説明

無線基地局システムおよびその通信制御方法

【課題】 トラフィック変動に対しても対応可能な携帯電話基地局システム、および通信制御方法を提供する。
【解決手段】 マイクロ基地局4は、移動交換機1が収集した時間とトラフィックデータに基づき、時刻と送信出力の関係をテーブルTにして記憶し、無線通信制御装置32は、テーブルTとタイマ31とを参照して時刻に対応する送信電波のキャリヤ信号のレベルを調整する制御を行うことにより、マイクロ基地局4が収容可能な端末6の数を増減してトラフィック変動に対応する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話の無線基地局およびその通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話基地局は、携帯電話端末(以下単に端末と称する。)からのアクセスを収容できる様に、基地局の出力と、端末とのトラフィック量に応じてカバーエリアや局数が調整されて設置される。端末数が増えるに従い小さいカバーエリア(マイクロセル化)で数多くの小出力の基地局(以下マイクロ基地局と呼ぶ。)を設け、都心の繁華街などでトラフィックを吸収することが図られている。
【0003】
この様なマイクロセル化を図る場合、各マイクロ基地局の設備が増大化することを防ぐために、カバーエリアの大きい基地局(以下マクロ基地局と呼ぶ。)からマイクロ基地局へ光ファイバケーブルにより光強度が変調された高周波信号を送信し、マイクロ基地局から端末へ電波を送信する光ファイバ無線(以下ROF:Radio Over Fiberと称する。)が採用されるようになった(例えば、特許文献1。)。
【0004】
しかし、これらのROFによるマイクロ基地局を採用しても、トラフィックは、一日の間でダイナミックに変動するので、最大トラフィックに合わせるようにマイクロ基地局を増やして設置すると、トラフィック集中時以外は、使用されないマイクロ基地局が生じる無駄や、各マイクロ基地局間でハンドオーバーを頻雑にしなければならないなど通信管理のコンピュータ負荷が大きくなる問題が有った。
【特許文献1】特開2004−229180号公報 (第12頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
携帯電話の基地局にROFによるマイクロ基地局を採用しても、トラフィック集中時以外は、使用されないマイクロ基地局が余剰トラフィックが生じる問題、各マイクロ基地局間でハンドオーバーを頻雑にしなければならないなど通信管理のコンピュータ負荷が大きくなる問題が有った。
【0006】
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、トラフィック変動に対しても対応可能な携帯電話の無線基地局システムおよび通信制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の無線基地局システムは、マクロ基地局と、前記マクロ基地局に接続され前記マクロ基地局よりも小さいカバーエリアで携帯電話端末と通信するマイクロ基地局とを備え、前記マクロ基地局は、前記マイクロ基地局の送信器が前記携帯電話端末へ送信する電波のキャリヤ信号を光送信信号に変換し、前記光送信信号を光ファイバケーブルを介して前記マイクロ基地局へ送信する携帯電話の無線基地局システムにおいて、前記キャリヤ信号を前記光送信信号に変換して前記光ファイバケーブルへ出力するE/O変換器と、トラフィックの時間変動のデータに基づき時刻に対応して前記送信される前記キャリヤ信号の信号レベルの調整値を設定したテーブルと、タイマと、前記E/O変換器に入力されるキャリヤ信号の信号レベルを調整する第1のレベル制御手段と、前記テーブルとタイマとを参照して前記信号レベルを調整する制御情報を前記レベル制御手段および前記マイクロ基地局へ出力する無線通信制御部とを備えるマクロ基地局と、前記マクロ基地局の前記無線通信制御部から前記出力される前記制御情報を前記マイクロ基地局へ送信する伝送手段と、