無機繊維ペーパー及びこれを用いたハニカム構造体並びにフィルタ−
【課題】環境への負荷が小さく且つハニカム構造体に適した無機繊維ペーパー及びこれを用いたハニカム構造体並びにフィルタ−を提供する。
【解決手段】本発明に係る無機繊維ペーパーは、厚さが500μm以下であって、ロックウールを主繊維として含有し、ガラス繊維をさらに含有する。本発明に係るハニカム構造体1は、コルゲート加工された前記無機繊維ペーパーを有する。本発明に係るフィルターは、機能剤が担持された前記ハニカム構造体を有する。
【解決手段】本発明に係る無機繊維ペーパーは、厚さが500μm以下であって、ロックウールを主繊維として含有し、ガラス繊維をさらに含有する。本発明に係るハニカム構造体1は、コルゲート加工された前記無機繊維ペーパーを有する。本発明に係るフィルターは、機能剤が担持された前記ハニカム構造体を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機繊維ペーパー及びこれを用いたハニカム構造体並びにフィルタ−に関し、特に、主繊維としてロックウールを含有する無機繊維ペーパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミック繊維の発癌性に関する問題に鑑みて、例えば、特許文献1においては、生体溶解性繊維を用いた不織布及びこれを用いたハニカム構造体が記載されている。
【特許文献1】特開2003−105662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、本発明の発明者らは、他の無機繊維を主繊維として用い、環境への負荷が小さい無機繊維ペーパーの開発を独自に進めてきた。しかしながら、例えば、コルゲート加工に適した特性を備え、且つ、ハニカム構造体を形成した場合に焼成後であっても十分な強度を備えることのできる無機繊維ペーパーを製造することは容易でなかった。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであって、環境への負荷が小さく且つハニカム構造体に適した無機繊維ペーパー及びこれを用いたハニカム構造体並びにフィルタ−を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る無機繊維ペーパーは、厚さが500μm以下であって、ロックウールを主繊維として含有し、ガラス繊維をさらに含有することを特徴とする。本発明によれば、環境への負荷が小さく且つハニカム構造体に適した無機繊維ペーパーを提供することができる。
【0006】
また、前記ガラス繊維は、その平均繊維径が3〜10μmの範囲内であることとしてもよい。こうすれば、無機繊維ペーパーは、ハニカム構造体により適した特性を有することができる。また、この場合、前記ガラス繊維は、その平均繊維長さが3〜15mmの範囲内であることとしてもよい。こうすれば、無機繊維ペーパーは、ハニカム構造体にさらに適した特性を有することができる。また、これらの場合、前記無機繊維ペーパーを構成する無機繊維は、前記ロックウールを60〜90重量%の範囲内で含有するとともに、前記ガラス繊維を10〜40重量%の範囲内で含有することとしてもよい。こうすれば、無機繊維ペーパーは、ハニカム構造体に特に適した特性を有することができる。
【0007】
また、前記無機繊維ペーパーは、その米坪が5〜500g/m2の範囲内であることとしてもよい。こうすれば、無機繊維ペーパーは、コルゲート加工やハニカム構造体の形成に適した特性を有することができる。また、前記ロックウールは、直径212μm以上のショットの含有率が2重量%以下であり、且つ直径212μm未満のショットの含有率が20重量%以下であることとしてもよい。こうすれば、無機繊維ペーパーは、コルゲート加工やハニカム構造体の形成により適した特性を有することができる。
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係るハニカム構造体は、コルゲート加工された前記いずれかの無機繊維ペーパーを有することを特徴とする。本発明によれば、環境への負荷が小さく、且つ十分な強度を有するハニカム構造体を提供することができる。
【0009】
また、前記ハニカム構造体は、焼成されていることとしてもよい。こうすれば、ハニカム構造体は、高温での使用に適した特性を有することができる。また、前記ハニカム構造体は、機能剤が担持されていることとしてもよい。こうすれば、ハニカム構造体は、機能剤の種類に応じた機能を有することができる。
【0010】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係るフィルタ−は、機能剤が担持された前記ハニカム構造体を有することを特徴とする。本発明によれば、環境への負荷が小さく、且つ十分な強度を有するフィルターを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は、本実施形態に限られるものではない。本実施形態に係る無機繊維ペーパー(以下、「本ペーパー」という。)は、厚さが500μm以下であって、ロックウールを主繊維として含有し、ガラス繊維をさらに含有する。
【0012】
本ペーパーの厚さは、その形状を維持するために必要な所定値以上であって、500μm以下であれば特に限られないが、例えば、10〜500μmの範囲内とすることができ、好ましくは20〜500μmの範囲内とすることができ、より好ましくは50〜500μmの範囲内とすることができ、特に好ましくは100〜500μmの範囲内とすることができる。
【0013】
本ペーパーは、ロックウール及びガラス繊維を含有するとともに、その厚さが上記の範囲内であることによって、コルゲート加工やハニカム構造体の形成に適した特性を有することができる。すなわち、この場合、本ペーパーは、例えば、コルゲート加工によって、破断することなく、コルゲーターの形状に対応した微細なコルゲート形状を有することができる。また、例えば、本ペーパーから形成されたハニカム構造体は、その形状を維持するために十分な強度を有することができ、また、機能剤の担持に適した大きな表面積を有することができる。
【0014】
本ペーパーを構成する無機繊維の主材料であるロックウールは、酸化ケイ素及び酸化カルシウムを主成分とする無機繊維である。ロックウールは、例えば、銑鉄製造時に銑鉄から分離された高炉スラグや、玄武岩等の天然岩石を主原料とし、キュポラや電気炉によって1500〜1600℃の高温で溶融された溶融スラグを繊維化することにより製造することができる。
【0015】
ロックウールは、自然界において適度に分解される特性を有する。このため、本ペーパーを構成する無機繊維の主材料としてロックウールを使用することにより、本ペーパーの環境に対する負荷をセラミックスに比べて効果的に低減することができる。
【0016】
ロックウールとしては、例えば、平均繊維径(1本の繊維の平均直径)が1〜10μmの範囲内のものを用いることができ、平均繊維径が2〜4μmの範囲内のものを好ましく用いることができる。
【0017】
また、ロックウールとしては、ショットの含有率が小さいものや、含有されるショットの直径が小さいものを好ましく用いることができる。具体的に、ロックウールとしては、例えば、直径212μm以上のショットの含有率が2重量%以下であり、且つ直径212μm未満のショットの含有率が20重量%以下であるものを好ましく用いることができ、直径212μm以上のショットの含有率が1重量%以下であり、且つ直径212μm未満のショットの含有率が15重量%以下であるものをより好ましく用いることができ、直径212μm以上のショットの含有率が0.5重量%以下であり、且つ直径212μm未満のショットの含有率が10重量%以下であるものを特に好ましく用いることができる。なお、ショットの含有率は、例えば、JIS Z8801の呼び寸法212μmのふるいを用いたJIS R3311に準拠した方法により測定することができる。
【0018】
ロックウール(特に、本ペーパーに含有されるロックウール)のショット含有率が上記の範囲内である場合には、本ペーパーのコルゲート加工における成形性を効果的に高めることができる。すなわち、この場合、例えば、本ペーパーにコルゲート形状を付与するためのコルゲート加工において、本ペーパーにおけるショットの脱落に伴う孔や傷の形成、本ペーパーの強度の低下、また、ショットとコルゲーターとの衝突による当該コルゲーターの損傷といった問題を効果的に回避することができる。また、この結果、コルゲート加工された本ペーパーを骨格の一部として有するハニカム構造体は、その形状を維持するために十分な強度を有することができる。
【0019】
また、ロックウールとしては、電気炉を用いて製造されたロックウールを好ましく用いることができる。すなわち、例えば、電気炉を用いた高温での溶融を行うとともに、高速化されたスピニングにより繊維化された、平均繊維径が上記の好適な範囲内であって、且つショットの含有率が上記の好適な範囲内であるロックウールを好ましく用いることができる。また、繊維化後に、ショット含有率を低減するための処理(脱ショット処理)が施されたロックウールを用いることもできる。
【0020】
本ペーパーは、ロックウールに加えて、ガラス繊維を含有することにより、厚さ500μm以下の無機繊維ペーパーでありながら、コルゲート加工やハニカム構造体の形成に適した特性を有することができる。
【0021】
すなわち、例えば、従来、ハニカム構造体の形成に用いられていた無機繊維ペーパーにおいて、主繊維をセラミックス繊維からロックウールへと単に置き換えるだけでは、コルゲート加工やハニカム構造体の形成に適した特性を実現することが困難である。
【0022】
本ペーパーに含有されるガラス繊維は、本ペーパーの特性を、コルゲート加工やハニカム構造体の形成に適するよう向上させることのできるものであれば特に限られず用いることができる。
【0023】
具体的に、ガラス繊維としては、例えば、その平均繊維径が3〜10μmの範囲内であるものを好ましく用いることができる。この場合、ガラス繊維としては、その平均繊維径が10μm未満のものをより好ましく用いることができる。すなわち、例えば、平均繊維径が3〜9μmの範囲内のガラス繊維をより好ましく用いることができ、平均繊維径が5〜7μmの範囲のものを特に好ましく用いることができる。なお、ガラス繊維の平均繊維径は、例えば、JIS A9504に準拠した方法により繊維の平均太さとして測定することができる。
【0024】
ガラス繊維の平均繊維径が上記の範囲内である場合、本ペーパーは、主繊維としてロックウールを含有し、且つ厚さが500μm以下でありながら、コルゲート加工やハニカム構造体の形成に適した特性を有することができる。
【0025】
すなわち、この場合、例えば、本ペーパーは、コルゲート加工時に張力が負荷されても破断しない十分な強度を有することができる。また、例えば、コルゲート加工された本ペーパーにより形成されたハニカム構造体は、焼成後においても、その三次元的な形状を維持できる十分な強度を有することができる。
