説明

無機防錆皮膜、並びに、無機防錆皮膜を形成するためのめっき方法、及び、これに用いられるめっき液

【目的】鉄製品又は鉄基合金製品に施される亜鉛めっきの白錆を防止できるとともに、人体に安全で環境問題の懸念がない無機防錆皮膜、並びに、鉄製品又は鉄基合金製品のめっき方法、及び、これに用いられるめっき液を提供すること。
【解決手段】無機防錆皮膜Nは、基材Jに形成された亜鉛皮膜Kと、亜鉛皮膜Kに形成されたマンガン皮膜Mとからなる。亜鉛皮膜Kの膜厚は、5μm以上20μm以下であり、マンガン皮膜Mの膜厚は、0.5μm以上10μm以下である。無機防錆皮膜Nは、鉄製品又は鉄基合金製品である鉄系素材を被めっき物として亜鉛めっき液に浸漬することによりその表面に亜鉛皮膜が形成された被めっき物を得る亜鉛めっき工程と、被めっき物を所定のマンガンめっき液に浸漬することによりその表面にマンガン皮膜が形成された被めっき物を得るマンガンめっき工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機防錆皮膜、並びに、無機防錆皮膜を形成するためのめっき方法、及び、これに用いられるめっき液に関し、更に詳しくは、鉄製品又は鉄基合金製品に施される亜鉛めっきの白錆を防止するために、更に、マンガンめっきを施す技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄の防錆方法の一つとして、亜鉛めっきが知られている。しかし、亜鉛表面は、鉄や鋼に比べて活性が強いため変化しやすく、いわゆる白錆が生成することがある。そこで、従来では、この白錆を防ぐためにクロメート処理を行って、亜鉛表面にCr(OH)3、Cr2O3、CrO3、ZnCrO4等を形成させる技術が多用されている。その他にも、亜鉛表面に緻密な塗膜(下塗り塗料として耐久性に優れたエポキシ樹脂、上塗り塗料として耐候性に優れ透水性の低い塩化ゴム系・塩化ビニル系・ポリウレタン樹脂等の塗料)を被覆する技術も知られている。
【0003】
また、特許文献1には、鋼材(鉄)を予め、脱脂、酸洗いしておき、引き続いてマンガンめっきを通常の水溶液浴(MnSO4・7H2O、(NH4)2SO4、CS(NH2)2)を用いて電気めっきにより施す技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平5−202488
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、鉄製品又は鉄基合金製品に施された亜鉛めっきの表面をクロメート処理することにより白錆を防止する場合には、6価クロムが発ガン性物質であることから人体への影響や環境問題の観点で問題がある。また、3価クロムは毒性面では改善されているが、6価クロムに比べて耐食性に劣る等、性能面での問題があるとともに、大気中で酸化されて6価クロムに変化する懸念がある。
鉄製品又は鉄基合金製品に直接マンガンめっきを施す場合には、マンガンを比較的厚めにめっきする必要がありコストがかかるという問題がある。
更に、鉄製品又は鉄基合金製品に施された亜鉛めっきの表面に緻密な塗膜を形成することにより白錆を防止する場合には、いずれ塗膜が剥離するという問題がある。
【0006】
そのため、鉄製品又は鉄基合金製品に施す亜鉛表面の白錆を防止しうる新たなめっき皮膜が模索されている。また、亜鉛表面にめっきを施す際の付き周りの向上を図ることができるめっき液も模索されている。特に、めっき液のpHが中性付近でも、あるいは、電流密度が低くても付き周りが良く、逆に、高電流であっても焦げにくいめっき液が模索されている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、鉄製品又は鉄基合金製品に施される亜鉛めっきの白錆を防止できるとともに、人体に安全で環境問題の懸念がない無機防錆皮膜、並びに、鉄製品又は鉄基合金製品のめっき方法、及び、これに用いられるめっき液を提供することにある。
本発明の他の目的は、付き周りの向上を図ることができるとともに、下地(亜鉛)を侵さないめっき条件下で付き周りが良く、焦げ、ピット(ガスだまり)等が出にくい、鉄製品又は鉄基合金製品のめっき方法、及び、これに用いられるめっき液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る無機防錆皮膜は、
鉄製品又は鉄基合金製品に形成された亜鉛皮膜と、
