説明

無線制御システム

【課題】、無線ネットワークおよびゲートウェイノードの負荷を軽減し、システムの信頼性を向上させることを可能とする無制御システムを実現すること。
【解決手段】無線ネットワークを構成する複数のセンサノードから複数のゲートウェイノードの少なくともいずれか一つを介し監視システムにデータを送信する無線制御システムにおいて、前記各ゲートウェイノードは、異なる通信設定が設定可能な複数の無線通信部を有し、前記各センサノードは、前記各ゲートウェイノードの前記各無線通信部のうち無線通信部を一つ選択し、この無線通信部に到達する経路で最も通信品質が良好である経路を選択してデータを送信することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線制御システムに関し、特に無線ネットワークおよびゲートウェイノード(以下、GWノードという)の負荷を軽減し、システムの信頼性を向上させることを可能とする無線制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、たとえばインダストリアルオートメーションにおけるプロセス制御システムを、無線通信を利用した無線制御システムを構成することが提案されている。これは、従来の制御システムが有線ネットワークとして構成されていたことに起因して、通信距離の制限や配線の引き回しの制約などで温度や流量などを測定するセンサをプラント内の最適位置に設置できず、制御精度が低下する不都合を解消するためのものである。
【0003】
このような従来の無線制御システムに関連する先行技術文献としては次のようなものがある。
【0004】
【特許文献1】特表2005−515695号公報
【0005】
図8は、従来の無線制御システムの一例を示す構成ブロック図である。図8において、センサノード20〜25で測定された測定データを収集・記憶する監視システム1は、ネットワークNW100を介して、各センサノードと通信を行うGWノード10と相互に接続されている。
【0006】
GWノード10は、無線ネットワーク回線(以下、無線回線という)を介して、温度や流量などの物理量を測定するセンサ機能や測定データを無線伝送する無線通信機能を有するセンサノード20〜23と接続される。
【0007】
センサノード21は無線回線を介してセンサノード20、22、23、24、25と接続される。また、センサノード24は無線回線を介してセンサノード22、25と接続され、センサノード23は無線回線を介してセンサノード20、25と接続される。
【0008】
このように、センサノード20〜25はメッシュ型のマルチホップ無線ネットワークを形成している。また図8では、センサノード23がセンサノード20、GWノード10を介して監視システム1にデータを送信するデータ通信NR100を示している。
【0009】
特に図示しないがGWノード10は、センサノードや他のGWノードとの間で無線通信を行う無線通信部、監視システムとの間で通信を行う通信部(有線)、各部の動作を制御する演算制御部、GWノードとして動作させるためのプログラムや自ノードから監視システム1に到達するまでの経路情報などが格納されている記憶部から構成されている。
【0010】
またセンサノード20〜25は、他のセンサノードやGWノードとの間で無線通信を行う無線通信部、各部の動作を制御する演算制御部、センサノードとして動作させるためのプログラムやセンサノードからGWノードに到達するまでの経路情報などが格納されている記憶部から構成されている。
【0011】
ここでセンサノード20〜25は、アドレス/名前解決とともに経路探索を行ったり、オペレータが事前に各センサノードに経路情報を設定することにより、データをGWノード10に転送するための経路情報をあらかじめ把握している。またGWノード10は、監視システム1に到達するまでの経路情報をあらかじめ把握している。
【0012】
従来の無線制御システムの動作についてデータ通信NR100を例に説明する。センサノード23は、センサ機能により流量や温度などの物理量を測定し、測定データを記憶する。センサノード23は、記憶部にあらかじめ格納された経路情報に基づき、監視システム1へ測定データを転送するための中継点としてセンサノード20を選択し、測定データを送信する。
【0013】
センサノード20は、記憶部にあらかじめ格納された経路情報に基づき、監視システム1へ測定データを転送するための中継点としてGWノード10を選択し、センサノード20で得られた測定データを送信する。
【0014】
GWノード10において、無線通信部は無線回線を介してセンサノード20から測定データを受信し、演算制御部は測定データを記憶部に記憶する。そして演算制御部は、記憶部にあらかじめ格納された経路情報に基づき、通信部を制御してネットワークNW100を介し測定データを監視システム1に送信する。
