説明

無機物含有ペースト

【課題】簡単かつ少ない工程で所望の形状を有する無機構造物を安価に作製することができるインプリントプロセスを行うのに好適な、無機物含有ペーストを提供する。
【解決手段】本発明に係る無機物含有ペーストは、インプリントを行うことによって基材上に無機構造物を作製するための無機物含有ペーストであって、セルロースおよび可塑剤を含むバインダー樹脂と、無機物とを含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリントを行うことによって無機構造物を作製するのに用いる無機物含有ペースト、より詳しくは、例えば、プラズマディスプレイパネル(PDP)の前面板の誘電体層等として用いられる無機構造物を作製するのに好適な無機物含有ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型の表示デバイスとして、視認性に優れ、高精細化および大画面化が容易であり、製造が簡便であることから、AC型で面放電型のプラズマディスプレイパネルが主流を占めるようになっている。
【0003】
そして、従来、例えば、プラズマディスプレイパネルの前面板を作製する方法としては、ITO(Indium Tin Oxide)電極やバス電極が形成された基材上に、ガラスを含む非感光性誘電体ペーストを塗布してペースト層を形成した後、乾燥・焼成することによって、ガラスからなる平坦な誘電体層(無機構造物)を形成する方法が知られている。
【0004】
ところが、最近、プラズマディスプレイパネル特有のメモリー効果を生み出すコンデンサである誘電体層に窪み(凹部)を設けることにより、維持電圧の低減および発光効率の向上を図ることが考えられている(特許文献1)。そこで、誘電体層に窪みを有するプラズマディスプレイパネルの前面板を作製する方法として、下記方法が提案されている。
【0005】
即ち、表示面となる基材上に、ガラスを含む非感光性誘電体ペーストを塗布してペースト層を形成した後、乾燥・焼成することによっていわゆるベタ部を作成し、当該ベタ部上に、ガラスを含む感光性誘電体ペーストを塗布してペースト層を形成した後、これを部分的に露光し、次いで現像・洗浄することによって露光部分を除去していわゆるパターン部を作成し、さらに焼成することで、ガラスからなる上記ベタ部とパターン部とで構成された誘電体層を形成する方法が提案されている。
【特許文献1】特開2003−331740号公報(平成15年11月21日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記提案の作製方法においては、窪みを有する誘電体層を形成するのに、少なくとも、塗布工程,焼成工程,塗布工程,露光工程,現像工程,洗浄工程,乾燥工程および焼成工程の8工程を経なければならないため、作製工程が複雑である。つまり、上記従来の方法では、作製工程が多く、プラズマディスプレイパネルの前面板を効率的にかつ安価に作製することができないという問題点を有している。尚、プラズマディスプレイパネルの前面板を大量生産するには、複数の生産設備を並列運転する必要があるため、多額の初期投資や広大なライン設置面積が必要であり、運用・管理コストが掛かってしまう。
【0007】
さらに、当該方法では、フォトリソプロセスを採用しているため、誘電体層に形成する窪みの形状に制約があり、例えば、壁面や底面が曲面で構成されている窪みや、鋭角な角部を有する窪みを形成することができないという問題点や、アスペクト比(窪みの底部の幅に対する高さの比)が大きな誘電体層を形成することができないという問題点も有している。
【0008】
そこで、本願発明者は上記問題に鑑み、誘電体層に所望の形状の窪みを有するプラズマディスプレイパネルの前面板を作製する方法として、即ち、所望の形状を有する無機構造物を効率的にかつ安価に作製する方法として、インプリントプロセスに着目して鋭意検討を行った。
【0009】
即ち、本発明の主たる目的は、フォトリソプロセスと比較して、簡単かつ少ない工程で所望の形状を有する無機構造物を安価に作製することができるインプリントプロセスを行うのに好適な、無機物含有ペーストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る無機物含有ペーストは、上記の課題を解決するために、インプリントを行うことによって基材上に無機構造物を作製するための無機物含有ペーストであって、セルロースおよび可塑剤を含むバインダー樹脂と、無機物とを含有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る無機物含有ペーストは、セルロースおよび可塑剤を含むバインダー樹脂を含有しているので、インプリントプロセスを採用して構造物の形状を当該ペーストに転写することができる。
【0012】
そのため、フォトリソプロセスを採用している従来の方法と比較して工程が少なく簡単であり、かつ、所望の形状を有する無機構造物を、インプリントプロセスを採用して作製することができる。つまり、本発明に係る無機物含有ペーストを用いることにより、フォトリソプロセスを採用した場合には形成することができないような、所望の形状を有する無機構造物を、効率的にかつ安価に作製することができるという効果を奏する。
【0013】
また、大型の無機構造物を作製する場合に、フォトリソプロセスを採用している従来の方法では大がかりな設備を必要とするのに対して、本発明に係る無機物含有ペーストを用いたインプリントプロセスでは、いわゆるモールドを用いて構造物の形状を転写するので、大掛かりな設備を必要としない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る無機物含有ペーストの実施形態を以下に説明する。尚、以下の説明においては、無機物含有ペーストによって作製される無機構造物がプラズマディスプレイパネルの前面板の誘電体層である場合を具体例として挙げるが、作製される無機構造物は誘電体に限定されるものではなく、例えばリブや電極であってもよい。本発明に係る無機物含有ペーストを用いたインプリントプロセスによる無機構造物の作製方法については、後段にて説明する。
【0015】
〔無機物含有ペースト〕
インプリントプロセスを採用して無機構造物を作製するのに好適な無機物含有ペースト(以下、単に「ペースト」と記す)の組成について説明する。無機構造物を作製するのに用いるペーストは、無機物とバインダー樹脂とを少なくとも含んでなっている。上記ペーストは、非感光性である。
【0016】
(無機物)
無機物は、インプリントによる構造物の形状の転写が鮮明に行われるように、かつ、作製される無機構造物の表面が平滑となるように、微粒子であることが好ましい。具体的には、その粒子径は0.1μm〜10μmの範囲内であることが好ましく、0.5μm〜8μmの範囲内であることがより好ましい。微粒子の形状としては、球状、ブロック状、フレーク状、デンドライト状等が挙げられるが、インプリントを行うのに支障が無い限り、特に限定されるものではない。
【0017】
無機物としては、例えば、ガラス、セラミックス、金属化合物が挙げられるが、中でも、融点が350℃〜600℃程度である低融点ガラス等のガラスの微粒子、若しくは、焼成することによってガラス化するガラスフリットであることがより好ましい。
【0018】
上記ガラスを構成する成分としては、具体的には、例えば、LiO、KO、SiO、B、Bi、BaO、Al、ZnO、MgO、CaO等が挙げられる。上記例示の成分は、1種だけを用いてもよく、複数種を併用してもよい。上記ガラスフリットとしては、具体的には、例えば、PbO−SiO系、PbO−B−SiO系、ZnO−SiO系、ZnO−B−SiO系、BiO−SiO系、BiO−B−SiO系、PbO−B−SiO−Al系、PbO−ZnO−B−SiO系等が挙げられる。上記例示のガラスフリットは、1種だけを用いてもよく、複数種を併用してもよい。地球環境保全の観点からは、鉛を含有しないガラスフリットであることがより好ましい。
【0019】
セラミックスとしては、例えば、アルミナやコーディライト等が挙げられる。上記例示のセラミックスは、1種だけを用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0020】
