説明

無線タグ距離測定装置および無線タグ距離測定システム

【課題】無線タグ距離測定装置において、距離測定を行うための事前処理を容易にすることを目的とする。
【解決手段】無線タグ距離測定装置10は、拡散処理が施されていないパルス変調信号を送信する。各無線タグは、無線タグ距離測定装置10から送信されたパルス変調信号を受信する。そして、自らに固有に割り当てられたPN符号によってパルス変調信号に拡散処理を施し、拡散処理後の信号を拡散パルス変調信号として送信する。無線タグ距離測定装置10は、各無線タグから送信された拡散パルス変調信号に基づいて各無線タグの固有割り当てPN符号を検出する。無線タグ距離測定装置10は、測定対象PN符号記憶部20に記憶されているPN符号を用いて無線タグまでの距離を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグ固有割り当てPN符号を用いて無線タグまでの距離を測定する無線タグ距離測定装置、およびそのような無線タグ距離測定装置と無線タグとを備えるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
量産工場等では、生産工程または品種ごとに保管位置が定められ製品管理を行うことが多い。このような製品管理を行うため、無線タグ距離測定システムが用いられる。無線タグ距離測定システムでは、管理対象製品に取り付けられた無線タグと距離測定装置との間の無線送受信によって、距離測定装置が無線タグまでの距離を測定する。
【0003】
無線タグまでの距離を測定する際には、距離測定装置はパルス信号を送信する。パルス信号には、距離測定対象の無線タグの固有割り当て符号を含ませる。無線タグは、自らに固有に割り当てられている符号が受信パルス信号に含まれている場合には応答パルス信号を送信する。応答パルス信号を受信した距離測定装置は、パルス信号を送信してから応答パルス信号が受信されるまでの時間に基づいて、無線タグまでの距離を測定する。
【0004】
このような処理によれば、複数の無線タグのうち特定の無線タグまでの距離を測定することができ、距離測定装置から特定の無線タグが付された製品までの距離を測定することができる。
【0005】
無線タグ距離測定システムは、工場における製品管理の他、日用品、小物等の販売を行う小売店、イベント参加者の居場所を管理する必要があるイベント会場等に用いることができる。
【0006】
【特許文献1】特表2006−505018号公報
【特許文献2】特表2005−513629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の無線タグ距離測定システムでは、距離測定装置が距離測定を行うためには、距離測定対象の無線タグの固有割り当て符号を予め取得する必要がある。そのため、情報入力装置等を用いて各無線タグの固有割り当て符号を距離測定装置に記憶させる処理が必要となる。しかし、無線タグ距離測定システムでは、常に同一の無線タグが用いられるとは限らず、新たに無線タグが加えられたり、これまで用いられていた無線タグが不使用となったりする。したがって、このような構成では、システムで用いられる無線タグが変わる度に距離測定装置の記憶内容を変更する必要が生じ、システム管理に労力を要するという問題があった。
【0008】
本発明はこのような課題に対してなされたものである。すなわち、無線タグ距離測定装置において、距離測定を行うための事前処理を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、無線信号の送信タイミングと受信タイミングとに基づいて、距離測定目標物とする無線タグまでの距離を算出する無線タグ距離測定装置であって、パルス信号を無線送信するパルス信号送信部と、前記パルス信号の送信後に到来した無線信号を受信し、受信信号に含まれる無線タグ固有割り当てPN符号を取得する符号取得部と、前記符号取得部が取得した無線タグ固有割り当てPN符号に基づく拡散処理によって拡散信号を生成する拡散信号生成部と、前記拡散信号を無線送信する拡散信号送信部と、前記拡散信号に対して逆拡散処理が施され、前記拡散信号の送信後に到来した逆拡散無線信号を受信する逆拡散信号受信部と、前記拡散信号の送信タイミングと前記逆拡散無線信号の受信タイミングとに基づいて、前記無線タグまでの距離を算出する距離算出部と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