説明

無線タグの位置標定装置

【目的】この発明は、複数の無線タグリーダを分散して配置し、移動体あるいは場所を移動させあるいは持ち運びされる物体に装着される無線タグの位置を標定するための装置に関するものである。

【構成】対象とする移動体が通常居る場所あるいは頻繁に移動するルートに沿って無線タグリーダ22a、22bおよびアンテナ223a、223bを設置し、センサネットワーク31a、31bおよびアンテナ313a、313bを接続し、集積点41のセンサネットワーク411およびアンテナ413に向けて、無線タグ21から読み出した情報を発信し、当該情報を制御手段412により時系列で記憶し処理する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の無線タグリーダを離散的に配置し、移動体あるいは場所を移動させあるいは持ち運びされる物体に装着される無線タグの位置を推定しあるいは標定するための位置標定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3は、特許文献1に記載されている従来の「信号伝送装置」の実施例である。 図3において、タグリーダ22の送信機221bからは、例えば、27MHz帯の比較的に高出力の電磁波信号が発信され、小型のループアンテナ223aから液体中に放射され、パッシブタグ21において小型のループアンテナ213により受信され、アンテナ切替器214によって切替えられ、整流・受信機によって電磁波信号が整流されて直流電力に変換されるとともに電磁波信号が検波されてタグリーダ22からの読出信号を受信する。
当該送信機222から発信された電磁波信号は、タグリーダ22の受信機212aにより受信されて検波され、制御部223によって当該パッシブタグ21の識別情報を検知し、RS232Cインターフエイス224により外部に出力される。
【0003】
ここで、当該タグリーダ22から発信する電磁波信号の周波数を例えば27MHzとし、発信電力を1ワットとすると、約10m離れた位置にあるパッシブタグ21を識別しあるいは識別符号を検知することができるが、パッシブタグ21の位置を標定するためには前記発信電力を比較的に低く設定しなければならない場合、読出し可能範囲が狭く限定されることになり、必然的に多数のタグリーダ2を離散的に配置する必要があり、全てのエリアをタグリーダの読出し可能な範囲とすることが難しく、またパッシブタグ21から読み出した情報を1箇所に集めるのが難しいなどの問題が生じる。

【特許文献1】特願2006−306404号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、移動体あるいは場所を移動させあるいは持ち運びされる物体に装着される無線タグの位置を標定する目的で、経済性を重視して複数の無線タグリーダを離散的に配置したために、サービスエリア全域で無線タグリーダによる読出しが難しく、また無線タグから読み出した情報を1箇所に集めるのが難しいなどの問題を解決するためになされた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係わる無線タグの位置標定装置は、複数の無線タグリーダが読み取った無線タグの情報をセンサネットワークを経由して制御手段に時系列で集積し、当該時系列で集積した情報から当該無線タグの現在時点の位置を確定し、あるいは移動体あるいは場所を移動させあるいは持ち運びされる物体の習性あるいは特性あるいは過去の移動の実績を加味し過去に集積した情報から現在時点の位置を推定しあるいは存在する範囲を絞って限定し、あるいは前記複数の無線タグリーダの間隔を無線タグが通過する時間から当該無線タグの移動速度を算出し、あるいは前記複数の無線タグリーダが当該移動体あるいはあるいは場所を移動させあるいは持ち運びされる物体が移動の際に頻繁に通過するポイントに設置などの手段を用いて無線タグの現在の位置を推定しあるいは標定することができる。
【発明の効果】
【0006】
従来の無線タグシステムでは、無線タグに蓄積された情報を読み出す目的に利用されるものであり、無線タグリーダの読取範囲が制限されるため、無線タグの位置を標定するには多数の無線タグリーダを分散して配置することになり、設備費と設置工事費が高くなる問題が生じる。
