無線用ICタグ、及び無線用ICタグの製造方法
【課題】 小さなアンテナで広い指向性が得られると共に通信距離を低下させることなく情報の読み取りができ、かつ、安価で小型・薄型構造の無線用ICタグを提供する。
【解決手段】 無線用ICタグにおけるH型アンテナ1は、長さLの中央部でアンテナ幅Dを細くして長さLの両側部分でアンテナ幅Dを広くした、いわゆるH型形状として中央の細い部分にICチップ2を搭載した構成となっている。このようにしてH型アンテナ1のアンテナ幅Dを長手方向の両側で広げた形状にすることにより、ICチップ2がH型アンテナ1と接続するアンテナ中央部(つまり、くびれた部分)で最大電流が得られ、ICチップ2を取り囲んだアンテナ周辺部分に電磁エネルギーが集中してアンテナ効率が向上する。なお、H型アンテナ1を収納するケースの形状に合わせて、くびれた部分を端の方へ移動させたり、アンテナ放射面に開口部や切欠きを設けることもできる。
【解決手段】 無線用ICタグにおけるH型アンテナ1は、長さLの中央部でアンテナ幅Dを細くして長さLの両側部分でアンテナ幅Dを広くした、いわゆるH型形状として中央の細い部分にICチップ2を搭載した構成となっている。このようにしてH型アンテナ1のアンテナ幅Dを長手方向の両側で広げた形状にすることにより、ICチップ2がH型アンテナ1と接続するアンテナ中央部(つまり、くびれた部分)で最大電流が得られ、ICチップ2を取り囲んだアンテナ周辺部分に電磁エネルギーが集中してアンテナ効率が向上する。なお、H型アンテナ1を収納するケースの形状に合わせて、くびれた部分を端の方へ移動させたり、アンテナ放射面に開口部や切欠きを設けることもできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップに記録されている情報を無線で送信する無線用ICタグ等に関し、特に、ICチップから無線電波を送信するアンテナに改良を加えた無線用ICタグ及び無線用ICタグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物品の情報管理や物流管理などに無線用ICタグが広く利用されている。さらには、動物などを特定したり管理したりするときにもこれらの無線用ICタグが利用され始めている。このような無線用ICタグは、情報を記録した小さなICチップとICチップの情報を無線で送信する小さなアンテナとによって構成されている。すなわち、このような無線用ICタグは、例えば、細長いアンテナの中央部付近に幅0.4mm×奥行き0.4mm×高さ0.1mm程度の小さなICチップが取り付けられていて、物品や動物などに貼付されて利用されている。したがって、読取装置を無線用ICタグにかざせば、非接触でICチップに記録されている情報(つまり、個々の物品や動物の属性などに関する情報)を読み取ることができる。このような無線用ICタグを物品や動物などに貼付するためには、無線用ICタグはできるだけ小さいことが望ましい。そのためには、無線用ICタグのアンテナを小さくする必要がある。
【0003】
図12は、従来の無線用ICタグにおけるダイポールアンテナの構成図である。図12(a)に示すように、ダイポールアンテナ21の中央部にICチップ22が取り付けられていて、ダイポールアンテナ21は最大アンテナ効率が得られるようにダイポールアンテナ21の長さLがλ/2になっている。但し、λは使用周波数における波長を表わしている。したがって、無線用ICタグを小さくするためには、例えば図12(b)に示すようにダイポールアンテナ21の一部を切断して使用することが考えられた。
【0004】
また、アンテナ部分の中央部を細くして電流の流れる方向の両端部分の幅を広くした、いわゆるH型形状のアンテナにして小型化を図ったマイクロストリップアンテナの技術も知られている。この技術は、H型アンテナの細いくびれ部分に磁界が集中してインダクタンスを増大させることにより、共振周波数を下げてアンテナの小型化を図ったものである(例えば、特許文献1参照)。さらには、H型形状のアンテナを用いた非接触ICタグの技術も知られている。この技術は、H型アンテナの接続部分をオーミックコンタクトにして非接触ICタグの小型化を実現したものである(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−53535号公報(段落番号0015〜0023、図1及び図2参照)
【特許文献2】特開2003−243918号公報(段落番号0012〜0027、図1〜図4参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ダイポールアンテナのアンテナ長Lはλ/2のときに最大アンテナ効率が得られるので、無線用ICタグを小型化するために図12(b)のようにアンテナを長さ方向で切断してしまうと、アンテナ効率が低下して通信距離が短くなってしまい、結果的に通信が困難となってICチップの情報を読み取れなくなってしまうことがある。図13は、図12に示す形状のダイポールアンテナのアンテナ長と通信距離の関係を示す特性図である。図13に示すように、アンテナ長L(mm)を短くすると通信距離S(mm)は急激に減少して行き、例えばアンテナ幅Dを1.5mmに固定した場合はアンテナ長Lが25mm以下になると通信不能になってしまう。
【0006】
また、前記の特許文献1に示すH型アンテナは、誘電体の表面にH型に形成されたパッチ電極と裏面に形成された接地電極とからなるいわゆるマイクロストリップアンテナであって、携帯電話機用の小型アンテナとして利用されるものであり、接地電極を持たないストリップアンテナにはそのまま応用することはできない。さらに、前記の特許文献2に示すアンテナは、H型形状のアンテナを用いて小型化を図った非接触ICタグを実現しているが、基板上に左右対称に形成された2個の幅広なアンテナパターンとこれらのアンテナパターンを橋渡しするICタグラベルとによってH型形状のアンテナを構成するとき、アンテナパターンとICタグラベルとがオーミックコンタクトになっている。
【0007】
すなわち、非接触ICタグの製造工程において、アンテナパターンを形成した基板に対してフィルムコーティングを施さない状態で、アンテナパターン上にICタグラベルを直接搭載してオーミックコンタクトしている。したがって、特許文献2の技術では、H型アンテナの製造工程において、2個の幅広なアンテナパターンと橋渡しするためのICチップ搭載アンテナパターンとの間にフィルムをコーティングすることができない。言い換えれば、従来から行われている製造工程をそのまま利用した静電容量結合によってH型アンテナを構成して非接触ICタグを製造することはできない。
【0008】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、小さなアンテナで広い指向性が得られると共に通信距離を低下させることなく情報の読み取りができ、かつ、安価で小型・薄型構造の無線用ICタグとその無線用ICタグの製造方法を提供することを目的とする。さらに、収納ケースの形状に合わせたアンテナ形状にすることができる無線用ICタグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の無線用ICタグは、前記の目的を達成するために創案されたものであり、情報を記録したICチップと、そのICチップに記録されている情報を無線で送信するアンテナとを備えた無線用ICタグであって、前記アンテナは、ICチップが搭載された給電部分が電流の流れる方向に沿って細長く延在され、給電部分から電流の流れる両方向に存在する放射部分が、給電部分の長さ方向を軸にして、給電部分より幅広く形成されている。例えば、給電部分とその給電部分の両側に存在する放射部分とによってH型形状のアンテナを構成している。あるいは、給電部分の両側に存在する放射部分をそれぞれ半円形に形成し、給電部分とその両側の放射部分とによって円形形状のアンテナを構成してもよい。また、給電部分と放射部分との間には絶縁フィルムを介在して、給電部分と放射部分とを、オーミックコンタクトではなく、静電容量結合によって電気的に接続してアンテナを構成している。
【0010】
また、本発明の無線用ICタグは、ICチップの搭載された給電部分の位置を、放射部分が上下方向及び左右方向において対称となる位置に配置することによって最大アンテナ効率を得ることができる。しかし、無線用ICタグを収納するケースの形状に制約がある場合は、給電部分の位置を、放射部分が上下方向及び左右方向の少なくとも一方において非対称となる位置に配置することもできる。さらに、ケースの形状に制約がある場合は、放射部分の任意の位置に任意の形状の開口部を1個または複数個形成することもできる。あるいは、放射部分における外周の任意の位置に任意の形状の切欠きを1個または複数個形成することもできる。このような変形アンテナにすることによってアンテナ効率は最大効率よりやや低下するが、ダイポールアンテナのアンテナ効率よりは効率がよいので、非取付物体への取付の利便性を優先した場合には、このような変形アンテナを適用することもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の無線用ICタグによれば、ICチップの搭載されたアンテナ中央部の給電部分を細長いくびれ形状にして両側の放射部分を幅広形状にしたアンテナ、例えば、H型形状のアンテナにすることにより、ICチップを取り巻くアンテナ周辺に効率よく電磁エネルギーを集中させることができる。これによって、アンテナの長さを短くしてもICチップの通信距離を長くすることができるので、結果的に、通信性能を低下させることなく無線用ICタグを小型化することができる。また、本発明の無線用ICタグによれば、ICチップが搭載されたアンテナのくびれ形状の給電部分をアンテナ中央部より任意の位置へ移動したり、H型アンテナやO型アンテナの形状を上下左右で非対称にしたり、あるいはアンテナ放射面(放射部分)に開口部や切欠きを設けたりすることによって、無線用ICタグのケースへの実装方法に自由度を持たせることができる。その結果、それぞれの取付対象物に最適な形状のケースに対して無線用ICタグを容易に収納することができるので、無線用ICタグの組立工程が簡素化されると共に、無線用ICタグの使い勝手が一段と向上する。
また、このような無線用ICタグを簡単に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態(以下「実施形態」という)に係る無線用ICタグについて好適な例をあげて説明する。本発明に係る無線用ICタグは、ICチップを搭載した給電部分となる中央部の幅を細くし、かつ放射部分となる周辺部分において対称的に幅を広くしたアンテナ形状、例えば、H型のアンテナ形状にすることにより、ICチップの周辺に効率的にエネルギーを集中させてアンテナ効率の向上を図っている。これによって、アンテナの長さを短くしても通信距離を低下させることがないので、結果的に、無線用ICタグの小型化を図ることができる。
【0013】
≪第1実施形態≫
図1は、本発明に係る無線用ICタグにおける第1実施形態のH型アンテナを示す平面図である。図1に示すように、無線用ICタグにおけるH型アンテナ1は、長さL方向の中央部でアンテナ幅Dを細くして長さL方向の両側部分(周辺部分)でアンテナ幅Dを広くした、いわゆるH型形状として細い中央部にICチップ2を搭載した構成となっている。H型アンテナ1は、ストリップアンテナとして機能し、静電破壊防止対策及びインピーダンスマッチングを行うため、ICチップ2が搭載された中央部に連続したかぎ状のスリット5が形成され、ICチップ2がスリットを跨いで、それぞれの端子がスリット5の両側に接続されている。したがって、前記の中央部がアンテナ電流を流す給電部分となり、両側部分(周辺部分)がアンテナ電波を放射する放射部分となる。
