説明

無線受信装置及び無線通信装置

【課題】テスト用の信号源無しに、無線受信装置の受信回路の自己診断を簡易的に行う無線受信装置及び無線通信装置を提供する。
【解決手段】角速度変調された信号を受信して復調する無線受信装置であって、受信信号の信号強度であるRSSIを測定するRSSI検出手段と、復調帯域外のノイズのレベルをスケルチ電圧として測定するスケルチノイズ検出手段と、測定されたRSSIと前記スケルチ電圧との相関より、故障であるか否かを判断する自己診断手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は無線受信装置及び無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
音声通信を受信する無線受信装置は、本来受信すべき信号である希望信号を受信していない場合、音声出力回路の動作を停止する機能(ミューティング)を装備しているものがある。この機能により無線受信装置のユーザは、信号が受信されている場合のみ復調された音声信号をスピーカ等の音声出力装置から聞くことができ、信号を受信していない場合は、希望信号以外の信号や雑音を聞かなくて済むため、効率の良い受信が可能となる。
【0003】
特に周波数変調による通信の場合において、希望信号を受信していないときにミューティングする方法としては、復調帯域外のノイズを検出して、ノイズが検出されている場合にはミューティングを行い、ノイズが受信している信号により抑圧されている場合には、ミューティングを解除するノイズスケルチが一般的に用いられる。
また、送信側が送信信号にトーン信号を重畳させ、受信側では復調されたトーン信号が受信側で設定されたトーン信号である場合にはミューティングを解除し、トーン信号が受信側で設定されたトーン信号とは異なる場合にはミューティングを行うトーンスケルチも広く使われている。
【0004】
しかしながら、従来は、ミューティングにより音声信号の出力が停止されているのか、希望信号を受信しているにも係わらず無線受信装置の一部が故障して希望信号の音声信号が出力されていないのかの区別は、測定器を用いてテスト信号を入力し故障か否かの判断を行うか、または自己診断機能を備えていない限り区別がつかなかった。
【0005】
無線受信装置を使用する環境で、高価な測定器を常に備えていることはまれである。また、故障判別を行うといった自己診断機能として、DTMF(Dual-Tone
Multi-Frequency)制御を用いたワイヤレスコミュニケーションシステムにおいて、双方向無線装置を有する無線携帯装置を単体で折り返し自己診断する、といった方法が特開平8-107444号公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-107444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1のように、送信装置を搭載した通信装置であれば、自らの送信信号を受信する手段にて、受信装置の各回路の診断を行うことは比較的容易であるが、送信装置と受信装置とを共に動作させる必要があり、自己診断機能動作時の消費電流が多くなる。また、送信信号の経路を、アンテナに出力する経路と、受信回路に接続する経路とを切り替える必要があることから、回路が複雑となり、また制御も複雑となる。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、テスト用の信号源を備えること無しに、受信回路の自己診断を簡易的に行う無線受信装置及び無線通信装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、受信信号の信号強度であるRSSIを測定するRSSI検出手段と、復調帯域外のノイズのレベルをスケルチ電圧として測定するスケルチノイズ検出手段と、測定されたRSSIとスケルチ電圧とに基づいて前記無線受信装置が故障であるか否か判断する自己診断手段とを備えた無線受信装置を提供する。
また、本発明の無線受信装置は、自己診断機能が、RSSIと予め定めたRSSI閾値とを比較し、スケルチ電圧と予め定めたスケルチ電圧閾値とを比較し、RSSIがRSSI閾値より低く、スケルチ電圧がスケルチ電圧閾値より低い場合に、故障と判断してもよい。
さらに、本発明の無線受信装置は、温度検出手段を備え、温度検出手段により検出された温度変化に応じて補償した前記RSSI閾値及び前記スケルチ閾値により自己診断を行ってもよい。
また、さらに、本発明の無線受信装置は、RSSI検出手段は、温度検出手段により検出された温度変化に応じて検出結果を補償し、スケルチ検出手段は、温度検出手段により検出された温度変化に応じて検出結果を補償し、自己診断手段は、補償されたRSSIと補償されたスケルチ電圧とにより自己診断を行ってもよい。
