説明

無線基地局システム

【課題】無線基地局のコストアップや大型化を招くことなく、障害復旧時のサービス停止も最小限に抑えることができるように冗長構成した無線基地局システムを提供する。
【解決手段】交換網に接続される第1センター局13および第2センター局15と、第1センター局13と第2センター局15との間にカスケード接続された複数の無線基地局11−1〜11−Nと、を備え、複数の無線基地局11−1〜11−Nの各々は、第1センター局13と通信し、第1センター局13との通信が不通の場合に第2センター局15と通信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線基地局システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、野外等に設置される無線基地局は、物理線によりカスケード接続されて無線網制御装置等のセンター局に接続される(例えば、特許文献1参照)。そのカスケード接続型式として、デイジーチェーン型やスター型が知られている。
【0003】
図2は、従来のデイジーチェーン型の無線基地局システムの概略構成を示す図である。この無線基地局システムは、2台の無線基地局101−1,101−2を有する。各無線基地局は、センター用コネクタ(CONN)と、カスケード用コネクタ(CAS)とを備える。無線基地局101−1は、マスター局として機能し、そのCONNに、上位の無線網制御装置等のセンター局103側のイーサネット(登録商標)等の物理回線が接続される。無線基地局101−1のCASは、物理線を介して、スレーブ局として機能する無線基地局101−2のCONNに接続される。
【0004】
図3は、従来のスター型の無線基地局システムの概略構成を示す図である。この無線基地局システムは、3台の無線基地局111−1〜111−3を有する。各無線基地局は、CONNと、2個のカスケード用コネクタ(CAS1,CAS2)とを備える。無線基地局111−1は、マスター局として機能し、そのCONNに、センター局103側の物理回線が接続される。無線基地局111−1のCAS1は、物理線を介して、スレーブ局として機構する無線基地局111−2のCONNに接続される。同様に、無線基地局111−1のCAS2は、物理線を介して、スレーブ局として機能する無線基地局111−3のCONNに接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−235690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図2および図3に示した無線基地局システムは、カスケード接続数が最小(1ホップ)となっている。この場合、スレーブ局、あるいは、当該スレーブ局とマスター局とを接続する物理線に障害が生じても、マスター局や他のスレーブ局(図3の場合)、および他の物理回線が正常であれば、障害が他の無線基地局に影響を及ぼすことはない。
【0007】
しかしながら、例えば、図4に示すように、3台以上の無線基地局101−1〜101−Nがカスケード接続されてホップ数が2以上となった場合は、障害の発生が他の無線基地局に影響を及ぼす場合がある。すなわち、図4の構成の場合、2ホップから(N−1)ホップ間で無線基地局、あるいは、無線基地局間を接続する物理線に障害が発生すると、それ以降の無線基地局の全てが、センター局103との通信が不能となり、サービスが停止されることになる。
【0008】
その対策として、例えば、図5に示すような冗長構成の採用が考えられる。つまり、無線基地局101−1〜101−Nの各々に、2個のセンター用コネクタ(CONN1,CONN2)と、2個のカスケード用コネクタ(CAS1,CAS2)とを設けて物理回線を2重化する。また、物理回線の2重化に合わせて、各無線基地局自体の回路構成も2重化する。
【0009】
しかし、このようなハード的な冗長構成においては、無線基地局のコストアップや大型化を招くことになる。また、冗長構成により、傷害発生時のサービス停止は回避できても、障害の復旧工事において、障害が発生した無線基地局の停止が必要な場合は、当該無線基地局の停止によって、後段の無線基地局もサービスが停止されてしまうことになる。
【0010】
したがって、かかる観点に鑑みてなされた本発明の目的は、無線基地局のコストアップや大型化を招くことなく、しかも障害復旧時のサービス停止も最小限に抑えることができるように冗長構成した無線基地局システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明に係る無線基地局システムの発明は、