前記光ファイバケーブルから前記光送信信号を受信して再び電気信号のキャリヤ信号に再変換して出力するO/E変換器と、前記伝送手段を介して前記制御情報を受信し、前記O/E変換器から入力される前記再変換された前記キャリヤ信号の信号レベルを前記受信した前記制御情報により調整して送信器へ出力する第2のレベル制御手段と、前記入力される前記キャリヤ信号を電波にしてアンテナから送信する送信器とを備えるマイクロ基地局とを具備することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の無線基地局システムの通信制御方法は、マクロ基地局と、前記マクロ基地局に接続され前記マクロ基地局よりも小さいカバーエリアで携帯電話端末と通信するマイクロ基地局とを備え、前記マクロ基地局は、前記マイクロ基地局の送信器が前記携帯電話端末へ送信する電波のキャリヤ信号を光送信信号に変換し、前記光送信信号を光ファイバケーブルを介して前記マイクロ基地局へ送信する携帯電話の無線基地局システムの通信制御方法において、前記無線基地局システムは、無線通信制御部と、前記光ファイバケーブルへ接続されるE/O変換器と、第1のレベル制御手段と、トラフィックの時間変動のデータに基づき時刻に対応して前記送信される前記キャリヤ信号の信号レベルの調整値を設定したテーブルと、タイマとを備えるマクロ基地局と、前記光ファイバケーブルへ接続されるO/E変換器と第2のレベル制御手段と送信器とを備えるマイクロ基地局と、前記マクロ基地局から前記マイクロ基地局へ制御情報を送信する伝送手段とを具備し、前記マクロ基地局の前記無線通信制御部は、出力前記E/O変換器に入力されるキャリヤ信号の信号レベルを前記テーブルとタイマとを参照して前記信号レベルを調整する制御情報を前記第1のレベル制御手段および前記伝送手段へ出力し、前記第1のレベル制御手段は、前記入力された前記制御情報により信号レベルを調整した前記キャリヤ信号を前記E/O変換器に出力し、前記マクロ基地局の前記E/O変換器は、前記入力された前記キャリヤ信号を前記光送信信号に変換して前記光ファイバケーブルへ出力し、前記マイクロ基地局の前記O/E変換器は、前記光ファイバケーブルから入力される前記光送信信号を再び電気信号のキャリヤ信号に再変換して前記第2のレベル制御手段に出力し、前記出力された制御情報を前記伝送手段から受信した前記マイクロ基地局の前記第2のレベル制御手段は、前記O/E変換器から前記入力される前記キャリヤ信号の信号レベルを前記受信した前記制御情報により調整して前記送信器へ出力し、前記信号レベルを調整された前記キャリヤ信号を入力された前記送信器は、前記入力された前記キャリヤ信号を電波にしてアンテナから送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、マクロ基地局が備えるROF無線基地局(マイクロ基地局)が送信する電波の出力をトラフィックの時間変動のデータに基づき、時刻と対応して調整することにより、ROF無線基地局が収容可能な携帯電話の端末数を調整する携帯電話の無線基地局システムおよび通信制御方法が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の実施例1に係る無線基地局システムの構成図である。
図1において無線基地局システムは、移動交換機1、ネットワーク2、移動交換機1に接続されるマクロ基地局3と、マクロ基地局3に接続される少なくとも1台のマイクロ基地局4a、およびマクロ基地局3とマイクロ基地局4aとの間を接続する光ファイバケーブル5および伝送部51とを備える。マクロ基地局3、およびマイクロ基地局4aは、携帯電話端末(以下端末と省略する。)6との間で無線通信を行う。
【0012】
移動交換機1は、ネットワーク2を介して端末6と端末6の通信相手となる通信端末等との間の発呼処理および接続処理を行うとともに、呼接続処理の制御信号や音声、データ等の信号、およびトラフィック情報等をマクロ基地局3へ送信する。
【0013】