【0010】
また、本発明の無線受信装置は、受信信号が検出されなくなった場合に、自己診断を開始してもよい。
【0011】
また、本発明の無線受信装置は、2次電池と、2次電池への充電を行う充電器に接続されたこと、または充電器から外されたことのいずれかを検出する充電器検出手段とを備え、充電器検出手段が、充電器に接続されたこと、もしくは充電器から外されたことを検出したことを受けて、自己診断を行ってもよい。
【0012】
また、本発明の無線受信装置は、位置検出手段を備え、位置検出手段が特定の範囲内に入ったか、特定の範囲内から出たかを検出した際に自己診断を行なってもよい。
【0013】
また、本発明の無線受信装置は、複数の受信チャネルを予め定められた時間間隔で変更して受信信号の有無を検出するスキャン機能を備え、自己診断手段は、スキャン機能の開始に先立って自己診断を開始してもよい。
【0014】
また、本発明の無線受信装置は、受信信号が検出されない場合に、予め定められた時間で電源をオン/オフするパワーセーブ手段を備え、自己診断手段は、パワーセーブ手段により、電源オン状態となったことを受けて自己診断を開始してもよい。
【0015】
また、本発明の無線受信装置は、加速度を検出する加速度検出手段を備え、自己診断手段は、加速度手段により検出された加速度と予め定めた閾値とを比較した結果に基づいて場合に自己診断を開始してもよい。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の無線通信装置は、第3者と通信を行うための無線送信装置と無線受信装置とを備えた半二重方式の無線通信装置であって、無線受信装置は、受信信号の信号強度であるRSSIを測定するRSSI検出手段と、復調帯域外のノイズのレベルをスケルチ電圧として測定するスケルチノイズ検出手段と、測定されたRSSIと前記スケルチ電圧との相関より、故障であるか否かを判断する自己診断手段とを備え、自己診断手段は、送信装置による送信内容の送信を終了して受信を開始するに先立ち自己診断を開始し、自己診断手段によって故障と判断された場合に、無線送信装置を用いて第3者に故障である旨を認識させることを特徴とする無線通信装置を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の無線受信装置及び無線通信装置は、テスト信号源を備えること無しに、受信回路の自己診断を簡易的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態における無線受信装置の電気的な構成を示した機能ブロック図である。
【図2】RSSIとスケルチ電圧との関係を説明するための説明図である。
【図3】温度検出部を含めた実施形態における無線受信装置の電気的な構成を示した機能ブロック図である。
【図4】充電器検出部を含めた実施形態における無線受信装置の電気的な構成を示した機能ブロック図である。
【図5】位置検出部を含めた実施形態における無線受信装置の電気的な構成を示した機能ブロック図である。
【図6】加速度検出部を含めた実施形態における無線受信装置の電気的な構成を示した機能ブロック図である。
【図7】無線送信装置を含めた実施形態における無線通信装置の電気的な構成を示した機能ブロック図である。
【図8】RSSI閾値とスケルチ閾値とを詳細に分割した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0020】
〈実施形態〉(無線受信装置100)
図1は、無線受信装置100の電気的な構成を示した機能ブロック図である。無線受信装置100は、アンテナ110と、RF回路112と、FM検波部114と、出力アンプ116と、ミュートスイッチ118と、音声出力部120と、RSSI(Received Signal Strength Indication)検出回路122と、ノイズHPF130と、ノイズアンプ132と、整流回路134と、平滑化回路136と、制御部140と、操作部142と、報知部144とを含んで構成される。
【0021】
FM変調方式の無線通信やFM放送等の無線信号がアンテナ110を通じて受信されると、RF回路112は、受信信号のうち、操作部142を通じたユーザの操作入力に従って制御部140が指示する任意の周波数における受信信号を抽出し、FM検波部114は、抽出された受信信号をFM検波(復調)して検波信号を生成する。
【0022】
また、制御部140は、CPU及びCPUに付随するクロック回路で構成され、クロック信号に基づいて計算された制御信号で無線受信装置100全体を制御する。
【0023】
