無線リレー伝送システム
【課題】情報を中継してリレー伝送する子機と親機を有するシステムにおいて、リレー伝送ルートを最適化して子機の消費電力を低減し、子機からの状態収集時間を短縮することのできる無線リレー伝送システムを提供する。
【解決手段】子機20は、親機10から末端子機20までの中継順番が記録された経路構築電文を親機20から受信し、次の中継先となる子機20へ送信する電文中継手段と、他の子機20が送信した経路構築電文が受信できるかどうかを判定し、受信できた場合にはその経路構築電文から通信可能な中継先情報を抽出する抽出手段と、を有し、親機10から末端末機20までの下り経路は、各子機が順次中継して経路構築電文を伝送し、末端子機20から親機10までの上り経路は、通信可能な中継先情報に基づいて下り経路と比べて中継回数の少ない経路を利用する。
【解決手段】子機20は、親機10から末端子機20までの中継順番が記録された経路構築電文を親機20から受信し、次の中継先となる子機20へ送信する電文中継手段と、他の子機20が送信した経路構築電文が受信できるかどうかを判定し、受信できた場合にはその経路構築電文から通信可能な中継先情報を抽出する抽出手段と、を有し、親機10から末端末機20までの下り経路は、各子機が順次中継して経路構築電文を伝送し、末端子機20から親機10までの上り経路は、通信可能な中継先情報に基づいて下り経路と比べて中継回数の少ない経路を利用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
中継順に並んだ複数の子機と、各子機が取得した情報を収集する親機と、を含み、子機が他の子機を介して情報を中継する無線リレー伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、センサを有する複数の子機により様々な情報を取得し、この情報を子機の並び方向に順次中継して子機列端の親機へ無線伝送することにより情報収集を行う目的で無線機を利用した無線リレー伝送システムが知られている。例えば、特許文献1には、無線機を利用して、送電線、電柱や電灯等の架空送電線の状態を監視する架空送電線鉄塔基別監視システムが開示されている。この監視システムは、鉄塔列内のいずれか1基の鉄塔の無線機(子機)が何らかの原因により通信不能となった時にリレー伝送が途絶えてしまうという問題を回避するため、鉄塔列の両端に情報収集局(親機)を配置し、いずれかの無線機にリレー伝送が不能な障害が生じた場合には、その障害を生じた前後の無線機から鉄塔列の先端及び後端へ向かう2方向のリレー伝送ルートを形成させ、先端へ向かうリレー伝送ルートにより、リレー伝送ルート上の各鉄塔のセンサの情報を情報収集局にて収集すると共に、後端へ向かうリレー伝送ルートにより、各鉄塔のセンサ情報を後端側の情報収集局で収集するものである。
【0003】
上記システムは、ある無線機が故障してもリレー伝送が可能であるものの、単方向伝送のため、親機が子機の状態を随時収集するいわゆるポーリング方式ではなく、単方向から周期的に状態をリレー伝送する方式である。周期的にリレー伝送することにより、ほぼリアルタイムで状態を収集することが可能であるが、子機への余分な通信が発生する場合がある。一方、マルチホップ伝送が可能でポーリングを行える通信方式としては、非特許文献1に示すようなAODVと呼ばれる通信プロトコルがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−229715号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】AODV(Ad−hoc On−Demand Distance Vector Routing):RFC3561
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図17は、親機101からの要求により子機102−1〜102−nまでの情報を収集する従来の無線リレー伝送システム100を示している。この無線リレー伝送システム100において、非特許文献1の伝送方式を用いて子機一台毎にポーリングをすると必然的に親機周辺の子機の送受信回数が増え消費電流が増加する。特に、太陽電池と二次電池で稼働するような子機102は、特定の子機102へのポーリングを行うことで親機101の近傍に配置された子機102−1の通信負荷が増加し、消費電流増加により子機102−1の稼働ができなくなる場合がある。また、各子機(102−1〜102−n)にポーリングを行うと各子機102からの状態収集に時間を要する。一方、無線機の消費電力を低減するために間欠受信にて消費電力の低減は可能となるが、他方、間欠受信の子機に対してポーリングを行うとさらに時間を要することになる。
【0007】
そこで、本発明では、情報を中継してリレー伝送する子機と親機を有するシステムにおいて、リレー伝送ルートを最適化して子機の消費電力を低減し、子機からの状態収集時間を短縮することのできる無線リレー伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のような目的を達成するために、本発明に係る無線リレー伝送システムは、中継順に並んだ複数の子機と、各子機が取得した情報を収集する親機と、を含み、子機が他の子機を介して情報を中継する無線リレー伝送システムにおいて、子機は、親機から末端子機までの中継順番が記録された経路構築電文を親機から受信し、次の中継先となる子機へ送信する電文中継手段と、他の子機が送信した経路構築電文が受信できるかどうかを判定し、受信できた場合にはその経路構築電文から通信可能な中継先情報を抽出する抽出手段と、抽出手段によって抽出した中継先情報を記憶する記憶手段と、を有し、親機から末端末機までの下り経路は、各子機が順次中継して経路構築電文を伝送し、末端子機から親機までの上り経路は、記憶手段に記憶された通信可能な中継先情報に基づいて下り経路と比べて中継回数の少ない経路を利用することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る無線リレー伝送システムにおいて、子機は、通信可能な中継先の子機へ電文を送信した後、抽出手段によりその子機が次の子機へ電文を中継していないと判断した場合は、下り経路の場合には中継順番を1つ増やした子機、上り経路の場合には中継順番を1つ減らした子機に電文を送信することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る無線リレー伝送システムにおいて、子機は、下り経路において、記憶手段に記憶された中継先情報を使用しても末端子機まで中継ができないと判定した場合には、上り経路に電文を送信することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る無線リレー伝送システムにおいて、親機から末端子機までの下り経路の先に別の親機を配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る無線リレー伝送システムを用いることにより、末端子機から親機へ送信する上り経路を下り経路より中継回数の少ない経路とすることで、中継しない子機の消費電力の低減が可能となり、電源不足を低減することが可能となる。