説明

無機メソポーラス相および有機相を含む有機−無機ハイブリッド材料、膜および燃料電池

【課題】優れた性能を示しながら、導電性官能基を備えている場合、燃料電池のような電気化学的装置において使用することができる、メソポーラス材料を提供すること。
【解決手段】
2つの相:
−開放細孔性をもつ構造化メソポーラスネットワークを含む、第一の無機相;および
−有機ポリマーを含む、第二の有機相(前記有機相は、事実上、構造化メソポーラスネットワークの細孔の内部には存在しない)
を含む、有機−無機ハイブリッド材料。
この材料を含む膜および電極。
少なくとも1種のそのような膜および/または少なくとも1種のそのような電極を含む燃料電池。
前記ハイブリッド材料を調製する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メソポーラス無機相および有機相を含む有機−無機ハイブリッド材料に関する。
【0002】
本発明は、さらに、前記材料を含む膜および電極に関する。
【0003】
本発明は、その上に、少なくともそのような1種の膜および/または少なくともそのような1種の電極を含む燃料電池に関係する。
【0004】
最後に、本発明は、該有機−無機ハイブリッド材料を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0005】
一般的に言って、本発明の技術分野は、多孔質材料、より具体的にはメソポーラスと称される材料、の分野であると定義することができる。
【0006】
より具体的には、本発明は、PEMFC(高分子電解質膜燃料電池)タイプの材料のような、電気化学における(特に燃料電池における)使用を意図されたメソポーラス材料の分野の中に位置する。
【0007】
燃料電池の必須要素−たとえば、自動車分野および携帯電話分野で使われるそれら−の1つはイオン交換膜であることが知られている。
【0008】
これらの膜は、燃料電池の中心を構成し、従って、良好なプロトン導電性能および反応ガス(H/O)に対する低い透過性を示すことが求められる。これらの膜を作る固体高分子電解質を構成し、電池の数千時間もの動作に耐えることを要求される材料の性質は、加水分解と酸化に対する本質的に化学的な安定性と抵抗性、高熱水に対する抵抗性ならびにある種の機械的柔軟性である。
【0009】
過フッ化アイオノマー、特にNafion(登録商標)から調製される膜は、90℃以下の操作温度に対するこれらの必要条件を満足する。
【0010】
しかしながら、この温度は、そのような膜を含む燃料電池の自動車への組込みを可能にするには不十分である。これは、そのような組込みが電流/エネルギー変換収率、したがって燃料電池の効率を上げ、またラジエーターの体積を減らすことによって熱管理の制御を改善するという目的で、操作温度を100〜150℃の方へ上げることを前提とするからである。
【0011】
さらにまた、プロトン膜の導電効率は、媒体中の水の存在に強く関連している。100℃を超える温度で、水は膜から速やかに蒸発し、導電性は低下し、燃料透過性は上昇する。この温度では、この性能低下は、膜の劣化を伴う可能性がある。高温での、すなわち少なくとも100℃での、燃料電池における膜のドライアウトの問題を解決するために、最大限のメンテナンス、80〜100%相対湿度が必要であるが、それを外部の供給源によって実現することは困難である。
【0012】
他方、「その場での」吸湿性フィラーの挿入または成長がポリマー内での水の保持を促進し、このプロトン媒体(proton medium)の脱水過程を遅らせ、こうしてプロトンの導電性を確実にすることが知られている。この機能性フィラーは、その親水性のほかに、本来導電性を備えていて、こうして膜の性能を向上させる可能性がある。
【0013】
高温で燃料電池の膜の中の水の保持率を上げるために、多数の複合膜が、特に親水性無機ナノ粒子の発展によって、開発されてきた。これらの無機性ナノフィラーは、過フッ化スルホン化有機マトリックスの中で、あるいはまた、多芳香環化合物またはポリエーテルから成るマトリックスの中で、ゾル−ゲル法によって合成することができる。これらの膜は、現在、有機−無機ハイブリッド膜と呼ばれている。
【0014】
該無機性粒子は、
−導電性である。その場合、それらは、たとえば、タングストリン酸またはタングストケイ酸またはアンチモン酸のような、酸性タイプであるか、あるいは、リン酸ジルコニウムのような金属のリン酸塩またはホスホン酸塩タイプである(文献1〜7);
−金属およびメタロイド酸化物TiO、SiOなどのように非導電性であって、単純に親水性である(文献8〜19)。
【0015】
高温での水分管理を改善することの他に、燃料に関する膜の透過性の減少が、たとえばNafion(登録商標)タイプの従来の膜と比較して、これらの有機−無機ハイブリッド膜において示される。しかしながら、その熱的および化学的安定性は、それらが使用されたスルホン化有機高分子マトリックス中に内在しているので、限定されたままである。
【0016】
ロジエールらによって最近提出された研究(文献19)は、アミン基によるケイ酸塩ネットワークの機能化に関係しており、そのアミン基はイオン共有結合によって無機相と有機ポリマーの間の相互作用を向上させている。
【0017】
ポリ(イソシアノプロピル)シルセスキオキサン−有機ポリマー(PEG、PPO、PTMO)のコポリマー中への、またはグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)とテトラエトキシシランの共縮合物中への、それぞれ、ヘテロポリ酸の分散による連続的有機−無機ハイブリッドマトリックスの成長についての、ホンマら(文献20〜21)およびパークら(文献22)によって行なわれた研究は、熱的に安定な高分子鎖の使用についての新しい展望を開きつつある。
【0018】
無機ヘテロポリ酸は、その本質的導電性のために非常に魅力的であるけれども、低導電性または無導電性のポリマーへの高いフィラー濃度レベル(重量で30%〜70%)でのそれらの導入は、一般的に、それらの水への溶解度のせいで、電池の作動の間の随伴的、累進的浸出の問題を引き起こす。
【0019】
上述の複合材料または有機−無機ハイブリッド材料と平行して、最初は触媒作用があると想定されたメソポーラス材料、言い換えれば、事実上は二酸化ケイ素およびアルミノケイ酸塩が、ある電気化学者たちの注目をひき始めた。
【0020】
メソポーラスと称される材料は、その構造内に、通常、2〜80nmのサイズ(ミクロポアのそれとマクロポアのそれの中間)の細孔を持つ固体であることが思い出されるであろう。
【0021】
通常、メソポーラス材料は、該細孔が一般的に細孔のサイズにおいて非常に幅広い分布でランダムに分散している、非晶性または結晶性金属酸化物である。
【0022】
構造化したメソポーラス材料(「メソ構造化(mesostructured)」材料と称される)は、それ自体は、メソ細孔の組織化された空間レイアウトを示す構造化細孔ネットワークに相当する。この細孔の空間周期性は、X線散乱図における少なくとも1本の低角度ピークの出現によって特徴づけられる。このピークは、一般的に2ないし50nmの間にある反復距離と関係している。メソ構造は、透過型電子顕微鏡によって確認される。
【0023】
この文脈において、ゾルーゲル法は、これらの組織化されたメソポーラス構成物の生成において、特に界面活性剤の組織化された分子システム(OMS)の内部での、または、ブロックコポリマーの組織化された高分子システム(OPS)の内部での、無機重合反応によって、革新的方法を提供する。
【0024】
OMSタイプのテンプレート化剤の存在下で、この穏やかな化学はまた、無機および有機金属の前駆体から始まって、有機−無機ハイブリッド材料と称される、一種の有機−無機タイプのメソ構造化ネットワークを合成することを可能にする。これらのメソポーラス有機−無機ハイブリッド材料の性質は、有機および無機成分の化学的性質だけでなく、これらの2種の化学の間に出現しうる相乗効果にも依存する。
【0025】
これが、これらの材料がしばしば「多機能」材料と呼ばれる理由である。
【0026】
組織化の程度は、これらの2種の有機および無機化合物の性質によって、またこの配置の多重スケール割付によっても制御される。こうして、特異性を誘導することを可能にする化学官能基の、整ったメソポーラス構造への、「壁面」および細孔の両者への、組込みは、多様な用途(触媒反応、濾過、電気化学など)において大きな関心を呼ぶ(文献34)。
【0027】
コロマーら(文献23〜24)は、異なるサイズのシリカナノ粒子を共凝縮させることによって、または、コロイダルシリカの(pHで)制御された成長によって、非組織化メソポーラスシリカを調製した。彼らは、PEMFCのための酸性媒体中で、これらのシリカのプロトン導電性に対する、そのような細孔の影響を研究した。しかしながら、多孔性およびメソポーラスシリカの固化を生み出すのに必要である約500〜700℃での高熱処理がこの技術を純粋に無機のネットワークに限定する。
【0028】
対照的に、界面活性剤を用いることによって合成されるメソポーラスシリカの構造化は、高い熱処理を必要とせず、したがって、ネットワークの成長の間の有機機能化を可能にする(文献25)。さらに、これらの材料の構造は、しばしば明確に定められている。この組織化は、高い比表面積と関連して、親水ネットワークを通してのプロトンの導電を改善することにおいて重要な役割を果たす。
【0029】
ミナミら(文献26〜28)は、導電率および細孔率への細孔寸法および比表面積の影響を研究して、このタイプのシリカに硫黄またはリン酸を含浸させた。導電率に関して得られた性質は、非常に大きな関心を呼んでおり、2〜3×l0−1S/cmのオーダーである。
【0030】
さらに、細孔内にSOH(文献29〜31)またはP0(文献32)官能基をもつ、異なるメソ構造化有機−無機ハイブリッドシリカは、基本的に触媒用途のために開発されたにもかかわらず、燃料電池に対して興味ある可能性を提供する。カリアギンら(文献33)は、電気化学的分野で研究しているが、このタイプの化合物における導電率および水吸着量の測定を行なった。これらのシリカは、全体的に見て、際だった親水性を示し、導電率の測定値は、非最適化システムに関して興味あるものであり、80℃および100%相対湿度で10−2S/cmのオーダーである。
【0031】
OMSおよびOPSによって構築されたメソ構造化メソポーラスシリカのような、電気化学装置中のメソポーラス材料の可能な使用に関する、上記の最近の文献参照は、燃料電池における直接の応用を引き出すことができない。これは、それらの文献に記載され、言及されている材料を膜の形に変えることが不可能であるからである。
【0032】
(文献1) G.アルベルティ(Alberti)およびM.カショーラ(Casciola)「固体プロトンコンダクター、現在の主な用途および将来の展望」、ソリッド・ステート・アイオニクス(Solid State lonics)2001年、145巻、3〜16頁。
