を凹部11a内に収容した状態でヨーク11のうちアーマチュア2に対向する面(以下「第1対向面1A」と称す)と、励磁コイル12のうちアーマチュア2に対向する面(以下「第2対向面1B」と称す)とによって形成している。そして、励磁コイル12を凹部11a内に収容した状態で第1対向面1Aが第2対向面1Bよりもアーマチュア2側に突出しており、この第1対向面1Aと第2対向面1Bとの間に反アーマチュア2側に凹んだ段差1Dが生じている。本実施形態では、ヨーク11を図示しない固定部に固定することにより、電磁石部1全体を移動不能に固定している。
【0017】
アーマチュア2は、円形リング状をなすものである。本実施形態では、肉厚方向(被制動軸Sの軸方向)の断面形状が略矩形状であるアーマチュア2を適用している。このアーマチュア2は、被制動軸Sの軸方向(スラスト方向)にスライド移動可能なものである。なお、本実施形態の無励磁作動形ブレーキXは、電磁石部1から後述するプレート4に亘って被制動軸Sの軸方向と平行な平行ピンPを設けおり、アーマチュア2は平行ピンPにガイドされながら被制動軸Sの軸方向にスライド移動可能であって且つ回転方向には平行ピンPにより拘束される(トルク支持)ようにしている(図1参照)。具体的には、平行ピンPを、アーマチュア2に形成したアーマチュア2の厚み方向に貫通させた穴(平行ピンPにおける軸部分の径よりも大きな開口寸法を有する穴)又は例えば外側方(被制動軸Sから離間する方向)に向かって開口するU字状の溝に通した状態で電磁石部1に圧入しておくことにより、穴又は溝と平行ピンPとのあそび(ギャップ)分だけアーマチュア2が被制動軸Sの回転方向に微少角度揺動するように構成している。また、アーマチュア2の中心部には被制動軸Sが挿通可能な挿通孔2aを形成している。
【0018】
付勢部材3は、例えば圧縮コイルバネから構成され、アーマチュア2を電磁石部1から離間する方向に付勢するものである。本実施形態では、ヨーク11に形成した付勢部材用凹部11cに付勢部材3の一部を収容している。
【0019】
プレート4は、円形リング状をなし、先端部を電磁石部1に螺着させた固定ネジBの頭部Baとこの固定ネジBに螺着したナットNとによって挟まれた状態で固定されている(図2参照)。本実施形態では、肉厚方向(被制動軸Sの軸方向)の断面形状が略矩形状であるプレート4を適用している。
【0020】
摩擦板5は、例えば円形リング状をなし、被制動軸Sを回転方向に拘束するものである。本実施形態では、摩擦板5の基端部(被制動軸S側の端部)を被制動軸S回りに設けたハブHにスプライン結合している。
【0021】
そして、本実施形態に係る無励磁作動形ブレーキXは、電磁石部1とアーマチュア2との間に粘弾性体6を圧縮させた状態で配設している。本実施形態では、例えば天然ゴムから形成した円形リング状の粘弾性体6を適用している。なお、合成ゴムやコルク、軟性プラスチック、或いは金属間摩擦のある重ね板バネを用いて粘弾性体を形成することもできる。本実施形態における電磁石部1は、上述したように、電磁石部1のうちアーマチュア2と対面する面を第1対向面1Aと第2対向面1Bとによって形成し、第1対向面1Aと第2対向面1Bとの境界部分に反アーマチュア2側に凹んだ段差1Dが生じており、この段差1Dを利用して、粘弾性体6の一端部を電磁石部1に装着している。具体的には、第2対向面1B全体を被覆するように粘弾性体6の一端部側を段差1Dである凹溝1E内に嵌め入れている。これにより、粘弾性体6の一端部側における被制動軸S側を向く内向き面及び反被制動軸S側を向く外向き面が凹溝1Eの壁面に接触(圧接)し、粘弾性体6の安定した装着状態を維持することができる。そして、粘弾性体6の他端にアーマチュア2を接触させて、アーマチュア2と電磁石部1との間に粘弾性体6を圧縮させた状態で介在させる。この際、ヨーク11の凹部11aに収容している励磁コイル12が、粘弾性体6の弾性復元力によって凹部11aの奥方(反アーマチュア2側)に向かって付勢され、励磁コイル12を樹脂モールドで充填することなく安定した状態で凹部11a内に収容することができる。つまり、アーマチュア2と電磁石部1との間に圧縮させた状態で介在させた粘弾性体6が、励磁コイル12を凹部11aの奥方(反アーマチュア2側)に向かって押さえ付けるコイル押さえ手段としての機能を担う。