また、上り経路の中継回数を減らすことにより送信時間の短縮が可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る親機と子機とを有する無線リレー伝送システムの構成を示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る無線リレー伝送システムの通信タイミングを説明する説明図である。
【図3】図2の無線リレー伝送システムで使用される電文の内容を説明する説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る経路構築処理の概要を説明する説明図である。
【図5】図4に示した経路構築処理におけるルーティングテーブルの作成処理を説明する説明図である。
【図6】図5に示したルーティングテーブルを用いて少ない中継回数で上り経路の中継を行う処理を説明する説明図である。
【図7】図5に示したルーティングテーブルを用いて下り経路の途中で折り返し送信を行う場合の説明図である。
【図8】図4から図7に示した経路構築処理の流れを示すフローチャート図である。
【図9】本実施形態に係る状態収集処理の概要を説明する説明図である。
【図10】図9に示した状態収集処理における中継不良が発生した場合の処理の流れを説明する説明図である。
【図11】図9から10の状態収集処理の流れを示すフローチャート図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る状態収集処理の概要を説明する説明図である。
【図13】図12に示した状態収集処理において、中継不良が発生した場合の処理の流れを説明する説明図である。
【図14】図13に示した状態収集処理において、中継ができず、折り返し送信の流れを説明する説明図である。
【図15】図12から図14の状態収集処理の流れを示すフローチャート図である。
【図16】本発明の変形例に係る状態収集処理の概要を説明する説明図である。
【図17】従来の無線リレー伝送処理の流れを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0015】
図1は、本実施形態で使用した親機10と複数の子機20とを有する無線リレー伝送システム1を示している。親機10は、管理用のコンピュータ(PC)に接続された無線機であり、PCと接続するための変換部14と、無線通信をするための無線部12と、無線部12に接続されたアンテナ11と、無線部12と変換部14の制御を司り、CPU,RAM及びROMを有する制御部13と、外部から供給されたDC電源にて親機に電力を供給する電源部15と、を有している。また、子機20は、農地の気温、湿度、日照及び雨量を測定するセンサを有し、親機10へ測定データを送信する農業用環境測定機の無線機を構成する。子機20は、各種センサからの入力をデジタルデータに変換する変換部24と、無線通信をするための無線部22と、無線部22に接続されたアンテナ21と、太陽光により電力を発生する太陽電池26と、太陽電池26で発電した電力を蓄える蓄電池27と、DC電源入力、太陽電池及び蓄電池27を制御する充電制御部を有する電源部25と、無線部22と変換部24と電源部25の制御を司り、CPU,RAM及びROMを有する制御部23と、を有している。
【0016】
本実施形態で使用した無線は、見通し距離にて伝送が可能で消費電力の少ない特定小電力無線(400MHz帯、950MHz帯など)を利用し、送受信するデータ量に応じて通信速度が1200bps,4800bps程度であれば400MHzの周波数帯を使用し、通信速度が50kbps,100kbps程度であれば950MHzの周波数帯を使用した。
【0017】
本実施形態では、農地の区画に子機20を所定間隔で順番に並べて配置し、各区画の情報を親機10に接続された管理用のコンピュータにて収集する構成とした。このため、子機20にはDC電源を接続することができず、太陽電池の電力で駆動する必要がある。そこで、子機20の消費電力を低減させる目的で図2に示すような間欠受信による通信タイミングを採用した。図2の横軸は時間軸であり、上側に受信側、下側に送信側の送受信タイミングを示している。本実施形態では受信処理における消費電力を低減させるために、例えば、N=500msで受信動作を実行させ、その他はスリープ状態とすることで消費電力の低減を図っている。また、送信処理では、実電文を送信する前にプリアンブルをNmsec以上繰り返し送信することで、間欠受信であってもプリアンブルの後に送信される電文を受信可能にした。
【0018】
図3には実電文のデータ構成を示している。プリアンブルでは、ビット同期、フレーム同期、システムID、送信先ID、送信元ID及びエラーチェック用のCRCを繰り返し送信し、受信側の準備が整った後にビット同期、フレーム同期、システムID,送信元ID,送信先ID、電文種別、データ長、データ及びCRCを送信することになる。なお、電文種別には、後述する経路構築電文と状態収集電文がある。
【0019】
(第1の実施形態):第1の実施形態では、経路構築構文を利用して各子機のルーティングテーブルを作成することで、子機の中継回数の削減と、消費電力削減を目指した。図8には経路構築処理の流れを示すフローチャートを示し、以下、図4〜図7を用いて経路構築処理の流れを説明する。
【0020】
