説明

無孔質膜型透湿防水加工用接着剤組成物及び透湿防水加工布帛の製造方法

【課題】 風合い、耐水性、透湿性、耐洗濯性等の点で優れた無孔質膜型透湿防水加工用接着剤組成物及びそれを用いた無孔質膜型透湿防水加工布帛の製造方法を提供する。
【解決手段】 (A成分)有機ポリイソシアネート成分と、(B成分)4個以上のオキシエチレン単位からなるポリオキシエチレン基を含有するとともにNCO基と反応性のある活性水素を少なくとも2個以上含有する第1のポリオール成分と、(C成分)NCO基と反応性のある活性水素を少なくとも2個以上含有する第2のポリオール成分とを構成成分として、NCO/OH比(モル比)=0.65〜0.99の範囲になるように反応させて(P)末端水酸基を有するポリウレタンプレポリマーの水分散体を得、これに(D成分)水分散型ポリイソシアネート系架橋剤を配合して、無孔質膜型透湿防水加工用接着剤組成物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系ポリウレタン樹脂を用いた、透湿性、耐水性、耐洗濯性に優れ、加工風合いにも優れた無孔質膜型透湿防水加工用接着剤組成物及びそれを用いた無孔質膜型透湿防水加工布帛の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アウトドア用の衣類などには、無孔質膜型透湿防水加工を施した布帛が使用されたものがある。この無孔質膜型透湿防水加工布帛は、ポリウレタン樹脂からなる透湿性の皮膜を接着剤を用いて撥水性の布帛上に形成する等により製造されている。透湿性皮膜や接着剤の形成に用いられるポリウレタン樹脂としては、これまで溶剤系のものが使用されており、例えば、ポリウレタン樹脂中にポリオキシエチレングリコールやポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンをランダム又はブロック共重合したものを用いることは広く知られている(例えば、特許文献1〜4)。
【0003】
しかしながら、溶剤系のポリウレタン樹脂を使用すると、ジメチルホルムアミド(DMF)、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)などの有機溶剤が製品中に含まれることとなり、この有機溶剤が布帛への加工中に大気に排出されたり、布帛中に残存し、大気汚染や水質汚染に大きな影響を及ぼしている。
【0004】
一方、近年、地球環境、安全、衛生などの観点から有機溶剤を含有しない水系ポリウレタン樹脂が注目されるに至っている。無孔質膜型透湿防水加工剤に於いても有機溶剤系ポリウレタン樹脂から水系ポリウレタン樹脂への転換が検討され、種々の無孔質型透湿防水加工剤が提案されている(例えば、特許文献5及び6)。この水系ウレタン樹脂は、環境への悪影響を低減できるという大きな特徴を有するものの、風合い、耐水性、透湿性、耐洗濯性等の点で、溶剤系樹脂を用いた無孔質型透湿防水加工剤に比較して大きく劣っているのが実情である。
【特許文献1】特公昭54−961号公報
【特許文献2】特開昭64−62320号公報
【特許文献3】特開平3−203920号公報
【特許文献4】特開平4−180813号公報
【特許文献5】特開平6−220399号公報
【特許文献6】特開2004−300178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記のような従来技術の問題点を解決するために為されたものであり、本発明の目的は、風合い、耐水性、透湿性、耐洗濯性等の点で優れた無孔質膜型透湿防水加工用接着剤組成物及びそれを用いた無孔質膜型透湿防水加工布帛の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の無孔質膜型透湿防水加工用接着剤組成物は、(A成分)有機ポリイソシアネート成分と、(B成分)4個以上のオキシエチレン単位からなるポリオキシエチレン基を含有するとともにNCO基と反応性のある活性水素を少なくとも2個以上含有する第1のポリオール成分と、(C成分)NCO基と反応性のある活性水素を少なくとも2個以上含有する第2のポリオール成分とを構成成分として、NCO/OH比(モル比)=0.65〜0.99の範囲になるように反応させて得られた(P)末端水酸基を有するポリウレタンプレポリマーの水分散体に対して、更に、(D成分)水分散型ポリイソシアネート系架橋剤を配合して得られることを特徴とする。
【0007】
本発明では、(B成分)と(C成分)の2種類のポリオール成分を使用することにより、親水性と疎水性とのバランスが調整され、透湿防水加工布帛の接着剤として優れた風合い、耐水性、透湿性、耐洗濯性等が発揮される。
