説明

無機質球状化粒子製造用バーナ

【課題】逆火を生じず、効率よく無機質球状化粒子を製造でき、さらに原料粉体の平均粒径にあった球状化処理を行える無機質球状化粒子製造用バーナを得る。
【解決手段】先端に粉体分散板2を設けた原料供給路1Aと、原料供給路の外周の第1酸素供給路4Aと、第1酸素供給路の外周の燃料供給路5Aと、燃料供給路の外周の第2酸素供給路6Aと、第2酸素供給路の外周の第3酸素供給路7Aと、各供給路の先端に形成した燃焼室8と備え、前記第1酸素供給路は、中心軸に平行に酸素を噴出する複数の第1酸素噴出孔4Bを、前記燃料通路は、中心軸に平行に燃料を噴出する複数の燃料噴出孔5Bを、前記第2酸素供給路は、燃焼室の側面から燃焼室内に旋回流を形成する方向に酸素を噴出する複数の第2酸素噴出孔6Bを、前記第3酸素供給路は、第2酸素噴出孔の下流側で中心軸方向に向けて酸素を噴出する複数の第3酸素噴出孔7Bを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機質球状化粒子を製造する際に使用されるバーナと、このバーナを使用した無機質球状化粒子製造装置ならびにこの装置を使用した無機質球状化粒子の製造方法および得られた球状粒子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無機質球状化粒子は、粉砕した原料粉体を高温の火炎中で溶融し、表面張力により球状化させたものである。例えば、原料として珪石を用いる高純度の球状シリカは、半導体素子のエポキシ封止材用の充填材として広く使用されており、球状化により充填材の流動性の向上、高充填、耐磨耗性向上など様々なメリットを得ることができる。
無機質球状化粒子の製造に関し、従来技術として、特許文献1〜4に開示されている方法がある。原料粉体の球状化には、高温の火炎が必要であることから、通常は、酸素・ガス燃焼方式のバーナが用いられている。
【0003】
これらのバーナには、予混合型バーナと、拡散型バーナがある。予混合型とは、酸素と燃焼ガスとを予め混合させて燃焼場に噴出させるものであり、拡散型とは酸素と燃焼ガスとを別々に噴出し、燃焼場で混合させるものである。特許文献2には、予混合型バーナが開示されており、特許文献1、3、4には、拡散型バーナが開示されている。
【0004】
特許文献1の拡散型バーナは、同心円状の二重管であって、その内管と外管との間に多数の小管を設けてある。このバーナを竪型炉に設置し、珪素質原料をバーナの中心管(内管)から自然流化(または加圧流下)させ、小管からの可燃ガスと外管からの酸素ガスとで形成した火炎中に原料を投入し、溶融シリカ球状体を製造するものである。
特許文献2に記載の予混合型バーナは、バーナ内で、原料粉体、酸素、LPGが充分に混合され、バーナ先端に形成される火炎中に原料粉体が供給されるものである。
【0005】
特許文献3、4に記載の拡散型バーナは、同心の四重管構造であり、中心から酸素ガスもしくは酸素富化ガスを搬送ガスとして原料粉体を燃焼室に供給し、その外周から燃料ガスを、更にその外周から1次酸素と二次酸素を供給するように形成され、最外周には、バーナを冷却する冷却水ジャケットが設けられている。
また、特許文献3、4には、拡散型バーナを用いて無機質球状化粒子を製造する装置が開示されている。
【0006】
特許文献4に開示されている無機質球状化粒子製造装置においては、図5に示すように、原料粉体が通常のフィーダAから切り出され、経路A’から供給されるキャリアガスに同伴されて酸素・ガス燃焼バーナBに搬送される。この、酸素・ガス燃焼バーナBには、酸素供給設備Cからの酸素と、LPG供給設備Dからの燃焼ガスとが供給されており、炉E内の火炎中で球状化された粒子は、経路Fから炉Eに導入された空気により温度希釈され、後段のサイクロンGや、バグフィルターHで回収される。
【特許文献1】特開昭58−145613号公報
【特許文献2】特開昭62−241543号公報
【特許文献3】特許第3331491号公報
【特許文献4】特許第3312228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に開示されている予混合型バーナは、酸素等とLPG等の燃料流体とを、バーナ内で予め混合している。このようなバーナは、ノズルの先端から、支燃性ガスと燃焼ガスとの混合物が噴出するので、バーナ内へ逆火する可能性がある。