前記亜鉛皮膜の上に形成されたマンガン皮膜とからなることを要旨とするものである。
この場合に、前記亜鉛皮膜の膜厚は、5μm以上20μm以下であり、
前記マンガン皮膜の膜厚は、0.5μm以上10μm以下であることが望ましい。
【0008】
本発明に係る鉄製品又は鉄基合金製品のめっき方法は、
鉄製品又は鉄基合金製品である鉄系素材Aを亜鉛めっき液に浸漬することによりその表面に亜鉛皮膜が形成された鉄系素材Bを得る亜鉛めっき工程と、
前記鉄系素材Bをマンガンめっき液に浸漬することによりその表面にマンガン皮膜が形成された鉄系素材Cを得るマンガンめっき工程とを含み、
前記マンガンめっき液は、
硫酸マンガンを100g/L以上150g/L以下と、
硫酸アンモニウム又はクエン酸アンモニウムを50g/L以上150g/L以下と、
ロダンアンモンを25g/L以上80g/L以下と、
クエン酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム及びリンゴ酸アンモニウムからなる群から選ばれるいずれかを10g/L以上30g/L以下と、
次亜リン酸ナトリウム、硫酸ヒドラジン及びその他の還元剤からなる群から選ばれるいずれかを10g/L以上30g/L以下と、
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、アミン類及びその他のキレート剤若しくは光沢剤からなる群から選ばれるいずれかを0超5g/L以下と、
水酸化アンモニウムその他のpH調整剤を1ml/L以上50ml/L以下と、を含むことを要旨とする。
【0009】
この場合に、前記マンガンめっき液は、コバルト塩、ニッケル塩、亜鉛塩、錫塩、及び、インジウム塩からなる群の少なくとも一種を含むものでもよい。
【0010】
本発明に係る鉄製品又は鉄基合金製品のめっき液は、
硫酸マンガンを100g/L以上150g/L以下と、
硫酸アンモニウム又はクエン酸アンモニウムを50g/L以上150g/L以下と、
ロダンアンモンを25g/L以上80g/L以下と、
クエン酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム及びリンゴ酸アンモニウムからなる群から選ばれるいずれかを10g/L以上30g/L以下と、
次亜リン酸ナトリウム、硫酸ヒドラジン及びその他の還元剤からなる群から選ばれるいずれかを10g/L以上30g/L以下と、
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、アミン類及びその他のキレート剤若しくは光沢剤からなる群から選ばれるいずれかを0超5g/L以下と、
水酸化アンモニウムその他のpH調整剤を1ml/L以上50ml/L以下と、を含むことを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る無機防錆皮膜は、鉄製品又は鉄基合金製品に形成された亜鉛皮膜と、前記亜鉛皮膜の上に形成されたマンガン皮膜とからなるものであるため、亜鉛めっきの白錆を防止できるとともに、人体に安全で環境問題の懸念がないという効果がある。
本発明に係る鉄製品又は鉄基合金製品のめっき方法によれば、亜鉛めっき工程と、マンガンめっき工程とを含むものであるため、これを鉄製品又は鉄基合金製品を被めっき素材として実施することにより、亜鉛めっきの白錆を防止できるとともに、人体に安全で環境問題の懸念がない無機防錆皮膜が得られるという効果がある。
本発明に係る鉄製品又は鉄基合金製品のめっき方法、及び、めっき液によれば、めっき液が所定の組成を備えるため、下地(亜鉛)を侵すことなく付き周りが良好なめっきができるという効果がある。また、焦げ、ピット(ガスだまり)等が出にくいという効果がある。更に、槽負荷(被めっき物に対する槽の大きさ)、電流密度、電流値等を種々の値にしても、付き周りが良好なめっきができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る無機防錆皮膜の一例を示す図であり、同図(a)は基材として平面状のものを用いた例を示し、同図(b)は基材としてねじ等の表面が凹凸状になっているものを用いた例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る鉄製品又は鉄基合金製品のめっき方法、鉄製品又は鉄基合金製品のめっき液、鉄製品又は鉄基合金製品の無機防錆皮膜について説明する。
【0014】
(鉄製品又は鉄基合金製品のめっき工程、及び、これに用いられるめっき液)