金属化合物としては、具体的には、例えば、酸化コバルト、酸化鉄、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化マンガン、酸化ネオジウム、酸化バナジウム、酸化セリウムチペークイエロー、酸化カドミウム、酸化ルテニウム、シリカ、マグネシア、スピネル等の金属酸化物等が挙げられる。さらに、ZnO:Zn、Zn(PO:Mn、YSiO:Ce、CaWO:Pb、BaMgAl1423:Eu、ZnS:(Ag,Cd)、Y:Eu、YSiO:Eu、YAl12:Eu、YBO:Eu、(Y,Gd)BO:Eu、GdBO:Eu、ScBO:Eu、LuBO:Eu、ZnSiO:Mn、BaAl1219:Mn、SrAl1319:Mn、CaAl1219:Mn、YBO:Tb、BaMgAl1423:Mn、LuBO:Tb、GdBO:Tb、ScBO:Tb、SrSiCl:Eu、ZnS:(Cu,Al)、ZnS:Ag、YS:Eu、ZnS:Zn、(Y,Cd)BO:Eu、BaMgAl1223:Eu等の蛍光体の微粒子、鉄、ニッケル、パラジウム、タングステン、銅、アルミニウム、銀、金、白金等の金属の微粒子を用いることもできる。上記例示の金属化合物は、1種だけを用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0021】
また、これらガラス、セラミックス、金属化合物は、併用することもできる。即ち、上記例示の無機物は、1種だけを用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0022】
ペーストに占める無機物の割合は、有機溶剤(後述する)を除いた全成分を100質量部として、55質量部〜80質量部の範囲内であることが好ましく、65質量部〜75質量部の範囲内であることがより好ましい。無機物の割合が上記範囲内であれば、焼成後に得られる無機構造物の体積収縮率や形状変化を小さくすることができる。つまり、インプリントを行った後のペースト層を焼成して得られる無機構造物の形状を維持することができる。
【0023】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂は、無機物を安定的に分散させることができ、ペースト層に柔軟性を付与し、かつ、インプリントを行った後のペースト層の形状を維持することができる性質を有する樹脂組成物であればよい。
【0024】
上記バインダー樹脂には、セルロースと可塑剤とが含まれていることが好ましい。バインダー樹脂がセルロースを含むことにより、インプリントを行った後のペースト層の形状を維持することができる。また、上記バインダー樹脂には、さらに、(メタ)アクリル系樹脂が含まれていてもよい。
【0025】
〈セルロース〉
上記セルロースとしては、具体的には、例えば、セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシエチルメチルセルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートブチレートが挙げられる。上記例示のセルロースは、1種だけを用いてもよく、複数種を用いてもよい。上記例示の中でもヒドロキシプロピルセルロースがより好ましく、下記構造式
【0026】
【化1】

【0027】
(式中のmは自然数であり、nは自然数であって構成単位の繰り返しを示す)
で示される構造を有するヒドロキシプロピルセルロース(以下、HPCと記す)が特に好ましい。
【0028】
セルロースの質量平均分子量(Mw:ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)のスチレン換算による測定値)は、10,000〜800,000の範囲内であることが好ましく、10,000〜160,000の範囲内であることがより好ましい。セルロースの質量平均分子量が上記範囲内であれば、インプリントを行った後のペースト層の形状を容易に維持することができる。
【0029】
〈(メタ)アクリル系樹脂〉
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体および共重合体、或いは、(メタ)アクリル酸エステルと不飽和単量体との共重合体が挙げられる。
【0030】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、具体的には、エステル部位がアルキル基であるエステル、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ペンタデシル(メタ)アクリレート、n−ヘキサデシル(メタ)アクリレート、n−ヘプタデシル(メタ)アクリレート、n−オクタデシル(メタ)アクリレート、n−ノナデシル(メタ)アクリレート、n−エイコシル(メタ)アクリレート等の、アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。なお、当該アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。また、当該アルキル基は、ヒドロキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0031】
また、(メタ)アクリル酸エステルとして、アリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフロロデシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソデキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクタフロロペンチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート等の、アクリル酸またはメタクリル酸のエステルを用いることができる。さらに、(メタ)アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1−ナフチル(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、エチルアクリル酸グリシジル、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA−プロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリレート、チオフェノール(メタ)アクリレート、ベンジルメルカプタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、(メタ)アクリロイルエチルイソシアネート等の、アクリル酸またはメタクリル酸のエステルを用いることができる。これら(メタ)アクリル酸エステルは、エステル部位に置換基を有していてもよい。
【0032】
つまり、(メタ)アクリル酸エステルとしては、バインダー樹脂に求められる前記性質を損なわない限りにおいて、公知のエステルを用いることができる。
【0033】
上記不飽和単量体としては、具体的には、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲン化α−メチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、カルボキシメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルカルバゾール、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、1−ビニル−2−ピロリドン、アリルグリシジルエーテル、クロトニルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテル、イソクロトン酸グリシジルエーテル等が挙げられる。
【0034】
つまり、不飽和単量体としては、バインダー樹脂に求められる前記性質を損なわない限りにおいて、公知の単量体を用いることができる。
【0035】
上記例示の(メタ)アクリル酸エステルや不飽和単量体は、それぞれ1種だけを用いてもよく、複数種を用いてもよい。従って、(メタ)アクリル系樹脂の組成は、特に限定されるものではない。特に(メタ)アクリル系樹脂としては、セルロースとの相溶性を向上させる上で、側鎖にヒドロキシ基を有するものが好ましい。
【0036】
