説明

無端コンベヤにおける搬送容器の姿勢維持機構

【課題】鶏卵11を連続的に搬送する無端コンベヤにおいて、水平移動時の搬送卵座9の取り付け間隔を密にしても、鶏卵の鋭端を下に向けたまま、折り返し部で回動する過程での衝突を回避するための空間を確保することによって、コンベヤの長大化と搬送チェーン4の高速化を抑制し、鶏卵の安全な搬送を実現する。
【解決手段】搬送卵座9が折り返し部で回動する時に、搬送卵座9の支点(衛星スプロケット7の回転軸)を搬送チェーン4に取り付けた変位板5と13を介して搬送チェーン4の外周側に回転自在に取り付けると共に、変位板5上には姿勢を維持する公転スプロケット12を回転自在に取り付ける。公転スプロケット12の姿勢を維持するために、搬送チェーン4の内周に搬送チェーン4と同一速度で移動する姿勢チェーン15を設け、公転スプロケット12の姿勢を別に設けた1組の回転伝達手段によって搬送卵座9の姿勢に反映させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大量の鶏卵の洗浄、検査、選別、包装などを自動的に処理する自動鶏卵処理システムにおいて、鶏卵の姿勢を維持したまま搬送経路を変更する手段に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動鶏卵処理システムにおいては、洗浄、検査等の過程では鶏卵を6列搬送で処理し、選別、包装等の過程の前で、特公昭53−8423号公報等の技術により単列搬送部に移載して選別、包装等の処理を行っていた。
【0003】
しかし、このようなシステムでは単列搬送部の移送速度はおおむね6列搬送部の6倍となるため、好ましい状態ではなかった。また、近年では自動鶏卵処理システムの高速処理の要請が多く、例えば従来の装置構成では6列搬送速度を2倍にして高速化を行うと、選別、包装などの単列搬送速度は超高速(元の6列搬送速度の12倍)になり、鶏卵は更に損傷を受け易くなるため、高速化を妨げていた。
【0004】
鶏卵の高速処理を安全に行う技術として、複数列で選別部の搬送を行う鶏卵処理システムが考案された。例えば特開2002−153160号公報の技術を採用すると給卵、洗卵等の処理過程と同様に、選別、包装等の処理過程でも、鶏卵を6列で搬送するため、処理速度を2倍にしても搬送速度は全ての処理過程において、元の6列搬送速度の2倍(従来の単列搬送速度と比較すると3分の1)になり、鶏卵は損傷を受け難くなる。
【特許文献1】特開平6−211213
【特許文献2】特公昭53−8423
【特許文献3】特開2002−153160
【非特許文献1】伊藤茂著 「メカニズムの事典」理工学社出版 1983年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数列で選別搬送を行う鶏卵処理システムでは鶏卵の姿勢を維持したまま搬送経路を変更する手段として図1に示すように搬送卵座9が水平移動する過程で、上方より搬送卵座9に鋭端を下向きに鶏卵11を投入し、その姿勢を維持したまま折り返し、再び搬送卵座9が水平移動する際に、搬送卵座9に収容された鶏卵11を下方へと放出する機能を備えた無端コンベヤが役立つ。
【0006】
例えば、搬送卵座9が鶏卵11を水平搬送する無端コンベヤの折り返し部において、搬送卵座9と収容された鶏卵11の姿勢を水平に維持し折り返すために、特開平6−211213号公報等に用いられている技術のように搬送卵座9の取り付け間隔を疎にする方式で折り返し部での相互の接触を防いでいた。しかし搬送卵座9の取り付け間隔を疎にすると、疎にした割合に応じてコンベヤの機長を長くしたり、所定の鶏卵処理速度を保つために搬送チェーン4の速度を早める必要があり、自動鶏卵処理システムの設置面積や、鶏卵の受ける衝撃が増加することなどに難点があった。鶏卵を安全に搬送すると共に処理能力の低下を防ぐには無端コンベヤの搬送卵座9が折り返し部で回動する時のみ衝突を回避する空間を確保する事が望ましい。
【0007】
また、「メカニズムの事典」では「不回転三歯車列」として図5の機構が紹介されている。不回転三歯車列機構は三個の歯車(歯車31,32,33)と三個の歯車を1列に連結する腕34で構成され、歯車31を固定し、腕34を回転させても歯車33は姿勢を維持したまま(自身は回転しないで)歯車31の軸の周囲を運動するものである。
【0008】