【0014】
このようにしてH型アンテナ1のアンテナ幅Dを長さL方向の両側で広げた形状にすることにより、ICチップ2がH型アンテナ1と接続するアンテナの中央部(つまり、くびれた部分)で最大電流が得られ、ICチップ2を取り囲んだアンテナ周辺部分に電磁エネルギーが集中するので、H型アンテナ1のアンテナ幅Dを所定の値にすれば長さLを短くしてもアンテナ効率が上がって通信距離が向上する。すなわち、従来のように、接地電極とパッチ電極で構成されたマイクロストリップアンテナでは、パッチ電極をH型形状にしても、パッチ電極上にICチップを搭載することができないため、結局、磁界の集中でインダクタンスを増大させ、共振周波数を下げる効果は得られるものの、通信距離の向上に寄与することはなかった。これに対して、本実施形態では、H型アンテナ1は接地電極が不要なストリップアンテナとして機能するので、電磁エネルギーの最も集中するアンテナの中央部にICチップ2を搭載でき、その結果、アンテナ効率が向上し通信距離を向上させることができる。
【0015】
図2は、図1に示すH型アンテナにおけるアンテナ幅と通信距離との関係を示すアンテナ特性図である。なお、図2において、横軸はアンテナ幅D(mm)を示し、縦軸は通信距離S(mm)を示している。すなわち、図2は、図1に示すH型アンテナ1において、長さLを20mm、長さ方向のくびれ長さL1を2mm、幅方向のくびれ幅D1を1.5mmにそれぞれ固定して、アンテナ幅Dを変化させる実験を行ったときに得られたアンテナ幅Dと通信距離Sの関係を示す実験データである。
【0016】
図2に示すように、アンテナ長Lが20mm一定の場合においてアンテナ幅Dを変化させると、アンテナ幅Dが40mm以下のときに通信可能となり、アンテナ幅Dが24mmのときに通信距離Sが119mmで最大通信距離となっている。すなわち、図1において、H型アンテナ1の中央部のくびれ部分にICチップ2を搭載し、アンテナ電流がH型アンテナ1のくびれ部分から長さLの方向に沿って両側の幅広部分へ流れるとき、くびれ部分を最大電流として両側の幅広部分へ電流が分散する。このとき、H型アンテナ1の中央のくびれ部分(つまり、ICチップ2が搭載されている部分)を中心として、両側の幅広部分の電磁エネルギーが集中するので、アンテナ効率が向上する。
【0017】
このような電磁エネルギーの集中作用によって、H型アンテナ1の長さLが20mm、アンテナ幅Dが20mm程度の小型のH型アンテナでもアンテナ効率が向上して通信距離を向上させることができる。なお、長さLが20mm、アンテナ幅Dが20mm程度のくびれ部分のない正方形のアンテナでは、電磁エネルギーを集中させることができないので、アンテナ効率が向上しないために通信距離を向上させることは困難である。また、中央部が細くなったU字型(つまり、図1に示すH型のくびれ部分を含めた上部のみの形状)のアンテナの場合は、幅広部分に電磁エネルギーが分散してしまうので、くびれ部分(つまり、ICチップが搭載されている部分)を中心として効果的に電磁エネルギーを集中させることは困難である。したがって、H型アンテナのようにアンテナ効率を向上させることはできないので、多少の通信距離向上の効果はあるものの、充分に通信距離を向上させることはできない。
【0018】
図3は、図1に示す第1実施形態のH型アンテナの製造工程の一例を示す図である。
ここでは、工程1である「金属導体によって絶縁性基板の表面にアンテナを形成するときに、中央部を細長くパターニングし、かつ中央部の長さ方向の両方向に存在する周辺部分をこの中央部の長さ方向を軸にして幅広になるようにパターニングする工程」と、工程2である「中央部にICチップを搭載し、その中央部に形成されたスリットを跨いで前記ICチップのそれぞれの端子を前記金属導体に接続する工程」と、工程3である「中央部と周辺部分を形成する金属導体、及びICチップを絶縁カバーでコーティングする工程」とを含んだ無線用ICタグの製造方法を説明する。
なお、前記工程1である「金属導体によって絶縁性基板の表面にアンテナを形成するときに、中央部を細長くパターニングし、かつ中央部の長さ方向の両方向に存在する周辺部分をこの中央部の長さ方向を軸にして幅広になるようにパターニングする工程」では、周辺部分を中央部の長さ方向を軸にして対称的にパターニングしてもよい。
【0019】
まず、図3(b)に示すように、アンテナ基材1aの表面に銅や銀などの金属導体をH型にパターニングする。例えば、銅などの金属ペーストをH型にパターン印刷して焼き付けるか、金属パターン層をH型にメッキ形成するか、あるいは、薄い金属膜をエッチングによってH型にパターニングする。このとき、図3(a)に示すようにH型アンテナ1の中央部のくびれ部分に連続するかぎ形のスリット5を設ける。なお、前記した通りこのスリット5は、ICチップ2の静電破壊防止対策およびインピーダンスマッチングのために設けられたものである。さらに、H型アンテナ1の長さ方向に対してスリット5を跨いでICチップ2を搭載し、ICチップ2のそれぞれの電極をスリット5の両側の金属部分に接続する(ICチップ2はスリット5を跨いで接続される)。なお、図3(b)は、図3(a)のA−A断面図である。
【0020】
次に、図3(b)に示すように、アンテナ基材1a側に粘着シート3を配置し、H型アンテナ1の表面に防水性とともに絶縁性を備えるカバーシール4をコーティングする。これによって、図3(c)に示すような防水性のある無線用ICタグ10が形成される。すなわち、長さ方向が22mm、幅方向が22mm、厚さが1mm程度の薄型で正方形の小型な無線用ICタグ10が形成される。
【0021】
次に、別形態のH型アンテナの製造工程を説明する。図4は、別形態のH型アンテナの製造工程の例を示す図である。ここでは、中央部(くびれ部分)の両側に存在する周辺部分を補助アンテナとして形成し、補助アンテナと中央部とが静電容量結合で接続されるようになっている。
その製造工程は、工程11である「金属導体によってアンテナ6aをアンテナ基材6bの表面にパターニングする工程」と、工程12である「アンテナ6aの中央部にICチップ2を搭載し、ICチップ2のそれぞれの端子をアンテナ6aに接続(スリットを跨いでアンテナに接続)する工程」と、工程13である「アンテナ6aの表面に絶縁フィルム7をコーティングする工程」と、工程14である「アンテナ6a上の前記絶縁フィルム7を含む広い範囲に亘って、ICチップ2を挟んで第1補助アンテナ8a及び第2補助アンテナ8bを形成する工程」と、工程15である「第1補助アンテナ8a、第2補助アンテナ8b、及びICチップ2を含む表面全体を絶縁カバーでコーティングする工程」とを含んでいる。
【0022】
まず、図4(b)に示すように、アンテナ基材6bの表面に銅や銀などの金属導体によって長さ方向に細長のアンテナ6aをパターニングする。アンテナ6aのパターニングは、銅などの金属ペーストをパターン印刷して焼き付けるか、金属パターン層をメッキ形成するか、あるいは、薄い金属膜をエッチングするなどの方法によって行う。このとき、図4(a)に示すようにアンテナ6aの中央部のくびれ部分に連続するかぎ形のスリット5を設ける。さらに、アンテナ6aの長さ方向に対してスリット5を跨いでICチップ2を搭載し、ICチップ2のそれぞれの電極をアンテナ6aに接続する(ICチップ2はスリット5を跨いでアンテナに接続される)。なお、図4(b)は図4(a)のB−B断面図である。
【0023】
さらに、図4(b)に示すように、アンテナ6aの表面に絶縁フィルム7をコーティングする。これによって、絶縁フィルム7を含めてアンテナ基材6b、アンテナ6aおよびICチップ2を一体化させたインレット6が得られる。
そして、インレット6のアンテナ基材6b側に粘着シート3を配置し、アンテナ6aの上の絶縁フィルム7を含む広い範囲に亘って、ICチップ2を挟んで第1補助アンテナ8a及び第2補助アンテナ8bをパターン印刷、メッキ処理、エッチングなどによって形成する。これによって、図4(a)に示すようなH型のアンテナを形成することができる。
【0024】
このようなH型のアンテナが形成された後に、図4(b)に示すように、インレット6、第1補助アンテナ8a、第2補助アンテナ8bを含む粘着シート3の表面全体に絶縁性のカバーシール4をコーティングする。これによって、図4(c)に示すような無線用ICタグ11が形成される。すなわち、図3の場合と同様に、長さ方向が22mm、幅方向が22mm、厚さが1mm程度の薄型で正方形の小型な無線用ICタグ11が形成される。
なお、ここでは、アンテナ基材6bはアンテナ6aを補強するためのものであり、必要に応じてアンテナ基材6bを省略し、アンテナ6aを直接に粘着シート3に形成することも可能である。
【0025】
図4(b)に示す工程14において、インレット6のアンテナ6aの表面に絶縁フィルム7を介して第1補助アンテナ8a及び第2補助アンテナ8bを形成するので、アンテナ6aと第1補助アンテナ8a及び第2補助アンテナ8bは、オーミックコンタクトではなく静電容量結合となっている。このように形成されたH型のアンテナには高周波電流が流れるので、アンテナ6aと第1補助アンテナ8a及び第2補助アンテナ8bは静電容量結合であっても充分に電気的に接続される。
【0026】
なお、オーミックコンタクトとは、ダイオード(整流)特性のない、いわゆるオームの法則が成り立つ電流電圧特性をもつ結合である。静電容量結合とは、金属と金属との間に誘電体を介すことによってコンデンサを形成する結合である。
オーミックコンタクトの場合は、電流が流れるようにするためにアンテナとICチップとの間の接合に異方導電性接着材を使用する必要がある。これに対して、実施形態では、アンテナ6aと第1補助アンテナ8a及び第2補助アンテナ8bとは静電容量結合で結合されるため、前記したように、絶縁フィルム7を誘電体(絶縁部材)として利用し、静電容量結合のためのコンデンサを形成することができる。これにより、アンテナ6aと第1補助アンテナ8a、第2補助アンテナ8bとの間には、他の工程で使用されるレジスト材料、粘着材料、接着材料などの材料を活用し、これを誘電体としてコンデンサを形成することができる。
この結果、高価な異方導電性接着材料を必要とせず、製造工程の簡略化と材料コストの低減が図られ、製品コストの低減につながる。
なお、図4(a)ではアンテナ6a用の切り欠きは第1補助アンテナ8aに設けてあるが、第2補助アンテナ8bに設けてもよいし、切り欠きが両方の第1補助アンテナ8a、第2補助アンテナ8bにあってもよい。切り欠きが第1補助アンテナ8aと第2補助アンテナ8bの両方にある場合は、無線用ICタグの製造時にアンテナ6aの向きを気にしなくてもよい。
【0027】
≪第2実施形態≫