る無線タグ距離測定システムは、前記無線タグ距離測定装置と、前記無線タグと、を備え、前記無線タグは、到来した信号を受信する無線受信手段と、前記無線タグの固有割り当てPN符号を含むPN信号と、前記無線受信手段が受信した信号との畳み込み演算を実行する畳み込み演算部と、前記畳み込み演算部によって得られた信号を無線送信する無線送信手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る無線タグ距離測定装置によれば、距離測定を行うための事前処理を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に本発明の実施形態に係る無線タグ距離測定システムの構成を示す。このシステムは、無線タグ距離測定装置10が、無線タグとの間の無線信号の送受信によって無線タグまでの距離を測定するものである。無線タグ12−1〜12−4には、固有のPN符号(PNはPseudo Noiseの略である。)が割り当てられている。図1では、無線タグ12−1〜12−4に対し、固有のPN符号として、それぞれ「01001・・・」、「10011・・・」、「01111・・・」、および「10001・・・」が割り当てられている例を示している。無線タグ距離測定装置10は、距離測定対象とする無線タグをPN符号によって特定する。
【0013】
一般に、PN符号は1および0による擬似雑音パターンを示す。PN符号の値「1」および「0」に対し信号値「1」および「−1」をそれぞれ対応付けることで、PN符号のパターンで値が変化するPN信号を生成することができる。このようなPN信号と処理対象信号との畳み込み演算を行う拡散処理を行うと、処理対象信号の時間長はPN信号の時間長に応じて拡散される。このような拡散信号に対しては、拡散処理に用いられたPN信号との畳み込み演算を行う逆拡散処理を施すことで元の信号を再現することができる。また、互いに異なるPN符号によって拡散処理が施された複数の拡散信号を足し合わせた信号からは、逆拡散処理によって元の信号を抽出することができる。本実施形態に係る無線タグ距離測定システムでは、このようなPN符号の直交性を利用する。
【0014】
距離測定対象とする無線タグまでの距離を測定する際には、無線タグ距離測定装置10は、矩形単発パルス信号等のパルス信号を正弦波信号に乗じたパルス変調信号を生成する。そして、距離測定対象の無線タグの固有割り当てPN符号によって、パルス変調信号に対して拡散処理を施し、拡散パルス変調信号を送信する。
【0015】
拡散パルス変調信号を受信した複数の無線タグのうち、拡散パルス変調信号の拡散処理に用いられたPN符号と自らの固有割り当てPN符号とが一致する無線タグは、受信した拡散パルス変調信号に対して逆拡散処理を施した応答パルス変調信号を送信する。
【0016】
無線タグ距離測定装置10は、応答パルス変調信号を受信すると、拡散パルス変調信号を送信してから応答パルス変調信号が受信されるまでの時間に基づいて、距離測定対象の無線タグまでの距離を算出する。
【0017】
このような処理を実行するための無線タグ距離測定装置10の構成を図2に示す。無線タグ距離測定装置10は、無線タグまでの距離を測定する処理を実行する前に、距離測定が可能な無線タグの固有割り当てPN符号を検出する。ここで、距離測定が可能な無線タグとは、無線タグ距離測定装置10との間で無線信号の送受信を行うことが可能な無線タグを指す。無線タグ距離測定装置10は、符号検出処理によって検出したPN符号を測定対象PN符号記憶部20に記憶する。そして、記憶したPN符号を用いて無線タグまでの距離を測定する。
【0018】
ここでは、距離測定が可能な無線タグの固有割り当てPN符号が、後述の符号検出処理によって測定対象PN符号記憶部20に記憶されているものとし、無線タグまでの距離を測定する距離測定処理について説明する。
【0019】
無線タグ距離測定装置10は、距離測定処理を実行する際には、送信側スイッチ18をスイッチ端子18Bを選択する状態とし、受信側スイッチ42をスイッチ端子42Bを選択する状態とする。これによって、無線送信部24には拡散用畳み込み演算部16の出力信号が入力され、無線受信部40の出力信号は距離算出部44に出力される。
【0020】