マクロ基地局は、数kmのカバーエリアを持つ携帯電話基地局であり、不感地帯等を解消するためマイクロ基地局4を接続している。
【0014】
マイクロ基地局4は、マクロ基地局3のカバーエリア内に設置される小さいカバーエリアの無線基地局である。そして、マクロ基地局3から光ファイバケーブル5を介してマイクロ基地局4と端末6との間で送信する電波のキャリヤ信号が光信号に変換された光送信信号を送信して再び電波に変換して送信することからROF無線基地局とも呼ばれる(ROF方式無線基地局自体は、同様に受信電波を変換した光受信信号をマクロ基地局3へ送信するものでも良いがここでは、送信側のみを取り扱う。)。
【0015】
伝送部51は、このキャリヤ信号の出力の制御信号をマクロ基地局3からマイクロ基地局4との間で伝送するもので、光ファイバケーブル5にオーダワイヤとして含まれることもある。
【0016】
さて、マクロ基地局3は、テーブルT、タイマ31、無線通信制御装置32、送受信器33と、入出力部34とを備える。
【0017】
テーブルTは、移動交換機1が予め、時刻に対応したトラフィック情報を取得したテーブルで、図示されない内部メモリに記憶されている。タイマ31は、移動交換機1から供給されるタイミング情報を元に時刻情報を生成するか、そのタイミング情報に同期した時計である。または無線通信制御装置32は、移動交換機1との間で入出力する各種信号を送受信器32、又はマイクロ基地局4を介して端末6との間で通信するための無線通信制御を行う。
【0018】
即ち、マクロ基地局3は、無線通信制御装置32が移動交換機1との間で音声信号や、接続制御信号等を入出力してキャリヤ信号を生成する。そして生成されたキャリヤ信号を無線通信制御装置32に接続された送受信器33を介して、例えば、端末6aとの間で、又は、入出力部34とマイクロ基地局4とを介して例えば、端末6b…(以下、特に区別する必要が無い限り、単に端末6と省略して呼ぶ。)との間で送信して無線通信を行う。
【0019】
また、無線通信制御装置32は、マイクロ基地局4が送信する電波のキャリヤ信号を入出力部34へ出力すると共に、テーブルTに従ってキャリヤ信号の信号レベルを調整する制御信号を生成して入出力部34へ出力する。
【0020】
入出力部34は、マクロ基地局3が収容する各マイクロ基地局4に対応して準備され、それぞれの入出力部34は、無線通信制御装置32から入力される端末6へ送信する信号電波となるキャリヤ信号を光信号に変換する。光信号は、光ファイバケーブル5を介してマイクロ基地局4へ送信され、マイクロ基地局4で電気信号のキャリヤ信号に再変換される。そして、マイクロ基地局4が電波を送受信する端末6との間で呼接続管理や電話通信が、送受信器32と端末6との間の呼接続管理や電話通信と同様に行われる。
【0021】
言い換えれば、無線通信制御装置32は、マイクロ基地局4を自局の送受信器32の1つと見なして端末6との間の無線通信を制御する。マイクロ基地局4は、例えば、マイクロ基地局4a、4b…の様に複数設置されても良い(以下、複数のマイクロ基地局4a、4b…について共通の事項を説明する場合には、単にマイクロ基地局4aとのみ省略して説明する。)。
【0022】
図2は、無線基地局システムのカバーエリアの概念を説明する図である。
図2において、マクロ基地局3は、最大数km半径の広いカバーエリアMxを持つ。通常このカバーエリアMxは、送受信器32が送受信する電波で通信可能な範囲である。
【0023】
マイクロ基地局4a、4b…は、カバーエリアMxの中で、電波が到達しない不感地帯をなくすため、又は、端末6の収容数を増すために、更に小さいカバーエリアMia、Mib(以下、単にMiと省略する。)で、例えば、駅前の繁華街や、ビル内に設置される。無線通信制御装置32は、マイクロ基地局4のカバーエリアMiの範囲をカバーエリアMx内のトラフィックに応じて広く、又は狭くなるように制御する。移動交換機1と無線通信制御装置32とは、端末6がこれらのカバーエリアMx、Miの間を移動しても通信が継続するようハンドオーバー処理を行う。
【0024】