図5は、本発明に係る無線用ICタグにおける第2実施形態のO型(亜鈴型)アンテナを示す平面図である。図5に示すように、円形の形状をしたO型アンテナ9は、半径Rの2つの半円金属箔の中央部を幅D2の細長い金属箔で接続された構成となっている。そして、細長い金属箔の部分にICチップ2を搭載して無線用ICタグを構成している。このような形状のO型アンテナ9のICチップ2から図の矢印の方向へアンテナ電流が流れると、中央部(ICチップ2の搭載部分)で最大電流が流れて両側の半円部分に流れて行く。これによって、両側の半円部分の電磁エネルギーがICチップ2を取り囲んで集中するので、半径Rの小さいO型アンテナであってもアンテナ効率が上がって通信距離が向上する。このようなO型アンテナ9を有する無線用ICタグによって、例えば、ボルトのキャップなどに無線用ICタグを実装しても通信距離を向上させることができる。
【0028】
≪第3実施形態≫
本実施形態では、前記したH型アンテナまたはO型アンテナの形状を変形させた無線用ICタグの幾つかのバリエーションについて説明する。すなわち、第3実施形態の無線用ICタグでは、アンテナの長手方向中央部の幅を狭くしてアンテナ形状をH型またはO型とし、アンテナ中央部にICチップを搭載した無線用ICタグに対して、ICチップの搭載位置(つまり、くびれ部分)をアンテナ中央部から所望の位置へ移動させた変形形状のH型アンテナまたはO型アンテナとする。あるいは、H型アンテナまたはO型アンテナの左右または上下の形状を非対称にした変形形状のH型アンテナまたはO型アンテナとする。または、アンテナ放射面の一部に開口部または切欠きを設けた変形形状のH型アンテナまたはO型アンテナにする。
【0029】
すなわち、前記したように、H型アンテナまたはO型アンテナの中央部のくびれ部分にICチップを配置して給電点とすれば(つまり、給電部分とすれば)、くびれ部分に電磁エネルギーの集中作用が働いて最大アンテナ効率が得られる。しかし、無線用ICタグを取り付けるための被取付物体の形状などによって、無線用ICタグを収納する筐体(ケース)の形状が制約されることがある。例えば、無線用ICタグを収納するケースの中央部付近にケースを被取付物体に取り付けるための開口部や支柱を設けたり、ケースを被取付物体に取り付けるための位置決め用の切欠きをケース外周に設けたりする場合は、ケースに収納されるH型アンテナまたはO型アンテナの形状をそれに合わせて変形しなければならない。
【0030】
つまり、ICチップの搭載位置をH型アンテナやO型アンテナの中心部に限定せず、ICチップの搭載位置をH型アンテナやO型アンテナの上下方向または左右方向に対して非対称な位置にした変形形状の無線用ICタグの場合は、アンテナ効率はやや低下するが、従来の矩形型アンテナ(ダイポールアンテナ)に比べれば、変形形状の無線用ICタグの方が高いアンテナ効率が得られる。そのため、充分な通信距離が確保できれば、被取付物体への取り付けの利便性を優先して、無線用ICタグにおけるH型アンテナまたはO型アンテナを変形形状にすることが望ましい。そこで、第3実施形態では変形形状のH型アンテナまたはO型アンテナの幾つかのバリエーションについて説明する。
【0031】
<H型アンテナの非対称形状バリエーション>
図6は、本発明の第3実施形態に係るH型アンテナの非対称形状バリエーションを示す図である。図6(a)に示すような、くびれ部1aが中央部にあるH型アンテナ1の基本型であるアンテナ対称型の無線用ICタグに対して、同図(b)に示す変形1のように、H型アンテナ1のくびれ部1aを下方(または上方)にずらして、そのくびれ部1aにスリット5を形成すると共にスリット5を跨いでICチップ2を搭載した給電点上下オフセット型の無線用ICタグにすることもできる。
【0032】
また、同図(c)に示す変形2のように、H型アンテナ1のくびれ部1aを上下方向の中央部に固定したままH型アンテナ1の左右アンテナの放射面積を非対称にした給電点左右オフセット型の無線用ICタグにすることもできる。さらに、同図(d)に示す変形3のように、H型アンテナ1のくびれ部1aを下方(または上方)にずらすと共にH型アンテナ1の左右アンテナの放射面積を非対称にした給電点上下−左右オフセット型の無線用ICタグにすることもできる。図6(b)、(c)、(d)のような非対称形状のH型アンテナにした場合は、図6(a)のような対称形状のH型アンテナに比べてアンテナ効率はやや低下するが、必要な通信距離が確保できる範囲でアンテナ形状を変形して被取付物体への取り付けの利便性を図ることができる。
【0033】
<O型アンテナの非対称形状バリエーション>
図7は、本発明の第3実施形態に係るO型アンテナの非対称形状バリエーションを示す図である。図7(a)に示すような、くびれ部9aが中央にあるO型アンテナ9の基本型であるアンテナ対称型の無線用ICタグに対して、同図(b)に示す変形1のように、O型アンテナ9のくびれ部9aを下方(または上方)にずらして、そのくびれ部9aにスリット5を形成すると共にスリット5を跨いでICチップ2を搭載した給電点上下オフセット型の無線用ICタグにすることもできる。
【0034】
また、同図(c)に示す変形2のように、O型アンテナ9のくびれ部9aを中央部に固定したままO型アンテナ9の左右アンテナの放射面積を非対称にした給電点左右オフセット型の無線用ICタグにすることもできる。さらに、同図(d)に示す変形3のように、O型アンテナ9のくびれ部9aを下方(または上方)にずらすと共にO型アンテナ9の左右アンテナの放射面積を非対称にした給電点上下−左右オフセット型の無線用ICタグにすることもできる。図7(b)、(c)、(d)のような非対称形状のO型アンテナにした場合は、図7(a)のような対称形状のO型アンテナに比べてアンテナ効率はやや低下するが、必要な通信距離が確保できる範囲でアンテナ形状を変形して被取付物体への取り付けの利便性を図ることができる。
【0035】
<非対称形状のO型アンテナの実施例>
図8は、本発明の第3実施形態に適用される非対称形状のO型アンテナに係る一実施例を示す外形図である。図8に示すように、O型アンテナ9の外径は24mmであり、O型アンテナ9の中央部には前記したケースの支柱を立てるために直径6mmの空白部分が設けられている。したがって、O型アンテナ9の中心から6mmずれた位置に幅が1.5mmで長さが2.0mmのくびれ部9aが設けられて左右のアンテナ放射部を接続している。また、くびれ部9aの中央付近には幅が0.15mmのスリットがかぎ状に形成されている。なお、図8に示す形状のO型アンテナで100mmの通信距離は得られることが実験によって確認された。
【0036】
<H型アンテナにおける開口バリエーション>
図9は、本発明の第3実施形態に係るH型アンテナの開口バリエーションを示す図である。図9(a)に示すような、くびれ部1aが中央にあるH型アンテナ1の基本型であるアンテナ対称型の無線用ICタグに対して、同図(b)に示す変形1のように、H型アンテナ1のくびれ部1aを下方(または上方)にずらしてそのくびれ部1aにスリット5を形成してICチップ2を搭載すると共に、H型アンテナ1の中央部付近に開口部22を形成した給電点上下オフセット型の無線用ICタグにすることもできる。
【0037】
また、同図(c)に示す変形2のように、H型アンテナ1のくびれ部1aを中央部に固定したままH型アンテナ1の左右アンテナの放射面積を非対称にすると共に、H型アンテナ1で放射面積の広いアンテナ側(図の左アンテナ側)に開口部22を形成した給電点左右オフセット型の無線用ICタグにすることもできる。さらに、同図(d)に示す変形3のように、H型アンテナ1のくびれ部1aを下方(または上方)にずらすと共にH型アンテナ1の左右アンテナの放射面積を非対称にし、さらに、H型アンテナ1で放射面積の広いアンテナ側(図の左アンテナ側)に開口部22を形成した給電点上下−左右オフセット型の無線用ICタグにすることもできる。
【0038】
すなわち、H型アンテナ1に開口部22が存在する場合も、ICチップ2の搭載位置は図6のH型アンテナの非対称形状バリエーションで示した搭載位置に従う。なお、開口部22の形状は図9に示すような円形に限ることはなく任意の多角形にしてもよい。また、開口部22の位置によって給電点位置(つまり、くびれ部1aの位置)を適宜に移動させることが望ましい。さらに、開口部22の配置位置は任意に変更することができる。また、アンテナに形成される開口部は同形状または異形状のものが複数個存在していても構わない。
【0039】
図9(b)、(c)、(d)のような非対称形状であって、かつ開口部のあるH型アンテナの場合は、図9(a)のような対称形状のH型アンテナに比べてアンテナ効率はやや低下するが、必要な通信距離が確保できる範囲で開口部を設けたりアンテナ形状を変形したりすることにより、被取付物体への取り付けの利便性を図ることができる。
【0040】
<O型アンテナにおける開口バリエーション>
図10は、本発明の第3実施形態に係るO型アンテナの開口バリエーションを示す図である。図10(a)に示すような、くびれ部9aが中央にあるO型アンテナ1の基本型であるアンテナ対称型の無線用ICタグに対して、同図(b)に示す変形1のように、O型アンテナ9のくびれ部9aを下方(または上方)にずらしてそのくびれ部9aにスリット5を形成してICチップ2を搭載すると共に、O型アンテナ9の中央部付近に開口部22を形成した給電点上下オフセット型の無線用ICタグにすることもできる。
【0041】
また、同図(c)に示す変形2のように、O型アンテナ9のくびれ部9aを中央部に固定したままO型アンテナ9の左右の放射面積を非対称にすると共に、O型アンテナ9で放射面積の広いアンテナ側(図の左アンテナ側)に開口部22を形成した給電点左右オフセット型の無線用ICタグにすることもできる。さらに、同図(d)に示す変形3のように、O型アンテナ9のくびれ部9aを下方(または上方)にずらすと共にO型アンテナ9の左右アンテナの放射面積を非対称にし、さらに、O型アンテナ9で放射面積の広いアンテナ側(図の左アンテナ側)に開口部22を形成した給電点上下−左右オフセット型の無線用ICタグにすることもできる。
【0042】
すなわち、O型アンテナ9に開口部22が存在する場合も、ICチップ2の搭載位置は図7のO型アンテナの非対称形状バリエーションで示した搭載位置に従う。なお、開口部22の形状は図10に示すような円形に限ることはなく任意の多角形にしてもよい。また、開口部22の位置によって給電点位置(つまり、くびれ部9aの位置)を適宜に移動させることが望ましい。さらに、開口部22の配置位置は任意に変更することができる。また、アンテナに形成される開口部は同形状または異形状のものが複数個存在していても構わない。
【0043】
図10(b)、(c)、(d)のような非対称形状であってかつ開口部のあるO型アンテナにした場合は、図10(a)のような対称形状のO型アンテナに比べてアンテナ効率はやや低下するが、必要な通信距離が確保できる範囲で開口部を設けたりアンテナ形状を変形したりすることにより、被取付物体への取り付けの利便性を図ることができる。
【0044】
<H型アンテナにおける外周切欠きバリエーション>
図11は、本発明の第3実施形態におけるH型アンテナの外周切欠きバリエーションを示す図である。図11(a)に示すような、くびれ部1aが中央にあるアンテナ対称型のH型アンテナ1の基本型において、左右のアンテナの外周に任意の形状の切欠きを形成することもできる。例えば、図11(a)のH型アンテナ1における左側アンテナの外周上部に半円形の切欠き23aを形成し、さらに、図の右側アンテナの外周下部に矩形の切欠き23cを形成することもできる。また、同図(b)に示す変形1のように、H型アンテナ1のくびれ部1aを下方にずらしてそのくびれ部分にスリット5を形成してICチップ2を搭載すると共に、H型アンテナ1の左右アンテナの外周中央部付近にそれぞれ半円形の切欠き23a、23bを形成した給電点上下オフセット型の無線用ICタグにすることもできる。