(文献2) B.ボネット(Bonnet)、D.J.ジョーンズ(Jones)、J. ロジエール(Roziere)、L.チカヤ(Tchicaya)、G.アルベルチ(Alberti)、M.カショーラ(Casciola)、L.マッシネッリ(Massinelli)、B.バウア(Bauer)、A.ペライオ(Peraio)およびE.ラムンニ(Ramunni)「中温燃料電池のためのハイブリッド有機−無機膜」、ジャーナル・オブ・ニュー・マテリアルズ・フォア・エレクトロケミカル・システムズ(Journal of New Materials for Electrochemical Systems)、2000年、3巻、87〜92頁。
(文献3) P.ジェノヴァ−ジミトロヴァ(Genova−Dimitrova)、B.バラディ(Baradie)、D.フォスカッロ(Foscallo)、C.ポアンシニョン(Poinsignon)およびJ.Y.サンチェス(Sanchez)「プロトン交換膜燃料電池(PEMFC)のためのアイオノマー膜:ホスファトアンチオン酸と会合したスルホン化ポリスルホン」、ジャーナル・オブ・メンブレン・サイエンス(Journal of Membrane Science)、2001年、185巻、59〜71頁。
(文献4) N.ミヤケ(Miyake)、J.S.ウエインライト(Wainright)およびR.F.サヴィネル(Savinell)、「プロトン電解質膜燃料電池用途のための、ゾル−ゲル誘導Nafion/シリカハイブリッド膜の評価−I.プロトン導電性と含水量」、ジャーナル・オブ・ジ・エレクトロケミカル・ソサイアティ(Journal of the Electrochemical Society)2001年、148巻、A898〜A904頁。
(文献5) C.ヤング(Yang)、S.スリンヴァサン(Srinivasan)、A. S.アリコ(Arico)、P.クレティ(Creti)、V.バグリオ(Baglio)およびV.アントヌッチ(Antonucci)、「高温での直接メタノール燃料電池作動のための組成物Nafion/リン酸ジルコニウム膜」、エレクトロケミカル・アンド・ソリッド−ステート・レターズ(Electrochemical & Solid−State Letters)2001年、4巻、A31〜A34頁。
(文献6) J. M.フェントン(Fenton), H.R.クンズ(Kunz)およびJ.−C.リン(Lin)、「燃料電池のためのイオン複合膜を使用する、改良膜電極集合体」、2002年、国際特許第0223646号明細書。
(文献7) O.J.マーフィ(Murphy)およびA.J.シザー(Cisar)、「電気化学装置のための使用に適した複合膜」、2000年、国際特許第00063995号明細書。
(文献8) K.T.アジェミアン(Adjemian)、S.J.リー(Lee)、S.スリニヴァサン(Srinivasan),J.ベンジガー(Benziger)およびA.B.ボカースリ(Bocarsly)「80〜140℃でのプロトン交換燃料電池作動のための酸化ケイ素Nafion複合膜」、ジャ−ナル・オブ・ジ・エレクトロケミカル・ソサイアティ(Journal of the Electrochemical Society)2002年、149巻、A256〜A261頁。
(文献9) B.バラディ(Baradie)、J.P.ドデレ(Dodelet)およびD.グエイ(Guay)、「高分子燃料電池に対する潜在的用途をもつハイブリッド・Nafion(R)−無機膜」、ジャーナル・オブ・エレクトロアナリティカル・ケミストリ(Journal of Electroanalytical Chemistry)2000年、489巻、101〜105頁。
(文献10) M.A.ハーマー(Harmer)、Q.スン(Sun)、A.J.ヴェガ(Vega)、W.E.ファーネス(Farneth)、A.ハイデカム(Heidekum)およびW.F.ヘルダーリッヒ(Hoelderich)「Nafion樹脂−シリカナノコンポジット固体酸触媒。ミクロ構造−処理工程−性状相互関係」、グリーン・ケミストリ(Green Chemistry)2000年、2巻、7〜14頁)。
(文献11) D.J.ジョーンズ(Jones)およびJ.ロジエーレ(Roziere)、「燃料電池用途のためのポリベンズイミダゾールおよびポリエーテルケトンの機能化における最近の進歩」、ジャーナル・オブ・メンブレン・サイエンス(Journal of Membrane Science)2001年、185巻、41〜58頁。
(文献12) K.A.マウリツ(Mauritz)およびJ.T.ペイン(Payne)「オルトケイ酸テトラエチルに対する、塩基触媒による現場ゾルーゲル法による[ペルフルオロスルホン酸塩イオノマー]/ケイ酸塩ハイブリッド膜」、ジャーナル・オブ・メンブレン・サイエンス(Journal of Membrane Science)2000年、168巻、39〜51頁。
(文献13) S.P.ヌーニシュ(Nunes)およびR.A.ゾウピ(Zoppi)「溶液からのゾル−ゲル反応によるペルフルオロスルホン酸アイオノマーと酸化ケイ素のハイブリッドの電気化学的インピーダンス研究」、ジャーナル・オブ・エレクトロアナリティカル・ケミストリ(Journal of Electroanalytical Chemistry)1998年、445巻、39〜45頁。
(文献14) E.ペレド(Peled)、T.ダヴデヴァニ(Duvdevani)、A.メルマン(Melman)およびA.アハロン(Aharon)「プロトン導電性膜をもつ燃料電池」、2001年、国際特許第0154216号明細書。
(文献15) P.スタイティ(Staiti)「シリカ−ポリベンズイミダゾールマトリックスに固定されたシリコタングステン酸から成るプロトン導電性膜」、ジャーナル・オブ・ニュー・マテリアルズ・フォア・エレクトロケミカル・システムズ(Journal of New Materials for Electrochemical Systems)、2001年4巻、181〜186頁。
(文献16) H.T.ワン(Wang)、B.A.ホルムバーグ(Holmberg)、L.M.ファン(Huang)、Z.B.ワン(Wang)、A.ミトラ(Mitra)、J.M.ノーベック(Norbeck)およびY.S.ヤン(Yan)「Nafion−二機能性シリカ複合性プロトン導電性膜」、ジャーナル・オブ・マテリアルズ・ケミストリ(Journal of Materials Chemistry)2002年、12巻、834〜837頁)。
(文献17) M.ワタナベ(Watanabe)およびP.ストンハート(Stonehart)「高分子固体−電解質組成物および該組成物を用いる電気化学電池」、1996年、米国特許第5523181号明細書。
(文献18) J.カーレス(Kerres)、G.シェーファー(Schafer)およびN.ニコロソ(Nicoloso)「300℃Cまでの範囲のためのプロトン導電性セラミック/高分子膜」、2002年、米国特許第02093008号明細書。
(文献19) J.ロジエール(Roziere)、D.ジョーンズ(Jones)、L.チカヤ ブカリ(Tchicaya Boukary)およびB.バウア(Bauer)「ハイブリッド材料、前記ハイブリッド材料の使用およびそれを作る方法」、2000年、国際特許第0205370号明細書。
(文献20) I.ホンマ(Honma)「高温プロトン導電性有機−無機複合膜およびその製造」、2000年、日本特許出願第090946号明細書。
(文献21) U.L.スタンガー(Stangar)、N.オロセリ(Groselj)、B.オレル(Orel)、A.シュミット(Schmitz)、P.コロンバン(Colomban)「ヘテロポリ酸を含むプロトン導電性ゾルゲルハイブリッド」、ソリッド・ステート・アイオニクス(Solid State Ionics)2001年、145巻、109〜118頁。
(文献22) Y.パーク(Park)およびN.ナガイ(Nagai)「3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、シリコタングステン酸およびα−リン酸ジルコニウム水和物をベースとしたプロトン交換ナノコンポジット膜」、ソリッド・ステート・アイオニクス(Solid State Ionics)2001年、145巻、149〜160頁。
(文献23) F.N.ヴィキ(Vichi)、M.T.コロマー(Colomer)およびM.A.アンダーソン(Anderson)「プロトン交換膜のための新規な電解質としてのナノポアセラミック膜」、エレクトロケミカル・アンド・ソリッド−ステート・レターズ(Electrochemjcal & Solid−State Letters)1999年、2巻、313〜316頁。
(文献24) M.T.コロマー(Colomer)およびM.A.アンダーソン(Anderson)「微粒子ゾル−ゲル法によって調製された高細孔度シリカキセロゲル:細孔構造およびプロトン導電性」、ジャーナル・オブ・ノンクリスタリン・ソリッズ(Journal of Non−Crystalline Solids)2001年、290巻、93〜104頁。
(文献25) A.サヤリ(Sayari)およびS.ハムーディ(Hamoudi)「周期的な、メソポーラスシリカをベースとした有機−無機ナノコンポジット材料」、ケミストリ・オブ・マテリアルズ、Chemistry of Materials 2001年、13巻、3151〜3168頁。
(文献26) A.マツダ(Natsuda)、Y.ノノ(Nono)、T.カンザキ(Kanzaki)、K.タダナガ(Tadanaga)、M.タツミサゴ(Tatsumisago)およびT.ミナミ(Minami)「テンプレートとして界面活性剤を使用して調製された酸含浸メソポーラスシリカゲルのプロトン導電性」、ソリッド・ステート・アイオニクス(Solid State Ionics)2001年、145巻、135〜140頁。
(文献27) S.ニシワキ(Nishiwaki)、K.タダナガ(Tadanaga)、N.タツミサゴ(Tatsumisago)およびT.ミナミ(Minami)「プロトン酸を含浸した、界面活性剤テンプレート化メソポーラスシリカゲルの調製およびプロトン導電性」、ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・セラミック・ソサエティ(Journal of the American Ceramic Society)2000年, 83巻、3004〜3008頁。
(文献28) A.マツダ(Matsuda)、T.カンザキ(Kanzaki)、K. タダナガ(Tadanaga)、T.コグレ(Kogure)、M.タツミサゴ(Tatsumisago)およびT.ミナミ(Minami)「硫酸を含浸させた、ゾル−ゲル導出多孔質シリカゲル−多孔構造および中温でのプロトン導電性」、ジャーナル・オブ・ジ・エレクトロケミカル・ソサエティ(Journal of the Electrochemical Society)2002年、149巻、E292〜E297頁。
(文献29) I.ディアス(Diaz)、C.マルケス−アルヴァレス(Marquez−Alvarez)、F.モヒノ(Mohino)、J.ペレス−パリエンテ(Perez−Pariente)およびE.サストレ(Sastre)「中性と陽イオン性界面活性剤の混合物を含む、よく整った、硫黄含有MCM−41触媒の新規合成法」、ミクロポーラス・アンド・メソポーラス・材料(Microporous & Mesoporous Materials)2001年、44巻、295〜302頁。