【0015】
すなわちセンサノード23は、データ通信NR100に示すようにセンサノード20、GWノード10を介して監視システム1に測定データを送信することになる。
【0016】
監視システム1は、GWノード10から転送される測定データを記憶してセンサノード23で測定された測定データを把握するとともに、同様に他のセンサノードからも測定データを収集・記憶することにより、プラントの運転状態を把握する。
【0017】
そして監視システム1は、収集した測定データを図示しないコントローラに転送する。コントローラは、測定データが所定の目標値に収束するように図示しないバルブや調整弁などの制御機器を操作制御するための制御データを算出し、制御データに基づいて制御機器を操作制御する。
【0018】
この結果、監視システムは各センサノードから測定データを収集・記憶することによりプラントの運転状態を把握でき、プラントの最適な運転を支援することができる。
【0019】
ところで、このような無線制御システムを構築するのにあたり、各センサノードは、あらかじめGWノードの設置場所、IPアドレスなどのネットワーク情報を把握している必要がある。そこで、ネットワーク情報を事前に各センサノードに設定したり、アドレス/名前解決機構を利用し無線ネットワークを介してネットワーク情報を取得することが行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、従来の無線制御システムでは、測定データの送受信に係る無線通信やネットワーク情報の取得に係る無線通信を含む全ての通信がGWノードを中継して行われるため、GWノードやその周辺のセンサノードの通信負荷が大きくなってしまうという問題点がある。
【0021】
また、このようにGWノード周辺の通信負荷が増大すると、無線ネットワークでは、無線通信の性質上、速度やエラーレートといった通信性能の劣化に直接影響を及ぼすため、システム全体の性能や信頼性が低下してしまうという問題点がある。
【0022】
また、センサノードの設置場所によっては、障害物が存在すると電波障害が生じて無線通信が不安定に陥りやすくなり、GWノードの通信負荷に偏りが生じてシステム全体の性能が低下するという問題点がある。
【0023】
またGWノードやセンサノード間の無線通信では、各ノード間の距離とは無関係に設置位置のたとえば数センチ単位などの微妙な差異により、複数の反射波が重なり合って受信信号強度が劣化してしまうという従来からの課題(マルチパスフェージングによる通信性能劣化)があるところ、従来の無線制御システムではGWノードに多数のデータが集中するためマルチパスフェージングによって通信品質が低下してしまう。
【0024】
このマルチパスフェージングによる通信性能劣化の課題に対して、各ノードの適切な設置位置を定める必要があるが、従来の無線制御システムではGWノードが無線通信部を1つしか搭載していないので、GWノードの設置位置の自由度が小さく、全センサノードや全GWノードに対してフェージングが起こらない設置位置やその姿勢を定めることは困難である。
【0025】
また、上述のようなGWノードの通信負荷増大の問題点に対して通信負荷を低減させるために、複数のGWノードを設置して通信負荷を分散することが行われているが、センサノードやGWノードの設置場所によってはGWノードの通信負荷に偏りを生じることがあり、結果としてGWノードの負荷を制御できないことがある。
【0026】
一方、緊急度の高いアラームデータと比較的優先度の低いデータとが共存する無線制御システムの場合では、複数のGWノードのうち少なくとも一つのGWノードがあらかじめ特定の周波数帯域が緊急度の高いアラームデータの送受信専用に設定し、データに優先順位をつけてデータ通信が行われている。
【0027】
このような場合であっても、緊急度の高いデータ通信用の周波数帯域が必要となるが、上述の従来の無線制御システムでは、GWノードは無線通信部を1つしか備えていないので、周波数帯域の割当によるデータの優先度付けは困難である。
【0028】
具体的には、1つの無線通信部で帯域割当を実現する方法として、周波数ホッピングや時間分割通信などの技術が存在するが、これらの技術ではデータのリアルタイム性やスループットなどの性能面に課題があり、緊急度の高いアラームデータの伝送には適さないという問題点がある。
【0029】
本発明はこれらの問題点を解決するものであり、その目的は、無線ネットワークおよびゲートウェイノードの負荷を軽減し、システムの信頼性を向上させることを可能とする無制御システムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
無線ネットワークを構成する複数のセンサノードから複数のゲートウェイノードの少なくともいずれか一つを介し監視システムにデータを送信する無線制御システムにおいて、