【0045】
さらに、同図(c)に示す変形2のように、H型アンテナ1のくびれ部1aを中央部に固定したままH型アンテナ1の左右アンテナの面積を非対称にすると共に、H型アンテナ1の左右アンテナの外周下部付近にそれぞれ半円形の切欠き23a、23bを形成した給電点左右オフセット型の無線用ICタグにすることもできる。また、同図(d)に示す変形3のように、H型アンテナ1のくびれ部1aを下方にずらすと共にH型アンテナ1の左右アンテナの放射面積を非対称にし、さらに、H型アンテナ1の左右アンテナの外周中央部付近に切欠き23a、23bを形成した給電点上下−左右オフセット型の無線用ICタグにすることもできる。
【0046】
すなわち、H型アンテナ1の外周辺上に切欠きが存在する場合もICチップ2の搭載位置は図8のH型アンテナの非対称形状バリエーションに従う。なお、切欠きの形状は円形に限ることはなく任意の多角形にしてもよい。また、切欠きの位置によって給電点位置(つまり、くびれ部1aの位置)を適宜に移動させることが望ましい。さらに、切欠きの配置位置は任意に変更することができる。また、切欠きは複数個存在していても構わないし、切欠きと開口部が混在していても構わない。さらに、H型アンテナ1における左右のアンテナで異形状の切欠きが存在してもよいし、左右のアンテナで異形状の切欠きが複数存在してもよい。なお、左右のアンテナにおける切欠きの位置は必ずしも対称である必要はない。また、左右のアンテナにおける切欠きの個数は任意である。
【0047】
<第3実施形態における変形アンテナのまとめ>
以上説明したように、H型アンテナまたはO型アンテナの変形アンテナを用いて無線用ICタグを実現する場合は、H型アンテナやO型アンテナでくびれ部を中央に配置した基本型に対してアンテナ効率がやや低下するが、無線用ICタグをケースへ収納するときの利便性が向上する。例えば、無線用ICタグの中央部付近に筐体取付け等のために必要となる開口部を設けたり、無線用ICタグの取付位置決めのためにアンテナ外周に切欠きを設けることによって、被取付物体への無線用ICタグの取付作業性が一段と向上する。
【0048】
このような実装上の利便性を図るための変形アンテナを実現する場合は、アンテナの放射部分に円形や多角形の開口部を形成し、アンテナ給電点を中央部より端の方へ移動した非対称なH型アンテナやO型アンテナにすればよい。または、アンテナの放射部分の任意の位置に円形または多角形の開口部を形成し、アンテナ給電点を中央部より端の方へ移動した非対称なH型アンテナやO型アンテナにしてもよい。あるいは、アンテナの外周に切欠きを形成すると共に、必要に応じてアンテナの放射部分の任意の位置に円形または多角形の開口部を形成し、アンテナ給電点を中央部より端の方へ移動した非対称なH型アンテナやO型アンテナにしてもよい。なお、アンテナ外周の切欠きだけを必要としてアンテナ内部の開口部を必要としない場合は、給電点を中央部に配置してアンテナ効率をできるだけ高くすることが望ましい。
【0049】
前記幾つかのバリエーションを上げてH型アンテナまたはO型アンテナの形状について説明したが、アンテナの形状はそれらに限定されるものではなく、さまざまな形状に変形することができる。例えば図1に示すH型アンテナ1に対して四つの角部を切り取った四角形の形状としてもよい。また、H型アンテナとO型アンテナに共通するが、図6に示すくびれ部1aまたは図7に示すくびれ部9aが両側の部分に対して垂直である必要はなく、斜めにしてもよい。
なお、以上説明した本発明は、その技術思想の及ぶ範囲で種々の変更実施を行うことができる。例えば、無線用ICタグは、ROM(Read Only Memory)型のものでも、RAM(Random Access Memory)型のものでもよい。またどのような用途に適用されるものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態に係る無線用ICタグにおける第1実施形態のH型アンテナを示す平面図である。
【図2】図1に示すH型アンテナにおけるアンテナ幅と通信距離との関係を示すアンテナ特性図である。
【図3】図1に示す第1実施形態のH型アンテナの製造工程の一例を示す図である。
【図4】別形態のH型アンテナの製造工程を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る無線用ICタグにおける第2実施形態のO型アンテナを示す平面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係るH型アンテナの非対称形状バリエーションを示す図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係るO型アンテナの非対称形状バリエーションを示す図である。
【図8】本発明の第3実施形態に適用される非対称形状のO型アンテナに係る一実施例を示す外形図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係るH型アンテナの開口バリエーションを示す図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係るO型アンテナの開口バリエーションを示す図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係るH型アンテナの外周切欠きバリエーションを示す図である。
【図12】従来の無線用ICタグにおけるダイポールアンテナの構成図である。
【図13】図12に示す形状のダイポールアンテナのアンテナ長と通信距離の関係を示す特性図である。
【符号の説明】
【0051】
1 H型アンテナ
1a,9a くびれ部
1a アンテナ基材
2 ICチップ
3 粘着シート(絶縁性基材)
4 カバーシール(絶縁カバー)
5 スリット
6 インレット
6a アンテナ
6b アンテナ基材
7 絶縁フィルム
8a 第1補助アンテナ
8b 第2補助アンテナ
9 O型アンテナ
10,11 無線用ICタグ
21 ダイポールアンテナ
22 開口部
23a,23b,23c 切欠き
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップに記録されている情報を無線で送信する無線用ICタグ等に関し、特に、ICチップから無線電波を送信するアンテナに改良を加えた無線用ICタグ及び無線用ICタグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物品の情報管理や物流管理などに無線用ICタグが広く利用されている。さらには、動物などを特定したり管理したりするときにもこれらの無線用ICタグが利用され始めている。このような無線用ICタグは、情報を記録した小さなICチップとICチップの情報を無線で送信する小さなアンテナとによって構成されている。すなわち、このような無線用ICタグは、例えば、細長いアンテナの中央部付近に幅0.4mm×奥行き0.4mm×高さ0.1mm程度の小さなICチップが取り付けられていて、物品や動物などに貼付されて利用されている。したがって、読取装置を無線用ICタグにかざせば、非接触でICチップに記録されている情報(つまり、個々の物品や動物の属性などに関する情報)を読み取ることができる。このような無線用ICタグを物品や動物などに貼付するためには、無線用ICタグはできるだけ小さいことが望ましい。そのためには、無線用ICタグのアンテナを小さくする必要がある。
【0003】
図12は、従来の無線用ICタグにおけるダイポールアンテナの構成図である。図12(a)に示すように、ダイポールアンテナ21の中央部にICチップ22が取り付けられていて、ダイポールアンテナ21は最大アンテナ効率が得られるようにダイポールアンテナ21の長さLがλ/2になっている。但し、λは使用周波数における波長を表わしている。したがって、無線用ICタグを小さくするためには、例えば図12(b)に示すようにダイポールアンテナ21の一部を切断して使用することが考えられた。
【0004】
また、アンテナ部分の中央部を細くして電流の流れる方向の両端部分の幅を広くした、いわゆるH型形状のアンテナにして小型化を図ったマイクロストリップアンテナの技術も知られている。この技術は、H型アンテナの細いくびれ部分に磁界が集中してインダクタンスを増大させることにより、共振周波数を下げてアンテナの小型化を図ったものである(例えば、特許文献1参照)。さらには、H型形状のアンテナを用いた非接触ICタグの技術も知られている。この技術は、H型アンテナの接続部分をオーミックコンタクトにして非接触ICタグの小型化を実現したものである(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−53535号公報(段落番号0015〜0023、図1及び図2参照)
【特許文献2】特開2003−243918号公報(段落番号0012〜0027、図1〜図4参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ダイポールアンテナのアンテナ長Lはλ/2のときに最大アンテナ効率が得られるので、無線用ICタグを小型化するために図12(b)のようにアンテナを長さ方向で切断してしまうと、アンテナ効率が低下して通信距離が短くなってしまい、結果的に通信が困難となってICチップの情報を読み取れなくなってしまうことがある。図13は、図12に示す形状のダイポールアンテナのアンテナ長と通信距離の関係を示す特性図である。図13に示すように、アンテナ長L(mm)を短くすると通信距離S(mm)は急激に減少して行き、例えばアンテナ幅Dを1.5mmに固定した場合はアンテナ長Lが25mm以下になると通信不能になってしまう。
【0006】
また、前記の特許文献1に示すH型アンテナは、誘電体の表面にH型に形成されたパッチ電極と裏面に形成された接地電極とからなるいわゆるマイクロストリップアンテナであって、携帯電話機用の小型アンテナとして利用されるものであり、接地電極を持たないストリップアンテナにはそのまま応用することはできない。さらに、前記の特許文献2に示すアンテナは、H型形状のアンテナを用いて小型化を図った非接触ICタグを実現しているが、基板上に左右対称に形成された2個の幅広なアンテナパターンとこれらのアンテナパターンを橋渡しするICタグラベルとによってH型形状のアンテナを構成するとき、アンテナパターンとICタグラベルとがオーミックコンタクトになっている。
【0007】
すなわち、非接触ICタグの製造工程において、アンテナパターンを形成した基板に対してフィルムコーティングを施さない状態で、アンテナパターン上にICタグラベルを直接搭載してオーミックコンタクトしている。したがって、特許文献2の技術では、H型アンテナの製造工程において、2個の幅広なアンテナパターンと橋渡しするためのICチップ搭載アンテナパターンとの間にフィルムをコーティングすることができない。言い換えれば、従来から行われている製造工程をそのまま利用した静電容量結合によってH型アンテナを構成して非接触ICタグを製造することはできない。