本発明の無線タグの位置標定装置では、離散的に配置された多数の無線タグリーダからの情報をセンサネットワークにより集積点に集めて時系列で蓄積し、当該時系列で蓄積された情報から目的とする無線タグの現在の位置を推定しあるいは標定することで、設備費と設置工事費を安価に抑えることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
この発明に係わる無線タグの位置標定装置は、図1に示すように、複数の無線タグリーダ22a、22bが、移動体あるいは場所を移動させあるいは持ち運びされる物体に装着される無線タグ21の位置を標定するために必要な個所に離散的に分散配置され、当該無線タグリーダ22a、22bにより読み取られた無線タグ21の情報をセンサネットワーク31a、31bに接続して情報集積点41にもうけられたセンサネットワーク411により受信し、制御手段412により時系列で記憶され、当該時系列で記憶された無線タグ21の過去の情報から現在の位置を推定処理することで、当該無線タグ21の位置を推定しあるいは標定することができる。

【実施例1】
【0008】
図1は、本発明の一実施例を示すシステム構成図であり、伝送媒体に液体を用いる場合である。図1において、21は無線タグ、213は無線タグ21のアンテナ、22a、22bは無線タグリーダ、223a、223bは無線タグリーダ22a、22bのアンテナ、226a、226bは無線タグリーダ22a、22bの読取範囲、31aはセンサネットワーク、313a、313bはセンサネットワークのアンテナ、41は集積点、411は集積点41に設置されたセンサネットワーク、412は集積点41に設置された制御手段、414は集積点41から外部に情報を出力するための接続点、111は水面あるいは液面である。
無線タグ21が水中の生物などに装着される場合について説明する。
水中の生物の習性から対象とする生物が通常生息する個所あるいは頻繁に移動するルートに沿って無線タグリーダ22a、22bおよびアンテナ223a、223bを設置し、センサネットワーク31a、31bおよびアンテナ313a、313bを接続し、集積点41のセンサネットワーク411およびアンテナ413に向けて、無線タグ21から読み出した情報を発信する。
当該無線タグリーダ22a、22bの読取範囲は226a、226bに示すように比較的に狭い範囲に限られるので、前記生物の全ての移動範囲をカバーすることは難しく、無線タグ21がエリア外に存在する場合が生じる。
【0009】
そこで、前記複数の無線タグリーダ22a、22bの相互間隔が各々の読取可能範囲226a、226bを超えて間隔を置いて配置され、当該複数の無線タグリーダ22a、22bが構成するサービスエリア内を当該無線タグ21が移動する場合、当該複数の無線タグリーダ22a、22bで読み取った当該無線タグ21の情報をセンサネットワーク31a、31bを経由して前記集積点41の制御手段412において、無線タグ21の情報を読み取った無線タグリーダ22a、22bの識別番号とともにタイムスタンプを付加して時系列で記憶する。
各無線タグリーダ22a、22bの位置は予めデータベースに記憶されているので、無線タグ21から読み取った情報を時系列に沿って比較し、当該無線タグ21が装着された水中の生物の習性を加味して、当該無線タグ21の現在の位置を推定することができる。
なお、上記の説明では、伝送媒体が液体であり、無線タグ21が水中の生物などに装着された場合について説明したが、その他の伝送媒体でありその他の移動体あるいは場所を移動させあるいは持ち運びされる物体に装着された場合にも同様な効果が得られる。
また、前記複数の無線タグリーダが当該移動体あるいはあるいは場所を移動させあるいは持ち運びされる物体が移動の際に常時通過しあるいは通過する確率が高いポイントに設置することで、当該無線タグに関する情報を効率よく取得できる。
【実施例2】
【0010】
図2は、本発明の他の実施例を示す制御プログラムのフロー図である。図2において、プログラムの制御手順は、ステップ101により制御をスタートし、ステップ109〜111で終了する。
ステップ101でスタートすると、ステップ102により情報の取得と取得した情報をタイムスタンプを付してメモリに蓄積する。情報の取得はステップ103によりRS232Cを経由してセンサネットワークから取得する。