図8のステップS10を実行すると、親機10から子機20に対して中継順番が送信される。この処理は、親機10の指示をトリガにして子機の通信状況を確認すると共に個々の子機への中継情報を調査するものである。図4に示すように、親機10は、通常運用を開始する前に一度、親機10に近い先頭子機20−1から末端子機20−nまでの中継順番を格納した「経路構築電文」を先頭子機20−1から末端子機20−nまで中継させる。無線リレー伝送システムでは、親機10から見通し距離毎に子機20を配置する際、予め設定されている子機IDと配置順番が分かっていることから、この情報を管理用コンピュータに記憶し、配置順番を元にして経路構築電文31を親機10から子機20−1へ送信する。
【0021】
図8のステップ12において、子機20−1は親機10から受信した経路構築電文の中継順番を参照して、中継先が子機20−2(識別子:子機2ID)であることを抽出して子機20−2へ経路構築電文31を送信する。同様にして子機20−2から子機20−3・・・子機20−n−1から末端子機20−n中継されることになる。この時、子機20では、経路構築電文31の情報及び、自装置近傍の子機からの無線通信が受信できるかどうかを試すことになる。
【0022】
図5の子機20−5は、経路構築電文31から上り経路32のルーティングテーブルと下り経路33のルーティングテーブルとを抽出し、間欠受信により受信可能な電界強度を有する送信信号を受信することで自装置(子機20―5)近傍の子機の通信状況を調べる。このルーティングテーブルから、自装置から遠いのは子機20−2(子機2ID)と子機20−7(子機7ID)であることが分かる(図8のステップS14)。
【0023】
図8のステップS16において、末端子機20−nまで中継が行われたかどうかを判定し、末端まで中継が出来ていない場合には、中継を継続する。末端機20−nまで中継が終わること、子機(20−3,20−5,20−7)は図6のルーティングテーブル34,35,36を得ることができる。図8のステップS18において、例えば、子機20−7(子機7ID)が上り経路で経路構築文伝送を行う場合には、ルーティングテーブル36の上り経路にて子機20−5(子機5ID)を選択し、ステップS20において、遠い子機へ経路構築電文を送信することになる。同様に、子機20−5(子機5ID)はルーティングテーブル34の上り経路にて子機20−3(子機3ID)を選択して経路構築電文を送信し、子機20−3(子機3ID)はルーティングテーブル35の上り経路にて子機20−1(子機1ID)を選択して経路構築電文を送信する。最後に、子機20−1(子機1ID)は親機10へ経路構築電文を送信した後、図8のステップS22において親機10まで中継したと判定して一連の処理が終了する。よって、図6に示すように上り経路では、下り経路に比べて少ない中継回数(2回)にて親機10に経路構築電文が返信されることになる。
【0024】
次に、子機に何らかの通信不良が発生した場合の処理について説明する。図7はルーティングテーブルを用いて下り経路の途中で折り返し送信を行う場合を示している。日照不足やデータ中継の増加に伴い蓄電池の電力が低下する場合には、通信不良が発生する。そこで、図7の子機20−5(子機5ID)は子機20−6(子機6ID)又は子機20−7(子機7ID)へ中継を試みるものの、子機20−6(子機6ID)又は子機20−7(子機7ID)が次の子機に通信を行っていないと判断した場合には、下り経路における中継不良と判断し、経路構築電文を上り経路に切り替えて親機方向へ中継する。この処理により、親機10は子機20−5までのルーティングテーブル作成完了を認識できる。このように「経路構築電文」を通常運用をする前または子機の追加または削除による経路構成の変更があった場合などに利用することで、通信状況のモニタとして活用できる。
【0025】
次に、状態収集電文による情報の収集について、図11のフローチャートと図9〜図12を用いて説明する。状態収集を開始すると、図11のステップS30において、子機からのセンサ情報を取得して状態収集電文のデータ部に各子機の状態データを追加すべく、親機10は、図9の状態収集電文41に送信元を親機10、送信先を末端子機20−nと設定して状態収集電文41を子機20−1(子機1ID)に送出する。さらに、子機20−1は子機20−2へ中継を行うことになる(ステップS32)。
【0026】
子機20−1は、ルーティングテーブルを有し、下り経路において、状態収集電文41は子機20−1の下り経路のルーティングテーブルにおいて一番近い子機20−2へ送信する。次に、子機20−2は自装置の状態を状態収集電文41に格納すると共に、自装置のルーティングテーブルを参照して、下り経路で自装置に一番近い子機(ステップS34)に状態収集電文を送信する(ステップS38)。もし、一番近い子機に電文を送信できない場合はその次に自装置に近い子機に状態収集電文を送信する(ステップS36)。
【0027】
中継された状態収集電文41が末端子機20−nまで到達しない場合にはステップS40にて折り返す。末端子機20−nまで到達した場合にはステップS42に移り、上り経路は中継回数が少なくなるように、上り経路用ルーティングテーブルの中で、一番遠い子機20−6を選択し、ステップS44において状態収集電文41を送信するようにする。なお、ステップS44において、一番遠い子機に送信できない場合は、次に遠い子機(手前側)に電文を送信して親機10まで状態収集電文を送信する。つまり、子機20が経路構築電文に基づいてルーティングテーブルを作成し、子機20の近傍の通信状況の確認と共にルーティングテーブルに基づいて中継回数を削減することによりその後の状態収集電文による各子機の情報を収集においても中継回数を削減することが可能となる。なお、親機まで中継された場合には一連の処理を終了する(ステップS46)。
【0028】
(第2の実施形態):第2の実施形態は、第1の実施形態で行っていた経路構築電文と状態収集電文を分けて送信することなく、子機の中継順番に従って状態収集電文の送信において通信可能な子機を探すことで末端子機から親機までの上り経路において中継回数の削減を実現するものである。このような処理により経路構築電文と状態収集電文を1回の電文送信で済ませることが可能であり、ルーティングテーブルも使用しない。さらに、末端子機の先に別の親機を通信可能な距離に配置することにより経路構築電文を利用せず、親機の位置を随時変更できる。
【0029】