本実施形態においてめっきが施される鉄製品又は鉄基合金製品としては、ねじ、ボルト、ナット、シャフト、軸受、歯車、ピン、ばねその他の機械部品、精密機械部品が例示されるが、これに限定されるものではない。
本実施形態におけるめっき工程は、(1)脱脂工程、(2)酸浸漬工程、(3)亜鉛めっき工程、(4)硝酸浸漬工程、(5)マンガンめっき工程、(6)乾燥工程からなる。以下これらの各工程について説明する。
【0015】
(1)脱脂工程は、市販の脱脂液を用いて所定温度で所定時間、電解処理を行うことにより、被めっき物の金属表面に付着した油脂分の除去を行う。脱脂工程で使用する脱脂液は、特に限定されず、油脂分の種類により任意に選択しうる。
【0016】
(2)酸浸漬工程は、脱脂工程を経た被めっき物を5%〜100%塩酸溶液(例えば、25%塩酸溶液、36%塩酸溶液)に10秒〜5分浸漬する工程である。これにより、表面が活性化されスケールと呼ばれる黒錆や赤錆を除去する。
【0017】
(3)亜鉛めっき工程は、酸浸漬工程を経た被めっき物を亜鉛めっき浴に5分〜60分間、浸漬する工程である。これにより、酸浸漬工程を経た被めっき物に亜鉛皮膜を5μm以上20μm以下の厚さでめっきする。亜鉛皮膜の厚さは、更に好ましくは、7μm以上10μmである。
使用可能な亜鉛めっき浴は特に限定されないが、例えば、アルカリ性浴であるシアン浴、低シアン浴、ジンケート浴、アミン浴、中性浴である塩化亜鉛浴、酸性浴である塩化亜鉛浴、硫酸亜鉛浴等を用いることができる。表1にシアン化亜鉛めっき浴、ジンケート浴、塩化浴の一例を示す。
【0018】
【表1】

【0019】
(4)硝酸浸漬工程は、亜鉛皮膜が形成された被めっき物を0.1%〜1%硝酸溶液(例えば、0.5%硝酸溶液)に1秒〜1分(例えば、10秒)浸漬し、被めっき物の表面を活性化する工程である。
【0020】
(5)マンガンめっき工程は、硝酸浸漬工程を経た被めっき物をマンガンめっき液に浸漬することにより、0.5μm以上10μm以下のマンガン皮膜を形成させる工程である。形成させるマンガン皮膜の厚さは、1μm以上5μm以下がより好ましい。表2にマンガンめっき浴の一例を示す。
【0021】
【表2】

【0022】
硫酸マンガンを100g/L以上150g/L以下としたのは、少なすぎると付き周りが悪くなり、高電流部に焦げが発生しやすくなるからであり、多すぎると汲みだしが多くなり経済的でないからである。
硫酸アンモニウム又はクエン酸アンモニウムを50g/L以上150g/L以下としたのは、少なすぎると焦げやすいからであり、多すぎると付き周りが悪くなるからである。
ロダンアンモンを25g/L以上80g/L以下としたのは、少なすぎると焦げやすいからであり、多すぎると付き周りが悪くなるからである。
クエン酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム及びリンゴ酸アンモニウムからなる群から選ばれるいずれかを10g/L以上30g/L以下としたのは、少なすぎると焦げやすいからであり、多すぎると不経済だからである。
次亜リン酸ナトリウム、硫酸ヒドラジン及びその他の還元剤からなる群から選ばれるいずれかを10g/L以上30g/L以下としたのは、少なすぎると高電流が必要だからであり、多すぎると付き周りが悪くなりやすいからである。
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、アミン類及びその他のキレート剤若しくは光沢剤からなる群から選ばれるいずれかを0超5g/L以下としたのは、少なすぎるとざらついためっきになるからであり、多すぎると付き周りが悪くなりやすいからである。
水酸化アンモニウムその他のpH調整剤を1ml/L以上50ml/L以下としたのは、少ないとめっき液で亜鉛が溶解しないように高電流が必要だからであり、多いと焦げやすく、亜鉛が溶けるからである。
電流密度は、1A/dm以上20A/dm、以下、特に10A/dmが好ましい。低いと付き周りが悪くなりやすいからであり、高いと焦げるからである。
pHは、5.5〜8.0、特に、5.5〜6.5が好ましい。この範囲であれば、被めっき物が溶け出さないからである。
温度は、20℃以上50℃以下、特に、40℃が好ましい。低いと焦げるからであり、高いと付き周りが悪くなりやすいからである。
【0023】
(6)乾燥工程は、マンガンめっき工程を経た被めっき物を乾燥させる工程である。乾燥方法としては、温風乾燥、自然乾燥等を採用することができ、特に限定されない。
