説明

無線中継装置及び信号処理装置

【課題】無線中継における上りリンク中継動作の効果的な制御を提供することを目的とする。
【解決手段】無線中継装置の制御部107は、無線中継装置の動作状態が上りリンク信号が送信される通常状態であるときに上りリンク信号を第1の信号電力に基づいて所定時間以上検出しなければ動作状態を上りリンク信号の送信が行われない送信停止状態を含む非通常状態に遷移させ、動作状態が非通常状態であるときに第2の信号電力が閾値以上であるならば動作状態を通常状態に遷移させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線信号の中継に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信において、送信装置によって送信された無線信号が無線通信路を経由して受信装置に到達するまでの間に、無線信号のエネルギーの低下(いわゆる伝搬ロス)が生じることが知られている。無線信号のエネルギーの低下は、送信装置と受信装置との間の通信距離が比較的長いセルラシステムなどにおいて顕著である。無線信号のエネルギーが低下し過ぎると、受信装置が無線信号を正常に受信できなかったり、伝送速度が低下したりするおそれがある。
【0003】
無線中継装置は、無線信号のエネルギーの低下を抑制するために役立つ。具体的には、無線中継装置は、送信装置によって送信された無線信号を受信し、この無線信号を増幅してから受信装置へ送信する。無線中継装置によれば、無線信号の電力が増幅されるので、受信装置が無線信号の受信に失敗する確率が低減し、送受間の伝送速度劣化が抑制される。無線中継装置は、セルラシステムにも適用可能である。例えば、無線中継装置は、基地局及び移動端末間の無線通信を中継できる。
【0004】
非特許文献1及び非特許文献2において、移動端末の低消費電力化のための仕組み(待ち受け(ページング)処理)が定義されている。一方、無線中継装置は基地局と同様に通信インフラとしての役割を担っており、通信サービスを随時提供するために、一般的には常時動作が要求される。故に、無線中継装置に関して、前述のページング処理などの低消費電力化のための仕組みは、非特許文献1及び非特許文献2において定義されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】3GPP TS 36.304 v8.6.0(2009−06)
【非特許文献2】3GPP TS 25.304 v8.6.0(2009−06)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、電力利用効率の向上及び環境負荷の低減が、社会的に強く要請されている。故に、通信インフラとしての役割を担う無線中継装置であろうとも、消費電力の削減が望まれる。また、無線中継装置は、中継すべき無線信号が存在しない期間において、雑音信号を放射するおそれがある。このような不要信号の放射は、通信システムの容量低下を引き起こす。
【0007】
一方、無線中継装置の動作を制限することは、その通信インフラとしての役割を阻害するおそれがある。例えば、移動端末がいわゆるアクセス信号を基地局に送信した時に無線中継装置が上りリンク中継動作を停止していれば、このアクセス信号は中継されないことになる。結果的に、移動端末によってアクセス信号の再送処理が実行され、制御遅延、不要な電力消費、干渉の増加などが発生するだろう。また、この再送処理によってもアクセス信号が基地局に到達せず、通信が失敗に終わる可能性もある。故に、無線中継装置の動作を制限する場合には、その通信インフラとしての役割を阻害しないように留意しなければならない。
【0008】
従って、本発明は、無線中継における上りリンク中継動作の効果的な制御を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る無線通信装置は、第1の無線通信装置からの下りリンク信号を受信する第1の受信処理部と、下りリンク信号を第2の無線通信装置に送信する第1の送信処理部と、前記第2の無線通信装置からの上りリンク信号を受信する第2の受信処理部と、動作状態が通常状態であるならば上りリンク信号を前記第1の無線通信装置に送信し、動作状態が送信停止状態であるならば上りリンク信号の前記第1の無線通信装置への送信を行わない第2の送信処理部と、第1の時間リソース及び第1の周波数リソースにおいて前記第1の無線通信装置によって送信される第1の下りリンク信号から、前記第2の無線通信装置による第1の上りリンク信号の送信が許可される第2の時間リソース及び第2の周波数リソースを示す情報を抽出する抽出部と、上りリンク信号の第1の信号電力を測定する第1の電力測定部と、前記第2の時間リソース及び前記第2の周波数リソースにおいて受信された上りリンク信号の第2の信号電力を測定する第2の電力測定部と、動作状態が通常状態であるときに上りリンク信号を前記第1の信号電力に基づいて所定時間以上検出しなければ動作状態を送信停止状態を含む非通常状態に遷移させ、動作状態が非通常状態であるときに前記第2の信号電力が閾値以上であるならば動作状態を通常状態に遷移させる制御部とを具備する。
【0010】
本発明の他の態様に係る信号処理装置は、第1の無線通信装置から第2の無線通信装置への下りリンク信号と、前記第2の無線通信装置から前記第1の無線通信装置への上りリンク信号とを中継する無線中継装置に接続される信号処理装置において、第1の時間リソース及び第1の周波数リソースにおいて前記第1の無線通信装置によって送信される第1の下りリンク信号から、前記第2の無線通信装置による第2の上りリンク信号の送信が許可される第2の時間リソース及び第2の周波数リソースを示す情報を抽出する抽出部と、上りリンク信号の第1の信号電力を測定する第1の電力測定部と、前記第2の時間リソース及び前記第2の周波数リソースにおいて受信された上りリンク信号の第2の信号電力を測定する第2の電力測定部と、前記無線中継装置の動作状態が上りリンク信号が送信される通常状態であるときに上りリンク信号を前記第1の信号電力に基づいて所定時間以上検出しなければ動作状態を上りリンク信号の送信が行われない送信停止状態を含む非通常状態に遷移させ、動作状態が非通常状態であるときに前記第2の信号電力が閾値以上であるならば動作状態を通常状態に遷移させる制御部とを具備する
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、無線中継における上りリンク中継動作の効果的な制御を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態に係る無線中継装置を含む無線通信システムの一例を示す図。
【図2A】図1の無線通信システムにおける下りリンク信号のフォーマットの一例を示す図。
【図2B】図1の無線通信システムにおける上りリンク信号のフォーマットの一例を示す図。
【図3A】図1の無線通信システムにおける下りリンク信号のフォーマットの一例を示す図。
【図3B】図1の無線通信システムにおける上りリンク信号のフォーマットの一例を示す図。
【図4】第1の実施形態に係る無線中継装置を示すブロック図。
【図5】選択部の動作の説明図。
【図6】図4の無線中継装置の動作状態の一例を示す状態遷移図。
【図7】通常状態における制御部及び信号処理部の動作の一例を示すフローチャート。
【図8】送信停止状態における制御部及び信号処理部の動作の一例を示すフローチャート。
【図9】通常状態における制御部及び信号処理部の動作の一例を示すフローチャート。