前記各ゲートウェイノードは、異なる通信設定が設定可能な複数の無線通信部を有し、
前記各センサノードは、前記各ゲートウェイノードの前記各無線通信部のうち無線通信部を一つ選択し、この無線通信部に到達する経路で最も通信品質が良好である経路を選択してデータを送信することを特徴とする。
【0031】
請求項2記載の発明は、
前記各ゲートウェイノードは、前記各無線通信部の周波数チャネル、変調方式、識別IDを含む通信設定を変更すること特徴とする。
【0032】
請求項3記載の発明は、
請求項1または2記載の無線制御システムにおいて、
前記センサノードは、
前記各ゲートウェイノードの各無線通信部の無線通信設定に基づき、前記各無線通信部のうち前記監視システムに到達するまでの中継点として無線通信部を一つ選択することを特徴とする。
【0033】
請求項4記載の発明は、
請求項1〜請求項3いずれかに記載の無線制御システムにおいて、
前記センサノードは、自ノードで得た測定データまたは他のセンサノードから受信した測定データが緊急用データである場合には、前記各ゲートウェイノードの各無線通信部の無線通信設定に基づき、前記各無線通信部のうち緊急データ通信用の無線通信設定が施されている無線通信部を選択し、この無線通信部に到達する経路で最も通信品質が良好である経路を選択してデータを送信することを特徴とする。
【0034】
請求項5記載の発明は、
請求項1〜請求項4いずれかに記載の無線制御システムにおいて、
前記各ゲートウェイノードは、無線通信を行う複数の無線通信部と、前記監視システムと有線通信または無線通信によるデータ通信を行う通信部と、少なくとも前記各ゲートウェイノードを介して前記各センサノードから前記監視システムに到達するまでの経路情報、自ノードのアドレス情報および前記各無線通信部の無線通信設定情報を含むGW情報通知データを格納する記憶部と、前記無線通信部の通信設定を行い、前記GW情報通知データを前記各センサノードに送信し、前記経路情報に基づいて前記各センサノードからの前記データを前記監視システムに転送する演算制御部とから構成されることを特徴とする。
【0035】
請求項6記載の発明は、
請求項1〜請求項5いずれかに記載の無線制御システムにおいて、
前記各センサノードは、少なくとも自ノードから前記各ゲートウェイノードに到達するまでの経路情報および経路コスト情報を格納する記憶部と、無線通信を行う無線通信部と、前記GW情報通知データを他のセンサノードに転送し、前記GW情報通知データに基づき少なくとも前記各ゲートウェイノードのアドレス情報を前記記憶部に記憶し、前記経路情報、前記経路コスト情報および前記GW情報通知データに基づいて前記ゲートウェイノードに到達する経路で最も通信品質が良好である経路を選択し、この経路に基づき自ノードで得たデータまたは他のセンサノードから受信したデータを前記ゲートウェイノードまたはその他のセンサノードに送信する演算制御部とから構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る無線制御システムによれば、無線ネットワークおよびゲートウェイノードの負荷を軽減でき、システムの信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
図1は本発明に係る無線制御システムの一実施例を示す構成ブロック図であり、図8と共通する部分には同一の符号を付けて適宜説明を省略する。図8との相違点は、GWノード50に出力、周波数、変調方式などの異なる無線通信の物理的特性や通信設定が設定可能な無線通信部50、51が複数設けられていること、各センサノードがGWノードの複数の無線通信部のうちいずれか一つを選択して接続することである。
【0038】
図1において、監視システム1はネットワークNW100を介してGWノード50と相互に接続されている。図1において、センサノード61〜64、71〜73で測定された測定データを収集・記憶する監視システム1は、ネットワークNW100を介して、GWノード50と相互に接続されている。
【0039】
GWノード50の無線通信部51は、無線回線を介してセンサノード61、62と接続されている。センサノード62は、無線回線を介してセンサノード61、63、64と相互に接続されている。
【0040】
GWノード50の無線通信部52は、無線回線を介してセンサノード71、72と接続されている。センサノード72は、無線回線を介してセンサノード71、73と相互に接続されている。
【0041】
このように、センサノード61〜64、71〜73は、メッシュ型のマルチホップ無線ネットワークを形成している。図1では、センサノード63がセンサノード61、GWノード50を介して監視システム1にデータを送信するデータ通信NR200の動作を示している。
【0042】