交換網に接続される第1センター局および第2センター局と、
前記第1センター局と前記第2センター局との間にカスケード接続された複数の無線基地局と、を備え、
前記複数の無線基地局の各々は、前記第1センター局と通信し、前記第1センター局との通信が不通の場合に前記第2センター局と通信する、
ことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の好適一実施の形態においては、
前記複数の無線基地局の各々は、前記第1センター局と通信するための第1アドレスと、前記第2センター局と通信するための第2アドレスとを有し、
前記第1アドレスを設定して前記第1センター局と通信し、前記第1センター局との通信が不通の場合に、前記第2アドレスに設定変更して前記第2センター局と通信する、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る無線基地局システムによると、複数の無線基地局は、第1センター局と第2センター局との間にカスケード接続されて、各々が第1センター局と通信し、第1センター局との通信が不通の場合に第2センター局と通信する。これにより、物理回線を2重化したり、各無線基地局自体の回路構成を2重化したりすることなく、したがって、無線基地局のコストアップや大型化を招くことなく、冗長構成が可能となる。また、障害復旧時に復旧対象の無線基地局を停止させても、その影響は当該無線基地局に止まり、他の無線基地局に及ぶことがないので、障害復旧時のサービス停止も最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る無線基地局システムの概略構成を示す図である。
【図2】従来のデイジーチェーン型の無線基地局システムの概略構成を示す図である。
【図3】従来のスター型の無線基地局システムの概略構成を示す図である。
【図4】従来の2ホップ以上のデイジーチェーン型の無線基地局システムの概略構成を示す図である。
【図5】従来の冗長構成の無線基地局システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施の形態に係る無線基地局システムの概略構成を示す図である。この無線基地局システムは、複数N台の無線基地局11−1〜11−Nを有する。各無線基地局は、センター用コネクタ(CONN)と、カスケード用コネクタ(CAS)とを備える。無線基地局11−1は、そのCONNに、上位の無線網制御装置等の第1センター局13側のイーサネット等の物理回線(バックホール)が接続される。
【0017】
無線基地局11−1のCASは、1ホップ目の無線基地局11−2のCONNに物理線を介して接続される。1ホップ目の無線基地局11−2のCASは、2ホップ目の無線基地局11−3のCONNに物理線を介して接続される。同様にして、無線基地局11−4〜11−Nが接続される。これにより、第1センター局13に、無線基地局11−1〜11−Nがデイジーチェーン型にカスケード接続される。
【0018】
本実施の形態に係る無線基地局システムでは、終段の無線基地局11−NのCASに、第1センター局13とは異なる無線網制御装置等の第2センター局15におけるイーサネット等の物理回線が接続される。また、無線基地局11−1〜11−Nには、回線接続用のIPアドレスとして、第1センター局13用の第1のIPアドレス1A〜NAと、第2センター局15用の第2のIPアドレス1B〜NBとを割り当てる。
【0019】
次に、本実施の形態に係る無線基地局システムの動作を説明する。
【0020】
無線基地局11−1〜11−Nは、例えば、第1センター局13と通信するように、第1のIPアドレス1A〜NAが初期設定される。また、無線基地局11−2〜11−Nに設定された第1のIPアドレス2A〜NAは、第1センター局13に接続されている無線基地局11−1に転送されて登録される。これにより、無線基地局システムは、無線基地局11−1をマスター局、他の無線基地局11−2〜11−Nをスレーブ局として、第1センター局13とカスケード動作による通信を行う。
【0021】
また、第1センター局13は、マスター局である無線基地局11−1に対して、例えばキープアライブ信号(Keep Alive)を定期的に送信する。同様に、無線基地局11−1は、スレーブ局である無線基地局11−2〜11−Nに対して、例えばキープアライブ信号を定期的に送信する。
【0022】
