説明

無溶剤型ポリウレタン組成物およびその硬化生成物

【課題】 貯蔵安定性が良好であり、良好な接着力を有し、発泡が少なく表面タックのない外観の良い硬化生成物を与える環境衛生上の問題のないポリウレタン組成物及び硬化生成物を提供する。
【解決手段】 イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーおよび硬化触媒からなるポリウレタン組成物において、イソシアネート基を3質量%以上含有し、硬化触媒が沸点150℃以上の溶剤に溶解した、有機カルボン酸鉄、鉄アセチルアセトネートの少なくともいずれか1種からなり、溶剤が1質量%以下である無溶剤型ポリウレタン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソシアネート基を有する無溶剤型ポリウレタン組成物に関し、特に低毒性の硬化触媒を配合するイソシアネート基を有する無溶剤型ポリウレタン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、接着剤等の分野において、溶剤を含有しないいわゆる無溶剤型ポリウレタン組成物が注目され、接着剤、シーリング剤、床剤、塗膜防水剤、注型材料等として広く使用されている。一般的には一液型または二液型の液状組成物として処方され、使用開始時に反応性のイソシアネート基を含有する状態で薄膜状に塗布してイソシアネート基を活性水素化合物と反応させ硬化させることによって接着性やシール性、ゴム弾性、防水性などの諸物性を発揮するように設計されている。
【0003】
1液型で使用する処方の場合は、イソシアネート基を有するプレポリマーやイソシアネートモノマー、硬化触媒、その他の添加物を含み、保存容器から取り出し、使用開始に伴い、被塗布基材の表面の活性水素や空気中の水などと反応し硬化する。二液型で使用する処方の場合は、第一液にポリオール及び/またはポリアミンなどの活性水素化合物と硬化触媒、その他の添加物を含み、第二液にイソシアネート基を有するプレポリマーからなり、使用直前に2液を混合して薄膜状に塗布した後反応が開始し、最終的に硬化する。
【0004】
従来ウレタン硬化触媒として、有機スズ化合物、カルボン酸鉛、カルボン酸ビスマスがよく知られている。しかしながら、環境・安全衛生の面からこれらの有機金属化合物の使用が問題とされ、有害金属化合物を含まない代替触媒の検討がなされてきた。
その中でも有機鉄化合物が、環境への影響が少なく、また比較的高い触媒活性で可使時間が長いこと、発泡しにくく接着強度が高いことなどの利点から検討されてきた。例えば、古くは第二鉄アセチルアセトネートと銅化合物またはスズ化合物の組み合せたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、金属アセチルアセトネートおよびアセチルアセトンの混合触媒を使用したウレタン系樹脂原料を使用して加熱によって回転成形体を製造することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、イソシアネート基に対して活性水素化合物であるポリオールを当量用いて得られる成形体であり接着性能はなく、また混合ウレタン系樹脂原料液のポットライフは短いという問題点がある。
【0006】
また、硬化触媒として有機カルボン酸ビスマスと他の有機カルボン酸金属塩との混合物を使用して触媒活性を高めたシーリング剤用ポリウレタン組成物(例えば、特許文献3参照)が提案されているが、有機ビスマス化合物は環境上の問題が指摘されている。
【0007】
また、従来の鉄系触媒はいずれも無溶剤型ポリウレタン組成物に配合して使用する場合、単独では硬化速度が遅いこと、したがって、室温のような比較的低い温度での反応立ち上がりが遅いこと、また、硬化生成物表面にタックが残り、ゴミの付着や接着力が不足するという問題があり、更に反応が遅い場合や湿度の高い状態での反応では発泡が増加し、接着力の低下を引き起こし硬化物の強度が低下するという問題があった。
他方、触媒の添加量の増加、あるいは共触媒や活性化助剤の添加は、硬化時間の短縮に効果があるが、逆にポリウレタン組成物の貯蔵安定性やポットライフの低下、オープンタイムの短縮、反応の不均一進行や発泡の増加による硬化物の強度低下、外観不良など引き起こすという問題があった。
【特許文献1】米国特許明細書第3314834号
【特許文献2】特開2004−323680号公報