中でも、(メタ)アクリル酸エステルの共重合体としては、エチルヘキシルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、イソブチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体がより好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステルと不飽和単量体との共重合体としては、スチレン/2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体がより好ましい。さらに、これらの中でも、スチレン:2−ヒドロキシエチルメタクリレートが60:40(重量比)で共重合してなる共重合体(以下、メタクリル系共重合体Aと記す)、エチルヘキシルメタクリレート:2−ヒドロキシエチルメタクリレートが60:40(重量比)で共重合してなる共重合体(以下、メタクリル系共重合体Bと記す)、イソブチルメタクリレート:2−ヒドロキシエチルメタクリレートが80:20(重量比)で共重合してなる共重合体(以下、メタクリル系共重合体Cと記す)が、特に好ましい。
【0037】
尚、(メタ)アクリル系樹脂の合成方法、つまり、(メタ)アクリル酸エステルや不飽和単量体の重合方法は、公知のラジカル重合を採用すればよい。具体的には、例えば、上記(メタ)アクリル酸エステルや不飽和単量体と、公知のラジカル重合開始剤とを重合溶媒に溶解した後、加熱・攪拌しながら重合する方法、或いは、重合溶媒に公知のラジカル重合開始剤を溶解した後、上記(メタ)アクリル酸エステルや不飽和単量体を添加しながら加熱・攪拌して重合する方法、等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0038】
(メタ)アクリル系樹脂の質量平均分子量(Mw:ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)のスチレン換算による測定値)は、10,000〜250,000の範囲内であることが好ましく、20,000〜150,000の範囲内であることがより好ましい。(メタ)アクリル系樹脂の質量平均分子量が上記範囲内であれば、インプリントを行った後のペースト層の形状を容易に維持することができる。
【0039】
バインダー樹脂に占めるセルロースおよび(メタ)アクリル系樹脂の好適な割合(合計量)は、これら樹脂の質量平均分子量にもよるが、有機溶剤(後述する)を除いた全成分を100質量部として、25質量部〜85質量部の範囲内であることが好ましく、35質量部〜60質量部の範囲内であることがより好ましい。セルロースおよび(メタ)アクリル系樹脂の割合が上記範囲内であれば、インプリントを行った後のペースト層の形状を容易に維持することができる。
【0040】
〈他の樹脂〉
バインダー樹脂は、セルロース、および(メタ)アクリル系樹脂に加えて、さらに、バインダー樹脂に求められる前記性質を損なわない限りにおいて、セルロースおよび(メタ)アクリル系樹脂以外の樹脂、例えば、ポリブチラール樹脂等のポリビニルアルコール類、ラクトン類を開環重合してなるポリエステル類、ジオール類とジカルボン酸類とを縮合反応してなるポリエステル類、ポリエーテル類、ジオール類とカルボニル化合物との反応生成物であるポリカーボネート類、等の公知の樹脂を含んでいてもよい。また、バインダー樹脂には、各種物性を向上させるために、さらに、公知の分散剤や表面張力調整剤、安定剤、消泡剤等の添加剤が添加されていてもよい。
【0041】
尚、前記作製方法において、転写された形状を維持するために、焼成工程を行う前にペースト層を露光する露光工程を行う場合には、バインダー樹脂に一般的な感光性モノマーやポリマー、光重合開始剤等を添加しておけばよい。
【0042】
〈可塑剤〉
本発明において、可塑剤とは、バインダー樹脂に含まれるセルロース(および(メタ)アクリル系樹脂)と相溶性を有し、セルロース(および(メタ)アクリル系樹脂)を軟化させる機能を有する化合物を指す。従って、本発明における可塑剤の範疇には、一般的に可塑剤として用いられている化合物の他に、バインダー樹脂に含まれるセルロース(および(メタ)アクリル系樹脂)と相溶性を有するモノマーやオリゴマー等の低分子量の化合物も含まれる。
【0043】
上記可塑剤として、具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、およびこれらの酸無水物、ポリエチレングリコール、等が挙げられる。また、上記可塑剤として、アルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート類、ポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート類、多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類およびそのジカルボン酸変成物等の多官能性モノマー、等も挙げられる。
【0044】
より具体的には、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラメタクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサメタクリレートが挙げられる。
【0045】
さらに、上記可塑剤として、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸オクチルデシル、フタル酸ジブトキシエチル、フタル酸ブチルベンジル、ブチルフタリルブチルグリコレート、下記構造式
【0046】
【化2】

【0047】
で示される構造を有する2−メタクリロイロキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート(以下、HO−MPPと記す)等のフタル酸系化合物、
アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジヘプチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジブトキシエチル、アジピン酸ジブチルベンジル等のアジピン酸系化合物、
セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジイソブチル、セバシン酸ジヘプチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジイソノニル、セバシン酸ジイソデシル、セバシン酸ジブトキシエチル、セバシン酸ジブチルベンジル等のセバシン酸系化合物、
アゼライン酸ジメチル、アゼライン酸ジエチル、アゼライン酸ジブチル、アゼライン酸ジイソブチル、アゼライン酸ジヘプチル、アゼライン酸ジオクチル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、アゼライン酸ジイソノニル、アゼライン酸ジイソデシル、アゼライン酸ジブトキシエチル、アゼライン酸ジブチルベンジル等のアゼライン酸系化合物、
リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリキシレニル、リン酸クレジルフェニル等のリン酸系化合物、
ジオクチルセバケート、メチルアセチルリシノレート等の脂肪酸系化合物、
イソデシル−4,5−エポキシテトラヒドロフタレート等のエポキシ系化合物、
トリメリト酸トリブチル、トリメリト酸トリ−2−エチルヘキシル、トリメリト酸トリ−n−オクチル、トリメリト酸トリイソデシル等のトリメリト酸系化合物、
オレイン酸ブチル、グリセリンモノオレイン酸エステル、塩素化パラフィン、ボリブテン、ポリイソブチレン、等も挙げられる。
【0048】
上記例示の可塑剤は、1種だけを用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0049】
可塑剤がモノマーやオリゴマー等の低分子量の化合物である場合において、当該化合物の分子量は、可塑剤に求められる前記機能を損なわない限り、特に限定されるものではないが、100〜20,000の範囲内であることが好ましく、200〜3,000の範囲内であることがより好ましい。
【0050】