パルス変調信号生成部14は、パルス変調信号を生成し拡散用畳み込み演算部16および距離算出部44に出力する。測定対象PN符号記憶部20には、距離測定が可能な無線タグの固有割り当てPN符号が記憶されている。符号選択部22は、ユーザの操作または別に設けられた装置等によって距離測定対象の無線タグが指定されると、指定された無線タグの固有割り当てPN符号を測定対象PN符号記憶部20から読み込む。そして、読み込んだPN符号に基づいてPN信号を生成し拡散用畳み込み演算部16に出力する。
【0021】
拡散用畳み込み演算部16は、パルス変調信号に符号選択部22から出力されたPN信号による畳み込み演算を施し、演算結果を拡散パルス変調信号として送信側スイッチ18を介して無線送信部24に出力する。無線送信部24は、拡散パルス変調信号を無線信号に変換し、測定装置アンテナ26を介して送信する。
【0022】
無線タグ距離測定装置10から送信された拡散パルス変調信号は各無線タグで受信される。図3(a)に無線タグ12の構成を示す。無線タグアンテナ28で受信された拡散パルス変調信号は分波器30に入力される。分波器30はパルス変調信号を畳み込み演算デバイス32に出力する。分波器30は、サーキュレータ、方向性結合器等を用いて構成することができる。
【0023】
無線タグ12の畳み込み演算デバイス32には、無線タグ12に固有に割り当てられたPN符号によって、入力信号に対して畳み込み演算を施し出力するものを用いる。このようなデバイスとしては、SAWデバイス、CCD(Charge Coupled Device)マッチドフィルタ、ディジタルマッチドフィルタ等を用いることができる。SAWデバイスには電源電力を供給する必要があるもの(SAWコンボルバ等)と、電源電力を供給する必要がないものとがある。電源電力を供給する必要がないSAWデバイスを用いた場合には、無線タグ12に電力供給源を搭載する必要がなくなる。
【0024】
また、ディジタルマッチドフィルタ、SAWコンボルバ等は、畳み込み演算を行う際のPN符号を任意に設定することができる。この場合の構成を図3(b)に示す。ここでは、ディジタルマッチドフィルタ34を用いた場合を示している。SAWコンボルバを用いる場合には、ディジタルマッチドフィルタ34をSAWコンボルバに置き換えた構成とすればよい。無線タグ12には、割り当て用のPN符号を記憶する割り当て符号記憶部36およびPN符号設定回路38を設ける。割り当て符号記憶部36には、互いに異なる複数の割り当て用のPN符号を予め記憶させておく。PN符号設定回路38は、割り当て符号記憶部36からPN符号を読み込み、そのPN符号に基づいてディジタルマッチドフィルタ34が処理を実行するよう、ディジタルマッチドフィルタ34の動作状態を設定する。また、割り当て符号記憶部36およびPN符号設定回路38を設ける代わりに、無線タグ12の外部の装置によって、ディジタルマッチドフィルタ34に固有割り当てPN符号を設定する構成としてもよい。ディジタルマッチドフィルタ34を用いる無線タグ12の構成によれば、異なる固有割り当てPN符号を有する複数の無線タグ12に対し、ハードウエアを共通化することができる。
【0025】
畳み込み演算デバイス32は、分波器30から出力された信号に対し、無線タグ12の固有割り当てPN符号によって畳み込み演算を施して分波器30に出力する。分波器30は、畳み込み演算デバイス32から出力された信号を無線タグアンテナ28に出力する。無線タグアンテナ28からは分波器30から出力された信号が送信される。
【0026】
畳み込み演算デバイス32に入力された信号が、固有割り当てPN符号による拡散処理が施された拡散信号である場合には、畳み込み演算デバイス32からは、入力信号に対し逆拡散処理が施された拡散処理前の信号が出力される。一方、畳み込み演算デバイス32に入力された信号が、固有割り当てPN符号とは異なるPN符号による拡散処理が施された拡散信号である場合には、畳み込み演算デバイス32からは、拡散処理前の信号は出力されない。
【0027】
したがって、無線タグアンテナ28で受信された拡散パルス変調信号が、固有割り当てPN符号によって拡散処理が施された信号である場合、畳み込み演算デバイス32からは、拡散パルス変調信号に対し逆拡散処理を施した拡散処理前の信号が出力される。これによって、複数の無線タグのうち、受信した拡散パルス変調信号に拡散処理を施した元のPN符号と、自らの固有割り当てPN符号とが一致する無線タグからは、その拡散パルス変調信号に対して逆拡散処理が施された信号が応答パルス変調信号として送信される。
【0028】