【特許文献3】特開2001−89549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ポリウレタン組成物の貯蔵安定性が良好であり、適度なポットライフと接着工程でのオープンタイムを有するとともに、良好な接着力を有し、発泡が少なく表面タックのない外観の良い硬化生成物を与え、更に環境衛生上の問題のないポリウレタン組成物及び硬化生成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題は、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーおよび硬化触媒からなるポリウレタン組成物において、イソシアネート基を3質量%以上含有し、硬化触媒が沸点150℃以上の溶剤に溶解した、有機カルボン酸鉄、鉄アセチルアセトネートの少なくともいずれか1種からなり、溶剤が1質量%以下である無溶剤型ポリウレタン組成物によって解決することができる。
また、ウレタンプレポリマーが芳香族ポリイソシアネート化合物と、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオールの少なくともいずれか1種のポリオールとの反応生成物である前記の無溶剤型ポリウレタン組成物である。
ポリアルキルビニルエーテル化合物を含有する前記の無溶剤型ポリウレタン組成物である。
ポリウレタン組成物を硬化した硬化生成物において、イソシアネート基濃度を3質量%以上、硬化触媒が沸点150℃以上の溶剤に溶解した、有機カルボン酸鉄、鉄アセチルアセトネートの少なくともいずれか1種からなり、溶剤が1質量%以下である無溶剤型ポリウレタン組成物を被着体に塗布した後、70℃以上に加熱して硬化した硬化生成物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリウレタン組成物は、硬化触媒として、沸点150℃以上の溶剤に溶解した有機カルボン酸鉄、鉄アセチルアセトネートの少なくともいずれか1種を用いるとともに、溶剤を1質量%以下としたので、ポリウレタン組成物の貯蔵安定性が良好であり、適度なポットライフとオープンタイム、および良好な接着力を有し、発泡が少なく表面タックのない外観の良い硬化生成物を得ることが可能な環境衛生上の問題のないポリウレタン組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のポリウレタン組成物は、イソシアネート基を有するプレポリマーおよび特定の硬化触媒からなる無溶剤型のポリウレタン組成物である。
本発明においてイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーは、硬化成分として使用するものであり、有機ポリイソシアネートと活性水素含有化合物とから活性水素あるいは活性水素を有する基に対してイソシアネート基過剰条件で反応させて得られるものである。前記ウレタンプレポリマーの原料となるイソシアネート化合物としては、例えばトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、液状MDIなどの変性MDI、水素添加TDI、水素添加MDI、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などが挙げられる。これらのうち、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートが硬化後の接着性などが優れているが、本発明ではとくにMDI類、TDI類、ポリメリックMDIが好ましく、更にポリメリックMDIがより好ましい。
【0012】
ウレタンプレポリマーは前記のイソシアネートとポリオール等の反応により合成されたものが用いられる。
例えば、イソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基(NCO)と、ポリオール中に含まれる水酸基(OH)との当量比(NCO/OH)がNCO/OH=1.3〜10となる割合で上記両者を配合し、触媒の存在下、又は無存在下で50〜120℃の温度において3〜10時間程度反応させることによって合成される。
前記ポリオールとしては、2個以上の活性水素基を有するものであって、イソシアネート化合物と反応することにより末端イソシアネート基型ポリウレタンプレポリマーを生成するものを用いることができるが、平均分子量50〜10,000で平均官能基数(活性水素基数)が2〜4のものが挙げられる。
【0013】
例えば、低分子量の2価または3価アルコール類、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、ポリカプトラクトンポリオール類、動植物系ポリオール類、ポリアクリルポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アミノアルコール類、ポリアミン類などを使用できる。これらはそれぞれ単独で使用されるほか、2種以上を併用することもできる。