(文献30) D.マーゴリーズ(Margolese)、J.A.メレロ(Melero)、S.C.クリスチャンセン(Christiansen)、B.F.ケルカ(Chmelka)およびG.D.スタッキ(Stucky)「スルホン酸基を含む整ったSBA−15メソポーラスシリカの直接合成法」、ケミストリ・オブ・マテリアルズ(Chemistry of Materials)2000年、12巻、2448〜2459頁。
(文献31) N.H.リム(Lim)、C.F.ブランフォード(Blanford)およびA.スタイン(Stein)「有機硫黄の表面グループをもつ整った微孔性ケイ酸塩の合成およびその固体酸触媒としての応用」、ケミストリ・アンド・マテリアルズ(Chemistry of Materials)1998年、10巻、467−+。
(文献32) R.J.P.コッリユ(Corriu)、L.ダータス(Datas)、Y.グアリ(Guari)、A.メーディ(Mehdi)、C.ライ(Reye)およびC.チウリュ(Thieuleux)「直接的合成アプローチによって調製されるホスホン酸基を含む、整ったSBA−l5メソポーラスシリカ」、ケミカル・コミュニケーションズ(Chemical Communications)2001年、763〜764頁。
(文献33) S.ミハイレンコ(Mikhailenko)、D.デスプランチエ−ジスカール(Desplantier−Giscard)、C.ダヌマー(Danumah)およびS.カリアギン(Kaliaguine)「スルホン酸機能化メソ構造化多孔性シリカの固体電解質性質」、ミクロポーラス・アンド・マテリアルズ(Microporous & Mesoporous Materials)2002年、52巻、29〜37頁。
(文献34) GJD.ソラー−イリア(Soler−illia)、C.サンチェス(Sanchez)、B.レボ(Lebeau)、J.パターリン(Patarin)「織られた材料を設計する化学的手法:ミクロポーラスおよびメソポーラス酸化物からナノネットワークおよび段層構造まで」、ケミカル・レビューズ(Chemical Reviews)、102(11)巻、4093〜4138頁、2002年11月。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
膜の形、特に均質で柔軟な膜の形に変えられうるメソポーラス材料に対するニーズが存在する。
【0034】
熱的および化学的に安定であり、加水分解および酸化に抵抗するメソポーラス材料に対するニーズもまた存在する。
【0035】
それに続いて、さらに、高い導電率、特に高いイオン−望ましくはプロトン−導電率を備えており、たとえば100〜150℃の範囲で、高い操作温度を持つ、燃料電池のような、電気化学的装置において膜の形で使用することのできるこの種のメソポーラス材料に対するニーズが存在する。
【0036】
この材料は、そのような使用の状況において、たとえば過フッ化イオノマーに基づいた先行技術の膜と違って、膜ドライアウトを避けるために、高温においてでさえ、高レベルの保水性を可能にしなければならないし、膜の劣化のないことに関連して、高温で高い導電率および低い燃料透過性を所有しなければならない。
【0037】
本発明の目的は、上述したニーズの全てを満足するメソポーラス有機−無機ハイブリッド材料を提供することである。
【0038】
本発明の目的は、さらに、優れた性能を示しながら、先行技術材料の不都合、欠陥および弱点を示さず、そして、導電性官能基を備えている場合、燃料電池のような電気化学的装置において使用することができる、メソポーラス材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0039】
この目的、および他のさらなる目的は、2つの相:
−開放細孔性(open porosity)をもつ構造化されたメソポーラスネットワークを含む第一の無機相、および
−有機ポリマーを含む第二の有機相(前記有機相は、構造化メソポーラスネットワークの細孔の内部には本来存在しない)、
から成る有機−無機ハイブリッド材料によって、本発明により達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明による有機−無機ハイブリッド材料の特定の構造(それはメソポーラス無機相および有機相を含む)は、先行技術において全く記載されていなかった。そこでは機械的に構造化している有機ポリマーを含むマトリックスの中での、メソポーラス無機ネットワーク、特に導電性および/または親水性ネットワーク、の成長の例がない。
【0041】
特に、その高い比表面積およびその特定の構造によって、プロトン導電性膜の中での本発明によるメソポーラス有機−無機ハイブリッド材料の使用は、開放細孔の存在に依存する導電経路の連続性を促進する多数の可能性を提供する。「開放細孔性」によって、外に向かって開いており、導電性化学種に接近可能なままである、細孔から形成された細孔性が意味されている。
【0042】
本発明の材料の第一の態様によれば、無機相と有機相は連続的であり、混在している。
【0043】
第二の態様によれば、無機相は、連続的である有機相中に不連続であり、散在している。
【0044】
無機相は、その細孔の表面の上に導電性および/または親水性官能基を持つことができる。
【0045】
同様に、有機相は、導電性および/または親水性官能基を持つことができる。
【0046】
該材料は、任意に、さらに、少なくとも1種の界面活性剤から成る第三相を細孔の内部に含むことができる。
【0047】
この界面活性剤は、任意に、導電性および/または親水性機能を持つことができるが、それは、他の相の少なくとも1つが導電性および/または親水性官能基を持つ場合だけである。
【0048】
「導電性官能基」によって、一般的に、これらの官能基がイオン導電性、好ましくプロトン導電性を示すことが意味されている。
【0049】
導電性材料が要望されるならば、そして、その材料が3つの相(有機、無機、界面活性剤)を持つならば、無機相と有機相から選ばれた相のうちの少なくとも1つは導電性官能基を持たなければならない。また、3つの相のいずれか2つが導電性官能基を持つこと、または、3つの相が導電性官能基を持つことが可能である。
【0050】
一般的に言って、本発明による材料は、プロトン電導の連続ネットワークとして役立つ開放細孔性を持つ。メソポーラス骨格は、好ましくは吸湿性であり、そしてその細孔内に導電性機能をもち(問題の化合物は、たとえば、機能化された金属酸化物である)、こうしてプロトン輸送および水和を確実にする。有機高分子相は、支持体として役立ち、主に導電媒体の構造化を準備する。
【0051】
本当の相乗効果が、該二相の間で生み出され、それは、本発明による材料に、先行技術では決して達成されない、ユニークな組合せの物理的、電気的および機械的性質を付与する。
【0052】
導電性官能基は、陽イオン交換基および/または陰イオン交換基から選択することができる。
【0053】
陽イオン交換基は、たとえば、以下の基:−SOM、−PO、−COOMおよび−B(OM)−−ここで、Mは、水素、一価の金属カチオンまたはNRを示し、各Rは、個別に、水素、アルキル基またはアリール基を示す−−から選択される。
【0054】
陰イオン交換基は、たとえば以下の基:ピリジル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、化学式NRの基−−式中、Xは、たとえばF、Cl、Br、I、NO、SOHまたはOR(Rはアルキル基またはアリール基である)のようなアニオンを示し、各Rは、個別に、水素、アルキル基またはアリール基を示す−−、および、イミダゾール、ビニルイミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、カルバゾール、インドール、イソインドール、ジヒドロオキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、4,5−ジヒドロピラゾール、1,2,3−オキサジアゾール、フラザン、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、ピロール、アニリン、ピロリジンおよびピラゾールラジカルから選択される少なくとも1種のラジカルを含む塩基性芳香族または非芳香族ラジカル、から選択される。
【0055】
無機相は、一般的に、金属酸化物、メタロイド酸化物およびそれらの混合酸化物から選ばれる、少なくとも1種の酸化物から構成される。
【0056】
前記酸化物は、一般的に、ケイ素、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウム、タンタル、スズ、希土類元素、またはユウロピウム、セリウム、ランタンまたはガドリニウムのようなランタノイドの酸化物、ならびにそれらの混合酸化物から選択される。
【0057】
本発明による材料の無機相は、メソ構造化相であり、それは、より具体的には、メソポーラスネットワークが反復単位をもつ組織化された構造を示すことを意味する。
【0058】
たとえば、メソポーラスネットワークは、立方、六角形、ラメラ状、曲がりくねった形状(vermicular)、小泡状、または、共連続(bicontinuous)構造を示す可能性がある。
【0059】
メソポーラスネットワークの細孔のサイズは、一般的に1〜100nmであり、好ましくは1〜50nmである。
【0060】
有機相の有機ポリマーは、一般的に、ある個数の条件を満たさなければならない。とりわけ、前記ポリマーは、一般的に、熱的に安定でなければならない、「熱的に安定な」によって、それが熱の作用下でその性質を保持することが意味されている。
【0061】
該ポリマーは、一般的に、さらに、特に高温で、とりわけ燃料電池の操作温度で、加水分解および酸化に敏感であってはならず、数千時間この非感受性を維持しなければならない。
【0062】
さらに、一般的に、選択されるポリマーは
−アルコール性または水−アルコール性媒体、または他の水混和性溶媒に溶解しなければならない(なぜなら、液状媒体における任意の界面活性剤、メソポーラス相のテンプレート化剤、の組織化が水のような極性の非常に高い媒質で起こるからである)、
−メソポーラス無機相に十分な強さを与え、自立性膜を形成するために、可塑性でなければならない、すなわち、該ポリマーは(機械的に)構造化するポリマーと称される、
−このポリマーは、本質的に、メソ細孔性(mesoporosity)を作り出すことができるテンプレート化剤の役割を演じてはならない。
【0063】
該有機ポリマーは、一般的に、ポリエーテルケトン(PEK、PEEK、PEEKK)、ポリスルホン(PSU)、たとえばUdel(登録商標);ポリエーテルスルホン、たとえばVitrex(登録商標);ポリフェニルエーテルスルホン(PPSU)(たとえばRadel(登録商標));