【0026】
なお、強度が比較的小さいロックウールを主繊維とし、且つ厚さが500μm以下である無機繊維ペーパーにおいて、含有されるガラス繊維の平均繊維径が10μmを超える場合には、例えば、当該ガラス繊維同士の絡み合いが不十分となる等の理由により、当該無機繊維ペーパーに十分な強度を付与することが困難となり得る。また、ガラス繊維の平均繊維径が3μm未満の場合には、例えば、当該ガラス繊維による補強の効果が不十分となり、無機繊維ペーパーに十分な強度を付与することが困難となり得る。
【0027】
また、ガラス繊維としては、その平均繊維径が上記の範囲内であることに加えて、その平均繊維長さ(1本の繊維の平均長さ)が3〜15mmの範囲内であるものを好ましく用いることができる。すなわち、ガラス繊維としては、例えば、平均繊維径が3〜10μmの範囲内であって且つ平均繊維長さが3〜15mmの範囲内のものを好ましく用いることができ、平均繊維径が3〜9μmの範囲内であって且つ平均繊維長さが4〜10mmの範囲内のものをより好ましく用いることができ、平均繊維径が5〜7μmの範囲内であって且つ平均繊維長さが5〜7mmの範囲内のものを特に好ましく用いることができる。なお、ガラス繊維の平均繊維長さは、例えば、ガラス繊維の顕微鏡写真を画像解析装置で解析することにより測定することができる。
【0028】
ガラス繊維の平均繊維径が上記の範囲内であって、且つ当該ガラス繊維の平均繊維長さが上記の範囲内である場合、本ペーパーは、コルゲート加工やハニカム構造体の形成に特に適した特性を有することができる。
【0029】
すなわち、この場合、例えば、コルゲート加工時に張力が負荷されても破断しない十分な強度を確実に有することができる。また、例えば、コルゲート加工された本ペーパーにより形成されたハニカム構造体は、焼成後においても、その三次元的な形状を維持できる十分な強度を確実に有することができる。
【0030】
なお、ガラス繊維の平均繊維径が上記の好適な範囲であっても、ガラス繊維の平均繊維長さが15mmを超える場合には、不都合が生じ得る。すなわち、この場合、例えば、ロックウールとガラス繊維とを含有する湿式抄紙用スラリー中において、当該ガラス繊維が適切に分散されないために、厚さが500μm以下の無機繊維ペーパーを製造することが困難となり得る。また、ガラス繊維の平均繊維径が上記の好適な範囲であっても、ガラス繊維の平均繊維長さが3mm未満の場合には、例えば、当該ガラス繊維による補強の効果が不十分となり、無機繊維ペーパーに対して、コルゲート加工やハニカム構造体の形成に適した強度を付与することが困難となり得る。
【0031】
また、本ペーパーを構成する無機繊維は、ロックウールを60〜90重量%の範囲内で含有するとともに、ガラス繊維を10〜40重量%の範囲内で含有することが好ましい。さらに、この場合、本ペーパーを構成する無機繊維は、ロックウールを65〜85重量%の範囲内で含有するとともにガラス繊維を15〜35重量%の範囲内で含有することがより好ましく、ロックウールを70〜80重量%の範囲内で含有するとともにガラス繊維を20〜30重量%の範囲内で含有することが特に好ましい。
【0032】
本ペーパーに含有される無機繊維中に占めるロックウール及びガラス繊維の割合がそれぞれ上記の範囲内である場合、本ペーパーは、環境への負荷が小さく、耐熱性を備えながら、コルゲート加工やハニカム構造体の形成に適した特性を有することができる。
【0033】
また、この場合、さらに、本ペーパーに含有されるガラス繊維の平均繊維径が上記の好適な範囲内であることによって、本ペーパーの特性はより優れたものとなる。特に、ガラス繊維の平均繊維径及び平均繊維長さがそれぞれ上記の好適な範囲である場合には、本ペーパーの特性は極めて優れたものとなる。
【0034】
また、本ペーパーは、500μm以下という薄さに加えて、所定の緻密さを有することが好ましい。すなわち、本ペーパーは、その米坪(1m2あたりの重量)が5〜500g/m2の範囲内であることが好ましく、10〜300g/m2の範囲内であることがより好ましく、15〜150g/m2の範囲内であることが特に好ましい。なお、米坪は、例えば、JIS P8124に準拠した紙及び板紙の坪量の測定方法により測定することができる。本ペーパーの米坪が上記の範囲内である場合、本ペーパーは、コルゲート加工やハニカム構造体の形成に適した特性を有することができる。
【0035】
また、本ペーパーは、ロックウール及びガラス繊維以外の無機繊維を含有することもできる。このような他の無機繊維としては、例えば、アルミナ繊維、ムライト繊維、炭素繊維、金属繊維を用いることができる。
【0036】
ただし、本ペーパーに含有される無機繊維に占めるロックウールの割合とガラス繊維の割合との合計は、50重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましく、75重量%以上であることが特に好ましい。ロックウールの割合とガラス繊維の割合との合計が上記の範囲内である場合、本ペーパーは、上述のようなロックウール及びガラス繊維に基づく優れた特性を確実に有することができる。
【0037】
また、本ペーパーは、無機繊維に加えて、有機繊維を含有することもできる。有機繊維としては、例えば、パルプ、ポリビニルアルコール繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、アクリル繊維を用いることができる。また、本ペーパーは、バインダーを含有することもできる。バインダーとしては、例えば、シリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾル等の無機バインダーや、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の有機バインダーを用いることができる。これら有機繊維やバインダーとしては、例えば、湿式抄紙法により本ペーパーを製造するために適したものを適宜選択して用いることができる。
【0038】
ただし、本ペーパーは、焼成後において、無機繊維を30重量%以上含有することが好ましく、50重量%以上含有することがより好ましく、70重量%以上含有することが特に好ましい。すなわち、本ペーパーは、焼成により有機繊維やバインダー等の有機成分の含有量が低減されたものとすることができ、例えば、焼成により有機繊維やバインダー等の有機成分が除去されて、実質的に当該有機成分を含有しない、無機繊維からなるペーパーとすることもできる。無機繊維の含有量が上記の範囲である場合、本ペーパーは、例えば、焼成後においても適切な強度を有することができる。
【0039】
また、本ペーパーとしては、湿式抄紙により製造されたものを好ましく用いることができる。すなわち、この場合、本ペーパーを製造する方法においては、まず、無機繊維として主にロックウールを含有するとともにガラス繊維をさらに含有するスラリーを調製する。このスラリーは、必要に応じて、有機繊維やバインダーを含有することができる。そして、所定の抄紙機を用いた湿式抄紙法により、このスラリーから、無機繊維を主成分とする厚さが500μm以下の不織布として、本ペーパーを製造することができる。
【0040】
本実施形態に係るハニカム構造体(以下、「本構造体」という。)は、コルゲート加工された本ペーパーを有する。すなわち、本構造体は、コルゲート形状の本ペーパーを含む、ハニカム形状の骨格を有している。
【0041】
図1は、本構造体の一例であるハニカム構造体1の斜視図であり、図2は、当該ハニカム構造体1の断面図である。図1及び図2に示すように、ハニカム構造体1は、波形のコルゲート状を有する本ペーパー(以下、「コルゲートペーパー10」という。)と、コルゲート加工されていない平坦形状の本ペーパー(以下、「平坦ペーパー20」という。)と、が積層されることにより構成されたハニカム形状の構造体である。
【0042】
すなわち、このハニカム構造体1は、1つのコルゲートペーパー10を、対向する一対の平坦ペーパー20a,20bで挟むことにより構成されている。コルゲートペーパー10は、コルゲート加工により形成された、連続して連なる複数のセル11を有している。
【0043】
このセル11の湾曲した形状は、コルゲートペーパー10の製造に用いられるコルゲーターの形状に対応している。すなわち、例えば、コルゲートペーパー10が、互いに噛み合いながら回転する一対の歯車状コルゲーターを用いて製造された場合には、セル11は、当該歯車の歯の形状に対応した形状を有することとなる。
【0044】
ここで、セル11の形状は、真円に近いほど好ましい。そこで、無機繊維ペーパーのコルゲート加工においては、例えば、歯の先端の形状が真円に近い歯車状のコルゲーターが用いられる。しかしながら、セラミックス繊維を主繊維として含有する従来の無機繊維ペーパー(セラミックスペーパー)を、このようなコルゲーターを用いてコルゲート加工した場合には、当該セラミックスペーパーが有するセルの形状は、三角形等、真円に近いとはいえない形状とならざるを得なかった。これは、例えば、セラミックスペーパーがコルゲーター上で滑ってしまう、すなわち、セラミックスペーパーの当該コルゲーターに対する追従性が低いことが原因である。
【0045】
この点、本ペーパーは、従来のセラミックスペーパーに比べて、コルゲーターに対する追従性に優れている。したがって、本ペーパーは、従来のセラミックスペーパーに比べて、より真円に近い形状のセル11を有することができる。
【0046】
図1及び図2に示すハニカム構造体1は、このようなコルゲートペーパー10の各セル11の頂点部分と、平坦ペーパー20a,20bと、を接着剤で接着することにより形成することができる。すなわち、例えば、コルゲートペーパー10の各セル11の頂点部分に接着剤を塗布し、次いで、当該コルゲートペーパー10の各セル11の頂点部分と、一方の平坦ペーパー20a及び他方の平坦ペーパー20bと、をそれぞれ圧接することにより、ハニカム構造体1を形成することができる。
【0047】
この結果、ハニカム構造体1は、各セル11と、平坦ペーパー20a,20bと、の間に空隙12が形成されたハニカム形状を有することができる。この空隙12は、例えば、後述するように、機能剤を担持するための空間として利用することができ、また、当該機能剤により処理する流体が流通するための通路として利用することができる。
【0048】
また、ハニカム構造体1において、コルゲートペーパー10の厚さT1及び平坦ペーパー20a,20bの厚さT2は、いずれも500μm以下である。なお、コルゲート加工により、コルゲートペーパー10の厚さT1は、平坦ペーパー20a,20bの厚さT2よりも僅かに小さくなることもある。
【0049】
これに対し、コルゲートペーパー10のセル11の高さH(ハニカム構造体1においては、一方の平坦ペーパー20aと他方の平坦ペーパー20bとの距離)は、例えば、0.5〜50mmの範囲内とすることができ、好ましくは0.7〜30mmの範囲内とすることができ、より好ましくは1.0〜20mmの範囲内とすることができる。