これらのなかでもポリオキシアルキレンポリエーテル、ポリエステルポリオールの少なくともいずれか一種を用いることによって、接着性に優れるとともに、粘度が低く作業性が良いものを得ることができる。
ポリオキシアルキレンポリオール類やポリエステルポリオール類の平均分子量は、常温で低粘度の液状を呈する300〜8,000程度、とくに400〜6,000程度であるのが好ましい。これらの分子量のものが、被着体に塗布や混合する際の作業性および物性面から有利である。
【0014】
ポリオキシアルキレンポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシブチレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオール、(ポリオキシエチレン)―(ポリオキシプロピレン)ランダムあるいはブロック共重合ポリオール、(ポリオキシプロピレン)―(ポリオキシブチレン)ランダムあるいはブロック共重合ポリオールなどが挙げられる。
【0015】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、へキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸等のポリカルボン酸、酸エステル、または酸無水物等の1種以上と、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロへキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子アルコール類、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン等の低分子アミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等の低分子アミノアルコール類の1種以上との脱水縮合反応で得られる、ポリエステルポリオールまたはポリエステルアミドポリオールが挙げられる。
【0016】
活性水素含有化合物としては鎖延長剤も使用することができる。鎖延長剤としては、エチレングリコールのごとき低分子アルコール類、エチレンジアミンのごとき低分子アミン類、低分子アミノアルコール類等のうち分子量500未満のもの、またはこれらの2種以上の混合物が好適に例示される。
【0017】
本発明におけるポリウレタン組成物中には、前記ウレタンプレポリマーの原料となるイソシアネート化合物が含まれていても良い。とくに液状で取扱が容易であって、蒸気圧が低いという安全性の面からポリメリックMDIが好ましい。
本発明においてはポリウレタン組成物におけるイソシアネート基含有量は、1液の場合でも2液の場合でもいずれでも、塗布使用の際の液中には通常3〜20質量%程度であり、5〜15重量%のものが好適に使用される。とくに好ましくは6〜12質量%である。
イソシアネート基含有量が3質量%未満の場合は、分子量が大きくなりすぎて粘度が増大し作業性が低下する。また、硬化触媒の活性向上に寄与しないばかりか、プレポリマー中の架橋点が少ないため、十分な接着性が得られない。イソシアネート基含有量が20.0質量%を超える場合は、炭酸ガスによる発泡が激しくなるため好ましくない。
また、ポリウレタン組成物の液粘度は、500〜20,000mPa・s(25℃)であることが好ましく、粘度が500mPa・s以下では、ポリウレタン組成物が被着体表面に均一に保持できない。また20,000mPa・s以上では作業性が劣ってくる。
【0018】
本発明のポリウレタン組成物に配合する硬化触媒は、沸点が150℃以上の溶媒中に溶解した、有機カルボン酸鉄、鉄アセチルアセトネートの少なくともいずれか1種を挙げることができる。
鉄化合物としては第一鉄や第二鉄のいずれの形態のものでも良く、単独でも混合物でも良い。有機カルボン酸としては、オクチル酸、ネオデカン酸、ナフテン酸、酢酸、プロピオン酸、オレイン酸、ステアリン酸などが挙げられる。好ましくはポリイソシアネートへの相溶性が良い点でナフテン酸やオクチル酸である。
【0019】
本発明においてはこれらの触媒は溶媒中に溶解したものを組成物中に配合し充分に溶解することが必要である。溶解状態が不十分であると触媒としての硬化反応性に劣る。そのために前記触媒を加熱などにより溶剤に溶かして溶液とする。触媒の溶液濃度は、鉄として3質量%以上であり、有機鉄化合物としては不揮発分とし測定でき、その溶液濃度は20質量%以上である。これより低いとポリウレタン組成物に配合した際に揮発成分が多くなり無溶剤型とは言いがたくなる。