例えば、PDC(Personal Degital Cellular)方式の携帯電話基地局では、マクロ基地局3と各マイクロ基地局4a、4bの周波数を異なるように設定し、CDMA(Code Division Multiple Access)方式の携帯電話基地局では、マクロ基地局3と各マイクロ基地局4a、4bの符号化コードを異なるように設定する。その結果、マクロ基地局3を跨って端末6が移動する場合と同様にハンドオーバーが行われ、無線通信が継続する。
【0025】
図3は、マクロ基地局3の入出力部34とマイクロ基地局4の機能構成を示すブロック図である。
以下、図1、図3を参照してマクロ基地局3、およびマイクロ基地局4の構成と動作概要を説明する。
【0026】
図3(a)において、マクロ基地局3の入出力部34は、無線通信制御装置32から入力されるキャリヤ信号を増幅する増幅器341、増幅器341でキャリヤ信号のレベルを調整する制御器343、キャリヤ信号を電気信号から光信号(以下光送信信号と称する。)に変換するE/O(電気・光変換器)342、マイクロ基地局4からの光信号を光ファイバ5を介して受信するO/E(光・電気変換器)344を備えている。
【0027】
光送信信号は、端末6と通信するためのマクロ基地局3が送信する電波の周波数のキャリヤが変調された高周波信号である。制御器343は、無線通信制御装置32から入力されるキャリヤ信号のレベルを調整する制御信号を増幅器341に出力する。このキャリヤ信号のレベルの大小に従い、マイクロ基地局4が送信する電波の出力が大小し、カバーエリアMxiの範囲が変化する。
【0028】
キャリヤ信号のレベルの制御信号は、伝送部51を介してマイクロ基地局4へ送信される。伝送部51は、幾つかの手段から選択されて適用される。例えば、図3(b)の様に光ファイバケーブル5の中へオーダワイヤ、又は図3(c)の点線のE/O342、O/E41を組み合わせた光ファイバ伝送によるオーダワイヤ等が使用されるものであってもよい。また、伝送部51は、図示されないが専用線等の通信網であっても良い。
【0029】
そして更に入出力部34は、マイクロ基地局4が端末6の送信した電波を受信して光信号に変換された受信信号を光ファイバケーブル5を介してO/E344が受信し、無線通信制御装置32へ電気信号に再変換して出力する。しかし、前述の如く、マイクロ基地局4が端末6から受信する信号の処理については本発明に直接関係しないので、以下では説明を省略する。
【0030】
マイクロ基地局4は、マクロ基地局3の入出力部34のE/O342から送信される光送信信号を光ファイバケーブル5を介して受信するO/E41、O/E41が電気信号に再変換したキャリヤ信号の信号レベルを減衰する減衰器42、送信器43、アンテナ45と、伝送部51を介してマクロ基地局3の入出力部34の制御器343からの制御信号を受信して減衰器42の減衰量を制御する制御器44を備える。マイクロ基地局4は、端末6からの電波を受信する受信器46とハイブリッドH、およびその受信信号を光信号に変換するE/O47も備えているが前述の通り以下では説明を省略する。
【0031】
さて、一般に携帯電話のトラフィックは、時間に連動して変動する。ここでは、都心に設置されたマクロ基地局3のカバーエリア内の駅前広場にマイクロ基地局4aが設置され、マイクロ基地局4bが駅から少し離れた商店街に設置されている場合を取り上げて無線基地局システムの動作説明を行う。
【0032】
マクロ基地局3は、例えば、午前7時30分以降後前9時過ぎまでカバーエリアMx内に存在する端末6の数は増加し、その後夜の8時頃まで概ね一定であると見なしてトラフィック制御を行う。マクロ基地局3のカバーエリアMxは、広く取られているが送受信器33だけでは、駅前広場では不感地帯が生じ携帯電話が通信出来ない場所があるので不感地帯対策としてマイクロ基地局4aが設置されている。
【0033】