【図10】送信停止状態における制御部及び信号処理部の動作の一例を示すフローチャート。
【図11】図4の無線中継装置の動作状態の一例を示す状態遷移図。
【図12】送信停止状態における制御部及び信号処理部の動作の一例を示すフローチャート。
【図13】送信再開状態における制御部及び信号処理部の動作の一例を示すフローチャート。
【図14】送信停止状態における制御部及び信号処理部の動作の一例を示すフローチャート。
【図15】送信再開状態における制御部及び信号処理部の動作の一例を示すフローチャート。
【図16】第2の実施形態に係る無線中継装置を示すブロック図。
【図17】図16の無線中継装置の動作状態の一例を示す状態遷移図。
【図18】送信停止状態における制御部及び信号処理部置の動作の一例を示すフローチャート。
【図19】送信再開状態における制御部及び信号処理部の動作の一例を示すフローチャート。
【図20】送信停止状態における制御部及び信号処理部の動作の一例を示すフローチャート。
【図21】図1の無線通信システムにおける上りリンク信号のフォーマットの一例を示す図。
【図22】図1の無線通信システムにおける上りリンク信号のフォーマットの一例を示す図。
【図23】送信停止状態における制御部及び信号処理部の動作の一例を示すフローチャート。
【図24】送信停止状態における制御部及び信号処理部の動作の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る無線中継装置を含む無線通信システムの一例を示している。第1の無線通信装置10は、例えば基地局である。第2の無線通信装置20は、例えば移動端末である。一実施形態に係る無線中継装置30は、第1の無線通信装置10と第2の無線通信装置20との間の無線信号を中継する。
【0014】
第1の無線通信装置10は、第1の無線通信リンク40を介して無線中継装置30と通信を行う。第2の無線通信装置20は、第2の無線通信リンク50を介して無線中継装置30と通信を行う。
【0015】
以降の説明において、便宜上、第1の無線通信装置10から無線中継装置30を経由して第2の無線通信装置20に至る無線通信リンクを下りリンクと称し、第2の無線通信装置20から無線中継装置30を経由して第1の無線通信装置10に至る無線通信リンクを上りリンクと称する。また、第1の無線通信リンク40において、無線中継装置30から第1の無線通信装置10へ送信される無線信号を上りリンク信号と称し、第1の無線通信装置10から無線中継装置30へ送信される無線信号を下りリンク信号と称する。同様に、第2の無線通信リンク50において、第2の無線通信装置20から無線中継装置30へ送信される無線信号を上りリンク信号と称し、無線中継装置30から第2の無線通信装置20へ送信される無線信号を下りリンク信号と称する。
【0016】
尚、図1は、一実施形態に係る無線中継装置30を含む無線通信システムを例示しているに過ぎない。一実施形態に係る無線中継装置を適用可能な無線通信システムは、基地局に相当する無線通信装置を複数包含してもよいし、移動端末に相当する無線通信装置を複数包含してもよいし、無線中継装置を複数包含してもよい。
図1の無線通信システムは、シングルキャリア方式及びマルチキャリア方式のいずれも適用可能である。
【0017】
シングルキャリア方式に関して、例えば図2Aに示すフォーマットで下りリンク信号が送信される。図2Aのフォーマットは、所定の時間長の時間リソース(フレーム)を単位として時間軸が構成されている。図2Aのフォーマットは、ハッチングされたフレーム#0において報知信号が送信されることを示している。報知信号は、無線通信システムの運用に関する情報を無線中継装置30及び第2の無線通信装置20に通知するために第1の無線通信装置10によって使用される。この報知信号は、一般的には、特定周期で出現する特定の時間リソースにおいて送信される。この報知信号は、第2の無線通信装置20にアクセス信号の送信が許可される時間リソース(換言すれば、アクセス信号に割り当てられた時間リソース)を示す情報を含む。図2Aの例では、報知信号は、15フレーム周期で出現するフレーム#1においてアクセス信号の送信が許可されることを示している。尚、1周期に含まれるフレーム数は「15」に限られず、任意の値が採用されても勿論よい。即ち、第2の無線通信装置20は、15フレーム周期で出現するフレーム#1(図2Bのフォーマットにおけるハッチングされた時間リソース)においてアクセス信号を送信する可能性がある。アクセス信号は、一般的には、ランダムアクセス信号とも称され、第2の無線通信装置20が第1の無線通信装置10に通信開始などの情報を通知するために使用される。
【0018】
マルチキャリア方式に関して、例えば図3Aに示すフォーマットで下りリンク信号が送信される。図3Aのフォーマットは、所定の時間長の時間リソース(フレーム)を単位として時間軸が構成され、所定の帯域幅の周波数リソースを単位として周波数軸が構成されている。図3Aのフォーマットは、ハッチングされたフレーム#0において周波数リソース#3,#4及び#5上で報知信号が送信されることを示している。この報知信号は、一般的には、特定周期で出現する特定時間リソースにおいて特定周波数リソース上で送信される。この報知信号は、第2の無線通信装置20にアクセス信号の送信が許可される時間リソース及び周波数リソース(換言すれば、アクセス信号に割り当てられた時間リソース及び周波数リソース)を示す情報を含む。図3Aの例では、報知信号は、15フレーム周期で出現するフレーム#1における周波数リソース#3上でアクセス信号の送信が許可されることを示している。即ち、第2の無線通信装置20は、15フレーム周期で出現するフレーム#1において周波数リソース#3(図3Bのフォーマットにおけるハッチングされた時間リソース及び周波数リソース)上でアクセス信号を送信する可能性がある。
【0019】
以下、本発明の第1の実施形態に係る無線中継装置を詳細に説明する。図4に示すように、本実施形態に係る無線中継装置は、第1のアンテナ101、第1の受信処理部102、第1の送信処理部103、第2のアンテナ104、第2の受信処理部105、第2の送信処理部106、制御部107及び信号処理部110を有する。また、信号処理部110は、ADC(アナログ−デジタル変換器)111、復調部112、復号部113、電力測定部114、ADC115、選択部116及び電力測定部117を含む。
【0020】
第1のアンテナ101は、第1の無線通信リンク40における無線信号の送受信を行う。例えば、第1のアンテナ101は、第1の無線通信装置10からの下りリンク信号を受信して第1の受信処理部102に入力する。尚、この下りリンク信号は、前述の報知信号またはその他の信号である。また、第1のアンテナ101は、第2の送信処理部106からの上りリンク信号を第1の無線通信装置10に送信する。
【0021】
第1の受信処理部102は、第1のアンテナ101からの下りリンク信号に対して所定の受信処理を行って、ADC111及び第1の送信処理部103に入力する。第1の受信処理部102は、例えば、フィルタリング処理、信号増幅処理、ダウンコンバート処理などを含む受信処理を行う。
【0022】
第1の送信処理部103は、第1の受信処理部102からの下りリンク信号に対して所定の送信処理を行って、第2のアンテナ104に入力する。第1の送信処理部103は、例えば、アップコンバート処理、電力増幅処理、フィルタリング処理などを含む送信処理を行う。
【0023】