【0020】
また、本発明では触媒の溶剤として沸点が150℃以上の溶剤を使用する。沸点が150℃未満であると、揮発性が高く、取り扱いや保存性に問題があるばかりでなく、引火性の問題が発生する。このような溶剤として、プロピオン酸オクチル、オクチル酸ラウリル、オレイン酸ヘキシル、グリセリンモノオレイン酸エステル等の脂肪族一塩基酸エステル類、イソパラフィン系やオレフィン系、ナフテン系、アロマ系炭化水素類を含む石油系混合溶剤であるミネラルスピリット類、ナフテン酸、ラウリン酸、ネオデカン酸、オクチル酸、オレイン酸、リノール酸等のモノカルボン酸、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジシクロヘキシル等のフタル酸エステル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジオクチル、マレイン酸ジオクチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル等の脂肪族2塩基酸エステル類、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類、ジエチレングリコールジアジペート、トリエチレングリコール2-エチルブチラート等の2価アルコールエステル類、クエン酸アセチルトリエチル等のオキシ酸エステル類等が挙げられる。特に好ましくは、ミネラルスピッリットやフタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、オクチル酸などである。
【0021】
硬化触媒は、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー100重量部に対して、鉄として0.005〜2重量部、特に0.05〜0.5重量部配合するのが好ましい。
【0022】
本発明よるポリウレタン組成物が水分や被着体表面の活性水素と反応し硬化する際、効果を促進させるために、さらに硬化促進助触媒を添加することができる。使用することができる硬化促進助触媒としては、たとえば、テトラ−n−ブチルチタネートやナトリウムメチラート等の金属アルコキシド、亜鉛やジルコニウム、コバルト、ニッケル等の金属とオクチル酸、オクテン酸、ナフテン酸等の有機酸塩、アセチルアセトナート等の金属キレート化合物、トリエチレンジアミンやトリ−n−ブチルアミン、テトラメチル−1,2−エチレンジアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7の有機酸塩等の有機アミンなどが挙げられ、これらは単独あるいは2種以上を組み合わせて使用できる。これらのうち硬化を促進する効果が高い点でアミン化合物が好ましい。
【0023】
硬化触媒を溶解した溶液には触媒安定剤として、カルボン酸やアセチルアセトン類が用いられる。具体例を挙げれば、安息香酸、フタル酸、トルエンスルホン酸などの芳香族カルボン酸、2−エチルヘキシル酸、オクチル酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、モンタン酸、シュウ酸などの脂肪族カルボン酸、2−メチルシクロペンタン−1−カルボン酸などのナフテン酸である。
【0024】
本発明のポリウレタンは無溶剤型ポリウレタン組成物であることを特徴としている。溶剤としては、硬化触媒の溶剤等として導入されるが、沸点150℃以上の有機溶剤が1質量%以下であればVOCの対策としても有効なものとなる。
一般に、VOC対策では溶剤として260℃以下の沸点を有する有機化合物が含まれるが、例えばウレタンプレポリマー原料であるMDI、ポリプロピレングリコールあるいはポリエステルジオールのように300℃以上の有機液体に150℃以上の沸点の有機溶剤の含有量が1質量%以下である場合には、混合液体の沸点は260℃以上となるので、VOC対策として有効である。
【0025】
本発明では硬化過程での発泡を抑制する目的で消泡剤を使用しても良い。消泡剤としては、高級アルコールやノニオン石鹸、シリコーン油などが挙げられる。これらの中で接着性を阻害しない観点からポリアルキルビニルエーテルが好ましい。ポリウレタン組成物100重量部に対して、0.01〜0.5重量部である。添加量が少ないと泡の発生の抑制効果が少なく、他方、添加量を多くすることは経済的な観点から好ましくない。
本消泡剤は、本発明のポリウレタン組成物を室温のような温和な反応条件や湿気の多い条件で反応・硬化する場合に硬化生成物に発泡が多く認められる場合にとくに有効である。
【0026】