不回転三歯車列機構を水平搬送部を伴う無端コンベヤの回動部に採用すると、水平移動中は図6のように歯車42と歯車43と連結する腕44が歯車41から離れる。その結果、図6の右側の折り返し部で歯車42が歯車41と再び噛み合いはじめる時の歯車41と歯車42の歯先円が重なりはじめてから歯車42の中心が歯車41の真上に到達するまでの間と、噛み合っていた歯車41と歯車42が離れる時の歯車42の中心が歯車41の真下の位置から歯車41と歯車42の歯先円の重なりがなくなるまでの間、歯車42が余分に回転をする。歯車42が余分に回転すると歯車43の姿勢を維持できない。また、歯車41と歯車42が噛み合いはじめる時には、互いの歯車の歯先の位置によって歯先と歯先が衝突する問題も生じるため、不回転三歯車列機構も水平搬送部を有する無端コンベヤの回動部に採用することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
搬送卵座9が鶏卵11を水平搬送する無端コンベヤの折り返し部において、搬送卵座9の支点が搬送チェーン4の軌跡よりも遠回りするように、変位板5と13を介して外周側に搬送卵座9を回転自在に取り付け、変位板5には姿勢を維持する公転スプロケット12を回転自在に取り付ける。公転スプロケット12の姿勢を維持するために、図1に示すように、搬送チェーン4の軌跡の内周にあって搬送チェーン4と同一速度で移動しつつ公転スプロケット12と徐々に接近し噛み合う姿勢チェーン15を設け、公転スプロケット12の姿勢を別に設けた1組の回転伝達手段としての衛星スプロケット6、7と無端チェーン8によって搬送卵座9の姿勢を水平に保つ。図1の構成によると図4で詳しく示すように、折り返し部での隣り合う搬送卵座9の取り付け間隔は変位板5と13を介して搬送チェーン4の外周方向へ搬送卵座9の支点を変位したことで水平移動部の隣り合う搬送卵座9の取り付け間隔よりも広げられ、搬送卵座9の回動空間に余裕が生まれる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回動部において水平方向の余裕と同様に鉛直方向にも余裕が生じるため、鶏卵11のような縦長形状の物品でも、折り返し部においての隣り合う搬送卵座9や鶏卵11の衝突を避けるために搬送チェーン4への取り付け間隔を疎にしないで、姿勢を維持したまま搬送卵座9が折り返し部で回動できる。その結果、コンベヤの長大化や、搬送チェーン4の高速化が不要になり、鶏卵11は安全に搬送される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
無端コンベヤにおいて搬送卵座9が折り返し部で回動する時に衛星スプロケット7の回転軸(搬送卵座9の支点)が搬送チェーン4の軌跡よりも外周を遠回りするように搬送チェーン4に変位板5を取り付け、変位板5上には駆動スプロケット3のピッチ円直径の1/2の公転スプロケット12、公転スプロケット12の姿勢を搬送卵座9に反映するための回転伝達手段として1組の衛星スプロケット6、7、無端チェーン8、と搬送卵座9を回転自在に取り付け、搬送チェーン4の内周には搬送チェーン4と同一速度で移動し、公転スプロケット12と徐々に接近し噛み合う姿勢チェーン15、姿勢チェーン15で形成するピッチ円を公転スプロケット12と同じピッチ円直径にする姿勢ローラー17、姿勢チェーン15を駆動する駆動スプロケット16を備える。
【0012】
無端コンベヤをこのように構成すれば、図1に示すように搬送卵座9が上側の水平移動する過程で上方より搬送卵座9に投入された鶏卵11を、折り返し部で搬送卵座9と収容された鶏卵11が姿勢を維持したまま隣り合う搬送卵座9との衝突を避けて回動し、下側の移動部で再び搬送卵座9が密に並び、収容された鶏卵11を図1の下方の行程へ放出できる。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明するが、本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
【0014】
図1は正面図、図2は側面図、図3は平面図、図4は折り返し部の詳細図を例示する。図1では左右一対の搬送チェーン4は変位板5のほか搬送卵座9などと共に、モーター等の駆動装置により駆動軸1を介して左右一対の駆動スプロケット3により図1中の矢印a方向に駆動される。同時に図3中の姿勢チェーン15は駆動軸1よりスプロケット21、チェーン20、スプロケット19、軸18を介して駆動スプロケット16により図1中の矢印b方向に駆動される。図3中の従動軸2は搬送チェーン4により従動軸2上の駆動スプロケット3を介して駆動され、スプロケット22、チェーン23、スプロケット24、軸25を駆動する。
【0015】
