説明

無水洗い出し方法及びそれに使用する固結剤

【課題】水を使用することなく打設したコンクリートの表面層を除去できるようにし、洗い出し仕上げを容易にすると共に屋内においても施工可能とする。
【解決手段】アルミナセメントに凝結遅延剤としてポリビニルアルコール、硬化促進剤として無水石膏を加え、珪砂を細骨材として水を加えて混練りして固結剤ペーストを得た。このペーストに玉砂利を混合してコンクリート表面に塗り付けで化粧層を形成し、約1時間経過後に内部が凝結し、外見的には表面が乾燥してきたので、ワイヤブラシで表面を擦り、表層を擦り取って玉砂利を表面に露出させた。擦り取られた表層は粉体となるので、湿らせたスポンジで清掃する。玉砂利は、内部が凝結しているので移動することがなく、2〜3mm程度表面から露出し、玉砂利で化粧面が得られた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート表面に化粧材を露出させる方法に関し、水を使用しないでコンクリート表面に化粧材を露出させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機的なコンクリート表面に装飾を施して美観を向上させる方法として、洗い出し仕上げがある。これは、コンクリートを打設した後に仕上げ面のセメントペーストの硬化を遅らせ、洗い流してコンクリート表面に骨材などの化粧材を露出させるものである。同様な表面化粧方法には、研磨仕上げ、ブラスト仕上げなどがあるが、洗い出し仕上げは、設備を必要としないので低コストであり、簡易に施工できるというメリットがある。
この洗い出し仕上げは、セメントの凝結硬化を遅らせる凝結遅延剤を用いる方法、未硬化のコンクリートを水洗いする方法、コンクリート硬化後に酸洗いする方法などがある。
【0003】
コンクリートの硬化を遅延させる具体的方法は、型枠内面に凝結遅延剤を塗布してコンクリートを打設し、型枠を取り外して型枠内面に接した未硬化のセメントペーストを洗い流すことにより骨材を露出させる方法、凝結遅延剤を染み込ませた紙等を型枠内面若しくはコンクリート表面に貼り付ける方法、また、打設したコンクリート表面に凝結遅延剤を直接散布したり、塗布する方法がある。
一般的な凝結遅延剤は、リグニンスルホン酸塩、オキシカルボン酸塩、糖類誘導体、スターチエーテル、カゼイン、セルロース、ポバール、クエン酸等であり、超凝結遅延剤と呼ばれるものは、ケイフッ化物やオキシカルボン酸塩等を主成分とするものであり、添加量により任意に凝結時間を制御することができる。
通常のコンクリートの場合、洗い出し深さは、化粧材となる骨材の脱落を防ぐため、骨材径の1/3〜1/2に設定され、遅延作用がコンクリート表面から数ミリ程度となるように凝結遅延剤の塗布量等を定めて洗い出しをおこなっている。
【特許文献1】実開昭60−191405号公報
【特許文献2】特開昭53−136028号公報
【特許文献3】特開昭53−136029号公報
【特許文献4】特開昭58−158206号公報
【特許文献5】特開昭62−003902号公報
【特許文献6】特開昭62−003903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
凝結遅延剤を添加したコンクリートを使用したり、また、凝結遅延剤を添加したコンクリートを打設し、その後に硬化促進剤を適用する洗い出し方法は、コンクリート表面が未硬化状態の間にそれを除去して骨材等の化粧材を表面に露出させるものであり、洗い出しによってセメント粒子と細骨材の砂を含む汚染水が発生するので汚染水の処分が必要であり、また、水を使用するため屋内での施工が難しかった。
そこで、水を使用することなく打設したコンクリートの表層をドライな状態で除去できるようにし、屋内においても洗い出し仕上げに相当する表面化粧が簡単に施工することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
アルミナセメントに凝結遅延剤と硬化促進剤を添加した固結剤の混練り物を化粧面に打設し、打設したペーストの内部が凝結したところで、表面をブラシ等で擦り取ることによって化粧材をコンクリート表面に露出させる無水洗い出し方法である。