また、本発明のポリウレタン組成物中にはさらに、充填剤や着色剤、希釈剤や可塑剤、貯蔵安定剤、耐候安定剤、接着性付与剤、揺変性付与剤、スリップ剤、レベリング剤、増粘剤、分散剤、色別れ防止剤、沈降防止剤あるいは安定剤などを添加することができる。
充填剤としては、たとえば炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、タルク、無水石膏、炭酸マグネシウム、マイカ、亜鉛華、カオリン、ゼオライト、珪藻土などの、人工あるいは天然の種々の充填材を使用できる。
【0027】
着色剤としては、上記充填材の一部を体質顔料として使用できるほかに、酸化チタン、酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック、鉄黒、不溶性アゾ顔料、フタロシアニン系顔料などが使用される。
希釈剤としては、アルキルベンゼン、流動パラフィン、ミネラルスピリット、沸点150℃以上の溶剤等の高沸点溶媒などを使用できるが、これらを使用する場合には、硬化触媒の溶剤として使用する溶剤との合計量を1質量%以下とすることが必要である。
【0028】
また、貯蔵安定剤は、ポリウレタン組成物の貯蔵安定性を高めるために使用するものであり、具体的には、例えば、2−エチルへキシルアシッドホスフェートなどのリン酸エステル系化合物、オクタグデシルイソシアネートなどの有機モノイソシアネートなどが挙げられる。貯蔵安定剤の添加量は、ポリウレタン組成物100重量部に対して、0〜2重量部である。
耐候安定剤は、硬化物の酸化や光劣化、熱劣化を防止して、耐候性だけでなく耐熱性を更に向上させるために使用されるものである。耐候安定剤としては具体的には、ヒンダードアミン系やヒンダードフェノール系の酸化防止剤、紫外線吸収剤、光硬化性化合物を挙げることができる。
【0029】
接着性付与剤は、硬化性組成物の硬化後の接着性を向上させるために使用するものであり、例えば、カップリング剤、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、前記の有機ポリイソシアネートと同様の有機ポリイソシアネートなどが挙げられる。
カップリング剤としては、シラン系、アルミニウム系、ジルコアルミネート系、チタン系などの各種カップリング剤、その部分加水分解縮合物が挙げられる。これらのうちシラン系カップリング剤、その部分加水分解縮合物が接着性付与効果が高い。
【0030】
なお、本発明のポリウレタン組成物は用途に応じて一液型としても、二液型としても使用できるが、非イソシアネート成分液とイソシアネート成分液を混合する手間が無く、また混合不良による硬化不良などの不具合も無く作業性に優れているため、一液型硬化性組成物が好ましい。
【0031】
貯蔵液の過酷な条件での安定性や硬化生成物の物性向上のために2液型とする場合、非イソシアネート成分溶液中には、必要に応じて活性水素を有するオリゴマー、鎖延長剤、充填剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、顔料又は染料の着色剤、分散剤、可塑剤等の添加剤を配合してもよい。
【0032】
本発明のポリウレタン組成物は、建築用あるいは土木用、自動車用の接着剤、塗料、シーリング材、床剤、塗膜防水剤、注型材料等に使用される。具体的にはゴムチップや砂とポリウレタン組成物を混合して、金型中や成形板上でマット状硬化生成物を得る。
また、これらのゴムチップとポリウレタン組成物の混合物をモルタルやコンクリート等の無機系材料、大理石等の天然石材料、サイディングやタイル等の窯業系材料からなる床上に弾性シートを形成しても良い。あるいは、このゴムチップマットを床上に直接弾性シートを形成する際の床面とシートの接着性を改善するためのプライマーとしてポリウレタン組成物のまま塗布される。
【0033】
また、ガラスと金属の間のシールにポリウレタン組成物として使用される。また、ポリエチレンやポリ塩化ビニル、ABS樹脂、ポリエステル、発泡ポリスチレン等の各種合成樹脂製のシート状や板状、雨樋状の材料、木材や合板等の木質系材料、鋼板やアルミニウム板等の金属系材料など各種材料間の接着剤として使用される。
【0034】
被着体と本発明のポリウレタン組成物の混合物を金型で成形して硬化生成物を得る場合には、生産速度を速め、発泡を抑えて良好な外観や接着強度を得るために硬化過程において温度を70℃以上、好ましくは90℃以上に加熱することが好ましい。
加熱温度が高くなるほど、反応速度が速くなるが、発火や変色を防止する観点から200℃以下とすることが好ましい。
また、反応温度の上昇によって反応速度が速くなるので、発泡を抑制し硬化物の強度を高めることができ、消泡剤を添加しなくても発泡のない成形物を得ることができる。