しかし、朝夕の通勤時間には、駅前広場周辺に通勤、通学者が集中し、駅広場付近からの発呼が増える。本発明の実施例では、混雑時のトラフィック増加(通話端末6の数)に対応するため、無線通信制御装置32は、マイクロ基地局4aの送信出力を上げ、カバーエリアMiaを広くしてマイクロ基地局4aを介してアクセス可能な端末6の数(以下収容数と称する。)を大きくする。
【0034】
一方、同様に不感地帯対策として設けられたマイクロ基地局4bは、商店街に在るため朝はアクセスする人が少なく、出力を下げてカバーエリアMibが小さく設定される。反対に昼食時や、夕方の退勤、帰宅時には商店街へ人が集まるので出力を大きくしてカバーエリアMibを広げる。この昼食時や夕方にマイクロ基地局4aのトラフィックが大きくなければ、マイクロ基地局4aのカバーエリアMiaを小さくするよう電波の送信出力が下げられる。
【0035】
従来も不感地帯対策としてマイクロ基地局4が駅周辺等に設置されることがあったが、送信出力が一定のためカバーエリアは一定であり、また、端末6の数が多くなるとマイクロ基地局4からの1つの端末6あたりの受信電力が低下するため収容できる端末数も限定されてしまう。従って、従来は、朝夕の様なトラフィック集中時には、マクロ基地局3のカバーエリア内では移動交換機1の収容端末数に余裕が在るにもかかわらず駅周辺の様なトラフィックが集中する場所では話中になる問題があった。
【0036】
本発明の実施例では出力を変えてカバーエリアを広げるとともに、送信出力が増えることからトラフィックが集中する場所でのマイクロ基地局4が収容可能な端末6の数を増減することが可能であり話中の発生を防ぐことが出来る。
【0037】
トラフィック変化を調べるために、予め各マイクロ基地局4a、4bを活性化、もしくは非活性化して各局のトラフィックを移動交換機1で監視する。そして、この監視結果に基づき各マイクロ基地局4a、4Bのトラフィック量を時間単位で統計的に求めたトラフィックデータを取得してそのデータを無線通信制御装置32へテーブルTにして初期設定する。
【0038】
このテーブルTは、時刻と共に変化するトラフィック(通話端末数)に対応できるよう、時刻に対応して送信出力を調整するために無線通信制御部34の記憶装置(図示せず)に設けられる。無線通信制御装置32は、内蔵したタイマ321とテーブルTとを照合して送信信号出力(送信電波出力)を制御する制御信号を、入出力部34の制御器343へ出力する。
【0039】
以下、駅前広場に設置されたマイクロ基地局4aを例に、出力制御処理の手順を説明する。
今、マイクロ基地局4aには、最小条件として端末6が「5」まで収容出来、最大条件として最小の4倍の「20」まで収容数が増やせる設定が可能であるとする。即ち、マイクロ基地局4aの送信出力は、最小条件時のxdBmの送信出力に比べて最大4倍(6dB増加)まで増加可能であるとする。
【0040】
図4は、1時間毎にマイクロ基地局4a、4bにアクセスする端末数(トラフィックデータ)の平均と、当該時間毎の送信出力を設定したテーブルTである。
図4において、マイクロ基地局4aは、午前7時まではトラフィックは低く5台以下なので、出力は最小のxdBmである。駅前広場に設置されたマイクロ基地局4aでは、乗降客が増える8時以降14時までは、5〜8台がアクセスする。その間、無線通信制御装置32は、タイマ321とテーブルTとを照合して出力を3dB上げるための制御信号を入出力部34の制御器343と、入出力部34を介してマイクロ基地局4aの制御器44へ制御信号を送信する。テーブルTには、入出力部34の制御器343とマイクロ基地局4aの制御器44に設定する利得、または減衰量が記載されている。
【0041】
ここでは、増幅器342の利得を「+3dB」上げる設定なので制御器343は、3dB利得を上げる制御信号を無線通信制御装置32から受信し、キャリヤ信号の信号レベル3dBを上げる。
【0042】
また、制御器343は、光ファイバケーブルを介してマイクロ基地局4の制御器44へ制御信号を送信するが、制御器44は、減衰量を変化する制御はない(「0」)ので、減衰器42の減衰量はそのままである。そして送信器43へ入力されるキャリヤ信号の信号レベルを調整前から3dB高い値に設定することになるのでアンテナ45から送信される電波の出力が3dB高く設定される。その結果、送信器43の出力が2倍に増える事によりカバーエリアの面積が2倍となり、収容可能な端末6の数も「5」から2倍の「10」に増える。