【0008】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、小さなアンテナで広い指向性が得られると共に通信距離を低下させることなく情報の読み取りができ、かつ、安価で小型・薄型構造の無線用ICタグとその無線用ICタグの製造方法を提供することを目的とする。さらに、収納ケースの形状に合わせたアンテナ形状にすることができる無線用ICタグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の無線用ICタグは、前記の目的を達成するために創案されたものであり、情報を記録したICチップと、そのICチップに記録されている情報を無線で送信するアンテナとを備えた無線用ICタグであって、前記アンテナは、ICチップが搭載された給電部分が電流の流れる方向に沿って細長く延在され、給電部分から電流の流れる両方向に存在する放射部分が、給電部分の長さ方向を軸にして、給電部分より幅広く形成されている。例えば、給電部分とその給電部分の両側に存在する放射部分とによってH型形状のアンテナを構成している。あるいは、給電部分の両側に存在する放射部分をそれぞれ半円形に形成し、給電部分とその両側の放射部分とによって円形形状のアンテナを構成してもよい。また、給電部分と放射部分との間には絶縁フィルムを介在して、給電部分と放射部分とを、オーミックコンタクトではなく、静電容量結合によって電気的に接続してアンテナを構成している。
【0010】
また、本発明の無線用ICタグは、ICチップの搭載された給電部分の位置を、放射部分が上下方向及び左右方向において対称となる位置に配置することによって最大アンテナ効率を得ることができる。しかし、無線用ICタグを収納するケースの形状に制約がある場合は、給電部分の位置を、放射部分が上下方向及び左右方向の少なくとも一方において非対称となる位置に配置することもできる。さらに、ケースの形状に制約がある場合は、放射部分の任意の位置に任意の形状の開口部を1個または複数個形成することもできる。あるいは、放射部分における外周の任意の位置に任意の形状の切欠きを1個または複数個形成することもできる。このような変形アンテナにすることによってアンテナ効率は最大効率よりやや低下するが、ダイポールアンテナのアンテナ効率よりは効率がよいので、非取付物体への取付の利便性を優先した場合には、このような変形アンテナを適用することもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の無線用ICタグによれば、ICチップの搭載されたアンテナ中央部の給電部分を細長いくびれ形状にして両側の放射部分を幅広形状にしたアンテナ、例えば、H型形状のアンテナにすることにより、ICチップを取り巻くアンテナ周辺に効率よく電磁エネルギーを集中させることができる。これによって、アンテナの長さを短くしてもICチップの通信距離を長くすることができるので、結果的に、通信性能を低下させることなく無線用ICタグを小型化することができる。また、本発明の無線用ICタグによれば、ICチップが搭載されたアンテナのくびれ形状の給電部分をアンテナ中央部より任意の位置へ移動したり、H型アンテナやO型アンテナの形状を上下左右で非対称にしたり、あるいはアンテナ放射面(放射部分)に開口部や切欠きを設けたりすることによって、無線用ICタグのケースへの実装方法に自由度を持たせることができる。その結果、それぞれの取付対象物に最適な形状のケースに対して無線用ICタグを容易に収納することができるので、無線用ICタグの組立工程が簡素化されると共に、無線用ICタグの使い勝手が一段と向上する。
また、このような無線用ICタグを簡単に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態(以下「実施形態」という)に係る無線用ICタグについて好適な例をあげて説明する。本発明に係る無線用ICタグは、ICチップを搭載した給電部分となる中央部の幅を細くし、かつ放射部分となる周辺部分において対称的に幅を広くしたアンテナ形状、例えば、H型のアンテナ形状にすることにより、ICチップの周辺に効率的にエネルギーを集中させてアンテナ効率の向上を図っている。これによって、アンテナの長さを短くしても通信距離を低下させることがないので、結果的に、無線用ICタグの小型化を図ることができる。
【0013】
≪第1実施形態≫
図1は、本発明に係る無線用ICタグにおける第1実施形態のH型アンテナを示す平面図である。図1に示すように、無線用ICタグにおけるH型アンテナ1は、長さL方向の中央部でアンテナ幅Dを細くして長さL方向の両側部分(周辺部分)でアンテナ幅Dを広くした、いわゆるH型形状として細い中央部にICチップ2を搭載した構成となっている。H型アンテナ1は、ストリップアンテナとして機能し、静電破壊防止対策及びインピーダンスマッチングを行うため、ICチップ2が搭載された中央部に連続したかぎ状のスリット5が形成され、ICチップ2がスリットを跨いで、それぞれの端子がスリット5の両側に接続されている。したがって、前記の中央部がアンテナ電流を流す給電部分となり、両側部分(周辺部分)がアンテナ電波を放射する放射部分となる。
【0014】
このようにしてH型アンテナ1のアンテナ幅Dを長さL方向の両側で広げた形状にすることにより、ICチップ2がH型アンテナ1と接続するアンテナの中央部(つまり、くびれた部分)で最大電流が得られ、ICチップ2を取り囲んだアンテナ周辺部分に電磁エネルギーが集中するので、H型アンテナ1のアンテナ幅Dを所定の値にすれば長さLを短くしてもアンテナ効率が上がって通信距離が向上する。すなわち、従来のように、接地電極とパッチ電極で構成されたマイクロストリップアンテナでは、パッチ電極をH型形状にしても、パッチ電極上にICチップを搭載することができないため、結局、磁界の集中でインダクタンスを増大させ、共振周波数を下げる効果は得られるものの、通信距離の向上に寄与することはなかった。これに対して、本実施形態では、H型アンテナ1は接地電極が不要なストリップアンテナとして機能するので、電磁エネルギーの最も集中するアンテナの中央部にICチップ2を搭載でき、その結果、アンテナ効率が向上し通信距離を向上させることができる。
【0015】
図2は、図1に示すH型アンテナにおけるアンテナ幅と通信距離との関係を示すアンテナ特性図である。なお、図2において、横軸はアンテナ幅D(mm)を示し、縦軸は通信距離S(mm)を示している。すなわち、図2は、図1に示すH型アンテナ1において、長さLを20mm、長さ方向のくびれ長さL1を2mm、幅方向のくびれ幅D1を1.5mmにそれぞれ固定して、アンテナ幅Dを変化させる実験を行ったときに得られたアンテナ幅Dと通信距離Sの関係を示す実験データである。
【0016】
図2に示すように、アンテナ長Lが20mm一定の場合においてアンテナ幅Dを変化させると、アンテナ幅Dが40mm以下のときに通信可能となり、アンテナ幅Dが24mmのときに通信距離Sが119mmで最大通信距離となっている。すなわち、図1において、H型アンテナ1の中央部のくびれ部分にICチップ2を搭載し、アンテナ電流がH型アンテナ1のくびれ部分から長さLの方向に沿って両側の幅広部分へ流れるとき、くびれ部分を最大電流として両側の幅広部分へ電流が分散する。このとき、H型アンテナ1の中央のくびれ部分(つまり、ICチップ2が搭載されている部分)を中心として、両側の幅広部分の電磁エネルギーが集中するので、アンテナ効率が向上する。
【0017】
このような電磁エネルギーの集中作用によって、H型アンテナ1の長さLが20mm、アンテナ幅Dが20mm程度の小型のH型アンテナでもアンテナ効率が向上して通信距離を向上させることができる。なお、長さLが20mm、アンテナ幅Dが20mm程度のくびれ部分のない正方形のアンテナでは、電磁エネルギーを集中させることができないので、アンテナ効率が向上しないために通信距離を向上させることは困難である。また、中央部が細くなったU字型(つまり、図1に示すH型のくびれ部分を含めた上部のみの形状)のアンテナの場合は、幅広部分に電磁エネルギーが分散してしまうので、くびれ部分(つまり、ICチップが搭載されている部分)を中心として効果的に電磁エネルギーを集中させることは困難である。したがって、H型アンテナのようにアンテナ効率を向上させることはできないので、多少の通信距離向上の効果はあるものの、充分に通信距離を向上させることはできない。
【0018】
図3は、図1に示す第1実施形態のH型アンテナの製造工程の一例を示す図である。
ここでは、工程1である「金属導体によって絶縁性基板の表面にアンテナを形成するときに、中央部を細長くパターニングし、かつ中央部の長さ方向の両方向に存在する周辺部分をこの中央部の長さ方向を軸にして幅広になるようにパターニングする工程」と、工程2である「中央部にICチップを搭載し、その中央部に形成されたスリットを跨いで前記ICチップのそれぞれの端子を前記金属導体に接続する工程」と、工程3である「中央部と周辺部分を形成する金属導体、及びICチップを絶縁カバーでコーティングする工程」とを含んだ無線用ICタグの製造方法を説明する。
なお、前記工程1である「金属導体によって絶縁性基板の表面にアンテナを形成するときに、中央部を細長くパターニングし、かつ中央部の長さ方向の両方向に存在する周辺部分をこの中央部の長さ方向を軸にして幅広になるようにパターニングする工程」では、周辺部分を中央部の長さ方向を軸にして対称的にパターニングしてもよい。
【0019】
まず、図3(b)に示すように、アンテナ基材1aの表面に銅や銀などの金属導体をH型にパターニングする。例えば、銅などの金属ペーストをH型にパターン印刷して焼き付けるか、金属パターン層をH型にメッキ形成するか、あるいは、薄い金属膜をエッチングによってH型にパターニングする。このとき、図3(a)に示すようにH型アンテナ1の中央部のくびれ部分に連続するかぎ形のスリット5を設ける。なお、前記した通りこのスリット5は、ICチップ2の静電破壊防止対策およびインピーダンスマッチングのために設けられたものである。さらに、H型アンテナ1の長さ方向に対してスリット5を跨いでICチップ2を搭載し、ICチップ2のそれぞれの電極をスリット5の両側の金属部分に接続する(ICチップ2はスリット5を跨いで接続される)。なお、図3(b)は、図3(a)のA−A断面図である。
【0020】
次に、図3(b)に示すように、アンテナ基材1a側に粘着シート3を配置し、H型アンテナ1の表面に防水性とともに絶縁性を備えるカバーシール4をコーティングする。これによって、図3(c)に示すような防水性のある無線用ICタグ10が形成される。すなわち、長さ方向が22mm、幅方向が22mm、厚さが1mm程度の薄型で正方形の小型な無線用ICタグ10が形成される。
【0021】
次に、別形態のH型アンテナの製造工程を説明する。図4は、別形態のH型アンテナの製造工程の例を示す図である。ここでは、中央部(くびれ部分)の両側に存在する周辺部分を補助アンテナとして形成し、補助アンテナと中央部とが静電容量結合で接続されるようになっている。
その製造工程は、工程11である「金属導体によってアンテナ6aをアンテナ基材6bの表面にパターニングする工程」と、工程12である「アンテナ6aの中央部にICチップ2を搭載し、ICチップ2のそれぞれの端子をアンテナ6aに接続(スリットを跨いでアンテナに接続)する工程」と、工程13である「アンテナ6aの表面に絶縁フィルム7をコーティングする工程」と、工程14である「アンテナ6a上の前記絶縁フィルム7を含む広い範囲に亘って、ICチップ2を挟んで第1補助アンテナ8a及び第2補助アンテナ8bを形成する工程」と、工程15である「第1補助アンテナ8a、第2補助アンテナ8b、及びICチップ2を含む表面全体を絶縁カバーでコーティングする工程」とを含んでいる。