一方、特許文献1に記載された拡散型バーナにおいては、逆火の心配は無いが、原料噴出孔と燃料噴出孔が隣接しているため、原料粒子は酸素との混合が不十分で、温度の低い燃料ガス中に噴出される。このために、酸素燃焼火炎による十分な加熱を得ることができず、溶融状態が不十分になるといった不都合が見られた。
また、燃料噴流と原料噴流が近接しているため、煤が生じやすく、製品中の不純物になるといった不具合も見られた。
【0008】
ところで、原料粉体は、火炎中で、主に火炎からの強制対流熱伝達により加熱・溶融され、表面張力によって球状化する。特許文献3、4に記載された構造の拡散型バーナにおいては、燃焼室が設けられ、特許文献1に記載のバーナに比べ、製造した無機質球状化粒子の凝集状態に改善がみられる。
しかし、種々の平均粒径を持つ無機質原料粉体を同一燃焼量で球状化処理したところ、平均粒径が小さくなるにつれて、凝集がすすみ、球状化処理できる量が減少する傾向がみられた。また、火炎中で処理された後の球状粒子の平均粒度が、原料の平均粒度により大きくなる傾向が見られた。
【0009】
したがって、平均粒径が、より小さい球状化粒子を得るためには、特許文献3、4に記載されたバーナでは不充分であることがわかった。
そこで本発明は、逆火を生じる恐れが無く、効率よく無機質球状化粒子を製造すことができ、さらに、原料粉体の平均粒径に適合した球状化処理を行うことが出来る無機質球状化粒子製造用バーナを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の無機質球状化粒子製造用バーナは、五重管構造であり、バーナの中心に、酸素または酸素富化空気をキャリアガスとして原料粉体を供給する原料粉体供給路を有し、その外周に、第1酸素供給路、燃料供給路、第2酸素供給路、第3酸素供給路が順次配設されたバーナであって、これら各供給路の先端は、出口側が拡径した燃焼室に接続されている。また、前記原料粉体供給経路の先端には、複数の噴射孔が形成された分散板が備えられている。
【0011】
第1酸素供給路は、バーナの中心軸に対して平行に酸素を噴出する複数の第1酸素噴出孔を、燃料供給路は、中心軸に対して並行に燃料を噴出する複数の燃料噴出孔を、第2酸素供給路は、燃焼室の側面から燃焼室内に旋回流を形成する方向に噴出する複数の第2酸素噴出孔を有し、第3酸素供給路は、第2酸素噴出孔の下流側で酸素を噴出する複数の第3酸素噴出孔を備える構造としている。
ここで、第2酸素噴出孔と第3酸素噴出孔とから噴出する第2酸素及び第3酸素は、燃料噴出孔から噴出する燃料とで火炎を形成すするとともに、原料粉体供給路の先端に設けた分散板から噴出する原料粉体を分散させる役割がある。
さらに、第1酸素噴出孔から噴出する第1酸素は、第2酸素噴出孔からの旋回流を形成する第2酸素に加え、原料粉体の分散力を更に向上させるとともに、第1酸素噴出孔を分散板と燃料噴出孔との間に設けることにより、燃料の未燃による煤の発生を抑制することができる。
【0012】
また、前記第3噴出孔は、バーナ中心軸に向かって、もしくはバーナ中心軸に対し略平行に酸素を噴出させる方向に開口させても良い。
本発明の無機質球状化粒子製造用バーナは、第1酸素供給路、第2酸素供給路、第3酸素供給路に供給する酸素量を個別に制御できるように、制御手段を設けていることが好ましい。この制御手段は、例えば、酸素供給装置から送られた酸素量を計測しながら、バルブの開閉を制御する制御装置などによるものなどを用いることができる。
前記粉体分散板に設けられた噴射孔は、出口方向に向かって放射状に広がるように開口していることが望ましい。このような形状とすることで、原料粉体の分散を促進することができる。
【0013】
また、前記バーナを竪型炉の炉頂部にバーナの燃焼室が垂直下向きになるように設置し、この竪型炉の下流にサイクロン及びバグフィルターを備えた無機質球状化粒子製造装置とすることができる。このとき、サイクロンでは粗粒を、サイクロンの下流に直列に配されたバグフィルターでは微粒を捕集することができる。