スチレン/エチレン(SES)、スチレン/ブタジエン(SBS)およびスチレン/イソプレン(SIS)コポリマー、たとえばKraton(登録商標);ポリ(フェニレンスルフィド)およびポリ(フェニレンオキシド)のような、ポリフェニレン;ポリベンズイミダゾール(PBI)のようなポリイミダゾール;ポリイミド(PI);ポリアミドイミド(PAI);ポリアニリン;ポリピロール;ポリスルホンアミド;ポリベンゾピラゾールのようなポリイミダゾール;ポリベンズオキサゾールのようなポリオキサゾール;ポリ(テトラメチレンオキシド)およびポリ(ヘキサメチレンオキシド)のような、ポリエーテル;ポリ((メタ)アクリル酸);ポリアクリルアミド;ポリビニル、たとえば(ポリ(ビニルエステル)ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマート、ポリビニルプロピオネート、ポリビニルラウレート、ポリビニルパルミテート、ポリビニルステアレート、ポリビニルトリメチルアセテート、ポリビニルクロロアセテート、ポリビニルトリクロロアセテート、ポリビニルトリフルオロアセテート、ポリビニルベンゾエート、ポリビニルピバレートおよびポリビニルアルコール);ポリビニルブチラールのような、アセタール樹脂;ポリビニルピリジン;ポリビニルピロリドン;ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリイソブチレンのようなポリオレフィン;ポリ(スチレンオキシド);ポリテトラフッ化エチレン(PTFE)のような、フッ素樹脂およびポリパーフルオロカーボン、たとえばTeflon(登録商標);ポリ(ビニリデンフルオリド)(PVDF);ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE);ポリヘキサフルオロプロペン(HFP);パーフルオロアルコキシド(PFA);ポリホスファゼン;シリコーン弾性体;および、上記のポリマーから選ばれるポリマーからなる少なくとも1個のブロックを含むブロックコポリマー、から選択される。
【0064】
材料が、細孔の中に、界面活性剤を有する第三相を含むとき、後者は、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルホスフェート塩およびアルキルスルホン酸塩;ジベンゾイル酒石酸、マレイン酸または長鎖脂肪酸のような酸;尿素または長鎖アミンのような塩基;リン脂質;両親媒性が基質との相互作用によってその場で作られる二重親水性コポリマー;および、少なくとも1種の親水性ブロックと組み合わせた少なくとも1種の疎水性ブロックを含む両親媒性マルチブロックコポリマー、から選択される。これらのポリマーの中では、たとえば、PEO(ポリ(エチレンオキシド))およびPPO(ポリ(プロピレンオキシド))に基づくPluronics(登録商標)、(EO)(PO)(EO)タイプ、((EO)(PO)NCHCHN((EO)(PO)タイプ(Tetronic(登録商標))のコポリマー、化学種(class)C(EO)M(OH)(C=アリールおよび/またはアルキル鎖、EO=エチレンオキシド鎖)、たとえば、Brij(登録商標)、Triton(登録商標)またはIgepal(登録商標)、ならびに化学種(EO)−ソルビタン−C(Tween(登録商標))の名が挙げられる。
【0065】
有機相の有機ポリマーがオプションの界面活性高分子と決して混同されてはならないことを注意することは重要である。両方とも「ポリマー」と呼ばれるけれども、これらの化合物は、その構造とその効果の両者に関して異なる。有機相のポリマーは、(機械的に)「構造化する」と称されるポリマーであるが、一方、任意の界面活性ポリマーは、「テンプレート化する(templating)」、「テクスチャー化する(texturizing)」と称される。
【0066】
本発明は、さらに、先に述べたような材料を含む膜(任意に支持体の上に堆積された)に関する。「膜」によって、該材料が、たとえば、50nm〜数ミリメートル、好ましくは10〜500μmの厚さをもつ薄膜またはシートの形で存在することが意味されている。本発明はまた、先に述べたように、該材料を含む電極に関係する。
【0067】
本発明による、膜および/または電極の形をした材料の優れた性質が、それを、特に電気化学的装置、たとえば燃料電池における使用に特に適したものにする。
【0068】
したがって、本発明は、また、先に述べたように、少なくとも1種の膜および/または電極を含む燃料電池に関する。
【0069】
本発明は、同じく、先に述べた、有機−無機ハイブリッド材料を調製する方法に関係する。そこにおいて、以下のステップ:
a)溶媒中に、メソポーラス無機相を構成することを意図した無機前駆体Aの溶液が調製され、任意に、この溶液は加水分解され、熟成するにまかされる、
b)溶媒中に、構造化する界面活性剤D、すなわちメソポーラス無機相のためのテンプレート化・テクスチャー化剤の溶液が調製される、
c)溶媒中に、有機ポリマーEの溶液が調製される、
d)ステップa)、b)およびc)の終わりに、テンプレート化剤Dの溶液が有機ポリマーEの溶液に添加され、均質化が遂行され、ついで、無機前駆体Aの溶液が、界面活性剤Dと有機ポリマーEの溶液の得られた混合物に撹拌しながら添加される、そうでなければ、
前駆体Aの溶液が界面活性剤Dの溶液に添加され、均質化が遂行され、それから、有機ポリマーEの溶液が撹拌しながら添加される、そうでなければ、
前駆体Aの溶液が有機ポリマーEの溶液に添加され、均質化が遂行され、ついで界面活性剤Dの溶液が撹拌しながら添加される、
それによって、有機−無機ハイブリッド溶液が得られる、
そして、得られた有機−無機ハイブリッド溶液は、熟成するに任される、
e)有機−無機ハイブリッド溶液が支持体の上に堆積させられるか、または含浸させられる、
f)溶媒が、制御された圧力、温度および湿度条件の下で蒸発させられる、
g)堆積した、または含浸した材料を固化させるために、熱処理が行なわれる、
h)界面活性剤Dが、任意に、完全または部分的に除去される、
i)該支持体が、任意に、分離されるかまたは除去される、
が実行される。
【0070】
調製された材料が、特に、薄膜または層の形であるとき、そして、それが堆積するかまたは基質、たとえば平面的基質の上に含浸されるとき、該プロセスは膜を調製する方法であると定義されることは、注意されるべきである。
【0071】
本発明によるプロセスは、高分子有機マトリックス中で任意に機能化されたメソポーラス無機相の、「ゾル−ゲル」法による適当な成長を可能にする、特定の工程のユニークな系列を示す。
【0072】
該プロセスの条件は、1つの材料が得られること、ついでメソ細孔性の構築と結合して、均質で柔軟な膜が得られることを保証する。
【0073】
本発明によるプロセスによって、構造化する有機高分子媒体中でのメソポーラス相の成長は、特に界面活性の、テンプレート化・テクスチャー化剤の存在下で、完全に制御される。
【0074】
都合よくは、キレート化剤Bが、さらに無機前駆体Aの溶液に添加される。
【0075】
都合よくは、一方では導電性および/または親水性官能基、および/または導電性および/または親水性官能基の前駆体である官能基、ならびに、他方では、メソポーラスネットワークの細孔の表面に結合することができる官能基を持つ、化合物Cがさらに添加される。都合よくは、該プロセスは、さらに、材料の細孔の表面に導電性および/または親水性官能基を開放するか、または、作り出すための最終ステップの処理を含む。
【0076】
都合よくは、溶液Aは、数分〜数日、好ましくは1時間〜1週間の間、6℃〜300℃の温度、好ましくは20〜200℃で、100Pa〜5×10Pa、好ましく1000Pa〜2×l0Paの圧力で、熟成するに任される。
【0077】
都合よくは、ステップd)で得られた有機−無機ハイブリッド溶液は、数分〜数日間、好ましくは1時間〜1週間の間、0℃〜300℃の温度、好ましくは20〜200℃で、100Pa〜5×10Pa、好ましく1000Pa〜2×l0Paの圧力で、熟成するに任される。
【0078】
都合よくは、溶媒は、0〜300℃、好ましくは10〜160℃の温度で、0〜100%、好ましく20%〜95%の相対湿度(RH)で蒸発させられる。これらの蒸発条件は、特に、必要なメソ細孔性を持つ、均質で柔軟な膜を得ることを可能にする。
【0079】
ステップe)において、有機−無機ハイブリッド溶液は、たとえば、スピンコーティングとして知られている遠心コーティングによる堆積の方法、浸漬コーティングとして知られている含浸と引抜きによる堆積の方法、メニスカスコーティングとして知られているラミナーコーティングによる堆積の方法、「スプレーコーティング」として知られている吹付けによる堆積の方法、鋳造による堆積の方法、および蒸発による堆積の方法、から選択される方法によって、支持体の上に堆積されるか、または、含浸される。
【0080】
本発明は、あとに続く、そして、添付された図面を参照しながら、例証によって、かつ限定されることなく、与えられている説明を読むことで、よりよく理解される。
【0081】
以下の文は、本発明によって、高分子有機相およびメソポーラス無機相、さらに、任意に第三の界面活性剤相をも持つ、導電性有機−無機ハイブリッド材料を調製する方法を記述する。
【0082】
本プロセスは、以下のステップを含む。
1.高分子のゾル−ゲル溶液の調製
【0083】
1.a 無機成分Aをベースとした前駆体溶液の調製
合成は、無機メソポーラスネットワークの構造を構成することになる無機の前駆体の調製から始まる。
【0084】
通常、前駆体Aは、ケイ素、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウム、タンタル、スズ、ユウロピウム、セリウム、ランタンおよびガドリニウムのような、メタロイド塩または遷移金属塩またはランタノイド塩、あるいはこれらの金属の種々の金属アルコキシドから選択される。
【0085】
この前駆体は、液状媒体で希釈される。溶媒または溶媒混合物の選択品は、続いて使用されるポリマーの混和媒体の機能に応じて選ばれる。通常、溶媒は、水と混和するか、または部分的に混和する、アルコール、エーテルおよびケトンから選択される。
【0086】
この溶液は、所定の時間(金属前駆体の選択物に依存して、数分ないし数時間にわたる)で(酸性または塩基性触媒媒体中で)加水分解されることもあり、されないこともある。ジルコニウムまたはチタンをベースとした前駆体のような、高い反応性の金属的な前駆体の場合に特に、アセチルアセトンのようなキレート化剤B、酢酸またはホスホン酸エステルが、無機ネットワークの加水分解/縮合を制御するために導入される。
【0087】