図2は、図1のGWノード50の無線通信機能の一例を示す構成ブロック図である。図2において、無線通信部51、52および通信部53は演算制御部54に接続され、演算制御部54は記憶部55に接続されている。
【0043】
通信部53は、主に監視システム1との間で、たとえばTCP/IPプロトコルに基づくデータ通信を監視システム1と行う。無線通信部51は、たとえば無線通信を送受信するためのアンテナ素子を備えるものであって、主にセンサノード61〜64や図示しない他のGWノードとの間で無線通信を行う。無線通信部52は、たとえばアンテナ素子を備えるものであって、主にセンサノード71〜73や図示しない他のGWノードとの間で無線通信を行う。
【0044】
演算制御部54(たとえばCPU)は、各種機能や各部の動作を制御する。記憶部55はたとえばRAMやROMなどであり、主にOSやGWノードとして動作させるためのプログラムやアプリケーション、これらプログラムなどの実行時に使用されるデータ、自ノードから監視システム1に到達するまでの経路情報などの各種情報を格納する。
【0045】
図3は、図1のGWノード50を構成する演算制御部54の機能ブロック例図である。データ送受部54aは、主にデータフレームを生成し、無線通信部51および52、通信部53を介してデータの送受信を行う。経路情報格納部54bは、主に自ノードから監視システム30に到達するまでの経路情報などを格納する。
【0046】
経路情報提供部54cは、GWノードの設置場所、アドレスなどのネットワーク情報を各センサノードに通知する。測定データ管理部54dは、無線通信部51、52を介して受信しデータ送受部54aで抽出取得した各センサノード61〜64、71〜73からの測定データを記憶部55に記憶する。通信設定部54eは、無線通信部51、52の出力、周波数、変調方式などの無線通信の物理的特性に関わる設定を変更し、これら無線通信設定情報を記憶部54に記憶する。
【0047】
なお、無線制御システムには、上記のような複数の無線通信部を有するGWノードが備えられるものであってもよい。
【0048】
図4は、図1のセンサノード61の無線通信機能の一例を示す構成ブロック図である。図4において、無線通信部611は演算制御部612に接続され、演算制御部612は記憶部613に接続されている。
【0049】
無線通信部611は、主に監視システム1との間で通信を行い、たとえばTCP/IPプロトコルに基づくデータ通信を監視システム1と行う。無線通信部611は、主に他のセンサノードや図示しない他のGWノードとの間で無線通信を行う。
【0050】
演算制御部612(たとえばCPU)は、各種機能や各部の動作を制御する。記憶部613には、主にOSやセンサノードとして動作させるためのプログラムやアプリケーション、これらプログラムなどの実行時に使用されるデータ、自ノードから監視システム1に到達するまでの経路情報、経路コスト情報、各GWノードの無線通信における出力、周波数、変調方式等の無線通信の物理的特性情報などの各種情報が格納されている。センサノード61〜64、71〜73もセンサノード61と同様の構成である。
【0051】
なお、経路情報は、少なくともセンサノードやGWノードのIPアドレスなどの次のホップの宛先とGWノードのIPアドレスである最終的な宛先が記憶されていればよく、この経路情報と経路コスト情報とは互いに関連付けされているものでもよい。
【0052】
また、経路コスト情報は、データの送信元から送信先へ到達するまでの経路全体の通信品質を表す指標であり、たとえば、各センサノードおよびGWノードによりそれぞれ算出されるホップ数や電波の受信強度の積算値、ビットエラーレート、位置情報(GPSや三点測量などを用いたもの)などでもよい。
【0053】
図5は、図1のセンサノード61を構成している演算制御部612の機能ブロック例図である。データ送受部61aは、主にデータフレームを生成し、データの送受信を行う。経路情報格納部61bは、主に次ホップアドレスや各GWノードに到達するまでの経路情報、経路コスト情報などを格納する。
【0054】
経路情報提供部61cは、自ノードおよび他のセンサノードの設置場所、アドレスなどのネットワーク情報を他のセンサノードに通知する。経路選択部61dは、経路情報格納部61bの経路情報、経路コスト情報およびGWノード50の無線通信における出力、周波数、変調方式等の無線通信の物理的特性に基づいて、監視システム1に測定データを転送するための最適な経路を選択する。センサ部61eは、図示しないセンサを制御して流量や温度などの物理量を測定する。
【0055】
図6は、本発明に係る無線制御システムの動作を説明するシーケンス図である。なお、センサノード61〜64、71〜73は、アドレス/名前解決を行うとともに、経路探索や事前に各センサノードに経路情報を設定することなどにより、各センサノードを介してGWノード50にデータを転送するための経路情報やその経路コスト情報、次ホップの宛先などをあらかじめ把握しているものとする。