次に、無線タグ距離測定装置10が、無線タグから送信された応答パルス変調信号に対して実行する処理について説明する。無線受信部40は、無線タグから送信された応答パルス変調信号を測定装置アンテナ26を介して受信し、所定の信号レベルとなるまで増幅し、受信側スイッチ42を介して距離算出部44に出力する。
【0029】
距離算出部44は、パルス変調信号生成部14からパルス変調信号が出力されたタイミングと、無線受信部40から応答パルス変調信号が出力されたタイミングとの差を測定する。そして、測定したタイミング差に基づいて、測定装置アンテナ26と無線タグとの間の往復伝播時間を求め、往復伝播時間と無線信号の伝播速度とに基づいて距離測定対象の無線タグまでの距離を算出する。距離算出部44は、距離算出結果を表示部46および結果記憶部48に出力する。表示部46は距離算出結果を表示し、結果記憶部48は距離算出結果を記憶する。ユーザは、表示部46を参照することで無線タグ距離測定装置10から無線タグまでの距離を知ることができる。また、パーソナルコンピュータ等によって構成された読み込み装置によって、結果記憶部48の記憶内容を取得することができる。
【0030】
距離算出部44は、往復伝播時間を算出するときは、信号がパルス変調信号生成部14から出力されてから、測定装置アンテナ26から送信されるまでの遅延時間、ならびに、信号が測定装置アンテナ26で受信されてから、無線受信部40から出力されるまでの遅延時間をタイミング差から減算する。これによって、測定装置アンテナ26の位置を基準とした無線タグまでの距離を算出することができる。これらの遅延時間は、無線タグ距離測定装置10に固有であり、設計の段階で予め求めておくことができる。また、パルス変調信号と応答パルス変調信号とのタイミング差を、これらの信号の立ち上がりタイミングの他、各信号の被変調正弦波の位相差を用いて測定することで、算出される距離の精度を高くすることができる。
【0031】
このようなシステム構成によれば、距離測定対象とする無線タグを指定し、無線タグ距離測定装置10から指定した無線タグまでの距離を測定することができる。例えば、図1に示される固有PN符号割り当てにおいて、距離測定対象として無線タグ12−2を指定した場合、拡散用畳み込み演算部16には無線タグ12−2の固有割り当てPN符号と同一のPN符号「10011・・・」に基づくPN信号が出力される。これによって、無線タグ距離測定装置10からは、無線タグ12−2の固有割り当てPN符号と同一のPN符号「10011・・・」によって拡散処理が施された拡散パルス変調信号が送信される。そして、拡散パルス変調信号を受信した無線タグ12−1〜12−4のうち、PN符号「10011・・・」と同一の固有割り当てPN符号を有する無線タグ12−2が、応答パルス変調信号を送信する。これによって、無線タグ距離測定装置10は、無線タグ12−2までの距離を算出することができる。
【0032】
次に、符号検出処理について説明する。符号検出処理においては、無線タグ距離測定装置10は、拡散処理が施されていないパルス変調信号を送信する。各無線タグは、無線タグ距離測定装置10から送信されたパルス変調信号を受信する。そして、自らに固有に割り当てられたPN符号によってパルス変調信号に拡散処理を施し、拡散処理後の信号を拡散パルス変調信号として送信する。無線タグ距離測定装置10は、各無線タグから送信された拡散パルス変調信号に基づいて各無線タグの固有割り当てPN符号を検出する。
【0033】
符号検出処理の詳細について説明する。無線タグ距離測定装置10は、符号検出処理を実行する際には、送信側スイッチ18をスイッチ端子18Aを選択する状態とし、受信側スイッチ42をスイッチ端子42Aを選択する状態とする。これによって、無線送信部24にはパルス変調信号生成部14の出力信号が入力され、無線受信部40の出力信号はPN符号検出部50に出力される。
【0034】
パルス変調信号生成部14はパルス変調信号を生成し、送信側スイッチ18を介して無線送信部24にパルス変調信号を出力する。無線送信部24は、パルス変調信号を無線信号に変換し、測定装置アンテナ26を介して送信する。
【0035】
無線タグ距離測定装置10から送信されたパルス変調信号は各無線タグで受信される。無線タグアンテナ28で受信されたパルス変調信号は分波器30に入力される。分波器30はパルス変調信号を畳み込み演算デバイス32に入力する。
【0036】