化粧材は、固結剤に細骨材及び水を加えて混練りして打設してもよく、また、固結剤と水を混練りしたものを打設もしくは塗布して化粧材を表面に押し込む方法でもよく、混練物の内部が凝結して化粧材がほぼ移動しなくなった時点で表層を擦り取り、化粧材を表面に露出させるものである。
【0006】
凝結遅延剤は、スターチエーテル、カゼイン、セルロース、ポリビニルアルコール(ポバール)、更には、クエン酸、クエン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、酒石酸、ホウ酸、リグニンスルホン酸塩、オキシカルボン酸塩、砂糖、糖類誘導体等を用いることができる。また、ケイフッ化物やオキシカルボン酸塩等を主成分とするものも同様に用いることができる。
凝結遅延剤は、一般にそれ自身や反応物がセメント粒子の表面に吸着することにより、セメントと水との接触を一時的に遮断して初期水和反応を遅らせると考えられるものであり、凝結遅延剤の量は、作業時間等を考慮して添加量を定める。
【0007】
硬化促進剤は、石膏、無水石膏、半水石膏、消石灰、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、塩化カルシウムや硝酸カルシウム等を単独または組合せて用いてもよい。硬化促進剤の添加量は、アルミナセメント100重量部に対して無水石膏の場合20〜70重量部である。硬化促進剤も、凝結遅延剤との組合わせと、作業時間を考慮して添加量を定める。
ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、または、シリカセメントを加えることによって、硬化促進剤を加えたのと同様の効果が得られるので、凝結遅延剤との組み合わせによる凝結時間を考慮して添加必要量を定める。
【0008】
打設後にコンクリート表面を擦り取るための道具としてはブラシであり、ワイヤブラシ、または、デッキブラシを使用する。また、面積が大きくない場合にはタワシによっても、打設コンクリートの表層を擦り取ることができる。
コンクリート表面が乾燥または半乾燥状態でブラシ等の道具を用いて表面を擦ることによってコンクリート表層が粉状となって除去されるので、真空吸引装置によって吸引して表面を清掃するか、水を含ませたスポンジで綺麗にふき取る。
【0009】
本発明の無水洗い出し仕上げ方法は、乾燥または半乾燥状態となったコンクリートの表層をブラシなどで擦り取ることで骨材等の化粧材を表面に露出させる一方、内部では硬化促進剤の作用によって短時間で高い強度を発現させており、表層の擦り取り作業の際に化粧材がコンクリートから離脱することはなく、表層のみを無水で除去でき、洗い出し仕上げを容易に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施例1
玉砂利の化粧面を形成するコンクリートの表面に高圧洗浄機で高圧水を供給してデッキブラシで清掃すると共に表面を湿潤状態とし、化粧層の水分が下地に急激に吸水されるのを防止して接着の安定性を高める。
湿潤状態の表面にアルミナセメントを主剤とした固結剤にアクリル系エマルジョンを混合したペーストを下塗り剤としてコテで均一に1〜2mmの厚さに塗布した。下塗りの上に図1に示す配合のアルミナセメント、凝結遅延剤、硬化促進剤、及び減水剤や流動化改良剤等の添加剤と、更にコンクリート表面を色彩豊かにするための無機顔料からなる固結剤と骨材としての珪砂を混合した粉体100重量部に対して水を30〜40重量部混合してハンドミキサーで混練りした。珪砂の粒度は、5〜7号から適宜に仕上がり表面に応じて選択する。
【0011】
この固結剤のペーストに化粧材としての粒度1〜15mmの玉砂利を100〜200重量部加えて混合した。粒度の小さなものや扁平な形状の玉石は、コンクリート表面の化粧材としては不向きなので排除する。
玉砂利と固結剤ペーストの混合物を下塗りの上にコテで塗り付け、表面を平坦に均し、厚さ11mmとした。
【0012】