この前駆体またはこれらの金属性前駆体のこの混合物に、ヒドロキシル官能基またはアルコキシドタイプ加水分解性官能基および非加水分解性またはグラフトされた官能基を含む有機金属化合物のモル量Cが、同一形式の純粋に金属性化合物と同一時間にわたって添加される。この化合物Cは、たとえば、化学式RM´OR(n−(x+y))(式中、M´は、第IV族からの一元素(たとえば、Siを示す)に、あるいは、化学式ZRZRM″OR(n−(x+y))[ここで、M″は、Ti、Zr、Ta、Al、Sn、Eu、Ce、LaまたはGdのような、p金属、遷移金属またはランタノイドであり、nは金属の価数であり、Zは一座配位タイプ(たとえばアセテート、ホスホン酸エステルまたはリン酸塩基)、あるいは二座タイプ官能基(たとえばβ−ジケトンおよびその誘導体)、ならびにα−またはβ−ヒドロキシ酸であり、R、RおよびRは、H、アルキルまたはアリールタイプの有機置換基である]に相当する。特にRに関しては、これらの置換基は、陽イオン交換基(たとえば、−SOM、−PO、−COOM、または、−B(OM)、式中、MはH、一価のメタルカチオンまたはNを示し、各Rは、個別に、H、アルキルまたはアリールを示す)あるいは、カチオン交換基の前駆体(SOX、COXまたはPO、X=F、Cl、Br、I、または、OR′(R′=アルキルまたはアリール));あるいは、陰イオン交換基(たとえばNR、ここでXは、たとえば、F、Cl、Br、I、NO、SOHまたはORのようなアニオンを示し、Rは、アルキル基またはアリール基芳香属炭化水素基を示し、各Rは、個別に、H、アルキル、アリール、ピリジニウム、イミダゾリニウム、ピラゾリウムまたはスルホニウムを示す)を含むことができる。先に上で挙げたリストを参照することもまた可能である。
【0088】
1.b テンプレート化・テクスチャー化剤Dに基づいた前駆体溶液の調製
テンプレート化剤の選択は、望ましいメソ構造−−たとえば、立方形、六角形、ラメラ状、小泡状、または、曲がりくねった形状−−に、細孔の大きさおよびこのメソ構造の壁に、および本発明の他の化合物、すなわちポリマーおよび無機前駆体との可溶性に、依存する。一般に、細孔の大きさが数ナノメートル(たとえば1.6〜10nm)に、壁の大きさが約1nmに限られている、メソポーラス構造体を構築するために、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルホスフェート塩類およびアルキルスルホン酸塩のようなイオンタイプの、またはジベンゾイル酒石酸、マレイン酸または長鎖脂肪酸のような酸の、あるいは、尿素および長鎖アミンのような塩基の、テンプレート化剤を含む界面活性剤の使用がなされる。より大きな細孔寸法(最高50nm)をもつメソポーラス相を調製するために、リン脂質、両親水性のコポリマー(その両親媒性は、基質との相互作用によってその場で生成する)、あるいは少なくとも1個の親水性ブロックとの組合せにおいて少なくとも1個の疎水性ブロックを含む両親媒性マルチブロックコポリマー、通常、それらの例は、たとえば、(EO)−(PO)−(EO)タイプのPEO(ポリエチレンオキシド)およびPPO(ポリ(プロピレンオキシド))に基づいたPluronics(登録商標)、((EO)−(PO))−NCHCHN−((EO)−(PO)タイプのコポリマー(Tetronic(登録商標))、化学種C(EO)(OH)(C =アリールおよび/またはアルキル鎖、EO=エチレンオキシド鎖)、たとえばBrij(登録商標)、Triton(登録商標)、TergitolまたはIgepal(登録商標)、ならびに化学種(EO)−ソルビタン−C(Tween(登録商標))、である。これらのいろいろなブロックはまた、アクリル性のもの、PMAc(ポリ(メタアクリル酸))またはPAAc(ポリ(アクリル酸))、芳香族PS(ポリスチレン)、ビニル性PQVP(ポリビニルピリジン)、PVP(ポリビニルピロリドン)、PVEE(ポリビニルエーテル)、あるいは他のPDMS(ポリシロキサン)種であることが可能であった。これらの種々のブロックは、カチオン交換タイプの導電性基:−SOM、−PO、−COOM、または、−B(OM)(M=H、一価の金属カチオン、アンモニウムまたはN、R’=アルキルまたはアリール);あるいは、陽イオン交換基の前駆体:SOX、COXまたはPO(X=F、Cl、Br、I、またはOR’(R’=アルキルまたはアリール);または、NR(ここで、Xは、たとえば、F、Cl、Br、I、NO、SOHまたはOR(Rはアルキル基またはアリール基)のような陰イオンを示し、各Rは、個別に、H、アルキル、アリール、ピリジニウム、イミダゾリニウム、ピラゾリウムまたはスルホニウムを示す)のような陰イオン交換体によって機能化させられる。先に上で挙げたリストを参照することもまた可能である。たとえば、PSS(ポリ(スチレンスルホン)酸)の言及がなされている。選択された構造指令剤(structure−directing agent)Dは、水性−アルコール性媒体、または、ポリマーと金属前駆体を希釈するために使用される媒体と相溶性の水性ベースの溶媒混合物中に溶解され、希釈される。
【0089】
1.c 有機ポリマーEをベースとした前駆体溶液の製法
有機ポリマーEが、その熱安定性のために選択されて、水と混和するか、または部分的に混和する、アルコール、エーテルまたはケトンタイプの一溶媒または溶媒の混合物で希釈されるか、膨潤させられる。通常、このポリマーは、上ですでに記載されたポリマーから選択される。
【0090】
これらの種々のポリマーは、陽イオン交換基:−SOM、−PO、−COOM、または、−B(OM)(M=H、一価の金属陽イオンまたはN(R=H、アルキルまたはアリール);あるいは、前駆体:SOX、COXまたはPO(X=F、Cl、Br、IまたはOR’(R’=アルキルまたはアリール))を含むことができる。他のモデルでは、該種々のポリマーは、先に上ですでに明記した陰イオン交換基:すなわち、NR(ここで、Xは、たとえば、F、Cl、Br、I、NO、SOH、または、OR(Rはアルキル基またはアリール基)、そして、各Rは、個別に、H、アルキル、アリール、ピリジニウム、イミダゾリニウム、ピラゾリウムまたはスルホニウムを示す)を含むことができる。先に上で挙げたリストを参照することもまた可能であろう。
【0091】
1.d 界面活性剤を含有する有機−無機ハイブリッド溶液Fの調製
界面活性剤をベースとした前駆体溶液Dが、周辺温度で高分子の溶液Eに添加される。媒体の均質化に続いて、Cのモル分率X(0≦X≦0.4)を含む、無機成分Aをベースとした前駆体溶液が、周辺温度で滴々反応媒体に添加される。周辺温度から還流までの制御された温度での撹拌が数時間続行される。この有機−無機ハイブリッド溶液の熟成は、ポリマーおよび無機ネットワークの選択に依存して、数日間に亘ることがある。調製物の組成は、[A(1−x)−C]−D−E−(HO)(ここで、Y=モル(D)/モル[A(1−X)−C]+モル(D)かつ0≦Y≦0.2、そして、Z=g(E)/[g(MO)+g(E)]かつ0≦Z≦0.9)である。
【0092】
2.高分子性ゾル−ゲル膜の調製
該膜は、有機−無機ハイブリッド溶液の鋳造および制御された圧力、温度および湿気(15℃<T<80℃)の下での蒸発によって作られる。この蒸発条件は、液状媒体中での界面活性剤の構成、メソポーラスネットワークの最終的な形成および2つの共連続的(cocontinuous)ネットワークの相互浸透にとって非常に重要である。得られた膜は、ついで、固化を達成するために、ポリマーの性質に依存して、50℃〜300℃の範囲で熱処理される。膜のメソ細孔中に存在する界面活性剤は、たとえば、酸性の水−アルコール性媒体で洗浄することのような、穏やかな技法によって取り除くことができる。無機のネットワークに結合した導電性官能基を開放するかまたは生み出すポスト反応が遂行されうる。通常、この型のポスト反応は:
−スルホン酸SOH中での過酸化水素によるメルカプタン基(−SH)の酸化、または、
−直接の、または中間体(MeSiO)(O)P−の生成を経由しての、HClによるジアルキルホスホネート基(RO)(O)P−の加水分解(続いて、MeOHによる加水分解が起こり、ホスホン酸−POが形成される)、
である。
【0093】
このポスト反応は、膜と金属有機アルコキシドとの無機ネットワークの表面ヒドロキシルM−OHのグラフト反応にも相当する。これらのケースの全てにおいて、膜は液状媒体中に置かれ、それが膨潤して、反応性分子実体が膜の細孔内に拡散することを可能にする。
【0094】
電池の作動の間の、膜内でのあらゆる副作用を避けるために、プロトン導電性膜は、種々の酸化性、酸性(または塩基性)および水性洗浄液によって洗浄され、それが、移動可能な有機、有機金属、または、無機の化合物の全てが除去されることを可能にする。
【0095】
本発明によるプロセスにおいては、構造化する有機高分子媒体中でのメソポーラス相の成長は、テンプレート化界面活性剤の存在下で顕著に制御される。この制御は、特に、水と混和するかまたは部分的に混和する、たとえばアルコール、エーテルおよびケトンのような溶媒、前駆体および先に上で詳述した操作条件の適切な選択に関連している。
【0096】
該膜は、また、液体堆積技術、すなわち、遠心コーティング(スピンコーティング)、含浸/引抜き(ディップコーティング)、またはラミナーコーティング(メニスカスコーティング)を用いる、自己支持形フィルムの形で調製される。この形成された膜は、続いて、水のような溶媒の中での膨潤によってその支持体から分離される。
【0097】
スプレーコーティングとして知られている吹付けテクニックは、また、有機−無機ハイブリッド溶液からエアゾールを作り、特に、電池を作るための集成体上での電極−膜適合性を高めるために、電極の含浸を遂行するのに使用することができる。
【0098】
本発明は、今、以下の実施例への参照によって説明されるが、それは、例証のために挙げられていて、限定のために挙げられていない。
【実施例】
【0099】
実施例1
Nafion(登録商標)とシリカをベースとしたハイブリッド膜
エタノール中で、有機金属シリカ前駆体(テトラエトキシシラン(TEOS))、界面活性剤、タイプEO20−PO70−EO20(Pluronic(登録商標)P123)のトリブロックコポリマーに基づいて、1つの溶液を調製する。デュポン(DuPont)社によって販売されている、20%溶液の、Nafion(登録商標)ポリマーもエタノールで希釈し、ついで、この2つの溶液を混合する。ハイブリッド溶液の均質化および12時間の熟成の後、該溶液をペトリ皿の中で30℃で蒸発させ、150μmの均質で柔軟な膜を形成させる。
【0100】
シリカ/高分子重量比は、この配合物において種々変えることができる。
【0101】
表1は、調製された種々の配合物を示す。
【0102】
【表1】

【0103】
試料NAFION−SiO−(AおよびB)に対して生成した膜は、柔軟で自己支持形フィルムの形であるが、一方、NAFION−SiO−Cに対する50%フィラー含量は、堅さをかなり上げる。
【0104】
図1は、試料NAFION−SiO−A(下の曲線)、NAFION−SiO−B(上の曲線)およびNAFION−SiO−C(中間の曲線)の小角X線散乱による分析を提示する。
【0105】
NAFION−SiO−BおよびNAFION−SiO−C試料では、散在するピーク(「アイオノマーピーク」と呼ばれる)が3.8nmに集中して、Nafion(登録商標)に関連した組織化が認められ、そして、9nmのピークによって特徴づけられるメソポーラス組織化が確認される。使用した界面活性剤(Pluronic(登録商標)P123)は、細孔のサイズが9nmに近いミセルを形成するという特徴をもつ。NAFION−SiO−A試料は、Nafion(登録商標)に関連する組織化だけを示す。