状態収集電文による情報の収集について、図15のフローチャートと図12〜14を用いて説明する。図12は第2の実施形態に係る状態収集処理の概要を示している。図12の中継順番と状態情報が記録された複合電文42には、子機の中継先IDと子機の状態を記憶させることができることから、この複合電文42を使用して中継と状態収集が可能となる。図15の状態収集が開始されると、ステップS50において、親機10は末端子機までの中継順番と状態情報を複合電文42に格納して子機20−1に送信する。次に、ステップS52において、子機は状態収集電文中の中継順番を参照し、子機の状態を複合電文42にセットして次の子機20−2に送信する(ステップS54)。子機はステップS56にて次の子機20−2が送信する電文の受信を試みて、子機20−2が中継をするかどうかを判定する。もし、子機20−2が中継を行った場合には電文に情報が付加(ステップS58)され、ステップS64にて末端子機まで中継が終了していない場合にはステップS52に戻る。
【0030】
次に、通信不良が発生した場合の処理について図13を用いて説明する。図13には、子機20−3(子機3ID)が通信不良の状況を示している。図15のステップS56において、子機20−2から子機20−3への送信を確認する。ステップS56で間欠受信の数周期にわたり子機20−3がなんら送信していない「No」と子機20−2が判断すると、ステップS60の次の次の子機20−4へ送信を行い、正常に送信された場合には複合電文に情報が追加される(ステップS62)。この場合、子機20−3(子機3ID)の状態収集が「エラー:X」つまり、複合電文に情報が追加されなかったことを記録して以下処理を継続することになる。このような処理をすることで、通信不良が発生した子機を飛び越えて中継が継続可能となる。次に、図14を用いて子機20−4,20−5が通信不良となった場合の処理の流れを説明する。
【0031】
図15のステップ56において、子機20−3(子機3ID)から子機20−4(子機4ID)への通信が失敗し、さらに、ステップS60において子機20−5(子機5ID)への通信が失敗した場合、下り経路への中継ができない。ここで、子機20−3(子機3ID)は、子機20−2、子機20−1への複合電文42が受信できたとする。上り経路で親機10に電文を送る場合は、子機20−2より最も遠い子機20−1に送信した方が親機10までの中継回数が少ないことから、ステップS66において、上り経路で複合電文42を遠い子機である子機20−1へ送信を行い、ステップS70において、親機10まで中継を繰り返し行うことになる。このように子機20は上り経路の中継回数の少なくなる最も遠い中継先子機を複合電文と対にして記録することで、ルーティングテーブル相当の機能を実現することが可能となる。なお、図14において、子機20−6、子機20−7から末端子機20−nまでの状態収集が困難となることから、本実施形態の応用例を図16に示す。
【0032】
図16は、末端機20−nと通信可能な距離に親機Aを配置したものである。親機A(10A)は子機1Aから末端機20A−nまでの状態収集を行うものであるが、必要に応じて子機20−6、子機20−7から末端子機20−nまでの状態収集を行うことも可能である。通常、親機10と親機A(10A)は管理用のコンピュータを介して通信が可能であることから、親機A(10A)は親機10からの不具合通報により残りの子機20−7から末端子機20−nまでの状態収集を収集することが可能である。
【0033】
以上、上述したように、本実施形態に係る無線リレー伝送システムを用いることにより、次のような5つの効果がある。(1)下り経路を順次リレー、上り経路を中継回数の少ない経路とすることで最短時間で各子機の情報を収集できる。これにより各子機の消費電流も低減できる。(2)一時的な電波障害や、特定子機の異常も代替え経路で通信できる。(3)代替経路は自動的に設定されているので各子機への通信経路設定を不要にできる。(4)親機から末端の子機まで中継伝送が不可能な場合でも、途中で折り返すことができるので縮小運転が可能となる。(5)図16の場合は、親機の位置を変えても通信が可能となる。これを利用することで万一、子機の異常により末端子機までの状態を収集できない場合でも、逆サイドから状態を収集すれば、異常子機を除いた各子機の状態を収集することも可能となる。
【0034】
なお、本実施形態では、農業用センサからの情報収集に関するシステムについて説明したが、これに限定するものではなく、電柱、街灯などの状態を監視するシステムに応用しても良い。
【符号の説明】
【0035】
1,100 無線リレー伝送システム、10,101 親機、11,21 アンテナ、12,22 無線部、13,23 制御部、14,24 変換部、15,25 電源部、20,20A,102 子機、26 太陽電池、27 蓄電池、31 経路構築電文、32 子機上り経路、33 子機下り経路、34,35,36 ルーティングテーブル、41 状態収集電文、42 複合電文。
【技術分野】
【0001】
中継順に並んだ複数の子機と、各子機が取得した情報を収集する親機と、を含み、子機が他の子機を介して情報を中継する無線リレー伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、センサを有する複数の子機により様々な情報を取得し、この情報を子機の並び方向に順次中継して子機列端の親機へ無線伝送することにより情報収集を行う目的で無線機を利用した無線リレー伝送システムが知られている。例えば、特許文献1には、無線機を利用して、送電線、電柱や電灯等の架空送電線の状態を監視する架空送電線鉄塔基別監視システムが開示されている。この監視システムは、鉄塔列内のいずれか1基の鉄塔の無線機(子機)が何らかの原因により通信不能となった時にリレー伝送が途絶えてしまうという問題を回避するため、鉄塔列の両端に情報収集局(親機)を配置し、いずれかの無線機にリレー伝送が不能な障害が生じた場合には、その障害を生じた前後の無線機から鉄塔列の先端及び後端へ向かう2方向のリレー伝送ルートを形成させ、先端へ向かうリレー伝送ルートにより、リレー伝送ルート上の各鉄塔のセンサの情報を情報収集局にて収集すると共に、後端へ向かうリレー伝送ルートにより、各鉄塔のセンサ情報を後端側の情報収集局で収集するものである。
【0003】