【0008】
上記に於いては、前記(B成分)の第1のポリオール成分に含まれるオキシエチレン単位の合計の含有量が、水系ポリウレタン樹脂中の固形分を100重量%として、15〜60重量%であることが好ましい。
【0009】
上記に於いて、前記(C成分)の第2のポリオール成分が、1,4−ブタンジオール及びアジピン酸から成るポリエステルポリオール、並びに/又は1,6−ヘキサンジオール及びアジピン酸から成るポリエステルポリオールを含有していることが好ましい。
【0010】
また、前記(P)の末端水酸基を有するポリウレタンプレポリマーの水分散体と、(D成分)の水分散型ポリイソシアネート系架橋剤との配合比が、有効成分比で100:1〜100:10であることが好ましい。
【0011】
本発明の透湿防水加工布帛の製造方法は、無孔質膜型透湿防水加工用の水系ポリウレタン樹脂組成物を含有する塗工液を離型紙に塗布し、乾燥処理して透湿層を得、該透湿層の上に、請求項1〜4の水系接着剤組成物を含有する接着剤を塗布し、乾燥した後、撥水処理した合成繊維布帛を貼り合わせるドライラミネート法により得られることを特徴とする。
【0012】
また、無孔質膜型透湿防水加工用の水系ポリウレタン樹脂組成物を含有する塗工液を離型紙に塗布し、乾燥処理して透湿層を得、該透湿層の上に、請求項1〜4の水系接着剤組成物を含有する接着剤を塗布し、乾燥を行い、合成繊維布帛を貼り合わせた後に、撥水処理を行ってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来の水系ポリウレタン樹脂では得ることが難しかった、透湿性、耐水性、耐洗濯性に優れ、加工風合いにも優れた無孔型透湿防水加工を可能とする透湿防水加工用接着剤、及びこれを用いた透湿防水加工布帛の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明において使用されるA成分の有機ポリイソシアネート成分としては、特に制限はなく、ウレタン工業の分野において周知のものを使用することができる。例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加MDI(H12MDI)などの有機ポリイソシアネート化合物が挙げられるが、無黄変性を要求される場合には、HMDIなどの脂肪族イソシアネート,IPDI、H12MDIなどの脂環族イソシアネート、XDI,TMXDIなどの芳脂環族イソシアネートが好ましい。
【0015】
本発明において使用されるB成分である第1のポリオール成分としては、4個以上のオキシエチレン単位からなるポリオキシエチレン基を含有するものであれば、ウレタン工業の分野において周知のものを使用することができ、例えば、ポリエーテルポリオールを挙げることができる。
【0016】
本発明に於けるB成分として使用し得るポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合ポリオールが挙げられる。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合ポリオールを得るための出発物質として、グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどのトリオール類や、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブタノールアミンなどのアルカノールアミン類などが挙げられる。また四官能アルコール成分としてはペンタエリスリトールが挙げられる。これら多価アルコールを出発物質とし塩基性触媒の存在下アルキレンオキサイドを重付加してポリエーテルポリオールを合成する。
【0017】
オキシエチレン基を有するB成分の第1のポリオールの数平均分子量は、300〜5000であることが好ましく、500〜2000であることがより好ましい。この数平均分子量が上記範囲を下回ると、透湿性が低下し、上記範囲を上回ると、粘度が高くなり、製品中の有効成分が低下するため、接着強度が低下する傾向が生じる。
【0018】
B成分の第1のポリオール成分に含まれるオキシエチレン単位の合計の含有量は、水系ポリウレタン樹脂中の固形分を100重量%として、15〜60重量%であることが好ましい。この含有量が15重量%より小さいと十分な透湿性が得られず、60重量%を超えると、樹脂の親水性が高くなり過ぎて洗濯によって脱落し、洗濯後の透湿性及び耐水圧の低下を引き起こしてしまうことがあるので好ましくない。
【0019】