第2のアンテナ104は、第2の無線通信リンク50における無線信号の送受信を行う。例えば、第2のアンテナ104は、第2の無線通信装置20からの上りリンク信号を受信して第2の受信処理部105に入力する。尚、この上りリンク信号は、前述のアクセス信号またはその他の信号である。また、第2のアンテナ104は、第1の送信処理部103からの下りリンク信号を第2の無線通信装置20に送信する。
【0024】
第2の受信処理部105は、第2のアンテナ104からの上りリンク信号に対して所定の受信処理を行って、ADC115及び第2の送信処理部106に入力する。第1の受信処理部102は、例えば、フィルタリング処理、信号増幅処理、ダウンコンバート処理などを含む受信処理を行う。
【0025】
第2の送信処理部106は、第2の受信処理部105からの上りリンク信号に対して所定の送信処理を行って、第1のアンテナ101に入力する。第2の送信処理部106は、例えば、アップコンバート処理、電力増幅処理、フィルタリング処理などを含む送信処理を行う。
【0026】
尚、第2の送信処理部106は、無線中継装置の動作状態に応じてその動作が変化する。無線中継装置の動作状態の詳細と、各動作状態における第2の送信処理部106の動作の詳細は後述する。
【0027】
制御部107は、信号処理部110からの各種パラメータに基づいて、無線中継装置の動作状態を決定する。また、制御部107は、無線中継装置の動作状態に応じて第2の送信処理部106の動作を制御する。具体的には、制御部107は、無線中継装置が通常状態または非通常状態のいずれであるかを決定する。制御部107は、通常状態において第2の送信処理部106が動作(上りリンク信号の送信)を行うように制御する。一方、制御部107は、非通常状態の1つである送信停止状態において第2の送信処理部106が動作を停止するように制御する。例えば、制御部107は、第2の送信処理部106への電力供給を開始/停止することにより、第2の送信処理部106の動作の開始/停止を制御する。第2の送信処理部106の動作が停止されると、第2の送信処理部106において消費電流が発生しない。即ち、無線中継装置における不要な雑音放射、無駄な電力消費が抑制される。
【0028】
尚、後述するように、制御部107は、無線中継装置の動作状態に応じて第2の受信処理部105の動作を制御することもある。第2の受信処理部105への電力供給を開始/停止することにより、第2の受信処理部105の動作(上りリンク信号の受信)の開始/停止を制御する。第2の受信処理部105の動作が停止されると、第2の受信処理部105において消費電流が発生しないため、無駄な電力消費が抑制される。
【0029】
ADC111は、第1の受信処理部102からの下りリンク信号をアナログドメインからデジタルドメインに変換し、デジタル信号を得る。ADC111は、デジタル信号を復調部112に入力する。
【0030】
復調部112は、ADC111からのデジタル信号に対して所定の復調処理を行って復調信号を得る。復調部112が行う復調処理は、下りリンク信号に施されている変調処理(変調方式)に対応する。復調部112は、復調信号を復号部113に入力する。
【0031】
復号部113は、復調部112からの復調信号に対して所定の復号処理を行って、下りリンクデータを再生する。復号部113が行う復号処理は、下りリンク信号に施されている符号化処理(符号化方式、符号化率)に対応する。復号部113は、下りリンクデータを制御部107に入力する。制御部107は、前述の報知信号に対応する下りリンクデータを取得することにより、アクセス信号の送信が許可される時間及び周波数リソースを判定できる。
【0032】
ADC115は、第2の受信処理部105からの上りリンク信号をアナログドメインからデジタルドメインに変換し、デジタル信号を得る。ADC115は、デジタル信号を電力測定部114及び選択部116に入力する。
【0033】
電力測定部114は、ADC115からのデジタル信号の信号電力を測定する。電力測定部114は、電力測定結果(以降、第1の電力測定結果と称する)を制御部107に入力する。電力測定部114は、単位時間(例えば1フレーム)毎に電力測定を行う。制御部107は、第1の電力測定結果を取得することにより、中継中の上りリンク信号が存在するか否かを判定できる。
【0034】
選択部116は、図5に示すように、ADC115からのデジタル信号のうち特定の周波数成分(アクセス信号が送信される可能性のある周波数成分)を選択し、選択信号を得る。選択部116は、選択信号を電力測定部117に入力する。選択部116は、アクセス信号に特定の周波数リソースが割り当てられる場合に好適である。例えば、図3Bの例のようにアクセス信号に周波数リソース#3が割り当てられるならば、選択部116は周波数リソース#3に対応する帯域の信号成分を通過させるフィルタリング処理を上記デジタル信号に行うことにより、選択信号を得る。
【0035】
電力測定部117は、選択部116からの選択信号の信号電力を測定する。電力測定部117は、電力測定結果(以降、第2の電力測定結果と称する)を制御部107に入力する。電力測定部117は、例えば1フレームよりも短い単位時間毎に電力測定を行う。制御部107は、特定のフレーム(アクセス信号に割り当てられた時間リソース)における第2の電力測定結果を取得することにより、中継中のアクセス信号が存在するか否かを判定できる。尚、制御部107は、特定のフレームにおける第1の電力測定結果を使用したとしても、中継中のアクセス信号が存在するか否かを判定可能である。しかしながら、第2の電力測定結果はアクセス信号に割り当てられた周波数リソースに関する信号電力を示し、第1の電力測定結果は全周波数リソースに関する信号電力を示す。故に、中継中のアクセス信号が存在するか否かをより正確に判定する観点からすると、第2の電力測定結果は第1の電力測定結果に比べて好適である。また、電力測定部117の測定時間は1フレームよりも短いので、制御部107はアクセス信号が存在するか否かをフレームの途中で判定できる。故に、制御部107はフレームの途中から無線中継装置の動作状態を遷移させることも可能である。
【0036】
制御部107は、例えば図6に示されるように、通常状態及び送信停止状態の間の遷移を定義してよい。具体的には、制御部107は、通常状態において上りリンク信号が所定時間以上存在しなければ動作状態を送信停止状態に遷移させる。また、制御部107は、送信停止状態においてアクセス信号を検出すれば動作状態を通常状態に遷移させる。
【0037】
以下、図7及び図8を用いて、通常状態及び送信停止状態における制御部107及び信号処理部110の動作を夫々説明する。
通常状態において、電力測定部114は単位時間毎に信号電力を測定し(ステップS201)、制御部107は第1の電力測定結果を取得する。制御部107は、ステップS201において測定された信号電力が電力閾値Pth1よりも大きいか否かを判定する(ステップS202)。この電力閾値Pth1は、上りリンク信号が存在するか否かを判定するために使用される。ステップS202において、信号電力が電力閾値Pth1よりも大きければ処理はステップS203に進み、そうでなければ処理はステップS204に進む。
【0038】
ステップS203において、制御部107はタイマ(T1)の値に「0」を代入する(タイマ(T1)をリセットする)。このタイマ(T1)は、通常状態から送信停止状態への遷移条件に含まれる所定時間を測定するために使用されるカウンタ用の変数である。次に、制御部107は無線中継装置の動作状態を通常状態に遷移させる。