約1時間経過後、内部が凝結し、玉砂利に力を加えても移動しない状態であることを確認した。固結剤ペーストの表面は、生乾き状態(半乾燥)であるが玉砂利は移動しないので、玉砂利を剥離することなく表面を擦り取ることができる。ワイヤブラシで表面を擦ると、表面の固結剤が粉状または粉体の塊となって除去され、玉砂利が露出してきたので、2〜5mm程度露出するまで、擦り続けた。
スポンジに水を含ませて表面に浮いた粉状体を清掃すると、コンクリート表面は、玉砂利が敷き詰められた洗い出し仕上げの状態となった。なお、表面が生乾き状態の間に、水を沁みこませたスポンジで表面を擦り取ることも可能である。また、表面に浮き上がった粉状体は、水を吸い取ることができる真空掃除機で吸引除去してもよい。
【0013】
実施例2
湿潤状態の表面にアルミナセメントを主剤とした固結剤にアクリル系エマルジョンを混合したペーストを下塗り剤としてコテで均一に1〜2mmの厚さに塗布した。下塗りの上に図1に示す配合のアルミナセメント、凝結遅延剤、硬化促進剤、更にコンクリート表面を色彩豊かにするための無機顔料の混合物100重量部に水25〜50重量部を加えハンドミキサーで混練りし、ペースト状にした。必要に応じて5〜7号の珪砂を増量のために混合する。珪砂の他にフライアッシュ、炭酸カルシウム、ベントナイト、低耐火土、高炉スラグ、木節粘土、蛙目粘土等の粘土鉱物、タルク等を増量材とすることができる。
【0014】
この固結剤のペーストを下塗りの上にコテ塗りし、9mm厚の層を形成した。なお、下塗りが乾燥しない状態であっても固結剤のペーストをコテ塗りしてもかまわない。
化粧材として直径10〜30mm程度の玉砂利を化粧層塗布後15〜30分以内に玉砂利同士が相互に接触したり重ならないように表面に敷き並べる。玉砂利を木鏝やタタキ板などで化粧層に押し込むと、化粧層のセメントモルタルが盛り上がってくるので、玉石表面とモルタルが同じになるまで押し込む。
固結剤の凝結開始を予め調べておき、凝結開始前に化粧材の押し込みを完了するようにする。
【0015】
化粧材の目地を深く仕上げたい場合は、玉砂利の間の盛り上がった化粧層のセメントペーストを刷毛で均し、目地を浅く仕上げたい場合はゴム鏝で盛り上がったセメントペーストを均し、表面がペーストの平坦面となるようにする。
【0016】
約1時間経過後、内部が凝結し、玉砂利に力を加えても移動しない状態であることを確認した。固結剤ペーストの表面状態は、生乾き状態(半乾燥)であるが玉砂利は移動しないので、玉砂利を剥離することなく表面を擦り取ることができる。ワイヤブラシで表面を擦ると、表面の固結剤が粉状または粉体の塊となって除去され、玉砂利が露出してきたので、2〜5mm程度露出するまで、擦り続けた。
スポンジに水を含ませて表面に浮いた粉状体を清掃したところ、コンクリート表面は、玉砂利が敷き詰められた洗い出し仕上げの状態となった。
【0017】
本発明の固結剤は、図1に示すように、混練りから30分程度で凝結が開始し、終結が3〜4時間の短時間で終了し、また、4時間程度で十分な曲げ強度や圧縮強度が得られるものである。表層を人がブラシで擦る程度で粉状化するので、化粧材を乾式で表面に露出させることができる。
珪砂、フライアッシュ等は、固結剤を適用する箇所の要求される強度に応じて増減して配合する。壁面などのように常時荷重が作用しない箇所では、固結剤の強度がそれほど要求されないので、珪砂等を多めに配合しても問題は生じない。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の洗い出し仕上げ方法は、乾燥または半乾燥状態となったコンクリートの表面のセメントペーストをブラシなどで擦り取ることで骨材等の化粧材を表面に露出させる一方、内部では硬化促進剤の作用によって短時間で高い強度を発現させるので、表層部分はブラシで除去することができるが、化粧材がコンクリートから離脱することはなく、表層のみを無水で除去でき、洗い出し仕上げを容易に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例の配合表。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナセメントに凝結遅延剤と硬化促進剤を添加した固結剤に化粧材を加えて混練りして化粧面に打設し、内部が凝結したところで表面を擦り取って化粧材をコンクリート表面に露出させる無水洗い出し方法。