【0056】
以下、図1のデータ通信NR200について説明する。まず、シーケンスSQ101において、GWノード50の演算制御部54は、格納されたプログラムを読み出し実行することにより、個々の無線通信部51の無線通信に関する設定を行う。
【0057】
具体的には、演算制御部54の通信設定部54eは、無線通信部51の無線通信の設定(周波数チャネル、変調方式など)をあらかじめ定められた値に設定する。たとえばGWノード50の通信設定部54eは、無線通信部51の通信設定について、緊急データ通信用として特定の周波数帯域を割り当てる。
【0058】
なお、GWノード50の演算制御部54が記憶部55に格納されたプログラムを読み出し実行して各部を制御する動作については、同様であるので以下省略する。
【0059】
シーケンスSQ102において、GWノード50は、個々の無線通信部52の無線通信に関する設定を行う。たとえば通信設定部54eは、無線通信部52の無線通信の設定(周波数チャネル、変調方式など)をあらかじめ定められた値に設定する。なお、このような無線通信部51における無線通信の設定は、立ち上げ時に行ってもシステム動作時に動的に行ってもよい。
【0060】
シーケンスSQ103において、GWノード50の演算制御部54の経路情報提供部54cは、データ送受部54aを制御し、無線通信部51からGWノード50のアドレス情報、無線通信設定情報などを付加した「ゲートウェイ情報通知データ(以下、GW情報通知データという)」を自ノードと接続されている各センサノードに送信する。
【0061】
たとえばGWノード50の無線通信部51は、演算制御部により設定された無線設定に基づき動作し、センサノード61にアドレス情報や無線通信部が取扱う通信周波数などの情報を含むGW情報通知データを送信する。
【0062】
シーケンスSQ104において、センサノード61の演算制御部612は記憶部613に格納されたプログラムを読み出して実行することにより、GWノード50の無線通信部51から得たGW情報通知データに基づき、GWノード50のアドレス情報などを経路情報格納部61bに記憶し、データ送受部61aを制御してGWノード50から得たGW情報通知データをセンサノード63に転送する。
【0063】
なお、センサノード61の演算制御部612が記憶部613に格納されたプログラムを読み出し実行して各部を制御する動作は、他のセンサノードと同様であるので以下省略する。
【0064】
シーケンスSQ105において、GWノード50の演算制御部54の経路情報提供部54cは、データ送受部54aを制御し、無線通信部52から、GW情報通知データを自ノードと接続されている各センサノードに送信する。たとえばGWノード50はセンサノード63にGW情報通知データを送信する。
【0065】
シーケンスSQ106において、センサノード61の演算制御部612は記憶部613に格納されたプログラムを読み出して実行することにより、GWノード50の無線通信部52から得たGW情報通知データに基づき、GWノード50のアドレス情報などを経路情報格納部61bに記憶し、データ送受部61aを制御してGWノード50から得たGW情報通知データをセンサノード63に転送する。
【0066】
シーケンスSQ107において、センサノード63の演算制御部の経路選択部は、各無線通信部の無線通信設定状況、経路情報格納部に格納された経路情報、経路コスト情報(通信周波数チャネルの混雑度を含む)および記憶部に格納された測定データの優先度に基づいて、適切なGWノードの無線通信部を通信相手として選択し、GWノード50に到達する経路で最も通信品質が良好な経路を選択する。
【0067】
たとえば、センサノード63は、センサ部で得た測定データが緊急度の高いアラームデータである場合には、センサ部で取得した測定データの優先度や通信周波数チャネルの混雑度を含む情報およびGW情報通知データに基づき、緊急データ通信用の無線通信設定が施されているGWノード50の無線通信部51を通信相手として選択する。
【0068】
そして、センサノード63は、たとえば経路情報格納部に格納された経路情報および経路コスト情報に基づいて、GWノード50の無線通信部51に到達する経路のうち、最も通信品質が良好な経路(たとえば、センサノード61→GWノード50→監視システム1に到達する経路)を選択する。
【0069】
シーケンスSQ108において、センサノード63の演算制御部のデータ送受部は、経路選択部が選択した経路および経路情報格納部に格納された経路情報に基づいて、センサ部で得られた測定データをセンサノード61に送信する。
【0070】
シーケンスSQ109において、センサノード61の演算制御部612のデータ送受部61aは、センサノード63から得た測定データや経路情報に基づいて、GWノード50に到達する経路で最も通信品質が良好な経路(たとえばGWノード50)を選択して、センサノード63から得た測定データをGWノード50に送信する。