以上のような無機質球状化粒子製造用バーナと無機質球状化粒子製造装置によって、所望の無機質球状化粒子を製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、燃料と酸素とを燃焼室内で混合して燃焼する拡散型のバーナであるので、逆火が起こることがない。
また、原料粉体は粉体分散板の噴射孔から燃焼室に向けて放射状に噴射され、粉体の分散が良好となり、火炎中での粉体粒子相互の融着が防止され、大きな径の球状粒子が得られることが抑制され、原料粉体の粒子径とほぼ同じ程度の粒子径の球状化粒子が得られる。
【0015】
さらに、第1酸素噴出孔から噴出された酸素は、その外周の燃料噴射孔からの燃料と良く混合し、燃焼室内で高温の火炎を形成し、原料粉体に効率よく熱が伝えられ、粉体粒子が効率よく溶融して球状の粒子となる。
また、第1酸素供給路、第2酸素供給路、第3酸素供給路に供給する酸素量を個別に制御できるようにしたものでは、球状化粒子を製造するにおいて最適な燃焼状態を調整する事ができる。
【0016】
例えば、溶融のために高温の火炎が必要な原料粒子の場合においては、第1酸素噴出孔から噴出する酸素の比率を多くすることで、原料粉体噴流近傍の火炎温度を高くすることができ、原料を十分に分散させる必要があるような原料粒子の場合においては、第1酸素噴出孔から噴出する酸素の比率を少なくすることで、原料粉体の分散を阻害することなく、且つ原料噴流近傍の火炎温度を下げることで、原料粒子間の融着を抑制しつつ、効率よく溶融することができる。
以上により、本発明では、効率よく無機質球状化粒子を製造すことができ、さらに、原料粉体の平均粒径に適合した球状化処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1および図2は、本発明の無機質球状化粒子製造用バーナ(以下、単にバーナと呼ぶことがある。)の一例を示すもので、図1は、バーナ中心軸に沿って切断した断面図であり、図2は、バーナの先端側から眺めた側面図であるが、原料粉体、燃料、酸素の噴射孔もしくは噴出孔のみを示してある。
これらの図において、符号1は、原料供給管を示し、その内部は原料粉体とキャリアガスとの混合物が供給される原料粉体供給路1Aとなっている。キャリアガスとしては酸素あるいは酸素濃度20vol%以上の酸素富化空気が用いられる。原料粉体としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、ガラスなどの無機質粉末であって、その粒子形態が角を有する非球形の粒子であるものが用いられる。
【0018】
この原料供給管1の出口端には粉体分散板2が取り付けられている。この粉体分散板2は、原料粉体とキャリアガスとの混合粉体をバーナ出口方向に向けて放射状に噴出させるもので、斜め外方に向けた複数の噴射孔3、3・・が円周上に等間隔に形成されている。
なお、粉体分散板2は、必要に応じて取り外すことができるようになっている。
【0019】
原料供給管1の外側には、第1酸素供給管4が同軸的に設けられており、原料供給管1と第1酸素供給管4との間の空隙は第1酸素供給路4Aとなって、酸素が供給されるようになっている。第1酸素供給路4Aの出口端は複数の第1酸素噴出孔4B、4B・・となっており、バーナ中心軸に対して平行に酸素を噴出するようになっている。これら複数の第1酸素噴出孔4B、4B・・は、円周上に等間隔に形成されている。
【0020】
第1酸素供給管2の外側には、燃料供給管5が同軸的に設けられており、第1酸素供給管2と燃料供給管5との間の空隙は燃料供給路5Aとして、LPGなどのガス状の燃料が供給されるようになっている。燃料供給路5Aの出口端は複数の燃料噴出孔5B、5B・・となっており、バーナ中心軸に対して平行に燃料を噴射するように構成されている。これら複数の燃料噴出孔5B、5B・・は、円周上に等間隔に形成されており、かつ前記複数の第1酸素噴出孔4B、4B・・と円周上同じ位置に隣接して配されている。
【0021】
燃料供給管5の外側には第2酸素供給管6が同軸的に設けられており、燃料供給管5と第2酸素供給管6との間の空隙は第2酸素供給路6Aとなっている。第2酸素供給路6Aの出口部分は、バーナ中心軸に向けてほぼ直角に曲げられて、複数の第2酸素噴出孔6B、6B・・が形成され、バーナ中心軸に向けて直角に酸素が噴出し、後述する燃焼室内で旋回流を形成するようになっている。
