無端ベルト製造方法および無端ベルト製造装置
【課題】無端ベルト製造時に外部に廃棄されていた熱エネルギーを有効活用して、省エネルギーを実現する無端ベルト製造方法を提供すること。
【解決手段】皮膜形成樹脂溶液を塗布することにより塗膜がその表面に形成された芯体を、乾燥炉100内に配置して加熱し前記塗膜を乾燥させて樹脂皮膜を形成する乾燥工程と、前記樹脂皮膜が形成された芯体を、加熱炉200内に配置して加熱し前記樹脂皮膜を焼成する加熱工程とを含み、前記加熱工程において、前記加熱炉から排気された排気ガス210を前記乾燥炉に供給することを特徴とする無端ベルト製造方法。
【解決手段】皮膜形成樹脂溶液を塗布することにより塗膜がその表面に形成された芯体を、乾燥炉100内に配置して加熱し前記塗膜を乾燥させて樹脂皮膜を形成する乾燥工程と、前記樹脂皮膜が形成された芯体を、加熱炉200内に配置して加熱し前記樹脂皮膜を焼成する加熱工程とを含み、前記加熱工程において、前記加熱炉から排気された排気ガス210を前記乾燥炉に供給することを特徴とする無端ベルト製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子写真装置において、感光体、転写ベルト、及び定着ベルト等に適用される無端ベルトを製造するに際して、加熱炉の熱エネルギーを乾燥炉に利用することにより、エネルギーを有効活用する無端ベルト製造方法およびこれを用いた無端ベルト製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置では、感光体、転写体、定着体などに、金属、樹脂、またはゴム製の回転体が使用されるが、装置の小型化或いは高性能化のために、回転体は変形可能なものが好ましいことがあり、それには肉厚が薄い樹脂製ベルトが用いられる。その材料としては、強度や寸法安定性、耐熱性等の面でポリイミド(以後、「PI」と略す)樹脂や、ポリアミドイミド(以後、「PAI」と略す)樹脂が好ましい。この場合、ベルトに継ぎ目(シーム)があると、出力画像に継ぎ目に起因する欠陥が生じるので、継ぎ目がない無端ベルトが好ましい。
【0003】
無端ベルトを作製するには、円筒体の内面に皮膜形成樹脂溶液を塗布し、回転しながら乾燥して成膜する遠心成形法や、円筒体内面に皮膜形成樹脂溶液を展開する内面塗布法があるが、これらの内面成膜方法では、皮膜形成樹脂溶液を加熱反応させる際に、樹脂皮膜を円筒体から抜いて外型に載せ換える必要がある。
【0004】
他の無端ベルトの製造方法として、円筒芯体の表面に皮膜形成樹脂溶液を塗布して乾燥し、必要に応じて加熱して反応させた後、樹脂皮膜を芯体から剥離する方法もある。
【0005】
上記製造方法では、芯体に皮膜形成樹脂溶液を塗布した後、50〜200℃の温度に加熱した乾燥炉に入れて溶剤を乾燥させ、その後、さらに温度を上げて、残留溶剤を完全に除去し、皮膜形成樹脂が反応性である場合には、反応を完結させることが行われる。
【0006】
その場合、通常は250℃以上の高い温度が必要である。高温に加熱するには、同じ乾燥炉で乾燥から高温加熱まで行わせることも可能であるが、250℃以上に耐えうる大きな乾燥炉は設備費用が大きくなるので、乾燥炉と加熱炉を別個にすることも好ましい。その際には、乾燥後に一旦、芯体温度を低下させてから加熱炉に入れることが好ましい(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−334830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが昨今はエネルギーの効率化、及びそれによるコスト削減も要求され、無端ベルト製造時に使用する熱エネルギーについても、有効利用することが求められている。
そこで、本発明は、従来の無端ベルト製造時に外部に廃棄されていた熱エネルギーを有効活用して、省エネルギーを実現する無端ベルト製造方法およびこれを用いた無端ベルト製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、本発明は、
<1>
皮膜形成樹脂溶液を塗布することにより塗膜がその表面に形成された芯体を、乾燥炉内に配置して加熱し前記塗膜を乾燥させて樹脂皮膜を形成する乾燥工程と、
前記樹脂皮膜が形成された芯体を、加熱炉内に配置して加熱し前記樹脂皮膜を焼成する加熱工程とを含み、
前記加熱工程において、前記加熱炉から排気された排気ガスを前記乾燥炉に供給することを特徴とする無端ベルト製造方法。
【0009】
<2>
前記加熱炉から排気された排気ガスの前記乾燥炉への供給が、1基の乾燥炉に対して2基以上の加熱炉から行われ、且つ、前記2基以上の加熱炉が前記芯体をバッチ処理するバッチ処理加熱炉であることを特徴とする<1>に記載の無端ベルト製造方法。
【0010】
<3>
前記2基以上の加熱炉から前記1基の乾燥炉への排気ガスの供給が、一の加熱炉から前記1基の乾燥炉へ排気ガスを供給した後、他の加熱炉から前記1基の乾燥炉へ排気ガスを供給することにより行われることを特徴とする<2>に記載の無端ベルト製造方法。
【0011】
<4>
前記加熱炉が、芯体を炉内に搬入する搬入口と、炉内の芯体を炉外に搬出する搬出口と、炉内の芯体を搬入口から搬出口へと搬送する搬送手段と、前記芯体の搬送方向に対して炉内を2つ以上の加熱室に区分けする1つ以上の仕切り板とを備えた連続処理加熱炉であることを特徴とする<1>に記載の無端ベルト製造方法。
【0012】
<5>
前記2以上の加熱室のうち、少なくともいずれか1つの加熱室から排気される排気ガスが前記乾燥炉に供給されることを特徴とする<4>に記載の無端ベルト製造方法。
【0013】
<6>
互いに隣接する2つの加熱室において、搬出口側の加熱室から排気される排気ガスが搬入口側の加熱室へと供給され、且つ、搬入口側に最も近い位置に設けられた加熱室から排気される排気ガスが前記乾燥炉に供給されることを特徴とする<4>に記載の無端ベルト製造方法。
【0014】
<7>
皮膜形成樹脂溶液を塗布することにより塗膜がその表面に形成された芯体を、加熱して前記塗膜を乾燥させ樹脂皮膜を形成する乾燥炉と、前記樹脂皮膜が形成された芯体を、加熱して前記樹脂皮膜を焼成する加熱炉とを含み、
前記乾燥炉が炉外のガスを前記炉内に取り入れる吸気口を備え、前記加熱炉が炉内のガスを前記炉外に排気する排気口を備え、
前記加熱炉の排気口が、前記乾燥炉の吸気口に接続されていることを特徴とする無端ベルト製造装置。
【0015】
<8>
前記加熱炉が前記樹脂皮膜が形成された芯体をバッチ処理するバッチ処理加熱炉であり、
1基以上の乾燥炉と2基以上のバッチ処理加熱炉とを含み、
いずれか1基のバッチ処理加熱炉の排気ガスが、1基以上の乾燥炉のうちの任意の乾燥炉に供給できるように、前記1基以上の乾燥炉の吸気口と、前記2基以上のバッチ処理加熱炉の排気口とが接続されたことを特徴とする<7>に記載の無端ベルト製造装置。
【0016】
<9>
前記加熱炉が、前記樹脂皮膜が形成された芯体を炉内に搬入する搬入口と、炉内の前記芯体を炉外に搬出する搬出口と、炉内の前記芯体を搬入口から搬出口へと搬送する搬送手段と、前記芯体の搬送方向に対して炉内を2つ以上の加熱室に区分けする1つ以上の仕切り板とを備えた連続処理加熱炉であることを特徴とする<7>に記載の無端ベルト製造装置。
【0017】
<10>
前記2以上の加熱室のうち、少なくともいずれか1つの加熱室が排気口を備え、前記排気口と、前記乾燥炉の吸気口とが接続されていることを特徴とする<9>に記載の無端ベルト製造装置。
【0018】
<11>
前記2以上の加熱室の各々が、炉外のガスを前記炉内に取り入れる吸気口と前記炉内のガスを前記炉外に排気する排気口とを備え、
互いに隣接する2つの加熱室のうち、搬出口側の加熱室の排気口と搬入口側の加熱室の吸気口とが接続され、
前記2以上の加熱室のうち、搬入口側に最も近い位置に設けられた加熱室の排気口と、前記乾燥炉の吸気口とが接続されていることを特徴とする<9>に記載の無端ベルト製造装置。
【発明の効果】
【0019】
以上に説明したように本発明によれば、従来の無端ベルト製造時に外部に廃棄されていた熱エネルギーを有効活用して、省エネルギーを実現する無端ベルト製造方法およびこれを用いた無端ベルト製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の無端ベルト製造方法は、皮膜形成樹脂溶液を塗布することにより塗膜がその表面に形成された芯体を、乾燥炉内に配置して加熱し前記塗膜を乾燥させて樹脂皮膜を形成する乾燥工程と、前記樹脂皮膜が形成された芯体を、加熱炉内に配置して加熱し前記樹脂皮膜を焼成する加熱工程とを含み、前記加熱工程において、前記加熱炉から排気された排気ガスを前記乾燥炉に供給することを特徴とする。
従って、本発明によれば、加熱炉で発生した排気ガスを乾燥炉での乾燥処理にも利用できるため、乾燥炉で利用する熱エネルギーを大幅に節約することができる。
【0021】
このような無端ベルト製造方法を実現するための無端ベルト製造装置としては、皮膜形成樹脂溶液を塗布することにより塗膜がその表面に形成された芯体を、加熱して前記塗膜を乾燥させ樹脂皮膜を形成する乾燥炉と、前記樹脂皮膜が形成された芯体を、加熱して前記樹脂皮膜を焼成する加熱炉とを含み、前記乾燥炉が炉外のガスを前記炉内に取り入れる吸気口を備え、前記加熱炉が炉内のガスを前記炉外に排気する排気口を備え、前記加熱炉の排気口が、前記乾燥炉の吸気口に接続された構成を有していることが好ましい。
【0022】
図1は本発明の無端ベルト製造装置の一例を示す概略模式図であり、図中、100が乾燥炉、110が乾燥炉の熱風循環ダクト、120が乾燥炉の加熱源、200が加熱炉(バッチ処理加熱炉)、210が排気ガス供給ダクト、400が温度センサー、500が湿式充填塔、530が排気ファン、540が熱交換器、600が無端ベルト製造装置、550が乾燥炉と湿式充填塔とを接続する排気ダクトを表し、図中に示す黒く塗りつぶした矢印は、乾燥炉100や加熱炉200から排気された排気ガスの流れ方向を示す。なお、図中に示すダクト等の配管系は主要部のみを示したものであり、これは以下に示す図においても同様である。
図1に示す無端ベルト製造装置600は、乾燥炉100と、この乾燥炉100外に配置され、乾燥炉100の吸気口と排気口とを循環するように接続する熱風循環ダクト110と、熱風循環ダクト110の途中に設けられた加熱源120と、加熱炉200と、加熱炉200の排気口から排気される排気ガスを、熱風循環ダクト110の加熱源120が設けられた上流側(排気口側)に供給できるように加熱炉200の排気口と熱風循環ダクト110とを接続する排気ガス供給ダクト210と、熱風循環ダクト110と排気ガス供給ダクト210との接続部近傍の排気ガス供給ダクト210内を通過する排気ガスの温度をモニターする温度センサー400と、から少なくとも構成される。
また、必要に応じて、乾燥炉100や加熱炉200内で発生した排気ガス中の溶剤を回収するために、湿式充填塔500と、この湿式充填塔500に接続された排気ファン530と、排気ファン530と熱風循環ダクト110の加熱源120が設けられた下流側(吸気口側)の熱風循環ダクト110とを接続する排気ダクト550と、熱風循環ダクト110の途中に設けられた熱交換器540とからなる溶剤回収装置を設けてもよい。
【0023】
無端ベルト製造装置600においては、加熱炉200内にて乾燥工程を経て皮膜が形成された芯体を加熱した際に発生した排気ガスを、排気ガス供給ダクト210から熱風循環ダクト110を経て乾燥炉100内に供給できる。このため、乾燥工程において乾燥炉100内を所定の温度に加熱・維持する際に、加熱源120で消費されるエネルギー量を抑制することができる。
なお、加熱炉200内の排気ガスをそのまま乾燥炉に供給すると、乾燥炉100内の温度を乾燥処理に適した所望の範囲に制御することが困難となる場合がある。このような場合には、例えば、温度センサー400でモニターした排気ガスの温度を元に、(1)排気ガス供給ダクト210と熱風循環ダクト110との接続部で、加熱炉200から排気された排気ガスと乾燥炉100から排気された排気ガスとの混合比を調整したり、(2)熱風循環ダクト110を循環する排気ガスに、熱風循環ダクト110に接続された不図示の外気取り入れダクトから取り入れた常温近傍の外気を混合したり、(3)熱風循環ダクト110を循環する排気ガスを、加熱源120によって加熱したりすることにより、乾燥炉100内に供給する排気ガスの温度を所定の温度に調整することができる。
【0024】
本発明において、加熱炉としては、樹脂皮膜が形成された芯体を加熱できるものであれば公知の加熱炉を用いることができるが、樹脂皮膜が形成された芯体をバッチ処理するバッチ処理加熱炉や、連続的に処理する連続処理加熱炉を用いることができる。
ここで連続処理加熱炉としては、樹脂皮膜が形成された芯体を炉内に搬入する搬入口と、炉内の前記芯体を炉外に搬出する搬出口と、炉内の前記芯体を搬入口から搬出口へと搬送する搬送手段と、前記芯体の搬送方向に対して炉内を2つ以上の加熱室に区分けする1つ以上の仕切り板とを備えたものであることが好ましい。更に、芯体の搬送方向に対して加熱室毎に精緻な温度制御ができるように、加熱室内の温度を能動的に調整できるヒーター等の加熱源が各々の加熱室毎に設けられていてもよい。また、連続処理加熱炉の搬入口側と搬出口側とには、加熱室とは別に、芯体の加熱炉への搬入/加熱炉からの搬出に伴う炉内(加熱室)の急激な温度低下を避けるために、最も搬入口側に位置する加熱室の搬入口側、最も搬出口側に位置する加熱室の搬出口側にバッファ室を設けることが好ましい。
【0025】
また、乾燥炉としてもバッチ処理乾燥炉、連続処理乾燥炉のいずれを用いてもよいが、通常は連続処理乾燥炉が用いられる。以下、乾燥炉としては連続処理乾燥炉が用いられることを前提として説明するが、本発明に用いられる乾燥炉は連続処理乾燥炉にのみ限定されるものではない。
連続処理乾燥炉では、芯体を連続的に処理するため、炉内の温度が経時的にほぼ一定に保たれている必要がある。しかし、図1に示すような加熱炉から排気された排気ガスの乾燥炉への供給が、図1に示したように1基の乾燥炉に対して1基の加熱炉から行われるものである場合に、乾燥炉および加熱炉として、連続処理乾燥炉とバッチ処理加熱炉とを組み合わせて用いると、加熱炉への芯体の搬入、加熱、放冷、芯体の搬出という処理サイクルに伴い加熱炉から排気される排気ガスの温度が大きく変化することになる。
この場合、加熱炉から乾燥炉へと供給される排気ガスの温度が経時的に大きく変化することになるため、乾燥炉へ排気ガスを導入するまでに加熱炉から排気された排気ガスが乾燥に適した温度となるように加熱および/または冷却しなければならず、乾燥炉に供給する排気ガスの温度の再調整が必要となるため熱エネルギーのロスが発生してしまう。