上記システムは、ある無線機が故障してもリレー伝送が可能であるものの、単方向伝送のため、親機が子機の状態を随時収集するいわゆるポーリング方式ではなく、単方向から周期的に状態をリレー伝送する方式である。周期的にリレー伝送することにより、ほぼリアルタイムで状態を収集することが可能であるが、子機への余分な通信が発生する場合がある。一方、マルチホップ伝送が可能でポーリングを行える通信方式としては、非特許文献1に示すようなAODVと呼ばれる通信プロトコルがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−229715号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】AODV(Ad−hoc On−Demand Distance Vector Routing):RFC3561
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図17は、親機101からの要求により子機102−1〜102−nまでの情報を収集する従来の無線リレー伝送システム100を示している。この無線リレー伝送システム100において、非特許文献1の伝送方式を用いて子機一台毎にポーリングをすると必然的に親機周辺の子機の送受信回数が増え消費電流が増加する。特に、太陽電池と二次電池で稼働するような子機102は、特定の子機102へのポーリングを行うことで親機101の近傍に配置された子機102−1の通信負荷が増加し、消費電流増加により子機102−1の稼働ができなくなる場合がある。また、各子機(102−1〜102−n)にポーリングを行うと各子機102からの状態収集に時間を要する。一方、無線機の消費電力を低減するために間欠受信にて消費電力の低減は可能となるが、他方、間欠受信の子機に対してポーリングを行うとさらに時間を要することになる。
【0007】
そこで、本発明では、情報を中継してリレー伝送する子機と親機を有するシステムにおいて、リレー伝送ルートを最適化して子機の消費電力を低減し、子機からの状態収集時間を短縮することのできる無線リレー伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のような目的を達成するために、本発明に係る無線リレー伝送システムは、中継順に並んだ複数の子機と、各子機が取得した情報を収集する親機と、を含み、子機が他の子機を介して情報を中継する無線リレー伝送システムにおいて、子機は、親機から末端子機までの中継順番が記録された経路構築電文を親機から受信し、次の中継先となる子機へ送信する電文中継手段と、他の子機が送信した経路構築電文が受信できるかどうかを判定し、受信できた場合にはその経路構築電文から通信可能な中継先情報を抽出する抽出手段と、抽出手段によって抽出した中継先情報を記憶する記憶手段と、を有し、親機から末端末機までの下り経路は、各子機が順次中継して経路構築電文を伝送し、末端子機から親機までの上り経路は、記憶手段に記憶された通信可能な中継先情報に基づいて下り経路と比べて中継回数の少ない経路を利用することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る無線リレー伝送システムにおいて、子機は、通信可能な中継先の子機へ電文を送信した後、抽出手段によりその子機が次の子機へ電文を中継していないと判断した場合は、下り経路の場合には中継順番を1つ増やした子機、上り経路の場合には中継順番を1つ減らした子機に電文を送信することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る無線リレー伝送システムにおいて、子機は、下り経路において、記憶手段に記憶された中継先情報を使用しても末端子機まで中継ができないと判定した場合には、上り経路に電文を送信することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る無線リレー伝送システムにおいて、親機から末端子機までの下り経路の先に別の親機を配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る無線リレー伝送システムを用いることにより、末端子機から親機へ送信する上り経路を下り経路より中継回数の少ない経路とすることで、中継しない子機の消費電力の低減が可能となり、電源不足を低減することが可能となる。また、上り経路の中継回数を減らすことにより送信時間の短縮が可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る親機と子機とを有する無線リレー伝送システムの構成を示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る無線リレー伝送システムの通信タイミングを説明する説明図である。
【図3】図2の無線リレー伝送システムで使用される電文の内容を説明する説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る経路構築処理の概要を説明する説明図である。
【図5】図4に示した経路構築処理におけるルーティングテーブルの作成処理を説明する説明図である。
【図6】図5に示したルーティングテーブルを用いて少ない中継回数で上り経路の中継を行う処理を説明する説明図である。
【図7】図5に示したルーティングテーブルを用いて下り経路の途中で折り返し送信を行う場合の説明図である。
【図8】図4から図7に示した経路構築処理の流れを示すフローチャート図である。
【図9】本実施形態に係る状態収集処理の概要を説明する説明図である。
【図10】図9に示した状態収集処理における中継不良が発生した場合の処理の流れを説明する説明図である。
【図11】図9から10の状態収集処理の流れを示すフローチャート図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る状態収集処理の概要を説明する説明図である。
【図13】図12に示した状態収集処理において、中継不良が発生した場合の処理の流れを説明する説明図である。
【図14】図13に示した状態収集処理において、中継ができず、折り返し送信の流れを説明する説明図である。
【図15】図12から図14の状態収集処理の流れを示すフローチャート図である。
【図16】本発明の変形例に係る状態収集処理の概要を説明する説明図である。
【図17】従来の無線リレー伝送処理の流れを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0015】