この状態で、例えば、無線基地局11−3と前段の無線基地局11−2とを接続する物理線に障害が発生したとする。この場合、マスター局の無線基地局11−1は、キープアライブ信号に対する無線基地局11−3〜11−Nからの応答信号を受信できないのを検知して、これらの無線基地局11−3〜11−Nの第1のIPアドレス3A〜NAの登録を抹消する。そして、以後は、無線基地局11−2のみをスレーブ局としてカスケード動作を行って第1センター局13と通信する。
【0023】
一方、無線基地局11−3〜11−Nは、マスター局である無線基地局11−1からのキープアライブ信号を受信できないのを検知して、IPアドレスを第2のIPアドレス3B〜NBに設定変更する。そして、無線基地局11−3〜11−(N−1)は、設定変更した第2のIPアドレス3B〜(N−1)Bを、無線基地局11−Nに転送する。これにより、無線基地局11−Nは、第2のIPアドレス3B〜(N−1)Bを登録して、当該無線基地局11−Nをマスター局、他の無線基地局11−3〜11−(N−1)をスレーブ局として、第2センター局15とカスケード動作による通信を行う。
【0024】
なお、スレーブ局自体に障害が発生して、マスター局の無線基地局11−1に対してキープアライブ信号の応答信号を送信できず、かつ、第2のIPアドレスへの設定変更ができない場合は、当該スレーブ局を除いて、前段の無線基地局は第1センター局13と通信し、後段の無線基地局は第2センター局15と通信する。また、無線基地局11−1〜11−Nが、第1のIPアドレス1A〜NAを設定している状態で、マスター局の無線基地局11−1が第1センター局13からのキープアライブ信号を受信できない場合は、無線基地局11−1〜11−Nの全てを第2のIPアドレス1B〜NBに設定変更して、無線基地局11−Nをマスター局、他の無線基地局11−1〜11−(N−1)をスレーブ局として、第2センター局15とカスケード動作による通信を行う。
【0025】
以上のように、本実施の形態による無線基地局システムにおいては、無線基地局11−1〜11−Nを、第1センター局13と第2センター局15との間にカスケード接続する。そして、無線基地局11−1〜11−Nに第1のIPアドレス1A〜NAを設定して第1センター局13と通信し、第1センター局13との通信が不通となった無線基地局については、第2のIPアドレスに設定変更して第2センター局15と通信する。これにより、物理回線を2重化したり、各無線基地局自体の回路構成を2重化したりすることなく、冗長構成を実現することができる。したがって、無線基地局のコストアップや大型化を招くことがない。また、障害復旧時に復旧対象の無線基地局を停止させても、その影響は当該無線基地局に止まり、他の無線基地局に及ぶことがないので、障害復旧時のサービス停止も最小限に抑えることができる。なお、障害復旧後は、必要に応じて、第2のIPアドレスに設定されている無線基地局を第1のIPアドレスに設定変更する。
【0026】
本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、複数の無線基地局をデイジーチェーン型にカスケード接続したが、スター型にカスケード接続する場合にも、本発明を有効に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0027】
11−1〜11−N 無線基地局
13 第1センター局
15 第2センター局
CONN センター用コネクタ
CAS カスケード用コネクタ
1A〜NA 第1のIPアドレス
1B〜NB 第2のIPアドレス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交換網に接続される第1センター局および第2センター局と、
前記第1センター局と前記第2センター局との間にカスケード接続された複数の無線基地局と、を備え、
前記複数の無線基地局の各々は、前記第1センター局と通信し、前記第1センター局との通信が不通の場合に前記第2センター局と通信する、
ことを特徴とする無線基地局システム。
【請求項2】
前記複数の無線基地局の各々は、前記第1センター局と通信するための第1アドレスと、前記第2センター局と通信するための第2アドレスとを有し、
前記第1アドレスを設定して前記第1センター局と通信し、前記第1センター局との通信が不通の場合に、前記第2アドレスに設定変更して前記第2センター局と通信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線基地局システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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