【0022】
まず、図4(b)に示すように、アンテナ基材6bの表面に銅や銀などの金属導体によって長さ方向に細長のアンテナ6aをパターニングする。アンテナ6aのパターニングは、銅などの金属ペーストをパターン印刷して焼き付けるか、金属パターン層をメッキ形成するか、あるいは、薄い金属膜をエッチングするなどの方法によって行う。このとき、図4(a)に示すようにアンテナ6aの中央部のくびれ部分に連続するかぎ形のスリット5を設ける。さらに、アンテナ6aの長さ方向に対してスリット5を跨いでICチップ2を搭載し、ICチップ2のそれぞれの電極をアンテナ6aに接続する(ICチップ2はスリット5を跨いでアンテナに接続される)。なお、図4(b)は図4(a)のB−B断面図である。
【0023】
さらに、図4(b)に示すように、アンテナ6aの表面に絶縁フィルム7をコーティングする。これによって、絶縁フィルム7を含めてアンテナ基材6b、アンテナ6aおよびICチップ2を一体化させたインレット6が得られる。
そして、インレット6のアンテナ基材6b側に粘着シート3を配置し、アンテナ6aの上の絶縁フィルム7を含む広い範囲に亘って、ICチップ2を挟んで第1補助アンテナ8a及び第2補助アンテナ8bをパターン印刷、メッキ処理、エッチングなどによって形成する。これによって、図4(a)に示すようなH型のアンテナを形成することができる。
【0024】
このようなH型のアンテナが形成された後に、図4(b)に示すように、インレット6、第1補助アンテナ8a、第2補助アンテナ8bを含む粘着シート3の表面全体に絶縁性のカバーシール4をコーティングする。これによって、図4(c)に示すような無線用ICタグ11が形成される。すなわち、図3の場合と同様に、長さ方向が22mm、幅方向が22mm、厚さが1mm程度の薄型で正方形の小型な無線用ICタグ11が形成される。
なお、ここでは、アンテナ基材6bはアンテナ6aを補強するためのものであり、必要に応じてアンテナ基材6bを省略し、アンテナ6aを直接に粘着シート3に形成することも可能である。
【0025】
図4(b)に示す工程14において、インレット6のアンテナ6aの表面に絶縁フィルム7を介して第1補助アンテナ8a及び第2補助アンテナ8bを形成するので、アンテナ6aと第1補助アンテナ8a及び第2補助アンテナ8bは、オーミックコンタクトではなく静電容量結合となっている。このように形成されたH型のアンテナには高周波電流が流れるので、アンテナ6aと第1補助アンテナ8a及び第2補助アンテナ8bは静電容量結合であっても充分に電気的に接続される。
【0026】
なお、オーミックコンタクトとは、ダイオード(整流)特性のない、いわゆるオームの法則が成り立つ電流電圧特性をもつ結合である。静電容量結合とは、金属と金属との間に誘電体を介すことによってコンデンサを形成する結合である。
オーミックコンタクトの場合は、電流が流れるようにするためにアンテナとICチップとの間の接合に異方導電性接着材を使用する必要がある。これに対して、実施形態では、アンテナ6aと第1補助アンテナ8a及び第2補助アンテナ8bとは静電容量結合で結合されるため、前記したように、絶縁フィルム7を誘電体(絶縁部材)として利用し、静電容量結合のためのコンデンサを形成することができる。これにより、アンテナ6aと第1補助アンテナ8a、第2補助アンテナ8bとの間には、他の工程で使用されるレジスト材料、粘着材料、接着材料などの材料を活用し、これを誘電体としてコンデンサを形成することができる。
この結果、高価な異方導電性接着材料を必要とせず、製造工程の簡略化と材料コストの低減が図られ、製品コストの低減につながる。
なお、図4(a)ではアンテナ6a用の切り欠きは第1補助アンテナ8aに設けてあるが、第2補助アンテナ8bに設けてもよいし、切り欠きが両方の第1補助アンテナ8a、第2補助アンテナ8bにあってもよい。切り欠きが第1補助アンテナ8aと第2補助アンテナ8bの両方にある場合は、無線用ICタグの製造時にアンテナ6aの向きを気にしなくてもよい。
【0027】
≪第2実施形態≫
図5は、本発明に係る無線用ICタグにおける第2実施形態のO型(亜鈴型)アンテナを示す平面図である。図5に示すように、円形の形状をしたO型アンテナ9は、半径Rの2つの半円金属箔の中央部を幅D2の細長い金属箔で接続された構成となっている。そして、細長い金属箔の部分にICチップ2を搭載して無線用ICタグを構成している。このような形状のO型アンテナ9のICチップ2から図の矢印の方向へアンテナ電流が流れると、中央部(ICチップ2の搭載部分)で最大電流が流れて両側の半円部分に流れて行く。これによって、両側の半円部分の電磁エネルギーがICチップ2を取り囲んで集中するので、半径Rの小さいO型アンテナであってもアンテナ効率が上がって通信距離が向上する。このようなO型アンテナ9を有する無線用ICタグによって、例えば、ボルトのキャップなどに無線用ICタグを実装しても通信距離を向上させることができる。
【0028】
≪第3実施形態≫
本実施形態では、前記したH型アンテナまたはO型アンテナの形状を変形させた無線用ICタグの幾つかのバリエーションについて説明する。すなわち、第3実施形態の無線用ICタグでは、アンテナの長手方向中央部の幅を狭くしてアンテナ形状をH型またはO型とし、アンテナ中央部にICチップを搭載した無線用ICタグに対して、ICチップの搭載位置(つまり、くびれ部分)をアンテナ中央部から所望の位置へ移動させた変形形状のH型アンテナまたはO型アンテナとする。あるいは、H型アンテナまたはO型アンテナの左右または上下の形状を非対称にした変形形状のH型アンテナまたはO型アンテナとする。または、アンテナ放射面の一部に開口部または切欠きを設けた変形形状のH型アンテナまたはO型アンテナにする。
【0029】
すなわち、前記したように、H型アンテナまたはO型アンテナの中央部のくびれ部分にICチップを配置して給電点とすれば(つまり、給電部分とすれば)、くびれ部分に電磁エネルギーの集中作用が働いて最大アンテナ効率が得られる。しかし、無線用ICタグを取り付けるための被取付物体の形状などによって、無線用ICタグを収納する筐体(ケース)の形状が制約されることがある。例えば、無線用ICタグを収納するケースの中央部付近にケースを被取付物体に取り付けるための開口部や支柱を設けたり、ケースを被取付物体に取り付けるための位置決め用の切欠きをケース外周に設けたりする場合は、ケースに収納されるH型アンテナまたはO型アンテナの形状をそれに合わせて変形しなければならない。
【0030】
つまり、ICチップの搭載位置をH型アンテナやO型アンテナの中心部に限定せず、ICチップの搭載位置をH型アンテナやO型アンテナの上下方向または左右方向に対して非対称な位置にした変形形状の無線用ICタグの場合は、アンテナ効率はやや低下するが、従来の矩形型アンテナ(ダイポールアンテナ)に比べれば、変形形状の無線用ICタグの方が高いアンテナ効率が得られる。そのため、充分な通信距離が確保できれば、被取付物体への取り付けの利便性を優先して、無線用ICタグにおけるH型アンテナまたはO型アンテナを変形形状にすることが望ましい。そこで、第3実施形態では変形形状のH型アンテナまたはO型アンテナの幾つかのバリエーションについて説明する。
【0031】
<H型アンテナの非対称形状バリエーション>
図6は、本発明の第3実施形態に係るH型アンテナの非対称形状バリエーションを示す図である。図6(a)に示すような、くびれ部1aが中央部にあるH型アンテナ1の基本型であるアンテナ対称型の無線用ICタグに対して、同図(b)に示す変形1のように、H型アンテナ1のくびれ部1aを下方(または上方)にずらして、そのくびれ部1aにスリット5を形成すると共にスリット5を跨いでICチップ2を搭載した給電点上下オフセット型の無線用ICタグにすることもできる。
【0032】
また、同図(c)に示す変形2のように、H型アンテナ1のくびれ部1aを上下方向の中央部に固定したままH型アンテナ1の左右アンテナの放射面積を非対称にした給電点左右オフセット型の無線用ICタグにすることもできる。さらに、同図(d)に示す変形3のように、H型アンテナ1のくびれ部1aを下方(または上方)にずらすと共にH型アンテナ1の左右アンテナの放射面積を非対称にした給電点上下−左右オフセット型の無線用ICタグにすることもできる。図6(b)、(c)、(d)のような非対称形状のH型アンテナにした場合は、図6(a)のような対称形状のH型アンテナに比べてアンテナ効率はやや低下するが、必要な通信距離が確保できる範囲でアンテナ形状を変形して被取付物体への取り付けの利便性を図ることができる。
【0033】
<O型アンテナの非対称形状バリエーション>
図7は、本発明の第3実施形態に係るO型アンテナの非対称形状バリエーションを示す図である。図7(a)に示すような、くびれ部9aが中央にあるO型アンテナ9の基本型であるアンテナ対称型の無線用ICタグに対して、同図(b)に示す変形1のように、O型アンテナ9のくびれ部9aを下方(または上方)にずらして、そのくびれ部9aにスリット5を形成すると共にスリット5を跨いでICチップ2を搭載した給電点上下オフセット型の無線用ICタグにすることもできる。
【0034】
また、同図(c)に示す変形2のように、O型アンテナ9のくびれ部9aを中央部に固定したままO型アンテナ9の左右アンテナの放射面積を非対称にした給電点左右オフセット型の無線用ICタグにすることもできる。さらに、同図(d)に示す変形3のように、O型アンテナ9のくびれ部9aを下方(または上方)にずらすと共にO型アンテナ9の左右アンテナの放射面積を非対称にした給電点上下−左右オフセット型の無線用ICタグにすることもできる。図7(b)、(c)、(d)のような非対称形状のO型アンテナにした場合は、図7(a)のような対称形状のO型アンテナに比べてアンテナ効率はやや低下するが、必要な通信距離が確保できる範囲でアンテナ形状を変形して被取付物体への取り付けの利便性を図ることができる。
【0035】
<非対称形状のO型アンテナの実施例>
図8は、本発明の第3実施形態に適用される非対称形状のO型アンテナに係る一実施例を示す外形図である。図8に示すように、O型アンテナ9の外径は24mmであり、O型アンテナ9の中央部には前記したケースの支柱を立てるために直径6mmの空白部分が設けられている。したがって、O型アンテナ9の中心から6mmずれた位置に幅が1.5mmで長さが2.0mmのくびれ部9aが設けられて左右のアンテナ放射部を接続している。また、くびれ部9aの中央付近には幅が0.15mmのスリットがかぎ状に形成されている。なお、図8に示す形状のO型アンテナで100mmの通信距離は得られることが実験によって確認された。
【0036】
<H型アンテナにおける開口バリエーション>
図9は、本発明の第3実施形態に係るH型アンテナの開口バリエーションを示す図である。図9(a)に示すような、くびれ部1aが中央にあるH型アンテナ1の基本型であるアンテナ対称型の無線用ICタグに対して、同図(b)に示す変形1のように、H型アンテナ1のくびれ部1aを下方(または上方)にずらしてそのくびれ部1aにスリット5を形成してICチップ2を搭載すると共に、H型アンテナ1の中央部付近に開口部22を形成した給電点上下オフセット型の無線用ICタグにすることもできる。
【0037】