バインダー樹脂に占める可塑剤の割合は、有機溶剤(後述する)を除いた全成分を100質量部として、15質量部〜75質量部の範囲内であることが好ましく、40質量部〜65質量部の範囲内であることがより好ましい。可塑剤の割合が上記範囲内であれば、インプリントを容易に行うことができる。
【0051】
本願発明におけるバインダー樹脂には、上記セルロースと可塑剤とが少なくとも含まれている。ペーストに占めるバインダー樹脂の割合は、有機溶剤(後述する)を除いた全成分を100質量部として、20質量部〜45質量部の範囲内であることが好ましく、25質量部〜35質量部の範囲内であることがより好ましい。バインダー樹脂の割合が上記範囲内であれば、インプリントを容易に行うことができると共に、インプリントを行った後のペースト層の形状を容易に維持することができる。
【0052】
つまり、無機物とバインダー樹脂との質量比(無機物/バインダー樹脂)は、55/45〜80/20の範囲内であることが好ましく、65/35〜75/25の範囲内であることがより好ましい。無機物とバインダー樹脂との質量比が上記範囲内であれば、インプリントをより一層容易に行うことができる。
【0053】
また、バインダー樹脂のガラス転移点は、前記転写工程を行う温度よりも低ければ特に限定されるものではないが、おおよそ、〔(転写工程を行う温度)−60℃〕〜(転写工程を行う温度)が好ましい温度範囲であり、具体的には、−40℃以上、25℃以下であることが特に好ましい。特に上記下限値は、−20℃以上であることがさらに好ましい。バインダー樹脂のガラス転移点を上記範囲内に調節することにより、本発明に係る作製方法における転写工程を室温(常温)で実施することができる。
【0054】
〈有機溶剤〉
ペーストは、基材に塗布し易いように、即ち、塗布性の改善や粘度調節のために、さらに、有機溶剤を含んでいることが好ましい。
【0055】
有機溶剤としては、バインダー樹脂を溶解することができる化合物であればよく、具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、酢酸、酢酸メチル、酢酸エチル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシブチルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、炭酸メチル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジオキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモ安息香酸、クロロ安息香酸、等が挙げられる。上記例示の中でもジエチレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールがより好ましい。上記例示の有機溶剤は、1種だけを用いてもよく、複数種の混合物である混合溶剤として用いてもよい。
【0056】
有機溶剤の使用量は特に限定されないが、基材に塗布可能で、かつ、無機物が沈降し難い濃度範囲において、つまり、ペーストに要求される物性を損なわない範囲において、形成するペースト層の厚さに応じて適宜調節すればよい。具体的には、ペーストの有機溶剤を除いた全成分の濃度が、上記無機物を含んだ状態では35〜95質量%の範囲内、より好ましくは45〜80質量%の範囲内となるように、上記無機物を含まない状態では10〜70質量%の範囲内、より好ましくは20〜55質量%の範囲内となるように、使用すればよい。
【0057】
(ペーストの製造方法)
本発明に係るペーストは、上記無機物、バインダー樹脂、および、必要に応じて有機溶剤を混合することによって得られる。上記各成分の混合順序は、特に限定されるものではない。例えば、バインダー樹脂に無機物を混合してもよく、有機溶剤に無機物およびバインダー樹脂を一度に(一緒に)混合してもよく、有機溶剤にバインダー樹脂を混合して樹脂溶液を形成した後、無機物を混合してもよい。得られた混合物は、無機物がバインダー樹脂中に均一に混合・分散されてペーストとなるように、例えば、3本ローラやプラネタリミキサ等の混練機を用いて混練すればよい。尚、混練方法は、上記例示の混練機を用いた方法に限定されるものではない。
【0058】
ペーストの粘度は、25℃で0.2〜200Pa・S(200〜200,000センチポイズ)の範囲内が好適であるが、塗布方法に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではない。例えば、塗布方法としてスピンコート法を採用する場合には、0.2〜5Pa・Sの範囲内が好適であり、スクリーン印刷法を採用する場合には、形成するペースト層の厚さにもよるが50〜200Pa・Sの範囲内が好適であり、ブレードコーター法やダイコーター法を採用する場合には、1〜20Pa・Sの範囲内が好適である。粘度は、有機溶剤の量を変更することによって容易に調節することができる。
【0059】
尚、ペーストは非感光性であるので、遮光や酸素遮断を行う必要が無く、従って取り扱いや貯蔵が簡単である。
【0060】
〔無機構造物の作製方法〕
<作製方法1>
本発明に係るペーストを用いた無機構造物の作製方法における好ましい一例を、図1を参照しながら工程を追って説明する。
【0061】
例えば、無機構造物の作製方法は、図1(a)に示すように、基材1上にペーストを塗布してペースト層4’を形成する塗布工程aと、
図1(b)に示すように、形成されたペースト層4’にモールド10を用いたインプリントを行うことによって構造物の形状を転写する転写工程と、
図1(c)に示すように、構造物の形状が転写されたペースト層4’に含まれるバインダー樹脂を焼成して除去する焼成工程bと、
を行うことにより実施される。以下、各工程について、より詳細に説明する。
【0062】
(塗布工程a)
先ず、図1(a)に示すように、ITO電極2やバス電極3等が形成された基材1上に、これらITO電極2やバス電極3等を覆うようにペーストを塗布した後、乾燥させてペースト層4’を形成する。
【0063】
具体的には、ペースト層4’は、例えば、ペーストを基材1上に一般的な塗布方法を用いて所望の厚さに塗布した後、ペーストに含まれる有機溶剤を除去するための乾燥(ベーク)を行うことによって形成する。
【0064】
塗布方法は、特に限定されるものではなく、スピンコート法、スクリーン印刷法、ブレードコーター法、ダイコーター法、バーコーター法、ロールコーター法等、平滑な表面を有するペースト層4’を形成することができる方法であればよい。また、ペースト層4’の厚さは、ペーストの粘度と、スピンナーの回転速度或いは基材1とコーターとのギャップ或いはスクリーンのメッシュと、塗布回数とを適宜組み合わせることによって任意に調節することができる。具体的には、ペースト層4’の厚さは、好ましくは20μm〜150μmの範囲内、より好ましくは50μm〜90μmの範囲内とすればよい。
【0065】
また、乾燥条件は特に限定されるものではなく、ペーストに含まれる有機溶剤が充分に蒸発する条件であればよい。
【0066】
上記基材1としては、例えば、硼珪酸ナトリウム系ガラス等のソーダガラスや、石英ガラス等からなるガラス基板が挙げられる。但し、無機構造物の作製方法に適用される基材は、ガラス基板に限定されるものではなく、例えば、シリコンウェーハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属基板であってもよい。また、バス電極3の材質としては、銅、アルミニウム、ニッケル、金等が挙げられるが、特に限定されるものではない。尚、基材1は、ペーストとの密着性を向上させるために、シランカップリング剤や有機金属を用いた一般的な表面処理が予め施されていてもよい。
【0067】
(転写工程)
次に、図1(b)に示すように、基材1上に形成されたペースト層4’に、構造物の形状の母型であるモールド10をインプリント(型押し)し、モールド10の形状をペースト層4’に転写する。
【0068】
転写条件は、押圧によってモールド10の形状がペースト層4’に鮮明に転写される条件であればよく、従って、押圧力や押圧時間は特に限定されるものではない。押圧温度は、転写直後(モールド10を外した直後)のペースト層4’の形状を維持することができる温度であればよいが、10℃以上、60℃以下の温度であることが好ましい。本発明に係るペーストにおいては、室温(常温)でインプリントすることができ、ペースト層4’に所望の形状を転写することができる。