畳み込み演算デバイス32は、分波器30から出力された信号に対し、無線タグ12の固有割り当てPN符号によって畳み込み演算を施して分波器30に出力する。分波器30は、畳み込み演算デバイス32から出力された信号を無線タグアンテナ28に出力する。
【0037】
上述のように、固有割り当てPN符号と同一のPN符号による拡散処理が施された信号を畳み込み演算デバイス32に入力した場合には、入力信号の拡散処理前の信号が畳み込み演算デバイス32から出力される。距離測定処理では、このような畳み込み演算デバイス32の処理を利用する。
【0038】
一方、拡散処理が施されていないパルス変調信号を畳み込み演算デバイス32に入力すると、畳み込み演算デバイス32からは、固有割り当てPN符号によって拡散処理が施された拡散パルス変調信号が出力される。符号検出処理ではこのような処理を利用する。
【0039】
すなわち、畳み込み演算デバイス32は、分波器30から入力されたパルス変調信号に対し、無線タグ12の固有割り当てPN符号によって拡散処理を施して拡散パルス変調信号を生成し、分波器30に出力する。分波器30は、拡散パルス変調信号を無線タグアンテナ28に出力する。無線タグアンテナ28からは拡散パルス変調信号が送信される。
【0040】
このような処理によって、各無線タグは、無線タグ距離測定装置10から送信されたパルス変調信号を受信し、固有割り当てPN符号によって拡散処理を施した拡散パルス変調信号を送信する。無線タグ距離測定装置10は、各無線タグから送信された拡散パルス変調信号を受信する。複数の無線タグから拡散パルス変調信号が送信された場合には、無線タグ距離測定装置10は、複数の拡散パルス変調信号を重ねて受信する。また、現在用いられていない無線タグ、または無線タグ距離測定装置10から送信されたパルス変調信号を受信することができない位置に存在する無線タグからは、拡散パルス変調信号は送信されない。したがって、無線タグ距離測定装置10は、距離測定が可能な無線タグから送信された拡散パルス変調信号を受信することができる。
【0041】
次に、無線タグ距離測定装置10が、各無線タグから送信された拡散パルス変調信号に対して実行する処理について説明する。無線受信部40は、拡散パルス変調信号を測定装置アンテナ26を介して受信する。そして、所定の信号レベルとなるまで受信信号を増幅し、増幅した信号を受信側スイッチ42を介してPN符号検出部50に出力する。
【0042】
図4にPN符号検出部50の構成を示す。PN符号検出部50は、無線受信部40から出力された受信信号から無線タグの固有割り当てPN符号を検出し、測定対象PN符号記憶部20に出力するものである。
【0043】
受信信号記憶部52は、無線受信部40から出力された受信信号を記憶する。総符号判定部54は、無線タグ距離測定システムで採用されている総てのPN符号を記憶する。ここで、無線タグ距離測定システムで採用されている総てのPN符号は、無線タグ距離測定装置10の製造時、据え付け時等に記憶される。ユーザが使用する無線タグの固有割り当てPN符号は、無線タグ距離測定システムで採用されている総てのPN符号のうちのいずれかに該当する。
【0044】
総符号判定部54は、自ら記憶する総てのPN符号のうちの一つを選択し、そのPN符号のパターンで値が変化するPN信号を逆拡散用畳み込み演算部56に出力する。逆拡散用畳み込み演算部56は、そのPN信号と受信信号記憶部52に記憶されている受信信号との畳み込み演算を行い、畳み込み信号をレベル判定部58に出力する。レベル判定部58は、畳み込み信号のレベルが所定の閾値を超えているときは、レベル検出情報を総符号判定部54に出力する。レベル判定部58は、レベル検出情報がレベル判定部58から出力されると、逆拡散用畳み込み演算部56に出力したPN信号を生成する元となったPN符号を測定対象PN符号記憶部20に出力する。測定対象PN符号記憶部20は、総符号判定部54から出力されたPN符号を記憶する。
【0045】
PN符号検出部50は、総符号判定部54が記憶する総てのPN符号のそれぞれについて、順次、受信信号記憶部52に記憶されている受信信号との畳み込み演算、および畳み込み信号のレベル判定を行う。これによって、総符号判定部54が記憶する総てのPN符号のうち、畳み込み信号のレベルが所定の閾値を超えるものが測定対象PN符号記憶部20に出力される。
【0046】