本発明において使用されるC成分である第2のポリオール成分としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールを挙げることができる。
【0020】
本発明に於けるC成分として使用し得るポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコールなどが挙げられる。これらのポリエーテルポリオールは、出発物質として、グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどのトリオール類や、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブタノールアミンなどのアルカノールアミン類など、またペンタエリスリトール等の四官能アルコールを用い、これら多価アルコールに、塩基性触媒の存在下、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどを重付加することにより得られる。
【0021】
本発明に於けるC成分として使用し得るポリエステルポリオールを構成する二塩基酸成分としては、コハク酸、マロン酸、アジピン酸、リンゴ酸、セバチン酸、無水マレイン酸、のような脂肪族二塩基酸が挙げられる。ポリエステルポリオールを構成する二価アルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタジオールなどの脂肪族グリコールが挙げられる。これら二塩基酸成分と二価アルコール成分とを縮合反応させてポリエステルポリオールが得られる。
【0022】
これらの組み合わせの中でも、結晶性を有する脂肪族系ポリエステルである、1,4−ブタンジオール/アジピン酸のポリエステルポリオール、1,6−ヘキサンジオール/アジピン酸のポリエステルポリオールが好ましい成分であり、これらの両方の成分を含んでいてもよい。
【0023】
その他のポリエステルポリオールも本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0024】
本発明に於けるC成分として使用し得るポリカーボネートポリオールとしては、1,4−ブタンジオールのカーボネート、1,6−ヘキサンジオールのカーボネート、3−メチル−1,5−ペンタジオールのカーボネート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメタノールのカーボネート等のポリカーボネートジオールが挙げられ、本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0025】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物を調製するに際して、本発明の効果を損なわない範囲内で鎖伸張剤を併用してもよい。鎖伸張剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、プロピレングリコール、ヘキサンジオール等の低分子鎖伸張剤を使用することができる。
【0026】
上記A成分の有機ポリイソシアネートと、上記B成分及びC成分のポリオールとの反応は、公知の方法により行うことができ、その反応の際のNCO基/活性水素基のモル比は、0.65〜0.99の範囲であり、反応は30〜130℃で30分〜50時間行うことにより、P成分の末端水酸基を有するポリウレタンプレポリマーが得られる。このP成分の末端水酸基を有するポリウレタンプレポリマーは、多くとも0.2重量%以下の遊離イソシアネート基を含有していることが好ましい。NCO/OH比(モル比)が0.65より小さいとP成分のプレポリマーの分子量が小さくて浸透性が高くなり、繊維に貼り付けた際に接着剤成分が繊維表面に滲み出してきてしまう。NCO/OH比(モル比)が0.99より大きいと、ポリウレタンプレポリマー製造時に、分子量が伸張してゲル化する場合があるので好ましくない。
【0027】
なお、上記ウレタンプレポリマーの合成に際し、イソシアネートに対して不活性で、かつ、ウレタンプレポリマーを溶解し得る溶剤を用いてもよい。使用し得る溶剤として、ジオキサン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。またウレタンプレポリマー水溶液の中に、酸化防止剤又は耐光剤の溶液又はエマルジョンを併用しても良い。
【0028】
酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系又はセミカルバジド系などの酸化防止剤の溶液又はエマルジョンが挙げられる。耐光剤としてはヒンダードアミン(HALS)系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系などの耐光剤の溶液又はエマルジョンが挙げられる。