【0050】
また、コルゲートペーパー10のセル11の幅W(すなわち、複数のセル11の間隔)は、例えば、1〜50mmの範囲内とすることができ、好ましくは1.5〜30mmの範囲内とすることができ、より好ましくは2.0〜20mmの範囲内とすることができる。
【0051】
また、本構造体は、多段に積層されたコルゲートペーパー10を含むハニカム構造体とすることができる。図3は、本構造体としてこのようなハニカム構造体2を有する、本実施形態に係るフィルター(以下、「本フィルター3」という。)の一例についての斜視図である。
【0052】
図3に示すように、本フィルター3は、交互に積層されたコルゲートペーパー10と平坦ペーパー20とを含むハニカム構造体2と、当該ハニカム構造体2の外周を囲む矩形の枠状の筺体部30と、を有している。筺体部30を構成する材料としては、例えば、ステンレス鋼(SUS)等を用いることができる。このハニカム構造体2は、例えば、図1及び図2に示したハニカム構造体1を複数積層することにより形成することができる。
【0053】
また、このハニカム構造体2には、機能剤(不図示)が担持されている。この機能剤としては、本フィルター3の用途に応じて、適切な機能を有するものを適宜選択して用いることができる。
【0054】
すなわち、機能剤としては、例えば、空気等の気相中から、揮発性有機化合物(volatile organic compounds:VOC)、アンモニア等の塩基性ガス、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、塩素等の酸性ガスを除去するための触媒や吸着剤を用いることができる。具体的に、例えば、ゼオライト、金属酸化物(酸化チタン等)、活性炭、シリカゲルを用いることができる。
【0055】
このような機能剤は、例えば、当該機能剤を含有する溶液中に、ハニカム構造体2を所定時間浸漬し、その後、当該ハニカム構造体2を乾燥することにより、当該ハニカム構造体2に担持することができる。すなわち、機能剤は、ハニカム構造体2を構成するコルゲートペーパー10及び平坦ペーパー20の表面に固定される。
【0056】
このような機能剤が担持されたハニカム構造体2を有する本フィルター3は、当該機能剤によって、空気等の気体を浄化することができる。すなわち、例えば、本フィルター3において、コルゲートペーパー10のセル11と平坦ペーパー20との間に形成された空隙12(図2参照)に、処理の対象となる気体を通過させることにより、当該気体中に含有されているVOC等の有害物質を効果的に除去することができる。
【0057】
具体的に、例えば、本フィルター3のハニカム構造体2の一方側の表面から、当該本ハニカム構造体2の空隙12を介して、図3に示す矢印Aの指す方向に、有害物質を含有する気体を流通させる。この結果、ハニカム構造体2の一方側の表面から排出される気体に含有される有害物質の濃度を、当該ハニカム構造体2内を通過する前の気体中の濃度に比べて、効果的に低減することができる。
【0058】
また、ハニカム構造体2は、焼成されているハニカム構造体とすることができる。すなわち、この場合、例えば、まず、コルゲートペーパー10と平坦ペーパー20とを積層してハニカム構造体2を形成する。次いで、このハニカム構造体2に機能剤を担持する。そして、この機能剤が担持されたハニカム構造体2を焼成する。
【0059】
焼成は、例えば、ハニカム構造体2を、300〜800℃の範囲内の温度で、30分〜24時間程度加熱することにより行うことができる。この焼成により、ハニカム構造体2に含有されていた有機成分(有機繊維や有機バインダー等)は実質的に除去される。したがって、焼成後のハニカム構造体2は、主にコルゲートペーパー10及び平坦ペーパー20を構成するロックウール及びガラス繊維によって支持される。
【0060】
このため、本構造体が焼成されたハニカム構造体2である場合、本構造体が十分な強度を有するためには、本ペーパー(すなわち、コルゲートペーパー10及び平坦ペーパー20)は、平均繊維径が上述したような好適な範囲内であるガラス繊維を含有することが好ましい。
【0061】
また、この場合、本ペーパーは、平均繊維径及び平均長さがそれぞれ上述したような好適な範囲であるガラス繊維を含有することがより好ましい。さらに、この場合、本ペーパーは、平均繊維径及び平均長さがそれぞれ上述したような好適な範囲であるガラス繊維を、上述したような好適な範囲内の配合比で含有することが特に好ましい。
【0062】
なお、本構造体は、図3に示すように、コルゲートペーパー10と平坦ペーパー20とが平積みされて構成されるものに限られず、例えば、図1及び図2に示すようなハニカム構造体1を同心円状に巻くことにより形成される、ロール状の構造体とすることもできる。また、この焼成前のハニカム構造体2に無機バインダーを含浸させておくことによって、当該ハニカム構造体2に硬化処理を加えることもできる。また、ガラス繊維の平均繊維径及び平均長さ以外にも、本ペーパーの厚さ及び米坪、本ペーパーに含有されるロックウールのショット含有率、本ペーパーに含有される無機繊維中におけるロックウールの含有量とガラス繊維の含有量との合計等について上述した好適な範囲は、それぞれ焼成前及び焼成後の本構造体を構成する本ペーパーについても当てはまる。
【0063】
次に、具体的な実施例について説明する。
【0064】
[実施例1]
実施例1においては、ガラス繊維の平均繊維径及び平均繊維長さと、当該ガラス繊維とロックウールとを含有する無機繊維ペーパー(ロックウールペーパー)の強度と、の関係を検討した。
【0065】
ロックウールとしては、電気炉を用いて製造されたロックウールを用いた。このロックウールの平均繊維径は2.2μmであった。また、このロックウールは、直径212μm以上のショットの含有率が1.0重量%以下であり、直径212μm未満のショットの含有率が18.9重量%以下であった。
【0066】
ガラス繊維としては、平均繊維径と平均繊維長さとの組み合わせが互いに異なる5種類のチョップドストランドを用いた。すなわち、平均繊維径が6μmであり且つ平均繊維長さが3mmであるガラス繊維、平均繊維径が6μmであり且つ平均繊維長さが6mmであるガラス繊維、平均繊維径が6μmであり且つ平均繊維長さが10mmであるガラス繊維、平均繊維径が10μmであり且つ平均繊維長さが6mmであるガラス繊維、又は平均繊維径が10μmであり且つ平均繊維長さが13mmであるガラス繊維のいずれかを用いた。また、有機繊維として、パルプ、ポリビニルアルコール繊維、PET繊維を用いた。
【0067】
そして、無機繊維として75重量部のロックウールと25重量部のガラス繊維とを含有し、さらに30重量部の有機繊維を含有するスラリーを調製した。次いで、抄紙機を用いた湿式抄紙法により、このスラリーから厚さが200μmであって、ロックウールを主繊維として含有し、さらに上記5種類のガラス繊維のいずれかを含有する5種類のロックウールペーパーを製造した。さらに、各ロックウールペーパーの一部にシリカゾルを含浸後、500℃で3時間加熱することにより焼成し、焼成された5種類のロックウールペーパーを製造した。
【0068】
そして、焼成されていない5種類のロックウールペーパー及び焼成された5種類のロックウールペーパーの各々から、長さ100〜200mm、幅15mmの試験片を作製し、JIS P8113に準拠した方法により、当該試験片の引張強度を測定した。
【0069】
また、比較例として、同様の湿式抄紙法により、厚さが200μmであって、平均繊維径が2.8μmであるセラミックス繊維を主繊維として含有し、ガラス繊維を含有しない無機繊維ペーパー(セラミックスペーパー)を製造した。そして、このセラミックスペーパーについても、同様に、焼成前及び焼成後における引張強度を測定した。
【0070】
図4には、引張強度を測定した結果の一例を示す。図4において、横軸は、ロックウールペーパーに含有されたガラス繊維の平均繊維径と平均繊維長さとの組み合わせを示し(ただし、「比較例」はセラミックスペーパーを示す。)、縦軸は、各ペーパーからなる試験片の長さ15mmあたりの引張強度(N/15mm)を示す。また、図4において、白抜きで示される棒は焼成前の結果を示し、黒塗りで示される棒は焼成後の結果を示す。
【0071】
図4に示すように、焼成されていない各ロックウールペーパーの引張強度は、含有されるガラス繊維の種類によって大きな違いは見られず、焼成されていないセラミックスペーパーの引張強度よりも低かった。これに対し、焼成された各ロックウールペーパーの引張強度は、焼成されたセラミックスペーパーの引張強度よりも顕著に高くなった。
【0072】
また、平均繊維径が6μmのガラス繊維を含有する焼成後のロックウールペーパーの引張強度は、平均繊維径が10μmのガラス繊維を含有する焼成後のロックウールペーパーの引張強度よりも高かった。特に、平均繊維径が6μmであり且つ平均繊維長さが6mmであるガラス繊維を含有する焼成後のロックウールペーパーの引張強度は、平均繊維径が6μmであり且つ繊維長さが3mm又は10mmであるガラス繊維を含有する焼成後のロックウールペーパーの引張強度よりも高かった。
【0073】
このように、平均繊維径が6μm又は10μmのガラス繊維を含有することにより、焼成されたロックウールペーパーの引張強度は、セラミックスペーパーの引張強度を十分に上回ることができた。
【0074】
また、平均繊維径が10μmを下回る、6μmのガラス繊維を含有することにより、焼成されたロックウールペーパーの引張強度を特に高めることができた。さらに、平均繊維径が6μmであり且つ平均繊維長さが6μmであるガラス繊維を含有するロックウールペーパーは、特に高い引張強度を有することができた。
【0075】
[実施例2]
実施例2においては、ロックウールとガラス繊維との配合比と、無機繊維ペーパーの特性と、の関係を検討した。
【0076】
ロックウールとしては、上記の実施例1で用いられたものと同様のものを用いた。ガラス繊維としては、平均繊維径が6μmであり且つ平均繊維長さが6mmであるチョップドストランドを用いた。また、有機繊維として、パルプ、ポリビニルアルコール繊維、PET繊維を用いた。
【0077】
そして、上記の実施例1と同様の湿式抄紙法により、無機繊維としてロックウールとガラス繊維とを互いに異なる配合比で含有するスラリーから、当該配合比が互いに異なる5種類の無機繊維ペーパーを製造した。
【0078】
すなわち、無機繊維として100重量部のロックウールと0(ゼロ)重量部のガラス繊維とを含有する無機繊維ペーパー(すなわち、ガラス繊維を含有しないロックウールのペーパー)、無機繊維として75重量部のロックウールと25重量部のガラス繊維とを含有する無機繊維ペーパー、無機繊維として50重量部のロックウールと50重量部のガラス繊維とを含有する無機繊維ペーパー、無機繊維として25重量部のロックウールと75重量部のガラス繊維とを含有する無機繊維ペーパー、及び無機繊維として0(ゼロ)重量部のロックウールと100重量部のガラス繊維とを含有する無機繊維ペーパー(すなわち、ロックウールを含有しないガラス繊維のペーパー)を製造した。