総符号判定部54から出力されたPN信号のパターンを示すPN符号によって拡散処理が施された信号が、受信信号記憶部52に記憶されている受信信号に重畳されている場合、畳み込み信号のレベルはPN符号の直交性によって閾値を超える。この場合、そのPN符号を固有割り当てPN符号とする無線タグから送信された拡散パルス変調信号が、無線タグ距離測定装置10によって受信されたといえる。したがって、閾値を超える畳み込み信号を生成する元となったPN符号を測定対象PN符号記憶部20に記憶することで、距離測定が可能な無線タグの固有割り当てPN符号を測定対象PN符号記憶部20に記憶することができる。
【0047】
このような処理によって、PN符号検出部50は、無線タグ距離測定システムで採用されている総てのPN符号のうち、距離測定が可能な無線タグの固有割り当てPN符号と一致するものを測定対象PN符号記憶部20に出力する。これによって、測定対象PN符号記憶部20は、距離測定が可能な無線タグの固有割り当てPN符号を記憶する。無線タグ距離測定装置10は、上述の距離測定処理により、測定対象PN符号記憶部20に記憶されているPN符号を用いて無線タグまでの距離を測定する。
【0048】
例えば、図1に示すPN符号割り当てにおいて符号検出処理を実行する場合について説明する。図5に示すように、無線タグ距離測定装置10からパルス変調信号が送信されることにより、無線タグ12−1〜12−4からは、それぞれ、PN符号「01001・・・」、「10011・・・」、「01111・・・」、および「10001・・・」によって拡散処理が施された拡散パルス変調信号が送信される。これによって、測定対象PN符号記憶部20には、PN符号「01001・・・」、「10011・・・」、「01111・・・」、および「10001・・・」が記憶される。したがって、無線タグ距離測定装置10は、無線タグ12−1〜12−4までの各距離を、距離測定処理に基づいて求めることができる。
【0049】
本実施形態に係る無線タグ距離測定システムにおいては、符号検出処理を実行することにより、距離測定が可能な無線タグの固有割り当てPN符号を無線タグ距離測定装置10が取得する。符号検出処理は、無線タグ距離測定装置10と無線タグとの間の無線信号の送受信に基づく処理であるため、無線タグの各固有割り当てPN符号を無線タグ距離測定装置10に記憶させるための情報入力装置等を別途備える必要はない。したがって、距離測定を行うための事前処理を容易に行うことができる。
【0050】
さらに、本発明の実施形態に係る無線タグ距離測定装置システムによれば、次のような効果を得ることができる。上記のように、無線タグ距離測定装置10が無線タグまでの距離を測定する場合、測定対象の無線タグの固有割り当てPN符号を用いる。したがって、距離測定が可能な総ての無線タグについて距離測定を行う場合には、無線タグ距離測定装置10は、距離測定が可能な総ての無線タグの各固有割り当てPN符号を用いる。
【0051】
ところが、符号検出処理を行わない構成では、無線タグ距離測定システムで採用されている総てのPN符号のうち、いずれのPN符号が距離測定が可能な無線タグに割り当てられているかを、無線タグ距離測定装置10が認識することがない。そのため、距離測定が可能な総ての無線タグについて距離測定を行う場合には、無線タグ距離測定システムで採用されている総てのPN符号のそれぞれについて拡散パルス変調信号を送信し、応答パルス変調信号の送信があった無線タグについて距離測定を行うこととなる。このような処理では、採用PN符号の総てについて拡散パルス変調信号を送信する過程を経ることとなるため、処理時間が長くなるという問題が生じる。
【0052】
本発明の実施形態に係る無線タグ距離測定装置10によれば、符号検出処理によって、無線タグ距離測定システムで採用されている総てのPN符号のうち、距離測定が可能な無線タグに割り当てられているものを測定対象PN符号記憶部20に記憶させることができる。これによって、距離測定が可能な総ての無線タグについて距離測定を行う場合には、測定対象PN符号記憶部20に記憶されているPN符号のそれぞれについて処理を実行すればよいこととなり、処理を迅速に行うことができる。なお、このような処理は、測定対象PN符号記憶部20に記憶されているPN符号を符号選択部22が順次選択し、当該選択に基づく距離測定処理を実行すればよい。
【0053】