また、加熱時間は1〜60分であり、好ましくは2〜15分である。
【0035】
床などに現場で塗布して使用する場合には、貯蔵容器から取り出したポリウレタン組成物を刷毛、へラ、ロールコーター、スプレーガン等により塗布する方法、袋状やカートリッジ状容器に詰めたものを押出しガンに装着して手動、電動あるいは空気庄により押出して塗布や充填する方法など各種挙げられ、用途により適宜選択すれば良い。
【0036】
本発明のポリウレタン組成物を貯蔵する容器としては密閉性が確保されるものを用いることが必要である。例えばドラム缶、金属製や合成樹脂製のペール缶、角缶あるいは袋状容器、紙製や合成樹脂製のカートリッジ状容器など各種の容器が挙げられる。とくにイソシアネート成分液は貯蔵安定性を保つためポリウレタン組成物を容器に詰めた後、密封して湿気を遮断した状態で貯蔵することが必要である。
以下に、実施例、比較例を示し本発明を説明する。
【実施例1】
【0037】
加温装置と温度計、窒素シール、攪拌機、冷却コンデンサーを取り付けたガラス製反応器にポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(BASFジャパン製 ルプラネートM−20S 以下、p−MDIと称す)を22重量部仕込み、この中に分子量2,000のポリプロピレングリコール(旭硝子ウレタン製エクセノール2020、以下、PPG−1とも称す)を56重量部と分子量300のポリプロピレングリコール(旭硝子ウレタン製エクセノール430 以下、PPG−2とも称す)を2重量部、アジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールから合成される分子量2,000のポリエステルジオール(クラレ製クラレポリオールP−2010)を3重量部添加し混合する。その後、温度を80℃に加熱して、10時間反応させた後、室温にしてイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー液を得る。
【0038】
予めミネラルスピリットに溶解した鉄として5.0質量%(不揮発分として55質量%)含有するナフテン酸第一鉄(和光純薬製)溶液を前記ウレタンプレポリマー液100重量部に対して0.8重量部配合し、試料1の無溶剤型ポリウレタン組成物を得た。
なお、表1においては、ウレタンプレポリマー液88重量部であるので、ナフテン酸第一鉄の量は、0.37重量部となる。
溶剤成分であるミネラルスピリットの含有率は0.4質量%である。組成物の粘度は4,000mPa・s(25℃)であり、イソシアネート基濃度は4.0質量%であった。同組成物を窒素でよく置換したガラス瓶に密栓して充填し保管した。
【0039】
得られたポリウレタン組成物について以下の評価試験方法で評価試験を行い、その結果を表1に示した。液の貯蔵安定性は優秀であり、ゴムチップと配合して成形した際のポットライフは100分間であり混合後の取り扱い時間は十分確保されており作業性は良好である。
また、室温で8時間後にはタックがなくなり、硬化は速い。硬化生成物には発泡も認められない。140℃で10分間の硬化条件においても硬化し、成形物の強度も大きいものが得られた。
【0040】
(評価試験方法)
(1)液の貯蔵安定性:密栓したガラス瓶に保管された試料を50℃で1週間保管したときの外観と粘度を以下の評価基準により目視判定した。
ほとんど変化なしのもの ……………優秀
やや粘度増加あるもの ………………良好
着色または粘度の増加が大きいもの…不良
(2)ゴムチップ成形:エチレンプロピレンジエン系ゴムを2mmの大きさのチップに破砕したEPRゴムチップ100gに本発明のポリウレタン組成物を15gを配合し、良く混合した後、厚み10mmでアルミニウム箔上に塗布した直後のものを以下の試験に供する。
(a)ポットライフの測定:前記塗布物の一部を湿度60%、温度33℃で放置し、金属製さじを用いて手で攪拌して流動性の無くなるまでの時間をポットライフとする。
(b)室温硬化性:前記塗布物の一部を湿度60%、温度33℃で5時間放置した後の硬化生成物の表面タック性を指を触れて判断した。
表面タックのないもの ……………優秀
表面に少しタック感があるもの …良好
タックが強く残るもの ……………不良
(c)室温硬化発泡性:前記の室温硬化性評価において発泡状態を以下の評価基準で目視して判断する。
硬化生成物に発泡がないもの ………優秀
少し発泡があるもの …………………良好
発泡が多く発生しているもの ………不良
(d)加熱硬化性:前記アルミ箔上の塗布物の一部を塗布直後に140℃のオーブンに10分間放置した後取り出し、室温で以下の評価基準で目視で表面タック性と発泡状態を観察する。
