説明

無段変速機

【課題】変速機構を軸方向に対向して並べる構造を採用し、このような構造とすることで、従来のような構造とは異なり、各変速機構間で軸力を相殺でき、軸受の損失を小さくすることができる構造を実現する。
【解決手段】変速機構2を軸方向に2つ並べる配置としている。このような構造とすることで、出力コーン軸6に発生した軸力を相殺でき、出力コーン軸6を支持する軸受4、4には、大きな軸方向力がかからない。また、入力コーン3には、押付力発生機構50で発生した軸力が、リング60を介して法線力として伝わるが、この場合も、2つのリング60、60の法線力の軸方向成分が、相殺方向に働き相殺されるため、入力コーン軸5を支持する軸受4、4に大きな軸方向力がかからない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円すい状部材を組み合わせ、リング状部材を、円すい状部材の間に挟むことで動力を伝達する、自動車や各種産業機械の変速機などに利用可能な無段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
このような無段変速機として、例えば特許文献1に記載された構造が知られている。図2は、特許文献1に記載された構造を示している。先ず、この従来構造に就いて、簡単に説明する。無段変速機30は円すい状の入力コーン34と、入力コーン34と略同一形状で入力コーン34と逆向きとなるように配置された出力コーン36と、入力コーン34に挿入されて入力コーン34と出力コーン36に挟まれるように配置されたリング60と、入力コーン34と出力コーン36との間のリング60への押付力を調節する押付力発生機構50とを備え、リング60を介して入力軸32から出力軸38に動力が伝達され、また、リング60を軸方向に動かすことで変速が行なわれる。
【0003】
ところで、上述の様な図2に示した構造の場合、変速機構30が1つだけであるので、押付力発生機構50で発生する軸力を、入力軸32と出力軸38のそれぞれの軸端に設けた軸受41、42、45、46でそのまま支持することになり、軸受の損失が大きくなってしまい、変速機全体の伝達効率が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−250373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述の様な事情に鑑み、変速機構を軸方向に並べる構造を採用し、このような構造とすることで、図2のような構造とは異なり、各変速機構間で軸力を相殺でき、軸受の損失を小さくすることができる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の無段変速機は、入力軸に接続された円すい状の入力コーンと、入力コーンとは逆向きに出力軸に接続された出力コーンと、入力コーンと出力コーンとに挟まれ、入力コーンからの動力を前記出力コーンに伝達するリング状の伝達部材と、入力軸または出力軸に設けた押付力発生機構からなる無段変速機であって、入力コーンと出力コーンと伝達部材からなる変速機構を、それぞれの変速機構が対向する方向に並列に配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、各変速機構間で軸力を相殺できるので、軸受の損失を小さくすることができ、軸受の種類も、円錐ころ軸受に比べ、より損失の小さい玉軸受を採用できるとともに、その軸受サイズも小さいもので良いことから、結果として、変速機の効率を向上できる。更には、変速機構を並列に配置することで、動力伝達を分担することになることから、各変速機構が分担する動力伝達が減り、寿命の向上及びサイズのダウンが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態の断面図である。
【図2】従来の無段変速機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の実施の形態を示している。本発明は、変速機構としての構造及び作用は、前述の図2に示した構造を含め、従来から知られている構造と同様である。このため、従来と同様に構成する部分については、図示並びに説明を省力若しくは簡略にし、以下、本発明の実施の形態の特徴部分を中心に説明する。
【0010】
図1では、変速機構2を軸方向に2つ並べる配置としている。入力コーン3は、2つの円すい状のコーンの大径側を向かい合わせた形状としており、原動機1からの動力(回転×トルク)が、ラジアル軸受4に支持された入力コーン軸5を介して、入力コーン軸5を接続した入力コーン3に入力される。また、ラジアル軸受4に支持された出力コーン軸6が、入力コーン軸5と平行に配置され、出力コーン軸6と同心状に2つの円すい状の出力コーン7、8が、小径側が向かい合うように配置されている。図1の右側の出力コーン7は、直接出力コーン軸6に接続されており、左側の出力コーン8は、その中心が中空となっており、出力コーン軸6がその中空部9を通っている。左側の出力コーン8の大径側には、押付力発生機構50が設けられており、左側の出力コーン8は、押付力発生機構50を介して、出力コーン軸6に接続されている。また、入力コーン3と出力コーン7、8の間には、リング60が配置されており、リング60を図示しないアクチュエータにより軸方向に動かすことで、入出力コーン3、7、8とリング60の各接触点半径比を変えることにより、変速が行なわれる。原動機1から入力コーン軸5を介して入力コーン3に入力された動力(回転×トルク)は、各リング60を介して、各出力コーン7、8に半分ずつ伝わり、最終的に出力コーン軸6に伝達される。
【0011】
左側の出力コーン8の大径側には、押付力発生機構50が設けられているが、これは出力コーン軸6の伝達動力(回転×トルク)に比例した軸力を発生させるものであり、発生した軸力により出力コーン8を入力コーン3に近づけるとともに、その反力は出力コーン軸6を介して反対側の出力コーン7へと伝わり、反対側の出力コーン7も入力コーン3に近づける。このような構造とすることで、出力コーン軸6に発生した軸力を相殺でき、出力コーン軸6を支持する軸受4、4には、大きな軸方向力がかからない。
【0012】
また、入力コーン3には、押付力発生機構50で発生した軸力が、リング60を介して法線力として伝わるが、この場合も、2つのリング60、60の法線力の軸方向成分が、相殺方向に働き相殺されるため、入力コーン軸5を支持する軸受4、4に大きな軸方向力がかからない。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明は、自動車や各種産業機械の変速機として利用できる。
【符号の説明】
【0014】
1 原動機
2 変速機
3 入力コーン
4 ラジアル軸受
5 入力コーン軸
6 出力コーン軸
7 出力コーン
8 出力コーン
9 中空部
30 無段変速機
32 入力軸
34 入力コーン
36 出力コーン
38 出力軸
42 軸受
50 押付力発生機構
60 リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸に接続された円すい状の入力コーンと、前記入力コーンとは逆向きに出力軸に接続された出力コーンと、前記入力コーンと前記出力コーンとに挟まれ、前記入力コーンからの動力を前記出力コーンに伝達するリング状の伝達部材と、前記入力軸または前記出力軸に設けた押付力発生機構からなる無段変速機において、前記入力コーンと前記出力コーンと前記伝達部材からなる変速機構を、それぞれの変速機構が対向する方向に並列に配置したことを特徴とする無段変速機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−52567(P2012−52567A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193470(P2010−193470)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】