図2の左側部分の搬送チェーン4には変位板5が取り付けられ、変位板5の取り付け部に近い側に公転スプロケット12と共に固定された衛星スプロケット6が回転自在に、変位板5の取り付け部に遠い側には衛星スプロケット7と共に固定された搬送卵座9が回転自在に取り付けられ、衛星スプロケット6と衛星スプロケット7を連動させる為の無端チェーン8を備える。姿勢チェーン15と姿勢チェーン15を駆動する駆動スプロケット16、姿勢ローラー17は図2に示すとおり一方側のみに備える。図2の右側部分の搬送チェーン4には変位板13が取り付けられ、変位板13は回転自在な状態で搬送卵座9の一方を支持する。変位板13側の搬送卵座9にはサイドローラー14を備え、水平移動時の搬送卵座9の姿勢を維持するためにサイドローラー14を案内するようにガイド26を備える。
【0016】
図1の右側折り返し部について図4で詳しく説明する。搬送チェーン4に変位板5と共に取り付けられた公転スプロケット12は折り返し部の手前で搬送チェーン4の内側にある姿勢チェーン15と同一速度で移動しつつ徐々に接近しながら噛み合う。ここでは水平移動中の搬送チェーン4と姿勢チェーン15は同一速度で移動するため公転スプロケット12は姿勢チェーン15に噛み合っても回転しないまま駆動軸1の真上まで進む。搬送チェーン4と共に公転スプロケット12が折り返し部で回動をはじめると公転スプロケット12は搬送チェーン4の進行と共に姿勢チェーン15と噛み合ったまま駆動軸1を中心に、周囲を不回転三歯車列(図5)の歯車33のように自身は回転しないで水平状態の姿勢を維持したまま移動する。公転スプロケット12の水平状態の姿勢は公転スプロケット12と共に固定された衛星スプロケット6から無端チェーン8を介して搬送チェーン4の外周方向にある衛星スプロケット7へ伝えられ、衛星スプロケット7と共に固定された搬送卵座9の水平状態の姿勢が維持される。同時に変位板5と13を介して搬送チェーン4の外周方向へ搬送卵座9の支点を変位したことにより変位板5上の衛星スプロケット7と共に固定された搬送卵座9と収容された鶏卵11は水平移動部の搬送卵座9の取り付け間隔より広げられる。折り返し部で広げられた回動空間により、隣り合う搬送卵座9同士が衝突することなく回動することができ、回動終了後再び水平移動に入った搬送卵座9の間隔は密に戻る。
【産業上の利用可能性】
【0017】
鶏卵11の搬送卵座9が複数取り付けられた無端コンベヤにおいて、搬送卵座9を密に取り付けることが可能になるため、コンベヤの長大化や、搬送チェーン4の高速化が不要になり、鶏卵11は比較的安全に搬送される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用した無端コンベヤの実施例にかかる概略正面図
【図2】概略側面図で図1の線A−A矢視図
【図3】概略平面図で図1の線B−B矢視図
【図4】図1の折り返し部の詳細図
【図5】不回転三歯車列の概略図
【図6】不回転三歯車列機構の採用例の概略図
【符号の説明】
【0019】
1 駆動軸
2 従動軸
3 駆動スプロケット
4 搬送チェーン
5 変位板
6 衛星スプロケット
7 衛星スプロケット
8 無端チェーン
9 搬送卵座
11 鶏卵
12 公転スプロケット
13 変位板
14 サイドローラー
15 姿勢チェーン
16 駆動スプロケット
17 姿勢ローラー
18 軸
19 スプロケット
20 チェーン
21 スプロケット
22 スプロケット
23 チェーン
24 スプロケット
25 軸
26 ガイド
31 歯車
32 歯車
33 歯車
34 腕
41 歯車
42 歯車
43 歯車
44 腕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端搬送チェーン(以下「搬送チェーン」という)4に鶏卵11の容器(以下「搬送卵座」という)9を複数取り付けた無端コンベヤにおいて、搬送卵座9の支点が搬送チェーン4の軌跡よりも外周を通るように搬送卵座9を小スプロケット(以下「衛星スプロケット」という)6および7の軸間隔だけ変位させる変位板を介して回転自在に取り付け、また、搬送チェーン4の折り返し部の内側には搬送チェーン4の移動速度と同一速度で移動する無端チェーン(以下「姿勢チェーン」という)15と駆動スプロケット16とローラー(以下「姿勢ローラー」という)17を備え、変位板5上に姿勢チェーン15に噛み合うスプロケット(以下「公転スプロケット」という)12を回転自在に取り付け、公転スプロケット12の姿勢を搬送卵座9に反映するための回転伝達手段を備えたことを特徴とする搬送卵座9の姿勢維持機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−273458(P2006−273458A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−91752(P2005−91752)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000162238)共和機械株式会社 (9)
【Fターム(参考)】