FM検波部114によって生成された検波信号は、出力アンプ116で増幅されて音声信号となり、ミュートスイッチ118を介して、スピーカやヘッドホンといった音声出力部120に出力される。音声出力部120は、検波信号に応じて空気を振動させることで音声を出力する。
【0024】
RSSI検出回路122は、RF回路112から受信信号の電力の一部を抽出し、受信信号の信号強度を適切なレベルに変換してRSSI電圧とし、制御部140に出力する。制御部140は、図示しないA/D変換器によりRSSI電圧をデジタル値(RSSIデータ)に変換し、必要に応じて処理を行う。
【0025】
ノイズHPF130は、ノイズ抽出部として機能し、FM検波部114によって生成された検波信号のうち、予め設定された所定周波数(復調に必要な帯域外であって例えば3kHz以上の周波数)の信号をスケルチ検出用のノイズ(スケルチノイズ)として抽出する。ノイズHPF130によって抽出されたスケルチノイズはノイズアンプ132を通じて増幅され、整流回路134で整流された後、平滑回路136によって平滑化されスケルチ電圧となる。
【0026】
制御部140は、スケルチ電圧が所定閾値以上であるか否かを判断する。制御部140は、図示しないA/D変換器により、スケルチ電圧をデジタル値(スケルチデータ)に変換する。制御部140は、前述した所定閾値と比較する。
制御部140は、スケルチデータが所定閾値以上であると、無線受信装置100において有効な無線信号が受信されていないと判断し、ミュートスイッチ118に対してミュートを行う指示を出力する。ミュートスイッチ118は、制御部140からのミュート指示により音声出力部120への出力を遮断する。
【0027】
制御部140は、スケルチデータが所定閾値未満であると、無線受信装置100において有効な無線信号が受信されていると判断し、ミュートスイッチ118に対してミュート解除の指示を出力する。ミュートスイッチ118は、制御部140からの指示により音声出力部120へ増幅された検波信号の出力を行う。
したがって、スケルチ電圧が所定閾値以上であると、ミュートスイッチ118が開状態となり、出力アンプ116で増幅された検波信号が音声出力部120に出力されないので、ユーザは、不要なノイズを聞かなくて済む。
【0028】
ここでは、ミュートスイッチ118を開状態とすることを「スケルチを閉じる」(音を出さないミュートの状態)と、スイッチ118を閉状態とすることを「スケルチを開く」(音を出力する状態)と表現する。
【0029】
スケルチデータと比較する所定閾値は、操作部142を通じたユーザの操作入力に従って設定(スケルチレベルの設定)することも可能である。
【0030】
一般的に、FM復調では振幅に変調成分が無いため、FM検波を行うに先立って、FM検波部の入力信号はリミッタにより一定値に制限されるレベルまで増幅されている。たとえアンテナからの入力信号が存在しない状態であってもRF回路112の熱雑音を増幅して飽和しているため、FM検波部114の検波出力は、本来変調された信号を復調するのに必要な帯域以上であっても復調されたノイズが存在する。
【0031】
また、アンテナから入力信号が存在する場合、その入力信号が強くなるにつれて復調されるノイズが抑圧されていくが、スケルチノイズも同様に抑圧されていく。
その様子を、図2を用いて説明する。
【0032】
図2は、スケルチ電圧(図2中SQL)とRSSIとをそれぞれを縦軸とし、アンテナ110からの入力信号の強さ(対数値)を横軸とした説明図である。無線受信装置100が正常に動作している場合のスケルチ電圧とRSSIとの関係を、無信号時のノイズにより飽和した振幅を1として正規化し、信号のレベルSを0.01〜10000に変化させた場合で示している。
【0033】
スケルチ電圧は、検波前の信号はリミッタにより振幅が制限されているため、受信信号Sによりノイズがどれだけ抑圧されるかを表すノイズ抑圧比を意味する。
スケルチ電圧は、検波後の復調に必要な帯域外のノイズ成分を整流した電圧であり、このノイズ成分は検波前のノイズ成分によって生じるため、検波前のノイズ成分とノイズ抑圧比の変化が一致する。
スケルチ電圧は、受信信号が無い場合は検波信号の全てが無線受信装置100内の熱雑音であり、この場合の前述したように正規化した振幅全てがノイズであり、そのノイズレベルNは1となる。受信信号レベルSが増加するにつれノイズが抑圧されていく。その特性は、N/(S+N)で表され、計算結果をプロットすると図2中のSQLの曲線となり、その特性は、比較的受信信号レベルSが小さいところで急激に変化する。
【0034】