図1は、本実施形態で使用した親機10と複数の子機20とを有する無線リレー伝送システム1を示している。親機10は、管理用のコンピュータ(PC)に接続された無線機であり、PCと接続するための変換部14と、無線通信をするための無線部12と、無線部12に接続されたアンテナ11と、無線部12と変換部14の制御を司り、CPU,RAM及びROMを有する制御部13と、外部から供給されたDC電源にて親機に電力を供給する電源部15と、を有している。また、子機20は、農地の気温、湿度、日照及び雨量を測定するセンサを有し、親機10へ測定データを送信する農業用環境測定機の無線機を構成する。子機20は、各種センサからの入力をデジタルデータに変換する変換部24と、無線通信をするための無線部22と、無線部22に接続されたアンテナ21と、太陽光により電力を発生する太陽電池26と、太陽電池26で発電した電力を蓄える蓄電池27と、DC電源入力、太陽電池及び蓄電池27を制御する充電制御部を有する電源部25と、無線部22と変換部24と電源部25の制御を司り、CPU,RAM及びROMを有する制御部23と、を有している。
【0016】
本実施形態で使用した無線は、見通し距離にて伝送が可能で消費電力の少ない特定小電力無線(400MHz帯、950MHz帯など)を利用し、送受信するデータ量に応じて通信速度が1200bps,4800bps程度であれば400MHzの周波数帯を使用し、通信速度が50kbps,100kbps程度であれば950MHzの周波数帯を使用した。
【0017】
本実施形態では、農地の区画に子機20を所定間隔で順番に並べて配置し、各区画の情報を親機10に接続された管理用のコンピュータにて収集する構成とした。このため、子機20にはDC電源を接続することができず、太陽電池の電力で駆動する必要がある。そこで、子機20の消費電力を低減させる目的で図2に示すような間欠受信による通信タイミングを採用した。図2の横軸は時間軸であり、上側に受信側、下側に送信側の送受信タイミングを示している。本実施形態では受信処理における消費電力を低減させるために、例えば、N=500msで受信動作を実行させ、その他はスリープ状態とすることで消費電力の低減を図っている。また、送信処理では、実電文を送信する前にプリアンブルをNmsec以上繰り返し送信することで、間欠受信であってもプリアンブルの後に送信される電文を受信可能にした。
【0018】
図3には実電文のデータ構成を示している。プリアンブルでは、ビット同期、フレーム同期、システムID、送信先ID、送信元ID及びエラーチェック用のCRCを繰り返し送信し、受信側の準備が整った後にビット同期、フレーム同期、システムID,送信元ID,送信先ID、電文種別、データ長、データ及びCRCを送信することになる。なお、電文種別には、後述する経路構築電文と状態収集電文がある。
【0019】
(第1の実施形態):第1の実施形態では、経路構築構文を利用して各子機のルーティングテーブルを作成することで、子機の中継回数の削減と、消費電力削減を目指した。図8には経路構築処理の流れを示すフローチャートを示し、以下、図4〜図7を用いて経路構築処理の流れを説明する。
【0020】
図8のステップS10を実行すると、親機10から子機20に対して中継順番が送信される。この処理は、親機10の指示をトリガにして子機の通信状況を確認すると共に個々の子機への中継情報を調査するものである。図4に示すように、親機10は、通常運用を開始する前に一度、親機10に近い先頭子機20−1から末端子機20−nまでの中継順番を格納した「経路構築電文」を先頭子機20−1から末端子機20−nまで中継させる。無線リレー伝送システムでは、親機10から見通し距離毎に子機20を配置する際、予め設定されている子機IDと配置順番が分かっていることから、この情報を管理用コンピュータに記憶し、配置順番を元にして経路構築電文31を親機10から子機20−1へ送信する。
【0021】
図8のステップ12において、子機20−1は親機10から受信した経路構築電文の中継順番を参照して、中継先が子機20−2(識別子:子機2ID)であることを抽出して子機20−2へ経路構築電文31を送信する。同様にして子機20−2から子機20−3・・・子機20−n−1から末端子機20−n中継されることになる。この時、子機20では、経路構築電文31の情報及び、自装置近傍の子機からの無線通信が受信できるかどうかを試すことになる。
【0022】
図5の子機20−5は、経路構築電文31から上り経路32のルーティングテーブルと下り経路33のルーティングテーブルとを抽出し、間欠受信により受信可能な電界強度を有する送信信号を受信することで自装置(子機20―5)近傍の子機の通信状況を調べる。このルーティングテーブルから、自装置から遠いのは子機20−2(子機2ID)と子機20−7(子機7ID)であることが分かる(図8のステップS14)。
【0023】
図8のステップS16において、末端子機20−nまで中継が行われたかどうかを判定し、末端まで中継が出来ていない場合には、中継を継続する。末端機20−nまで中継が終わること、子機(20−3,20−5,20−7)は図6のルーティングテーブル34,35,36を得ることができる。図8のステップS18において、例えば、子機20−7(子機7ID)が上り経路で経路構築文伝送を行う場合には、ルーティングテーブル36の上り経路にて子機20−5(子機5ID)を選択し、ステップS20において、遠い子機へ経路構築電文を送信することになる。同様に、子機20−5(子機5ID)はルーティングテーブル34の上り経路にて子機20−3(子機3ID)を選択して経路構築電文を送信し、子機20−3(子機3ID)はルーティングテーブル35の上り経路にて子機20−1(子機1ID)を選択して経路構築電文を送信する。最後に、子機20−1(子機1ID)は親機10へ経路構築電文を送信した後、図8のステップS22において親機10まで中継したと判定して一連の処理が終了する。よって、図6に示すように上り経路では、下り経路に比べて少ない中継回数(2回)にて親機10に経路構築電文が返信されることになる。
【0024】
次に、子機に何らかの通信不良が発生した場合の処理について説明する。図7はルーティングテーブルを用いて下り経路の途中で折り返し送信を行う場合を示している。日照不足やデータ中継の増加に伴い蓄電池の電力が低下する場合には、通信不良が発生する。そこで、図7の子機20−5(子機5ID)は子機20−6(子機6ID)又は子機20−7(子機7ID)へ中継を試みるものの、子機20−6(子機6ID)又は子機20−7(子機7ID)が次の子機に通信を行っていないと判断した場合には、下り経路における中継不良と判断し、経路構築電文を上り経路に切り替えて親機方向へ中継する。この処理により、親機10は子機20−5までのルーティングテーブル作成完了を認識できる。このように「経路構築電文」を通常運用をする前または子機の追加または削除による経路構成の変更があった場合などに利用することで、通信状況のモニタとして活用できる。