【0079】
さらに、各無機繊維ペーパーを、機能剤としてシリカゾルを含有する溶液に浸漬し、次いで、浸漬後の当該各無機繊維ペーパーを乾燥することにより、当該機能剤を担持する5種類の無機繊維ペーパーを製造した。さらに、機能剤が担持された各無機繊維ペーパーの一部を、上記の実施例1と同様の条件で焼成して、焼成された5種類の無機繊維ペーパーを製造した。
【0080】
そして、焼成されていない5種類の無機繊維ペーパー及び焼成された5種類の無機繊維ペーパーの各々について、上記の実施例1と同様に、引張強度を測定した。また、比較例として、上記の実施例1と同様のセラミックスペーパーを製造し、その引張強度を測定した。
【0081】
図5には、各無機繊維ペーパー及びセラミックスペーパーについて、引張強度その他の特性を評価した結果の一例を示す。図5においては、各無機繊維ペーパーについて、ロックウール及びガラス繊維の配合量(重量部)を示すとともに、焼成されていない無機繊維ペーパー及びセラミックスペーパーについて、平均米坪(g/m2)、厚さ(μm)、平均密度(g/cm3)、長さ15mmあたりの引張強度(N/15mm)、強熱減量(%)、及び保水量(g/m2)を示し、焼成された無機繊維ペーパー及びセラミックスペーパーについて、長さ15mmあたりの引張強度(N/15mm)、機能剤の担持量(g/m2)、及び平均密度(g/cm3)を示している。なお、厚さとしては、10個の試験片について測定された値の算術平均値を示している。また、引張強度としては、3個の試験片について測定された値の算術平均値を示している。強熱減量は、JIS P8128に準拠した方法により焼成前後のペーパーの重量を測定し、焼成前のペーパーの重量(g)に対する、焼成により減少したペーパーの重量(g)の割合の百分率として算出した。また、保水量は、水を含浸させた試験片と乾燥した当該試験片との重量の差分(g)を当該試験片の面積(m2)で除して算出した。
【0082】
図5に示すように、焼成されていない無機繊維ペーパーの引張強度は、いずれもセラミックスペーパーの引張強度より低かった。これに対し、焼成された無機繊維ペーパーの引張強度は、当該無機繊維ペーパーに含有されるガラス繊維の配合比が増加するに従って増加した。
【0083】
すなわち、ガラス繊維の配合比が25重量部である焼成された無機繊維ペーパーの引張強度は、セラミックスペーパーの引張強度と同等になり、ガラス繊維の配合比がより高い焼成された無機繊維ペーパーの引張強度は、当該セラミックスペーパーの引張強度より高くなった。
【0084】
このように、主繊維としてロックウールを含有する無機繊維ペーパーが、平均繊維径と平均繊維長さとの組み合わせが適切であるガラス繊維を、適切な配合比で含有することにより、焼成後において、セラミックスペーパーと同等以上の引張強度を有することができることが確認された。
【0085】
なお、ガラス繊維の配合比が増加するに従って、無機繊維ペーパーの耐熱性が低下するとともに、製造に要するコストも増大する。このため、ロックウールとガラス繊維との配合比は、焼成後の引張強度がセラミックスペーパーの引張強度と同等に達する、75重量部対25重量部又はその近傍の範囲内とすることが好ましいと考えられた。
【0086】
[実施例3]
実施例3においては、主繊維として用いる無機繊維の種類と、無機繊維ペーパーの特性と、の関係を検討した。主繊維としては、ロックウール、セラミックス繊維又は生体溶解性繊維のいずれかを用いた。
【0087】
ロックウールとしては、上記の実施例1で用いられたものと同様のものを用いた。このロックウールは、その平均繊維径が3μmであり、直径212μm以上のショットの含有率が実質的にゼロ重量%であり、直径212μm未満のショットの含有率が15重量%であった。
【0088】
セラミックス繊維としては、アルミナシリカ繊維(ファインフレックス、ニチアス株式会社)を用いた。このセラミックス繊維は、その平均繊維径が3μmであり、直径212μm以上のショットの含有率が10重量%であり、直径212μm未満のショットの含有率が30重量%であった。
【0089】
生体溶解性繊維としては、シリカ−マグネシア−カルシア系繊維(ファインフレックス−E、ニチアス株式会社)を用いた。この生体溶解性繊維は、その平均繊維径が3μmであり、直径212μm以上のショットの含有率が10重量%であり、直径212μm未満のショットの含有率が30重量%であった。
【0090】
ガラス繊維としては、平均繊維径が6μmであり且つ平均繊維長さが6mmであるチョップドストランドを用いた。また、有機繊維として、パルプ、ポリビニルアルコール繊維、PET繊維を用いた。
【0091】
そして、第一の無機繊維ペーパーとして、75重量部のロックウールと、25重量部のガラス繊維と、15重量部の有機繊維と、を含有するスラリーから、上記の実施例1と同様の湿式抄紙法により、主繊維としてロックウールを含有する無機繊維ペーパー(ロックウールペーパー)を製造した。
【0092】
また、第二の無機繊維ペーパーとして、75重量部のセラミックス繊維と、25重量部のガラス繊維と、15重量部の有機繊維と、を含有するスラリーから、上記の実施例1と同様の湿式抄紙法により、主繊維としてセラミックス繊維を含有する無機繊維ペーパー(セラミックスペーパー)を製造した。
【0093】
また、第三の無機繊維ペーパーとして、75重量部の生体溶解性繊維と、25重量部のガラス繊維と、15重量部の有機繊維と、を含有するスラリーから、上記の実施例1と同様の湿式抄紙法により、主繊維として生体溶解性繊維を含有する無機繊維ペーパー(生体溶解性ペーパー)を製造した。
【0094】
そして、これらロックウールペーパー、セラミックスペーパー、生体溶解性ペーパーのそれぞれについて、コルゲート加工性と、ショットの脱落による孔の形成の有無と、を評価した。
【0095】
コルゲート加工性の評価に際しては、まず、互いに噛み合いながら回転する一対の歯車状コルゲーターを用いて、各ペーパーをコルゲート加工した。
【0096】
そして、コルゲート加工された各ペーパーを目視にて観察し、破断が生じておらず、波形のコルゲート形状を有している場合には加工性が良好と判断し、破断が生じているか、又はコルゲート形状が付与されていない場合には加工性が不良と判断した。
【0097】
ショット脱落による孔の形成の有無は、コルゲート加工された各ペーパーをマイクロスコープを用いて観察し、直径200μm以上の孔が存在する場合にはショット脱落による孔の形成があったと判断し、直径200μm以上の孔が存在しない場合にはショット脱落による孔の形成がなかったと判断した。
【0098】
図6には、各ペーパーについて、コルゲート加工性及びショット脱落による孔の形成の有無を評価した結果の一例を示す。図6に示すように、直径が212μm以上のショットを実質的に含有せず、直径が212μm未満のショットの含有率も低いロックウールを主繊維として含有するロックウールペーパーについては、コルゲート加工性が良好であり、且つショット脱落による孔の形成はないという優れた評価結果が得られた。
【0099】
一方、ショットの直径が比較的大きく、ショット含有率も比較的大きいセラミックスペーパーについては、コルゲート加工性は良好であるが、ショット脱落による孔の形成があったと評価された。
【0100】
また、ショットの直径が比較的大きく、ショット含有率も比較的大きい生体溶解性ペーパーについては、コルゲート加工性が不良であり、しかもショット脱落による孔の形成があったと評価された。
【0101】
このように、電気炉を用いて製造されたロックウールを主繊維として含有するロックウールペーパーは、セラミックスペーパーや生体溶解性ペーパーに比べて、コルゲート加工により適した特性を有していた。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の一例についての斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の一例についての断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るフィルターの一例についての斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る無機繊維ペーパーの引張強度を測定した結果の一例を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る無機繊維ペーパーの特性を評価した結果の一例を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る無機繊維ペーパーのコルゲート加工性を評価した結果の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0103】
1,2 ハニカム構造体、3 フィルター、10 コルゲート形状の無機繊維ペーパー(コルゲートペーパー)、11 セル、12 空隙、20 平坦形状の無機繊維ペーパー(平坦ペーパー)、30 筺体部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機繊維ペーパー及びこれを用いたハニカム構造体並びにフィルタ−に関し、特に、主繊維としてロックウールを含有する無機繊維ペーパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミック繊維の発癌性に関する問題に鑑みて、例えば、特許文献1においては、生体溶解性繊維を用いた不織布及びこれを用いたハニカム構造体が記載されている。
【特許文献1】特開2003−105662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、本発明の発明者らは、他の無機繊維を主繊維として用い、環境への負荷が小さい無機繊維ペーパーの開発を独自に進めてきた。しかしながら、例えば、コルゲート加工に適した特性を備え、且つ、ハニカム構造体を形成した場合に焼成後であっても十分な強度を備えることのできる無機繊維ペーパーを製造することは容易でなかった。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであって、環境への負荷が小さく且つハニカム構造体に適した無機繊維ペーパー及びこれを用いたハニカム構造体並びにフィルタ−を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る無機繊維ペーパーは、厚さが500μm以下であって、ロックウールを主繊維として含有し、ガラス繊維をさらに含有することを特徴とする。本発明によれば、環境への負荷が小さく且つハニカム構造体に適した無機繊維ペーパーを提供することができる。