【0026】
それゆえ、バッチ処理加熱炉を用いる場合には、加熱炉から排気された排気ガスの乾燥炉への供給は、1基の乾燥炉に対して2基以上のバッチ処理加熱炉から行われることが好ましい。
このような処理を実施するためには、1基以上の乾燥炉と2基以上のバッチ処理加熱炉とを含み、いずれか1基のバッチ処理加熱炉の排気ガスが、1基以上の乾燥炉のうちの任意の乾燥炉に供給できるように、1基以上の乾燥炉の吸気口と、2基以上のバッチ処理加熱炉の排気口とが接続された無端ベルト製造装置を用いることができる。
【0027】
ここで、2基以上の加熱炉から1基の乾燥炉への排気ガスの供給は、一の加熱炉から1基の乾燥炉へ排気ガスを供給した後、他の加熱炉から1基の乾燥炉へ排気ガスを供給することにより行われることが好適である。
このような各々の加熱炉から1基の乾燥炉へのタイミングをずらした排気ガスの供給を行う場合、各々の加熱炉による芯体のバッチ処理のタイミングを1基ずつづらして実施すれば、加熱炉から乾燥炉へと供給される排気ガスの温度の経時的な変化を小さくすることができるため、加熱炉から排気された排気ガスが乾燥に適した温度となるように温度を再調整することが不要、あるいは、再調整に伴う熱エネルギーのロスをより小さくすることができる。
なお、一般的には連続処理を行う乾燥炉の処理能力は、バッチ処理加熱炉の処理能力の2倍以上となる場合が多い。従って、乾燥工程と加熱工程との間に滞留する仕掛品を少なくして無端ベルトの生産性を挙げるという観点からも、2基以上のバッチ処理加熱炉から1基の乾燥炉へと排気ガスを供給する方式は極めて好適である。
【0028】
図2は、本発明の無端ベルト製造装置の他の例を示す概略模式図であり、1基以上の乾燥炉の吸気口と、2基のバッチ処理加熱炉の排気口とが接続された構成を有する無端ベルト製造装置について示したものである。図中、200Aが第1のバッチ処理加熱炉、200Bが第2のバッチ処理加熱炉、210Aが第1の排気ガス供給ダクト、210Bが第2の排気ガス供給ダクト、212が加熱炉−乾燥炉連結ダクト、214が弁、602が無端ベルト製造装置を表し、その他の符号で示される部材は、図1中に示したものと同様である。
【0029】
図2に示す無端ベルト製造装置602は、図1に示す無端ベルト製造装置600に対して、1基の乾燥炉100に対して2基のバッチ処理加熱炉200A、200Bから排気ガスが供給できるように構成した点を除いては同様の構成を有するものである。
具体的には、図1に示す無端ベルト製造装置600において1基の加熱炉200およびその排気ガス供給ダクト210の代わりに、無端ベルト製造装置602は、2基の加熱炉200A、200Bと、熱風循環ダクト110の加熱源120が設けられた上流側(排気口側)に2基の加熱炉200A、200Bからの排気ガスを集めて供給する加熱炉−乾燥炉連結ダクト212と、加熱炉200Aの排気口から排気される排気ガスを加熱炉−乾燥炉連結ダクト212まで供給する第1の排気ガス供給ダクト210Aと、加熱炉200Bの排気口から排気される排気ガスを加熱炉−乾燥炉連結ダクト212まで供給する第2の排気ガス供給ダクト210Bと、加熱炉−乾燥炉連結ダクト212、第1の排気ガス供給ダクト210Aおよび第2の排気ガス供給ダクト210Bの接合部に設けられ、第1の排気ガス供給ダクト210Aおよび第2の排気ガス供給ダクト210Bから排気される排気ガスの流量や混合比率を調整して加熱炉−乾燥炉連結ダクト212へと流す弁214とを備えた構成を有する。
【0030】
次に、図2に示す無端ベルト製造装置602における2基の加熱炉200A、200Bから、1基の乾燥炉100への排気ガスの供給パターンの一例について説明する。
図3は、図2に示す無端ベルト製造装置602における加熱炉から乾燥炉への排気ガスの供給パターンの一例を説明するためのグラフであり、図中、横軸が時間(第1の加熱炉200A、第2の加熱炉200Bにおけるバッチ処理のサイクル)、縦軸が(第1の加熱炉200A、第2の加熱炉200B内の)温度を示し、図中上段のグラフが第1の加熱炉200Aにおける時間に対する炉内温度の変化を、図中下段のグラフが第2の加熱炉200Bにおける時間に対する炉内温度の変化を示したものである。
【0031】
図3に示されるように、昇温、最高温度状態の維持、冷却を繰り返すバッチ処理サイクル(時間に対する温度変化)は、加熱炉200A、200B双方ともに同様のパターンであるが、最高温度状態を維持している時間帯(図中のA,Bの両矢印で示される区間)は互いに重複しないように、加熱炉200A、200Bにおけるバッチ処理が実施される。このため、例えば、図中のAの両矢印で示される区間においては、第1の加熱炉200Aのみから乾燥炉100へと排気ガスを供給し、図中のBの両矢印で示される区間においては、第2の加熱炉200Bのみから乾燥炉100へと排気ガスを供給すれば、乾燥炉100へと供給される排気ガスの温度の経時的な変化は、1基の加熱炉から排気ガスが供給される場合と比べると非常に小さくすることができる。
【0032】
次に、連続処理加熱炉を用いた無端ベルト製造装置について説明する。連続処理加熱炉を用いる場合には、2以上の加熱室のうち、少なくともいずれか1つの加熱室から排気される排気ガスが乾燥炉に供給される。
通常、加熱室の設定温度は、搬入口側から搬出口側へと高くなるように設定されるため、乾燥炉の設定温度や、加熱室から乾燥炉まで排気ガスを供給するダクトからの熱損失等を考慮して、乾燥炉へと排気ガスを供給する加熱室を選択することが好ましい。これにより、加熱室から乾燥炉へと排気ガスを供給する際の温度の再調整を最小限に抑えることができる。
【0033】
図4は、本発明の無端ベルト製造装置の他の例を示す模式断面図であり、加熱炉として連続処理加熱炉を用いた場合の一例について示したものである。図4中、250Aは連続処理加熱炉、252、254、256、258は加熱室、260、262はバッファ室、270は搬入口、272は搬出口、280は加熱源、282は吸気ダクト、284は排気ガス供給ダクト、286は弁、290は加熱炉−乾燥炉連結ダクト、292は弁、610は無端ベルト製造装置を表し、その他の符号で示される部材は 図1,2に示したものと同様である。また、図中の黒く塗りつぶした矢印は、乾燥炉100や加熱炉250Aから排気された排気ガスの流れ方向を示し、白抜きの矢印は、加熱炉250A内における芯体の搬送方向を示す。
【0034】
図4に示す無端ベルト製造装置610は、基本的に図1に示す無端ベルト製造装置において用いられるバッチ処理加熱炉200の代わりに、連続処理加熱炉250Aを用いた構成を有するものであり、図1に示されるように溶剤回収装置(図4中不図示)を更に備えていてもよい。
連続処理加熱炉250Aは、芯体を炉内に搬入・搬出するために、加熱炉の両端にそれぞれ設けられた搬入口270および搬出口272を有しており、炉内は、連動して開閉可能な5つの仕切り板により区切られ、搬入口270側から搬出口272側へと、バッファ室260、加熱室252、254、256、258、および、バッファ室262が設けられている。
【0035】
これら4つの加熱室252、254、256、258の各々には、外気を取り入れる吸気ダクト282と、排気ガスを乾燥炉100に供給するために設けられた排気ガス供給ダクト284がそれぞれ設けられ、吸気ダクト282の途中には、外気を所定の温度にまで加熱した後に加熱室内に供給するために加熱源280が配置され、排気ガス供給ダクト284の途中には、乾燥炉100への排気ガスの供給量を調整する弁286が設けられている。また、4つの加熱室252、254、256、258の各々の排気ガス供給ダクト284は、一方の端が熱風循環ダクト110に接続された加熱炉−乾燥炉連結ダクト290に接続されている。さらに、熱風循環ダクト110と加熱炉−乾燥炉連結ダクト290との接合部には、弁292が設けられており、加熱炉−乾燥炉連結ダクト290の弁292の近傍には、排気ガスの温度をモニターするための温度センサー400が取り付けられている。
ここで無端ベルト製造装置610が定常的に稼動している状態では、乾燥炉100および4つの加熱室252、254、256、258の温度はほぼ一定に保たれ、乾燥炉100、加熱室252、加熱室254、加熱室256、加熱室258の順に温度が高くなるように炉内の温度が調整される。
【0036】
図4に示す無端ベルト製造装置610では、4つの加熱室252、254、256、258の少なくともいずれかから、排気ガス供給ダクト284、加熱炉−乾燥炉連結ダクト290および熱風循環ダクト110を経て乾燥炉100へと加熱炉250A内の排気ガスを供給することができる。
ここで、連続処理加熱炉250Aが定常的に稼動している状態では、4つの加熱室252、254、256、258の温度は常に一定に保たれているため、弁286、弁292、加熱源120や、(不図示の)外気取入れ口から取り入れた外気との混合等を利用して加熱室から乾燥炉へと排気ガスを供給する際の温度の再調整を最小限に抑えることができる。このため、図1や図2に例示したようなバッチ処理加熱炉を用いた無端ベルト製造装置と比べると、加熱室から排気された排気ガスを乾燥炉内で利用するのに適した温度に調整する温度制御が極めて容易になるのみならず、温度制御に伴う熱エネルギーのロスもより小さく抑えることができる。
【0037】
なお、図4に示す例では、加熱室内の温度が高すぎたり低すぎたりして乾燥炉100へ排気ガスを供給せずに炉外に排気ガスを排気する加熱室が存在する場合もあり、この点では、加熱炉250Aで発生する熱エネルギーの全てを十分に再利用できない場合がある。
また、各加熱室の温度と乾燥炉との温度を考慮すれば、通常は、搬入口側の加熱室の排気ガスを乾燥炉に供給することが、加熱室から排気された排気ガスを乾燥炉内で利用するのに適した温度に調整し、且つ、温度制御に伴う熱エネルギーのロスもより小さく抑えることができる点で有利な場合が多い。
【0038】
それゆえ、連続処理加熱炉を用いた無端ベルト製造装置においては、互いに隣接する2つの加熱室において、搬出口側の加熱室から排気される排気ガスが搬入口側の加熱室へと供給され、且つ、搬入口側に最も近い位置に設けられた加熱室から排気される排気ガスが乾燥炉に供給されることが好適である。
このような場合には、2以上の加熱室の各々が、炉外のガスを炉内に取り入れる吸気口と炉内のガスを炉外に排気する排気口とを備え、互いに隣接する2つの加熱室のうち、搬出口側の加熱室の排気口と搬入口側の加熱室の吸気口とが接続され、2以上の加熱室のうち、搬入口側に最も近い位置に設けられた加熱室の排気口と、乾燥炉の吸気口とが接続された構成を有する連続処理加熱炉を用いることが好ましい。
【0039】
図5は、本発明の無端ベルト製造装置の他の例を示す模式断面図であり、加熱炉として連続処理加熱炉を用いた場合の他の例について示したものである。図5中、250Bは連続処理加熱炉、288は加熱室連結ダクト、612は無端ベルト製造装置を表し、その他の符号で示される部材は 図4に示したものと同様である。
図5に示される無端ベルト製造装置612は、加熱炉−乾燥炉連結ダクト290の加熱炉250B側の端が、搬入口270側に最も近い位置に設けられた加熱室252の排気口に接続され、また、互いに隣接する2つの加熱室(加熱室252と加熱室254、加熱室254と加熱室256、および、加熱室256と加熱室258)の搬入口270側の加熱室の吸気口と搬出口272側の加熱室の排気口とがその途中に加熱源280が設けられた加熱室連結ダクト288により接続されている点が異なっている以外は、基本的には図5に示す無端ベルト製造装置610と同様の構成を有するものである。
【0040】
無端ベルト製造装置612では、設定温度の高い加熱室の排気ガスが、設定温度の低い加熱室へと順次供給される構成を有しているため、乾燥炉100へ加熱室252内の排気ガスを供給することによって熱エネルギーを有効利用できるのみならず、乾燥炉100への排気ガスの供給に直接関与しないその他の加熱室(加熱室254、256、258)の熱エネルギーも有効に利用できる。
【0041】
<無端ベルトの製造>
次に、無端ベルトの製造プロセスについて各工程毎に用いられる材料や製造条件等の詳細を示しつつ説明する。
無端ベルトの製造に際しては、まず、芯体表面に皮膜形成樹脂溶液を塗布して塗膜を形成する。次いで溶剤を加熱乾燥させ、更に脱水縮合反応させて皮膜を得る。
ここで、芯体としては、通常、アルミニウム等からなる円筒状のものが用いられ、塗膜は、芯体の内周面または外周面に形成される。なお、以下の説明においては、芯体の外周面に塗膜が形成されることを前提として説明する。
【0042】
−塗膜の形成−
皮膜形成樹脂溶液としては、PI樹脂を形成するPI前駆体や、PAI樹脂を形成するPAI前駆体を含むものが用いられる。
PI前駆体は、酸二無水物とジアミンをN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトアミド、等の非プロトン系極性溶剤中で縮合反応させることによって得ることができる。
【0043】
酸二無水物の代表例としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、等がある。
【0044】
ジアミン成分は、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノフェニルメタン、ベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、3,3′―ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、2,2′−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等のいずれか1種、または複数から選ばれる。
【0045】
一方、PAI樹脂は、酸無水物、例えばトリメリット酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸無水物等と、上記ジアミンを組み合わせて、当モル量で重縮合反応することで得られる。PAI樹脂はアミド基を有するため、イミド化反応が進んでも溶剤に溶解し易いので、100%イミド化したものが好ましい。
【0046】
皮膜形成樹脂溶液の濃度、粘度等は、適宜選択されるが、好ましい溶液の固形分濃度は10〜40質量%、粘度は1〜1000Pa・sである。
【0047】
無端ベルトを感光体や転写ベルトとして使用する場合、導電性を付与するために、溶液の中に導電性粒子を分散させる。導電性粒子としては、例えば、カーボンブラック、カーボンブラックを造粒したカーボンビーズ、カーボンファイバー、グラファイト等の炭素系物質;銅、銀、アルミニウム等の金属又は合金;酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、SnO2・In2O3複合酸化物等の導電性金属酸化物等が挙げられる。