RSSIは、受信信号の強度を表すが受信信号が無い場合の熱雑音も含まれるため(S+N)/Nが用いられ、また、受信信号レベルSの範囲が広いため、RSSIを対数値として、Log((S+N)/N)で表す。その特性は、Log((S+N)/N)の計算結果をプロットすると図2中のRSSIの曲線となり、スケルチ電圧が急変する受信信号レベルSから検出が顕著となり、ノイズがほぼ抑圧されると入力信号レベルSに比例して増加する特性となる。
【0035】
(自己診断の原理)
前述した図2を用いて、制御部140による自己診断の判定方法を説明する。
図2は無線受信装置100が正常に動作している場合の信号Sのレベルを、0.01〜10000に変化させた場合における、スケルチノイズ及びRSSIの変化をプロットしたものである。SとNとの関係を無信号時のNを1として正規化したものであるため、制御部140で処理される場合には、どのような入力信号レベルであっても、スケルチノイズとRSSIの相対的な関係は図2に示されるものとなる。
【0036】
よって、スケルチノイズとRSSIとの相対的な関係から外れた状態が検出された場合には、故障している可能性があるということになる。
以下の説明のように制御部140は、自己診断手段として機能する。
その自己診断の判定方法の一例を以下に示す。
【0037】
制御部140は、それぞれRSSIデータ、スケルチデータ各々の自己診断用の閾値を、RSSI閾値、スケルチ閾値が設定され記憶されている。たとえば、信号入力のレベルを10とした時のRSSIデータとスケルチデータとを記憶し、それぞれをRSSI閾値(図2のA)、スケルチ閾値(図2のB)とする。
【0038】
ケース1:RSSIデータがRSSI閾値より高く、スケルチデータがスケルチ閾値より低い場合は、受信信号があり、検波後の復調帯域外のノイズが正常に抑圧されていることから、希望信号を受信している状態であって、故障ではないと判断できる。
【0039】
ケース2:RSSIデータがRSSI閾値より低く、スケルチデータがスケルチ閾値より高い場合は、受信信号がなく、検波後の復調帯域外のノイズが発生していることから、受信信号は無いか、弱い信号を受信している状態であって、故障ではないと判断できる。
【0040】
ケース3:RSSIデータがRSSI閾値より高く、スケルチデータがスケルチ閾値より高い場合は、受信信号があるにもかかわらず、検波後の復調帯域外のノイズが正常に抑圧されていないことになる。正常な検波を行える信号ではないため帯域外のノイズが抑圧されていないことから、付近にノイズを発生している信号源が存在するか、隣接チャネルに強力な妨害信号が存在しその影響を受けている可能性があり、必ずしも故障により生じる状況ではない。この場合も故障ではないと判断する。
【0041】
ケース4:RSSIデータがRSSI閾値より低く、スケルチデータがスケルチ閾値より低い場合は、信号レベルが低いにもかかわらず、検波後の復調帯域外のノイズが抑圧されていないことから、無線受信装置100内のいずれかが故障していると判断できる。
【0042】
以上の4つのケースから、ケース4の場合は、RSSIとスケルチノイズとの相対的な関係から外れ、さらに通常ではとりえない、値の組合せであることから、無線受信装置100内の受信回路のいずれかが故障したと推測される。
【0043】
入力信号レベルに応じたRSSIデータ、スケルチデータが対として詳細に制御部140に記憶されている場合は、前述したミュートスイッチ118を制御する際に設定される所定閾値をスケルチ閾値として、その際スケルチ閾値からそのスケルチデータと対になるRSSIデータをRSSI閾値としもよい。これにより、操作部142を通じたユーザの操作入力によるスケルチレベルの設定に連動した自己診断の閾値を設定することもできる。
【0044】
むろん閾値の設定は、夫々1つでなくてもよく、信号レベルを適度に分割し、分割した入力信号レベルの各々の範囲での、RSSIデータがとりうる範囲と、スケルチデータがとりうる範囲とを記憶させておき、自己診断を行う際に、RSSIデータと、スケルチデータとの双方が、通常でとりうる組合せであるか否かで、判断してもよい。
【0045】
また、図8に示すように、スケルチ電圧の変化が大きい箇所(図3の信号レベルが0.1〜10の範囲)を詳細に分割し、より精度よく診断することも可能である。
【0046】
図8の信号レベルが0.1の場合のRSSI閾値をA1、スケルチ閾値をB1、信号レベルが1の場合のRSSI閾値をA2、スケルチ閾値をB2、信号レベルが10の場合のRSSI閾値をA3、スケルチ閾値をB3とする。たとえばRSSI閾値A1からA2までのRSSIデータであれば、スケルチデータはスケルチ閾値B1からB2までの範囲の値となるはずであり、RSSIデータとスケルチデータとが互いに想定された範囲となっているか否かにより前述したケース1〜4と同様に、判断することができる。