【0106】
我々のケースでは、ケイ酸含量が小さすぎて、X線散乱における観測可能なメソ組織化を引き起こすことできない。
【0107】
図2A〜2Dは、走査電子顕微鏡検査法によって分析した、膜NAFION−SiO−AおよびNAFION−SiO−Cの断面のモルフォロジを示す。
【0108】
図2Aと2Bは、それぞれ、20μmと2μmのスケールをもつ、膜SiO/Nafion(10%)/界面活性剤(P123)の断面の顕微鏡写真であり、図2Cと2Dは、それぞれ10μmおよび200nmスケールをもつ、膜SiO/Nafion(50%)/界面活性剤(P123)の断面の顕微鏡写真である。
【0109】
これらの膜は、ケイ酸塩ネットワークがポリマーに埋め込まれていて、透明かつ非常に均質である。
【0110】
これらの膜は、90℃で8時間熱処理をした。界面活性剤を取り除き、酸性点の全てを活性化させるために、膜の上で酸性の酸化反応的化学処理を行なった。
【0111】
図3は、化学的に処理(上の曲線)した、または無処理(下の曲線、黒い)の、試料NAFION−SiO−A(SiO/Nafion(10%))の小角X線散乱による分析を示す。
【0112】
化学処理の後、メソポーラス組織に関連する散乱ピークが9nmに現れ、そのことは、界面活性剤を取り除くことによってケイ酸塩ネットワークの細孔が開放されたことを示している。
【0113】
10%のケイ酸含量で、前に上で挙げた調製に従って、界面活性剤なしの高分子−TEOS溶液を調製した。NAFION−SiO−X膜が同じようにして作成される。
【0114】
表2は、これらの2種の膜のイオン導電率値を示す。
【0115】
【表2】

【0116】
導電率データが界面活性剤に基づいて造られた膜に有利である形で、2種の膜の間で興味ある差異が観測される。
【0117】
実施例2
ポリビニルブチラールPVBuとシリカをベースとしたハイブリッド膜
【0118】
テトラヒドロフラン THF中で、シリカ前駆体(テトラエトキシシラン TEOS)、有機ケイ素前駆体(Ormosil(登録商標))と界面活性剤をベースとして、溶液を調製する。塩酸の水溶液を用いて予備加水分解を行う。高分子PVBuをもテトラヒドロフラン中で希釈し、ついで、この2つの溶液を混合する。均質化と12時間のハイブリッド溶液の熟成に続いて、該溶液をペトリ皿に入れ30℃で蒸発させると、150μmの均質で柔軟な膜が形成される。
【0119】
この調製において2個のパラメータが変えられている:
1)シリカ/高分子重量比
2)Ormosil(登録商標)によるシリカの機能化およびOrmosil(登録商標)の性状
3)界面活性剤の性状。
【0120】
表3は、調製された種々の配合物を示す。
【0121】
【表3】

【0122】
全ての場合におけるこれらの種々の配合物により、試料PVBu−SiO−(AおよびC〜E)に対して、適度な柔軟性の、自己支持形の、透明の膜が得られる。他の試料(B、DおよびF)は、半透明で非常に堅い膜を提供する。
1) 膜中のシリカ/高分子重量比の研究:
【0123】
PVBu−SiO−AおよびPVBu−SiO−B膜のモルフォロジを走査電子顕微鏡検査法によって観測した。その写真を図4Aおよび4Bに示す。
【0124】
図4A:膜PVBu−SiO−Aの断面の顕微鏡写真(10μmスケール)。
【0125】
図4B:膜PVEu−SiO−Bの断面の顕微鏡写真(20μmスケール)。
【0126】
比較的小さな球状の混在物(inclusion)(1〜4μm)が、試料PVBu−SiO−A中に観測され、多分散サイズの、不均質の球状の混在物が、高い、50%ケイ酸含量による偏析層をもつ試料PVBu−SiO−B(1〜20μm)中に分散しているのが観測される。
【0127】
図5は、これらの膜の小角散乱図を提示する。下の(淡色の)曲線は、PVBu−SiO−B:50%に対する図であり、上の(暗色の)曲線は、PVBu−SiO−A:10%に対する図である。
【0128】
これらの図は、この2つの場合においてメソポーラス組織化を示し、PVBu−SiO−Bの場合には六角円筒形のタイプのメソ構造をもっている。その際、該細孔のサイズは、約4nmである。
【0129】
図6A〜6Cは、膜PVBu−SiO−A(10%ケイ酸含量に相当する)の透過型電子顕微鏡写真を提示する。図6A、6B、および6Cは、それぞれ、2μm、50nmおよび20nmのスケールをもつ。
【0130】
1つの球状小片の拡大は、ケイ酸塩ビーズの中に非常にはっきりしたメソ構造の存在を示す。この結果は、X線散乱のメソ構造を確証する:該構造は、約4nmの面間間隔で、六角円筒形である。
2)Ormosil(登録商標)によるシリカの機能化およびOrmosil(登録商標)の性質
【0131】
膜PVBu−SiO−DおよびPVBu−SiO−Eのモルフォロジを走査型電子顕微鏡検査法によって観測し、その写真を図7Aおよび7Bに提示する。
【0132】
図7A:膜PVBu−SiO−D(10μmスケール)の断面の顕微鏡写真。
【0133】
図7B:膜PVBu−SiO−E(3μmスケール)の断面の顕微鏡写真。
【0134】
比較的小さな球状包含物(1μm)が該2試料において観測される。これらの包含物は単分散であり、均一に分布している。シリカの機能化が膜のマイクロスケール組織化を導き、シリカ/高分子適合性を向上させる。
【0135】
図8は、膜PVBu−SiO−Fのそれと比較して、これらの2種の膜の小角散乱図を提示する。
【0136】
上の図は、膜PVBu−SiO−Fに対するそれであり、中間の図は、膜PVBu−SiO−D:−Phに対するそれであり、下の図は膜PVBu−SiO−E:−P(O)(OEt)に対するそれである。
【0137】
図は、ほぼ明確なメソ構造をもつメソポーラス組織化を示す。試料PVBu−SiO−Fの場合(その膜は堅く半透明に見え、ケイ酸塩の分布における不均質性を示唆する)、2種の組織化が共存するように見える。
3)界面活性剤の性質
【0138】
膜PVBu−SiO−Cのモルフォロジを走査電子顕微鏡検査法によって観測し、PVBu−SiO−Bと比較する。写真は、図9Aおよび9Bに示されている。
【0139】
図9A:膜PVBu−SiO−B(20μmスケール)の断面の顕微鏡写真である。
【0140】
図9B:膜PVBu−SiO−C(3μmスケール)の断面の顕微鏡写真である。
【0141】
非イオン性界面活性剤:PVBu−SiO−Cが使われるとき、膜に均一に分散している比較的小さな球状の包含物(1μm)が観察される。この種の界面活性剤の使用は、膜のマイクロスケール組織化を導き、界面活性剤/シリカ/高分子の適合性を強化する。
【0142】
図10は、これらの2種の膜の小角散乱図を提示する。下の図は、膜PVBu−SiO−B:CTABに対する図(暗色プリント)であり、上の図は、膜PVBu−SiO−C:Brij(登録商標)30に対する図(淡色プリント)である。
【0143】
この散乱図は、PVBu−SiO−Bの場合、比較的精細なメソ構造をもつメソポーラス組織化を示す。しかし、この場合、ケイ酸塩の相分離は明瞭であって、イオン性表面の性格が与えられている。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】実施例1で調製されたNAFION(登録商標)/SiO試料A、BおよびCの小角X線散乱による分析の概略を示す図である。縦軸にカウント数が、横軸にd(nm)が、プロットされている。曲線は、上から下へ、それぞれ、SiO/NAFION(20%)、SiO/NAFION(50%)、およびSiO/NAFION(10%)の試料に相当する。
【図2A.2B.2C.2D】Nafion−SiO−AおよびNafion−SiO−C膜(実施例1)の断面のモルフォロジを示す走査型電子顕微鏡写真である。SiO/Nafion(登録商標)(l0%)/界面活性剤P123の膜(それぞれ、20μm(2A)および2μm(2B)のスケールをもつ)の場合を示す。SiO/Nafion(登録商標)(50%)/界面活性剤P123の膜(それぞれ、10μm(2C)および200nm(2D)のスケールをもつ)の場合を示す。
【図3】NAFION(登録商標)/SiO試料Aおよび化学的に処理された同一試料(実施例1)の小角X線散乱による分析の概略を示すグラフである。縦軸にカウント数、横軸にd(nm)がプロットされている。曲線は、上から下へ、それぞれ、処理したSiO/Nafion(10%)の試料に対する、および、無処理のSiO/Nafion(10%)の試料に対する、概略図である。
【図4A.4B】走査型電子顕微鏡によって得られた顕微鏡写真を示す。それぞれ、PVBu−SiO−A、スケール10μm(4A)およびPVBu−SiO−B、スケール20μm(4B)膜(実施例2で調製された)の断面のモルフォロジを示す。
【図5】PVBu−SiO−B(50%)の試料、およびPVBu−SiO−A(10%)の試料(両者とも実施例2で調製された)の小角X線散乱による分析を示すグラフである。縦軸にカウント数、横軸にd(nm)がプロットされている。曲線(線図)は、下から上へ、PVBu−SiOB(50%)の試料(淡色プロット);およびPVBu−SiO−A(10%)の試料(暗色プロット)に対する略図を示す。
【図6A.6B.6C】10%のケイ酸含量を持つPVBu−SiO−A膜の透過型電子顕微鏡写真である。図6A、6B、および6Cは、それぞれ、2μm、50nmおよび20nmのスケールを持つ。
【図7A.7B】走査電子顕微鏡によって得られた顕微鏡写真を示し、それは、10μmスケールをもつPVBu−SiO−D(7A)および3μmのスケールをもつPVBu−SiO−E(7B)の断面のモルフォロジを示す。
【図8】試料PVBu−SiO−E:−SH;PVBu−SiO−D:−Ph;、および、PVBu−SiO−F:−P(O)(OET)の小角X線散乱分析の結果を示すグラフである。縦軸にカウント数、横軸にd(nm)がプロットされている。該断面は、上から下へ、試料PVBu−SiO−F;PVBu−SiO−DおよびPVBu−SiO−E(実施例2)に対する図に相当する。
【図9A.9B】走査電子顕微鏡検査法によって遂行された顕微鏡写真を示す。それは、膜、20μmのスケールをもつPVBu−SiO−B(9A)および3μmのスケールをもつPVBu−SiO−C(9B)の断面のモルフォロジを示す。
【図10】試料PVBu−SiO−BおよびPVBu−SiO−C(実施例2)の小角X線散乱による分析の図を示すグラフである。縦軸にカウント数、横軸にd(nm)がプロットされている。曲線は、上から下へ、それぞれ、試料PVBu−SiO−B:CTABおよび試料PVBu−SiO−C:Brij(登録商標)30に相当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの相:
・開放細孔性(open porosity)の構造化メソポーラスネットワークを含む第一の無機相、および
・有機ポリマーを含む第二の有機相(前記有機相は構造化メソポーラスネットワークの細孔の内部には実質的に存在しない)、
を含む有機−無機ハイブリッド材料。
【請求項2】
細孔内に、少なくとも1種の界面活性剤を有する第三の相を更に含む、請求項1の材料。
【請求項3】