【0071】
シーケンスSQ110において、GWノード50の演算制御部54は、無線通信部51で受信した測定データを通信部53から送信して監視システムとデータ通信をするため、通信プロトコル変換する。
【0072】
シーケンスSQ111において、GWノード50の通信部53は、経路情報格納部54bの経路情報に基づき、センサノード61から受信した測定データ、すなわち、センサノード63が測定したデータを監視システム1に転送する。
【0073】
監視システム1は、GWノード50と同様に他のセンサノードからも測定データを収集・記憶することにより、プラントの運転状態を把握できる。
【0074】
そして、監視システム1は、収集した測定データを図示しないコントローラに転送し、コントローラは測定データを所定の目標値に収束するように図示しないバルブや調整弁などの制御機器を操作制御するための制御データを算出し、制御データに基づいて制御機器を操作制御する。
【0075】
この結果、本発明に係る無線制御システムでは、GWノードが複数の無線通信部を備えることにより、無線ネットワークおよびGWノードの負荷を軽減し、システムの信頼性を向上させることができる。
【0076】
具体的には、従来のシステムでは、GWノードにトラフィック負荷が集中し、システム全体のパフォーマンスが悪化していたが、本発明の無線制御システムによれば、GWノードが無線通信部を複数有することにより、トラフィックの負荷を分散することができGWノードの通信に関する信頼性が向上し、結果としてシステム全体の信頼性が向上する。
【0077】
また、本発明の無線制御システムはGWノードが複数の無線通信部を備えるため、ダイバーシティを獲得してマルチパスフェージングによる性能劣化を回避することができる。
【0078】
また、GWノードは複数の無線通信部を備えるため、複数のチャネルを割り当てることができることにより、優先帯域確保やQoS制御を容易に実現することができる。
【0079】
また、従来のシステムにおけるフィールド機器などの計器やセンサノードは、測定点に対して設置されるので、通信機能の都合で位置を調整することは困難であったが、本発明の無線制御システムはGWノードが複数の無線通信部を備えることにより、ノードの設置自由度が向上して設置位置を容易に調整することができる。
【0080】
また、通常のセンサノードは、オフィスのモバイル機器とは違い、ユーザインタフェースが貧弱であることから現場で機器同士の通信状況を確認し難く微細な位置調整は困難であったが、本発明の無線制御システムはGWノードが複数の無線通信部を備えることにより、ノードの設置自由度が向上して設置位置を容易に調整することができる。
【0081】
このように本発明の無線制御システムはGWノードが複数の無線通信部を備えることにより、各GWノード、センサノードの設置自由度が向上し、システム運用やインストレーション作業が簡易になり、運用・保守もまた簡易に行うことができる。
【0082】
また、本発明の無線制御システムは、GWノードが複数の変調方式の無線機能を共存させてダイナミックに通信設定を変更することで、機能や特徴の異なる無線通信方式を環境やアプリケーションに応じて適切に使い分けることができ、無線ネットワークおよびGWノードの負荷を軽減し、システムの信頼性を向上させることができる。
【0083】
なお上述の実施例では、GWノード50は無線通信部51、52を有すると説明しているが、GWノードは複数の無線通信部を有するものでもよい。
【0084】
また、上述の実施例の無線制御システムでは、各センサノードはGWノード50を介して監視システム1とデータ通信を行うものとして説明しているが、無線制御システムはGWノードを複数個備えるものであってもよく、各センサノードはいずれかのGWノードを介して監視システム1とデータ通信を行うものであってもよい。
【0085】
図7は無線制御システムがGWノードを複数個備える場合の構成図であり、図1と共通する部分には同一の符号を付け適宜説明を省略する。図1との相違点は、GWノードが複数個備えられていることである。
【0086】
GWノードを複数個備えた無線制御システムは、無線通信のためのインタフェースが増えることによりトラフィックの負荷を分散することができ、GWノードの通信に関する信頼性が向上し、結果としてシステム全体の信頼性が向上する。
【0087】
また、上記実施例では、無線制御システムがインダストリアルオートメーションにおけるプラントの運転を支援する例を説明したが、特にこれに限定されるものではなく、たとえばファクトリーオートメーションにおける浄水場の制御システムや、ビルの空調・照明システムなどの運転を支援するものであっても構わない。
【0088】