【0024】
(鉄製品又は鉄基合金製品の無機防錆皮膜)
図1は、本実施形態に係る無機防錆皮膜Nの構成を示し、同図(a)は基材として平面状のものを用いた例を示し、同図(b)は基材としてねじ等の表面が凹凸状になっているものを用いた例を示す。同図に示すように、無機防錆皮膜Nは、基材J(すなわち、鉄製品又は鉄基合金製品、例えば、ねじ、ボルト、ナット、シャフト、軸受、歯車、ピン、ばねその他の機械部品、精密機械部品等の鉄製品又は鉄基合金製品)の表面に形成された亜鉛皮膜Kと、亜鉛皮膜Kの表面に形成されたマンガン皮膜Mとから構成される。マンガン皮膜Mに代えて、マンガン・コバルト皮膜、マンガン・ニッケル皮膜、マンガン・亜鉛皮膜を用いてもよい。本実施形態に係る無機防錆皮膜Nは、上記めっき工程を経て作製することができるが、これに限定されるものではない。
亜鉛皮膜Kの膜厚とマンガン皮膜Mの膜厚は、比率にして2:1〜5:1程度が好ましい。亜鉛皮膜Kの膜厚は、6μm〜10μmが好ましく、特に、8μmが好ましい。マンガン皮膜Mの膜厚は、0.5μm〜2.5μmが好ましく、特に、2μmが好ましい。
【実施例】
【0025】
以下に本発明の実施例及び比較例について説明する。
(実施例1及び実施例2)
実施例1及び2については、鉄製のM8ボルト(13mm径の六角ボルト)を被めっき物として、(1)脱脂工程、(2)酸浸漬工程、(3)亜鉛めっき工程、(4)硝酸浸漬工程、(5)マンガンめっき工程、(6)乾燥工程の各工程を行うことにより、無機防錆皮膜N(図1(b)参照)を形成させた。各工程は、以下の通りである。
【0026】
(1)脱脂工程では、市販の脱脂液として、奥野製薬工業エースクリーン850を用い、50℃で2分電解処理を行った。
(2)酸浸漬工程では、25%塩酸溶液に1分浸漬した。
(3)亜鉛めっき工程では、M8ボルトを表3に示す亜鉛めっき浴に同表に示す条件で25分浸漬し、M8ボルトに8μm厚の亜鉛皮膜を形成させた。
(4)硝酸浸漬工程では、M8ボルトを0.5%硝酸溶液に10秒間浸漬した。
(5)マンガンめっき工程では、M8ボルトをマンガンめっき液に同表に示す条件で1分、2分、3分間浸漬し(三通り作製)、亜鉛皮膜の上に1μm、2μm、3μmのマンガン皮膜を形成させた。
(6)乾燥工程では、M8ボルトを温風乾燥により乾燥した。
【0027】
(比較例1)
比較例1については、鉄製のM8ボルト(13mm径の六角ボルト)を被めっき物として、(1)脱脂工程、(2)酸浸漬工程、(3)マンガンめっき工程、(4)乾燥工程の各工程を行うことにより、マンガン皮膜を形成させた。各工程は、以下の通りである。
【0028】
(1)脱脂工程では、市販の脱脂液として、奥野製薬工業エースクリーン850を用い、50℃で2分電解処理を行った。
(2)酸浸漬工程では、25%塩酸溶液に1分浸漬した。
(3)マンガンめっき工程では、M8ボルトをマンガンめっき液に同表に示す条件で1分、2分、3分間電解し(三通り作製)、M8ボルトの表面に1μm、2μm、3μmのマンガン皮膜を形成させたものを作製した。
(4)乾燥工程では、M8ボルトを温風乾燥により乾燥した。
【0029】
【表3】

【0030】
(めっき評価)
実施例1及び実施例2のめっきの付き周りを目視で確認したところ、マンガンの褐色皮膜は観察できたが下層の亜鉛の白色皮膜が見えなかったため、めっきの付き周りが良好であることを確認できた。これに対し、比較例1では、下層のM8ボルトの下地がところどころ見えた。すなわち、実施例1及び実施例2では、めっき浴のpHを高めてもめっきすることができるため、電流密度が低くても電気をオフにした瞬間からマンガンめっきの溶解が始まるという懸念がない。そのため、亜鉛の白色被膜が見えなかったと考えられる。一方、比較例1では、pHが低いため、電流密度を高めてめっきを行っても、電源をオフにするとマンガンめっきの溶解が始まり、その結果、めっき液でめっきが溶け出す。そのため、下層下地が見えたものと考えられる。
【0031】
(評価試験及び評価結果)
実施例1、実施例2及び比較例1で作製しためっき済みM8ボルトについて塩水噴霧テスト(JIS Z2371)を48時間実施した。すなわち、めっき済みM8ボルトに5%食塩水(35℃)を48時間噴霧し、白錆等の発生の有無を確認した。実施例1及び実施例2では白錆及び赤錆が発生しなかったが、比較例1では赤錆が発生した。このことから、亜鉛皮膜にマンガン皮膜を形成すると耐食性に優れたものが得られることがわかった。