該無機相および該有機相が連続的でありかつ混在する、請求項1の材料。
【請求項4】
該無機相が、連続する有機相内で不連続でありかつ散在する、請求項1の材料。
【請求項5】
該無機相がその細孔の表面に導電性および/または親水性官能基を持つ、先行請求項のいずれか1項の材料。
【請求項6】
該有機相が導電性および/または親水性官能基を持つ、先行請求項のいずれか1項の材料。
【請求項7】
少なくとも1種の界面活性剤を有する第三相が導電性および/または親水性官能基を持つ、請求項5と6のいずれか1項の材料。
【請求項8】
前記導電性官能基が陽イオン交換基から選択される、請求項5または6の材料。
【請求項9】
前記陽イオン交換基が以下のグループ:SOM、−PO、−COOMおよびB(OM)(ここで、Mは、水素、一価の金属カチオンまたはNR(各Rは、個別に、水素、アルキル基またはアリール基を示す)を示す)から選択される、請求項8の材料。
【請求項10】
前記導電性官能基が陰イオン交換基から選択される、請求項5〜7のいずれか1項の材料。
【請求項11】
前記陰イオン交換基が以下の基:ピリジル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、化学式NRの基(式中、Xは、たとえばF、Cl、Br、I、NO、SOHまたはOR(Rはアルキル基またはアリール基)のような陰イオンを示し、各Rは、個別に、水素、アルキル基またはアリール基を示す)、;ならびに、イミダゾール、ビニルイミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、カルバゾール、インドール、イソインドール、ジヒドロオキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、4,5−ジヒドロピラゾール、1,2,3−オキサジアゾール、フラザン、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、ピロール、アニリン、ピロリジンおよびピラゾール基から選択される少なくとも1種の基を含む塩基性の芳香族または非芳香族基、から選択される、請求項10の材料。
【請求項12】
無機相が金属酸化物、メタロイド酸化物およびそれらの混合酸化物から選択される少なくとも1種の酸化物を有する、先行請求項のいずれか1項の材料。
【請求項13】
前記酸化物がケイ素、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウム、タンタル、スズ、希土類(たとえば、ユウロピウム、セリウム、ランタンおよびガドリニウム)の酸化物およびそれらの混合酸化物から選択される、請求項12の材料。
【請求項14】
メソポーラスネットワークが反復単位のある組織化構造を持つ、先行請求項のいずれか1項の材料。
【請求項15】
メソポーラスネットワークが立方体、六角形、ラメラ状、曲がりくねった形状(vermicular)、小泡状、または、共連続的(bicontinuous)構造を持つ、請求項14の材料。
【請求項16】
細孔のサイズが1〜100nm、好ましくは1〜50nmである、先行請求項のいずれか1項の材料。
【請求項17】
有機ポリマーが熱的に安定な高分子である、先行請求項のいずれか1項の材料。
【請求項18】
有機ポリマーがポリエーテルケトン(PEK、PEEK、PEEKK);ポリスルホン(PSU);ポリエーテルスルホン;ポリフェニルエーテルスルホン(PPSU);スチレン/エチレン(SES)、スチレン/ブタジエン(SBS)およびスチレン/イソプレン(SIS)コポリマー;ポリ(フェニレンスルフィド)およびポリ(フェニレンオキシド)のようなポリフェニレン;ポリベンズイミダゾール(PBI)のようなポリイミダゾール;ポリイミド(PI);ポリアミドイミド(PAI);ポリアニリン;ポリピロール;ポリスルホンアミド;ポリベンゾピラゾールのようなポリピラゾール;ポリベンズオキサゾールのようなポリオキサゾール;ポリ(テトラメチレンオキシド)およびポリ(ヘキサメチレンオキシド)のようなポリエーテル;ポリメタクリル酸;ポリアクリルアミド;ポリ(ビニルエステル)のようなポリビニル、たとえばポリビニルアセテート、ポリビニルホルメート、ポリビニルプロピオネート、ポリビニルラウレート、ポリビニルパルミテート、ポリビニルステアレート、ポリビニルトリメチルアセテート、ポリビニルクロロアセテート、ポリビニルトリクロロアセテート、ポリビニルトリフルオロアセテート、ポリビニルベンゾエート、ポリビニルピバレート、およびポリビニルアルコール;ポリビニルブチラールのようなアセタール樹脂;ポリビニルピリジン;ポリビニルピロリドン;ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリイソブチレンのようなポリオレフィン;ポリ(スチレンオキシド);フッ素樹脂、およびポリ四フッ化エチレン(PTFE)のようなポリパーフルオロカーボン;ポリ(ビニリデンフルオリド)(PVDF);ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE);ポリヘキサフルオロプロペン(HFP);パーフルオロアルコキシド(PFA);ポリホスファゼン;シリコーン弾性体;ならびに、上記のポリマーから選択された1種のポリマーから成る少なくとも1個のブロックを含むブロックコポリマー、から選択される、請求項17の材料。
【請求項19】
界面活性剤が、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルホスフェート塩類およびアルキルスルホン酸塩のような界面活性剤;ジベンゾイル酒石酸、マレイン酸または長鎖脂肪酸のような酸;尿素または長鎖のアミンのような塩基;リン脂質;その両親媒性が基質との相互作用でその場で作り出される二重親水性コポリマー;ならびに、少なくとも1個の親水性ブロックとの結合している少なくとも1個の疎水性ブロックを含む両親媒性マルチブロックコポリマー、から選択される、請求項2〜18のいずれか1項の材料。
【請求項20】
任意に支持体の上に堆積した、先行請求項のいずれか1項の材料を含む膜。
【請求項21】
請求項1〜19のいずれか1項の材料を含む電極。
【請求項22】
少なくとも請求項20の1種の膜および/または請求項21の電極を含む燃料電池。
【請求項23】
以下のステップが実行される、請求項1〜19のいずれか1項の材料を調製する方法
a)溶媒の中で、メソポーラス無機相を構成することを意図された無機前駆体Aの溶液が調製され、任意に、この溶液が加水分解されて熟成するに任される、
b)溶媒の中で、界面活性剤D、すなわちメソポーラス無機相のためのテンプレート化・テクスチャー化剤の溶液が調製される、
c)溶媒中で、有機ポリマーEの溶液が調製される、
d)ステップa)、b)およびc)の終わりに、テンプレート化剤Dの溶液が有機ポリマーEの溶液に添加され、均質化が遂行され、ついで、無機前駆体Aの溶液が撹拌とともに界面活性剤Dの溶液と有機ポリマーEの溶液から得られた混合液に添加される、そうでなければ、
前駆体Aの溶液が界面活性剤Dの溶液に添加され、均質化が遂行され、ついで、有機ポリマーEの溶液が撹拌とともに添加される、そうでなければ、
前駆体Aの溶液が有機ポリマーEの溶液に添加され、均質化が遂行され、ついで、界面活性剤Dの溶液が撹拌とともに添加される、
それによって、有機−無機ハイブリッド溶液が得られ、
そして、得られた有機−無機ハイブリッド溶液が任意に熟成するに任される、
e)有機−無機ハイブリッド溶液が支持体の上に堆積させられるか、または、含浸させられる、
f)制御された圧力、温度および湿度条件の下で溶媒が蒸発させられる、
g)堆積したまたは含浸した材料を固化する(consolidate)ために熱処理が行なわれる、
h)界面活性剤Dが、任意に完全または部分的に除去される、
i)支持体が、任意に分離されるかまたは除去される。
【請求項24】
キレート化剤Bがさらに無機前駆体Aの溶液に添加される、請求項23のプロセス。
【請求項25】
一方で、導電性および/または親水性官能基、ならびに/あるいは導電性および/または親水性官能基の前駆体官能基、および他方で、メソポーラスネットワークの細孔の表面との結合を行なうことができる官能基をもつ化合物Cがさらに無機前駆体Aの溶液に添加される、請求項23と24のいずれか1項のプロセス。
【請求項26】
該プロセスがさらに材料の細孔の表面にある導電性および/または親水性官能基を開放するかまたは作り出す処理の最終段階を含む、請求項23〜25のいずれか1項のプロセス。
【請求項27】
溶液Aが0℃〜300℃、好ましくは20℃〜200℃の温度で、100Pa〜5×10Pa、好ましくは1000Pa〜2×l0Paの圧力で、数分〜数日、好ましくは1時間〜1週間の期間、熟成するに任せられる、請求項23〜26のいずれか1項のプロセス。
【請求項28】
ステップd)で得られた有機−無機ハイブリッド溶液が0〜300℃、好ましくは20℃〜200℃の温度で、100Pa〜5×10Pa、好ましくは1000Pa〜2×l0Paの圧力で、数分〜数日、好ましくは1時間〜1週間の期間、熟成するに任せられる、請求項23〜27のいずれか1項のプロセス。
【請求項29】
溶媒が0〜300℃、好ましくは10℃〜160℃の温度で、0〜100%、好ましく20%〜95%の相対湿度(RH)で、蒸発させられる、請求項23〜28のいずれか1項のプロセス。
【請求項30】
ステップe)において、有機−無機ハイブリッド溶液が、スピンコーティングとして知られている遠心コーティングによる堆積の方法、浸漬コーティングとして知られている含浸および抜取りによる堆積の方法、メニスカスコーティングとして知られているラミナーコーティングによる堆積の方法、「スプレーコーティング」として知られている吹付けによる堆積の方法、鋳造による堆積の方法、および蒸発による堆積の方法、から選択される方法によって支持体の上に堆積させられるかまたは含浸させられる、請求項23〜29のいずれか1項のプロセス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの相:
・開放細孔性(open porosity)の構造化メソポーラスネットワークを含む第一の無機相、および
有機ポリマーを含む第二の有機相(前記有機相は、無機相の構造化したメソポーラスネットワークの細孔を創出することに関与せず、無機相の構造化したメソポーラスネットワークの細孔内部には事実上存在しない)
を含む有機−無機ハイブリッド材料。
【請求項2】
細孔内に、少なくとも1種の界面活性剤を有する第三の相を更に含む、請求項1の材料。
【請求項3】
該無機相および該有機相が連続的でありかつ混在する、請求項1の材料。
【請求項4】
該無機相が、連続する有機相内で不連続でありかつ散在する、請求項1の材料。
【請求項5】
該無機相がその細孔の表面に導電性および/または親水性官能基を持つ、先行請求項のいずれか1項の材料。
【請求項6】
該有機相が導電性および/または親水性官能基を持つ、先行請求項のいずれか1項の材料。
【請求項7】
少なくとも1種の界面活性剤を有する第三相が導電性および/または親水性官能基を持つ、請求項5と6のいずれか1項の材料。