【0029】
本発明のD成分の水分散型イソシアネート架橋剤としては、ポリイソシアネートに親水基を導入した水分散可能なタイプで、日本ポリウレタン工業(株)製の「アクアネート」シリーズが好適である。
【0030】
上記P成分の末端水酸基を有するポリウレタンプレポリマーの水分散体と、D成分の水分散型ポリイソシアネート系架橋剤との配合比は、有効成分比で100:1〜100:10である。水分散型ポリイソシアネート系架橋剤が、末端水酸基を有するポリウレタンプレポリマーの水分散体100部に対して、1部以下では十分な剥離強度が得られない。また、10部以上では配合系でのポットライフが低下し、さらに得られる繊維積層体の風合いが硬くなってしまうので好ましくない。
【0031】
本発明の透湿防水加工布帛の製造方法は、上記無孔質膜型透湿防水加工用接着剤組成物を使用し、ドライラミネート法により透湿防水加工布帛を得るものである。即ち、無孔質膜型透湿防水加工用の水系ポリウレタン樹脂組成物を離型紙に塗布し、ピンテンターなどを用いて加熱乾燥処理を行うことにより透湿層が形成される。その後、この透湿層の上に、本発明の無孔質膜型透湿防水加工用接着剤組成物を塗布し、ピンテンターなどを用いて乾燥させた後、撥水処理した布帛を貼り合わせ、ピンテンターなどを用いて加熱する。次に、離型紙を剥がすことにより、透湿防水加工布帛が得られる。
【0032】
また、本発明の透湿防水加工布帛の製造方法によれば、上記の無孔質膜型透湿防水加工用接着剤組成物を塗布し乾燥させた後、撥水処理しない布帛を貼り合わせ、離型紙を剥がした後に撥水処理してもよい。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
(合成例1…ウレタンプレポリマーの水分散体の調製)
ポリエステルポリオール(1,4−ブタンジオール/アジピン酸、日本ポリウレタン工業(株)製、Mw=2000、水酸基価=56.1)160.0部、ポリオキシエチレングリコール(第一工業製薬(株)製、Mw=1000、水酸基価=112.2)300.0部、メチルエチルケトン180.0部、3−メチル−1,5−ペンタンジオール4.8部、トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製、TDI−80)70.5部、を添加し、70〜75℃で90分間反応させた(NCO/OH=0.87)。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は0.10重量%であった。次に、メチルエチルケトン124部を添加し、系の温度を40℃とし、このプレポリマーを撹拌下において希釈水で希釈し、メチルエチルケトンを留去し、純分25%の非イオン性ポリウレタンプレポリマー水分散体Aを得た(ポリオキシエチレン基含有量56.0重量%)。
【0035】
(合成例2…ウレタンプレポリマーの水分散体の調製)
ポリエステルポリオール(1,4−ブタンジオール/アジピン酸、豊国製油(株)製、Mw=2500、水酸基価=44.9)219.4部、ポリオキシエチレングリコール(第一工業製薬(株)製、Mw=600、水酸基価=187.03)197.4部、1,4−ブタンジオール4.0部、トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製、TDI−80)77.4部、メチルエチルケトン300部、及びジオクチル錫ジラウレート0.05部を添加し、70〜75℃で90分間反応させた(NCO/OH=0.97)。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は0.10重量%であった。次に、系の温度を40℃とし、このプレポリマーを撹拌下において希釈水で希釈し、メチルエチルケトンを留去し、純分25%の非イオン性ポリウレタンプレポリマー水分散体Bを得た(ポリオキシエチレン基を有するポリオール成分39.5重量%含有)。
【0036】
(合成例3…ウレタンプレポリマーの水分散体の調製)