【0039】
ステップS204において、制御部107はタイマ(T1)の値を「1」だけインクリメントする。次に、制御部107は、タイマ(T1)の値が時間閾値Tth1よりも大きいか否かを判定する(ステップS205)。この時間閾値Tth1は、前述の所定時間に基づく値(例えば、所定時間に対応するフレーム数)である。ステップS205において、タイマ(T1)の値が時間閾値Tth1よりも大きければ、制御部107は第2の送信処理部106の動作を停止させ(ステップS206)、無線中継装置の動作状態を送信停止状態に遷移させる。一方、ステップS205において、タイマ(T1)の値が時間閾値Tth1以下であれば、制御部107は無線中継装置の動作状態を通常状態に遷移させる。
【0040】
送信停止状態において、制御部107は報知信号から抽出された情報に基づいて、アクセス信号の送信が許可された時間及び周波数リソースを判定し(ステップS211)、処理はステップS212に進む。この情報は、第1の受信処理部102によって受信された報知信号から、ADC111、復調部112及び復号部113によって抽出される。尚、このステップS211の処理は、報知信号が送信される時間リソースにおいて行われれば十分なので、その他の時間リソースにおいて省略されるものとする。
【0041】
電力測定部117は、アクセス信号の送信が許可された時間リソースにおいて選択信号の信号電力を測定し(ステップS212)、制御部107は第2の電力測定結果を取得する。制御部107は、ステップS212において測定された信号電力が電力閾値Pth2よりも大きいか否かを判定する(ステップS213)。この電力閾値Pth2は、アクセス信号が存在するか否かを判定するために使用される。ステップS213において、信号電力が電力閾値Pth2よりも大きければ処理はステップS214に進む。一方、信号電力が電力閾値Pth2以下であるならば制御部107は無線中継装置の動作状態を送信停止状態に遷移させる。
【0042】
ステップS214において、制御部107はタイマ(T1)に「0」を代入する。次に、制御部107は第2の送信処理部106の動作を開始させ(ステップS215)、無線中継装置の動作状態を通常状態に遷移させる。
【0043】
通常状態及び送信停止状態において、以上説明したように制御部107及び信号処理部110が動作することにより、図4の無線中継装置の上りリンク中継動作が効果的に制御される。具体的には、通常状態において上りリンク信号が所定時間以上存在しなければ、制御部107は無線中継装置の動作状態を送信停止状態に遷移させる。送信停止状態において制御部107は第2の送信処理部106の動作を停止させるため、不要な雑音放射及び無駄な電力消費が抑制される。一方、送信停止状態であってもアクセス信号に割り当てられた時間リソースにおいて信号電力に基づきアクセス信号が検出されると、制御部107は無線中継装置の動作状態を通常状態に遷移させて、第2の送信処理部106の動作を開始させる。故に、この制御によれば、アクセス信号が中継されないなどの上りリンク中継動作の停止により起こり得る不利益を回避しつつ、雑音放射の低減及び電力消費の削減などの上りリンク中継動作の停止による利益を得ることができる。
【0044】
また、通常状態及び送信停止状態における制御部107及び信号処理部110の動作は、図9及び図10に示すように夫々変更されてもよい。
通常状態において、電力測定部114は単位時間毎に信号電力を測定し(ステップS221)、制御部107は第1の電力測定結果を取得する。制御部107は、ステップS221において測定された信号電力が電力閾値Pth1よりも大きいか否かを判定する(ステップS222)。ステップS222において、信号電力が電力閾値Pth1よりも大きければ処理はステップS223に進み、そうでなければ処理はステップS224に進む。ステップS223において、制御部107はタイマ(T1)の値に「0」を代入する。次に、制御部107は無線中継装置の動作状態を通常状態に遷移させる。
【0045】
ステップS224において、制御部107はタイマ(T1)の値を「1」だけインクリメントする。次に、制御部107は、タイマ(T1)の値が時間閾値Tth1よりも大きいか否かを判定する(ステップS225)。ステップS225において、タイマ(T1)の値が時間閾値Tth1よりも大きければ、制御部107は第2の送信処理部106及び第2の受信処理部105の動作を停止させ(ステップS226)、無線中継装置の動作状態を送信停止状態に遷移させる。一方、ステップS225において、タイマ(T1)の値が時間閾値Tth1以下であれば、制御部107は無線中継装置の動作状態を通常状態に遷移させる。
【0046】
送信停止状態において、制御部107は報知信号から抽出された情報に基づいて、アクセス信号の送信が許可された時間及び周波数リソースを判定し(ステップS231)、処理はステップS232に進む。この情報は、第1の受信処理部102によって受信された報知信号から、ADC111、復調部112及び復号部113によって抽出される。尚、このステップS231の処理は、報知信号が送信される時間リソースにおいて行われれば十分なので、その他の時間リソースにおいて省略されるものとする。
【0047】
アクセス信号の送信が許可された時間リソースにおいて、制御部107は第2の受信処理部105の動作を開始させ、電力測定部117は選択信号の信号電力を測定し(ステップS232)、制御部107は第2の電力測定結果を取得する。制御部107は、ステップS232において測定された信号電力が電力閾値Pth2よりも大きいか否かを判定する(ステップS233)。ステップS233において、信号電力が電力閾値Pth2よりも大きければ処理はステップS234に進む。一方、信号電力が電力閾値Pth2以下であるならば、制御部107は第2の受信処理部105の動作を停止させ(ステップS236)、無線中継装置の動作状態を送信停止状態に遷移させる。
【0048】
ステップS234において、制御部107はタイマ(T1)に「0」を代入する。次に、制御部107は第2の送信処理部106の動作を開始させ(ステップS235)、無線中継装置の動作状態を通常状態に遷移させる。
【0049】
通常状態及び送信停止状態において、以上説明したように制御部107及び信号処理部110が動作することにより、図4の無線中継装置の上りリンク中継動作が効果的に制御される。具体的には、通常状態において上りリンク信号が所定時間以上存在しなければ、制御部107は無線中継装置の動作状態を送信停止状態に遷移させる。送信停止状態において制御部107は第2の送信処理部106及び第2の受信処理部105の動作を停止させるため、不要な雑音放射及び無駄な電力消費が抑制される。一方、送信停止状態であってもアクセス信号に割り当てられた時間リソースにおいて、制御部107は第2の受信処理部105の動作を一時的に再開する。そして、信号電力に基づきアクセス信号が実際に検出されると、制御部107は無線中継装置の動作状態を通常状態に遷移させて、第2の送信処理部106の動作を開始させる。故に、この制御によれば、アクセス信号が中継されないなどの上りリンク中継動作の停止により起こり得る不利益を回避しつつ、雑音放射の低減及び電力消費の削減などの上りリンク中継動作の停止による利益を得ることができる。特に、この制御は、第2の送信処理部106及び第2の送信処理部105の動作を停止するため、第2の送信処理部105のみの動作を停止させる制御に比べて電力消費をより大きく削減できる。
【0050】