【0048】
芯体は、アルミニウムやステンレス、ニッケル等の金属製の円筒が好ましい。芯体の長さは、目的とする無端ベルト以上の長さが必要であり、複数の無端ベルトを同時に作製する場合には、その本数分以上の長さが必要である。また、端部に生じる無効領域に対する余裕幅を確保するため、目的の長さより、10〜40%程度長いことが望ましい。芯体の外径は、目的とする無端ベルトの直径に合わせ、肉厚は芯体としての強度が保てる厚さにする。
【0049】
形成される皮膜が芯体表面に接着するのを防ぐため、芯体の表面には離型性を付与する。それには、芯体表面をフッ素樹脂やシリコーン樹脂で被覆したり、表面に離型剤を塗布する方法がある。
【0050】
なお、PI前駆体のイミド化時には溶剤や反応時に発生する水の蒸発があり、反応後の皮膜には部分的に膨れを生じることがあり、特に膜厚が50μmを越える場合に顕著である。この膨れを防止するために、特開2002−160239号公報に開示の如く、芯体表面をRa0.2〜2μm程度に粗面化することが好ましい。これにより、皮膜から生じる気体は、芯体と皮膜の間に形成されるわずかな隙間を通って外部に出ることができ、膨れを生じない。
【0051】
芯体表面への皮膜形成樹脂溶液の塗布方法は任意であるが、好ましい塗布方法の一例を説明する。
図6は、本発明に用いられる塗布装置の一例を示す概略断面図であり、図6に示す塗布装置は主要部のみを示したものであり、芯体の昇降手段などの周辺部は省略してある。なお、以下の説明において、「芯体上に塗布する」とは、芯体の表面上、及び該表面に層を有する場合はその層上に塗液を塗布する意味である。また、「芯体を上昇」とは液面との相対関係であり、「芯体を停止し、塗布液面を下降」させる場合を含む。
【0052】
図6において、溶液2を環状塗布槽7に入れ、環状塗布槽7の下部から上部へ芯体1Aを通過させると、芯体1Aの外周面に塗膜4が形成され、塗布が行われる。芯体1Aの下には、他の芯体1Bが重ねられる。
環状塗布槽7の底部には、環状塗布槽7内の溶液2が漏れないよう、環状シール材8を取り付ける。環状シール材8は、ポリエチレンやシリコーンゴム、フッソ樹脂等の柔軟性板材から成る。溶液2上には、芯体1の断面の外周外径よりも大きな円孔6を設けた環状体5を自由移動可能状態で設置する。
【0053】
環状体5は、塗布中は溶液上に浮遊させるが、静止時に浮力が不足する場合は、環状体5の沈没防止のために、環状体5の外周面または環状塗布槽7に、環状体5を支える足や腕を設けてもよい。
【0054】
環状体5に設けられる円孔6の内壁の形状は、図1に示すように、溶液2に浸る下部で芯体1Aとの間隙が広く、上部が狭い形状であれば、斜めの直線状であるもののほか、階段状や曲線状でもよい。芯体1Aの外径と、円孔6の内径(内径が段階的もしくは連続的に変化する場合には、最小の内径)の間隙は、所望の塗布膜厚を鑑みて調整する。
【0055】
塗布の際は、芯体1Aと円孔6との間隙により、塗膜4の膜厚が調整される。芯体1Aの上昇速度は0.1〜1.5m/min程度であるのが好ましく、芯体1Aを上昇させると、溶液2の介在により、芯体1Aと環状体5との間隙にて摩擦抵抗が生じ、環状体5は持ち上げられる。
【0056】
このように環状体5が持ち上げられた際、環状体5は芯体1Aとの摩擦抵抗が周方向で一定になるように水平方向に移動し、間隙が周方向で一定になる。そこで、環状体5が芯体1と接触することはなく、常に一定間隙が保たれる。
【0057】
−塗膜の乾燥−
塗布終了後、芯体を取り出し、塗膜が下方に垂れないよう、芯体の軸方向を水平にして回転させる。芯体を回転させる速度は、2〜20rpmであることが好ましい。回転速度が2rpm未満では回転が遅くいために塗膜に垂れが発生しやすく、20rpm以上では塗膜が凸凹になることがある。
【0058】
次いで、塗膜の乾燥を行う。塗膜が形成された芯体を乾燥炉に入れるために、まず、芯体を乾燥台に載せる。図7は、本発明に用いられる乾燥台の一例を示す概略模式図であり、図7(1)が、芯体を載せた状態の乾燥台を芯体の側面側から見た図であり、図7(2)が、芯体を載せた状態の乾燥台を芯体の軸方向側から見た図である。
乾燥台12は、土台10と、この土台10の両端部に配置された支持部11とから構成されており、支持部11の上部中央には軸受けが設けられている。一方、芯体1には、そのハンドリングを容易とするために、予め芯体1の内周面側で固定され、芯体1の軸方向と一致するように設けられた軸棒3が芯体1の軸方向両端から突出するように取り付けておく。このような軸棒3が取り付けられた芯体1の軸棒3両端部を支持部11の軸受けに引っ掛けることによって、図7に示すように芯体1を乾燥台12に載せることができる。
この状態で、軸棒3に対して、例えば、チェーンや歯車等で構成された回転手段(図中不図示)により回転力を伝達することによって、芯体1を乾燥台12上で回転させることができる。なお、塗膜を形成した後の芯体1の回転速度は、2〜20rpmが好ましく、乾燥炉に入れた際も回転させ続けることが特に好ましい。
【0059】
乾燥台に載せられた芯体は、乾燥台ごと乾燥炉内に入れられ、乾燥処理される。図8は、本発明に用いられる乾燥炉の一例を示す概略模式図であり、図1等に示す乾燥炉100内を拡大して示した図である。乾燥炉100は、一方の端に搬入口140が、他方の端には搬出口150が設けられ、搬入口140側から炉内を経て搬出口150外部へと芯体1を載せた乾燥台12を搬送する搬送レール130とから構成されている。また、搬送レール130の下部には、乾燥台12に載せられた芯体1を回転させるための駆動チェーン等からなる回転手段(不図示)が設けられている。乾燥処理は、芯体1を載せた乾燥台12を、芯体1を所定の速度で回転させつつ搬入口140側から搬出口150側へと搬送しながら行われる。なお、図1に示す例では、炉内に3つの乾燥台が同時に収納可能であるが、その個数は乾燥炉の規模次第である。
乾燥条件は、乾燥後の塗膜に含まれる残留溶剤が30〜50重量%前後になるように設定することが好ましく、具体的には乾燥温度を100〜200℃、乾燥時間を10〜60分程度に設定することが好ましい。また、溶剤の乾燥を促進するために、塗膜表面には熱風を吹きつけてもよい。
【0060】
乾燥処理中、乾燥炉内の空気には、塗膜から蒸発する溶剤のガスが蓄積していくが、これが多くなることは品質安定性の観点で好ましくないので、通常は、乾燥炉内から、溶剤ガスを含んだ空気を排出し、代わりに所定の温度にまで加熱された外部の空気を取り入れて、乾燥炉内の溶剤ガス濃度を所定値以下となるように調整される。
しかし、本発明では、加熱炉からの排気ガスを導入するため、外部の空気を常温から加熱して利用する必要がなく、乾燥処理時における熱エネルギーの使用量を低減できる。また、加熱炉から供給される排気ガスに含まれる溶剤ガス量は、乾燥処理に用いる上では極めて少ないため、加熱炉からの排気ガスを導入しても、塗膜からの揮発以外に起因する乾燥炉内の溶剤ガス濃度の上昇は非常に小さく無視できるレベルである。
なお、乾燥処理に際しては、加熱炉から供給される排気ガスに対して外気を適量混合したり、乾燥炉内から排気される排気ガスの一部を循環させることなく外部に排気することにより、乾燥炉内の溶剤ガス濃度を0.5体積%以下に維持することが好ましい。
【0061】
乾燥後、芯体を乾燥炉から取り出す。そのまま加熱炉に入れてもよいが、芯体の軸方向が水平であると、占有面積が大きくなるので、図9に示すように、塗膜が乾燥処理された芯体1を、軸方向が鉛直方向となるように加熱台15に縦置きに載せることが好ましい。
【0062】
次いで、芯体1を載せた加熱台15を加熱炉内に配置して、焼成処理を行う。図10は、本発明に用いられるバッチ処理加熱炉の一例について示す概略模式図であり、図10中に示されるバッチ処理加熱炉は、図1等に示したバッチ処理加熱炉の内部を拡大して示した図である。
図中、201は筐体、202は内室、203は加熱源、204は耐熱フィルター、205は排気口を表し、図中の白抜き矢印は、気流の流れを意味する。
加熱炉200は、筐体201と、筐体201内に設けられた内室202および加熱源203とを有する。内室202の上部には耐熱フィルター204が配置されており、内室202に隣接して配置された加熱源203によって加熱された空気が耐熱フィルター204を経て、内室202内の空間に供給されるようになっている。耐熱フィルター204を経て内室202の上部から供給された熱風は、内室202の下部へと移動し、内室202の下部から筐体201内に排気された後、再度、加熱源203に供給され循環再利用される。なお、加熱炉200内の空気の循環を行うために、加熱源203の気流流れ方向の入り口側または出口側にはファン(不図示)が設けられており、筐体201内のガスは、適宜排気口205に接続された不図示の排気ガス供給ダクトを通じて、乾燥炉に供給される。
【0063】
加熱炉200を用いた加熱処理は、皮膜が外周面に形成された芯体1をその軸方向が鉛直方向と一致するように加熱台15上に固定した状態で、内室202内に配置した状態で行う。これにより、耐熱フィルター204から吹き出す熱風が、芯体1の外周面に形成された皮膜に吹き付けられる。
なお、芯体を入れる本数は内室202の大きさによる。また、乾燥時間に比べて、加熱に要する時間の方が長いので、生産量を拡大する場合、1基の乾燥炉に対して、2基以上の加熱炉を組み合わせて用いることが好ましい。
【0064】
皮膜形成樹脂がPI樹脂の場合、加熱工程における加熱温度は一般に250〜400℃、好ましくは300〜350℃程度である。イミド化反応は、250℃以上の温度でないと完結しにくいので、250℃の温度に2時間以上置くことが好ましく、さらに300℃以上の温度に1時間以上置くことが好ましい。
皮膜形成樹脂がPAI樹脂の場合、反応はないが、残留溶剤を完全に乾燥させるために、通常220〜320℃、好ましくは250〜300℃程度に加熱する。
【0065】
加熱炉内の空気の殆どは循環させて再利用するため、皮膜から蒸発する溶剤のガスが蓄積し、ガス濃度が高くなると品質安定性の観点で好ましくない場合がある。それゆえ、加熱炉内の排気ガスを乾燥炉へと供給したり外部へと排気する一方で、代わりに外部の空気を取り入れたりすることにより、加熱炉内の溶剤ガス濃度が0.5体積%以下の状態に維持されるようにすることが好ましい。
【0066】
加熱終了後、芯体を加熱炉から取り出し、形成された皮膜を芯体から剥離して無端ベルトを得る。無端ベルトは、端部の不要部分を切って所定長さに切断し、さらに必要に応じて、穴あけ加工やリブ付け加工、等が施されることがある。
無端ベルトを転写ベルトとして用いる場合、厚さは75〜85μmが好ましい。抵抗値は、体積抵抗率で107〜1013Ωcm、表面抵抗率で108〜1013Ω/□程度であるのが好ましいが、ばらつきはその中心値に対して、それぞれ1桁以下の範囲内であるのがよい。
【0067】
なお、乾燥処理や加熱処理で発生した排気ガス中に気化した状態で含まれる溶剤は、既述したように溶剤回収装置を利用して回収することが好ましく、例えば、図1に例示するように熱交換器を用いて溶剤を回収することが好ましい。熱交換器を用いる場合、その伝熱壁温度は40℃以下が好ましい。40℃を超えると、溶剤の回収性能が低下するため、好ましくない場合がある。熱交換器の種類としては、溶剤の回収性能および施設費抑制の観点から、水冷式が好ましい。
また、熱交換器によっても排気ガス中の溶剤が十分に回収できず、溶剤ガスが微量残存する場合には湿式充填塔を使用することが好ましい。
図11は、本発明に用いられる溶剤回収装置の一例を示す概略模式図であり、具体的には図1等に示す湿式充填塔500の詳細について示す図である。図中、510が塔、512が充填物、514が水槽、516がポンプ、518が水供給配管、520がガス入口、522がガス出口を表す。
【0068】
湿式充填塔500は、その主要部が塔510と、塔510の下側に接続された水槽514とからなる。塔510の上部を除く殆どの部分には、気液接触の効率を上げるための充填物512が充填されており、塔510の最上部にはガス出口522が設けられている。また水槽514内には、水が満たされており、液面よりも高い位置にガス入口520が設けられている。このガス入口520は、排気ファン530(図11中不図示)の排気口側に接続されている。また、水槽514内の水を塔510の上部に供給できるように、一端が水槽514の液面より下に位置し、もう一端が塔510の上部に位置する水供給配管518が設けられている。なお、この水供給配管518の途中には、水槽514内の水を塔510の上部へと供給するためのポンプ516が接続されている。また、塔510の上部内に位置する水供給配管518は、充填物512に対して満遍なく水が供給できるようにシャワーノズルとなっている。これにより水が個々の充填物の表面上を薄膜状で流れ、気液接触を効率よく行うことができる。
【0069】
この湿式充填塔500による溶剤の回収は、ガス入口520から供給された溶剤を含むガスが、充填物512で満たされた塔510内を上昇する際に、個々の充填物の表面上を薄膜状で流れる水と気液接触を起こすことによって、溶剤が水に吸収されることによって実施される。溶剤が除去されたガスは、塔510の最上部に設けられたガス出口522から排出される。なお、この方法では、水の中に溶剤が蓄積されていくため、水は定期的に、交換する必要がある。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を、実施例を挙げて具体的に説明する。
<塗膜の形成>
外径366mm、長さ900mm、肉厚10mmのアルミニウム製円筒に対し、表面を球形アルミナ粒子によるブラスト処理により、Ra0.4μmに粗面化した。表面にシリコーン系離型剤(商品名:セパコート、信越化学(株)製)を塗布して、芯体とした。その両端にはアルミニウム製のフランジを取り付け、中央には30mmφの軸を取り付けた。
一方、PI前駆体の溶液(商品名:Uイミド、ユニチカ製、濃度20質量%、溶剤はN−メチル−2−ピロリドン、粘度は約40Pa・s)を用意した。その溶液に、カーボンブラック(商品名:スペシャルブラック4、デグザヒュルス社製)を固形分質量比30%で混合し、次いで対向衝突型分散機により2時間分散し、塗液(皮膜形成樹脂溶液)とした。
【0071】