【0032】
以上本発明の一実施形態に係る無機防錆皮膜、無機防錆皮膜を形成するためのめっき方法、及び、これに用いられるめっき液について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係る無機防錆皮膜、無機防錆皮膜を形成するためのめっき方法、及び、これに用いられるめっき液は、ねじ、ボルト、ナット、シャフト、軸受、歯車、ピン、ばねその他の機械部品、精密機械部品等のめっきに実用化することができる。また、本発明に係る無機防錆皮膜を形成するためのめっき方法、及び、これに用いられるめっき液によれば、バレルめっき、かごめっきが可能なので従来以上の大量生産が実用化しうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄製品又は鉄基合金製品に形成された亜鉛皮膜と、
前記亜鉛皮膜の上に形成されたマンガン皮膜とからなることを特徴とする無機防錆皮膜。
【請求項2】
前記亜鉛皮膜の膜厚は、5μm以上20μm以下であり、
前記マンガン皮膜の膜厚は、0.5μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の無機防錆皮膜。
【請求項3】
鉄製品又は鉄基合金製品である鉄系素材Aを亜鉛めっき液に浸漬することによりその表面に亜鉛皮膜が形成された鉄系素材Bを得る亜鉛めっき工程と、
前記鉄系素材Bをマンガンめっき液に浸漬することによりその表面にマンガン皮膜が形成された鉄系素材Cを得るマンガンめっき工程とを含み、
前記マンガンめっき液は、
硫酸マンガンを100g/L以上150g/L以下と、
硫酸アンモニウム又はクエン酸アンモニウムを50g/L以上150g/L以下と、
ロダンアンモンを25g/L以上80g/L以下と、
クエン酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム及びリンゴ酸アンモニウムからなる群から選ばれるいずれかを10g/L以上30g/L以下と、
次亜リン酸ナトリウム、硫酸ヒドラジン及びその他の還元剤からなる群から選ばれるいずれかを10g/L以上30g/L以下と、
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、アミン類及びその他のキレート剤若しくは光沢剤からなる群から選ばれるいずれかを0超5g/L以下と、
水酸化アンモニウムその他のpH調整剤を1ml/L以上50ml/L以下と、を含むことを特徴とする鉄製品又は鉄基合金製品のめっき方法。
【請求項4】
前記マンガンめっき液は、コバルト塩、ニッケル塩、亜鉛塩、錫塩、及び、インジウム塩からなる群の少なくとも一種を含むものであることを特徴とする請求項3に記載の鉄製品又は鉄基合金製品のめっき方法。
【請求項5】
硫酸マンガンを100g/L以上150g/L以下と、
硫酸アンモニウム又はクエン酸アンモニウムを50g/L以上150g/L以下と、
ロダンアンモンを25g/L以上80g/L以下と、
クエン酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム及びリンゴ酸アンモニウムからなる群から選ばれるいずれかを10g/L以上30g/L以下と、
次亜リン酸ナトリウム、硫酸ヒドラジン及びその他の還元剤からなる群から選ばれるいずれかを10g/L以上30g/L以下と、
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、アミン類及びその他のキレート剤若しくは光沢剤からなる群から選ばれるいずれかを0超5g/L以下と、
水酸化アンモニウムその他のpH調整剤を1ml/L以上50ml/L以下と、を含むことを特徴とする鉄製品又は鉄基合金製品のめっき液。

【図1】
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【公開番号】特開2011−184776(P2011−184776A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53577(P2010−53577)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(395010794)名古屋メッキ工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】