たとえば、ビルオートメーションシステムにおいては、照明やスイッチなどをセンサノードとした場合、センサノードが設置されるビル内部も機器や什器など多くの障害物が存在するので電波障害も生じやすい。
【0089】
この場合には、各GWノードは複数の無線通信部を備え、アドレス情報などのGWノード情報を含むGW情報通知データを各センサノードに送信し、各センサノードはこのGW情報通知データを記憶するとともに各センサノードに転送し、各GWノードの各無線通信部の無線通信設定に基づき監視システムに到達するまでの中継点としてGWノードの無線通信部の中から一つを選択する。
【0090】
そしてセンサノードは、当該GWノードの無線通信部に到達する経路で通信品質が良好な経路を選択して測定データを送信することにより、無線ネットワークおよびGWノードの負荷を軽減し、システムの信頼性を向上させることができる。
【0091】
また、本発明に係る無線制御システムでは、GWノードまたはセンサノードは、一部にSDR(Software Defined Radio)のような特別な無線方式を前提としている機能を含むものであってもよい。なおSDRとは、周波数帯、変調方式などが異なるさまざまな無線通信手段を1台の無線機のソフトウェアを書き換えることで対応させる技術である。このSDRを用いることにより、本発明で述べる通信周波数や変調方式のような動作を簡易かつ柔軟に行うことが可能になる。
【0092】
また、本発明に係る無線制御システムにおける通信設定部は、GWノード内にあらかじめ定められ記憶されるスケジュール情報(観測スケジュールなど)に基づき各無線通信部の通信設定(周波数帯、変調方式)を変更するものでもよいし、緊急度の高いデータ通信を行う際の無線通信部の選択やその通信設定を変更するものでもよい。
【0093】
また、本発明に係る無線制御システムにおけるGWノードの演算制御部54のデータ送受部54aは、データフレームの生成機能やマルチホップデータ中継機能などを有するものであってもよく、データ中継アルゴリズムには任意のものを用いてもよい。
【0094】
また、本発明に係る無線制御システムにおける監視システム1は、それぞれ図示しない各種機能や各部の動作を制御する演算制御部(たとえばCPU)、各機器間で通信を行う通信部、OSや各機器として動作するためのプログラムやアプリケーション、これらプログラムなどの実行時に使用されるデータ、各種情報などを格納するRAMやROMなどの記憶部などのハードウェアから構成され、各部はバスにより相互に接続されるようなそれぞれ独立した機器から構成されるものであってもよい。
【0095】
この場合、監視システム1の演算制御部は、記憶部に格納されているOSなどを起動して、このOS上で格納されたプログラムを読み出し実行することにより各機器または各部全体を制御し、各機器または各部固有の動作を行う。このとき記憶部は、演算制御部によって実行されるプログラムやアプリケーションをプログラム格納エリアに展開し、入力されたデータや、プログラムやアプリケーションの実行時に生じる処理結果などのデータをワークエリアに一時的に記憶するものであってもよい。
【0096】
このような構成の監視システム1では、たとえば演算制御部が各部を制御し、各センサノードから収集した測定データを図示しないコントローラに転送し、コントローラは測定データを所定の目標値に収束するように図示しないバルブや調整弁などの制御機器を操作制御するための制御データを算出し、制御データに基づいて制御機器を操作制御する。
【0097】
また、上記実施例では、GWノード50が各センサノードおよび監視システムと接続されると説明しているが、異なる通信設定が設定可能な複数の無線通信部を有する複数のGWノードが各センサノードおよび監視システムと接続されるものであってもよく、各センサノードは、複数のGWノードの各無線通信部のうち無線通信部を一つ選択し、この無線通信部に到達する経路で最も通信品質が良好である経路を選択してデータを送信することを特徴とするものであってもよい。
【0098】
また、上記実施例では、センサノード61〜64、71〜73から構成される無線ネットワークを示しているが、無線通信方式は無線通信の標準規格であるIEEE802.15.4を用いるものであっても構わないし、各センサノードが無線回線を介してデータの送受信をすることが可能であるならば、どのようなものを用いても構わない。
【0099】
また上記実施例では、監視システムとGWノードがデータ通信を行うと説明している、監視システムとGWノードによって形成されるネットワークインフラは、データの送受信をすることが可能であるならば、いかなる通信方式であっても構わない(たとえば、Ethernet(登録商標)/LANなどを利用するものでもよい)。
【0100】
以上説明したように本発明によれば、無線ネットワークおよびゲートウェイノードの負荷を軽減し、システムの信頼性を向上させることできる無制御システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明に係る無線制御システムの一実施例を示す構成ブロック図である。