続いて、図6に示す塗布装置を用いて芯体の外周面に塗膜を形成した。なお、塗布装置は、環状塗布槽7は、内径500mm、内高80mmであり底面に内径386mmの穴をあけ、底面の裏面には、内径362mmの穴を有する厚さ0.5mmの硬質ポリエチレン製の環状シール材8が取り付けられている。また、環状体5としては外径420mm、最小内径367.2mm、高さ50mmのアルミニウム製のものを用いた。その内壁は傾斜面で、鉛直線との傾斜角は5°とした。環状体5の側面には3本のアームを等間隔に取り付け、環状塗布槽7に設置した。
次に、芯体1Aを環状塗布槽7に取り付けた後、芯体1Aの下部には芯体1Bを配置氏続いて環状塗布槽7を塗液で満たした状態で、芯体を0.7m/minの速度で上昇させた。この際、環状体5は液面より約20mm持ち上げられ、芯体1Aの上昇と共に、環状体5の高さは増した。そこで、速度を徐々に減じ、芯体1Aが約60mm上昇した時点で、環状体5の高さが約30mmの所で芯体1Aの上昇速度を一定にした。その時の速度は0.6m/minであった。
【0072】
芯体1Aの上昇途中で環状体5が芯体1Aに接触することはなく、塗布後には、芯体1A上に濡れ膜厚が約600μmの塗膜4が形成された。
その後、3分以内に塗膜が形成された芯体1Aの軸方向を水平にし、図7に示すように、重さが約30kgのステンレス製の乾燥台12に載せた。
【0073】
<乾燥処理および加熱処理>
(比較例1)
図8に示す構成を有する乾燥炉と、図10に示す構成を有するバッチ処理加熱炉とをそれぞれ1基づつ用いて乾燥処理および加熱処理を行い、加熱処理後に芯体から皮膜を剥離して所定のサイズに切断することにより無端ベルトを得た。
なお、乾燥炉はその内部容量が3.0m3であり、図1等に示すように炉外に熱風循環ダクト110(但し、加熱炉とはダクトが接続されていない)と60Wの電気ヒーターからなる加熱源120とを備えたものであり、上述した芯体が乾燥台ごと、最大で3本配置できる構成を有するものである。
また、バッチ処理加熱炉は、その内部容量が2.7m3であり、加熱源203として80Wの電気ヒータを備えている。また、この加熱炉の内室202には、重さが約8kgのステンレス製の加熱台に載せた芯体を4本収納することができる。なお、加熱処理に際しては、この加熱炉から排気される排気ガスは乾燥炉に供給されることなく、炉外に排気される。
【0074】
上述した乾燥炉および加熱炉を1基づつ用いて、塗膜が形成された芯体を乾燥および加熱処理し、この時の芯体1本当りの乾燥および加熱処理に要したエネルギー量を、乾燥炉および加熱炉の電気ヒーターの電力消費量をモニターすることにより求めた。
なお、乾燥炉の電力消費量のモニター期間については、乾燥炉が定常的に稼動している状態で、加熱炉にて1バッチ分の加熱処理の開始から終了までの間をモニターした。
また、加熱炉の電力消費量のモニター期間については、1バッチの処理に要する1回の温度サイクルの開始から終了までとした。
その結果、芯体1本当りの乾燥および加熱処理に要したエネルギー量は約33kWhであった。なお、乾燥および加熱は以下の条件で実施した。
【0075】
−乾燥処理条件−
乾燥処理は、乾燥台に載せた芯体を、6rpmで回転させながら乾燥炉内に10分毎に搬入し、乾燥炉中にて160℃で30分間実施した。なお、乾燥処理に際しては、乾燥炉内に搬入された芯体に対して、風速が約1m/secの熱風を芯体の上方から吹き付けた。
なお、上記乾燥処理条件で乾燥炉を稼動させた際の乾燥炉の電気ヒーターの電力は30kWであった。
【0076】
−加熱処理条件−
乾燥処理後の芯体は、乾燥台から加熱台に載せ換えた後、加熱炉内に4本入れた。この状態で、常温から300℃まで2時間で昇温させ、続いて300℃で1時間20分保持した後、300℃から常温まで1時間40分で冷却した。また、上記の昇温プロセス−300℃保持プロセス−降温プロセスで、加熱炉から排気される排気ガス量は6m3/minとした。
なお、上記加熱処理条件で加熱炉を稼動させた場合において、電気ヒーターの電力は昇温プロセス開始時は50kWであり、昇温プロセス終了時までに10kWまで徐々に減少し、300℃保持プロセスの間は10kWに維持されていた。
【0077】
(実施例1)
比較例1で用いたものと同様の乾燥炉、加熱炉をそれぞれ1基づつ用いて、比較例1と同様に塗膜が形成された芯体について乾燥および加熱処理を実施し、無端ベルトを得た。
但し、実施例1では、図1に示すように加熱炉から排気される排気ガスが乾燥炉に供給できるように加熱炉と乾燥炉とをダクトより接続すると共に、溶剤回収装置も設けた無端ベルト製造装置を用いた。その結果、芯体1本当りの乾燥および加熱処理に要したエネルギー量は約23kWhであった。
【0078】
なお、乾燥および加熱処理に際しては、加熱炉から排気ガス供給ダクトを経て、熱風循環ダクトに6m3/minで排気ガスを供給すると共に、同量の排気ガスを熱風循環ダクトと湿式充填塔とを接続する排気ダクトを通じて炉外に排気した。
また、加熱炉内の温度が300℃に維持されている状態で、熱風循環ダクトと排気ガス供給ダクトとの接続部近傍に設けられた温度センサーの温度をモニターして、乾燥炉に供給される排気ガスの温度を調べたところ約260℃であった。
一方、乾燥炉の電気ヒーターの電力は、加熱炉の昇温開始時点では30kWであったが、加熱炉内の温度が300℃に維持されている状態では2kWまで低下していた。
【0079】
(実施例2)
比較例1で用いたものと同様の乾燥炉および加熱炉を用いて、比較例1と同様に塗膜が形成された芯体について乾燥および加熱処理を実施し、無端ベルトを得た。
但し、実施例2では、図2に示すように加熱炉から排気される排気ガスが乾燥炉に供給できるように2基の加熱炉と1基の乾燥炉とをダクトより接続すると共に、溶剤回収装置も設けた無端ベルト製造装置を用いた。また、2基の加熱炉による加熱処理は、図3に示すように加熱処理サイクルを半サイクルずらして実施した。
この際、2基の加熱炉から乾燥炉への排気ガスの供給は、交互に150分間(昇温プロセス:120分間、300℃保持プロセス:80分間、降温プロセス:100分間)づつ実施した以外は、実施例1と同様に行い、また、熱風循環ダクトと湿式充填塔とを接続する排気ダクトを通じた排気ガスの炉外への放出も実施例1と同様に実施した。
その結果、芯体1本当りの乾燥および加熱処理に要したエネルギー量は約19kWhであった。
【0080】
(比較例2)
図8に示す構成を有する乾燥炉と、図4中に示される4室の加熱室を有する連続処理加熱炉とをそれぞれ1基づつ用いて乾燥処理および加熱処理を行い、加熱処理後に芯体から皮膜を剥離して所定のサイズに切断することにより無端ベルトを得た。
なお、乾燥炉は比較例1で用いたものと同様の構成を有するものであるが、熱風循環ダクトは、加熱炉と接続されていない。
また、連続処理加熱炉は、各々の加熱室の内部容量が1.6m3であり、各々の加熱室に対応して設けられた加熱源として30Wの電気ヒータを備えており、各々の加熱室には、重さが約8kgのステンレス製の加熱台に載せた芯体を1本収納することができる。なお、図4に示す例では各々の加熱室は排気ガス供給ダクトに接続されているが、比較例2で用いる加熱炉においては、排気口から排気される排気ガスはそのまま炉外に排出される。
【0081】
上述した乾燥炉および加熱炉を1基づつ用いて、塗膜が形成された芯体を乾燥および加熱処理し、この時の芯体1本当りの乾燥および加熱処理に要したエネルギー量を、乾燥炉および加熱炉の電気ヒーターの電力消費量をモニターすることにより求めた。
なお、乾燥炉および加熱炉の電力消費量のモニターは、乾燥炉および加熱炉が定常的に稼動している状態で実施した。
その結果、芯体1本当りの乾燥および加熱処理に要したエネルギー量は約30kWhであった。なお、乾燥および加熱は以下の条件で実施した。
【0082】
−乾燥処理条件−
乾燥処理は、比較例1と同様の条件で実施した。
【0083】
−加熱処理条件−
乾燥処理後の芯体は、乾燥台から加熱台に載せ換えた。続いて、芯体を加熱炉内に30分毎に搬入し、加熱炉中にて120分間実施した。
ここで、加熱処理に際しては、各々の加熱室の温度を搬入口側から搬出口側へと順に、180℃、210℃、250℃、300℃に設定し、各々の加熱室における処理時間は 30分に設定した。また、各加熱室からの排気される排気ガス量は2m3/minとした。
なお、上記加熱処理条件で加熱炉を稼動させた場合において、定常状態における電気ヒーターの電力は搬入口側から搬出口側へと順に6kW、7kW、8kW、9kWに維持されていた。
【0084】
(実施例3)
比較例2で用いたものと同様の乾燥炉、加熱炉をそれぞれ1基づつ用いて、比較例2と同様に塗膜が形成された芯体について乾燥および加熱処理を実施し、無端ベルトを得た。
但し、実施例3では、図4に示すように加熱炉から排気される排気ガスが乾燥炉に供給できるように加熱炉と乾燥炉とをダクトより接続した無端ベルト製造装置を用いた。その結果、芯体1本当りの乾燥および加熱処理に要したエネルギー量は約19kWhであった。
【0085】
なお、乾燥および加熱処理に際しては、加熱炉から排気ガス供給ダクトを経て、熱風循環ダクトに8m3/minで排気ガスを供給すると共に、同量の排気ガスを熱風循環ダクトとから炉外へ通じる排気ダクト(図4中不図示。加熱源120と乾燥炉100の吸入口との間の熱風循環ダクトに接続)を通じて炉外に排気した。各加熱室からの排気ガス合計8m3/minを合流させ、乾燥炉へ供給した。
また、加熱炉が定常的に稼動している状態において、熱風循環ダクトと排気ガス供給ダクトとの接続部近傍に設けられた温度センサーの温度をモニターして、乾燥炉に供給される排気ガスの温度を調べたところ約190℃であった。
一方、乾燥炉の電気ヒーターの電力は、加熱炉に接続されていない状態では30kWであったが、図4に示されるように加熱炉に接続された状態で、加熱炉が定常的に稼動している場合には7kWを維持していた。
【0086】
(実施例4)
比較例2で用いたものと同様の乾燥炉、加熱炉をそれぞれ1基づつ用いて、比較例2と同様に塗膜が形成された芯体について乾燥および加熱処理を実施し、無端ベルトを得た。
但し、実施例4では、図5に示すように加熱炉から排気される排気ガスが乾燥炉に供給できるように加熱炉と乾燥炉とをダクトより接続した無端ベルト製造装置を用いた。その結果、芯体1本当りの乾燥および加熱処理に要したエネルギー量は約13kWhであった。
【0087】
なお、乾燥および加熱処理に際しては、加熱炉から排気ガス供給ダクトを経て、熱風循環ダクトに6m3/minで排気ガスを供給すると共に、同量の排気ガスを熱風循環ダクトとから炉外へ通じる排気ダクト(図5中不図示。加熱源120と乾燥炉100の吸入口との間の熱風循環ダクトに接続)を通じて炉外に排気した。
また、加熱炉から、乾燥炉への排気ガスの供給は、最も搬入口側に位置する加熱室からのみ6m3/minで供給すると共に、同量の排気ガスを、互いに隣接する2つの加熱室の搬出口側の加熱室から搬出口側の加熱室へと供給した。
上記加熱処理条件で加熱炉を稼動させた場合において、定常状態における電気ヒーターの電力は搬入口側から搬出口側へと順に2kW、3kW、4kW、9kWに維持されており、比較例2や実施例3と比べると、最も搬出口側の加熱室を除く残り3つの加熱室の電力が低減していることがわかった。
【0088】
また、加熱炉が定常的に稼動している状態において、熱風循環ダクトと排気ガス供給ダクトとの接続部近傍に設けられた温度センサーの温度をモニターして、乾燥炉に供給される排気ガスの温度を調べたところ約160℃であった。
一方、乾燥炉の電気ヒーターの電力は、加熱炉に接続されていない状態では30kWであったが、図5に示されるように加熱炉に接続された状態で、加熱炉が定常的に稼動している場合には8kWを維持していた。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の無端ベルト製造装置の一例を示す概略模式図である。
【図2】本発明の無端ベルト製造装置の他の例を示す概略模式図である。
【図3】図2に示す無端ベルト製造装置602における加熱炉から乾燥炉への排気ガスの供給パターンの一例を説明するためのグラフである。
【図4】本発明の無端ベルト製造装置の他の例を示す模式断面図である。
【図5】本発明の無端ベルト製造装置の他の例を示す模式断面図である。
【図6】本発明に用いられる塗布装置の一例を示す概略断面図である。
【図7】本発明に用いられる乾燥台の一例を示す概略模式図である。
【図8】本発明に用いられる乾燥炉の一例を示す概略模式図である。
【図9】本発明に用いられる加熱台の一例を示す概略模式図である。
【図10】本発明に用いられるバッチ処理加熱炉の一例について示す概略模式図である。
【図11】本発明に用いられる溶剤回収装置の一例を示す概略模式図である。
【符号の説明】
【0090】
1、1A、1B‥芯体、2‥溶液、3‥軸棒、4‥塗膜、5‥環状体、6‥円孔、7‥環状塗布槽、8‥環状シール材、10‥土台、11‥支持部、12‥乾燥台、15‥加熱台、
100‥乾燥炉、110‥熱風循環ダクト、120‥加熱源、130‥搬送レール、140‥搬入口、150‥搬出口、
200‥加熱炉(バッチ処理加熱炉)、200A‥第1のバッチ処理加熱炉、200B‥第2のバッチ処理加熱炉、201‥筐体、202‥内室、203‥加熱源、204‥耐熱フィルター、205‥排気口、210‥排気ガス供給ダクト、210A‥第1の排気ガス供給ダクト、210B‥第2の排気ガス供給ダクト、212‥加熱炉−乾燥炉連結ダクト、214‥弁、
250A‥連続処理加熱炉、250B‥連続処理加熱炉、252、254、256、258‥加熱室、260、262‥バッファ室、270‥搬入口、272‥搬出口、280‥加熱源、282‥吸気ダクト、284‥排気ガス供給ダクト、286‥弁、288‥加熱室連結ダクト、290‥加熱炉−乾燥炉連結ダクト、292‥弁
400‥温度センサー、
500‥湿式充填塔、510が塔、512が充填物、514が水槽、516がポンプ、518が水供給配管、520がガス入口、522がガス出口、530‥排気ファン、540‥熱交換器、550‥乾燥炉と湿式充填塔とを接続する排気ダクト、
600、602、610、612‥無端ベルト製造装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子写真装置において、感光体、転写ベルト、及び定着ベルト等に適用される無端ベルトを製造するに際して、加熱炉の熱エネルギーを乾燥炉に利用することにより、エネルギーを有効活用する無端ベルト製造方法およびこれを用いた無端ベルト製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置では、感光体、転写体、定着体などに、金属、樹脂、またはゴム製の回転体が使用されるが、装置の小型化或いは高性能化のために、回転体は変形可能なものが好ましいことがあり、それには肉厚が薄い樹脂製ベルトが用いられる。その材料としては、強度や寸法安定性、耐熱性等の面でポリイミド(以後、「PI」と略す)樹脂や、ポリアミドイミド(以後、「PAI」と略す)樹脂が好ましい。この場合、ベルトに継ぎ目(シーム)があると、出力画像に継ぎ目に起因する欠陥が生じるので、継ぎ目がない無端ベルトが好ましい。
