説明

無線タグ付き食器及びその情報読み取り方法

【課題】 部品点数が少なく、確実に情報が読み取れる、無線タグ付き食器及びその情報読み取り方法を提供すること。
【解決手段】 食器10の高台13の底部12とほぼ直交する面における、底部12の中心との間を結ぶ直線がほぼ90°をなす2箇所に、無線タグ11を取り付け、無線タグ11に記録された情報を、食器10の一方の側面側と、対向する側面側から、それぞれ1回読み取り、2回の読み取り結果の合計を最終読み取り結果とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転寿司やカフェテリア形式の食堂などで使用される、無線で食器の情報を読み取ることが可能な無線タグ付き食器及びその情報の読み取り方法に関わり、特に無線タグとして、マイクロ波帯等の周波数を使用する電波伝播用無線タグを用いた、無線タグ付き食器及びその情報の読み取り方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
いわゆる回転寿司やカフェテリア形式の食堂においては、メニューの価格とメニューを盛り付ける食器を対応させて、利用者が用いた食器の種類と数量を元に料金を算出するシステムが利用されている。料金の算出には食器の目視確認の他に、食器に価格などの情報を記録した無線タグを取り付け、リーダライタで読み取るシステムも実用化されている。
【0003】
従来、このような用途に用いられる無線タグは、125kHzなどの周波数を用いた電磁誘導方式であり、無線タグとリーダライタの間で通信が可能な距離が、比較的短いため、食器の底部に取り付けられている。
【0004】
特許文献1、特許文献2には、回転寿司店などにおける食品の管理に、底部に無線タグを取り付けた食器を用いる方法が開示されている。図6は、前記特許文献に例示されている、従来の電磁誘導方式の無線タグ付き食器を底部からみた斜視図である。図6において、10は食器、12は底部、13は高台、60はコイン形状の電磁誘導方式の無線タグである。
【0005】
しかしながら、電磁誘導方式の無線タグを用いたのでは、前記のように通信距離が短いため、情報の読み取り方法が限定され、回転寿司店において行われているように、食器を積み重ねた状態で料金を精算するには、種々の支障が生じる。
【0006】
これに対処するために、電磁誘導方式よりも通信距離の長い電波伝播方式の無線タグを用いることが考えられる。図7は、底部に電波伝播方式の無線タグを取り付けた食器を底部から見た斜視図である。図7において、70は電波伝播方式の無線タグである。また、図8は、電波伝播方式無線タグの構成を示す斜視図である。図8において、80は無線タグ、81はICチップ、82はアンテナを示す。
【0007】
電波伝播方式の無線タグを用いた場合の問題点として、電波伝播方式は電磁誘導方式に比較して、通信に用いる電波の周波数が非常に高く、水分による減衰が大きいことがある。つまり、食器に食材や水分が残った状態では、通信ができない場合が生じることがあるという欠点がある。
【0008】
これに対処するためには、無線タグを食器の底部ではなく、高台における底部に垂直な面に無線タグを取り付けることが有効であると考えられる。しかし、この場合は、無線タグの情報の読み取りに際し、食器の側面にリーダライタを対向させる必要があるが、高台の全周に無線タグを取り付けない限り、無線タグの情報を読み取れない場合が生じる。
【0009】
特許文献3、特許文献4には、高台の底部と直交する面に、無線タグや無線タグのアンテナを取り付ける技術が開示されているが、これらの食器は、部品点数が多くなり、製造コストの増加や、食器の管理が困難になるなどの問題がある。
【0010】
【特許文献1】特開平8−238157号公報
【特許文献2】特開平9−44753号公報
【特許文献3】特開2000−137778号公報
【特許文献4】特開2001−104137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明は、部品点数が少なく、確実に情報が読み取れる、無線タグ付き食器及びその情報読み取り方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記の課題解決のため、高台に無線タグを取り付ける場合の、無線タグの必要最小限の数量と、高台の周方向における配置、及びリーダライタの操作方法を検討した結果なされたものである。
【0013】