【0022】
次に、このような構成をなす無励磁作動形ブレーキXの動作について説明する。
【0023】
励磁コイル12を無励磁状態から励磁状態に切り替えた場合、アーマチュア2は、図3に示すように、電磁石部1と共に磁気回路を形成し、この磁気回路を通る磁束によって発生する吸引力により付勢部材3の付勢力に抗して電磁石部1に接触する位置まで電磁石部1側に吸引される。これにより、アーマチュア2は摩擦板5から離間して摩擦板5に対する押圧状態が解除され、被制動軸Sに対する制動力は働かない。また、電磁石部1側に吸引されるアーマチュア2は、圧縮状態にある粘弾性体6をさらに漸次圧縮変形させながら電磁石部1側に移動する。このように、本実施形態の無励磁作動形ブレーキXでは、アーマチュア2が電磁石部1側に移動する際に常に粘弾性体6に接触するように構成しているため、粘弾性体6を電磁石部1とアーマチュア2との間に介在させていない態様と比較して、アーマチュア2の電磁石部1側への移動速度を効果的に減速させることができ、アーマチュア2が電磁石部1に接触した際の衝突音を防止したり、或いは可及的に抑制することができる。
【0024】
そして、励磁コイル12を励磁状態から無励磁状態に切り替えた場合、アーマチュア2及び電磁石部1によって形成していた磁気回路が解消される。その結果、アーマチュア2は磁束から釈放され、図2に示すように、付勢部材3の付勢力によって電磁石部1から離間する方向に付勢され、摩擦板5に押圧する。この際、摩擦板5及びプレート4も相互に押圧し、その結果、ハブHを介して被制動軸Sに制動力が作用する。そして、励磁コイル12が無励磁状態である場合においても、電磁石部1とアーマチュア2との間には粘弾性体6が圧縮状態で介在している。このような構成を採用することにより、粘弾性体6の粘性が減衰として作用するため、制動時(無励磁状態)における異音の発生を効果的に防止、或いは可及的に抑制することができる。
【0025】
このように、本実施形態に係る無励磁作動形ブレーキXは、制動時、つまりアーマチュア2が磁束から釈放されて電磁石部1から離間している状態で生じ易い異音の発生を効果的に防止・低減することができる。しかも、電磁石部1における第1対向面1A(ヨーク11のうちアーマチュア2に対向する面)と第2対向面1B(励磁コイル12のうちアーマチュア2に対向する面)との段差1D(凹溝1E)を利用して粘弾性体6を電磁石部1とアーマチュア2との間に設置しているため、粘弾性体6を配置するための専用の凹部を電磁石部1又はアーマチュア2に形成する必要がなく、構造の単純化及び製造コストの削減を図ることができる。
【0026】
さらに、本実施形態に係る無励磁作動形ブレーキXは、第2対向面1B全体を被覆する位置に粘弾性体6を配しているため、例えば制動時においてOリング(弾性体)を電磁石部1とアーマチュア2との間に介在させる態様と比較して、電磁石部1のうちアーマチュア2に対向する面に占める粘弾性体6の表出面積を大きく確保することができる。その結果、制動時における粘弾性体6の受圧面積が大きくなり、粘弾性体6に作用する圧縮応力を効果的に抑えることができる。これにより、粘弾性体6の経年劣化を可及的に抑えることが可能になり、制動時における異音発生の防止・抑制機能を長期に亘って維持することができる。
【0027】
また、本実施形態に係る無励磁作動形ブレーキXでは、ヨーク11の凹部11aに設けたコイル部を励磁コイル12のみから構成し、この励磁コイル12を粘弾性体6の弾性復帰力によって凹部11aの反開口部側(反アーマチュア2側)へ押し付けるように構成しているため、凹部11a内に励磁コイル12を配置した後に、この励磁コイル12を樹脂モールドで固着する必要がなく、製造工程の簡素化及び製造効率の向上をも図ることができる。さらに、制動時から非制動時へ切り替えた際に、アーマチュア2が電磁石部1の第1対向面1Aに押圧し得るが、本実施形態の無励磁作動形ブレーキXでは、アーマチュア2が圧縮状態の粘弾性体6に常に接触し、粘弾性体6をさらに弾性変形させながら電磁石部1側に移動するように構成しているため、粘弾性体6のクッション性を利用してアーマチュア2と電磁石部1との衝突音を防止・抑制することもできる。