また、同図(c)に示す変形2のように、H型アンテナ1のくびれ部1aを中央部に固定したままH型アンテナ1の左右アンテナの放射面積を非対称にすると共に、H型アンテナ1で放射面積の広いアンテナ側(図の左アンテナ側)に開口部22を形成した給電点左右オフセット型の無線用ICタグにすることもできる。さらに、同図(d)に示す変形3のように、H型アンテナ1のくびれ部1aを下方(または上方)にずらすと共にH型アンテナ1の左右アンテナの放射面積を非対称にし、さらに、H型アンテナ1で放射面積の広いアンテナ側(図の左アンテナ側)に開口部22を形成した給電点上下−左右オフセット型の無線用ICタグにすることもできる。
【0038】
すなわち、H型アンテナ1に開口部22が存在する場合も、ICチップ2の搭載位置は図6のH型アンテナの非対称形状バリエーションで示した搭載位置に従う。なお、開口部22の形状は図9に示すような円形に限ることはなく任意の多角形にしてもよい。また、開口部22の位置によって給電点位置(つまり、くびれ部1aの位置)を適宜に移動させることが望ましい。さらに、開口部22の配置位置は任意に変更することができる。また、アンテナに形成される開口部は同形状または異形状のものが複数個存在していても構わない。
【0039】
図9(b)、(c)、(d)のような非対称形状であって、かつ開口部のあるH型アンテナの場合は、図9(a)のような対称形状のH型アンテナに比べてアンテナ効率はやや低下するが、必要な通信距離が確保できる範囲で開口部を設けたりアンテナ形状を変形したりすることにより、被取付物体への取り付けの利便性を図ることができる。
【0040】
<O型アンテナにおける開口バリエーション>
図10は、本発明の第3実施形態に係るO型アンテナの開口バリエーションを示す図である。図10(a)に示すような、くびれ部9aが中央にあるO型アンテナ1の基本型であるアンテナ対称型の無線用ICタグに対して、同図(b)に示す変形1のように、O型アンテナ9のくびれ部9aを下方(または上方)にずらしてそのくびれ部9aにスリット5を形成してICチップ2を搭載すると共に、O型アンテナ9の中央部付近に開口部22を形成した給電点上下オフセット型の無線用ICタグにすることもできる。
【0041】
また、同図(c)に示す変形2のように、O型アンテナ9のくびれ部9aを中央部に固定したままO型アンテナ9の左右の放射面積を非対称にすると共に、O型アンテナ9で放射面積の広いアンテナ側(図の左アンテナ側)に開口部22を形成した給電点左右オフセット型の無線用ICタグにすることもできる。さらに、同図(d)に示す変形3のように、O型アンテナ9のくびれ部9aを下方(または上方)にずらすと共にO型アンテナ9の左右アンテナの放射面積を非対称にし、さらに、O型アンテナ9で放射面積の広いアンテナ側(図の左アンテナ側)に開口部22を形成した給電点上下−左右オフセット型の無線用ICタグにすることもできる。
【0042】
すなわち、O型アンテナ9に開口部22が存在する場合も、ICチップ2の搭載位置は図7のO型アンテナの非対称形状バリエーションで示した搭載位置に従う。なお、開口部22の形状は図10に示すような円形に限ることはなく任意の多角形にしてもよい。また、開口部22の位置によって給電点位置(つまり、くびれ部9aの位置)を適宜に移動させることが望ましい。さらに、開口部22の配置位置は任意に変更することができる。また、アンテナに形成される開口部は同形状または異形状のものが複数個存在していても構わない。
【0043】
図10(b)、(c)、(d)のような非対称形状であってかつ開口部のあるO型アンテナにした場合は、図10(a)のような対称形状のO型アンテナに比べてアンテナ効率はやや低下するが、必要な通信距離が確保できる範囲で開口部を設けたりアンテナ形状を変形したりすることにより、被取付物体への取り付けの利便性を図ることができる。
【0044】
<H型アンテナにおける外周切欠きバリエーション>
図11は、本発明の第3実施形態におけるH型アンテナの外周切欠きバリエーションを示す図である。図11(a)に示すような、くびれ部1aが中央にあるアンテナ対称型のH型アンテナ1の基本型において、左右のアンテナの外周に任意の形状の切欠きを形成することもできる。例えば、図11(a)のH型アンテナ1における左側アンテナの外周上部に半円形の切欠き23aを形成し、さらに、図の右側アンテナの外周下部に矩形の切欠き23cを形成することもできる。また、同図(b)に示す変形1のように、H型アンテナ1のくびれ部1aを下方にずらしてそのくびれ部分にスリット5を形成してICチップ2を搭載すると共に、H型アンテナ1の左右アンテナの外周中央部付近にそれぞれ半円形の切欠き23a、23bを形成した給電点上下オフセット型の無線用ICタグにすることもできる。
【0045】
さらに、同図(c)に示す変形2のように、H型アンテナ1のくびれ部1aを中央部に固定したままH型アンテナ1の左右アンテナの面積を非対称にすると共に、H型アンテナ1の左右アンテナの外周下部付近にそれぞれ半円形の切欠き23a、23bを形成した給電点左右オフセット型の無線用ICタグにすることもできる。また、同図(d)に示す変形3のように、H型アンテナ1のくびれ部1aを下方にずらすと共にH型アンテナ1の左右アンテナの放射面積を非対称にし、さらに、H型アンテナ1の左右アンテナの外周中央部付近に切欠き23a、23bを形成した給電点上下−左右オフセット型の無線用ICタグにすることもできる。
【0046】
すなわち、H型アンテナ1の外周辺上に切欠きが存在する場合もICチップ2の搭載位置は図8のH型アンテナの非対称形状バリエーションに従う。なお、切欠きの形状は円形に限ることはなく任意の多角形にしてもよい。また、切欠きの位置によって給電点位置(つまり、くびれ部1aの位置)を適宜に移動させることが望ましい。さらに、切欠きの配置位置は任意に変更することができる。また、切欠きは複数個存在していても構わないし、切欠きと開口部が混在していても構わない。さらに、H型アンテナ1における左右のアンテナで異形状の切欠きが存在してもよいし、左右のアンテナで異形状の切欠きが複数存在してもよい。なお、左右のアンテナにおける切欠きの位置は必ずしも対称である必要はない。また、左右のアンテナにおける切欠きの個数は任意である。
【0047】
<第3実施形態における変形アンテナのまとめ>
以上説明したように、H型アンテナまたはO型アンテナの変形アンテナを用いて無線用ICタグを実現する場合は、H型アンテナやO型アンテナでくびれ部を中央に配置した基本型に対してアンテナ効率がやや低下するが、無線用ICタグをケースへ収納するときの利便性が向上する。例えば、無線用ICタグの中央部付近に筐体取付け等のために必要となる開口部を設けたり、無線用ICタグの取付位置決めのためにアンテナ外周に切欠きを設けることによって、被取付物体への無線用ICタグの取付作業性が一段と向上する。
【0048】
このような実装上の利便性を図るための変形アンテナを実現する場合は、アンテナの放射部分に円形や多角形の開口部を形成し、アンテナ給電点を中央部より端の方へ移動した非対称なH型アンテナやO型アンテナにすればよい。または、アンテナの放射部分の任意の位置に円形または多角形の開口部を形成し、アンテナ給電点を中央部より端の方へ移動した非対称なH型アンテナやO型アンテナにしてもよい。あるいは、アンテナの外周に切欠きを形成すると共に、必要に応じてアンテナの放射部分の任意の位置に円形または多角形の開口部を形成し、アンテナ給電点を中央部より端の方へ移動した非対称なH型アンテナやO型アンテナにしてもよい。なお、アンテナ外周の切欠きだけを必要としてアンテナ内部の開口部を必要としない場合は、給電点を中央部に配置してアンテナ効率をできるだけ高くすることが望ましい。
【0049】
前記幾つかのバリエーションを上げてH型アンテナまたはO型アンテナの形状について説明したが、アンテナの形状はそれらに限定されるものではなく、さまざまな形状に変形することができる。例えば図1に示すH型アンテナ1に対して四つの角部を切り取った四角形の形状としてもよい。また、H型アンテナとO型アンテナに共通するが、図6に示すくびれ部1aまたは図7に示すくびれ部9aが両側の部分に対して垂直である必要はなく、斜めにしてもよい。
なお、以上説明した本発明は、その技術思想の及ぶ範囲で種々の変更実施を行うことができる。例えば、無線用ICタグは、ROM(Read Only Memory)型のものでも、RAM(Random Access Memory)型のものでもよい。またどのような用途に適用されるものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態に係る無線用ICタグにおける第1実施形態のH型アンテナを示す平面図である。
【図2】図1に示すH型アンテナにおけるアンテナ幅と通信距離との関係を示すアンテナ特性図である。
【図3】図1に示す第1実施形態のH型アンテナの製造工程の一例を示す図である。
【図4】別形態のH型アンテナの製造工程を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る無線用ICタグにおける第2実施形態のO型アンテナを示す平面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係るH型アンテナの非対称形状バリエーションを示す図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係るO型アンテナの非対称形状バリエーションを示す図である。
【図8】本発明の第3実施形態に適用される非対称形状のO型アンテナに係る一実施例を示す外形図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係るH型アンテナの開口バリエーションを示す図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係るO型アンテナの開口バリエーションを示す図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係るH型アンテナの外周切欠きバリエーションを示す図である。
【図12】従来の無線用ICタグにおけるダイポールアンテナの構成図である。
【図13】図12に示す形状のダイポールアンテナのアンテナ長と通信距離の関係を示す特性図である。
【符号の説明】
【0051】
1 H型アンテナ
1a,9a くびれ部
1a アンテナ基材
2 ICチップ
3 粘着シート(絶縁性基材)
4 カバーシール(絶縁カバー)
5 スリット
6 インレット
6a アンテナ
6b アンテナ基材
7 絶縁フィルム
8a 第1補助アンテナ
8b 第2補助アンテナ
9 O型アンテナ
10,11 無線用ICタグ
21 ダイポールアンテナ
22 開口部
23a,23b,23c 切欠き
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を記録したICチップと、そのICチップに記録されている情報を無線で送信するアンテナとを備えた無線用ICタグであって、
前記アンテナは、前記ICチップが搭載された給電部分が電流の流れる方向に沿って細長く延在され、前記給電部分から前記電流の流れる両方向に存在する放射部分が、前記給電部分の長さ方向を軸にして、前記給電部分より幅広く形成されていることを特徴とする無線用ICタグ。
【請求項2】
前記アンテナは、前記給電部分と前記放射部分とによってH型の形状を構成していることを特徴とする請求項1に記載の無線用ICタグ。