ポリエステルポリオール(1,6−ヘキサンジオール/アジピン酸、日本ポリウレタン工業(株)製、Mw=1000、水酸基価=112.2)170.0部、ポリオキシエチレンプロピレンランダム共重合グリコール(第一工業製薬(株)製、Mw=3400、水酸基価=33.0、ポリオキシエチレン基含有率78%)289.0部、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1.0部、トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製、TDI−80)41.3部、メチルエチルケトン110部、及びジオクチル錫ジラウレート0.02部を添加し、70〜75℃で90分間反応させた(NCO/OH=0.90)。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は0.10重量%であった。次に、系の温度を40℃とし、このプレポリマーに、撹拌下においてハイテノールNF−13(アニオン性界面活性剤、第一工業製薬(株)製)を10.0部添加し、十分に混合した後、引き続き希釈水で希釈し、メチルエチルケトンを留去し、純分25%の非イオン性/アニオン性ポリウレタンプレポリマー水分散体Cを得た(ポリオキシエチレン基含有量45.0重量%)。
【0037】
(合成例4…ウレタンプレポリマーの水分散体の調製)
ポリエステルポリオール(1,4−ブタンジオール/アジピン酸、日本ポリウレタン工業(株)製、Mw=1000、水酸基価=112.2)132.9部、ポリエステルポリオール(3−メチル−1,5−ペンタジオール/アジピン酸、クラレ(株)製、Mw=1000、水酸基価=112.2)50.0部、ポリオキシエチレングリコール(第一工業製薬(株)製、Mw=600、水酸基価=187.0)60.0部、1,6−ヘキサンジオール10.6部、イソホロンジイソシアネート78.5部、メチルエチルケトン110部、及びジオクチル錫ジラウレート0.2部を添加し、70〜75℃で90分間反応させた(NCO/OH=0.95)。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は0.10重量%であった。次に、系の温度を40℃とし、このプレポリマーに、撹拌下においてハイテノールNF−13(アニオン性界面活性剤、第一工業製薬(株)製)を6.6部添加し、十分混合した後、引き続き撹拌下において希釈水で希釈し、メチルエチルケトンを留去し、純分25%の非イオン性/アニオン性ポリウレタンプレポリマー水分散体Dを得た(ポリオキシエチレン基含有量18.0重量%)。
【0038】
(合成例5…ウレタンプレポリマーの水分散体の調製)
ポリエステルポリオール(1,4−ブタンジオール/アジピン酸、豊国製油(株)製、Mw=2500、水酸基価=44.9)282.5部、ポリエチレングリコール(第一工業製薬(株)製、Mw=600、水酸基価=187.0)67.8部、ポリエチレングリコール(第一工業製薬(株)製、Mw=1000、水酸基価=112.2)113.0部、ヘキサメチレンジイソシアネート38.0部、メチルエチルケトン250部、及びジオクチル錫ジラウレート0.05部を添加し、70〜75℃で90分間反応させた(NCO/OH=0.67)。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は0.10重量%であった。次に、系の温度を40℃とし、このプレポリマーを撹拌下において希釈水で希釈し、メチルエチルケトンを留去し、純分25%の非イオン性ポリウレタンプレポリマー水分散体Eを得た(ポリオキシエチレン基を含有するポリオール成分36.1重量%含有)。
【0039】
(合成例6…ウレタンプレポリマー水分散体調製,ポリオキシエチレン12.5重量%)
ポリエステルポリオール(1,4−ブタンジオール/アジピン酸、日本ポリウレタン工業(株)製、Mw=1000、水酸基価=112.2)182.9部、ポリオキシエチレングリコール(第一工業製薬(株)製、Mw=600、水酸基価=187.0)36.0部、トリレンジイソシアネート57.8部、メチルエチルケトン110部、及びジオクチル錫ジラウレート0.02部を添加し、70〜75℃で90分間反応させた(NCO/OH=0.95)。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は3.50重量%であった。次に、ジメチロールプロピオン酸12.0部、トリエチルアミン6.3部添加し、60〜65℃で60分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は0.10重量%であった。次に、系の温度を40℃とし、このプレポリマーを撹拌下において希釈水で希釈し、メチルエチルケトンを留去し、純分25%の非イオン性/アニオン性ポリウレタンプレポリマー水分散体Fを得た(ポリオキシエチレン基含有量12.5重量%)。
【0040】
(比較合成例1…ウレタンプレポリマーの水分散体の調製、NCO/OH=0.6)