【0069】
モールド10は、作製する無機構造物における凹部に対応する部分が凸状に形成されており、凸部に対応する部分が凹状に形成されている。モールド10の材質は、ペーストとの剥離性が良好な材質であればよく、特に限定されるものではない。具体的には、インプリントプロセスや凸版印刷に一般的に用いられる材質、例えば、金属や合成樹脂が挙げられる。
【0070】
(焼成工程b)
次いで、図1(c)に示すように、構造物の形状が転写されたペースト層4’が形成された基材1を、バッチ式やベルト式(連続式)の焼成炉(図示しない)に入れて焼成することにより、上記ペースト層4’に含まれるバインダー樹脂を蒸発,分解,燃焼等させて除去すると共に、無機物を互いに焼結させて無機構造物4を作製する。無機構造物4の厚さは、ペースト層4’の厚さやペーストに含まれる無機物の量によって任意に調節することができるが、誘電体として充分な特性を得ると共に透過率を良好に維持するためには、好ましくは10μm〜60μmの範囲内、より好ましくは20μm〜50μmの範囲内、さらに好ましくは25μm〜40μmの範囲内とすればよい。
【0071】
尚、急激な温度変化による損傷を防止するため、或いは、転写された形状を維持するために、焼成工程bを行う前にペースト層4’が形成された基材1を予め90℃〜180℃に加熱する加熱工程を行ってもよい。また、転写された形状を維持するために、焼成工程bを行う前にペースト層4’を露光する露光工程を行ってもよい。
【0072】
焼成条件は、基材1に損傷等を与えずにバインダー樹脂を除去することができ、かつ、無機物を互いに焼結させることができる条件であればよく、従って、焼成温度や焼成時間は特に限定されるものではない。具体的には、焼成温度は、通常、400℃〜1,000℃の範囲内が好適であり、500℃〜900℃の範囲内が最適である。また、焼成は、定温で行ってもよく、昇温させながら行ってもよい。焼成時間は焼成温度にもよるが、通常、10分〜1時間の範囲内が好適である。焼成雰囲気は、空気や窒素、水素であることが好ましい。
【0073】
上記の各工程を順に行うことにより、基材上に無機構造物である誘電体層が作製される。尚、焼成工程bの後に、必要に応じて、誘電体層をMgO等の金属酸化物からなる保護膜で被覆する被覆工程を行ってもよい。
【0074】
<作製方法2>
本発明に係るペーストを用いた無機構造物の作製方法における他の好ましい一例を、図2を参照しながら工程を追って説明する。尚、以下の説明において、前記作製方法1と重複する部分については、その説明を省略する。
【0075】
例えば、無機構造物の他の作製方法は、図2(a)に示すように、基材1上にペーストを塗布してペースト層5’を形成する塗布工程aと、
図2(b)に示すように、ペースト層5’に含まれるバインダー樹脂を焼成して除去し、第一無機構造物5を作製する焼成工程aと、
図2(c)に示すように、焼成工程aによって形成された第一無機構造物5上にペーストを塗布してペースト層6’を形成する塗布工程bと、
図2(d)に示すように、形成されたペースト層6’にモールド10を用いたインプリントを行うことによって構造物の形状を転写する転写工程と、
図2(e)に示すように、構造物の形状が転写されたペースト層6’に含まれるバインダー樹脂を焼成して除去する焼成工程bと、
を行うことにより実施される。以下、各工程についてより詳細に説明する。
【0076】
(塗布工程a)
前記作製方法1における塗布工程aと同一の工程であるので、その説明を省略する。
【0077】
(焼成工程a)
次いで、図2(b)に示すように、ペースト層5’が形成された基材1をバッチ式やベルト式(連続式)の焼成炉(図示しない)に入れて焼成することにより、上記ペースト層5’に含まれるバインダー樹脂を蒸発,分解,燃焼等させて除去すると共に、無機物を互いに焼結させて第一無機構造物5を作製する。第一無機構造物5の厚さは、ペースト層5’の厚さやペーストに含まれる無機物の量によって任意に調節することができる。
【0078】
尚、急激な温度変化による損傷を防止するために、焼成工程aを行う前にペースト層5’が形成された基材1を予め90℃〜180℃に加熱する加熱工程を行ってもよい。また、転写された形状を維持するために、焼成工程aを行う前にペースト層5’を露光する露光工程を行ってもよい。
【0079】
焼成条件は、基材1に損傷等を与えずにバインダー樹脂を除去することができ、かつ、無機物を互いに焼結させることができる条件であればよく、従って、焼成温度や焼成時間は特に限定されるものではない。具体的には、焼成温度は、通常、300℃〜1,000℃の範囲内が好適であり、500℃〜900℃の範囲内が最適である。また、焼成は、定温で行ってもよく、昇温させながら行ってもよい。焼成時間は焼成温度にもよるが、通常、10分〜1時間の範囲内が好適である。焼成雰囲気は、空気や窒素、水素であることが好ましい。
【0080】
(塗布工程b)
第一無機構造物5上にペーストを塗布した後、乾燥させてペースト層6’を形成する工程であり、前記作製方法1における塗布工程aと実質的に同一の工程であるので、その説明を省略する。
【0081】
但し、界面の無い無機構造物を作製するためには、ペースト層5’を形成するペーストと、ペースト層6’を形成するペーストとは、同一組成であることが好ましい。また、ペースト層5’の厚さおよびペースト層6’の厚さは、作製する無機構造物の厚さや形状に応じて決定すればよく、特に限定されるものではない。
【0082】
(転写工程)
前記作製方法1における転写工程と同一の工程であるので、その説明を省略する。
【0083】
(焼成工程b)
次いで、図2(e)に示すように、構造物の形状が転写されたペースト層6’が形成された基材1をバッチ式やベルト式(連続式)の焼成炉(図示しない)に入れて焼成することにより、上記ペースト層6’に含まれるバインダー樹脂を蒸発,分解,燃焼等させて除去すると共に、無機物を互いに焼結させて無機構造物7を作製する。無機構造物7の厚さは、ペースト層4’・5’の厚さやペーストに含まれる無機物の量によって任意に調節することができる。
【0084】
尚、急激な温度変化による損傷を防止するために、焼成工程bを行う前にペースト層6’が形成された基材1を予め90℃〜180℃に加熱する加熱工程を行ってもよい。また、転写された形状を維持するために、焼成工程bを行う前にペースト層6’を露光する露光工程を行ってもよい。
【0085】
焼成条件は、基材1に損傷等を与えずにバインダー樹脂を除去することができ、かつ、無機物を互いに焼結させることができる条件であればよく、従って、焼成温度や焼成時間は特に限定されるものではない。具体的には、焼成温度は、通常、300℃〜1,000℃の範囲内が好適であり、500℃〜900℃の範囲内が最適である。また、焼成は、定温で行ってもよく、昇温させながら行ってもよい。焼成時間は焼成温度にもよるが、通常、10分〜1時間の範囲内が好適である。焼成雰囲気は、空気や窒素、水素であることが好ましい。
【0086】
上記の各工程を順に行うことにより、基材上に無機構造物である誘電体層が作製される。作製方法2では、いわゆるベタ部(第一無機構造物5)とパターン部とを個別に形成するので、より厚みのある無機構造物を作製することができる。尚、焼成工程bの後に、さらに、必要に応じて、誘電体層をMgO等の金属酸化物からなる保護膜で被覆する被覆工程を行ってもよい。
【0087】
上述した無機構造物の作製方法1,2においては、インプリントプロセスを採用して構造物の形状をペースト層に転写しているので、フォトリソプロセスを採用している従来の方法と比較して工程が少なく簡単であり、かつ、所望の形状を有する無機構造物を作製することができる。つまり、本発明に係るペーストを用いることにより、フォトリソプロセスを採用した場合には形成することができないような、所望の形状を有する無機構造物を、効率的にかつ安価に作製することができる。
【実施例】