【0006】
また、前記ガラス繊維は、その平均繊維径が3〜10μmの範囲内であることとしてもよい。こうすれば、無機繊維ペーパーは、ハニカム構造体により適した特性を有することができる。また、この場合、前記ガラス繊維は、その平均繊維長さが3〜15mmの範囲内であることとしてもよい。こうすれば、無機繊維ペーパーは、ハニカム構造体にさらに適した特性を有することができる。また、これらの場合、前記無機繊維ペーパーを構成する無機繊維は、前記ロックウールを60〜90重量%の範囲内で含有するとともに、前記ガラス繊維を10〜40重量%の範囲内で含有することとしてもよい。こうすれば、無機繊維ペーパーは、ハニカム構造体に特に適した特性を有することができる。
【0007】
また、前記無機繊維ペーパーは、その米坪が5〜500g/m2の範囲内であることとしてもよい。こうすれば、無機繊維ペーパーは、コルゲート加工やハニカム構造体の形成に適した特性を有することができる。また、前記ロックウールは、直径212μm以上のショットの含有率が2重量%以下であり、且つ直径212μm未満のショットの含有率が20重量%以下であることとしてもよい。こうすれば、無機繊維ペーパーは、コルゲート加工やハニカム構造体の形成により適した特性を有することができる。
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係るハニカム構造体は、コルゲート加工された前記いずれかの無機繊維ペーパーを有することを特徴とする。本発明によれば、環境への負荷が小さく、且つ十分な強度を有するハニカム構造体を提供することができる。
【0009】
また、前記ハニカム構造体は、焼成されていることとしてもよい。こうすれば、ハニカム構造体は、高温での使用に適した特性を有することができる。また、前記ハニカム構造体は、機能剤が担持されていることとしてもよい。こうすれば、ハニカム構造体は、機能剤の種類に応じた機能を有することができる。
【0010】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係るフィルタ−は、機能剤が担持された前記ハニカム構造体を有することを特徴とする。本発明によれば、環境への負荷が小さく、且つ十分な強度を有するフィルターを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は、本実施形態に限られるものではない。本実施形態に係る無機繊維ペーパー(以下、「本ペーパー」という。)は、厚さが500μm以下であって、ロックウールを主繊維として含有し、ガラス繊維をさらに含有する。
【0012】
本ペーパーの厚さは、その形状を維持するために必要な所定値以上であって、500μm以下であれば特に限られないが、例えば、10〜500μmの範囲内とすることができ、好ましくは20〜500μmの範囲内とすることができ、より好ましくは50〜500μmの範囲内とすることができ、特に好ましくは100〜500μmの範囲内とすることができる。
【0013】
本ペーパーは、ロックウール及びガラス繊維を含有するとともに、その厚さが上記の範囲内であることによって、コルゲート加工やハニカム構造体の形成に適した特性を有することができる。すなわち、この場合、本ペーパーは、例えば、コルゲート加工によって、破断することなく、コルゲーターの形状に対応した微細なコルゲート形状を有することができる。また、例えば、本ペーパーから形成されたハニカム構造体は、その形状を維持するために十分な強度を有することができ、また、機能剤の担持に適した大きな表面積を有することができる。
【0014】
本ペーパーを構成する無機繊維の主材料であるロックウールは、酸化ケイ素及び酸化カルシウムを主成分とする無機繊維である。ロックウールは、例えば、銑鉄製造時に銑鉄から分離された高炉スラグや、玄武岩等の天然岩石を主原料とし、キュポラや電気炉によって1500〜1600℃の高温で溶融された溶融スラグを繊維化することにより製造することができる。
【0015】
ロックウールは、自然界において適度に分解される特性を有する。このため、本ペーパーを構成する無機繊維の主材料としてロックウールを使用することにより、本ペーパーの環境に対する負荷をセラミックスに比べて効果的に低減することができる。
【0016】
ロックウールとしては、例えば、平均繊維径(1本の繊維の平均直径)が1〜10μmの範囲内のものを用いることができ、平均繊維径が2〜4μmの範囲内のものを好ましく用いることができる。
【0017】
また、ロックウールとしては、ショットの含有率が小さいものや、含有されるショットの直径が小さいものを好ましく用いることができる。具体的に、ロックウールとしては、例えば、直径212μm以上のショットの含有率が2重量%以下であり、且つ直径212μm未満のショットの含有率が20重量%以下であるものを好ましく用いることができ、直径212μm以上のショットの含有率が1重量%以下であり、且つ直径212μm未満のショットの含有率が15重量%以下であるものをより好ましく用いることができ、直径212μm以上のショットの含有率が0.5重量%以下であり、且つ直径212μm未満のショットの含有率が10重量%以下であるものを特に好ましく用いることができる。なお、ショットの含有率は、例えば、JIS Z8801の呼び寸法212μmのふるいを用いたJIS R3311に準拠した方法により測定することができる。
【0018】
ロックウール(特に、本ペーパーに含有されるロックウール)のショット含有率が上記の範囲内である場合には、本ペーパーのコルゲート加工における成形性を効果的に高めることができる。すなわち、この場合、例えば、本ペーパーにコルゲート形状を付与するためのコルゲート加工において、本ペーパーにおけるショットの脱落に伴う孔や傷の形成、本ペーパーの強度の低下、また、ショットとコルゲーターとの衝突による当該コルゲーターの損傷といった問題を効果的に回避することができる。また、この結果、コルゲート加工された本ペーパーを骨格の一部として有するハニカム構造体は、その形状を維持するために十分な強度を有することができる。
【0019】
また、ロックウールとしては、電気炉を用いて製造されたロックウールを好ましく用いることができる。すなわち、例えば、電気炉を用いた高温での溶融を行うとともに、高速化されたスピニングにより繊維化された、平均繊維径が上記の好適な範囲内であって、且つショットの含有率が上記の好適な範囲内であるロックウールを好ましく用いることができる。また、繊維化後に、ショット含有率を低減するための処理(脱ショット処理)が施されたロックウールを用いることもできる。
【0020】
本ペーパーは、ロックウールに加えて、ガラス繊維を含有することにより、厚さ500μm以下の無機繊維ペーパーでありながら、コルゲート加工やハニカム構造体の形成に適した特性を有することができる。
【0021】
すなわち、例えば、従来、ハニカム構造体の形成に用いられていた無機繊維ペーパーにおいて、主繊維をセラミックス繊維からロックウールへと単に置き換えるだけでは、コルゲート加工やハニカム構造体の形成に適した特性を実現することが困難である。
【0022】
本ペーパーに含有されるガラス繊維は、本ペーパーの特性を、コルゲート加工やハニカム構造体の形成に適するよう向上させることのできるものであれば特に限られず用いることができる。
【0023】
具体的に、ガラス繊維としては、例えば、その平均繊維径が3〜10μmの範囲内であるものを好ましく用いることができる。この場合、ガラス繊維としては、その平均繊維径が10μm未満のものをより好ましく用いることができる。すなわち、例えば、平均繊維径が3〜9μmの範囲内のガラス繊維をより好ましく用いることができ、平均繊維径が5〜7μmの範囲のものを特に好ましく用いることができる。なお、ガラス繊維の平均繊維径は、例えば、JIS A9504に準拠した方法により繊維の平均太さとして測定することができる。
【0024】
ガラス繊維の平均繊維径が上記の範囲内である場合、本ペーパーは、主繊維としてロックウールを含有し、且つ厚さが500μm以下でありながら、コルゲート加工やハニカム構造体の形成に適した特性を有することができる。
【0025】
すなわち、この場合、例えば、本ペーパーは、コルゲート加工時に張力が負荷されても破断しない十分な強度を有することができる。また、例えば、コルゲート加工された本ペーパーにより形成されたハニカム構造体は、焼成後においても、その三次元的な形状を維持できる十分な強度を有することができる。
【0026】
なお、強度が比較的小さいロックウールを主繊維とし、且つ厚さが500μm以下である無機繊維ペーパーにおいて、含有されるガラス繊維の平均繊維径が10μmを超える場合には、例えば、当該ガラス繊維同士の絡み合いが不十分となる等の理由により、当該無機繊維ペーパーに十分な強度を付与することが困難となり得る。また、ガラス繊維の平均繊維径が3μm未満の場合には、例えば、当該ガラス繊維による補強の効果が不十分となり、無機繊維ペーパーに十分な強度を付与することが困難となり得る。
【0027】
また、ガラス繊維としては、その平均繊維径が上記の範囲内であることに加えて、その平均繊維長さ(1本の繊維の平均長さ)が3〜15mmの範囲内であるものを好ましく用いることができる。すなわち、ガラス繊維としては、例えば、平均繊維径が3〜10μmの範囲内であって且つ平均繊維長さが3〜15mmの範囲内のものを好ましく用いることができ、平均繊維径が3〜9μmの範囲内であって且つ平均繊維長さが4〜10mmの範囲内のものをより好ましく用いることができ、平均繊維径が5〜7μmの範囲内であって且つ平均繊維長さが5〜7mmの範囲内のものを特に好ましく用いることができる。なお、ガラス繊維の平均繊維長さは、例えば、ガラス繊維の顕微鏡写真を画像解析装置で解析することにより測定することができる。
【0028】
ガラス繊維の平均繊維径が上記の範囲内であって、且つ当該ガラス繊維の平均繊維長さが上記の範囲内である場合、本ペーパーは、コルゲート加工やハニカム構造体の形成に特に適した特性を有することができる。
【0029】
すなわち、この場合、例えば、コルゲート加工時に張力が負荷されても破断しない十分な強度を確実に有することができる。また、例えば、コルゲート加工された本ペーパーにより形成されたハニカム構造体は、焼成後においても、その三次元的な形状を維持できる十分な強度を確実に有することができる。
【0030】
なお、ガラス繊維の平均繊維径が上記の好適な範囲であっても、ガラス繊維の平均繊維長さが15mmを超える場合には、不都合が生じ得る。すなわち、この場合、例えば、ロックウールとガラス繊維とを含有する湿式抄紙用スラリー中において、当該ガラス繊維が適切に分散されないために、厚さが500μm以下の無機繊維ペーパーを製造することが困難となり得る。また、ガラス繊維の平均繊維径が上記の好適な範囲であっても、ガラス繊維の平均繊維長さが3mm未満の場合には、例えば、当該ガラス繊維による補強の効果が不十分となり、無機繊維ペーパーに対して、コルゲート加工やハニカム構造体の形成に適した強度を付与することが困難となり得る。