ポリエステルポリオール(1,4−ブタンジオール/アジピン酸、豊国製油(株)製、Mw=2500、水酸基価=44.9)227.3部、ポリオキシエチレングリコール(第一工業製薬(株)製、Mw=600、水酸基価=187.03)204.5部、1,4−ブタンジオール4.1部、トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製、TDI−80)64.1部、メチルエチルケトン300部、及びジオクチル錫ジラウレート0.02部を添加し、70〜75℃で90分間反応させた(NCO/OH=0.60)。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は0.10重量%であった。次に、系の温度を40℃とし、このプレポリマーを撹拌下において希釈水で希釈し、メチルエチルケトンを留去し、純分25%の非イオン性ポリウレタンプレポリマー水分散体aを得た(ポリオキシエチレン基を含有するポリオール成分40.9重量%含有)。
【0041】
(比較合成例2…接着層、非イオン成分なし)
ポリエステルポリオール(1,4−ブタンジオール/アジピン酸、日本ポリウレタン工業(株)製、Mw=1000、水酸基価=112.2)182.9部、トリレンジイソシアネート45.1部、メチルエチルケトン110部、及びジオクチル錫ジラウレート0.02部を添加し、70〜75℃で90分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は3.00重量%であった。次に、ジメチロールプロピオン酸12.0部、トリエチルアミン6.3部添加し、60〜65℃で60分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は0.10重量%であった。次に、系の温度を40℃とし、このプレポリマーを撹拌下において希釈水で希釈し、メチルエチルケトンを留去し、純分25%のアニオン性ポリウレタンプレポリマー水分散体cを得た(NCO/OH=0.95)。
【0042】
(透湿層用の水系ポリウレタン樹脂組成物の調製)
ポリプロピレングリコール(「PML S−X4001」旭硝子(株)製、Mw=2000、水酸基価=56.1)82.0部、ポリエチレングリコール(第一工業製薬(株)製、Mw=約10000、水酸基価=11.2)56.2部、3−メチル−1,5−ペンタンジオール9.7部、トリメチロールプロパン1.3部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート41.1部、メチルエチルケトン100部、ジオクチル錫ジラウレート0.02部を添加し、70〜75℃で90分間反応させた(NCO/OH=1.03)。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は1.50重量%であった。次に、メチルエチルケトン60部、ジメチロールプロピオン酸0.8部、トリエチルアミン0.6部を添加し、65〜70℃で1時間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は1.20重量%であった。系を冷却しさらにメチルエチルケトンを50部添加し系の温度を40℃とし、撹拌下において、このプレポリマーにγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE−903)を4.1部添加した後、水で希釈し、さらにジプロピレントリアミン1.5部を添加し、遊離NCO(重量%)の消失を確認した。その後、メチルエチルケトンを留去し、純分20重量%の水系ポリウレタン樹脂組成物Tを得た(水系ポリウレタン樹脂組成物D中の固形分に対するポリエチレングリコール(Mw=約10000)の含有量34.4重量%(理論値)、アルコシシランの含有量=2.5重量%(理論値)、酸価1.9mgKOH/g)。
【0043】
(接着剤の調製…実施例1〜7、比較例1〜6)
表1及び表2に示す配合で、各実施例及び各比較例の接着剤を調製した。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
<ドライラミネート法による透湿防水布帛の作成>
(透湿フィルムの作成)
上記で得られた透湿層用の水系ポリウレタン樹脂組成物Tを離型紙上に、乾燥膜厚が15μmになるように塗布した。続けて80℃×3分間で乾燥処理後、さらに150℃×3分熱処理し、透湿層を得た。
【0047】
(透湿防水布帛の作成)