【0088】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本実施例では、基材として、厚さ2.8mmのガラス板(旭硝子株式会社製・高歪点ガラスPD200)を用いた。また、モールドとして、縦100μm×横200μm×高さ40μmのドット(凸部)が多数パターン形成された凸版印刷用感光性樹脂版(東京応化工業株式会社製;MIRACRON MF94HT)を用いた。インプリント条件は、母型取り用プレス機を用い、押圧温度を室温(23℃)、押圧力を1.5MPa(ゲージ圧)、押圧時間を3分間とした。また、焼成条件は、焼成温度を585℃、焼成時間を20分間とした。
【0089】
(実施例1)
HPC(質量平均分子量130,000;第1軟化点60℃,第2軟化点(ガラス転移点)185℃,第3軟化点255℃、以下、「HPC−L」と記す)13.0質量部と、HO−MPP22.0質量部と、ガラスフリット65.0質量部とを混合すると共に、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(有機溶剤)48.6質量部を添加することにより、ペーストを調製した。当該ペーストに含まれるバインダー樹脂のガラス転移点は、25℃以下であった。
【0090】
上記のペーストを厚さ80μmとなるように基材に塗布し、温風循環乾燥機を用いて115℃で15分間乾燥(ベーク)させることにより、ペースト層を形成した。
【0091】
上記のペースト層にインプリントを行ったところ、モールドのドットに対応した凹部が当該ペースト層に鮮明に形成(転写)された。その後、焼成することにより、基材上にガラスからなる無機構造物が形成された。
【0092】
また、ペースト層に転写された凹部の形状は、転写後2週間を経過しても維持されていた。
【0093】
(実施例2)
HPC−Lの量を16.0質量部に、HO−MPPの量を19.0質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてペーストを調製し、ペースト層を形成した。当該ペーストに含まれるバインダー樹脂のガラス転移点は、25℃以下であった。上記のペースト層にインプリントを行ったところ、モールドのドットに対応した凹部が当該ペースト層に鮮明に形成された。その後、焼成することにより、基材上に無機構造物が形成された。
【0094】
(実施例3)
HPC−Lの量を20.5質量部に、HO−MPPの量を14.5質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてペーストを調製し、ペースト層を形成した。当該ペーストに含まれるバインダー樹脂のガラス転移点は、25℃以下であった。上記のペースト層にインプリントを行ったところ、モールドのドットに対応した凹部が当該ペースト層に形成された。その後、焼成することにより、基材上に無機構造物が形成された。
【0095】
(実施例4)
HPC−L(実施例1と同じ)6.5質量部と、メタクリル系共重合体A(質量平均分子量35,000;ガラス転移点79℃)6.5質量部と、HO−MPP22.0質量部と、ガラスフリット65.0質量部とを混合すると共に、ジエチレングリコールモノブチルエーテル34.8質量部を添加することにより、ペーストを調製した。HPC−Lとメタクリル系共重合体Aとの混合物からなるポリマー組成物の見かけ上のガラス転移点は132℃、質量平均分子量は82,500であった。また、当該ペーストに含まれるバインダー樹脂のガラス転移点は、25℃以下であった。
【0096】
上記のペーストを厚さ80μmとなるように基材に塗布し、温風循環乾燥機を用いて115℃で15分間乾燥させることにより、ペースト層を形成した。
【0097】
上記のペースト層にインプリントを行ったところ、モールドのドットに対応した凹部が当該ペースト層に鮮明に形成された。その後、焼成することにより、基材上にガラスからなる無機構造物が形成された。
【0098】
(実施例5)
HPC−Lの量を8.0質量部に、メタクリル系共重合体Aの量を8.0質量部に、HO−MPPの量を19.0質量部に変更した以外は、実施例4と同様にしてペーストを調製し、ペースト層を形成した。当該ペーストに含まれるバインダー樹脂のガラス転移点は、25℃以下であった。上記のペースト層にインプリントを行ったところ、モールドのドットに対応した凹部が当該ペースト層に鮮明に形成された。その後、焼成することにより、基材上に無機構造物が形成された。
【0099】
(実施例6)
HPC−Lの量を10.25質量部に、メタクリル系共重合体Aの量を10.25質量部に、HO−MPPの量を14.5質量部に変更した以外は、実施例4と同様にしてペーストを調製し、ペースト層を形成した。当該ペーストに含まれるバインダー樹脂のガラス転移点は、25℃以下であった。上記のペースト層にインプリントを行ったところ、モールドのドットに対応した凹部が当該ペースト層に形成された。その後、焼成することにより、基材上に無機構造物が形成された。
【0100】
(実施例7)
HPC(質量平均分子量400,000〜800,000、以下、「HPC−M」と記す)5.5質量部と、メタクリル系共重合体A5.5質量部と、HO−MPP24.0質量部と、ガラスフリット65.0質量部とを混合すると共に、ジエチレングリコールモノブチルエーテル75.6質量部を添加することにより、ペーストを調製した。HPC−Mとメタクリル系共重合体Aとの混合物からなるポリマー組成物の見かけ上のガラス転移点は129℃、質量平均分子量は317,500であった。また、当該ペーストに含まれるバインダー樹脂のガラス転移点は、25℃以下であった。
【0101】
上記のペーストを厚さ80μmとなるように基材に塗布し、温風循環乾燥機を用いて115℃で15分間乾燥させることにより、ペースト層を形成した。
【0102】
上記のペースト層にインプリントを行ったところ、モールドのドットに対応した凹部が当該ペースト層に鮮明に形成された。また、モールドの離型性も良好であった。その後、焼成することにより、基材上にガラスからなる無機構造物が形成された。
【0103】
また、ペースト層に転写された凹部の形状は、転写後6日間を経過しても維持されていた。
【0104】
(実施例8)
HPC−M6.5質量部と、メタクリル系共重合体A6.5質量部と、HO−MPP22.0質量部と、ガラスフリット65.0質量部とを混合すると共に、ジエチレングリコールモノブチルエーテル89.8質量部を添加することにより、ペーストを調製した。当該ペーストに含まれるバインダー樹脂のガラス転移点は、25℃以下であった。
【0105】
上記のペーストを用いて実施例7と同様にしてペースト層を形成し、当該ペースト層にインプリントを行ったところ、モールドのドットに対応した凹部が当該ペースト層に鮮明に形成された。また、モールドの離型性も良好であった。その後、焼成することにより、基材上にガラスからなる無機構造物が形成された。
【0106】
(実施例9)
HPC−M8.0質量部と、メタクリル系共重合体A8.0質量部と、HO−MPP19.0質量部と、ガラスフリット65.0質量部とを混合すると共に、ジエチレングリコールモノブチルエーテル110.5質量部を添加することにより、ペーストを調製した。当該ペーストに含まれるバインダー樹脂のガラス転移点は、25℃以下であった。
【0107】
上記のペーストを用いて実施例7と同様にしてペースト層を形成し、当該ペースト層にインプリントを行ったところ、モールドのドットに対応した凹部が当該ペースト層に鮮明に形成された。また、モールドの離型性も良好であった。その後、焼成することにより、基材上にガラスからなる無機構造物が形成された。
【0108】
(実施例10)
HPC(質量平均分子量30,000〜70,000、以下、「HPC−SSL」と記す)8.0質量部と、メタクリル系共重合体A8.0質量部と、HO−MPP19.0質量部と、ガラスフリット65.0質量部とを混合すると共に、ジエチレングリコールモノブチルエーテル33.2質量部を添加することにより、ペーストを調製した。HPC−SSLとメタクリル系共重合体Aとの混合物からなるポリマー組成物の見かけ上のガラス転移点は131℃、質量平均分子量は42,500であった。また、当該ペーストに含まれるバインダー樹脂のガラス転移点は、25℃以下であった。
【0109】
上記のペーストを用いて実施例7と同様にしてペースト層を形成し、当該ペースト層にインプリントを行ったところ、モールドのドットに対応した凹部が当該ペースト層に鮮明に形成された。また、モールドの離型性も良好であった。その後、焼成することにより、基材上にガラスからなる無機構造物が形成された。
【0110】
(実施例11)