【0003】
無端ベルトを作製するには、円筒体の内面に皮膜形成樹脂溶液を塗布し、回転しながら乾燥して成膜する遠心成形法や、円筒体内面に皮膜形成樹脂溶液を展開する内面塗布法があるが、これらの内面成膜方法では、皮膜形成樹脂溶液を加熱反応させる際に、樹脂皮膜を円筒体から抜いて外型に載せ換える必要がある。
【0004】
他の無端ベルトの製造方法として、円筒芯体の表面に皮膜形成樹脂溶液を塗布して乾燥し、必要に応じて加熱して反応させた後、樹脂皮膜を芯体から剥離する方法もある。
【0005】
上記製造方法では、芯体に皮膜形成樹脂溶液を塗布した後、50〜200℃の温度に加熱した乾燥炉に入れて溶剤を乾燥させ、その後、さらに温度を上げて、残留溶剤を完全に除去し、皮膜形成樹脂が反応性である場合には、反応を完結させることが行われる。
【0006】
その場合、通常は250℃以上の高い温度が必要である。高温に加熱するには、同じ乾燥炉で乾燥から高温加熱まで行わせることも可能であるが、250℃以上に耐えうる大きな乾燥炉は設備費用が大きくなるので、乾燥炉と加熱炉を別個にすることも好ましい。その際には、乾燥後に一旦、芯体温度を低下させてから加熱炉に入れることが好ましい(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−334830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが昨今はエネルギーの効率化、及びそれによるコスト削減も要求され、無端ベルト製造時に使用する熱エネルギーについても、有効利用することが求められている。
そこで、本発明は、従来の無端ベルト製造時に外部に廃棄されていた熱エネルギーを有効活用して、省エネルギーを実現する無端ベルト製造方法およびこれを用いた無端ベルト製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、本発明は、
<1>
皮膜形成樹脂溶液を塗布することにより塗膜がその表面に形成された芯体を、乾燥炉内に配置して加熱し前記塗膜を乾燥させて樹脂皮膜を形成する乾燥工程と、
前記樹脂皮膜が形成された芯体を、加熱炉内に配置して加熱し前記樹脂皮膜を焼成する加熱工程とを含み、
前記加熱工程において、前記加熱炉から排気された排気ガスを前記乾燥炉に供給することを特徴とする無端ベルト製造方法。
【0009】
<2>
前記加熱炉から排気された排気ガスの前記乾燥炉への供給が、1基の乾燥炉に対して2基以上の加熱炉から行われ、且つ、前記2基以上の加熱炉が前記芯体をバッチ処理するバッチ処理加熱炉であることを特徴とする<1>に記載の無端ベルト製造方法。
【0010】
<3>
前記2基以上の加熱炉から前記1基の乾燥炉への排気ガスの供給が、一の加熱炉から前記1基の乾燥炉へ排気ガスを供給した後、他の加熱炉から前記1基の乾燥炉へ排気ガスを供給することにより行われることを特徴とする<2>に記載の無端ベルト製造方法。
【0011】
<4>
前記加熱炉が、芯体を炉内に搬入する搬入口と、炉内の芯体を炉外に搬出する搬出口と、炉内の芯体を搬入口から搬出口へと搬送する搬送手段と、前記芯体の搬送方向に対して炉内を2つ以上の加熱室に区分けする1つ以上の仕切り板とを備えた連続処理加熱炉であることを特徴とする<1>に記載の無端ベルト製造方法。
【0012】
<5>
前記2以上の加熱室のうち、少なくともいずれか1つの加熱室から排気される排気ガスが前記乾燥炉に供給されることを特徴とする<4>に記載の無端ベルト製造方法。
【0013】
<6>
互いに隣接する2つの加熱室において、搬出口側の加熱室から排気される排気ガスが搬入口側の加熱室へと供給され、且つ、搬入口側に最も近い位置に設けられた加熱室から排気される排気ガスが前記乾燥炉に供給されることを特徴とする<4>に記載の無端ベルト製造方法。
【0014】
<7>
皮膜形成樹脂溶液を塗布することにより塗膜がその表面に形成された芯体を、加熱して前記塗膜を乾燥させ樹脂皮膜を形成する乾燥炉と、前記樹脂皮膜が形成された芯体を、加熱して前記樹脂皮膜を焼成する加熱炉とを含み、
前記乾燥炉が炉外のガスを前記炉内に取り入れる吸気口を備え、前記加熱炉が炉内のガスを前記炉外に排気する排気口を備え、
前記加熱炉の排気口が、前記乾燥炉の吸気口に接続されていることを特徴とする無端ベルト製造装置。
【0015】
<8>
前記加熱炉が前記樹脂皮膜が形成された芯体をバッチ処理するバッチ処理加熱炉であり、
1基以上の乾燥炉と2基以上のバッチ処理加熱炉とを含み、
いずれか1基のバッチ処理加熱炉の排気ガスが、1基以上の乾燥炉のうちの任意の乾燥炉に供給できるように、前記1基以上の乾燥炉の吸気口と、前記2基以上のバッチ処理加熱炉の排気口とが接続されたことを特徴とする<7>に記載の無端ベルト製造装置。
【0016】
<9>
前記加熱炉が、前記樹脂皮膜が形成された芯体を炉内に搬入する搬入口と、炉内の前記芯体を炉外に搬出する搬出口と、炉内の前記芯体を搬入口から搬出口へと搬送する搬送手段と、前記芯体の搬送方向に対して炉内を2つ以上の加熱室に区分けする1つ以上の仕切り板とを備えた連続処理加熱炉であることを特徴とする<7>に記載の無端ベルト製造装置。
【0017】
<10>
前記2以上の加熱室のうち、少なくともいずれか1つの加熱室が排気口を備え、前記排気口と、前記乾燥炉の吸気口とが接続されていることを特徴とする<9>に記載の無端ベルト製造装置。
【0018】
<11>
前記2以上の加熱室の各々が、炉外のガスを前記炉内に取り入れる吸気口と前記炉内のガスを前記炉外に排気する排気口とを備え、
互いに隣接する2つの加熱室のうち、搬出口側の加熱室の排気口と搬入口側の加熱室の吸気口とが接続され、
前記2以上の加熱室のうち、搬入口側に最も近い位置に設けられた加熱室の排気口と、前記乾燥炉の吸気口とが接続されていることを特徴とする<9>に記載の無端ベルト製造装置。
【発明の効果】
【0019】
以上に説明したように本発明によれば、従来の無端ベルト製造時に外部に廃棄されていた熱エネルギーを有効活用して、省エネルギーを実現する無端ベルト製造方法およびこれを用いた無端ベルト製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の無端ベルト製造方法は、皮膜形成樹脂溶液を塗布することにより塗膜がその表面に形成された芯体を、乾燥炉内に配置して加熱し前記塗膜を乾燥させて樹脂皮膜を形成する乾燥工程と、前記樹脂皮膜が形成された芯体を、加熱炉内に配置して加熱し前記樹脂皮膜を焼成する加熱工程とを含み、前記加熱工程において、前記加熱炉から排気された排気ガスを前記乾燥炉に供給することを特徴とする。
従って、本発明によれば、加熱炉で発生した排気ガスを乾燥炉での乾燥処理にも利用できるため、乾燥炉で利用する熱エネルギーを大幅に節約することができる。
【0021】
このような無端ベルト製造方法を実現するための無端ベルト製造装置としては、皮膜形成樹脂溶液を塗布することにより塗膜がその表面に形成された芯体を、加熱して前記塗膜を乾燥させ樹脂皮膜を形成する乾燥炉と、前記樹脂皮膜が形成された芯体を、加熱して前記樹脂皮膜を焼成する加熱炉とを含み、前記乾燥炉が炉外のガスを前記炉内に取り入れる吸気口を備え、前記加熱炉が炉内のガスを前記炉外に排気する排気口を備え、前記加熱炉の排気口が、前記乾燥炉の吸気口に接続された構成を有していることが好ましい。
【0022】
図1は本発明の無端ベルト製造装置の一例を示す概略模式図であり、図中、100が乾燥炉、110が乾燥炉の熱風循環ダクト、120が乾燥炉の加熱源、200が加熱炉(バッチ処理加熱炉)、210が排気ガス供給ダクト、400が温度センサー、500が湿式充填塔、530が排気ファン、540が熱交換器、600が無端ベルト製造装置、550が乾燥炉と湿式充填塔とを接続する排気ダクトを表し、図中に示す黒く塗りつぶした矢印は、乾燥炉100や加熱炉200から排気された排気ガスの流れ方向を示す。なお、図中に示すダクト等の配管系は主要部のみを示したものであり、これは以下に示す図においても同様である。
図1に示す無端ベルト製造装置600は、乾燥炉100と、この乾燥炉100外に配置され、乾燥炉100の吸気口と排気口とを循環するように接続する熱風循環ダクト110と、熱風循環ダクト110の途中に設けられた加熱源120と、加熱炉200と、加熱炉200の排気口から排気される排気ガスを、熱風循環ダクト110の加熱源120が設けられた上流側(排気口側)に供給できるように加熱炉200の排気口と熱風循環ダクト110とを接続する排気ガス供給ダクト210と、熱風循環ダクト110と排気ガス供給ダクト210との接続部近傍の排気ガス供給ダクト210内を通過する排気ガスの温度をモニターする温度センサー400と、から少なくとも構成される。
また、必要に応じて、乾燥炉100や加熱炉200内で発生した排気ガス中の溶剤を回収するために、湿式充填塔500と、この湿式充填塔500に接続された排気ファン530と、排気ファン530と熱風循環ダクト110の加熱源120が設けられた下流側(吸気口側)の熱風循環ダクト110とを接続する排気ダクト550と、熱風循環ダクト110の途中に設けられた熱交換器540とからなる溶剤回収装置を設けてもよい。
【0023】
無端ベルト製造装置600においては、加熱炉200内にて乾燥工程を経て皮膜が形成された芯体を加熱した際に発生した排気ガスを、排気ガス供給ダクト210から熱風循環ダクト110を経て乾燥炉100内に供給できる。このため、乾燥工程において乾燥炉100内を所定の温度に加熱・維持する際に、加熱源120で消費されるエネルギー量を抑制することができる。
なお、加熱炉200内の排気ガスをそのまま乾燥炉に供給すると、乾燥炉100内の温度を乾燥処理に適した所望の範囲に制御することが困難となる場合がある。このような場合には、例えば、温度センサー400でモニターした排気ガスの温度を元に、(1)排気ガス供給ダクト210と熱風循環ダクト110との接続部で、加熱炉200から排気された排気ガスと乾燥炉100から排気された排気ガスとの混合比を調整したり、(2)熱風循環ダクト110を循環する排気ガスに、熱風循環ダクト110に接続された不図示の外気取り入れダクトから取り入れた常温近傍の外気を混合したり、(3)熱風循環ダクト110を循環する排気ガスを、加熱源120によって加熱したりすることにより、乾燥炉100内に供給する排気ガスの温度を所定の温度に調整することができる。
【0024】
本発明において、加熱炉としては、樹脂皮膜が形成された芯体を加熱できるものであれば公知の加熱炉を用いることができるが、樹脂皮膜が形成された芯体をバッチ処理するバッチ処理加熱炉や、連続的に処理する連続処理加熱炉を用いることができる。
ここで連続処理加熱炉としては、樹脂皮膜が形成された芯体を炉内に搬入する搬入口と、炉内の前記芯体を炉外に搬出する搬出口と、炉内の前記芯体を搬入口から搬出口へと搬送する搬送手段と、前記芯体の搬送方向に対して炉内を2つ以上の加熱室に区分けする1つ以上の仕切り板とを備えたものであることが好ましい。更に、芯体の搬送方向に対して加熱室毎に精緻な温度制御ができるように、加熱室内の温度を能動的に調整できるヒーター等の加熱源が各々の加熱室毎に設けられていてもよい。また、連続処理加熱炉の搬入口側と搬出口側とには、加熱室とは別に、芯体の加熱炉への搬入/加熱炉からの搬出に伴う炉内(加熱室)の急激な温度低下を避けるために、最も搬入口側に位置する加熱室の搬入口側、最も搬出口側に位置する加熱室の搬出口側にバッファ室を設けることが好ましい。
【0025】
また、乾燥炉としてもバッチ処理乾燥炉、連続処理乾燥炉のいずれを用いてもよいが、通常は連続処理乾燥炉が用いられる。以下、乾燥炉としては連続処理乾燥炉が用いられることを前提として説明するが、本発明に用いられる乾燥炉は連続処理乾燥炉にのみ限定されるものではない。
連続処理乾燥炉では、芯体を連続的に処理するため、炉内の温度が経時的にほぼ一定に保たれている必要がある。しかし、図1に示すような加熱炉から排気された排気ガスの乾燥炉への供給が、図1に示したように1基の乾燥炉に対して1基の加熱炉から行われるものである場合に、乾燥炉および加熱炉として、連続処理乾燥炉とバッチ処理加熱炉とを組み合わせて用いると、加熱炉への芯体の搬入、加熱、放冷、芯体の搬出という処理サイクルに伴い加熱炉から排気される排気ガスの温度が大きく変化することになる。
この場合、加熱炉から乾燥炉へと供給される排気ガスの温度が経時的に大きく変化することになるため、乾燥炉へ排気ガスを導入するまでに加熱炉から排気された排気ガスが乾燥に適した温度となるように加熱および/または冷却しなければならず、乾燥炉に供給する排気ガスの温度の再調整が必要となるため熱エネルギーのロスが発生してしまう。
【0026】
それゆえ、バッチ処理加熱炉を用いる場合には、加熱炉から排気された排気ガスの乾燥炉への供給は、1基の乾燥炉に対して2基以上のバッチ処理加熱炉から行われることが好ましい。
このような処理を実施するためには、1基以上の乾燥炉と2基以上のバッチ処理加熱炉とを含み、いずれか1基のバッチ処理加熱炉の排気ガスが、1基以上の乾燥炉のうちの任意の乾燥炉に供給できるように、1基以上の乾燥炉の吸気口と、2基以上のバッチ処理加熱炉の排気口とが接続された無端ベルト製造装置を用いることができる。
【0027】
ここで、2基以上の加熱炉から1基の乾燥炉への排気ガスの供給は、一の加熱炉から1基の乾燥炉へ排気ガスを供給した後、他の加熱炉から1基の乾燥炉へ排気ガスを供給することにより行われることが好適である。
このような各々の加熱炉から1基の乾燥炉へのタイミングをずらした排気ガスの供給を行う場合、各々の加熱炉による芯体のバッチ処理のタイミングを1基ずつづらして実施すれば、加熱炉から乾燥炉へと供給される排気ガスの温度の経時的な変化を小さくすることができるため、加熱炉から排気された排気ガスが乾燥に適した温度となるように温度を再調整することが不要、あるいは、再調整に伴う熱エネルギーのロスをより小さくすることができる。
なお、一般的には連続処理を行う乾燥炉の処理能力は、バッチ処理加熱炉の処理能力の2倍以上となる場合が多い。従って、乾燥工程と加熱工程との間に滞留する仕掛品を少なくして無端ベルトの生産性を挙げるという観点からも、2基以上のバッチ処理加熱炉から1基の乾燥炉へと排気ガスを供給する方式は極めて好適である。
【0028】