【0043】
なお、送信出力を3dB上げる制御信号は、利得を「+3dB」上げる代わりに、減衰量を「―3dB」減らす制御信号を、マイクロ基地局4aの制御器44に送信する方法であっても良いし、利得増加と減衰量低下を同時にレベル配分して(例えば、各「+1.5dB」、「−1.5dB」)行うものであっても良い。
【0044】
また、図4のテーブルTにおいてマイクロ基地局4bは、午前11時以降、14時までは、最大20台まで収容可能な様に送信出力が「+6dB」上がるように調整される。無線通信制御装置32は、テーブルTを参照して送信出力を6dB上げるために利得を「+3dB」上げ、減衰量を「−3dB」減らすように制御信号を入出力部34とマイクロ基地局へ送信する。
【0045】
また、上記説明では、マクロ基地局3の入出力部34に増幅器341、マイクロ基地局4に減衰器42を備えているが、キャリヤ信号のレベルを調整出来るレベル調整機能を有すれば、マクロ基地局3、マイクロ基地局4のいずれに増幅器、または減衰器、を備えても良いし、もしくは減衰器と増幅器を組み合わせた利得調整手段を備えるものであっても良く、それらの場合の減衰量、利得の調整の設定方法は容易に類推出来るので説明は省略する。
【実施例2】
【0046】
実施例2は、以下の説明以外は実施例1と同様であるが、タイマおよびテーブルt1、t2がマクロ基地局3の入出力部34とマイクロ基地局4の制御器44に設けられて利得制御と減衰量が調整される。
【0047】
図5は、実施例2におけるマクロ基地局3の入出力部34とマイクロ基地局4の機能構成を示すブロック図である。
以下、図5を参照して実施例2におけるマイクロ基地局の送信出力を調整する手順を説明する。
図5において、マクロ基地局3の入出力部34とマイクロ基地局4の各制御器343、44は、それぞれがレベル調整のためのテーブルt1、t2、および同期するタイマ3431、441を備えることにより出力制御を行う。
【0048】
タイマの同期方法としては、例えば、タイマt1、t2がGPS受信器であってGPS受信器が出力する時刻情報を利用すればよいし、電波時計を利用するものでも良い。
【0049】
マクロ基地局3の入出力部34とマイクロ基地局4の各制御器343、44は、それぞれ図4のテーブルTに対応する送信出力になるレベル調整値が設定されたテーブルt1、t2が備えられる。そして、マクロ基地局3の入出力部34の制御部3432、各マイクロ基地局4a、4bの制御部442は、それぞれのタイマに対応するテーブルt1、t2を照合して利得、または減衰量を調整する。
【0050】
以上、説明した如く本発明による無線基地局システムは、ROF無線基地局であるマイクロ基地局の出力を時刻に対応したトラフィックデータに対応して調整することにより収容可能な端末数を増減してトラフィック変動に対応した通信が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施例1に係る無線基地局システムの構成図。
【図2】本発明の実施例1に係る無線基地局システムのカバーエリアの概念を説明する図。
【図3】マクロ基地局の入出力部とマイクロ基地局の機能構成を示すブロック図。
【図4】マイクロ基地局の時間に対応したトラフィックと出力を記憶したテーブルの図。
【図5】実施例2におけるマクロ基地局の入出力部とマイクロ基地局の機能構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0052】
1 移動交換機
2 ネットワーク
21 交換電話網
22 データ網
3 マクロ基地局
32 通信制御装置
33 送受信器
34 入出力部
341 増幅器
4a 4b マイクロ基地局
41、344 O/E(光・電気変換器)
42 減衰器
43 送信器
44、343 制御器