【図2】図1のGWノード50の無線通信機能の一例を示す構成ブロック図である。
【図3】図1のGWノード50を構成する演算制御部54の機能ブロック例図である。
【図4】図1のセンサノード61の無線通信機能の一例を示す構成ブロック図である。
【図5】図1のセンサノード61を構成している演算制御部612の機能ブロック例図である。
【図6】本発明に係る無線制御システムの動作を説明するシーケンス図である。
【図7】無線制御システムがGWノードを複数個備える場合の構成図である。
【図8】従来の無線制御システムの一例を示す構成ブロック図である
【符号の説明】
【0102】
1 監視システム
10、50 ゲートウェイノード
11、53 通信部
12、51、52、611 無線通信部
13、54、612 演算制御部
13a、54a、61a データ送受部
13b、54b、61b 経路情報格納部
13c、54c、61c 経路情報提供部
13d、54d 測定データ管理部
54e 通信設定部
61d 経路選択部
61e センサ部
14、55、613 記憶部
20〜25、61、〜64、71〜73 センサノード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線ネットワークを構成する複数のセンサノードから複数のゲートウェイノードの少なくともいずれか一つを介し監視システムにデータを送信する無線制御システムにおいて、
前記各ゲートウェイノードは、異なる通信設定が設定可能な複数の無線通信部を有し、
前記各センサノードは、前記各ゲートウェイノードの前記各無線通信部のうち無線通信部を一つ選択し、この無線通信部に到達する経路で最も通信品質が良好である経路を選択してデータを送信することを特徴とする無線制御システム。
【請求項2】
前記各ゲートウェイノードは、
前記各無線通信部の周波数チャネル、変調方式、識別IDを含む通信設定を変更すること特徴とする
請求項1記載の無線制御システム。
【請求項3】
前記センサノードは、
前記各ゲートウェイノードの各無線通信部の無線通信設定に基づき、前記各無線通信部のうち前記監視システムに到達するまでの中継点として無線通信部を一つ選択することを特徴とする
請求項1または請求項2記載の無線制御システム。
【請求項4】
前記センサノードは、
自ノードで得た測定データまたは他のセンサノードから受信したデータが緊急用データである場合には、前記各ゲートウェイノードの各無線通信部の無線通信設定に基づき、前記各無線通信部のうち緊急データ通信用の無線通信設定が施されている無線通信部を選択し、この無線通信部に到達する経路で最も通信品質が良好である経路を選択してデータを送信することを特徴とする
請求項1〜請求項3いずれかに記載の無線制御システム。
【請求項5】
前記各ゲートウェイノードは、
無線通信を行う複数の無線通信部と、
前記監視システムと有線通信または無線通信によるデータ通信を行う通信部と、
少なくとも前記各ゲートウェイノードを介して前記各センサノードから前記監視システムに到達するまでの経路情報、自ノードのアドレス情報および前記各無線通信部の無線通信設定情報を含むGW情報通知データを格納する記憶部と、
前記無線通信部の通信設定を行い、前記GW情報通知データを前記各センサノードに送信し、前記経路情報に基づいて前記各センサノードからの前記データを前記監視システムに転送する演算制御部とから構成されることを特徴とする
請求項1〜請求項4いずれかに記載の無線制御システム。
【請求項6】
前記各センサノードは、
少なくとも自ノードから前記各ゲートウェイノードに到達するまでの経路情報および経路コスト情報を格納する記憶部と、
無線通信を行う無線通信部と、
前記GW情報通知データを他のセンサノードに転送し、前記GW情報通知データに基づき少なくとも前記各ゲートウェイノードのアドレス情報を前記記憶部に記憶し、前記経路情報、前記経路コスト情報および前記GW情報通知データに基づいて前記ゲートウェイノードに到達する経路で最も通信品質が良好である経路を選択し、この経路に基づき自ノードで得たデータまたは他のセンサノードから受信したデータを前記ゲートウェイノードまたはその他のセンサノードに送信する演算制御部とから構成されることを特徴とする
請求項1〜請求項5いずれかに記載の無線制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−260451(P2009−260451A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104287(P2008−104287)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】