情報の取得が終わると、ステップ104では、特定の無線タグの位置標定の要求があるか否かフラグを監視し、フラグが立っていれば、ステップ105に進み、フラグが無ければステップ111で終了する。
無線タグの位置標定の要求があれば、ステップ105により当該無線タグに関連する情報を読出し、ステップ106で時間的に真近の情報が存在するかの判定を行う。
【0011】
直近の情報があれば、ステップ107で取得した情報により当該無線タグの位置の標定を行い結果を回答して、ステップ109で終了する。
直近の情報が無ければ、過去の情報と当該無線タグを装着した移動体の習性、あるいは特性、あるいは過去の移動経路から、現在の位置を推定し結果を回答し、ステップ110で終了する。
上記のプログラムにより全体を規定するものではなく、種種の改良プログラムを製作するのを妨げるものではない。
【0012】
以上の説明では、無線タグリーダのアンテナを水中に設置する場合について述べたが、空気中あるいは海水中あるいは物体中などに設置しても同様な効果が得られる。
また、高周波信号を放射しあるいは受信するアンテナを用いる場合について述べたが、超音波トランスデューサーあるいは超音波送波器を用いて超音波信号を発信し、超音波トランスデューサーあるいは超音波受波器を用いて超音波信号を受信し、あるいは発光ダイオードあるいはレーザーダイオードを用いて光信号を発信し、ホトダイオードを用いて光信号を受信することでも同様な効果が得られる。なお、本出願では、超音波トランスデューサーあるいは超音波送受波器と発光ダイオードあるいはレーザーダイオードあるいはホトダイオードを総称して送受波器と呼称するものとする。また、送受波器の送波器あるいは受波器のみを用いる場合でも送受波器として記載している。
また、センサネットワークの代わりに通信回線を用いて情報を集積点に伝送し、あるいはセンサーネットワークに通信回線を接続して広域のネットワークを構成することができる。
また、前記の制御手段の先にインターネット網を接続し、無線タグの位置標定の要求を受け付けることができる。
また、実用的なシステムの例として、上記のバイオテレメトリの他に、無線タグが商品に装着され、無線タグリーダが倉庫の出入口あるいは搬送経路に設置された商品管理システム、あるいは徘徊老人あるいは小学生によって携帯され、無線タグリーダが電柱などに設置された所在場所の標定システムなどが考えられるが、当該例に限らず種種の応用例が考えられる。
また、当該無線タグが自ら有するエネルギーによって高周波信号を発信するアクテイブタグである場合、あるいは無線タグリーダから発信される高周波信号を受信してエネルギーとし応答するパッシブタグである場合の何れの場合にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明は、上記のように構成されているため、離散的に分散配置された多数の無線タグリーダからの情報をセンサネットワークにより集積点に集めて時系列で蓄積し、前記時系列で蓄積された情報から目的とする無線タグの位置を推定しあるいは標定することによって、移動するルートがほぼ決められており、あるいは繰り返され、あるいは移動体の習性あるいは特性が既知である場合などに、移動体あるいは場所を移動させあるいは持ち運びされる物体に無線タグを携帯させあるいは装着して活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例を示すシステム構成図である。
【図2】本発明の他の実施例を示す制御プログラムのフロー図である。
【図3】従来の実施例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0015】
10 50MHz帯送信機
11 アンテナ
12 アンテナ
13 50MHz帯受信機
21 発信手段またはパッシブタグ
21a、21b 無線タグ
22 受信手段またはタグリーダ
22a、22b 無線タグリーダ
31a、31b センサネットワーク
41 情報集積点
111 水面あるいは液面
211 制御部
212 27MHz帯の送信機
213 ループアンテナ
214 アンテナ切替器
215 整流・受信機
221 制御部
222、222a 27MHz帯受信機
222b 27MHz帯送信機
223、223a、223b ループアンテナ