複数の第2酸素噴出孔6B、6B・・は、円周上に等間隔に形成されており、前記燃料噴出孔5Bと燃料噴出孔5Bとのほぼ中間の位置に個々の第2酸素噴出孔6Bが位置するようにして配されている。
【0022】
第2酸素供給管6の外側には第3酸素供給管7が同軸的に設けられており、第2酸素供給管6と第3酸素供給管7との間の空隙は、第3酸素供給路7Aとなっている。この第3酸素供給路7Aは、第1酸素供給路4A、第2酸素供給路6Aに比較してその断面積が広くなっており、多くの酸素を供給できるようになっている。第3酸素供給路7Aの出口端は、複数の第3酸素噴出孔7B、7B・・が形成され、この第3酸素噴出孔7B、7B・・は円周上に等間隔に形成されている。これら第3酸素噴出孔7B、7B・・は、バーナ中心軸に向けて斜め方向に形成され、酸素がバーナ中心軸に向けて斜め方向に噴出されるようになっている。
【0023】
また、第3酸素供給管7は、その厚さが厚くなっており、その内部には冷却水が循環して流れる冷却水通路71が形成され、バーナ自体を冷却できるようになっている。
さらに、バーナの先端部分は、外方に拡がったすり鉢状に凹んでおり、この部分が燃焼室8となっている。ずなわち、燃焼室8の傾斜した壁の部分は、第3酸素供給管7と第2酸素供給管6の先端部分を斜めに形成することで構成され、燃焼室8の平らな底の部分は粉体分散板2で構成されている。
【0024】
また、第1酸素供給路4A、第2酸素供給路6Aおよび第3酸素供給路7Aには、それぞれ酸素供給源9から酸素を送給する配管4C、6C、7が接続されており、これら配管4C、6C、7Cには、酸素の供給量を検知しかつ供給量を制御する流量制御弁4D、6D、7Dがそれぞれ設けられている。これらの流量制御弁4D、6D、7Dは、酸素供給量制御部10からの制御信号に基づいてその開度が制御され、第1酸素供給路4A、第2酸素供給路6Aおよび第3酸素供給路7Aへの酸素供給量が独立して調整されるようになっている。
【0025】
このような構造を有するバーナにあっては、原料粉体供給路1Aの外周に配置された、第1酸素噴出孔4Bから噴出される酸素は、その外周に配置された燃料噴出孔5Bから噴出される燃料と混合され、原料粉体の噴流の近傍で高温の火炎を形成するため、原料粒子に効率よく熱を伝えることができる。
また、第1酸素噴出孔4B、第2酸素噴出孔6B、第3酸素噴出孔7Bから噴出される酸素ガスは、それぞれ独立に流量を制御する事が可能であるため、球状化粒子を製造するにおいて最適な燃焼状態を調整する事ができる。
【0026】
例えば、溶融のために高温の火炎が必要な酸化ケイ素などの原料粒子の場合においては、第1酸素噴出孔4Bから噴出する酸素の比率を多くすることで、原料粉体噴流近傍の火炎温度を高くすることができ、原料を十分に分散させる必要があるような原料粒子の場合においては、第1酸素噴出孔4Bから噴出する酸素の比率を少なくすることで、原料粉体の分散を阻害することなく、かつ原料噴流近傍の火炎温度を下げることで、粉体粒子同士の融着を抑制しつつ、効率よく溶融することができる。
【0027】
また、第2酸素噴出孔6Bと第3酸素噴出孔7Bから噴出される酸素の比率を変えることで、火炎中の原料粉体の対流に対して最適な燃焼状態を調整することができる。
例えば、第2酸素噴出孔6Bから噴出される酸素の割合を、第3酸素噴出孔7Bから噴出される酸素の割合よりも小さくすることで、第2酸素噴出孔6Bから噴出される酸素との混合が緩慢になり、火炎の直進性が増すことにより、比較的長い火炎を形成することができるため、火炎中での粒子の滞留時間を長く取ることが出来、粒子の加熱時間を長くすることができる。
【0028】
逆に、第2酸素噴出孔6Bから噴出される酸素の割合を、第3酸素噴出孔7Bから噴出される酸素の割合よりも大きくすることで、第2酸素噴出孔6Bから噴出される酸素との混合が促進され、第3酸素噴出孔7Bから噴出される酸素の流れが緩慢となるため、旋回成分の多い比較的短い火炎を形成することができるため、火炎中での粒子の滞留時間を短くすることができ、粉体粒子の融着を抑制することができる。
また、第1酸素噴出孔4Bから噴出される酸素噴流が、原料粉体噴流と燃料噴流の間の壁として作用することで、生成した球状粒子中への煤の混入を抑制することができる。