図6に変形例に係るPN符号検出部60の構成を示す。図4のPN符号検出部50と同一の構成部については同一の符号を付してその説明を省略する。PN符号検出部60は、無線タグ距離測定システムにおいて採用されている総てのPN符号につき、並列的に、受信信号との畳み込み演算および畳み込み信号のレベル判定を行う。
【0054】
単一符号判定部62、逆拡散用畳み込み演算部56、およびレベル判定部58は、それぞれ、無線タグ距離測定システムにおいて採用されているPN符号の数だけ設けられる。異なる単一符号判定部62は異なるPN符号を記憶し、記憶しているPN符号のパターンで値が変化するPN信号を対応する逆拡散用畳み込み演算部56に出力する。逆拡散用畳み込み演算部56は、受信信号記憶部52に記憶されている受信信号と、対応する単一符号判定部62から出力されたPN信号との畳み込み演算を行い、対応するレベル判定部58に畳み込み信号を出力する。レベル判定部58は、畳み込み信号のレベルが所定の閾値を超えているときは、対応する単一符号判定部62にレベル検出情報を出力する。単一符号判定部62は、レベル検出情報がレベル判定部58から出力されると、自らが記憶するPN符号を測定対象PN符号記憶部20に出力する。測定対象PN符号記憶部20は、単一符号判定部62から出力されたPN符号を記憶する。
【0055】
このような構成によれば、無線タグ距離測定システムにおいて採用されている総てのPN符号について、並列的に畳み込み演算およびレベル判定を行うことができる。これによって、符号検出処理を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】無線タグ距離測定システムの構成を示す図である。
【図2】無線タグ距離測定装置の構成を示す図である。
【図3】無線タグの構成を示す図である。
【図4】PN符号検出部の構成を示す図である。
【図5】符号検出処理の具体例を説明する図である。
【図6】応用例に係るPN符号検出部の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
10 無線タグ距離測定装置、12,12−1〜12−4 無線タグ、14 パルス変調信号生成部、16 拡散用畳み込み演算部、18 送信側スイッチ、18A,18B スイッチ端子、20 測定対象PN符号記憶部、22 符号選択部、24 無線送信部、26 測定装置アンテナ、28 無線タグアンテナ、30 分波器、32 畳み込み演算デバイス、34 ディジタルマッチドフィルタ、36 割り当て符号記憶部、38 PN符号設定回路、40 無線受信部、42 受信側スイッチ、42A,42B スイッチ端子、44 距離算出部、46 表示部、48 結果記憶部、50,60 PN符号検出部、52 受信信号記憶部、54 総符号判定部、56 逆拡散用畳み込み演算部、58 レベル判定部、62 単一符号判定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号の送信タイミングと受信タイミングとに基づいて、距離測定目標物とする無線タグまでの距離を算出する無線タグ距離測定装置であって、
パルス信号を無線送信するパルス信号送信部と、
前記パルス信号の送信後に到来した無線信号を受信し、受信信号に含まれる無線タグ固有割り当てPN符号を取得する符号取得部と、
前記符号取得部が取得した無線タグ固有割り当てPN符号に基づく拡散処理によって拡散信号を生成する拡散信号生成部と、
前記拡散信号を無線送信する拡散信号送信部と、
前記拡散信号に対して逆拡散処理が施され、前記拡散信号の送信後に到来した逆拡散無線信号を受信する逆拡散信号受信部と、
前記拡散信号の送信タイミングと前記逆拡散無線信号の受信タイミングとに基づいて、前記無線タグまでの距離を算出する距離算出部と、
を備えることを特徴とする無線タグ距離測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線タグ距離測定装置と、
前記無線タグと、
を備え、
前記無線タグは、
到来した信号を受信する無線受信手段と、
前記無線タグの固有割り当てPN符号を含むPN信号と、前記無線受信手段が受信した信号との畳み込み演算を実行する畳み込み演算部と、
前記畳み込み演算部によって得られた信号を無線送信する無線送信手段と、
を備えることを特徴とする無線タグ距離測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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