HPC−SSL10.25質量部と、メタクリル系共重合体A10.25質量部と、HO−MPP14.5質量部と、ガラスフリット65.0質量部とを混合すると共に、ジエチレングリコールモノブチルエーテル42.5質量部を添加することにより、ペーストを調製した。当該ペーストに含まれるバインダー樹脂のガラス転移点は、25℃以下であった。
【0111】
上記のペーストを用いて実施例7と同様にしてペースト層を形成し、当該ペースト層にインプリントを行ったところ、モールドのドットに対応した凹部が当該ペースト層に鮮明に形成された。また、モールドの離型性も良好であった。その後、焼成することにより、基材上にガラスからなる無機構造物が形成された。
【0112】
また、ペースト層に転写された凹部の形状は、転写後6日間を経過しても維持されていた。
【0113】
(実施例12)
HPC−L5.5質量部と、メタクリル系共重合体A5.5質量部と、HO−MPP24.0質量部とを混合すると共に、ジエチレングリコールモノブチルエーテル29.5質量部を添加することにより、バインダー樹脂を調製した。そして、ガラスフリットと当該バインダー樹脂(但し有機溶剤を除く)との質量比(ガラスフリット/バインダー樹脂)が55/45となるように両者を混合することにより、ペーストを調製した。
【0114】
上記のペーストを厚さ80μmとなるように基材に塗布し、温風循環乾燥機を用いて115℃で15分間乾燥させることにより、ペースト層を形成した。
【0115】
上記のペースト層にインプリントを行ったところ、モールドのドットに対応した凹部が当該ペースト層に鮮明に形成された。また、モールドの離型性も良好であった。その後、焼成することにより、基材上にガラスからなる無機構造物が形成された。
【0116】
(実施例13)
ガラスフリットと当該バインダー樹脂との質量比が65/35となるように両者を混合した以外は、実施例12と同様にして、ペーストを調製した。
【0117】
上記のペーストを用いて実施例12と同様にしてペースト層を形成し、当該ペースト層にインプリントを行ったところ、モールドのドットに対応した凹部が当該ペースト層に鮮明に形成された。また、モールドの離型性も良好であった。その後、焼成することにより、基材上にガラスからなる無機構造物が形成された。
【0118】
(実施例14)
ガラスフリットと当該バインダー樹脂との質量比が75/25となるように両者を混合した以外は、実施例12と同様にして、ペーストを調製した。
【0119】
上記のペーストを用いて実施例12と同様にしてペースト層を形成し、当該ペースト層にインプリントを行ったところ、モールドのドットに対応した凹部が当該ペースト層に鮮明に形成された。また、モールドの離型性も良好であった。その後、焼成することにより、基材上にガラスからなる無機構造物が形成された。
【0120】
(実施例15)
ガラスフリットと当該バインダー樹脂との質量比が80/20となるように両者を混合した以外は、実施例12と同様にして、ペーストを調製した。
【0121】
上記のペーストを用いて実施例12と同様にしてペースト層を形成し、当該ペースト層にインプリントを行ったところ、モールドのドットに対応した凹部が当該ペースト層に鮮明に形成された。
【0122】
(実施例16)
HPC−L6.5質量部と、メタクリル系共重合体A6.5質量部と、HO−MPP22.0質量部とを混合すると共に、ジエチレングリコールモノブチルエーテル34.9質量部を添加することにより、バインダー樹脂を調製した。そして、ガラスフリットと当該バインダー樹脂との質量比が55/45となるように両者を混合することにより、ペーストを調製した。
【0123】
上記のペーストを用いて実施例12と同様にしてペースト層を形成し、当該ペースト層にインプリントを行ったところ、モールドのドットに対応した凹部が当該ペースト層に鮮明に形成された。また、モールドの離型性も良好であった。その後、焼成することにより、基材上にガラスからなる無機構造物が形成された。
【0124】
(実施例17)
ガラスフリットと当該バインダー樹脂との質量比が65/35となるように両者を混合した以外は、実施例16と同様にして、ペーストを調製した。
【0125】
上記のペーストを用いて実施例12と同様にしてペースト層を形成し、当該ペースト層にインプリントを行ったところ、モールドのドットに対応した凹部が当該ペースト層に鮮明に形成された。また、モールドの離型性も良好であった。その後、焼成することにより、基材上にガラスからなる無機構造物が形成された。
【0126】
(実施例18)
ガラスフリットと当該バインダー樹脂との質量比が75/25となるように両者を混合した以外は、実施例16と同様にして、ペーストを調製した。
【0127】
上記のペーストを用いて実施例12と同様にしてペースト層を形成し、当該ペースト層にインプリントを行ったところ、モールドのドットに対応した凹部が当該ペースト層に鮮明に形成された。また、モールドの離型性も良好であった。その後、焼成することにより、基材上にガラスからなる無機構造物が形成された。
【0128】
(実施例19)
ガラスフリットと当該バインダー樹脂との質量比が80/20となるように両者を混合した以外は、実施例16と同様にして、ペーストを調製した。
【0129】
上記のペーストを用いて実施例12と同様にしてペースト層を形成し、当該ペースト層にインプリントを行ったところ、モールドのドットに対応した凹部が当該ペースト層に鮮明に形成された。
【0130】
(実施例20)
HPC−L8.0質量部と、メタクリル系共重合体A8.0質量部と、HO−MPP19.0質量部とを混合すると共に、ジエチレングリコールモノブチルエーテル43.0質量部を添加することにより、バインダー樹脂を調製した。そして、ガラスフリットと当該バインダー樹脂との質量比が55/45となるように両者を混合することにより、ペーストを調製した。
【0131】
上記のペーストを用いて実施例12と同様にしてペースト層を形成し、当該ペースト層にインプリントを行ったところ、モールドのドットに対応した凹部が当該ペースト層に鮮明に形成された。また、モールドの離型性も良好であった。その後、焼成することにより、基材上にガラスからなる無機構造物が形成された。
【0132】
(実施例21)
ガラスフリットと当該バインダー樹脂との質量比が65/35となるように両者を混合した以外は、実施例20と同様にして、ペーストを調製した。
【0133】
上記のペーストを用いて実施例12と同様にしてペースト層を形成し、当該ペースト層にインプリントを行ったところ、モールドのドットに対応した凹部が当該ペースト層に鮮明に形成された。また、モールドの離型性も良好であった。その後、焼成することにより、基材上にガラスからなる無機構造物が形成された。
【0134】
(実施例22)
ガラスフリットと当該バインダー樹脂との質量比が75/25となるように両者を混合した以外は、実施例20と同様にして、ペーストを調製した。
【0135】
上記のペーストを用いて実施例12と同様にしてペースト層を形成し、当該ペースト層にインプリントを行ったところ、モールドのドットに対応した凹部が当該ペースト層に形成された。また、モールドの離型性も良好であった。その後、焼成することにより、基材上にガラスからなる無機構造物が形成された。
【0136】
(実施例23)
ガラスフリットと当該バインダー樹脂との質量比が80/20となるように両者を混合した以外は、実施例20と同様にして、ペーストを調製した。
【0137】
上記のペーストを用いて実施例12と同様にしてペースト層を形成し、当該ペースト層にインプリントを行ったところ、モールドのドットに対応した凹部が当該ペースト層に形成された。また、モールドの離型性も良好であった。その後、焼成することにより、基材上にガラスからなる無機構造物が形成された。
【0138】
(実施例24)
HPC−L10.25質量部と、メタクリル系共重合体A10.25質量部と、HO−MPP14.5質量部とを混合すると共に、ジエチレングリコールモノブチルエーテル55.1質量部を添加することにより、バインダー樹脂を調製した。そして、ガラスフリットと当該バインダー樹脂との質量比が55/45となるように両者を混合することにより、ペーストを調製した。
【0139】