【0028】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、単一の円形リング状の粘弾性体によって第2対向面全体を被覆する態様を例示したが、半円形リング状をなす2つの粘弾性体によって第2対向面全体ないし略全体を被覆する態様や、或いは第2対向面を部分的に被覆する粘弾性体を採用することができる。第2対向面を部分的に被覆する粘弾性体としては、部分円形リング状或いは直方体状(立方体状)等のものが挙げられ、このような粘弾性体を、被制動軸の軸回りに周回する第2対向面上に所定ピッチ毎、或いは不規則的に複数配置すればよい。
【0029】
また、電磁石部とアーマチュアとの間に亘って粘弾性体を配置した状態で、被制動軸の軸方向と直交する方向に粘弾性体と段差(凹溝1E)との間にあそびがあっても構わない。この場合であっても、粘弾性体の両側端面をそれぞれ電磁石部(具体的にはコイル部のうちアーマチュアに対向する面)とアーマチュア(具体的にはアーマチュアのうち電磁石部に対向する面)とに接触させることにより、この粘弾性体を電磁石部とアーマチュアとの間に亘って圧縮状態で配設することができる。
【0030】
さらに、上述した実施形態では、コイル部を励磁コイルのみから構成した態様を例示したが、コイル部として、励磁コイルと、この励磁コイルと凹部との隙間を詰める樹脂モールドとによって構成した態様を採用することもできる。
【0031】
また、本発明の無励磁作動形ブレーキでは、摩擦板をプレートのうちアーマチュアに対向する面に取り付けた態様や、摩擦板をアーマチュアのうちプレートに対向する面に取り付けた態様、或いは摩擦板を励磁状態においてアーマチュア及びプレートの何れにも接触しない位置に配し、無励磁状態において摩擦板がこれらアーマチュア及びプレートに挟み込まれて接触するように構成した態様、これら何れの態様も採用することができる。
【0032】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1…電磁石部
11…ヨーク
11a…凹部
12…コイル部(励磁コイル)
1D…段差
1A…第1対向面
1B…第2対向面
2…アーマチュア
4…プレート
5…摩擦板
6…粘弾性体
S…被制動軸
X…無励磁作動形ブレーキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨーク及び当該ヨーク内にコイル部を設けた電磁石部と、
被制動軸の軸方向に沿って摺動可能であって且つ前記電磁石部と共に磁気回路を形成し得るアーマチュアと、
前記被制動軸の軸方向に沿って前記アーマチュアと対向する位置に配されるプレートと、
前記アーマチュアと前記プレートとの間に配設され、且つ前記被制動軸を回転方向に拘束する摩擦板とを備え、
前記ヨークのうち前記アーマチュアに対向する面である第1対向面に開口させて形成した凹部に設けた前記コイル部が無励磁状態である場合に前記摩擦板を介して前記アーマチュアが前記プレートに押圧することによって前記被制動軸に制動力が働く無励磁作動形ブレーキであり、
前記電磁石部と前記アーマチュアとの間に亘って、前記第1対向面と前記コイル部のうち前記アーマチュアに対向する面である第2対向面との段差を利用して、当該第2対向面の少なくとも一部を被覆する粘弾性体を圧縮させた状態で配設していることを特徴とする無励磁作動形ブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−112099(P2011−112099A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266943(P2009−266943)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】