【0031】
また、本ペーパーを構成する無機繊維は、ロックウールを60〜90重量%の範囲内で含有するとともに、ガラス繊維を10〜40重量%の範囲内で含有することが好ましい。さらに、この場合、本ペーパーを構成する無機繊維は、ロックウールを65〜85重量%の範囲内で含有するとともにガラス繊維を15〜35重量%の範囲内で含有することがより好ましく、ロックウールを70〜80重量%の範囲内で含有するとともにガラス繊維を20〜30重量%の範囲内で含有することが特に好ましい。
【0032】
本ペーパーに含有される無機繊維中に占めるロックウール及びガラス繊維の割合がそれぞれ上記の範囲内である場合、本ペーパーは、環境への負荷が小さく、耐熱性を備えながら、コルゲート加工やハニカム構造体の形成に適した特性を有することができる。
【0033】
また、この場合、さらに、本ペーパーに含有されるガラス繊維の平均繊維径が上記の好適な範囲内であることによって、本ペーパーの特性はより優れたものとなる。特に、ガラス繊維の平均繊維径及び平均繊維長さがそれぞれ上記の好適な範囲である場合には、本ペーパーの特性は極めて優れたものとなる。
【0034】
また、本ペーパーは、500μm以下という薄さに加えて、所定の緻密さを有することが好ましい。すなわち、本ペーパーは、その米坪(1m2あたりの重量)が5〜500g/m2の範囲内であることが好ましく、10〜300g/m2の範囲内であることがより好ましく、15〜150g/m2の範囲内であることが特に好ましい。なお、米坪は、例えば、JIS P8124に準拠した紙及び板紙の坪量の測定方法により測定することができる。本ペーパーの米坪が上記の範囲内である場合、本ペーパーは、コルゲート加工やハニカム構造体の形成に適した特性を有することができる。
【0035】
また、本ペーパーは、ロックウール及びガラス繊維以外の無機繊維を含有することもできる。このような他の無機繊維としては、例えば、アルミナ繊維、ムライト繊維、炭素繊維、金属繊維を用いることができる。
【0036】
ただし、本ペーパーに含有される無機繊維に占めるロックウールの割合とガラス繊維の割合との合計は、50重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましく、75重量%以上であることが特に好ましい。ロックウールの割合とガラス繊維の割合との合計が上記の範囲内である場合、本ペーパーは、上述のようなロックウール及びガラス繊維に基づく優れた特性を確実に有することができる。
【0037】
また、本ペーパーは、無機繊維に加えて、有機繊維を含有することもできる。有機繊維としては、例えば、パルプ、ポリビニルアルコール繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、アクリル繊維を用いることができる。また、本ペーパーは、バインダーを含有することもできる。バインダーとしては、例えば、シリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾル等の無機バインダーや、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の有機バインダーを用いることができる。これら有機繊維やバインダーとしては、例えば、湿式抄紙法により本ペーパーを製造するために適したものを適宜選択して用いることができる。
【0038】
ただし、本ペーパーは、焼成後において、無機繊維を30重量%以上含有することが好ましく、50重量%以上含有することがより好ましく、70重量%以上含有することが特に好ましい。すなわち、本ペーパーは、焼成により有機繊維やバインダー等の有機成分の含有量が低減されたものとすることができ、例えば、焼成により有機繊維やバインダー等の有機成分が除去されて、実質的に当該有機成分を含有しない、無機繊維からなるペーパーとすることもできる。無機繊維の含有量が上記の範囲である場合、本ペーパーは、例えば、焼成後においても適切な強度を有することができる。
【0039】
また、本ペーパーとしては、湿式抄紙により製造されたものを好ましく用いることができる。すなわち、この場合、本ペーパーを製造する方法においては、まず、無機繊維として主にロックウールを含有するとともにガラス繊維をさらに含有するスラリーを調製する。このスラリーは、必要に応じて、有機繊維やバインダーを含有することができる。そして、所定の抄紙機を用いた湿式抄紙法により、このスラリーから、無機繊維を主成分とする厚さが500μm以下の不織布として、本ペーパーを製造することができる。
【0040】
本実施形態に係るハニカム構造体(以下、「本構造体」という。)は、コルゲート加工された本ペーパーを有する。すなわち、本構造体は、コルゲート形状の本ペーパーを含む、ハニカム形状の骨格を有している。
【0041】
図1は、本構造体の一例であるハニカム構造体1の斜視図であり、図2は、当該ハニカム構造体1の断面図である。図1及び図2に示すように、ハニカム構造体1は、波形のコルゲート状を有する本ペーパー(以下、「コルゲートペーパー10」という。)と、コルゲート加工されていない平坦形状の本ペーパー(以下、「平坦ペーパー20」という。)と、が積層されることにより構成されたハニカム形状の構造体である。
【0042】
すなわち、このハニカム構造体1は、1つのコルゲートペーパー10を、対向する一対の平坦ペーパー20a,20bで挟むことにより構成されている。コルゲートペーパー10は、コルゲート加工により形成された、連続して連なる複数のセル11を有している。
【0043】
このセル11の湾曲した形状は、コルゲートペーパー10の製造に用いられるコルゲーターの形状に対応している。すなわち、例えば、コルゲートペーパー10が、互いに噛み合いながら回転する一対の歯車状コルゲーターを用いて製造された場合には、セル11は、当該歯車の歯の形状に対応した形状を有することとなる。
【0044】
ここで、セル11の形状は、真円に近いほど好ましい。そこで、無機繊維ペーパーのコルゲート加工においては、例えば、歯の先端の形状が真円に近い歯車状のコルゲーターが用いられる。しかしながら、セラミックス繊維を主繊維として含有する従来の無機繊維ペーパー(セラミックスペーパー)を、このようなコルゲーターを用いてコルゲート加工した場合には、当該セラミックスペーパーが有するセルの形状は、三角形等、真円に近いとはいえない形状とならざるを得なかった。これは、例えば、セラミックスペーパーがコルゲーター上で滑ってしまう、すなわち、セラミックスペーパーの当該コルゲーターに対する追従性が低いことが原因である。
【0045】
この点、本ペーパーは、従来のセラミックスペーパーに比べて、コルゲーターに対する追従性に優れている。したがって、本ペーパーは、従来のセラミックスペーパーに比べて、より真円に近い形状のセル11を有することができる。
【0046】
図1及び図2に示すハニカム構造体1は、このようなコルゲートペーパー10の各セル11の頂点部分と、平坦ペーパー20a,20bと、を接着剤で接着することにより形成することができる。すなわち、例えば、コルゲートペーパー10の各セル11の頂点部分に接着剤を塗布し、次いで、当該コルゲートペーパー10の各セル11の頂点部分と、一方の平坦ペーパー20a及び他方の平坦ペーパー20bと、をそれぞれ圧接することにより、ハニカム構造体1を形成することができる。
【0047】
この結果、ハニカム構造体1は、各セル11と、平坦ペーパー20a,20bと、の間に空隙12が形成されたハニカム形状を有することができる。この空隙12は、例えば、後述するように、機能剤を担持するための空間として利用することができ、また、当該機能剤により処理する流体が流通するための通路として利用することができる。
【0048】
また、ハニカム構造体1において、コルゲートペーパー10の厚さT1及び平坦ペーパー20a,20bの厚さT2は、いずれも500μm以下である。なお、コルゲート加工により、コルゲートペーパー10の厚さT1は、平坦ペーパー20a,20bの厚さT2よりも僅かに小さくなることもある。
【0049】
これに対し、コルゲートペーパー10のセル11の高さH(ハニカム構造体1においては、一方の平坦ペーパー20aと他方の平坦ペーパー20bとの距離)は、例えば、0.5〜50mmの範囲内とすることができ、好ましくは0.7〜30mmの範囲内とすることができ、より好ましくは1.0〜20mmの範囲内とすることができる。
【0050】
また、コルゲートペーパー10のセル11の幅W(すなわち、複数のセル11の間隔)は、例えば、1〜50mmの範囲内とすることができ、好ましくは1.5〜30mmの範囲内とすることができ、より好ましくは2.0〜20mmの範囲内とすることができる。
【0051】
また、本構造体は、多段に積層されたコルゲートペーパー10を含むハニカム構造体とすることができる。図3は、本構造体としてこのようなハニカム構造体2を有する、本実施形態に係るフィルター(以下、「本フィルター3」という。)の一例についての斜視図である。
【0052】
図3に示すように、本フィルター3は、交互に積層されたコルゲートペーパー10と平坦ペーパー20とを含むハニカム構造体2と、当該ハニカム構造体2の外周を囲む矩形の枠状の筺体部30と、を有している。筺体部30を構成する材料としては、例えば、ステンレス鋼(SUS)等を用いることができる。このハニカム構造体2は、例えば、図1及び図2に示したハニカム構造体1を複数積層することにより形成することができる。
【0053】
また、このハニカム構造体2には、機能剤(不図示)が担持されている。この機能剤としては、本フィルター3の用途に応じて、適切な機能を有するものを適宜選択して用いることができる。
【0054】
すなわち、機能剤としては、例えば、空気等の気相中から、揮発性有機化合物(volatile organic compounds:VOC)、アンモニア等の塩基性ガス、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、塩素等の酸性ガスを除去するための触媒や吸着剤を用いることができる。具体的に、例えば、ゼオライト、金属酸化物(酸化チタン等)、活性炭、シリカゲルを用いることができる。
【0055】
このような機能剤は、例えば、当該機能剤を含有する溶液中に、ハニカム構造体2を所定時間浸漬し、その後、当該ハニカム構造体2を乾燥することにより、当該ハニカム構造体2に担持することができる。すなわち、機能剤は、ハニカム構造体2を構成するコルゲートペーパー10及び平坦ペーパー20の表面に固定される。
【0056】