表面タックも発泡もないもの …………………………………優秀
表面に少しタック感があるかまたは発泡が少しあるもの …良好
タックが強く残るか発泡の非常に多いもの …………………不良
(e) 成形物の引張強度:前記の加熱硬化性評価で得られた成形物を長さ100mm、幅25mm、厚み10mmの直方体形状に試料を切り出し、引張速度500mm/minで引張試験機(上島製作所製)にて引張強度を23℃、65%RHにて測定する。
(3)組成物の性状測定
(a) 液の粘度測定:25℃にてB型回転粘度計(東京計器製)により測定する。
(b) 液中のイソシアネート基濃度の測定
JIS−K1556のNCO量測定による。
【実施例2】
【0041】
p−MDIの仕込み量を表1の如く変えること以外は実施例1と同様にして試料2ないし4のポリウレタン組成物を調製し、実施例1と同様に硬化生成物を得て、その評価試験行い結果を表1に示す。
【0042】
ポリウレタン組成物中のイソシアネート基濃度が本発明の範囲で、良好な貯蔵安定性や硬化性、成形体の強度を得ることが出来る。ポットライフは30分以上であり、この値は出来るだけ長い方が好ましい。室温での硬化性や室温硬化発泡性は本発明範囲のイソシアネート濃度ではすべて良好であり、この範囲が好ましい。
また、成形温度として室温または140℃の2通りの条件で評価しているが、イソシアネート基が少ない場合や多い場合のいずれも140℃でタックが残ったり、発泡が多いなどの加熱硬化性の悪化があり、使用できなかった。
【0043】
比較例1
p−MDIの仕込み量を表1の如く変えた点を除き実施例1と同様にして比較試料1−2のポリウレタン組成物を調製し、実施例1と同様に硬化生成物を得て、その性能評価結果を表1に示す。
【実施例3】
【0044】
硬化触媒をナフテン酸第一鉄のミネラルスピリット溶液に代えて、鉄として6質量%(不揮発分として52質量%)含有するオクチル酸第二鉄(和光製薬製)のミネラルスピリット溶液を使用すること以外は試料3と同様にして試料5のポリウレタン組成物を得た。
実施例1と同様に評価試験を行ったところ、得られた液の粘度は2300mPa・sであり、イソシアネート基濃度は12.1質量%であった。
また、ポットライフは90分間であり、室温硬化性、室温硬化発泡性、加熱硬化性はいずれも優秀であり、成形物の引張強度は0.7MPaであった。
【実施例4】
【0045】
硬化触媒をナフテン酸第一鉄のミネラルスピリット溶液に代えて、鉄として5質量%(不揮発分として33質量%)含有する第二鉄アセチルアセトネート(和光純薬製)のマロン酸ジエチル(沸点199℃、和光製薬製)溶液を使用すること以外は試料3と同様に試料6のポリウレタン組成物を調製した。
実施例1と同様に評価試験を行ったところ、得られた液の粘度は2400mPa・sであり、イソシアネート基濃度は12.2質量%であり、組成物の貯蔵安定性は優秀であった。
また、ポットライフは80分間であり、室温硬化性、室温硬化発泡性、加熱硬化性はいずれも優秀であり、成形物の引張強度は0.8MPaであった。
【0046】
比較例2
硬化触媒のナフテン酸第一鉄のミネラルスピリット溶液に代えて、表1記載の触媒溶液と量を使用すること以外は実施例と同様にして比較試料3ないし5のポリウレタン組成物を調製した。
結果を表1に示す。スズ化合物は貯蔵安定性やポットライフに問題があり、鉛化合物は良好な液状や硬化性を有するが、環境上好ましくない。ビスマス化合物は硬化性がやや悪い。
なお、使用した触媒は次のものである。
ジブチルスズジラウレート:三共有機合成製
ナフテン酸鉛:ニッカオクチックス鉛20%(T)、鉛として20質量%含有、不揮発分としては44%をミネラルスピリットに溶解したもの(日本化学産業製)
オクチル酸ビスマス:ニッカオクチックスBi25%、ビスマスとして25質量%含有、不揮発分としては80質量%をオクチル酸に溶解したもの(日本化学産業製)
【実施例5】
【0047】
試料3のポリウレタン組成物100重量部に、消泡剤(ビックケミー・ジャパン製BYK−052)0.2重量部を配合して、試料7のウレタン組成物を調製した。なお、前記消泡剤は、ホワイトスピリット、グリコール酸ブチル、エチレングリコールモノブチルエーテルの混合物を溶剤とするアルキルビニールエーテル共重合物の20質量%溶液である。
実施例1と同様に評価試験を行ったところ、組成物の貯蔵安定性は優秀であり、ポットライフは50分間、室温硬化性は優秀であり、室温硬化発泡がまったく認められず、消泡剤を添加しなかった試料3に比較して発泡性が改善されていた。成形体の引張強度は0.7MPaであった。