【0029】
このような構成のバーナを、図5に示すような無機質球状化粒子製造装置の竪型炉Eの炉頂部にバーナの燃焼室が鉛直下向きになるように設置し、原料供給機Aから切り出された原料を、バーナBに供給して竪型炉E内で球状化し、後段に設けたサイクロンGならびにバグフィルターHで球状化粒子を回収することで、原料粒子の粒度・融点に最適な火炎を形成し、燃焼によって発生する煤の混入の少ない球状化粒子を得ることができる。
【0030】
図3および図4は、本発明のバーナの他の例の要部を示すもので、図3は、バーナ中心軸に沿って切断した断面図であり、図4は、バーナの先端側から眺めた側面図であるが、原料粉体、燃料、酸素の噴射孔もしくは噴出孔のみを示してある。
この例のバーナにあっては、第3酸素噴出孔7B、7B・・がバーナ中心軸に対して平行に向いて形成されている以外は、先の例と同様な構造となっている。このバーナでは、第3酸素噴出孔7B、7B・・からの酸素がバーナ中心軸に対して平行に噴射されることになる。このため、この例のバーナにあっては、ガラスなどの低融点の原料粉体を用いる際に有用となる。すなわち、第3酸素噴出孔7B7B・・からの酸素の流れが燃焼室8の内方に向かないため、原料粉体の流れが燃焼室8側に押し戻されることが少なくなり、比較的低温で溶融した粒子が速やかに燃焼室8の外方に送り出され、燃焼室8内に溶融した原料粉体の付着がすくなくなる。
【0031】
(実施例)
図1および図2に示した構成のバーナを、図5に示すような無機質球状化粒子製造装置の竪型炉Eの炉頂部に設置し、原料供給機Aから切り出された原料を、バーナBに供給して炉E内で球状化し、後段に設けたサイクロンGならびにバグフィルターHでそれぞれ回収した。
原料供給路から、原料粉体として平均粒度30μmのシリカ粉末20kg/hを7.5Nm/hの酸素(キャリアガス)で搬送し、燃料供給路から燃料ガスとしてLPG5Nm/hを、酸素20Nm/hをそれぞれ燃焼室に導入して球状化粒子を製造した。
【0032】
このとき、前記第1酸素噴出孔4B(補助酸素)、第2酸素噴出孔6B(一次酸素)、第3酸素噴出孔7B(二次酸素)に供給する酸素の割合を、補助酸素0〜30%、一次酸素0〜100%、二次酸素100〜0%の範囲で変更し、98%以上のガラス化率が得られる条件を検討した。
その結果、ガラス化率を98%以上とするためには、一次酸素と二次酸素の流量割合に最適な割合があり、この割合は図6に示すように、補助酸素の割合には無関係であることが分かった。
【0033】
また、一次酸素と二次酸素の割合を最適な状態にて固定し、補助酸素の割合を変化させた場合に98%以上のガラス化率が得られる原料粉体供給量(球状化処理能力)を求めた。
その結果、図7に示すように、補助酸素割合は5%以下では効果が小さく、逆に15%以上では割合を増加させても効果は変わらなかった。
【0034】
上記結果より、本発明におけるバーナにおいて、第1酸素噴出孔4Bからの酸素量を調整することで、効率よく無機質球状粒子を溶融出来ることが確認された。
また、補助酸素割合を調整し、サイクロンGで捕集された球状化粒子中のカーボン量を減少できる補助酸素割合を求めた。この場合、一次酸素と二次酸素の割合は最適な状態にて固定した。
【0035】
その結果、図8に示すように、補助酸素を加えることで、球状化粒子中のカーボン濃度低減され、その割合を10%以上に増加させても効果は変わらなかった。
上記結果より、本発明におけるバーナ構造も用いることで、カーボン(煤)の混入の少ない無機質球状化粒子を得ることが出来ることが確認された。
また、ガラス粒子のように、融点の低い材料においては、第2酸素噴出孔6Bの下流側で中心軸に向けて第3酸素噴出孔7Bから酸素を噴出させた場合、シリカ粒子のような融点の高い材料と比べて、燃焼室8内に溶融した原料の付着が大きく成長しやすく、バーナの処理能力に支障がでることが確認された。
【0036】
これは、第3酸素噴出孔7Bから噴出される酸素によって、原料粉体の流れが一部燃焼室8側に押し戻されているためであり、融点の低いガラスなどの原料粉体においては、押し戻された流れが付着の要因となっているためである。
