説明

無方向性珪素鋼の表面粗大結晶粒の改善方法

無方向性珪素鋼の表面粗大結晶粒の改善方法であって、
(1)製錬、キャスティングステップ:成分の重量比がC:0.001〜0.005%,Si:0.1%〜1.80%,Mn:0.10%〜0.80%,P≦0.04%,Al:0.20%〜0.80%,S≦0.005%,N≦0.005%であり、残りはFeである無方向性珪素鋼になるよう、製錬とRH精錬処理を行い、液鋼をキャスティングし、成形させるステップと、
(2)熱間圧延し、鋼板を作るステップと、
(3)焼きならしステップ:焼きならし温度が800℃〜900℃で、焼きならし均熱時間が15S〜30Sで、焼きならし炉の酸素含有量が0.5%以下で、そして焼きならしされてから、鋼板の最大結晶粒と平均結晶粒のサイズの比が3以下であるように焼きならしを行なうステップと、
(4)酸洗い、冷間圧延、アニール、コーティングして無方向性珪素鋼製品を得るステップとを備える無方向性珪素鋼の表面粗大結晶粒の改善方法である。本発明は現有の条件で、熱処理工程を追加せず、そして、並行の熱加工もすることなく、無方向性珪素鋼の表面の粗大結晶粒問題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明領域
本発明は無方向性珪素鋼の製造プロセスに関するものであり、特に無方向性珪素鋼の表面粗大結晶粒の改善方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背景技術
従来の無方向性珪素鋼の成分の含有量は、C≦0.005%,Si:0.1%〜1.80%,Mn:0.10%〜0.80%,P:0.04%以下,Al:0.20%〜0.80%,S≦0.005%以下,N≦0.005%以下であり、残りはFe及び避けられない不純物である。前記液鋼の成分は転炉とRH精錬のプロセスを経て得られ、液鋼がキャスティングされてから、熱間圧延、焼きならし、酸洗い、冷間圧延、アニール、コーティングにより無方向性珪素鋼製品を得る。その製品の表面品質は非常に悪く、図1に示されるように、表面粗大結晶粒の問題が重大である。
【0003】
現在、鋼鉄製品の粗大結晶粒の対策として下記のものがある。
中国特許CN1073982に鍛圧品の「ダブル予熱焼きならし」の前処理プロセスが掲載されていて、従来のプロセスでは結晶粒を十分に微細化できなく、そして粗大結晶粒と混晶の問題に対しても明らかな改善はなかった問題を解決した。当該プロセスには予熱と焼きならしの工程があり、焼きならしの前に鍛圧品に対して600〜710℃の予熱温度で鍛圧品を予熱することを特徴とし、1、結晶粒を微細化した、2、粗大結晶粒と混晶問題を改善し、技術要求を満たすようになった、3、現有の設備で実現したという長所がある。しかし、当該プロセスは大型鍛圧品の予熱処理に適用される。無方向性珪素鋼ロールをこのプロセスで処理すると、熱処理の工程が一回多くなるため、コストが上昇してしまう。
【0004】
中国特許CN1804056に「変形高温合金の微小な粗大結晶粒の予防方法」が掲載され、当該予防方法には二つの予防措置があり、一つ目は鍛造プロセス予防措置であり、主にDEFORM2Dのビジネスシミュレーションソフトウェアにより計算機シミュレーションを行なうことで、高温合金鍛造品の最小変形部位の変形量を確定するとともに、一段階プロセスでの有効変形部位が再結晶を発生する変形量を厳しく制御する。二つ目は予備熱処理予防措置であり、主として鍛造温度を1160度未満であるように厳しく制御し、一つ目の措置で効果を奏すことができないまたは意外があった時、二つ目の措置を採用する。当該発明による生産プロセスにより、変形高温合金製品の微小な粗大結晶粒が合格レベルに満たし、一般的高温合金の油圧や鍛造変形に適用するが、無方向性珪素鋼が焼きならしと同時に鍛造変形熱加工を行なえないため、無方向性珪素鋼の焼きならし処理プロセスに適用されない。
【0005】