45 アンテナ
46 受信器
47、342 E/O(電気・光変換器)
5 光ファイバケーブル
51 伝送部
6 (携帯電話)端末
Mx、Mia、Mib カバーエリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マクロ基地局と、前記マクロ基地局に接続され前記マクロ基地局よりも小さいカバーエリアで携帯電話端末と通信するマイクロ基地局とを備え、前記マクロ基地局は、前記マイクロ基地局の送信器が前記携帯電話端末へ送信する電波のキャリヤ信号を光送信信号に変換し、前記光送信信号を光ファイバケーブルを介して前記マイクロ基地局へ送信する携帯電話の無線基地局システムにおいて、
前記キャリヤ信号を前記光送信信号に変換して前記光ファイバケーブルへ出力するE/O変換器と、トラフィックの時間変動のデータに基づき時刻に対応して前記送信される前記キャリヤ信号の信号レベルの調整値を設定したテーブルと、タイマと、
前記E/O変換器に入力されるキャリヤ信号の信号レベルを調整する第1のレベル制御手段と、前記テーブルとタイマとを参照して前記信号レベルを調整する制御情報を前記レベル制御手段および前記マイクロ基地局へ出力する無線通信制御部とを備えるマクロ基地局と、
前記マクロ基地局の前記無線通信制御部から前記出力される前記制御情報を前記マイクロ基地局へ送信する伝送手段と、
前記光ファイバケーブルから前記光送信信号を受信して再び電気信号のキャリヤ信号に再変換して出力するO/E変換器と、前記伝送手段を介して前記制御情報を受信し、前記O/E変換器から入力される前記再変換された前記キャリヤ信号の信号レベルを前記受信した前記制御情報により調整して送信器へ出力する第2のレベル制御手段と、前記入力される前記キャリヤ信号を電波にしてアンテナから送信する送信器とを備えるマイクロ基地局とを
具備することを特徴とする無線基地局システム。
【請求項2】
マクロ基地局と、前記マクロ基地局に接続され前記マクロ基地局よりも小さいカバーエリアで携帯電話端末と通信するマイクロ基地局とを備え、前記マクロ基地局は、前記マイクロ基地局の送信器が前記携帯電話端末へ送信する電波のキャリヤ信号を光送信信号に変換し、前記光送信信号を光ファイバケーブルを介して前記マイクロ基地局へ送信する携帯電話の無線基地局システムにおいて、
前記キャリヤ信号を前記光送信信号に変換して前記光ファイバケーブルへ出力するE/O変換器と、トラフィックの時間変動のデータに基づき時刻に対応して前記送信されるキャリヤ信号の信号レベルの調整値を設定した第1のテーブルと、第1のタイマとを備え、前記第1のテーブルと前記第1のタイマとを参照して前記E/O変換器に入力される前記キャリヤ信号の信号レベルを調整する第1のレベル制御手段とを備えるマクロ基地局と、
前記光ファイバケーブルから前記光送信信号を受信して再び電気信号のキャリヤ信号に再変換して出力するO/E変換器と、
前記トラフィックの時間変動のデータに基づき時刻に対応して前記送信されるキャリヤ信号の信号レベルの調整値を設定した第2のテーブルと前記第1のタイマに同期する第2のタイマとを備え、前記第2のテーブルと前記第2のタイマとを参照して前記O/E変換器から入力された前記キャリヤ信号の信号レベルを調整して送信器へ出力する第2のレベル制御手段と、前記入力された前記キャリヤ信号を電波にしてアンテナから送信する送信器とを備えるマイクロ基地局とを
具備することを特徴とする無線基地局システム。
【請求項3】
マクロ基地局と、前記マクロ基地局に接続され前記マクロ基地局よりも小さいカバーエリアで携帯電話端末と通信するマイクロ基地局とを備え、前記マクロ基地局は、前記マイクロ基地局の送信器が前記携帯電話端末へ送信する電波のキャリヤ信号を光送信信号に変換し、前記光送信信号を光ファイバケーブルを介して前記マイクロ基地局へ送信する携帯電話の無線基地局システムの通信制御方法において、
前記無線基地局システムは、