【0047】
無線受信装置100が、光、音、表示、振動を用いた報知手段の少なくともいずれか一つを報知部144に備えることにより、前述した故障と判断した場合に、報知部144に故障である旨を放置させることにより、無線受信装置100のユーザに対し、当該無線受信装置100が故障である場合に故障であることを認識させることができる。
【0048】
自己診断の判定は、制御部140により行われる。RSSI電圧とスケルチ電圧とはA/D変換器により制御部に夫々データとして入力される。制御部140にあらかじめ設定されているRSSI閾値データとスケルチ閾値データとを比較し、RSSIとスケルチノイズの電圧との相対的な関係であるか否か、相対的な関係で無い場合は、妨害波であるのか、故障であるかの判断し、判断結果を報知部144に出力する。
【0049】
熱雑音やRF回路のゲインは、温度により変化する。一般的に熱雑音は温度に比例し、またRF回路のゲインは温度に反比例するため、たとえば温度が上昇した場合、RSSI電圧は温度上昇で減少した分を補償する必要があり、スケルチ電圧は温度上昇で増加した分を補償する必要がある。そのため、図3のように温度検出部150を備えて温度を検出し、制御部140は、温度検出部150が検出した温度の変化に対し、RSSIデータ及びスケルチデータを補償してもよい。
また、電圧制御部140は、RSSIデータやスケルチデータを温度補償するのではなく、故障であるか否かを判別するための閾値を温度補償して自己診断を行ってもよい。
上記いずれかの温度補償を行うことにより、無線通信装置100を使用する環境が異なり温度変化が生じたとしても、温度変化により自己診断の結果が変わってしまうことを避けることができる。
【0050】
以上が故障検出の基本的な判断の方法である。RSSI電圧及びスケルチ電圧をデジタル化したデータの比較であるため、極めて短時間にかつ任意のタイミングで自己診断することができる。
【0051】
以下、この自己診断技術を用いた様々な実際の使用のタイミングとその効果について説明する。
【0052】
(実使用例1)
操作部に予め設定された操作を行うことにより、ユーザが任意のタイミングで自己診断を行うようにしてもよい。
たとえば、予め設定された2つのキーを同時に操作する、といった操作方法や、無線受信装置100の機能を操作部142から設定するメニューの項目の1つとして自己診断機能を備えてもよい。極めて短時間で行えるため、ユーザが必要に応じていつでも自己診断を行うことができる。
【0053】
(実使用例2)
無線受信装置100の使用を開始する際に自己診断を行なってもよい。たとえば、図示しない電源スイッチをオンにした直後、自己診断を行なってもよい。また無線受信装置100が充電式電池を内蔵した携帯機である場合に、図4に示す充電器との接続を検出する手段(充電器検出部146)を備えることで、充電器から外された場合(使用の開始)に自己診断を行ってもよい。
また、無線受信装置100の使用を終了するに先立って自己診断を行なってもよい。たとえば、電源をオフにするに先立って自己診断を行ない、故障と判断された場合は、報知部144にて故障であることを報知してもよく、前述した充電器検出部146を備えることで、充電器に装着された場合(使用の終了)に自己診断を行ってもよい。また使用終了時の故障の報知に気が付かない場合に備えて、自己診断結果を制御部140内の図示しない記憶部に保存し、無線受信装置100の電源が再度オンにされる場合に報知してもよい。
使用開始時に自動的に自己診断を行うため、たとえば、その日の作業開始にあたり自己診断が行われるため、ユーザは、作業を開始してから故障している無線受信装置100であったことに気が付くといったことを避けることができる。
また、使用終了時に自動的に自己診断を行うため、たとえば、ユーザは、故障していることが判れば、次回に使用する際は当該無線受信装置100が使えないことが判り、代替機を用意するといったことが迅速に判断できる。
【0054】
(実使用例3)
無線受信装置100が携帯機や車載機といった移動可能な装置の場合、使用を開始する、または使用を終了するといったことを、図5に示す位置検出部148から位置情報を取得し、特定の場所から離れる(使用の開始)、特定の場所に戻る(使用の終了)といったことを検出して判断することにより自己診断を行ってもよい。
位置情報は、複数の衛星から信号を受信して自位置を測位して、予め定められた範囲に入ったかもしくは予め定められた範囲から出たかで判定し、使用開始または使用終了を検出してもよい。また、位置情報は、比較的近距離からの信号で検出してもよく、たとえば位置検出部148をビーコン受信機として無線受信装置100に内蔵し、会社から営業に出かける、戻るといった際に、会社に設置されたビーコン送信機からの信号を受信して会社への出入りから使用開始または使用終了を検出してもよい。