また、制御部107は、例えば図11に示されるように、通常状態、送信停止状態及び送信再開状態の間の遷移を定義してよい。具体的には、制御部107は、通常状態において上りリンク信号が所定時間以上存在しなければ動作状態を送信停止状態に遷移させる。また、制御部107は、送信停止状態においてアクセス信号の送信が許可される時間リソースが到来すると動作状態を送信再開状態に遷移させる。また、制御部107は、送信再開状態においてアクセス信号を検出すれば動作状態を通常状態に遷移させる。一方、制御部107は、送信再開状態においてアクセス信号を検出しなければ動作状態を送信停止状態に遷移させる。
【0051】
以下、図12及び図13を用いて、送信停止状態及び送信再開状態における制御部107及び信号処理部110の動作を夫々説明する。尚、通常状態における制御部107及び信号処理部110の動作は、図7に示される通りである。
【0052】
送信停止状態において、制御部107は報知信号から抽出された情報に基づいて、アクセス信号の送信が許可された時間及び周波数リソースを判定する(ステップS241)。この情報は、第1の受信処理部102によって受信された報知信号から、ADC111、復調部112及び復号部113によって抽出される。尚、このステップS241の処理は、報知信号が送信される時間リソースにおいて行われれば十分なので、その他の時間リソースにおいて省略されるものとする。
【0053】
送信停止状態において、ステップS241において判定された時間リソースが到来すると、制御部107は第2の送信処理部106の動作を開始させ(ステップS242)、無線中継装置の動作状態を送信再開状態に遷移させる。
【0054】
送信再開状態において、電力測定部117は選択信号の信号電力を測定し(ステップS251)、制御部107は第2の電力測定結果を取得する。制御部107は、ステップS251において測定された信号電力が電力閾値Pth2よりも大きいか否かを判定する(ステップS252)。ステップS252において、信号電力が電力閾値Pth2よりも大きければ処理はステップS253に進み、そうでなければ処理はステップS254に進む。
【0055】
ステップS253において、制御部107はタイマ(T1)に「0」を代入し、無線中継装置の動作状態を通常状態に遷移させる。ステップS254において、制御部107は第2の送信処理部106の動作を停止させ、無線中継装置の動作状態を送信停止状態に遷移させる。
【0056】
通常状態、送信停止状態及び送信再開状態において、以上説明したように制御部107及び信号処理部110が動作することにより、図4の無線中継装置の上りリンク中継動作が効果的に制御される。具体的には、通常状態において上りリンク信号が所定時間以上存在しなければ、制御部107は無線中継装置の動作状態を送信停止状態に遷移させる。送信停止状態において制御部107は第2の送信処理部106の動作を停止させるため、不要な雑音放射及び無駄な電力消費が抑制される。一方、送信停止状態であってもアクセス信号に割り当てられた時間リソースの到来時には、制御部107は無線中継装置の動作状態を送信再開状態に遷移させ、第2の送信処理部106の動作を一時的に再開させる。そして、制御部107は、信号電力に基づきアクセス信号が実際に検出されると無線中継装置の動作状態を通常状態に遷移させ、そうでなければ無線中継装置の動作状態を送信停止状態に遷移させる。故に、この制御によれば、アクセス信号が中継されないなどの上りリンク中継動作の停止により起こり得る不利益を回避しつつ、雑音放射の低減及び電力消費の削減などの上りリンク中継動作の停止による利益を得ることができる。特に、この制御は、アクセス信号に割り当てられた時間リソースの到来時に、アクセス信号の信号電力が検出されるか否かに関わらず第2の送信処理部106の動作を一時的に再開させるので、アクセス信号をより確実に第1の無線通信装置10へ中継することが可能となる。また、この制御は、通常状態及び送信停止状態に加えて送信再開状態を定義しているので、アクセス信号に割り当てられた時間リソースの到来時に送信停止状態から通常状態に直接遷移するような制御に比べて、アクセス信号が存在しない場合に素早く送信停止状態に遷移できるという利点を持つ。
【0057】
また、通常状態、送信停止状態及び送信再開状態における制御部107及び信号処理部110の動作は、図9、図14及び図15に示すように夫々変更されてもよい。
送信停止状態において、制御部107は報知信号から抽出された情報に基づいて、アクセス信号の送信が許可された時間及び周波数リソースを判定する(ステップS261)。この情報は、第1の受信処理部102によって受信された報知信号から、ADC111、復調部112及び復号部113によって抽出される。尚、このステップS261の処理は、報知信号が送信される時間リソースにおいて行われれば十分なので、その他の時間リソースにおいて省略されるものとする。
【0058】
送信停止状態において、ステップS261において判定された時間リソースが到来すると、制御部107は第2の送信処理部106及び第2の受信処理部105の動作を開始させ(ステップS262)、無線中継装置の動作状態を送信再開状態に遷移させる。
【0059】
送信再開状態において、電力測定部117は選択信号の信号電力を測定し(ステップS271)、制御部107は第2の電力測定結果を取得する。制御部107は、ステップS271において測定された信号電力が電力閾値Pth2よりも大きいか否かを判定する(ステップS272)。ステップS272において、信号電力が電力閾値Pth2よりも大きければ処理はステップS273に進み、そうでなければ処理はステップS274に進む。
【0060】
ステップS273において、制御部107はタイマ(T1)に「0」を代入し、無線中継装置の動作状態を通常状態に遷移させる。ステップS274において、制御部107は第2の送信処理部106及び第2の受信処理部105の動作を停止させ、無線中継装置の動作状態を送信停止状態に遷移させる。
【0061】
通常状態、送信停止状態及び送信再開状態において、以上説明したように制御部107及び信号処理部110が動作することにより、図4の無線中継装置の上りリンク中継動作が効果的に制御される。具体的には、通常状態において上りリンク信号が所定時間以上存在しなければ、制御部107は無線中継装置の動作状態を送信停止状態に遷移させる。送信停止状態において制御部107は第2の送信処理部106及び第2の受信処理部105の動作を停止させるため、不要な雑音放射及び無駄な電力消費が抑制される。一方、送信停止状態であってもアクセス信号に割り当てられた時間リソースの到来時には、制御部107は無線中継装置の動作状態を送信再開状態に遷移させ、第2の送信処理部106及び第2の受信処理部105の動作を一時的に再開させる。そして、制御部107は、信号電力に基づきアクセス信号が実際に検出されると無線中継装置の動作状態を通常状態に遷移させ、そうでなければ無線中継装置の動作状態を送信停止状態に遷移させる。故に、この制御によれば、アクセス信号が中継されないなどの上りリンク中継動作の停止により起こり得る不利益を回避しつつ、雑音放射の低減及び電力消費の削減などの上りリンク中継動作の停止による利益を得ることができる。特に、この制御は、第2の送信処理部106及び第2の送信処理部105の動作を停止するため、第2の送信処理部105のみの動作を停止させる制御に比べて電力消費をより大きく削減できる。また、この制御は、アクセス信号に割り当てられた時間リソースの到来時に、アクセス信号の信号電力が検出されるか否かに関わらず第2の送信処理部106の動作を一時的に再開させるので、アクセス信号をより確実に第1の無線通信装置10へ中継することが可能となる。また、この制御は、通常状態及び送信停止状態に加えて送信再開状態を定義しているので、アクセス信号に割り当てられた時間リソースの到来時に送信停止状態から通常状態に直接遷移するような制御に比べて、アクセス信号が存在しない場合に素早く送信停止状態に遷移できるという利点を持つ。