即ち、本発明の無線タグ付き食器は、底部に高台を有し、高台の底部とほぼ直交する面の2箇所に無線タグが取り付けられ、前記無線タグの2箇所の取り付け位置と前記底部の中心部とを結ぶ2本の直線が、ほぼ90°をなすことを特徴とする無線タグ付き食器である。
【0014】
また、本発明においては、食器に取り付けられた無線タグに記録された情報を、前記無線タグ付き食器の一方の側面側と、対向する側面側から、それぞれ1回読み取り、2回の読み取り結果の合計を最終読み取り結果とすることを特徴とする情報読み取り方法を用いる。
【発明の効果】
【0015】
一般に無線タグの通信可能な領域は、無線タグが具備するアンテナと直交する方向の一定範囲に限定される。従って、1個だけ無線タグを取り付けた場合、無線タグの取り付け位置を予め検出していない状態では、リーダライタによる情報の読み取りが確実に行える確率が低い。
【0016】
本発明の無線タグ付き食器では、無線タグを前記のように、食器底面の中心部と高台を結ぶ直線が、ほぼ90°をなす高台の2箇所に無線タグを取り付けているので、無線タグを取り付けた位置に挟まれた領域、つまり食器の外周における連続した1/4以上の領域で、情報の読み取りが可能となる。
【0017】
従って、本発明においては、食器の側面における任意の位置と、食器の中心部を介して対向する他方の側面側にリーダライタを配置して、無線タグの情報を合計2回読み取るので、1回は確実に無線タグの情報を読み取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態について説明する。ここでは、無線タグの取り付け位置と情報の読み取りが可能な範囲との関係について示しながら説明する。
【0019】
図1は、本発明の無線タグ付き食器の一例を示す図で、図1(a)は底面から見た斜視図、図1(b)は底面図である。図1において、11は無線タグを示す。ここでは、図に示したように、無線タグ11は、高台13の底部12と直交する面の、底部12の中心に対して90°をなす位置に、2個貼り付けてある。
【0020】
また、図2は、本発明の無線タグ付き食器の情報をリーダライタで読み取る方法を、模式的に示した図である。図2において、20はリーダライタ、21は読み取った情報を処理するためのコンピュータである。本発明では、図に示したように、破線で示した矢印の方向にリーダライタを動かし、積み重ねた食器10の一方の側面と、食器10の中心を介して対向する側の側面の両方から、無線タグの情報を読み取る。
【0021】
図3は、本発明の無線タグ付き食器の情報の読み取りが可能な領域を示す図で、図3(a)は、無線タグ取り付け位置を示す図、図3(b)は、無線タグの情報の読み取りが可能な領域を示す図である。図3(b)において、数値0,10,20,30,40は情報の読み取りが可能な距離で単位はcmである。
【0022】
また、正16角形の線の周囲に記載した数値0,45,90,135,180,225,270,315は、1個の無線タグ11の貼り付け位置を起点とした食器10の外周方向の角度で単位は度(°)である。つまり、ハッチングを施した領域であれば、リーダライタによる情報の読み取りが可能である。
【0023】
図3(b)によれば、337.5°ないし135°の範囲に、情報の読み取り可能距離が20cm以上である領域が存在することになる。本発明では、図2に示したように無線タグの情報を2回読み取り、その合計を読み取り結果とするので、読み取りエラーの発生を実質的に0とすることが可能である。
【0024】
実際に食器10を10枚重ねた状態で、リーダライタ20と食器10の距離を20cmに設定し、その都度、食器を置く角度をランダムにずらして無線タグの情報の読み取りを10回実施したところ、読み取りエラーの発生は、0であった。つまり合計100枚の食器の情報を正確に読み取ることができた。
【0025】
図4は、比較に供するために検討した、無線タグ11を、食器の底面の中心を介して対向する位置に貼り付けた場合の、無線タグ付き食器の情報の読み取りが可能な領域を示す図で、図4(a)は無線タグ取り付け位置を示す図、図4(b)は無線タグの情報の読み取りが可能な領域を示す図である。
【0026】
図4(b)によれば、情報の読み取り可能距離が20cm以上になる領域は、337.5°ないし22.5°、135°ないし225°という離れた角度範囲に現れることが分かる。つまりリーダライタと食器の距離を20cmとして、図2に示したように読み取りを実施すると、約50%の確率で情報の読み取りエラーが発生することになる。
【0027】