透湿層の上に、各実施例及び各比較例の接着剤を塗布厚80μm(Wet)で塗布した。続いて乾燥処理70℃×2分を行った後、撥水処理したポリエステル繊維布帛(タフタ)を貼り付け、圧力0.20MPa、温度120℃×10秒の処理を実施し、さらに70℃×24時間熟成した。次に、離型紙を剥がして各実施例及び各比較例の透湿防水布帛を得た。
【0048】
(性能試験)
接着剤のポットライフ、並びに透湿防水布帛の剥離強度、剥離部分の性状、加工布風合い、透湿性、耐水圧及び耐洗濯性について調べた。その結果を表3及び表4に示す。各性能試験方法及び評価基準は、以下のとおりである。
【0049】
<接着剤のポットライフ>
各接着剤を35℃×8時間放置した後の状態を肉眼観察した。
【0050】
<剥離強度>
2.5cm幅のホットメルトテープを試料表面(表皮面)においてアイロンで加熱し、ホットメルトテープを接着した。このテープ幅に沿って試料を切断し、試料の一部を剥離し、基材とテープをチャックではさみ、オートグラフで剥離強度を測定した。
【0051】
<剥離部分の性状>
剥離強度試験後の剥離部分を目視で観察した。
【0052】
<加工布風合い>
加工布の風合いを触感により評価した。評価基準は、以下のとおりである。
【0053】
○:柔らかい
△:やや硬さがある
×:硬い。
【0054】
<透湿性>
透湿性試験は、JIS L−1099 4.1.1B−1(酢酸カリウム法)に準じて行った。
【0055】
<耐水圧>
耐水圧試験は、JIS L−1092 B法(高水圧法)に準じて測定を実施した。
【0056】
<耐洗濯性>
JIS L 0217の103法に準じて、洗濯前と洗濯10回後の透湿性及び耐水圧を測定した。
【0057】
【表3】

【0058】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の無孔質膜型透湿防水加工用接着剤組成物及び透湿防水加工布帛の製造方法によれば、透湿性、耐水性、耐洗濯性に優れ、加工風合いにも優れた透湿防水加工布帛が得られるので、繊維加工の分野で利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A成分)有機ポリイソシアネート成分と、
(B成分)4個以上のオキシエチレン単位からなるポリオキシエチレン基を含有するとともにNCO基と反応性のある活性水素を少なくとも2個以上含有する第1のポリオール成分と、
(C成分)NCO基と反応性のある活性水素を少なくとも2個以上含有する第2のポリオール成分と
を構成成分として、NCO/OH比(モル比)=0.65〜0.99の範囲になるように反応させて得られた(P)末端水酸基を有するポリウレタンプレポリマーの水分散体に対して、更に、
(D成分)水分散型ポリイソシアネート系架橋剤
を配合して得られる無孔質膜型透湿防水加工用接着剤組成物。
【請求項2】
前記(B成分)の第1のポリオール成分に含まれるオキシエチレン単位の合計の含有量が、水系ポリウレタン樹脂中の固形分を100重量%として、15〜60重量%であることを特徴とする請求項1記載の無孔質膜型透湿防水加工用接着剤組成物。
【請求項3】
前記(C成分)の第2のポリオール成分が、1,4−ブタンジオール及びアジピン酸から成るポリエステルポリオール、並びに/又は1,6−ヘキサンジオール及びアジピン酸から成るポリエステルポリオールを含有していることを特徴とする請求項1又は2記載の無孔質膜型透湿防水加工用接着剤組成物。
【請求項4】
前記(P)の末端水酸基を有するポリウレタンプレポリマーの水分散体と、(D成分)の水分散型ポリイソシアネート系架橋剤との配合比が、有効成分比で100:1〜100:10であることを特徴とする無孔質膜型透湿防水加工用接着剤組成物。
【請求項5】
無孔質膜型透湿防水加工用の水系ポリウレタン樹脂組成物を含有する塗工液を離型紙に塗布し、乾燥処理して透湿層を得、該透湿層の上に、請求項1〜4の水系接着剤組成物を含有する接着剤を塗布し、乾燥した後、撥水処理した合成繊維布帛を貼り合わせるドライラミネート法により得られる透湿防水加工布帛の製造方法。
【請求項6】
無孔質膜型透湿防水加工用の水系ポリウレタン樹脂組成物を含有する塗工液を離型紙に塗布し、乾燥処理して透湿層を得、該透湿層の上に、請求項1〜4の水系接着剤組成物を含有する接着剤を塗布し、乾燥を行い、合成繊維布帛を貼り合わせた後に、撥水処理を行う透湿防水加工布帛の製造方法。

【公開番号】特開2007−77191(P2007−77191A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−263748(P2005−263748)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】