【請求項2】
アルミナセメントに凝結遅延剤と硬化促進剤を添加した固結剤を混練りして化粧面に打設し、打設表面に化粧材を押し込み、内部が凝結したところで表面を擦り取って化粧材をコンクリート表面に露出させる無水洗い出し方法。
【請求項3】
請求項1または2において、硬化促進剤が石膏、無水石膏、半水石膏、若しくは消石灰、炭酸ナトリウム、ポルトランドセメントのいずれか、または、それらを組合わせたものである無水洗い出し方法。
【請求項4】
アルミナセメント、凝結遅延剤、及び硬化促進剤を含む無水洗い出し用固結剤。
【請求項5】
請求項4において、硬化促進剤が石膏、無水石膏、半水石膏、若しくは消石灰、炭酸ナトリウム、ポルトランドセメントのいずれか、または、それらを組合わせたものである無水洗い出し用固結剤。
【請求項6】
アルミナセメント100重量部、無水石膏20〜70重量部、凝結遅延剤0.1重量部を含む無水洗い出し用固結剤。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれかにおいて、更にベントナイト、フライアッシュ、炭酸カルシウム、高炉スラグ、珪砂、タルクまたは粘土鉱物のいずれか、または、それらを組合わせた混合物が添加してある無水洗い出し用固結剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナセメントにセメント粒子の表面に吸着することにより、セメントと水との接触を一時的に遮断して初期水和反応を遅らせる凝結遅延剤と硬化促進剤を添加した固結剤に化粧材を加えて混練りして化粧面に打設し、内部が凝結したところで表面を擦り取って化粧材をコンクリート表面に露出させる無水洗い出し方法。
【請求項2】
アルミナセメントにセメント粒子の表面に吸着することにより、セメントと水との接触を一時的に遮断して初期水和反応を遅らせる凝結遅延剤と硬化促進剤を添加した固結剤を混練りして化粧面に打設し、打設表面に化粧材を押し込み、内部が凝結したところで表面を擦り取って化粧材をコンクリート表面に露出させる無水洗い出し方法。
【請求項3】
請求項1または2において、硬化促進剤が石膏、無水石膏、半水石膏、若しくは消石灰、炭酸ナトリウム、ポルトランドセメントのいずれか、または、それらを組合わせたものである無水洗い出し方法。
【請求項4】
アルミナセメント、セメント粒子の表面に吸着することにより、セメントと水との接触を一時的に遮断して初期水和反応を遅らせる凝結遅延剤、及び硬化促進剤を含む無水洗い出し用固結剤。
【請求項5】
請求項4において、硬化促進剤が石膏、無水石膏、半水石膏、若しくは消石灰、炭酸ナトリウム、ポルトランドセメントのいずれか、または、それらを組合わせたものである無水洗い出し用固結剤。
【請求項6】
アルミナセメント100重量部、無水石膏20〜70重量部、セメント粒子の表面に吸着することにより、セメントと水との接触を一時的に遮断して初期水和反応を遅らせる凝結遅延剤0.1重量部を含む無水洗い出し用固結剤。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれかにおいて、更にベントナイト、フライアッシュ、炭酸カルシウム、高炉スラグ、珪砂、タルクまたは粘土鉱物のいずれか、または、それらを組合わせた混合物が添加してある無水洗い出し用固結剤。

【図1】
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【公開番号】特開2006−290664(P2006−290664A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−112129(P2005−112129)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(500285370)株式会社ハネダ化学 (2)
【Fターム(参考)】