【0062】
以上説明したように、本実施形態に係る無線中継装置は、通常状態及び非通常状態(送信停止状態を含む)を定義し、非通常状態においてアクセス信号が検出されれば通常状態に遷移し、通常状態において上りリンク信号が所定時間以上検出されなければ非通常状態に遷移している。従って、本実施形態に係る無線中継装置によれば、アクセス信号が中継されないなどの上りリンク中継動作の停止により起こり得る不利益を回避しつつ、雑音放射の低減及び電力消費の削減などの上りリンク中継動作の停止による利益を得ることができる。
【0063】
(第2の実施形態)
図16に示すように、本発明の第2の実施形態に係る無線中継装置は、第1のアンテナ101、第1の受信処理部102、第1の送信処理部103、第2のアンテナ104、第2の受信処理部105、第2の送信処理部106、制御部107及び信号処理部310を有する。また、信号処理部310は、ADC111、復調部112、復号部113、電力測定部114、ADC115、選択部116、電力測定部117、記憶部318及びDAC(デジタル−アナログ変換器)319を含む。以下の説明では、図16において図4と同一部分には同一符号を付して示し、異なる部分を中心に述べる。
【0064】
記憶部318は、送信停止状態において受信されたアクセス信号の候補をバッファリングする。より具体的には、記憶部318には、アクセス信号に割り当てられた時間リソースにおいて、ADC115からのデジタル信号(第2の受信処理部105からの上りリンク信号に対応するデジタル信号)または選択部116からの選択信号が入力される。このデジタル信号または選択信号は、無線中継装置によってアクセス信号が実際に受信されていれば当該アクセス信号に対応する。制御部107は、アクセス信号を検出すると、記憶部318に記憶されている信号を記憶部318からDAC319に順次入力させる。一方、制御部107は、アクセス信号を検出しなければ、記憶部318に記憶されている信号を消去させる。
【0065】
DAC319は、記憶部318からの信号をデジタルドメインからアナログドメインに変換し、アナログ信号を得る。DAC319は、アナログ信号を第2の送信処理部106に入力する。
【0066】
制御部107は、例えば図17に示されるように、通常状態、送信停止状態及び送信再開状態の間の遷移を定義してよい。具体的には、制御部107は、通常状態において上りリンク信号が所定時間以上存在しなければ動作状態を送信停止状態に遷移させる。また、制御部107は、送信停止状態においてアクセス信号を検出すれば動作状態を送信再開状態に遷移させる。また、制御部107は、送信再開状態においてアクセス信号に割り当てられた時間リソースが経過すると、動作状態を通常状態に遷移させる。
【0067】
以下、図18及び図19を用いて、送信停止状態及び送信再開状態における制御部107及び信号処理部310の動作を夫々説明する。尚、通常状態における制御部107及び信号処理部310の動作は、図7に示される通りである。
【0068】
送信停止状態において、制御部107は報知信号から抽出された情報に基づいて、アクセス信号の送信が許可された時間及び周波数リソースを判定し(ステップS401)、処理はステップS402に進む。この情報は、第1の受信処理部102によって受信された報知信号から、ADC111、復調部112及び復号部113によって抽出される。尚、このステップS401の処理は、報知信号が送信される時間リソースにおいて行われれば十分なので、その他の時間リソースにおいて省略されるものとする。
【0069】
電力測定部117は、アクセス信号の送信が許可された時間リソースにおいて選択信号の信号電力の測定を開始する(ステップS402)。また、制御部107は、ADC115からのデジタル信号または選択部116からの選択信号を記憶部318に記憶させる(ステップS403)。制御部107は、ステップS402において測定された信号電力が電力閾値Pth2よりも大きいか否かを判定する(ステップS404)。ステップS404において、信号電力が電力閾値Pth2よりも大きければ処理はステップS405に進み、そうでなければ処理はステップS406に進む。
【0070】
ステップS405において、制御部107はタイマ(T1)に「0」を代入し、無線中継装置の動作状態を送信再開状態に遷移させる。ステップS406において、制御部107はステップS403において記憶部318に記憶された信号を消去し、無線中継装置の動作状態を送信停止状態に遷移させる。ステップS404においてアクセス信号が存在しないことが判定されているため、記憶部318に記憶されている信号は中継不要となり消去される。
【0071】
送信再開状態において、制御部107は第2の送信処理部106の動作を開始させる(ステップS411)。第2の送信処理部106は、記憶部318に記憶されているアクセス信号をDAC319を介して順次取得し、送信処理を行う(ステップS412)。このアクセス信号に割り当てられた時間リソースが経過すると、制御部107は無線中継装置の動作状態を通常状態に遷移させる。
【0072】
通常状態、送信停止状態及び送信再開状態において、以上説明したように制御部107及び信号処理部310が動作することにより、図16の無線中継装置の上りリンク中継動作が効果的に制御される。具体的には、通常状態において上りリンク信号が所定時間以上存在しなければ、制御部107は無線中継装置の動作状態を送信停止状態に遷移させる。送信停止状態において制御部107は第2の送信処理部106の動作を停止させるため、不要な雑音放射及び無駄な電力消費が抑制される。一方、送信停止状態であってもアクセス信号に割り当てられた時間リソースにおいて、制御部107は上りリンク信号をアクセス信号の候補として記憶部318に記憶させておく。送信停止状態において信号電力に基づきアクセス信号が実際に検出されると、制御部107は無線中継装置の動作状態を送信再開状態に遷移させ、第2の送信処理部106の動作を開始させる。そして、第2の送信処理部106は、記憶部318にバッファリングされているアクセス信号を第1の無線通信装置10へ順次送信する。また、制御部107は、送信再開状態においてアクセス信号に割り当てられた時間リソースが経過すると、無線中継装置の動作状態を通常状態に遷移させる。故に、この制御によれば、アクセス信号が中継されないなどの上りリンク中継動作の停止により起こり得る不利益を回避しつつ、雑音放射の低減及び電力消費の削減などの上りリンク中継動作の停止による利益を得ることができる。特に、この制御は、送信停止状態から送信再開状態への遷移に伴う遅延が発生するものの、送信停止状態においてアクセス信号の候補を記憶部318にバッファリングさせるのでアクセス信号をより正確に第1の無線通信装置10へ中継することが可能となる。
【0073】
また、通常状態、送信停止状態及び送信再開状態における制御部107及び信号処理部310の動作は、図9、図20及び図19に示すように夫々変更されてもよい。