中国特許CN1733946に「未臨界蒸気タービンのボルト鋼の微細結晶粒処理のプロセス方法」が掲載され、焼入れと焼き戻しの前にもう一回熱処理をすることを特徴とし、下記のステップがある。 第1ステップは、920℃±20℃まで材料を加熱し、0.5〜2時間保温し;第二ステップは、一時間100℃±20℃の冷却速度でゆっくりと750℃±30℃まで冷却し、0.5〜2時間保温し;第3ステップは、室温まで空冷する。しかし、この発明は20Cr1Mo1VNbTiB鋼の焼入れと焼き戻し処理の前にもう一回熱処理をすることで、熱処理の焼入れと焼き戻しの前に組織を均一化し、焼入れと焼き戻しをしてから全部が微細結晶粒組織の材料が得られるから20Cr1Mo1VNbTiB鋼の粗大結晶粒の欠陥を解決したが、無方向性珪素鋼の焼きならしによる粗大結晶粒の問題を解決できない。
【0006】
上記三つの方法は二つの考えにより粗大結晶粒の問題を解決した。一つは、二回の熱処理プロセスで結晶粒を微細化し、粗大結晶粒問題を改善する。もう一つは熱処理と同時に、臨界鍛造変形を行い、再結晶を抑制することで、微小な粗大結晶粒の問題を有効に解決する。
【0007】
しかし、上記三つの方法は焼きならしをされた無方向性珪素鋼製品に適用できない。主な原因は、無方向性珪素鋼製品は焼きならしと同時に熱変形の加工処理を行なえないことにあり、二回の熱処理で結晶粒の結晶粒サイズを微細化すると、コストが上昇する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明の概要
本発明は無方向性珪素鋼の表面の粗大結晶粒を改善する方法を提供することを目的とし、従来の客観的条件で、熱処理工程を追加せず、そして、並行の熱加工もすることなく、無方向性珪素鋼の表面の粗大結晶粒問題を解決し、製品の電磁性能を影響しない前提で、無方向性珪素鋼の表面の品質要求を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、
無方向性珪素鋼の表面粗大結晶粒の改善方法であって、
(1)製錬、キャスティングステップ:成分の重量比がC:0.001〜0.005%,Si:0.1%〜1.80%,Mn:0.10%〜0.80%,P≦0.04%,Al:0.20%〜0.80%,S≦0.005%,N≦0.005%であり、残りはFe及び避けられない不純物である無方向性珪素鋼になるよう、製錬とRH精錬処理を行い、液鋼をキャスティングし、成形させるステップと、
(2)熱間圧延し、鋼板を作るステップと、
(3)焼きならしステップ:焼きならし温度が800℃〜900℃で、焼きならし均熱時間が15S〜30Sで、焼きならし炉の酸素含有量が0.5%以下で、そして焼きならしされてから、鋼板の最大結晶粒と平均結晶粒のサイズの比が3以下であるように焼きならしを行なうステップと、
(4)酸洗い、冷間圧延、アニール、コーティングして無方向性珪素鋼製品を得るステップとを備える無方向性珪素鋼の表面粗大結晶粒の改善方法である。
【0010】
さらに、焼きならししてから鋼板の最大結晶粒と平均結晶粒のサイズの比が2以下であることが好ましい。
【0011】
本発明は無方向性珪素鋼製品の表面の粗大結晶粒問題に対し、鋼板に焼きならし処理を行い、焼きならし温度が800℃〜900℃で、焼きならし均熱時間が15S〜30Sの範囲に制御されている。焼きならしの温度が高すぎ、時間が長すぎると、結晶粒の組織が異常に成長し、冷間圧延とアニールしてから重大な粗大結晶粒問題が発生する。焼きならし温度が低すぎ、時間が短すぎると、熱間圧延の圧延変形組織は焼きならしで再結晶の効果を奏すことができなく、波紋状の欠陥が現れ、そして磁場強度が劣化してしまう。つまり、上記成分とプロセスによる無方向性珪素鋼は焼きならし処理で限界の焼きならし温度と時間区域があり、限界の焼きならし温度と時間区域から外れると、結晶粒は必ず異常に成長し、表面の粗大結晶粒の品質問題を起こす。
【0012】
焼きならししてからの最大結晶粒と平均結晶粒のサイズの比は3以下であるように制御されているが、焼きならしの結晶粒のサイズの比が大きすぎると、表面の粗大結晶粒問題が起こりやすいので、2以下が好ましい。