無線通信制御部と、前記光ファイバケーブルへ接続されるE/O変換器と、第1のレベル制御手段と、トラフィックの時間変動のデータに基づき時刻に対応して前記送信される前記キャリヤ信号の信号レベルの調整値を設定したテーブルと、タイマとを備えるマクロ基地局と、
前記光ファイバケーブルへ接続されるO/E変換器と第2のレベル制御手段と送信器とを備えるマイクロ基地局と、
前記マクロ基地局から前記マイクロ基地局へ制御情報を送信する伝送手段とを具備し、
前記マクロ基地局の前記無線通信制御部は、出力前記E/O変換器に入力されるキャリヤ信号の信号レベルを前記テーブルとタイマとを参照して前記信号レベルを調整する制御情報を前記第1のレベル制御手段および前記伝送手段へ出力し、
前記第1のレベル制御手段は、前記入力された前記制御情報により信号レベルを調整した前記キャリヤ信号を前記E/O変換器に出力し、
前記マクロ基地局の前記E/O変換器は、前記入力された前記キャリヤ信号を前記光送信信号に変換して前記光ファイバケーブルへ出力し、
前記マイクロ基地局の前記O/E変換器は、前記光ファイバケーブルから入力される前記光送信信号を再び電気信号のキャリヤ信号に再変換して前記第2のレベル制御手段に出力し、
前記出力された制御情報を前記伝送手段から受信した前記マイクロ基地局の前記第2のレベル制御手段は、前記O/E変換器から前記入力される前記キャリヤ信号の信号レベルを前記受信した前記制御情報により調整して前記送信器へ出力し、
前記信号レベルを調整された前記キャリヤ信号を入力された前記送信器は、前記入力された前記キャリヤ信号を電波にしてアンテナから送信することを特徴とする無線基地局システムの通信制御方法。
【請求項4】
マクロ基地局と、前記マクロ基地局に接続され前記マクロ基地局よりも小さいカバーエリアで携帯電話端末と通信するマイクロ基地局とを備え、前記マクロ基地局は、前記マイクロ基地局の送信器が前記携帯電話端末へ送信する電波のキャリヤ信号を光送信信号に変換し、前記光送信信号を光ファイバケーブルを介して前記マイクロ基地局へ送信する携帯電話の無線基地局システムの通信制御方法において、
前記無線基地局システムは、
前記光ファイバケーブルへ接続されるE/O変換器と、第1のレベル制御手段と、トラフィックの時間変動のデータに基づき時刻に対応して前記送信される前記キャリヤ信号の信号レベルの調整値を設定した第1のテーブルと、第1のタイマとを備えるマクロ基地局と、
前記光ファイバケーブルへ接続されるO/E変換器と、第2のレベル制御手段と、前記トラフィックの時間変動のデータに基づき時刻に対応して前記送信される前記キャリヤ信号の信号レベルの調整値を設定した第2のテーブルと、前記第1のタイマに同期する第2のタイマと、送信器とを備えるマイクロ基地局とを具備し、
前記マクロ基地局の前記第1のレベル制御手段は、出力前記E/O変換器に入力されるキャリヤ信号の信号レベルを前記第1のテーブルと前記第1のタイマとを参照して調整して前記E/O変換器に出力し、
前記E/O変換器は、前記レベルが調整されて入力された前記キャリヤ信号を前記光送信信号に変換して前記光ファイバケーブルへ出力し、
前記マイクロ基地局の前記O/E変換器は、前記光ファイバケーブルから入力される前記光送信信号を再び電気信号のキャリヤ信号に再変換して前記第2のレベル制御手段に出力し、
前記マイクロ基地局の前記第2のレベル制御手段は、前記O/E変換器から前記入力される前記キャリヤ信号の信号レベルを前記第2のテーブルと前記第2のタイマとを参照することにより調整して前記送信器へ出力し、
前記レベルを調整されたキャリヤ信号を入力された送信器は、前記入力された前記キャリヤ信号を電波にしてアンテナから送信することを特徴とする無線基地局システムの通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−197264(P2006−197264A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−6885(P2005−6885)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】