送信停止状態において、制御部107は報知信号から抽出された情報に基づいて、アクセス信号の送信が許可された時間及び周波数リソースを判定し(ステップS421)、処理はステップS422に進む。この情報は、第1の受信処理部102によって受信された報知信号から、ADC111、復調部112及び復号部113によって抽出される。尚、このステップS421の処理は、報知信号が送信される時間リソースにおいて行われれば十分なので、その他の時間リソースにおいて省略されるものとする。
【0074】
アクセス信号の送信が許可された時間リソースにおいて、制御部107は第2の受信処理部105の動作を開始させ、電力測定部117は選択信号の信号電力の測定を開始する(ステップS422)。また、制御部107は、ADC115からのデジタル信号または選択部116からの選択信号を記憶部318に記憶させる(ステップS423)。制御部107は、ステップS422において測定された信号電力が電力閾値Pth2よりも大きいか否かを判定する(ステップS424)。ステップS424において、信号電力が電力閾値Pth2よりも大きければ処理はステップS425に進み、そうでなければ処理はステップS426に進む。
【0075】
ステップS425において、制御部107はタイマ(T1)に「0」を代入し、無線中継装置の動作状態を送信再開状態に遷移させる。ステップS426において、制御部107はステップS423において記憶部318に記憶された信号を消去し、無線中継装置の動作状態を送信停止状態に遷移させる。ステップS424においてアクセス信号が存在しないことが判定されているため、記憶部318に記憶されている信号は中継不要となり消去される。
【0076】
通常状態、送信停止状態及び送信再開状態において、以上説明したように制御部107及び信号処理部310が動作することにより、図16の無線中継装置の上りリンク中継動作が効果的に制御される。具体的には、通常状態において上りリンク信号が所定時間以上存在しなければ、制御部107は無線中継装置の動作状態を送信停止状態に遷移させる。送信停止状態において制御部107は第2の送信処理部106及び第2の受信処理部105の動作を停止させるため、不要な雑音放射及び無駄な電力消費が抑制される。一方、送信停止状態であってもアクセス信号に割り当てられた時間リソースにおいて、制御部107は第2の受信処理部105の動作を一時的に再開させ、上りリンク信号をアクセス信号の候補として記憶部318に記憶させておく。送信停止状態において信号電力に基づきアクセス信号が実際に検出されると、制御部107は無線中継装置の動作状態を送信再開状態に遷移させ、第2の送信処理部106の動作を開始させる。そして、第2の送信処理部106は、記憶部318にバッファリングされているアクセス信号を第1の無線通信装置10へ順次送信する。また、制御部107は、送信再開状態においてアクセス信号に割り当てられた時間リソースが経過すると、無線中継装置の動作状態を通常状態に遷移させる。故に、この制御によれば、アクセス信号が中継されないなどの上りリンク中継動作の停止により起こり得る不利益を回避しつつ、雑音放射の低減及び電力消費の削減などの上りリンク中継動作の停止による利益を得ることができる。特に、この制御は、第2の送信処理部106及び第2の送信処理部105の動作を停止させるため、第2の送信処理部105のみの動作を停止させる制御に比べて電力消費をより大きく削減できる。また、この制御は、送信停止状態から送信再開状態への遷移に伴う遅延が発生するものの、送信停止状態においてアクセス信号の候補を記憶部318にバッファリングさせるのでアクセス信号をより正確に第1の無線通信装置10へ中継することが可能となる。
【0077】
以上説明したように、本実施形態に係る無線中継装置は、通常状態及び非通常状態(送信停止状態及び送信再開状態を含む)を定義し、非通常状態においてアクセス信号が検出されれば通常状態に遷移し、通常状態において上りリンク信号が所定時間以上検出されなければ非通常状態に遷移している。従って、本実施形態に係る無線中継装置によれば、アクセス信号が中継されないなどの上りリンク中継動作の停止により起こり得る不利益を回避しつつ、雑音放射の低減及び電力消費の削減などの上りリンク中継動作の停止による利益を得ることができる。より具体的には、本実施形態に係る無線中継装置は、送信停止状態においてアクセス信号の送信が許可された時間リソースで受信した上りリンク信号をバッファリングする。そして、無線中継装置は、送信停止状態においてアクセス信号を検出すると送信再開状態に遷移し、バッファリングされたアクセス信号を送信する。従って、本実施形態に係る無線中継装置によれば、アクセス信号をより正確に中継することが可能となる。
【0078】
尚、各実施形態に係る無線中継装置は、様々なフォーマットの無線信号に関して適用可能である。例えば、アクセス信号は、図21及び図22においてハッチングされた領域に示されるように、全時間リソースまたは連続する時間リソースでの送信が許可されてもよい。全時間リソースでの送信が許可されるアクセス信号に関して、各実施形態に係る無線中継装置を適用する場合には、全ての時間リソースにおいてアクセス信号の送信が許可されることを前提として、制御部107及び信号処理部110(または310)の動作を一部変更することが望ましい。
【0079】
例えば、前述の図8に示される制御部107及び信号処理部110の動作は、図23に示されるように変更されてよい。図23の動作は、以下の通りである。
送信停止状態において、電力測定部117は選択信号の信号電力を測定し(ステップS431)、制御部107は第2の電力測定結果を取得する。制御部107は、ステップS431において測定された信号電力が電力閾値Pth2よりも大きいか否かを判定する(ステップS432)。この電力閾値Pth2は、アクセス信号が存在するか否かを判定するために使用される。ステップS432において、信号電力が電力閾値Pth2よりも大きければ処理はステップS433に進む。一方、信号電力が電力閾値Pth2以下であるならば制御部107は無線中継装置の動作状態を送信停止状態に遷移させる。
【0080】
ステップS433において、制御部107はタイマ(T1)に「0」を代入する。次に、制御部107は第2の送信処理部106の動作を開始させ(ステップS434)、無線中継装置の動作状態を通常状態に遷移させる。
【0081】
例えば、前述の図18に示される制御部107及び信号処理部310の動作は、図24に示されるように変更されてよい。図24の動作は、以下の通りである。
送信停止状態において、電力測定部117は、選択信号の信号電力の測定を開始する(ステップS441)。また、制御部107は、ADC115からのデジタル信号または選択部116からの選択信号を記憶部318に記憶させる(ステップS442)。制御部107は、ステップS441において測定された信号電力が電力閾値Pth2よりも大きいか否かを判定する(ステップS443)。ステップS443において、信号電力が電力閾値Pth2よりも大きければ処理はステップS444に進み、そうでなければ処理はステップS445に進む。
【0082】
ステップS444において、制御部107はタイマ(T1)に「0」を代入し、無線中継装置の動作状態を送信再開状態に遷移させる。ステップS445において、制御部107はステップS442において記憶部318に記憶された信号を消去し、無線中継装置の動作状態を送信停止状態に遷移させる。ステップS443においてアクセス信号が存在しないことが判定されているため、記憶部318に記憶されている信号は中継不要となり消去される。