【請求項3】
前記アンテナは、前記給電部分の両側に存在する前記放射部分がそれぞれ半円形に形成され、前記給電部分と前記放射部分とによって円形の形状を構成していることを特徴とする請求項1に記載の無線用ICタグ。
【請求項4】
前記給電部分と前記放射部分との間には絶縁部材が介在され、前記給電部分と前記放射部分とは静電容量結合されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の無線用ICタグ。
【請求項5】
前記給電部分は、前記放射部分が上下方向及び左右方向において対称となる位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の無線用ICタグ。
【請求項6】
前記給電部分は、前記放射部分が上下方向及び左右方向の少なくとも一方において非対称となる位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の無線用ICタグ。
【請求項7】
前記放射部分の任意の位置に少なくとも1個の開口部が形成されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の無線用ICタグ。
【請求項8】
前記放射部分の任意の位置に異形状の開口部が混在して形成されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の無線用ICタグ。
【請求項9】
前記開口部の形状は円形または多角形であることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の無線用ICタグ。
【請求項10】
前記給電部分の位置は、前記開口部が前記放射部分に形成された位置に応じて設定されることを特徴とする請求項7乃至請求項9の何れか1項に記載の無線用ICタグ。
【請求項11】
前記放射部分の外周における任意の位置に少なくとも1個の切欠きが形成されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の無線用ICタグ。
【請求項12】
前記放射部分の外周における任意の位置に異形状の切欠きが混在して形成されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の無線用ICタグ。
【請求項13】
前記切欠きの形状は円形または多角形であることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の無線用ICタグ。
【請求項14】
前記給電部分の位置は、前記切欠きが前記放射部分の外周に形成された位置に応じて設定されることを特徴とする請求項11乃至請求項13の何れか1項に記載の無線用ICタグ。
【請求項15】
前記放射部分の任意の位置に少なくとも1個の開口部が形成され、かつ、前記放射部分の外周における任意の位置に少なくとも1個の切欠きが形成されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の無線用ICタグ。
【請求項16】
前記開口部と前記切欠きは同形状であることを特徴とする請求項15に記載の無線用ICタグ。
【請求項17】
前記開口部と前記切欠きは異形状であることを特徴とする請求項15に記載の無線用ICタグ。
【請求項18】
情報を記録したICチップと、そのICチップに記録されている情報を無線で送信するアンテナとを備えた無線用ICタグを製造する無線用ICタグの製造方法であって、
金属導体によって絶縁性基板の表面にアンテナを形成するときに、細長い給電部分に対し、前記給電部分の長さ方向の両方向に存在する放射部分を前記給電部分の長さ方向を軸にして、前記給電部分より幅広になるようにパターニングする工程と、
前記給電部分にICチップを搭載し、前記ICチップのそれぞれの端子を前記金属導体に接続する工程と、
前記給電部分と前記放射部分を形成する前記金属導体、及び前記ICチップを絶縁カバーでコーティングする工程と、
を含むことを特徴とする無線用ICタグの製造方法。
【請求項19】
情報を記録したICチップと、そのICチップに記録されている情報を無線で送信するアンテナとを備えた無線用ICタグを製造する無線用ICタグの製造方法であって、
金属導体によってアンテナを絶縁性基板の表面にパターニングする工程と、
前記アンテナの給電部分に前記ICチップを搭載し、前記ICチップのそれぞれの端子を前記アンテナに接続する工程と、
前記アンテナの表面に絶縁部材をコーティングする工程と、
前記アンテナ上の前記絶縁部材を含む広い範囲に亘って、前記ICチップを挟んで第1補助アンテナ及び第2補助アンテナを形成する工程と、
前記第1補助アンテナ、前記第2補助アンテナ、及び前記ICチップを含む表面全体を絶縁カバーでコーティングする工程と、
を含むことを特徴とする無線用ICタグの製造方法。
【請求項20】
前記アンテナにおける前記ICチップを搭載する部分にスリットを形成する工程を含み、
前記ICチップは、前記スリットを跨いで接続されることを特徴とする請求項18又は請求項19に記載の無線用ICタグの製造方法。
【請求項1】
情報を記録したICチップと、そのICチップに記録されている情報を無線で送信するアンテナとを備えた無線用ICタグであって、
前記アンテナは、前記ICチップが搭載された給電部分が電流の流れる方向に沿って細長く延在され、前記給電部分から前記電流の流れる両方向に存在する放射部分が、前記給電部分の長さ方向を軸にして、前記給電部分より幅広く形成されていることを特徴とする無線用ICタグ。
【請求項2】
前記アンテナは、前記給電部分と前記放射部分とによってH型の形状を構成していることを特徴とする請求項1に記載の無線用ICタグ。
【請求項3】
前記アンテナは、前記給電部分の両側に存在する前記放射部分がそれぞれ半円形に形成され、前記給電部分と前記放射部分とによって円形の形状を構成していることを特徴とする請求項1に記載の無線用ICタグ。
【請求項4】
前記給電部分と前記放射部分との間には絶縁部材が介在され、前記給電部分と前記放射部分とは静電容量結合されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の無線用ICタグ。
【請求項5】
前記給電部分は、前記放射部分が上下方向及び左右方向において対称となる位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の無線用ICタグ。
【請求項6】
前記給電部分は、前記放射部分が上下方向及び左右方向の少なくとも一方において非対称となる位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の無線用ICタグ。
【請求項7】
前記放射部分の任意の位置に少なくとも1個の開口部が形成されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の無線用ICタグ。
【請求項8】
前記放射部分の任意の位置に異形状の開口部が混在して形成されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の無線用ICタグ。
【請求項9】
前記開口部の形状は円形または多角形であることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の無線用ICタグ。
【請求項10】
前記給電部分の位置は、前記開口部が前記放射部分に形成された位置に応じて設定されることを特徴とする請求項7乃至請求項9の何れか1項に記載の無線用ICタグ。
【請求項11】
前記放射部分の外周における任意の位置に少なくとも1個の切欠きが形成されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の無線用ICタグ。
【請求項12】
前記放射部分の外周における任意の位置に異形状の切欠きが混在して形成されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の無線用ICタグ。
【請求項13】
前記切欠きの形状は円形または多角形であることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の無線用ICタグ。
【請求項14】
前記給電部分の位置は、前記切欠きが前記放射部分の外周に形成された位置に応じて設定されることを特徴とする請求項11乃至請求項13の何れか1項に記載の無線用ICタグ。
【請求項15】
前記放射部分の任意の位置に少なくとも1個の開口部が形成され、かつ、前記放射部分の外周における任意の位置に少なくとも1個の切欠きが形成されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の無線用ICタグ。
【請求項16】
前記開口部と前記切欠きは同形状であることを特徴とする請求項15に記載の無線用ICタグ。
【請求項17】
前記開口部と前記切欠きは異形状であることを特徴とする請求項15に記載の無線用ICタグ。
【請求項18】
情報を記録したICチップと、そのICチップに記録されている情報を無線で送信するアンテナとを備えた無線用ICタグを製造する無線用ICタグの製造方法であって、
金属導体によって絶縁性基板の表面にアンテナを形成するときに、細長い給電部分に対し、前記給電部分の長さ方向の両方向に存在する放射部分を前記給電部分の長さ方向を軸にして、前記給電部分より幅広になるようにパターニングする工程と、
前記給電部分にICチップを搭載し、前記ICチップのそれぞれの端子を前記金属導体に接続する工程と、
前記給電部分と前記放射部分を形成する前記金属導体、及び前記ICチップを絶縁カバーでコーティングする工程と、
を含むことを特徴とする無線用ICタグの製造方法。
【請求項19】
情報を記録したICチップと、そのICチップに記録されている情報を無線で送信するアンテナとを備えた無線用ICタグを製造する無線用ICタグの製造方法であって、
金属導体によってアンテナを絶縁性基板の表面にパターニングする工程と、
前記アンテナの給電部分に前記ICチップを搭載し、前記ICチップのそれぞれの端子を前記アンテナに接続する工程と、
前記アンテナの表面に絶縁部材をコーティングする工程と、
前記アンテナ上の前記絶縁部材を含む広い範囲に亘って、前記ICチップを挟んで第1補助アンテナ及び第2補助アンテナを形成する工程と、
前記第1補助アンテナ、前記第2補助アンテナ、及び前記ICチップを含む表面全体を絶縁カバーでコーティングする工程と、
を含むことを特徴とする無線用ICタグの製造方法。
【請求項20】
前記アンテナにおける前記ICチップを搭載する部分にスリットを形成する工程を含み、
前記ICチップは、前記スリットを跨いで接続されることを特徴とする請求項18又は請求項19に記載の無線用ICタグの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−25390(P2006−25390A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−345335(P2004−345335)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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