【0025】
次に、状態収集電文による情報の収集について、図11のフローチャートと図9〜図12を用いて説明する。状態収集を開始すると、図11のステップS30において、子機からのセンサ情報を取得して状態収集電文のデータ部に各子機の状態データを追加すべく、親機10は、図9の状態収集電文41に送信元を親機10、送信先を末端子機20−nと設定して状態収集電文41を子機20−1(子機1ID)に送出する。さらに、子機20−1は子機20−2へ中継を行うことになる(ステップS32)。
【0026】
子機20−1は、ルーティングテーブルを有し、下り経路において、状態収集電文41は子機20−1の下り経路のルーティングテーブルにおいて一番近い子機20−2へ送信する。次に、子機20−2は自装置の状態を状態収集電文41に格納すると共に、自装置のルーティングテーブルを参照して、下り経路で自装置に一番近い子機(ステップS34)に状態収集電文を送信する(ステップS38)。もし、一番近い子機に電文を送信できない場合はその次に自装置に近い子機に状態収集電文を送信する(ステップS36)。
【0027】
中継された状態収集電文41が末端子機20−nまで到達しない場合にはステップS40にて折り返す。末端子機20−nまで到達した場合にはステップS42に移り、上り経路は中継回数が少なくなるように、上り経路用ルーティングテーブルの中で、一番遠い子機20−6を選択し、ステップS44において状態収集電文41を送信するようにする。なお、ステップS44において、一番遠い子機に送信できない場合は、次に遠い子機(手前側)に電文を送信して親機10まで状態収集電文を送信する。つまり、子機20が経路構築電文に基づいてルーティングテーブルを作成し、子機20の近傍の通信状況の確認と共にルーティングテーブルに基づいて中継回数を削減することによりその後の状態収集電文による各子機の情報を収集においても中継回数を削減することが可能となる。なお、親機まで中継された場合には一連の処理を終了する(ステップS46)。
【0028】
(第2の実施形態):第2の実施形態は、第1の実施形態で行っていた経路構築電文と状態収集電文を分けて送信することなく、子機の中継順番に従って状態収集電文の送信において通信可能な子機を探すことで末端子機から親機までの上り経路において中継回数の削減を実現するものである。このような処理により経路構築電文と状態収集電文を1回の電文送信で済ませることが可能であり、ルーティングテーブルも使用しない。さらに、末端子機の先に別の親機を通信可能な距離に配置することにより経路構築電文を利用せず、親機の位置を随時変更できる。
【0029】
状態収集電文による情報の収集について、図15のフローチャートと図12〜14を用いて説明する。図12は第2の実施形態に係る状態収集処理の概要を示している。図12の中継順番と状態情報が記録された複合電文42には、子機の中継先IDと子機の状態を記憶させることができることから、この複合電文42を使用して中継と状態収集が可能となる。図15の状態収集が開始されると、ステップS50において、親機10は末端子機までの中継順番と状態情報を複合電文42に格納して子機20−1に送信する。次に、ステップS52において、子機は状態収集電文中の中継順番を参照し、子機の状態を複合電文42にセットして次の子機20−2に送信する(ステップS54)。子機はステップS56にて次の子機20−2が送信する電文の受信を試みて、子機20−2が中継をするかどうかを判定する。もし、子機20−2が中継を行った場合には電文に情報が付加(ステップS58)され、ステップS64にて末端子機まで中継が終了していない場合にはステップS52に戻る。
【0030】
次に、通信不良が発生した場合の処理について図13を用いて説明する。図13には、子機20−3(子機3ID)が通信不良の状況を示している。図15のステップS56において、子機20−2から子機20−3への送信を確認する。ステップS56で間欠受信の数周期にわたり子機20−3がなんら送信していない「No」と子機20−2が判断すると、ステップS60の次の次の子機20−4へ送信を行い、正常に送信された場合には複合電文に情報が追加される(ステップS62)。この場合、子機20−3(子機3ID)の状態収集が「エラー:X」つまり、複合電文に情報が追加されなかったことを記録して以下処理を継続することになる。このような処理をすることで、通信不良が発生した子機を飛び越えて中継が継続可能となる。次に、図14を用いて子機20−4,20−5が通信不良となった場合の処理の流れを説明する。
【0031】
図15のステップ56において、子機20−3(子機3ID)から子機20−4(子機4ID)への通信が失敗し、さらに、ステップS60において子機20−5(子機5ID)への通信が失敗した場合、下り経路への中継ができない。ここで、子機20−3(子機3ID)は、子機20−2、子機20−1への複合電文42が受信できたとする。上り経路で親機10に電文を送る場合は、子機20−2より最も遠い子機20−1に送信した方が親機10までの中継回数が少ないことから、ステップS66において、上り経路で複合電文42を遠い子機である子機20−1へ送信を行い、ステップS70において、親機10まで中継を繰り返し行うことになる。このように子機20は上り経路の中継回数の少なくなる最も遠い中継先子機を複合電文と対にして記録することで、ルーティングテーブル相当の機能を実現することが可能となる。なお、図14において、子機20−6、子機20−7から末端子機20−nまでの状態収集が困難となることから、本実施形態の応用例を図16に示す。
【0032】
図16は、末端機20−nと通信可能な距離に親機Aを配置したものである。親機A(10A)は子機1Aから末端機20A−nまでの状態収集を行うものであるが、必要に応じて子機20−6、子機20−7から末端子機20−nまでの状態収集を行うことも可能である。通常、親機10と親機A(10A)は管理用のコンピュータを介して通信が可能であることから、親機A(10A)は親機10からの不具合通報により残りの子機20−7から末端子機20−nまでの状態収集を収集することが可能である。