実使用例2と同様、使用開始時または使用終了時に故障であるか否かをユーザは認識できるため、故障した無線受信装置100を使い続けるといったことが避けられる。
【0055】
(実使用例4)
無線受信装置100内に比較的周期が短い(たとえば、数100mS〜数10S)といった図示しないタイマ機能を備え、無線受信装置100の電源が入っている間は、1周期ごとに自己診断を行ってもよい。
ユーザの操作とは関係なく自動で行われるため、特に意識することなく故障したことを知ることができる。また比較的短い周期で自己診断を行うために、故障が発生してからユーザが故障をしたことを知るまでの時間が短く、代替機を用意する、修理に出すといった対応が迅速に行うことができる。
【0056】
(実使用例5)
無線受信装置100内に図示しない時計機能を備え、無線受信装置100の電源が入っているか否かに係わらず計時し、たとえば1週間毎といった定期的に自己診断を行う。また電源が入っている時間を累積し、たとえば1000時間といった所定の時間経過した場合に自己診断を行ってもよい。
無線受信装置100が、信頼性が極めて高く設計されたものであったとしても、経年変化により調整がずれて性能が落ちるといった場合もある。頻繁に自己診断を行う必要はないが、定期的なチェックを行う場合に有効である。
【0057】
(実使用例6)
操作部142からのユーザの操作により、受信チャネルを変更した場合や、スキャン操作を行うに先立って自己診断を行ってもよい。
スキャン操作による動作の一例としては、複数の受信チャネルを次々と自動的に変えていき、信号の有無を検出していく。信号が検出された場合には、スキャンを停止する。受信回路のいずれかが故障している場合、スキャンを開始しても信号は検出されないため、スキャンの開始に先立って、自己診断を行い、故障と判断されなかった場合にスキャンを開始し、故障と判断された場合は、報知部144にて故障であることを報知する。
どちらも受信行うために積極的に送信している信号を探す操作である。その操作にあたって自己診断を行うことにより、ユーザは、信号が送信されていないのか、故障により送信している信号を探すことができないかが迅速に判断することができる。
【0058】
(実使用例7)
無線受信装置100が、内蔵した電源で動作する携帯機である場合、電池の消費を抑えるため、受信信号が検出されない場合に、定めたれた時間間隔で電源をON/OFFするパワーセーブ機能を搭載することも多い。
ユーザは、無線受信装置100からの音声の出力が無いのはパワーセーブの期間の為なのか、受信信号が無い為なのか、パワーセーブの期間ではないにも係わらず無線受信装置100が故障して受信信号が検出されない為なのか、の判断ができない。
よって、パワーセーブの期間から復帰して電源ON状態となったのを受けて、自己診断を行って、故障と判断された場合は、報知部144にて故障であることを報知する。
これによりユーザは、パワーセーブ中であっても無線受信装置100が正常であるか否かを判別することができる。
【0059】
(実使用例8)
無線受信装置100が携帯機の場合、ユーザが誤って落下させてしまう場合もある。そのため、図6に示す無線受信装置100は、加速度検出部150を備え、加速度検出部150により検出された加速度と予め定めた閾値とを比較した結果に基づいて自己診断の必要があると判断した場合に自己診断を行う。たとえば加速度センサを用いた加速度検出部150が、一定以上のGが生じたことを検出した場合に、制御部140は自己診断を行なってもよい。
落下の衝撃で無線受信装置100の受信回路に故障が生じたか否かの判断を迅速に行なうことができる。
【0060】
(実使用例9)
無線受信装置100の、設定を変更する際に、自己診断を行なってもよい。
使用するため周波数設定データを変更する等の作業を行う際に、PC上のアプリケーションから行う場合がある。PCと無線受信装置100との接続は、有線または赤外線やブルートゥースといった無線であってもよい。
無線受信装置100とPCとの接続がなされた場合、PC上から自己診断機能を動作させてもよい。また実使用例2に示した記憶部から自己診断結果を抽出してもよい。
たとえば、しばらく使わずにおいた無線受信装置100の使用を開始するにあたり、別途測定器を使って動作チェックを行う必要もなく無線機の設定を行う際に故障しているか否かの判断を行うことができる。
【0061】
(無線通信装置300)
前述した無線受信装置100の自己診断機能の関しては、むろん送信機能を備えた無線通信装置にも応用できる。