実際に食器10を10枚重ねた状態で、リーダライタ20と食器10の距離を20cmに設定し、無線タグの情報の読み取りを、前記と同様にして10回実施したところ、正確に情報の読み取りができたのは、47枚であった。つまり、読み取りエラーの発生率は、53%であった。
【0028】
図5は、比較に供するために検討した、3個の無線タグ11を、等配分して高台13に貼り付けた場合の、無線タグ付き食器の情報の読み取りが可能な領域を示す図で、図5(a)は無線タグ取り付け位置を示す図、図5(b)は無線タグの情報の読み取りが可能な領域を示す図である。
【0029】
図5(b)によれば、情報の読み取り可能距離が20cmに満たない領域が、45°近傍、180°〜202.5°、292.5°〜315°に現れることが分かる。つまりリーダライタと食器の距離を20cmとして、図2に示したように読み取りを実施すると、約32%の確率で情報の読み取りエラーが発生することになる。
【0030】
実際に食器10を10枚重ねた状態で、リーダライタ20と食器10の距離を20cmに設定し、無線タグの情報の読み取りを、前記と同様にして10回実施したところ、正確に情報の読み取りができたのは、30枚であった。つまり、読み取りエラーの発生率は、70%であった。
【0031】
以上に説明したように、本発明のように食器の高台に無線タグを貼り付け、情報の読み取りを2回行うことで、食器の情報を正確に読み取ることができる。また、従来のこの種の食器では、無線タグを底部に貼り付けてあることから、1枚毎にしか情報の読み取りが行えなかったが、本発明では、複数の食器を重ねた状態でも正確に情報が読み取れる。従って、回転寿司店やカフェテリア形式の食堂における料金精算の効率向上に資するところは非常に大きい。
【0032】
以上に、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、前記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれる。即ち、当業者であれば、なし得る各種変形、修正を含むことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の無線タグ付き食器の一例を示す図。図1(a)は底面から見た斜視図。図1(b)は底面図。
【図2】本発明の無線タグ付き食器の情報をリーダライタで読み取る方法を模式的に示した図。
【図3】本発明の無線タグ付き食器の情報の読み取りが可能な領域を示す図。図3(a)は無線タグ取り付け位置を示す図。図3(b)は無線タグの情報の読み取りが可能な領域を示す図。
【図4】無線タグを食器の底面の中心を介して対向する位置に貼り付けた場合の無線タグ付き食器の情報の読み取りが可能な領域を示す図。図4(a)は無線タグ取り付け位置を示す図。図4(b)は無線タグの情報の読み取りが可能な領域を示す図。
【図5】3個の無線タグを等配分して高台に貼り付けた場合の無線タグ付き食器の情報の読み取りが可能な領域を示す図。図5(a)は無線タグ取り付け位置を示す図。図5(b)は無線タグの情報の読み取りが可能な領域を示す図。
【図6】従来の電磁誘導方式の無線タグ付き食器を底部からみた斜視図。
【図7】底部に電波伝播方式の無線タグを取り付けた食器を底部から見た斜視図。
【図8】電波伝播方式無線タグの構成を示す斜視図。
【符号の説明】
【0034】
10 食器
11,70,80 (電波伝播方式の)無線タグ
12 底部
13 高台
20 リーダライタ
21 コンピュータ
60 (電磁誘導方式の)無線タグ
81 ICチップ
82 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に高台を有し、前記高台の前記底部とほぼ直交する面の2箇所に無線タグが取り付けられ、前記無線タグの2箇所の取り付け位置と前記底部の中心部とを結ぶ2本の直線が、ほぼ90°をなすことを特徴とする無線タグ付き食器。
【請求項2】
請求項1に記載の無線タグ付き食器の無線タグに記録された情報を、前記無線タグ付き食器の一方の側面側と、前記食器の中心部を介して対向する他方の側面側から、それぞれ1回読み取り、前記読み取りの結果の合計を最終読み取り結果とすることを特徴とする無線タグ付き食器の情報読み取り方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−94888(P2006−94888A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281018(P2004−281018)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】