【実施例6】
【0048】
試料3の組成物の加熱硬化性の評価においてオーブンの温度を80℃とした点以外は実施例1と同様にして硬化生成物を得た。得られた硬化生成物は発泡やタックは認められず、外観は良好であった。成形体の引張強度は0.9MPaである。
実施例3の室温硬化性評価で得られた成形物の発泡がややあるのに対して、本実施例のように成形温度を高めると発泡が認められず成形状態は良好となる。加熱温度は70℃以上が良い。
【実施例7】
【0049】
試料3のポリウレタン組成物100重量部にアルキルビニールエーテル共重合物溶液(ビックケミー・ジャパン製、商品名BYK−052)を0.3重量部配合してポリウレタン組成物を得た。ポリ塩化ビニル製雨樋(タキロン製)より切り出した厚み2mmの試験片を用いて重ねあわせ部が12.5mm×12.5mmとなるように、前記組成物を塗布して合せ2日間放置することにより接着試験片試料を用意する。この試験片の引張せん断接着強さをJIS K6850に従って測定した。引張せん断接着強さは3.5MPであり、実用的な接着強度であった。
【0050】
比較例3
実施例1においてp−MDIをヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)に置き換えるとともに、反応時間を20時間に変えた点を除き実施例1と同様に比較試料6のポリウレタン組成物を調製した。
得られたポリウレタン組成物を実施例1に記載の評価試験方法と同様に評価を行ったところ、イソシアネート基濃度は8.9質量%で、粘度2,000mPa・s(25℃)であった。
【0051】
次いで、得られたポリウレタン組成物を用いて実施例1と同様の硬化生成物を作製したところ、液の貯蔵安定性は優秀であり、ゴムチップと配合して成形した際のポットライフは200分間以上であった。
一方、室温ではほとんど硬化せず、室温硬化性は不良であった。加熱硬化性も不良で成形体の引張強度試験は出来ないほど強度が弱いものであった。これは、脂肪族ポリイソシアネートを使用したことによって反応性が遅くなったものであって、実用的でない。
【0052】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のポリウレタン組成物は、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーおよび硬化触媒からなるポリウレタン組成物において、イソシアネート基を3質量%以上含有し、硬化触媒が沸点150℃以上の溶剤に溶解した、有機カルボン酸鉄、鉄アセチルアセトネートの少なくともいずれか1種からなり、溶剤が1質量%以下としたので、ポリウレタン組成物の貯蔵安定性が優れており、発泡が少なく表面タックのない外観の良い硬化生成物を提供可能な環境衛生上の問題のないポリウレタン組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーおよび硬化触媒からなるポリウレタン組成物において、イソシアネート基を3質量%以上含有し、硬化触媒が沸点150℃以上の溶剤に溶解した、有機カルボン酸鉄、鉄アセチルアセトネートの少なくともいずれか1種からなり、溶剤が1質量%以下であることを特徴とする無溶剤型ポリウレタン組成物。
【請求項2】
ウレタンプレポリマーが芳香族ポリイソシアネート化合物と、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオールの少なくともいずれか1種のポリオールとの反応生成物であることを特徴とする請求項1記載の無溶剤型ポリウレタン組成物。
【請求項3】
ポリアルキルビニルエーテル化合物を含有することを特徴とする請求項1ないし2のいずれか1項記載の無溶剤型ポリウレタン組成物。
【請求項4】
ポリウレタン組成物を硬化した硬化生成物において、イソシアネート基濃度を3質量%以上、硬化触媒が沸点150℃以上の溶剤に溶解した、有機カルボン酸鉄、鉄アセチルアセトネートの少なくともいずれか1種からなり、溶剤が1質量%以下である無溶剤型ポリウレタン組成物を被着体に塗布した後、70℃以上に加熱して硬化したことを特徴とする硬化生成物。

【公開番号】特開2007−169432(P2007−169432A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−368292(P2005−368292)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(591108422)広野化学工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】