図2は、本発明の無端ベルト製造装置の他の例を示す概略模式図であり、1基以上の乾燥炉の吸気口と、2基のバッチ処理加熱炉の排気口とが接続された構成を有する無端ベルト製造装置について示したものである。図中、200Aが第1のバッチ処理加熱炉、200Bが第2のバッチ処理加熱炉、210Aが第1の排気ガス供給ダクト、210Bが第2の排気ガス供給ダクト、212が加熱炉−乾燥炉連結ダクト、214が弁、602が無端ベルト製造装置を表し、その他の符号で示される部材は、図1中に示したものと同様である。
【0029】
図2に示す無端ベルト製造装置602は、図1に示す無端ベルト製造装置600に対して、1基の乾燥炉100に対して2基のバッチ処理加熱炉200A、200Bから排気ガスが供給できるように構成した点を除いては同様の構成を有するものである。
具体的には、図1に示す無端ベルト製造装置600において1基の加熱炉200およびその排気ガス供給ダクト210の代わりに、無端ベルト製造装置602は、2基の加熱炉200A、200Bと、熱風循環ダクト110の加熱源120が設けられた上流側(排気口側)に2基の加熱炉200A、200Bからの排気ガスを集めて供給する加熱炉−乾燥炉連結ダクト212と、加熱炉200Aの排気口から排気される排気ガスを加熱炉−乾燥炉連結ダクト212まで供給する第1の排気ガス供給ダクト210Aと、加熱炉200Bの排気口から排気される排気ガスを加熱炉−乾燥炉連結ダクト212まで供給する第2の排気ガス供給ダクト210Bと、加熱炉−乾燥炉連結ダクト212、第1の排気ガス供給ダクト210Aおよび第2の排気ガス供給ダクト210Bの接合部に設けられ、第1の排気ガス供給ダクト210Aおよび第2の排気ガス供給ダクト210Bから排気される排気ガスの流量や混合比率を調整して加熱炉−乾燥炉連結ダクト212へと流す弁214とを備えた構成を有する。
【0030】
次に、図2に示す無端ベルト製造装置602における2基の加熱炉200A、200Bから、1基の乾燥炉100への排気ガスの供給パターンの一例について説明する。
図3は、図2に示す無端ベルト製造装置602における加熱炉から乾燥炉への排気ガスの供給パターンの一例を説明するためのグラフであり、図中、横軸が時間(第1の加熱炉200A、第2の加熱炉200Bにおけるバッチ処理のサイクル)、縦軸が(第1の加熱炉200A、第2の加熱炉200B内の)温度を示し、図中上段のグラフが第1の加熱炉200Aにおける時間に対する炉内温度の変化を、図中下段のグラフが第2の加熱炉200Bにおける時間に対する炉内温度の変化を示したものである。
【0031】
図3に示されるように、昇温、最高温度状態の維持、冷却を繰り返すバッチ処理サイクル(時間に対する温度変化)は、加熱炉200A、200B双方ともに同様のパターンであるが、最高温度状態を維持している時間帯(図中のA,Bの両矢印で示される区間)は互いに重複しないように、加熱炉200A、200Bにおけるバッチ処理が実施される。このため、例えば、図中のAの両矢印で示される区間においては、第1の加熱炉200Aのみから乾燥炉100へと排気ガスを供給し、図中のBの両矢印で示される区間においては、第2の加熱炉200Bのみから乾燥炉100へと排気ガスを供給すれば、乾燥炉100へと供給される排気ガスの温度の経時的な変化は、1基の加熱炉から排気ガスが供給される場合と比べると非常に小さくすることができる。
【0032】
次に、連続処理加熱炉を用いた無端ベルト製造装置について説明する。連続処理加熱炉を用いる場合には、2以上の加熱室のうち、少なくともいずれか1つの加熱室から排気される排気ガスが乾燥炉に供給される。
通常、加熱室の設定温度は、搬入口側から搬出口側へと高くなるように設定されるため、乾燥炉の設定温度や、加熱室から乾燥炉まで排気ガスを供給するダクトからの熱損失等を考慮して、乾燥炉へと排気ガスを供給する加熱室を選択することが好ましい。これにより、加熱室から乾燥炉へと排気ガスを供給する際の温度の再調整を最小限に抑えることができる。
【0033】
図4は、本発明の無端ベルト製造装置の他の例を示す模式断面図であり、加熱炉として連続処理加熱炉を用いた場合の一例について示したものである。図4中、250Aは連続処理加熱炉、252、254、256、258は加熱室、260、262はバッファ室、270は搬入口、272は搬出口、280は加熱源、282は吸気ダクト、284は排気ガス供給ダクト、286は弁、290は加熱炉−乾燥炉連結ダクト、292は弁、610は無端ベルト製造装置を表し、その他の符号で示される部材は 図1,2に示したものと同様である。また、図中の黒く塗りつぶした矢印は、乾燥炉100や加熱炉250Aから排気された排気ガスの流れ方向を示し、白抜きの矢印は、加熱炉250A内における芯体の搬送方向を示す。
【0034】
図4に示す無端ベルト製造装置610は、基本的に図1に示す無端ベルト製造装置において用いられるバッチ処理加熱炉200の代わりに、連続処理加熱炉250Aを用いた構成を有するものであり、図1に示されるように溶剤回収装置(図4中不図示)を更に備えていてもよい。
連続処理加熱炉250Aは、芯体を炉内に搬入・搬出するために、加熱炉の両端にそれぞれ設けられた搬入口270および搬出口272を有しており、炉内は、連動して開閉可能な5つの仕切り板により区切られ、搬入口270側から搬出口272側へと、バッファ室260、加熱室252、254、256、258、および、バッファ室262が設けられている。
【0035】
これら4つの加熱室252、254、256、258の各々には、外気を取り入れる吸気ダクト282と、排気ガスを乾燥炉100に供給するために設けられた排気ガス供給ダクト284がそれぞれ設けられ、吸気ダクト282の途中には、外気を所定の温度にまで加熱した後に加熱室内に供給するために加熱源280が配置され、排気ガス供給ダクト284の途中には、乾燥炉100への排気ガスの供給量を調整する弁286が設けられている。また、4つの加熱室252、254、256、258の各々の排気ガス供給ダクト284は、一方の端が熱風循環ダクト110に接続された加熱炉−乾燥炉連結ダクト290に接続されている。さらに、熱風循環ダクト110と加熱炉−乾燥炉連結ダクト290との接合部には、弁292が設けられており、加熱炉−乾燥炉連結ダクト290の弁292の近傍には、排気ガスの温度をモニターするための温度センサー400が取り付けられている。
ここで無端ベルト製造装置610が定常的に稼動している状態では、乾燥炉100および4つの加熱室252、254、256、258の温度はほぼ一定に保たれ、乾燥炉100、加熱室252、加熱室254、加熱室256、加熱室258の順に温度が高くなるように炉内の温度が調整される。
【0036】
図4に示す無端ベルト製造装置610では、4つの加熱室252、254、256、258の少なくともいずれかから、排気ガス供給ダクト284、加熱炉−乾燥炉連結ダクト290および熱風循環ダクト110を経て乾燥炉100へと加熱炉250A内の排気ガスを供給することができる。
ここで、連続処理加熱炉250Aが定常的に稼動している状態では、4つの加熱室252、254、256、258の温度は常に一定に保たれているため、弁286、弁292、加熱源120や、(不図示の)外気取入れ口から取り入れた外気との混合等を利用して加熱室から乾燥炉へと排気ガスを供給する際の温度の再調整を最小限に抑えることができる。このため、図1や図2に例示したようなバッチ処理加熱炉を用いた無端ベルト製造装置と比べると、加熱室から排気された排気ガスを乾燥炉内で利用するのに適した温度に調整する温度制御が極めて容易になるのみならず、温度制御に伴う熱エネルギーのロスもより小さく抑えることができる。
【0037】
なお、図4に示す例では、加熱室内の温度が高すぎたり低すぎたりして乾燥炉100へ排気ガスを供給せずに炉外に排気ガスを排気する加熱室が存在する場合もあり、この点では、加熱炉250Aで発生する熱エネルギーの全てを十分に再利用できない場合がある。
また、各加熱室の温度と乾燥炉との温度を考慮すれば、通常は、搬入口側の加熱室の排気ガスを乾燥炉に供給することが、加熱室から排気された排気ガスを乾燥炉内で利用するのに適した温度に調整し、且つ、温度制御に伴う熱エネルギーのロスもより小さく抑えることができる点で有利な場合が多い。
【0038】
それゆえ、連続処理加熱炉を用いた無端ベルト製造装置においては、互いに隣接する2つの加熱室において、搬出口側の加熱室から排気される排気ガスが搬入口側の加熱室へと供給され、且つ、搬入口側に最も近い位置に設けられた加熱室から排気される排気ガスが乾燥炉に供給されることが好適である。
このような場合には、2以上の加熱室の各々が、炉外のガスを炉内に取り入れる吸気口と炉内のガスを炉外に排気する排気口とを備え、互いに隣接する2つの加熱室のうち、搬出口側の加熱室の排気口と搬入口側の加熱室の吸気口とが接続され、2以上の加熱室のうち、搬入口側に最も近い位置に設けられた加熱室の排気口と、乾燥炉の吸気口とが接続された構成を有する連続処理加熱炉を用いることが好ましい。
【0039】
図5は、本発明の無端ベルト製造装置の他の例を示す模式断面図であり、加熱炉として連続処理加熱炉を用いた場合の他の例について示したものである。図5中、250Bは連続処理加熱炉、288は加熱室連結ダクト、612は無端ベルト製造装置を表し、その他の符号で示される部材は 図4に示したものと同様である。
図5に示される無端ベルト製造装置612は、加熱炉−乾燥炉連結ダクト290の加熱炉250B側の端が、搬入口270側に最も近い位置に設けられた加熱室252の排気口に接続され、また、互いに隣接する2つの加熱室(加熱室252と加熱室254、加熱室254と加熱室256、および、加熱室256と加熱室258)の搬入口270側の加熱室の吸気口と搬出口272側の加熱室の排気口とがその途中に加熱源280が設けられた加熱室連結ダクト288により接続されている点が異なっている以外は、基本的には図5に示す無端ベルト製造装置610と同様の構成を有するものである。
【0040】
無端ベルト製造装置612では、設定温度の高い加熱室の排気ガスが、設定温度の低い加熱室へと順次供給される構成を有しているため、乾燥炉100へ加熱室252内の排気ガスを供給することによって熱エネルギーを有効利用できるのみならず、乾燥炉100への排気ガスの供給に直接関与しないその他の加熱室(加熱室254、256、258)の熱エネルギーも有効に利用できる。
【0041】
<無端ベルトの製造>
次に、無端ベルトの製造プロセスについて各工程毎に用いられる材料や製造条件等の詳細を示しつつ説明する。
無端ベルトの製造に際しては、まず、芯体表面に皮膜形成樹脂溶液を塗布して塗膜を形成する。次いで溶剤を加熱乾燥させ、更に脱水縮合反応させて皮膜を得る。
ここで、芯体としては、通常、アルミニウム等からなる円筒状のものが用いられ、塗膜は、芯体の内周面または外周面に形成される。なお、以下の説明においては、芯体の外周面に塗膜が形成されることを前提として説明する。
【0042】
−塗膜の形成−
皮膜形成樹脂溶液としては、PI樹脂を形成するPI前駆体や、PAI樹脂を形成するPAI前駆体を含むものが用いられる。
PI前駆体は、酸二無水物とジアミンをN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトアミド、等の非プロトン系極性溶剤中で縮合反応させることによって得ることができる。
【0043】
酸二無水物の代表例としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、等がある。
【0044】
ジアミン成分は、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノフェニルメタン、ベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、3,3′―ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、2,2′−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等のいずれか1種、または複数から選ばれる。
【0045】
一方、PAI樹脂は、酸無水物、例えばトリメリット酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸無水物等と、上記ジアミンを組み合わせて、当モル量で重縮合反応することで得られる。PAI樹脂はアミド基を有するため、イミド化反応が進んでも溶剤に溶解し易いので、100%イミド化したものが好ましい。
【0046】
皮膜形成樹脂溶液の濃度、粘度等は、適宜選択されるが、好ましい溶液の固形分濃度は10〜40質量%、粘度は1〜1000Pa・sである。
【0047】
無端ベルトを感光体や転写ベルトとして使用する場合、導電性を付与するために、溶液の中に導電性粒子を分散させる。導電性粒子としては、例えば、カーボンブラック、カーボンブラックを造粒したカーボンビーズ、カーボンファイバー、グラファイト等の炭素系物質;銅、銀、アルミニウム等の金属又は合金;酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、SnO2・In2O3複合酸化物等の導電性金属酸化物等が挙げられる。
【0048】
芯体は、アルミニウムやステンレス、ニッケル等の金属製の円筒が好ましい。芯体の長さは、目的とする無端ベルト以上の長さが必要であり、複数の無端ベルトを同時に作製する場合には、その本数分以上の長さが必要である。また、端部に生じる無効領域に対する余裕幅を確保するため、目的の長さより、10〜40%程度長いことが望ましい。芯体の外径は、目的とする無端ベルトの直径に合わせ、肉厚は芯体としての強度が保てる厚さにする。
【0049】
形成される皮膜が芯体表面に接着するのを防ぐため、芯体の表面には離型性を付与する。それには、芯体表面をフッ素樹脂やシリコーン樹脂で被覆したり、表面に離型剤を塗布する方法がある。
【0050】
なお、PI前駆体のイミド化時には溶剤や反応時に発生する水の蒸発があり、反応後の皮膜には部分的に膨れを生じることがあり、特に膜厚が50μmを越える場合に顕著である。この膨れを防止するために、特開2002−160239号公報に開示の如く、芯体表面をRa0.2〜2μm程度に粗面化することが好ましい。これにより、皮膜から生じる気体は、芯体と皮膜の間に形成されるわずかな隙間を通って外部に出ることができ、膨れを生じない。
【0051】
芯体表面への皮膜形成樹脂溶液の塗布方法は任意であるが、好ましい塗布方法の一例を説明する。
図6は、本発明に用いられる塗布装置の一例を示す概略断面図であり、図6に示す塗布装置は主要部のみを示したものであり、芯体の昇降手段などの周辺部は省略してある。なお、以下の説明において、「芯体上に塗布する」とは、芯体の表面上、及び該表面に層を有する場合はその層上に塗液を塗布する意味である。また、「芯体を上昇」とは液面との相対関係であり、「芯体を停止し、塗布液面を下降」させる場合を含む。