このような機能剤が担持されたハニカム構造体2を有する本フィルター3は、当該機能剤によって、空気等の気体を浄化することができる。すなわち、例えば、本フィルター3において、コルゲートペーパー10のセル11と平坦ペーパー20との間に形成された空隙12(図2参照)に、処理の対象となる気体を通過させることにより、当該気体中に含有されているVOC等の有害物質を効果的に除去することができる。
【0057】
具体的に、例えば、本フィルター3のハニカム構造体2の一方側の表面から、当該本ハニカム構造体2の空隙12を介して、図3に示す矢印Aの指す方向に、有害物質を含有する気体を流通させる。この結果、ハニカム構造体2の一方側の表面から排出される気体に含有される有害物質の濃度を、当該ハニカム構造体2内を通過する前の気体中の濃度に比べて、効果的に低減することができる。
【0058】
また、ハニカム構造体2は、焼成されているハニカム構造体とすることができる。すなわち、この場合、例えば、まず、コルゲートペーパー10と平坦ペーパー20とを積層してハニカム構造体2を形成する。次いで、このハニカム構造体2に機能剤を担持する。そして、この機能剤が担持されたハニカム構造体2を焼成する。
【0059】
焼成は、例えば、ハニカム構造体2を、300〜800℃の範囲内の温度で、30分〜24時間程度加熱することにより行うことができる。この焼成により、ハニカム構造体2に含有されていた有機成分(有機繊維や有機バインダー等)は実質的に除去される。したがって、焼成後のハニカム構造体2は、主にコルゲートペーパー10及び平坦ペーパー20を構成するロックウール及びガラス繊維によって支持される。
【0060】
このため、本構造体が焼成されたハニカム構造体2である場合、本構造体が十分な強度を有するためには、本ペーパー(すなわち、コルゲートペーパー10及び平坦ペーパー20)は、平均繊維径が上述したような好適な範囲内であるガラス繊維を含有することが好ましい。
【0061】
また、この場合、本ペーパーは、平均繊維径及び平均長さがそれぞれ上述したような好適な範囲であるガラス繊維を含有することがより好ましい。さらに、この場合、本ペーパーは、平均繊維径及び平均長さがそれぞれ上述したような好適な範囲であるガラス繊維を、上述したような好適な範囲内の配合比で含有することが特に好ましい。
【0062】
なお、本構造体は、図3に示すように、コルゲートペーパー10と平坦ペーパー20とが平積みされて構成されるものに限られず、例えば、図1及び図2に示すようなハニカム構造体1を同心円状に巻くことにより形成される、ロール状の構造体とすることもできる。また、この焼成前のハニカム構造体2に無機バインダーを含浸させておくことによって、当該ハニカム構造体2に硬化処理を加えることもできる。また、ガラス繊維の平均繊維径及び平均長さ以外にも、本ペーパーの厚さ及び米坪、本ペーパーに含有されるロックウールのショット含有率、本ペーパーに含有される無機繊維中におけるロックウールの含有量とガラス繊維の含有量との合計等について上述した好適な範囲は、それぞれ焼成前及び焼成後の本構造体を構成する本ペーパーについても当てはまる。
【0063】
次に、具体的な実施例について説明する。
【0064】
[実施例1]
実施例1においては、ガラス繊維の平均繊維径及び平均繊維長さと、当該ガラス繊維とロックウールとを含有する無機繊維ペーパー(ロックウールペーパー)の強度と、の関係を検討した。
【0065】
ロックウールとしては、電気炉を用いて製造されたロックウールを用いた。このロックウールの平均繊維径は2.2μmであった。また、このロックウールは、直径212μm以上のショットの含有率が1.0重量%以下であり、直径212μm未満のショットの含有率が18.9重量%以下であった。
【0066】
ガラス繊維としては、平均繊維径と平均繊維長さとの組み合わせが互いに異なる5種類のチョップドストランドを用いた。すなわち、平均繊維径が6μmであり且つ平均繊維長さが3mmであるガラス繊維、平均繊維径が6μmであり且つ平均繊維長さが6mmであるガラス繊維、平均繊維径が6μmであり且つ平均繊維長さが10mmであるガラス繊維、平均繊維径が10μmであり且つ平均繊維長さが6mmであるガラス繊維、又は平均繊維径が10μmであり且つ平均繊維長さが13mmであるガラス繊維のいずれかを用いた。また、有機繊維として、パルプ、ポリビニルアルコール繊維、PET繊維を用いた。
【0067】
そして、無機繊維として75重量部のロックウールと25重量部のガラス繊維とを含有し、さらに30重量部の有機繊維を含有するスラリーを調製した。次いで、抄紙機を用いた湿式抄紙法により、このスラリーから厚さが200μmであって、ロックウールを主繊維として含有し、さらに上記5種類のガラス繊維のいずれかを含有する5種類のロックウールペーパーを製造した。さらに、各ロックウールペーパーの一部にシリカゾルを含浸後、500℃で3時間加熱することにより焼成し、焼成された5種類のロックウールペーパーを製造した。
【0068】
そして、焼成されていない5種類のロックウールペーパー及び焼成された5種類のロックウールペーパーの各々から、長さ100〜200mm、幅15mmの試験片を作製し、JIS P8113に準拠した方法により、当該試験片の引張強度を測定した。
【0069】
また、比較例として、同様の湿式抄紙法により、厚さが200μmであって、平均繊維径が2.8μmであるセラミックス繊維を主繊維として含有し、ガラス繊維を含有しない無機繊維ペーパー(セラミックスペーパー)を製造した。そして、このセラミックスペーパーについても、同様に、焼成前及び焼成後における引張強度を測定した。
【0070】
図4には、引張強度を測定した結果の一例を示す。図4において、横軸は、ロックウールペーパーに含有されたガラス繊維の平均繊維径と平均繊維長さとの組み合わせを示し(ただし、「比較例」はセラミックスペーパーを示す。)、縦軸は、各ペーパーからなる試験片の長さ15mmあたりの引張強度(N/15mm)を示す。また、図4において、白抜きで示される棒は焼成前の結果を示し、黒塗りで示される棒は焼成後の結果を示す。
【0071】
図4に示すように、焼成されていない各ロックウールペーパーの引張強度は、含有されるガラス繊維の種類によって大きな違いは見られず、焼成されていないセラミックスペーパーの引張強度よりも低かった。これに対し、焼成された各ロックウールペーパーの引張強度は、焼成されたセラミックスペーパーの引張強度よりも顕著に高くなった。
【0072】
また、平均繊維径が6μmのガラス繊維を含有する焼成後のロックウールペーパーの引張強度は、平均繊維径が10μmのガラス繊維を含有する焼成後のロックウールペーパーの引張強度よりも高かった。特に、平均繊維径が6μmであり且つ平均繊維長さが6mmであるガラス繊維を含有する焼成後のロックウールペーパーの引張強度は、平均繊維径が6μmであり且つ繊維長さが3mm又は10mmであるガラス繊維を含有する焼成後のロックウールペーパーの引張強度よりも高かった。
【0073】
このように、平均繊維径が6μm又は10μmのガラス繊維を含有することにより、焼成されたロックウールペーパーの引張強度は、セラミックスペーパーの引張強度を十分に上回ることができた。
【0074】
また、平均繊維径が10μmを下回る、6μmのガラス繊維を含有することにより、焼成されたロックウールペーパーの引張強度を特に高めることができた。さらに、平均繊維径が6μmであり且つ平均繊維長さが6μmであるガラス繊維を含有するロックウールペーパーは、特に高い引張強度を有することができた。
【0075】
[実施例2]
実施例2においては、ロックウールとガラス繊維との配合比と、無機繊維ペーパーの特性と、の関係を検討した。
【0076】
ロックウールとしては、上記の実施例1で用いられたものと同様のものを用いた。ガラス繊維としては、平均繊維径が6μmであり且つ平均繊維長さが6mmであるチョップドストランドを用いた。また、有機繊維として、パルプ、ポリビニルアルコール繊維、PET繊維を用いた。
【0077】
そして、上記の実施例1と同様の湿式抄紙法により、無機繊維としてロックウールとガラス繊維とを互いに異なる配合比で含有するスラリーから、当該配合比が互いに異なる5種類の無機繊維ペーパーを製造した。
【0078】
すなわち、無機繊維として100重量部のロックウールと0(ゼロ)重量部のガラス繊維とを含有する無機繊維ペーパー(すなわち、ガラス繊維を含有しないロックウールのペーパー)、無機繊維として75重量部のロックウールと25重量部のガラス繊維とを含有する無機繊維ペーパー、無機繊維として50重量部のロックウールと50重量部のガラス繊維とを含有する無機繊維ペーパー、無機繊維として25重量部のロックウールと75重量部のガラス繊維とを含有する無機繊維ペーパー、及び無機繊維として0(ゼロ)重量部のロックウールと100重量部のガラス繊維とを含有する無機繊維ペーパー(すなわち、ロックウールを含有しないガラス繊維のペーパー)を製造した。
【0079】
さらに、各無機繊維ペーパーを、機能剤としてシリカゾルを含有する溶液に浸漬し、次いで、浸漬後の当該各無機繊維ペーパーを乾燥することにより、当該機能剤を担持する5種類の無機繊維ペーパーを製造した。さらに、機能剤が担持された各無機繊維ペーパーの一部を、上記の実施例1と同様の条件で焼成して、焼成された5種類の無機繊維ペーパーを製造した。
【0080】
そして、焼成されていない5種類の無機繊維ペーパー及び焼成された5種類の無機繊維ペーパーの各々について、上記の実施例1と同様に、引張強度を測定した。また、比較例として、上記の実施例1と同様のセラミックスペーパーを製造し、その引張強度を測定した。
【0081】
図5には、各無機繊維ペーパー及びセラミックスペーパーについて、引張強度その他の特性を評価した結果の一例を示す。図5においては、各無機繊維ペーパーについて、ロックウール及びガラス繊維の配合量(重量部)を示すとともに、焼成されていない無機繊維ペーパー及びセラミックスペーパーについて、平均米坪(g/m2)、厚さ(μm)、平均密度(g/cm3)、長さ15mmあたりの引張強度(N/15mm)、強熱減量(%)、及び保水量(g/m2)を示し、焼成された無機繊維ペーパー及びセラミックスペーパーについて、長さ15mmあたりの引張強度(N/15mm)、機能剤の担持量(g/m2)、及び平均密度(g/cm3)を示している。なお、厚さとしては、10個の試験片について測定された値の算術平均値を示している。また、引張強度としては、3個の試験片について測定された値の算術平均値を示している。強熱減量は、JIS P8128に準拠した方法により焼成前後のペーパーの重量を測定し、焼成前のペーパーの重量(g)に対する、焼成により減少したペーパーの重量(g)の割合の百分率として算出した。また、保水量は、水を含浸させた試験片と乾燥した当該試験片との重量の差分(g)を当該試験片の面積(m2)で除して算出した。
【0082】
図5に示すように、焼成されていない無機繊維ペーパーの引張強度は、いずれもセラミックスペーパーの引張強度より低かった。これに対し、焼成された無機繊維ペーパーの引張強度は、当該無機繊維ペーパーに含有されるガラス繊維の配合比が増加するに従って増加した。