【0013】
焼きならし炉内の酸素含有量を0.5%以下に制御する。酸素の含有量が高すぎると、表面の酸化層が大きくなり、酸洗いが難しくなり、表面品質を影響してしまう。
【0014】
本発明のメリットとして、
1、本発明には二回の熱処理プロセスがなく、プロセスの操作が便利で、製造過程におけるエネルギーの消費が少ない。
【0015】
2、本発明は焼きならし処理により、無方向性珪素鋼の表面品質は明らかに改善され、無方向性珪素鋼の表面の粗大結晶粒問題を有効に解決した。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は比較例による完成品の表面粗大結晶粒の金属組織写真である。
【図2】図2は本発明の実施例による完成品の表面の金属組織写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な開示
図示と実施例と組み合わせ、本発明をより詳細な説明をする。
【0018】
本発明の実施例と比較例の化学成分は表1に示され、焼きならしプロセスは表2を参照する。液鋼を転炉、RH精錬とキャスティング成形してから、熱間圧延、焼きならし、酸洗い、冷間圧延、アニール、コーティングにより無方向性珪素鋼製品を得る。そのうち、鋼ビレットが熱間圧延することにより2.6mmの鋼帯になり、2.6mmの熱間圧延鋼帯が焼きならし処理により0.5mmの鋼帯になってから、最終的なアニールとコーティングをしてから冷間圧延電磁鋼板を得る。冷間圧延してからの最終アニールの板温が820℃であり、アニール時間は13〜15Sに制御されている。比較例と実施例による冷間圧延無方向性珪素鋼の表面金属組織は図1と図2に示される。
【0019】
【表1】

【0020】
【表2】

【0021】
表2と、図1及び図2から分かるように、実施例による鋼板の表面品質は明らかに比較例による鋼板の表面品質より優れ、完成品の表面粗大結晶粒の問題は完全に解決されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無方向性珪素鋼の表面粗大結晶粒の改善方法であって、
(1)製錬、キャスティングステップ:成分の重量比がC:0.001〜0.005%,Si:0.1%〜1.80%,Mn:0.10%〜0.80%,P≦0.04%,Al:0.20%〜0.80%,S≦0.005%,N≦0.005%であり、残りはFe及び避けられない不純物である無方向性珪素鋼になるよう、製錬とRH精錬処理を行い、液鋼をキャスティングし、成形させるステップと、
(2)熱間圧延し、鋼板を作るステップと、
(3)焼きならしステップ:焼きならし温度が800℃〜900℃で、焼きならし均熱時間が15S〜30Sで、焼きならし炉の酸素含有量が0.5%以下で、そして焼きならしされてから、鋼板の最大結晶粒と平均結晶粒のサイズの比が3以下であるように焼きならしを行なうステップと、
(4)酸洗い、冷間圧延、アニール、コーティングして無方向性珪素鋼製品を得るステップとを備える無方向性珪素鋼の表面粗大結晶粒の改善方法である。
【請求項2】
焼きならししてから鋼板の最大結晶粒と平均結晶粒のサイズの比は2以下であることを特徴とする、請求項1に記載の無方向性珪素鋼の表面粗大結晶粒の改善方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−517380(P2013−517380A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549246(P2012−549246)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【国際出願番号】PCT/CN2011/073358
【国際公開番号】WO2012/024939
【国際公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【出願人】(302022474)宝山鋼鉄股▲分▼有限公司 (17)
【Fターム(参考)】