上記のペーストを用いて実施例12と同様にしてペースト層を形成し、当該ペースト層にインプリントを行ったところ、モールドのドットに対応した凹部が当該ペースト層に形成された。また、モールドの離型性も良好であった。その後、焼成することにより、基材上にガラスからなる無機構造物が形成された。
【0140】
(実施例25)
ガラスフリットと当該バインダー樹脂との質量比が65/35となるように両者を混合した以外は、実施例24と同様にして、ペーストを調製した。
【0141】
上記のペーストを用いて実施例12と同様にしてペースト層を形成し、当該ペースト層にインプリントを行ったところ、モールドのドットに対応した凹部が当該ペースト層に形成された。また、モールドの離型性も良好であった。その後、焼成することにより、基材上にガラスからなる無機構造物が形成された。
【0142】
(実施例26)
エチルセルロース(質量平均分子量77,000)5.5質量部と、メタクリル系共重合体A5.5質量部と、HO−MPP24.0質量部と、ガラスフリット65.0質量部とを混合すると共に、ジエチレングリコールモノブチルエーテル43.6質量部を添加することにより、ペーストを調製した。エチルセルロースとメタクリル系共重合体Aとの混合物からなるポリマー組成物の見かけ上のガラス転移点は112℃、質量平均分子量は56,000であった。また、当該ペーストに含まれるバインダー樹脂のガラス転移点は、25℃以下であった。
【0143】
上記のペーストを用いて実施例7と同様にしてペースト層を形成し、当該ペースト層にインプリントを行ったところ、モールドのドットに対応した凹部が当該ペースト層に鮮明に形成された。
【0144】
(実施例27)
エチルセルロース(質量平均分子量77,000)6.5質量部と、メタクリル系共重合体A6.5質量部と、HO−MPP22.0質量部と、ガラスフリット65.0質量部とを混合すると共に、ジエチレングリコールモノブチルエーテル51.7質量部を添加することにより、ペーストを調製した。当該ペーストに含まれるバインダー樹脂のガラス転移点は、25℃以下であった。
【0145】
上記のペーストを用いて実施例7と同様にしてペースト層を形成し、当該ペースト層にインプリントを行ったところ、モールドのドットに対応した凹部が当該ペースト層に形成された。また、モールドの離型性も良好であった。その後、焼成することにより、基材上にガラスからなる無機構造物が形成された。
【0146】
また、ペースト層に転写された凹部の形状は、転写後3日間を経過しても維持されていた。
【0147】
(比較例1)
HPC−L35.0質量部と、ガラスフリット65.0質量部とを混合すると共に、ジエチレングリコールモノブチルエーテル100.0質量部を添加することにより、ペーストを調製した。当該ペーストに含まれるバインダー樹脂のガラス転移点は、25℃を超えていた。
【0148】
上記のペーストを厚さ80μmとなるように基材に塗布し、温風循環乾燥機を用いて115℃で15分間乾燥(ベーク)させることにより、ペースト層を形成した。
【0149】
上記のペースト層にインプリントを行ったが、モールドのドットに対応した凹部を当該ペースト層に形成することはできなかった。
【0150】
(比較例2)
HPC−M35.0質量部と、ガラスフリット65.0質量部とを混合すると共に、ジエチレングリコールモノブチルエーテル70.6質量部を添加することにより、ペーストを調製した。当該ペーストに含まれるバインダー樹脂のガラス転移点は、25℃を超えていた。
【0151】
上記のペーストを厚さ80μmとなるように基材に塗布し、温風循環乾燥機を用いて115℃で15分間乾燥(ベーク)させることにより、ペースト層を形成した。
【0152】
上記のペースト層にインプリントを行ったが、モールドのドットに対応した凹部を当該ペースト層に形成することはできなかった。
【0153】
(比較例3)
HPC−SSL35.0質量部と、ガラスフリット65.0質量部とを混合すると共に、ジエチレングリコールモノブチルエーテル60.2質量部を添加することにより、ペーストを調製した。当該ペーストに含まれるバインダー樹脂のガラス転移点は、25℃を超えていた。
【0154】
上記のペーストを厚さ80μmとなるように基材に塗布し、温風循環乾燥機を用いて115℃で15分間乾燥(ベーク)させることにより、ペースト層を形成した。
【0155】
上記のペースト層にインプリントを行ったが、モールドのドットに対応した凹部を当該ペースト層に形成することはできなかった。
【0156】
(比較例4)
エチルセルロース35.0質量部と、ガラスフリット65.0質量部とを混合すると共に、ジエチレングリコールモノブチルエーテル73.1質量部を添加することにより、ペーストを調製した。当該ペーストに含まれるバインダー樹脂のガラス転移点は、25℃を超えていた。
【0157】
上記のペーストを厚さ80μmとなるように基材に塗布し、温風循環乾燥機を用いて115℃で15分間乾燥(ベーク)させることにより、ペースト層を形成した。
【0158】
上記のペースト層にインプリントを行ったが、モールドのドットに対応した凹部を当該ペースト層に形成することはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明に係る無機物含有ペーストによれば、プラズマディスプレイパネルの前面板の誘電体層を作製するのみならず、例えばリブや電極等、所望の形状を有する無機構造物を作製する分野において、幅広い産業上の利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】本発明に係る無機物含有ペーストを用いた無機構造物の好ましい作製方法の概略を説明する工程図である。
【図2】本発明に係る無機物含有ペーストを用いた無機構造物の他の好ましい作製方法の概略を説明する工程図である。
【符号の説明】
【0161】
1 基材
4 無機構造物
4’ ペースト層
5 第一無機構造物
5’ ペースト層
6’ ペースト層
7 無機構造物
10 モールド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプリントを行うことによって基材上に無機構造物を作製するための無機物含有ペーストであって、
セルロースおよび可塑剤を含むバインダー樹脂と、無機物とを含有することを特徴とする無機物含有ペースト。
【請求項2】
上記セルロースの質量平均分子量が、10,000以上、800,000以下であることを特徴とする請求項1に記載の無機物含有ペースト。
【請求項3】
上記バインダー樹脂のガラス転移点が、25℃以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の無機物含有ペースト。
【請求項4】
上記セルロースが、ヒドロキシプロピルセルロースであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の無機物含有ペースト。
【請求項5】
上記バインダー樹脂にアクリル系ポリマーがさらに含まれていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の無機物含有ペースト。
【請求項6】
上記可塑剤の分子量が100以上、20,000以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の無機物含有ペースト。
【請求項7】
上記無機物とバインダー樹脂との質量比が、55/45〜80/20の範囲内であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の無機物含有ペースト。
【請求項8】
上記無機物がガラスであることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の無機物含有ペースト。
【請求項9】
さらに溶剤が含まれていることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の無機物含有ペースト。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−91382(P2009−91382A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260349(P2007−260349)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】