この点については、図3および図4に示した例のバーナのように、第3酸素噴出孔7Bをバーナ中心軸に平行に配置することで、解決されることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のバーナの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明のバーナの一例を示す概略側面図である。
【図3】本発明のバーナの他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明のバーナの他の例を示す概略側面図である。
【図5】本発明の無機質球状化粒子の製造装置の例を示す概略構成図である。
【図6】実施例における一次酸素の流量割合とガラス化率との関係を示した図表である。
【図7】実施例における補助酸素の流量割合と処理能力の関係を示した図表である。
【図8】実施例における補助酸素の流量割合と煤の発生率との関係を示した図表である。
【符号の説明】
【0038】
1A・・原料供給路、2・・粉体分散板、4A・・第1酸素供給路、4B・・第1酸素噴出孔、5A・・燃料供給路、5B・・燃料噴出孔、6A・・第2酸素供給路、6B・・第2酸素噴出孔、7A・・第3酸素供給路、7B・・第3酸素噴出孔、8・・燃焼室、4D、5D、7D・・流量調整弁、10・・酸素供給量制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機質球状化粒子製造用バーナであって、五重管構造であり、酸素または酸素富化空気をキャリアガスとして原料粉体を、その先端に設けた粉体分散板から供給する原料粉体供給路と、該原料粉体供給路の外周に配置された第1酸素供給路と、該第1酸素供給路の外周に配置された燃料供給路と、該燃料供給路の外周に配置された第2酸素供給路と、該第2酸素供給路の外周に配置された第3酸素供給路と、各供給路の先端に接続する出口側が拡径した燃焼室とを備えるとともに、
前記第1酸素供給路は、バーナの中心軸に対して平行に酸素を噴出する複数の第1酸素噴出孔を有し、前記燃料通路は、バーナの中心軸に対して平行に燃料を噴出する複数の燃料噴出孔を有し、前記第2酸素供給路は、燃焼室の側面から燃焼室内に旋回流を形成する方向に酸素を噴出する複数の第2酸素噴出孔を有し、前記第3酸素供給路は、該第2酸素噴出孔の下流側でバーナの中心軸方向に向けて酸素を噴出する複数の第3酸素噴出孔を備えていることを特徴とする無機質球状化粒子製造用バーナ。
【請求項2】
請求項1に記載の無機質球状化粒子製造用バーナにおいて、前記第3酸素噴出孔が、前記第2酸素噴出孔の下流側で中心軸に対して平行に酸素を噴出する噴出孔であることを特徴とする無機質球状化粒子製造用バーナ。
【請求項3】
前記第1酸素供給路、前記第2酸素供給路、前記第3酸素供給路に供給する酸素量を、個別に制御する制御手段を備えていることを特徴とする請求項1または2記載の無機質球状化粒子製造用バーナ。
【請求項4】
前記粉体分散板に噴射孔が設けられ、この噴射孔は、出口方向に向かって放射状に広がるように開口していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の無機質球状化粒子製造用バーナ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の無機質球状化粒子製造用バーナを炉頂部に垂直下向きに備えた竪型炉と、その下流にサイクロン及びバグフィルターを備えたことを特徴とする無機質球状化粒子製造装置。
【請求項6】
請求項5記載の無機質球状化粒子製造装置を用い、竪型炉下流に配されたサイクロンにて粗粒を、該サイクロンの下流に配されたバグフィルターにて微粒を捕集することを特徴とする無機質球状化粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の製造方法によって得られた無機質球状化粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−286443(P2008−286443A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−130370(P2007−130370)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】