図7のように無線受信装置100が無線通信装置300の受信部分であって、同一の筐体内に無線送信装置200があるものとし、無線受信装置100の受信機能と無線送信装置200の送信機能を使用して半二重方式で交信するものとする。
以下、この無線通信装置300において、前述した自己診断技術を用いた実際の使用のタイミングとその効果について説明する。
【0062】
(実使用例10)
前述した無線通信装置300による送信操作が終了し、交信の相手局からの信号の受信を開始するに先立ち、自己診断を行なってもよい。
無線通信装置300は、半二重方式による通信であることから、送信と受信とを交互に行う。そのため、送信を終了し、受信を開始した場合であって、交信する相手からの送信信号を受信できないときに、交信する相手が送信をしていないのか、それとも無線通信装置300内の無線受信装置100が故障しているのか、の判断が行うことができる。
【0063】
(実使用例11)
現在受信中の信号が、検出できなくなった場合に自己診断を行なってもよい。たとえば、図7の無線通信装置300を用いた交信であって、相手からの送信が終了して受信信号が無くなったのか、電波の届かない範囲となって受信不能となったのか、故障により受信不能となったのか、は判断できない。むろん図1の無線受信装置100であっても同様であって信号が検出できなくなった理由は判断できない場合がある。よって、受信信号が検出できなくなった場合に自己診断を行なうことで、故障であるか否かの判断を行うことができる。
【0064】
(実使用例12)
無線通信装置300は、自己診断の結果の報知手段として、無線受信装置100が故障の際に、故障通知を特定の変調信号やコードとして変調して無線送信装置200から送信する機能を備えてもよい。
ユーザは、故障が検出された際、報知部140による報知には気が付かない場合もありえる。たとえば、無線通信装置300Aを使用するユーザAと、無線通信装置300Bを使用するユーザBとが交信していたとする。ユーザAは、ユーザBからの指示で作業中であったとし無線通信装置Aが故障の報知を行っていることに気が付いていない。
無線通信装置300Aより送信された故障通知の信号をユーザBの無線通信装置300Bが受信することにより、ユーザBがユーザAの無線通信装置300Aが受信不能であることを認識することができる。
また、基地局を介したグループで交信を行う場合、無線通信装置300からの故障の通知が基地局に連絡(特定のコード等を送信)されるように予め設定されていれば、基地局の管理者は、状況の把握や故障した無線通信装置300と代替機との交換を行うといった対応を迅速に行うことができる。
【0065】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。たとえば、実使用例1〜12を組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、無線通信や放送受信に用いられる無線受信装置及び無線通信装置の受信回路の自己診断に利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
100 無線受信装置
110 アンテナ
112 RF回路
114 FM検波部
116 出力アンプ
118 ミュートスイッチ
120 音声出力部
122 RSSI検出回路
130 ノイズHPF
132 ノイズアンプ
134 整流回路
136 平滑回路
140 制御部
142 操作部
144 報知部
146 充電検出部
148 位置検出部
150 加速度検出部
200 無線送信装置
300 無線通信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角速度変調された信号を受信して復調する無線受信装置であって、
受信信号の信号強度であるRSSIを測定するRSSI検出手段と、
復調帯域外のノイズのレベルをスケルチ電圧として測定するスケルチノイズ検出手段と、
測定されたRSSIとスケルチ電圧とに基づいて前記無線受信装置が故障であるか否かを判断する自己診断手段と、を備えた無線受信装置。
【請求項2】
前記自己診断手段は、
前記RSSIと予め定めたRSSI閾値とを比較し、
前記スケルチ電圧と予め定めたスケルチ電圧閾値とを比較し、
前記RSSIが前記RSSI閾値より低く、前記スケルチ電圧が前記スケルチ電圧閾値より低い場合に、故障と判断すること、
を特徴とする請求項1に記載の無線受信装置。
【請求項3】
前記無線受信装置は、温度検出手段を備え、
前記自己診断手段は、前記温度検出手段により検出された温度変化に応じて補償した前記RSSI閾値及び前記スケルチ閾値により自己診断を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の無線受信装置。