224 インターフエイス部
225 接続端子
313a、313b アンテナ
411 センサネットワーク
412 制御手段
413 アンテナ
414 接続点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波信号あるいは高周波信号あるいは光信号を用いて位置を標定するシステムにおいて、
移動体あるいは場所を移動させあるいは持ち運びされる物体に装着される無線タグと、
当該無線タグに対して超音波信号あるいは高周波信号あるいは光信号を発信し、当該無線タグから再発信されあるいは反射された超音波信号あるいは高周波信号あるいは光信号を受信するための無線タグリーダと、
当該無線タグリーダに接続され、当該無線タグリーダにより受信された情報を中央あるいは情報の集積点に向けて発信するためのセンサネットワークと、
当該センサネットワークにより集積された情報から、前記無線タグの位置を標定するための制御手段から構成され、
当該無線タグリーダが当該無線タグの位置を標定する精度に応じて複数箇所に離散的に配置され、当該複数箇所に配置された無線タグリーダが超音波信号あるいは高周波信号あるいは光信号を発信するタイミングが前記センサネットワークによって制御され、
前記無線タグの情報とそれを読み取った無線タグリーダの情報が当該センサネットワークにより前記制御手段に集積され、
当該集積された情報から個別の無線タグの位置を推定しあるいは標定することを特徴とする無線タグの位置標定装置
【請求項2】
前記複数の無線タグリーダの相互間隔が各々の読取可能範囲を超えて間隔を置いて配置され、当該複数の無線タグリーダが構成する離散的なサービスエリア間を当該無線タグが移動し、当該複数の無線タグリーダを経由して前記制御手段に集積された無線タグの情報に基づいて当該無線タグの位置を推定しあるいは標定することを特徴とする請求項第1項に記載の無線タグの位置標定装置
【請求項3】
前記制御手段が複数の無線タグリーダが読み取った無線タグの情報を受信して時系列で集積し、当該時系列で集積した情報から当該無線タグの現在時点の位置を確定し、あるいは過去に集積した情報から現在時点の位置を推定しあるいは存在する範囲を絞って限定することを特徴とする請求項第1項に記載の無線タグの位置標定装置
【請求項4】
無線タグの現在時点の位置を推定しあるいは存在する範囲を限定する場合、当該移動体あるいは場所を移動させあるいは持ち運びされる物体の習性あるいは特性あるいは過去の移動の実績を加味することを特徴とする請求項第3項に記載の無線タグの位置標定装置
【請求項5】
前記複数の無線タグリーダの間隔を定めて配置し、当該間隔を無線タグが通過する時間から当該無線タグの移動速度を算出し、当該無線タグの現在の位置の推定に利用することを特徴とする請求項第3項に記載の無線タグの位置標定装置
【請求項6】
前記複数の無線タグリーダが当該移動体あるいはあるいは場所を移動させあるいは持ち運びされる物体が移動の際に常時通過しあるいは通過する確率が高いポイントに設置することを特徴とする請求項第3項に記載の無線タグの位置標定装置
【請求項7】
前記無線タグが水中に生息する生物あるいは水中に存在する物体に装着され、無線タグリーダの少なくともアンテナあるいは送受波器が水中に配置されることを特徴とする請求項第1項に記載の無線タグの位置標定装置
【請求項8】
前記無線タグが自ら有するエネルギーによって超音波信号あるいは高周波信号あるいは光信号を発信するアクテイブタグであり、および/あるいは当該無線タグが前記無線タグリーダから発信される超音波信号あるいは高周波信号あるいは光信号を受信してエネルギーとし応答するパッシブタグであることを特徴とする請求項第1項から第7項までに記載の無線タグの位置標定装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−145355(P2008−145355A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−335163(P2006−335163)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(395007299)有限会社アール・シー・エス (51)
【Fターム(参考)】