【0052】
図6において、溶液2を環状塗布槽7に入れ、環状塗布槽7の下部から上部へ芯体1Aを通過させると、芯体1Aの外周面に塗膜4が形成され、塗布が行われる。芯体1Aの下には、他の芯体1Bが重ねられる。
環状塗布槽7の底部には、環状塗布槽7内の溶液2が漏れないよう、環状シール材8を取り付ける。環状シール材8は、ポリエチレンやシリコーンゴム、フッソ樹脂等の柔軟性板材から成る。溶液2上には、芯体1の断面の外周外径よりも大きな円孔6を設けた環状体5を自由移動可能状態で設置する。
【0053】
環状体5は、塗布中は溶液上に浮遊させるが、静止時に浮力が不足する場合は、環状体5の沈没防止のために、環状体5の外周面または環状塗布槽7に、環状体5を支える足や腕を設けてもよい。
【0054】
環状体5に設けられる円孔6の内壁の形状は、図1に示すように、溶液2に浸る下部で芯体1Aとの間隙が広く、上部が狭い形状であれば、斜めの直線状であるもののほか、階段状や曲線状でもよい。芯体1Aの外径と、円孔6の内径(内径が段階的もしくは連続的に変化する場合には、最小の内径)の間隙は、所望の塗布膜厚を鑑みて調整する。
【0055】
塗布の際は、芯体1Aと円孔6との間隙により、塗膜4の膜厚が調整される。芯体1Aの上昇速度は0.1〜1.5m/min程度であるのが好ましく、芯体1Aを上昇させると、溶液2の介在により、芯体1Aと環状体5との間隙にて摩擦抵抗が生じ、環状体5は持ち上げられる。
【0056】
このように環状体5が持ち上げられた際、環状体5は芯体1Aとの摩擦抵抗が周方向で一定になるように水平方向に移動し、間隙が周方向で一定になる。そこで、環状体5が芯体1と接触することはなく、常に一定間隙が保たれる。
【0057】
−塗膜の乾燥−
塗布終了後、芯体を取り出し、塗膜が下方に垂れないよう、芯体の軸方向を水平にして回転させる。芯体を回転させる速度は、2〜20rpmであることが好ましい。回転速度が2rpm未満では回転が遅くいために塗膜に垂れが発生しやすく、20rpm以上では塗膜が凸凹になることがある。
【0058】
次いで、塗膜の乾燥を行う。塗膜が形成された芯体を乾燥炉に入れるために、まず、芯体を乾燥台に載せる。図7は、本発明に用いられる乾燥台の一例を示す概略模式図であり、図7(1)が、芯体を載せた状態の乾燥台を芯体の側面側から見た図であり、図7(2)が、芯体を載せた状態の乾燥台を芯体の軸方向側から見た図である。
乾燥台12は、土台10と、この土台10の両端部に配置された支持部11とから構成されており、支持部11の上部中央には軸受けが設けられている。一方、芯体1には、そのハンドリングを容易とするために、予め芯体1の内周面側で固定され、芯体1の軸方向と一致するように設けられた軸棒3が芯体1の軸方向両端から突出するように取り付けておく。このような軸棒3が取り付けられた芯体1の軸棒3両端部を支持部11の軸受けに引っ掛けることによって、図7に示すように芯体1を乾燥台12に載せることができる。
この状態で、軸棒3に対して、例えば、チェーンや歯車等で構成された回転手段(図中不図示)により回転力を伝達することによって、芯体1を乾燥台12上で回転させることができる。なお、塗膜を形成した後の芯体1の回転速度は、2〜20rpmが好ましく、乾燥炉に入れた際も回転させ続けることが特に好ましい。
【0059】
乾燥台に載せられた芯体は、乾燥台ごと乾燥炉内に入れられ、乾燥処理される。図8は、本発明に用いられる乾燥炉の一例を示す概略模式図であり、図1等に示す乾燥炉100内を拡大して示した図である。乾燥炉100は、一方の端に搬入口140が、他方の端には搬出口150が設けられ、搬入口140側から炉内を経て搬出口150外部へと芯体1を載せた乾燥台12を搬送する搬送レール130とから構成されている。また、搬送レール130の下部には、乾燥台12に載せられた芯体1を回転させるための駆動チェーン等からなる回転手段(不図示)が設けられている。乾燥処理は、芯体1を載せた乾燥台12を、芯体1を所定の速度で回転させつつ搬入口140側から搬出口150側へと搬送しながら行われる。なお、図1に示す例では、炉内に3つの乾燥台が同時に収納可能であるが、その個数は乾燥炉の規模次第である。
乾燥条件は、乾燥後の塗膜に含まれる残留溶剤が30〜50重量%前後になるように設定することが好ましく、具体的には乾燥温度を100〜200℃、乾燥時間を10〜60分程度に設定することが好ましい。また、溶剤の乾燥を促進するために、塗膜表面には熱風を吹きつけてもよい。
【0060】
乾燥処理中、乾燥炉内の空気には、塗膜から蒸発する溶剤のガスが蓄積していくが、これが多くなることは品質安定性の観点で好ましくないので、通常は、乾燥炉内から、溶剤ガスを含んだ空気を排出し、代わりに所定の温度にまで加熱された外部の空気を取り入れて、乾燥炉内の溶剤ガス濃度を所定値以下となるように調整される。
しかし、本発明では、加熱炉からの排気ガスを導入するため、外部の空気を常温から加熱して利用する必要がなく、乾燥処理時における熱エネルギーの使用量を低減できる。また、加熱炉から供給される排気ガスに含まれる溶剤ガス量は、乾燥処理に用いる上では極めて少ないため、加熱炉からの排気ガスを導入しても、塗膜からの揮発以外に起因する乾燥炉内の溶剤ガス濃度の上昇は非常に小さく無視できるレベルである。
なお、乾燥処理に際しては、加熱炉から供給される排気ガスに対して外気を適量混合したり、乾燥炉内から排気される排気ガスの一部を循環させることなく外部に排気することにより、乾燥炉内の溶剤ガス濃度を0.5体積%以下に維持することが好ましい。
【0061】
乾燥後、芯体を乾燥炉から取り出す。そのまま加熱炉に入れてもよいが、芯体の軸方向が水平であると、占有面積が大きくなるので、図9に示すように、塗膜が乾燥処理された芯体1を、軸方向が鉛直方向となるように加熱台15に縦置きに載せることが好ましい。
【0062】
次いで、芯体1を載せた加熱台15を加熱炉内に配置して、焼成処理を行う。図10は、本発明に用いられるバッチ処理加熱炉の一例について示す概略模式図であり、図10中に示されるバッチ処理加熱炉は、図1等に示したバッチ処理加熱炉の内部を拡大して示した図である。
図中、201は筐体、202は内室、203は加熱源、204は耐熱フィルター、205は排気口を表し、図中の白抜き矢印は、気流の流れを意味する。
加熱炉200は、筐体201と、筐体201内に設けられた内室202および加熱源203とを有する。内室202の上部には耐熱フィルター204が配置されており、内室202に隣接して配置された加熱源203によって加熱された空気が耐熱フィルター204を経て、内室202内の空間に供給されるようになっている。耐熱フィルター204を経て内室202の上部から供給された熱風は、内室202の下部へと移動し、内室202の下部から筐体201内に排気された後、再度、加熱源203に供給され循環再利用される。なお、加熱炉200内の空気の循環を行うために、加熱源203の気流流れ方向の入り口側または出口側にはファン(不図示)が設けられており、筐体201内のガスは、適宜排気口205に接続された不図示の排気ガス供給ダクトを通じて、乾燥炉に供給される。
【0063】
加熱炉200を用いた加熱処理は、皮膜が外周面に形成された芯体1をその軸方向が鉛直方向と一致するように加熱台15上に固定した状態で、内室202内に配置した状態で行う。これにより、耐熱フィルター204から吹き出す熱風が、芯体1の外周面に形成された皮膜に吹き付けられる。
なお、芯体を入れる本数は内室202の大きさによる。また、乾燥時間に比べて、加熱に要する時間の方が長いので、生産量を拡大する場合、1基の乾燥炉に対して、2基以上の加熱炉を組み合わせて用いることが好ましい。
【0064】
皮膜形成樹脂がPI樹脂の場合、加熱工程における加熱温度は一般に250〜400℃、好ましくは300〜350℃程度である。イミド化反応は、250℃以上の温度でないと完結しにくいので、250℃の温度に2時間以上置くことが好ましく、さらに300℃以上の温度に1時間以上置くことが好ましい。
皮膜形成樹脂がPAI樹脂の場合、反応はないが、残留溶剤を完全に乾燥させるために、通常220〜320℃、好ましくは250〜300℃程度に加熱する。
【0065】
加熱炉内の空気の殆どは循環させて再利用するため、皮膜から蒸発する溶剤のガスが蓄積し、ガス濃度が高くなると品質安定性の観点で好ましくない場合がある。それゆえ、加熱炉内の排気ガスを乾燥炉へと供給したり外部へと排気する一方で、代わりに外部の空気を取り入れたりすることにより、加熱炉内の溶剤ガス濃度が0.5体積%以下の状態に維持されるようにすることが好ましい。
【0066】
加熱終了後、芯体を加熱炉から取り出し、形成された皮膜を芯体から剥離して無端ベルトを得る。無端ベルトは、端部の不要部分を切って所定長さに切断し、さらに必要に応じて、穴あけ加工やリブ付け加工、等が施されることがある。
無端ベルトを転写ベルトとして用いる場合、厚さは75〜85μmが好ましい。抵抗値は、体積抵抗率で107〜1013Ωcm、表面抵抗率で108〜1013Ω/□程度であるのが好ましいが、ばらつきはその中心値に対して、それぞれ1桁以下の範囲内であるのがよい。
【0067】
なお、乾燥処理や加熱処理で発生した排気ガス中に気化した状態で含まれる溶剤は、既述したように溶剤回収装置を利用して回収することが好ましく、例えば、図1に例示するように熱交換器を用いて溶剤を回収することが好ましい。熱交換器を用いる場合、その伝熱壁温度は40℃以下が好ましい。40℃を超えると、溶剤の回収性能が低下するため、好ましくない場合がある。熱交換器の種類としては、溶剤の回収性能および施設費抑制の観点から、水冷式が好ましい。
また、熱交換器によっても排気ガス中の溶剤が十分に回収できず、溶剤ガスが微量残存する場合には湿式充填塔を使用することが好ましい。
図11は、本発明に用いられる溶剤回収装置の一例を示す概略模式図であり、具体的には図1等に示す湿式充填塔500の詳細について示す図である。図中、510が塔、512が充填物、514が水槽、516がポンプ、518が水供給配管、520がガス入口、522がガス出口を表す。
【0068】
湿式充填塔500は、その主要部が塔510と、塔510の下側に接続された水槽514とからなる。塔510の上部を除く殆どの部分には、気液接触の効率を上げるための充填物512が充填されており、塔510の最上部にはガス出口522が設けられている。また水槽514内には、水が満たされており、液面よりも高い位置にガス入口520が設けられている。このガス入口520は、排気ファン530(図11中不図示)の排気口側に接続されている。また、水槽514内の水を塔510の上部に供給できるように、一端が水槽514の液面より下に位置し、もう一端が塔510の上部に位置する水供給配管518が設けられている。なお、この水供給配管518の途中には、水槽514内の水を塔510の上部へと供給するためのポンプ516が接続されている。また、塔510の上部内に位置する水供給配管518は、充填物512に対して満遍なく水が供給できるようにシャワーノズルとなっている。これにより水が個々の充填物の表面上を薄膜状で流れ、気液接触を効率よく行うことができる。
【0069】
この湿式充填塔500による溶剤の回収は、ガス入口520から供給された溶剤を含むガスが、充填物512で満たされた塔510内を上昇する際に、個々の充填物の表面上を薄膜状で流れる水と気液接触を起こすことによって、溶剤が水に吸収されることによって実施される。溶剤が除去されたガスは、塔510の最上部に設けられたガス出口522から排出される。なお、この方法では、水の中に溶剤が蓄積されていくため、水は定期的に、交換する必要がある。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を、実施例を挙げて具体的に説明する。
<塗膜の形成>
外径366mm、長さ900mm、肉厚10mmのアルミニウム製円筒に対し、表面を球形アルミナ粒子によるブラスト処理により、Ra0.4μmに粗面化した。表面にシリコーン系離型剤(商品名:セパコート、信越化学(株)製)を塗布して、芯体とした。その両端にはアルミニウム製のフランジを取り付け、中央には30mmφの軸を取り付けた。
一方、PI前駆体の溶液(商品名:Uイミド、ユニチカ製、濃度20質量%、溶剤はN−メチル−2−ピロリドン、粘度は約40Pa・s)を用意した。その溶液に、カーボンブラック(商品名:スペシャルブラック4、デグザヒュルス社製)を固形分質量比30%で混合し、次いで対向衝突型分散機により2時間分散し、塗液(皮膜形成樹脂溶液)とした。
【0071】
続いて、図6に示す塗布装置を用いて芯体の外周面に塗膜を形成した。なお、塗布装置は、環状塗布槽7は、内径500mm、内高80mmであり底面に内径386mmの穴をあけ、底面の裏面には、内径362mmの穴を有する厚さ0.5mmの硬質ポリエチレン製の環状シール材8が取り付けられている。また、環状体5としては外径420mm、最小内径367.2mm、高さ50mmのアルミニウム製のものを用いた。その内壁は傾斜面で、鉛直線との傾斜角は5°とした。環状体5の側面には3本のアームを等間隔に取り付け、環状塗布槽7に設置した。
次に、芯体1Aを環状塗布槽7に取り付けた後、芯体1Aの下部には芯体1Bを配置氏続いて環状塗布槽7を塗液で満たした状態で、芯体を0.7m/minの速度で上昇させた。この際、環状体5は液面より約20mm持ち上げられ、芯体1Aの上昇と共に、環状体5の高さは増した。そこで、速度を徐々に減じ、芯体1Aが約60mm上昇した時点で、環状体5の高さが約30mmの所で芯体1Aの上昇速度を一定にした。その時の速度は0.6m/minであった。
【0072】
芯体1Aの上昇途中で環状体5が芯体1Aに接触することはなく、塗布後には、芯体1A上に濡れ膜厚が約600μmの塗膜4が形成された。
その後、3分以内に塗膜が形成された芯体1Aの軸方向を水平にし、図7に示すように、重さが約30kgのステンレス製の乾燥台12に載せた。
【0073】
<乾燥処理および加熱処理>
(比較例1)
図8に示す構成を有する乾燥炉と、図10に示す構成を有するバッチ処理加熱炉とをそれぞれ1基づつ用いて乾燥処理および加熱処理を行い、加熱処理後に芯体から皮膜を剥離して所定のサイズに切断することにより無端ベルトを得た。
なお、乾燥炉はその内部容量が3.0m3であり、図1等に示すように炉外に熱風循環ダクト110(但し、加熱炉とはダクトが接続されていない)と60Wの電気ヒーターからなる加熱源120とを備えたものであり、上述した芯体が乾燥台ごと、最大で3本配置できる構成を有するものである。