【請求項4】
前記無線受信装置は、温度検出手段を備え、
前記RSSI検出手段は、前記温度検出手段により検出された温度変化に応じて検出結果を補償し、
前記スケルチ検出手段は、前記温度検出手段により検出された温度変化に応じて検出結果を補償し、
前記自己診断手段は、補償されたRSSIと補償されたスケルチ電圧とにより自己診断を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の無線受信装置。
【請求項5】
前記無線受信装置は、受信信号が検出されなくなった場合に、自己診断を開始することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の無線受信装置。
【請求項6】
前記無線受信装置は、
充電可能な2次電池と、
前記2次電池への充電を行う充電器に接続されたことを検出する第1の充電器検出手段と、を備え、
前記自己診断手段は、前記第1の充電器検出手段が充電器に接続されたことを検出した場合に、自己診断を開始することを特徴とする請求項1〜4いずれか一項に記載の無線受信装置。
【請求項7】
前記無線受信装置は、
充電可能な2次電池と、
前記2次電池への充電を行う充電器から外されたことを検出する第2の充電器検出手段と、を備え、
前記自己診断手段は、前記第2の充電器検出手段が充電器から外されたことを検出した場合に、自己診断を開始することを特徴とする請求項1〜4いずれか一項に記載の無線受信装置。
【請求項8】
前記無線受信装置は、位置検出手段を備え、
前記自己診断手段は、前記位置検手段が特定の範囲内に入ったことを検出した場合に、自己診断を開始することを特徴とする請求項1〜4いずれか一項に記載の無線受信装置。
【請求項9】
前記無線受信装置は、位置検出手段を備え、
前記自己診断手段は、前記位置検手段が特定の範囲内から出たことを検出した場合に、自己診断を開始することを特徴とする請求項1〜4いずれか一項に記載の無線受信装置
【請求項10】
前記位置検出手段は、複数の衛星からの信号により自らの位置を測位し、その測位結果が前記特定の範囲内であるか否かにより検出することを特徴とする請求項7または8に記載の無線受信装置。
【請求項11】
前記位置検出手段は、特定の場所に設置された前記ビーコン送信手段が送信するビーコン信号を受信可能な範囲であるか否かにより、前記特定の範囲内であるか否かを検出することを特徴とする請求項7または8に記載の無線受信装置。
【請求項12】
前記無線受信装置は、複数の受信チャネルを予め定められた時間間隔で変更して受信信号の有無を検出するスキャン機能を備え、
前記自己診断手段は、前記スキャン機能の開始に先立って自己診断を開始することを特徴とする請求項1〜4いずれか一項に記載の無線受信装置。
【請求項13】
前記無線受信装置は、受信信号が検出されない場合に、予め定められた時間で電源をオン/オフするパワーセーブ手段を備え、
前記自己診断手段は、前記パワーセーブ手段により、電源オン状態となったことを受けて自己診断を開始することを特徴とする請求項1〜4いずれか一項に記載の無線受信装置。
【請求項14】
前記無線受信装置は、加速度を検出する加速度手段を備え、
前記自己診断手段は、前記加速度手段により検出された加速度と予め定めた閾値とを比較した結果に基づいて自己診断を開始することを特徴とする請求項1〜4いずれか一項に記載の無線受信装置。
【請求項15】
故障をユーザに認識させる報知部を備えたことを特徴とする請求項1〜14いずれか一項に記載の無線受信装置。
【請求項16】
第3者と通信を行うための無線送信装置と無線受信装置とを備えた半二重方式の無線通信装置であって、
前記無線受信装置は、
受信信号の信号強度であるRSSIを測定するRSSI検出手段と、
復調帯域外のノイズのレベルをスケルチ電圧として測定するスケルチノイズ検出手段と、
測定されたRSSIと前記スケルチ電圧との相関より、故障であるか否かを判断する自己診断手段とを備え、
前記自己診断手段は、送信内容の送信を終了して受信を開始するに先立ち自己診断を開始し、前記自己診断手段によって故障と判断された場合に、故障である旨を、前記無線送信装置を用いて第3者に認識させることを特徴とする無線通信装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−93795(P2013−93795A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235899(P2011−235899)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】