【請求項8】
前記導電性官能基が陽イオン交換基から選択される、請求項5または6の材料。
【請求項9】
前記陽イオン交換基が以下のグループ:SOM、−PO、−COOMおよびB(OM)(ここで、Mは、水素、一価の金属カチオンまたはNR(各Rは、個別に、水素、アルキル基またはアリール基を示す)を示す)から選択される、請求項8の材料。
【請求項10】
前記導電性官能基が陰イオン交換基から選択される、請求項5〜7のいずれか1項の材料。
【請求項11】
前記陰イオン交換基が以下の基:ピリジル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、化学式NRの基(式中、Xは、たとえばF、Cl、Br、I、NO、SOHまたはOR(Rはアルキル基またはアリール基)のような陰イオンを示し、各Rは、個別に、水素、アルキル基またはアリール基を示す)、;ならびに、イミダゾール、ビニルイミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、カルバゾール、インドール、イソインドール、ジヒドロオキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、4,5−ジヒドロピラゾール、1,2,3−オキサジアゾール、フラザン、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、ピロール、アニリン、ピロリジンおよびピラゾール基から選択される少なくとも1種の基を含む塩基性の芳香族または非芳香族基、から選択される、請求項10の材料。
【請求項12】
無機相が金属酸化物、メタロイド酸化物およびそれらの混合酸化物から選択される少なくとも1種の酸化物を有する、先行請求項のいずれか1項の材料。
【請求項13】
前記酸化物がケイ素、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウム、タンタル、スズ、希土類(たとえば、ユウロピウム、セリウム、ランタンおよびガドリニウム)およびそれらの混合酸化物から選択される、請求項12の材料。
【請求項14】
メソポーラスネットワークが反復単位のある組織化構造を持つ、先行請求項のいずれか1項の材料。
【請求項15】
メソポーラスネットワークが立方体、六角形、ラメラ状、曲がりくねった形状(vermicular)、小泡状、または、共連続的(bicontinuous)構造を持つ、請求項14の材料。
【請求項16】
細孔のサイズが1〜100nm、好ましくは1〜50nmである、先行請求項のいずれか1項の材料。
【請求項17】
有機ポリマーが熱的に安定な高分子である、先行請求項のいずれか1項の材料。
【請求項18】
有機ポリマーがポリエーテルケトン(PEK、PEEK、PEEKK);ポリスルホン(PSU);ポリエーテルスルホン;ポリフェニルエーテルスルホン(PPSU);スチレン/エチレン(SES)、スチレン/ブタジエン(SBS)およびスチレン/イソプレン(SIS)コポリマー;ポリ(フェニレンスルフィド)およびポリ(フェニレンオキシド)のようなポリフェニレン;ポリベンズイミダゾール(PBI)のようなポリイミダゾール;ポリイミド(PI);ポリアミドイミド(PAI);ポリアニリン;ポリピロール;ポリスルホンアミド;ポリベンゾピラゾールのようなポリピラゾール;ポリベンズオキサゾールのようなポリオキサゾール;ポリ(テトラメチレンオキシド)およびポリ(ヘキサメチレンオキシド)のようなポリエーテル;ポリメタクリル酸;ポリアクリルアミド;ポリ(ビニルエステル)のようなポリビニル、たとえばポリビニルアセテート、ポリビニルホルメート、ポリビニルプロピオネート、ポリビニルラウレート、ポリビニルパルミテート、ポリビニルステアレート、ポリビニルトリメチルアセテート、ポリビニルクロロアセテート、ポリビニルトリクロロアセテート、ポリビニルトリフルオロアセテート、ポリビニルベンゾエート、ポリビニルピバレート、およびポリビニルアルコール;ポリビニルブチラールのようなアセタール樹脂;ポリビニルピリジン;ポリビニルピロリドン;ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリイソブチレンのようなポリオレフィン;ポリ(スチレンオキシド);フッ素樹脂、およびポリ四フッ化エチレン(PTFE)のようなポリパーフルオロカーボン;ポリ(ビニリデンフルオリド)(PVDF);ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE);ポリヘキサフルオロプロペン(HFP);パーフルオロアルコキシド(PFA);ポリホスファゼン;シリコーン弾性体;ならびに、上記のポリマーから選択された1種のポリマーから成る少なくとも1個のブロックを含むブロックコポリマー、から選択される、請求項17の材料。
【請求項19】
界面活性剤が、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルホスフェート塩類およびアルキルスルホン酸塩のような界面活性剤;ジベンゾイル酒石酸、マレイン酸または長鎖脂肪酸のような酸;尿素または長鎖のアミンのような塩基;リン脂質;その両親媒性が基質との相互作用でその場で作り出される二重親水性コポリマー;ならびに、少なくとも1個の親水性ブロックとの結合している少なくとも1個の疎水性ブロックを含む両親媒性マルチブロックコポリマー、から選択される、請求項2〜18のいずれか1項の材料。
【請求項20】
任意に支持体の上に堆積した、先行請求項のいずれか1項の材料を含む膜。
【請求項21】
請求項1〜19のいずれか1項の材料を含む電極。
【請求項22】
少なくとも請求項20の1種の膜および/または請求項21の電極を含む燃料電池。
【請求項23】
以下のステップが実行される、請求項1〜19のいずれか1項の材料を調製する方法
a)溶媒の中で、メソポーラス無機相を構成することを意図された無機前駆体Aの溶液が調製され、任意に、この溶液が加水分解されて熟成するに任される、
b)溶媒の中で、界面活性剤D、すなわちメソポーラス無機相のためのテンプレート化・テクスチャー化剤の溶液が調製される、
c)溶媒中で、有機ポリマーEの溶液が調製される、
d)ステップa)、b)およびc)の終わりに、テンプレート化剤Dの溶液が有機ポリマーEの溶液に添加され、均質化が遂行され、ついで、無機前駆体Aの溶液が撹拌とともに界面活性剤Dの溶液と有機ポリマーEの溶液から得られた混合液に添加される、そうでなければ、
前駆体Aの溶液が界面活性剤Dの溶液に添加され、均質化が遂行され、ついで、有機ポリマーEの溶液が撹拌とともに添加される、そうでなければ、
前駆体Aの溶液が有機ポリマーEの溶液に添加され、均質化が遂行され、ついで、界面活性剤Dの溶液が撹拌とともに添加される、
それによって、有機−無機ハイブリッド溶液が得られ、
そして、得られた有機−無機ハイブリッド溶液が任意に熟成するに任される、
e)有機−無機ハイブリッド溶液が支持体の上に堆積させられるか、または、含浸させられる、
f)制御された圧力、温度および湿度条件の下で溶媒が蒸発させられる、
g)堆積したまたは含浸した材料を固化する(consolidate)ために熱処理が行なわれる、
h)界面活性剤Dが、任意に完全または部分的に除去される、
i)支持体が、任意に分離されるかまたは除去される。
【請求項24】
キレート化剤Bがさらに無機前駆体Aの溶液に添加される、請求項23のプロセス。
【請求項25】
一方で、導電性および/または親水性官能基、ならびに/あるいは導電性および/または親水性官能基の前駆体官能基、および他方で、メソポーラスネットワークの細孔の表面との結合を行なうことができる官能基をもつ化合物Cがさらに無機前駆体Aの溶液に添加される、請求項23と24のいずれか1項のプロセス。
【請求項26】
該プロセスがさらに材料の細孔の表面にある導電性および/または親水性官能基を開放するかまたは作り出す処理の最終段階を含む、請求項23〜25のいずれか1項のプロセス。
【請求項27】
溶液Aが0℃〜300℃、好ましくは20℃〜200℃の温度で、100Pa〜5×10Pa、好ましくは1000Pa〜2×l0Paの圧力で、数分〜数日、好ましくは1時間〜1週間の期間、熟成するに任せられる、請求項23〜26のいずれか1項のプロセス。
【請求項28】
ステップd)で得られた有機−無機ハイブリッド溶液が0〜300℃、好ましくは20℃〜200℃の温度で、100Pa〜5×10Pa、好ましくは1000Pa〜2×l0Paの圧力で、数分〜数日、好ましくは1時間〜1週間の期間、熟成するに任せられる、請求項23〜27のいずれか1項のプロセス。
【請求項29】
溶媒が0〜300℃、好ましくは10℃〜160℃の温度で、0〜100%、好ましく20%〜95%の相対湿度(RH)で、蒸発させられる、請求項23〜28のいずれか1項のプロセス。
【請求項30】
ステップe)において、有機−無機ハイブリッド溶液が、スピンコーティングとして知られている遠心コーティングによる堆積の方法、浸漬コーティングとして知られている含浸および抜取りによる堆積の方法、メニスカスコーティングとして知られているラミナーコーティングによる堆積の方法、「スプレーコーティング」として知られている吹付けによる堆積の方法、鋳造による堆積の方法、および蒸発による堆積の方法、から選択される方法によって支持体の上に堆積させられるかまたは含浸させられる、請求項23〜29のいずれか1項のプロセス。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図8】
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【図10】
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【図2A.2B.2C.2D】
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【図4A.4B】
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【図6A.6B.6C】
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【図7A.7B】
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【図9A.9B】
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【公表番号】特表2006−519287(P2006−519287A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502167(P2006−502167)
【出願日】平成16年1月22日(2004.1.22)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050025
【国際公開番号】WO2004/067611
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【Fターム(参考)】