【0083】
すなわち、ガラス繊維の配合比が25重量部である焼成された無機繊維ペーパーの引張強度は、セラミックスペーパーの引張強度と同等になり、ガラス繊維の配合比がより高い焼成された無機繊維ペーパーの引張強度は、当該セラミックスペーパーの引張強度より高くなった。
【0084】
このように、主繊維としてロックウールを含有する無機繊維ペーパーが、平均繊維径と平均繊維長さとの組み合わせが適切であるガラス繊維を、適切な配合比で含有することにより、焼成後において、セラミックスペーパーと同等以上の引張強度を有することができることが確認された。
【0085】
なお、ガラス繊維の配合比が増加するに従って、無機繊維ペーパーの耐熱性が低下するとともに、製造に要するコストも増大する。このため、ロックウールとガラス繊維との配合比は、焼成後の引張強度がセラミックスペーパーの引張強度と同等に達する、75重量部対25重量部又はその近傍の範囲内とすることが好ましいと考えられた。
【0086】
[実施例3]
実施例3においては、主繊維として用いる無機繊維の種類と、無機繊維ペーパーの特性と、の関係を検討した。主繊維としては、ロックウール、セラミックス繊維又は生体溶解性繊維のいずれかを用いた。
【0087】
ロックウールとしては、上記の実施例1で用いられたものと同様のものを用いた。このロックウールは、その平均繊維径が3μmであり、直径212μm以上のショットの含有率が実質的にゼロ重量%であり、直径212μm未満のショットの含有率が15重量%であった。
【0088】
セラミックス繊維としては、アルミナシリカ繊維(ファインフレックス、ニチアス株式会社)を用いた。このセラミックス繊維は、その平均繊維径が3μmであり、直径212μm以上のショットの含有率が10重量%であり、直径212μm未満のショットの含有率が30重量%であった。
【0089】
生体溶解性繊維としては、シリカ−マグネシア−カルシア系繊維(ファインフレックス−E、ニチアス株式会社)を用いた。この生体溶解性繊維は、その平均繊維径が3μmであり、直径212μm以上のショットの含有率が10重量%であり、直径212μm未満のショットの含有率が30重量%であった。
【0090】
ガラス繊維としては、平均繊維径が6μmであり且つ平均繊維長さが6mmであるチョップドストランドを用いた。また、有機繊維として、パルプ、ポリビニルアルコール繊維、PET繊維を用いた。
【0091】
そして、第一の無機繊維ペーパーとして、75重量部のロックウールと、25重量部のガラス繊維と、15重量部の有機繊維と、を含有するスラリーから、上記の実施例1と同様の湿式抄紙法により、主繊維としてロックウールを含有する無機繊維ペーパー(ロックウールペーパー)を製造した。
【0092】
また、第二の無機繊維ペーパーとして、75重量部のセラミックス繊維と、25重量部のガラス繊維と、15重量部の有機繊維と、を含有するスラリーから、上記の実施例1と同様の湿式抄紙法により、主繊維としてセラミックス繊維を含有する無機繊維ペーパー(セラミックスペーパー)を製造した。
【0093】
また、第三の無機繊維ペーパーとして、75重量部の生体溶解性繊維と、25重量部のガラス繊維と、15重量部の有機繊維と、を含有するスラリーから、上記の実施例1と同様の湿式抄紙法により、主繊維として生体溶解性繊維を含有する無機繊維ペーパー(生体溶解性ペーパー)を製造した。
【0094】
そして、これらロックウールペーパー、セラミックスペーパー、生体溶解性ペーパーのそれぞれについて、コルゲート加工性と、ショットの脱落による孔の形成の有無と、を評価した。
【0095】
コルゲート加工性の評価に際しては、まず、互いに噛み合いながら回転する一対の歯車状コルゲーターを用いて、各ペーパーをコルゲート加工した。
【0096】
そして、コルゲート加工された各ペーパーを目視にて観察し、破断が生じておらず、波形のコルゲート形状を有している場合には加工性が良好と判断し、破断が生じているか、又はコルゲート形状が付与されていない場合には加工性が不良と判断した。
【0097】
ショット脱落による孔の形成の有無は、コルゲート加工された各ペーパーをマイクロスコープを用いて観察し、直径200μm以上の孔が存在する場合にはショット脱落による孔の形成があったと判断し、直径200μm以上の孔が存在しない場合にはショット脱落による孔の形成がなかったと判断した。
【0098】
図6には、各ペーパーについて、コルゲート加工性及びショット脱落による孔の形成の有無を評価した結果の一例を示す。図6に示すように、直径が212μm以上のショットを実質的に含有せず、直径が212μm未満のショットの含有率も低いロックウールを主繊維として含有するロックウールペーパーについては、コルゲート加工性が良好であり、且つショット脱落による孔の形成はないという優れた評価結果が得られた。
【0099】
一方、ショットの直径が比較的大きく、ショット含有率も比較的大きいセラミックスペーパーについては、コルゲート加工性は良好であるが、ショット脱落による孔の形成があったと評価された。
【0100】
また、ショットの直径が比較的大きく、ショット含有率も比較的大きい生体溶解性ペーパーについては、コルゲート加工性が不良であり、しかもショット脱落による孔の形成があったと評価された。
【0101】
このように、電気炉を用いて製造されたロックウールを主繊維として含有するロックウールペーパーは、セラミックスペーパーや生体溶解性ペーパーに比べて、コルゲート加工により適した特性を有していた。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の一例についての斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の一例についての断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るフィルターの一例についての斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る無機繊維ペーパーの引張強度を測定した結果の一例を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る無機繊維ペーパーの特性を評価した結果の一例を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る無機繊維ペーパーのコルゲート加工性を評価した結果の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0103】
1,2 ハニカム構造体、3 フィルター、10 コルゲート形状の無機繊維ペーパー(コルゲートペーパー)、11 セル、12 空隙、20 平坦形状の無機繊維ペーパー(平坦ペーパー)、30 筺体部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが500μm以下であって、
ロックウールを主繊維として含有し、
ガラス繊維をさらに含有する
ことを特徴とする無機繊維ペーパー。
【請求項2】
前記ガラス繊維は、その平均繊維径が3〜10μmの範囲内である
ことを特徴とする請求項1に記載された無機繊維ペーパー。
【請求項3】
前記ガラス繊維は、その平均繊維長さが3〜15mmの範囲内である
ことを特徴とする請求項2に記載されたロックウールペーパー。
【請求項4】
前記無機繊維ペーパーを構成する無機繊維は、前記ロックウールを60〜90重量%の範囲内で含有するとともに、前記ガラス繊維を10〜40重量%の範囲内で含有する
ことを特徴とする請求項2又は3に記載された無機繊維ペーパー。
【請求項5】
その米坪が5〜500g/m2の範囲内である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載された無機繊維ペーパー。
【請求項6】
前記ロックウールは、直径212μm以上のショットの含有率が2重量%以下であり、且つ直径212μm未満のショットの含有率が20重量%以下である
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載された無機繊維ペーパー。
【請求項7】
コルゲート加工された請求項1乃至6のいずれかに記載された無機繊維ペーパーを有する
ことを特徴とするハニカム構造体。
【請求項8】
焼成されている
ことを特徴とする請求項7に記載されたハニカム構造体。
【請求項9】
機能剤が担持されている
ことを特徴とする請求項7又は8に記載されたハニカム構造体。
【請求項10】
請求項9に記載されたハニカム構造体を有する
ことを特徴とするフィルター。
【請求項1】
厚さが500μm以下であって、
ロックウールを主繊維として含有し、
ガラス繊維をさらに含有する
ことを特徴とする無機繊維ペーパー。
【請求項2】
前記ガラス繊維は、その平均繊維径が3〜10μmの範囲内である
ことを特徴とする請求項1に記載された無機繊維ペーパー。
【請求項3】
前記ガラス繊維は、その平均繊維長さが3〜15mmの範囲内である
ことを特徴とする請求項2に記載されたロックウールペーパー。
【請求項4】
前記無機繊維ペーパーを構成する無機繊維は、前記ロックウールを60〜90重量%の範囲内で含有するとともに、前記ガラス繊維を10〜40重量%の範囲内で含有する
ことを特徴とする請求項2又は3に記載された無機繊維ペーパー。
【請求項5】
その米坪が5〜500g/m2の範囲内である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載された無機繊維ペーパー。
【請求項6】
前記ロックウールは、直径212μm以上のショットの含有率が2重量%以下であり、且つ直径212μm未満のショットの含有率が20重量%以下である
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載された無機繊維ペーパー。
【請求項7】
コルゲート加工された請求項1乃至6のいずれかに記載された無機繊維ペーパーを有する
ことを特徴とするハニカム構造体。
【請求項8】
焼成されている
ことを特徴とする請求項7に記載されたハニカム構造体。
【請求項9】
機能剤が担持されている
ことを特徴とする請求項7又は8に記載されたハニカム構造体。
【請求項10】
請求項9に記載されたハニカム構造体を有する
ことを特徴とするフィルター。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2010−13773(P2010−13773A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175995(P2008−175995)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】
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