【0083】
以上のように、中継対象となる無線信号のフォーマットに応じて、前述の構成、動作などを変更することにより、各実施形態に係る無線中継装置における上りリンク中継動作をより効果的に制御することが可能となる。
【0084】
また、制御部107及び信号処理部110(または310)が、一般の無線中継装置に接続される信号処理装置として構成されてもよい。この信号処理装置は、例えばCPU、DSPなどのデジタル信号処理のためのハードウェアを用いて構成できる。この信号処理装置を接続することにより、一般の無線中継装置は各実施形態に係る無線中継装置と同様の効果を奏する。
【0085】
尚、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また上記各実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、各実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0086】
例えば、上記した各実施形態の処理を実現するプログラムを、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に格納して提供することも可能である。記憶媒体としては、磁気ディスク、光ディスク(CD−ROM、CD−R、DVDなど)、光磁気ディスク(MOなど)、半導体メモリなど、プログラムを記憶でき、かつ、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体であれば、その記憶形式は何れの形態であってもよい。
【0087】
また、上記した各実施形態の処理を実現するプログラムを、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ(サーバ)上に格納し、ネットワーク経由でコンピュータ(クライアント)にダウンロードさせてもよい。
【符号の説明】
【0088】
10・・・第1の無線通信装置
20・・・第2の無線通信装置
30・・・無線中継装置
40・・・第1の無線通信リンク
50・・・第2の無線通信リンク
101・・・第1のアンテナ
102・・・第1の受信処理部
103・・・第1の送信処理部
104・・・第2のアンテナ
105・・・第2の受信処理部
106・・・第2の送信処理部
107・・・制御部
110・・・信号処理部
111・・・ADC
112・・・復調部
113・・・復号部
114・・・電力測定部
115・・・ADC
116・・・選択部
117・・・電力測定部
310・・・信号処理部
318・・・記憶部
319・・・DAC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の無線通信装置からの下りリンク信号を受信する第1の受信処理部と、
下りリンク信号を第2の無線通信装置に送信する第1の送信処理部と、
前記第2の無線通信装置からの上りリンク信号を受信する第2の受信処理部と、
動作状態が通常状態であるならば上りリンク信号を前記第1の無線通信装置に送信し、動作状態が送信停止状態であるならば上りリンク信号の前記第1の無線通信装置への送信を行わない第2の送信処理部と、
第1の時間リソース及び第1の周波数リソースにおいて前記第1の無線通信装置によって送信される第1の下りリンク信号から、前記第2の無線通信装置による第1の上りリンク信号の送信が許可される第2の時間リソース及び第2の周波数リソースを示す情報を抽出する抽出部と、
上りリンク信号の第1の信号電力を測定する第1の電力測定部と、
前記第2の時間リソース及び前記第2の周波数リソースにおいて受信された上りリンク信号の第2の信号電力を測定する第2の電力測定部と、
動作状態が通常状態であるときに上りリンク信号を前記第1の信号電力に基づいて所定時間以上検出しなければ動作状態を送信停止状態を含む非通常状態に遷移させ、動作状態が非通常状態であるときに前記第2の信号電力が閾値以上であるならば動作状態を通常状態に遷移させる制御部と
を具備する無線中継装置。
【請求項2】
前記非通常状態は、送信再開状態を更に含み、
前記制御部は、動作状態が通常状態であるときに上りリンク信号を前記第1の信号電力に基づいて所定時間以上検出しなければ動作状態を送信停止状態に遷移させ、動作状態が送信停止状態であるときに前記第2の時間リソースが到来すると動作状態を送信再開状態に遷移させ、動作状態が送信再開状態であるときに前記第2の信号電力が前記閾値以上であるならば動作状態を通常状態に遷移させ、動作状態が送信再開状態であるときに前記第2の信号電力が前記閾値未満であるならば動作状態を送信停止状態に遷移させ、
前記第2の送信処理部は、送信再開状態において上りリンク信号の前記第1の無線通信装置への送信を再開する、
請求項1記載の無線中継装置。
【請求項3】
前記第2の時間リソース及び前記第2の周波数リソースにおいて受信された上りリンク信号を記憶する記憶部を更に具備し、
前記非通常状態は、送信再開状態を更に含み、
前記制御部は、動作状態が通常状態であるときに上りリンク信号を前記第1の信号電力に基づいて所定時間以上検出しなければ動作状態を送信停止状態に遷移させ、動作状態が送信停止状態であるときに前記第2の信号電力が前記閾値以上であるならば動作状態を送信再開状態に遷移させ、動作状態が送信再開状態であるときに前記第2の時間リソースが経過すると動作状態を通常状態に遷移させ、
前記第2の送信処理部は、送信再開状態において前記記憶部に記憶されている信号を前記第1の無線通信装置へ送信する、
請求項1記載の無線中継装置。
【請求項4】
前記第2の受信処理部は、動作状態が通常状態であるならば上りリンク信号を受信し、動作状態が通常状態から非通常状態に遷移するときに上りリンク信号の受信を停止し、動作状態が非通常状態であるときに前記第2の時間リソースにおいて前記上りリンク信号の受信を再開する、請求項1記載の無線中継装置。
【請求項5】
第1の無線通信装置から第2の無線通信装置への下りリンク信号と、前記第2の無線通信装置から前記第1の無線通信装置への上りリンク信号とを中継する無線中継装置に接続される信号処理装置において、
第1の時間リソース及び第1の周波数リソースにおいて前記第1の無線通信装置によって送信される第1の下りリンク信号から、前記第2の無線通信装置による第2の上りリンク信号の送信が許可される第2の時間リソース及び第2の周波数リソースを示す情報を抽出する抽出部と、
上りリンク信号の第1の信号電力を測定する第1の電力測定部と、
前記第2の時間リソース及び前記第2の周波数リソースにおいて受信された上りリンク信号の第2の信号電力を測定する第2の電力測定部と、
前記無線中継装置の動作状態が上りリンク信号が送信される通常状態であるときに上りリンク信号を前記第1の信号電力に基づいて所定時間以上検出しなければ動作状態を上りリンク信号の送信が行われない送信停止状態を含む非通常状態に遷移させ、動作状態が非通常状態であるときに前記第2の信号電力が閾値以上であるならば動作状態を通常状態に遷移させる制御部と
を具備する信号処理装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−114399(P2011−114399A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266616(P2009−266616)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】