また、バッチ処理加熱炉は、その内部容量が2.7m3であり、加熱源203として80Wの電気ヒータを備えている。また、この加熱炉の内室202には、重さが約8kgのステンレス製の加熱台に載せた芯体を4本収納することができる。なお、加熱処理に際しては、この加熱炉から排気される排気ガスは乾燥炉に供給されることなく、炉外に排気される。
【0074】
上述した乾燥炉および加熱炉を1基づつ用いて、塗膜が形成された芯体を乾燥および加熱処理し、この時の芯体1本当りの乾燥および加熱処理に要したエネルギー量を、乾燥炉および加熱炉の電気ヒーターの電力消費量をモニターすることにより求めた。
なお、乾燥炉の電力消費量のモニター期間については、乾燥炉が定常的に稼動している状態で、加熱炉にて1バッチ分の加熱処理の開始から終了までの間をモニターした。
また、加熱炉の電力消費量のモニター期間については、1バッチの処理に要する1回の温度サイクルの開始から終了までとした。
その結果、芯体1本当りの乾燥および加熱処理に要したエネルギー量は約33kWhであった。なお、乾燥および加熱は以下の条件で実施した。
【0075】
−乾燥処理条件−
乾燥処理は、乾燥台に載せた芯体を、6rpmで回転させながら乾燥炉内に10分毎に搬入し、乾燥炉中にて160℃で30分間実施した。なお、乾燥処理に際しては、乾燥炉内に搬入された芯体に対して、風速が約1m/secの熱風を芯体の上方から吹き付けた。
なお、上記乾燥処理条件で乾燥炉を稼動させた際の乾燥炉の電気ヒーターの電力は30kWであった。
【0076】
−加熱処理条件−
乾燥処理後の芯体は、乾燥台から加熱台に載せ換えた後、加熱炉内に4本入れた。この状態で、常温から300℃まで2時間で昇温させ、続いて300℃で1時間20分保持した後、300℃から常温まで1時間40分で冷却した。また、上記の昇温プロセス−300℃保持プロセス−降温プロセスで、加熱炉から排気される排気ガス量は6m3/minとした。
なお、上記加熱処理条件で加熱炉を稼動させた場合において、電気ヒーターの電力は昇温プロセス開始時は50kWであり、昇温プロセス終了時までに10kWまで徐々に減少し、300℃保持プロセスの間は10kWに維持されていた。
【0077】
(実施例1)
比較例1で用いたものと同様の乾燥炉、加熱炉をそれぞれ1基づつ用いて、比較例1と同様に塗膜が形成された芯体について乾燥および加熱処理を実施し、無端ベルトを得た。
但し、実施例1では、図1に示すように加熱炉から排気される排気ガスが乾燥炉に供給できるように加熱炉と乾燥炉とをダクトより接続すると共に、溶剤回収装置も設けた無端ベルト製造装置を用いた。その結果、芯体1本当りの乾燥および加熱処理に要したエネルギー量は約23kWhであった。
【0078】
なお、乾燥および加熱処理に際しては、加熱炉から排気ガス供給ダクトを経て、熱風循環ダクトに6m3/minで排気ガスを供給すると共に、同量の排気ガスを熱風循環ダクトと湿式充填塔とを接続する排気ダクトを通じて炉外に排気した。
また、加熱炉内の温度が300℃に維持されている状態で、熱風循環ダクトと排気ガス供給ダクトとの接続部近傍に設けられた温度センサーの温度をモニターして、乾燥炉に供給される排気ガスの温度を調べたところ約260℃であった。
一方、乾燥炉の電気ヒーターの電力は、加熱炉の昇温開始時点では30kWであったが、加熱炉内の温度が300℃に維持されている状態では2kWまで低下していた。
【0079】
(実施例2)
比較例1で用いたものと同様の乾燥炉および加熱炉を用いて、比較例1と同様に塗膜が形成された芯体について乾燥および加熱処理を実施し、無端ベルトを得た。
但し、実施例2では、図2に示すように加熱炉から排気される排気ガスが乾燥炉に供給できるように2基の加熱炉と1基の乾燥炉とをダクトより接続すると共に、溶剤回収装置も設けた無端ベルト製造装置を用いた。また、2基の加熱炉による加熱処理は、図3に示すように加熱処理サイクルを半サイクルずらして実施した。
この際、2基の加熱炉から乾燥炉への排気ガスの供給は、交互に150分間(昇温プロセス:120分間、300℃保持プロセス:80分間、降温プロセス:100分間)づつ実施した以外は、実施例1と同様に行い、また、熱風循環ダクトと湿式充填塔とを接続する排気ダクトを通じた排気ガスの炉外への放出も実施例1と同様に実施した。
その結果、芯体1本当りの乾燥および加熱処理に要したエネルギー量は約19kWhであった。
【0080】
(比較例2)
図8に示す構成を有する乾燥炉と、図4中に示される4室の加熱室を有する連続処理加熱炉とをそれぞれ1基づつ用いて乾燥処理および加熱処理を行い、加熱処理後に芯体から皮膜を剥離して所定のサイズに切断することにより無端ベルトを得た。
なお、乾燥炉は比較例1で用いたものと同様の構成を有するものであるが、熱風循環ダクトは、加熱炉と接続されていない。
また、連続処理加熱炉は、各々の加熱室の内部容量が1.6m3であり、各々の加熱室に対応して設けられた加熱源として30Wの電気ヒータを備えており、各々の加熱室には、重さが約8kgのステンレス製の加熱台に載せた芯体を1本収納することができる。なお、図4に示す例では各々の加熱室は排気ガス供給ダクトに接続されているが、比較例2で用いる加熱炉においては、排気口から排気される排気ガスはそのまま炉外に排出される。
【0081】
上述した乾燥炉および加熱炉を1基づつ用いて、塗膜が形成された芯体を乾燥および加熱処理し、この時の芯体1本当りの乾燥および加熱処理に要したエネルギー量を、乾燥炉および加熱炉の電気ヒーターの電力消費量をモニターすることにより求めた。
なお、乾燥炉および加熱炉の電力消費量のモニターは、乾燥炉および加熱炉が定常的に稼動している状態で実施した。
その結果、芯体1本当りの乾燥および加熱処理に要したエネルギー量は約30kWhであった。なお、乾燥および加熱は以下の条件で実施した。
【0082】
−乾燥処理条件−
乾燥処理は、比較例1と同様の条件で実施した。
【0083】
−加熱処理条件−
乾燥処理後の芯体は、乾燥台から加熱台に載せ換えた。続いて、芯体を加熱炉内に30分毎に搬入し、加熱炉中にて120分間実施した。
ここで、加熱処理に際しては、各々の加熱室の温度を搬入口側から搬出口側へと順に、180℃、210℃、250℃、300℃に設定し、各々の加熱室における処理時間は 30分に設定した。また、各加熱室からの排気される排気ガス量は2m3/minとした。
なお、上記加熱処理条件で加熱炉を稼動させた場合において、定常状態における電気ヒーターの電力は搬入口側から搬出口側へと順に6kW、7kW、8kW、9kWに維持されていた。
【0084】
(実施例3)
比較例2で用いたものと同様の乾燥炉、加熱炉をそれぞれ1基づつ用いて、比較例2と同様に塗膜が形成された芯体について乾燥および加熱処理を実施し、無端ベルトを得た。
但し、実施例3では、図4に示すように加熱炉から排気される排気ガスが乾燥炉に供給できるように加熱炉と乾燥炉とをダクトより接続した無端ベルト製造装置を用いた。その結果、芯体1本当りの乾燥および加熱処理に要したエネルギー量は約19kWhであった。
【0085】
なお、乾燥および加熱処理に際しては、加熱炉から排気ガス供給ダクトを経て、熱風循環ダクトに8m3/minで排気ガスを供給すると共に、同量の排気ガスを熱風循環ダクトとから炉外へ通じる排気ダクト(図4中不図示。加熱源120と乾燥炉100の吸入口との間の熱風循環ダクトに接続)を通じて炉外に排気した。各加熱室からの排気ガス合計8m3/minを合流させ、乾燥炉へ供給した。
また、加熱炉が定常的に稼動している状態において、熱風循環ダクトと排気ガス供給ダクトとの接続部近傍に設けられた温度センサーの温度をモニターして、乾燥炉に供給される排気ガスの温度を調べたところ約190℃であった。
一方、乾燥炉の電気ヒーターの電力は、加熱炉に接続されていない状態では30kWであったが、図4に示されるように加熱炉に接続された状態で、加熱炉が定常的に稼動している場合には7kWを維持していた。
【0086】
(実施例4)
比較例2で用いたものと同様の乾燥炉、加熱炉をそれぞれ1基づつ用いて、比較例2と同様に塗膜が形成された芯体について乾燥および加熱処理を実施し、無端ベルトを得た。
但し、実施例4では、図5に示すように加熱炉から排気される排気ガスが乾燥炉に供給できるように加熱炉と乾燥炉とをダクトより接続した無端ベルト製造装置を用いた。その結果、芯体1本当りの乾燥および加熱処理に要したエネルギー量は約13kWhであった。
【0087】
なお、乾燥および加熱処理に際しては、加熱炉から排気ガス供給ダクトを経て、熱風循環ダクトに6m3/minで排気ガスを供給すると共に、同量の排気ガスを熱風循環ダクトとから炉外へ通じる排気ダクト(図5中不図示。加熱源120と乾燥炉100の吸入口との間の熱風循環ダクトに接続)を通じて炉外に排気した。
また、加熱炉から、乾燥炉への排気ガスの供給は、最も搬入口側に位置する加熱室からのみ6m3/minで供給すると共に、同量の排気ガスを、互いに隣接する2つの加熱室の搬出口側の加熱室から搬出口側の加熱室へと供給した。
上記加熱処理条件で加熱炉を稼動させた場合において、定常状態における電気ヒーターの電力は搬入口側から搬出口側へと順に2kW、3kW、4kW、9kWに維持されており、比較例2や実施例3と比べると、最も搬出口側の加熱室を除く残り3つの加熱室の電力が低減していることがわかった。
【0088】
また、加熱炉が定常的に稼動している状態において、熱風循環ダクトと排気ガス供給ダクトとの接続部近傍に設けられた温度センサーの温度をモニターして、乾燥炉に供給される排気ガスの温度を調べたところ約160℃であった。
一方、乾燥炉の電気ヒーターの電力は、加熱炉に接続されていない状態では30kWであったが、図5に示されるように加熱炉に接続された状態で、加熱炉が定常的に稼動している場合には8kWを維持していた。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の無端ベルト製造装置の一例を示す概略模式図である。
【図2】本発明の無端ベルト製造装置の他の例を示す概略模式図である。
【図3】図2に示す無端ベルト製造装置602における加熱炉から乾燥炉への排気ガスの供給パターンの一例を説明するためのグラフである。
【図4】本発明の無端ベルト製造装置の他の例を示す模式断面図である。
【図5】本発明の無端ベルト製造装置の他の例を示す模式断面図である。
【図6】本発明に用いられる塗布装置の一例を示す概略断面図である。
【図7】本発明に用いられる乾燥台の一例を示す概略模式図である。
【図8】本発明に用いられる乾燥炉の一例を示す概略模式図である。
【図9】本発明に用いられる加熱台の一例を示す概略模式図である。
【図10】本発明に用いられるバッチ処理加熱炉の一例について示す概略模式図である。
【図11】本発明に用いられる溶剤回収装置の一例を示す概略模式図である。
【符号の説明】
【0090】
1、1A、1B‥芯体、2‥溶液、3‥軸棒、4‥塗膜、5‥環状体、6‥円孔、7‥環状塗布槽、8‥環状シール材、10‥土台、11‥支持部、12‥乾燥台、15‥加熱台、
100‥乾燥炉、110‥熱風循環ダクト、120‥加熱源、130‥搬送レール、140‥搬入口、150‥搬出口、
200‥加熱炉(バッチ処理加熱炉)、200A‥第1のバッチ処理加熱炉、200B‥第2のバッチ処理加熱炉、201‥筐体、202‥内室、203‥加熱源、204‥耐熱フィルター、205‥排気口、210‥排気ガス供給ダクト、210A‥第1の排気ガス供給ダクト、210B‥第2の排気ガス供給ダクト、212‥加熱炉−乾燥炉連結ダクト、214‥弁、
250A‥連続処理加熱炉、250B‥連続処理加熱炉、252、254、256、258‥加熱室、260、262‥バッファ室、270‥搬入口、272‥搬出口、280‥加熱源、282‥吸気ダクト、284‥排気ガス供給ダクト、286‥弁、288‥加熱室連結ダクト、290‥加熱炉−乾燥炉連結ダクト、292‥弁
400‥温度センサー、
500‥湿式充填塔、510が塔、512が充填物、514が水槽、516がポンプ、518が水供給配管、520がガス入口、522がガス出口、530‥排気ファン、540‥熱交換器、550‥乾燥炉と湿式充填塔とを接続する排気ダクト、
600、602、610、612‥無端ベルト製造装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膜形成樹脂溶液を塗布することにより塗膜がその表面に形成された芯体を、乾燥炉内に配置して加熱し前記塗膜を乾燥させて樹脂皮膜を形成する乾燥工程と、
前記樹脂皮膜が形成された芯体を、加熱炉内に配置して加熱し前記樹脂皮膜を焼成する加熱工程とを含み、
前記加熱工程において、前記加熱炉から排気された排気ガスを前記乾燥炉に供給することを特徴とする無端ベルト製造方法。
【請求項2】
皮膜形成樹脂溶液を塗布することにより塗膜がその表面に形成された芯体を、加熱して前記塗膜を乾燥させ樹脂皮膜を形成する乾燥炉と、前記樹脂皮膜が形成された芯体を、加熱して前記樹脂皮膜を焼成する加熱炉とを含み、
前記乾燥炉が炉外のガスを前記炉内に取り入れる吸気口を備え、前記加熱炉が炉内のガスを前記炉外に排気する排気口を備え、
前記加熱炉の排気口が、前記乾燥炉の吸気口に接続されていることを特徴とする無端ベルト製造装置。
【請求項1】
皮膜形成樹脂溶液を塗布することにより塗膜がその表面に形成された芯体を、乾燥炉内に配置して加熱し前記塗膜を乾燥させて樹脂皮膜を形成する乾燥工程と、
前記樹脂皮膜が形成された芯体を、加熱炉内に配置して加熱し前記樹脂皮膜を焼成する加熱工程とを含み、
前記加熱工程において、前記加熱炉から排気された排気ガスを前記乾燥炉に供給することを特徴とする無端ベルト製造方法。
【請求項2】
皮膜形成樹脂溶液を塗布することにより塗膜がその表面に形成された芯体を、加熱して前記塗膜を乾燥させ樹脂皮膜を形成する乾燥炉と、前記樹脂皮膜が形成された芯体を、加熱して前記樹脂皮膜を焼成する加熱炉とを含み、
前記乾燥炉が炉外のガスを前記炉内に取り入れる吸気口を備え、前記加熱炉が炉内のガスを前記炉外に排気する排気口を備え、
前記加熱炉の排気口が、前記乾燥炉の吸気口に接続されていることを特徴とする無端ベルト製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−216510(P2007−216510A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−39606(P2006−39606)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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