【0033】
以上、上述したように、本実施形態に係る無線リレー伝送システムを用いることにより、次のような5つの効果がある。(1)下り経路を順次リレー、上り経路を中継回数の少ない経路とすることで最短時間で各子機の情報を収集できる。これにより各子機の消費電流も低減できる。(2)一時的な電波障害や、特定子機の異常も代替え経路で通信できる。(3)代替経路は自動的に設定されているので各子機への通信経路設定を不要にできる。(4)親機から末端の子機まで中継伝送が不可能な場合でも、途中で折り返すことができるので縮小運転が可能となる。(5)図16の場合は、親機の位置を変えても通信が可能となる。これを利用することで万一、子機の異常により末端子機までの状態を収集できない場合でも、逆サイドから状態を収集すれば、異常子機を除いた各子機の状態を収集することも可能となる。
【0034】
なお、本実施形態では、農業用センサからの情報収集に関するシステムについて説明したが、これに限定するものではなく、電柱、街灯などの状態を監視するシステムに応用しても良い。
【符号の説明】
【0035】
1,100 無線リレー伝送システム、10,101 親機、11,21 アンテナ、12,22 無線部、13,23 制御部、14,24 変換部、15,25 電源部、20,20A,102 子機、26 太陽電池、27 蓄電池、31 経路構築電文、32 子機上り経路、33 子機下り経路、34,35,36 ルーティングテーブル、41 状態収集電文、42 複合電文。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中継順に並んだ複数の子機と、各子機が取得した情報を収集する親機と、を含み、子機が他の子機を介して情報を中継する無線リレー伝送システムにおいて、
子機は、
親機から末端子機までの中継順番が記録された経路構築電文を親機から受信し、次の中継先となる子機へ送信する電文中継手段と、
他の子機が送信した経路構築電文が受信できるかどうかを判定し、受信できた場合にはその経路構築電文から通信可能な中継先情報を抽出する抽出手段と、
抽出手段によって抽出した中継先情報を記憶する記憶手段と、
を有し、
親機から末端末機までの下り経路は、各子機が順次中継して経路構築電文を伝送し、末端子機から親機までの上り経路は、記憶手段に記憶された通信可能な中継先情報に基づいて下り経路と比べて中継回数の少ない経路を利用することを特徴とする無線リレー伝送システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線リレー伝送システムにおいて、
子機は、通信可能な中継先の子機へ電文を送信した後、抽出手段によりその子機が次の子機へ電文を中継していないと判断した場合は、
下り経路の場合には中継順番を1つ増やした子機、上り経路の場合には中継順番を1つ減らした子機に電文を送信することを特徴とする無線リレー伝送システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の無線リレー伝送システムにおいて、
子機は、下り経路において、記憶手段に記憶された中継先情報を使用しても末端子機まで中継ができないと判定した場合には、上り経路に電文を送信することを特徴とする無線リレー伝送システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の無線リレー伝送システムにおいて、
親機から末端子機までの下り経路の先に別の親機を配置することを特徴とする無線リレー伝送システム。
【請求項1】
中継順に並んだ複数の子機と、各子機が取得した情報を収集する親機と、を含み、子機が他の子機を介して情報を中継する無線リレー伝送システムにおいて、
子機は、
親機から末端子機までの中継順番が記録された経路構築電文を親機から受信し、次の中継先となる子機へ送信する電文中継手段と、
他の子機が送信した経路構築電文が受信できるかどうかを判定し、受信できた場合にはその経路構築電文から通信可能な中継先情報を抽出する抽出手段と、
抽出手段によって抽出した中継先情報を記憶する記憶手段と、
を有し、
親機から末端末機までの下り経路は、各子機が順次中継して経路構築電文を伝送し、末端子機から親機までの上り経路は、記憶手段に記憶された通信可能な中継先情報に基づいて下り経路と比べて中継回数の少ない経路を利用することを特徴とする無線リレー伝送システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線リレー伝送システムにおいて、
子機は、通信可能な中継先の子機へ電文を送信した後、抽出手段によりその子機が次の子機へ電文を中継していないと判断した場合は、
下り経路の場合には中継順番を1つ増やした子機、上り経路の場合には中継順番を1つ減らした子機に電文を送信することを特徴とする無線リレー伝送システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の無線リレー伝送システムにおいて、
子機は、下り経路において、記憶手段に記憶された中継先情報を使用しても末端子機まで中継ができないと判定した場合には、上り経路に電文を送信することを特徴とする無線リレー伝送システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の無線リレー伝送システムにおいて、
親機から末端子機までの下り経路の先に別の親機を配置することを特徴とする無線リレー伝送システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−231300(P2012−231300A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98388(P2011−98388)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000189486)上田日本無線株式会社 (29)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000189486)上田日本無線株式会社 (29)
【Fターム(参考)】
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