説明

無線端末装置、無線基地局装置、無線測距システム、及び、無線測距方法

【課題】アクティブ方式、セミパッシブ方式を問わず、UWBリーダとUWBタグ間の測距精度を向上すること。
【解決手段】タイミング制御部340は、基地局200から送信されたパルス信号の受信タイミング、及び、受信パルス信号を受信してから、当該受信パルス信号の検波信号に応じて生成される送信パルス信号を送信するまでに要する回路遅延時間の代表値に基づいて、基地局200から送信されたパルス信号の検波信号に応じて生成された再放射パルス、及び、再放射パルスの検波信号に応じて生成された再々放射パルスを、送信増幅器350が増幅するようなオンオフ制御する制御信号を、送信増幅器350に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UWB(Ultra Wide Band)パルス信号を用いて測距を行う無線端末装置、無線基地局装置、無線測距システム、及び、無線測距方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高速無線伝送技術の一つとして、UWB(Ultra Wide Band)通信方式がある。UWB通信方式は、所定の周期タイミングに同期したパルス信号からなるパルス信号列を用いて、超広帯域な通信を行う技術である。UWB通信の一例として、搬送波を用いず、パルス幅が例えば1ナノ秒以下等の極めて細かいパルス信号からなるパルス信号列を用いる方法が知られている。このようなUWBパルスを用いた場合、伝送パルス幅が極めて細いため、マルチパス伝搬環境においても、正確な測距が行えることが広く知られている。
【0003】
例えば、無線基地局装置(以下「基地局」と略記する)であるUWBリーダから無線端末装置(以下「端末」と略記する)であるUWBタグへとUWBパルス信号が送られ、UWBタグで一度UWBパルス信号が受信された後、UWBタグからUWBリーダにUWBパルス信号が再送信される。そして、その往復時間を測定することにより、UWBリーダとUWBタグとの離間距離を測定することが出来る。
【0004】
UWB低伝送レートの物理層規定を行う一規格であるIEEE802.15.4a(低レートUWB規格)には、双方向測距TWR(Two-Way-Ranging)技術が開示されている(非特許文献1参照)。非特許文献1には、基地局と端末間の水晶振動子の周波数差による測距精度と、その改善方法の具体例が示されている。
【0005】
また、特許文献1には、基地局から送信されたプリアンブルを、端末が受信した後、端末のクロックで再放射し、基地局でその持続時間を測定することにより、送信側のクロックと受信側のクロックとの差を測定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−212420号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】IEEE Std 802.15.4a-2007,August 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記に示した先行技術においては、UWBタグが通信機器と同様にタグ内での同期復調を行い、その後にリーダに送信信号を返送するアクティブ方式を採用することを前提とする場合、UWBタグ内の遅延時間が、水晶等のように高精度で管理されることが必須となる。すなわち、例えば30cmの精度を確保するためには、UWBタグ内の基準クロックを1GHzといった高い周波数のタイミングで管理する必要がある。ただし、UWBタグ動作クロックが上昇するのに伴い、消費電力が増大し、UWBタグの電池寿命が短くなるという課題を有する。
【0009】
一方、タグ内でUWB信号を単に増幅して、または、増幅後、包絡線検波してUWBパルスを再放射するセミパッシブ方式は、UWBタグの消費電力を抑制すると言う観点から有利で有る。しかし、パッシブ方式では、UWBタグ内に同期クロックを持たないため、UWBタグ内の回路遅延時間の変動の管理が困難となるという課題を有する。
【0010】
回路遅延は、UWBタグの各部の配線長や、各部の回路により信号が遅延することにより生じる。例えば、UWBタグが、受信増幅器として低雑音増幅器(LNA:Low Noise Amp)を備え、UWBタグの送受信回路として検波器、コンパレータ及び発振器を備え、送信増幅器として電力増幅器(PA:Power Amp)を備える場合、各部において、数十ナノ秒程度の遅延時間が生じる。この回路遅延時間は、一般に、UWBタグの受信端から入力信号を入力し、送信端から出力される出力信号をあらかじめネットワークアナライザ等で測定することができ、測定により得られた回路遅延時間を、補正値としてUWBタグに記録しておくことも可能である。
【0011】
しかしながら、実際には、回路遅延時間は、UWBタグの構成回路の固体差による遅延時間差や、UWBの広帯域特性に対して温度変化により変動するため、予め測定されたデータを補正値に用いた場合、回路遅延時間に誤差が生じ、結果として測距誤差が生じる。上述したように、回路遅延時間の絶対値は数十ナノ秒程度存在するため、例えば、回路遅延時間に対する誤差が10パーセント存在する場合には、誤差は数ナノ秒程度となる。そして、数ナノ程度の誤差は、30cm以上の距離測定誤差となり、リーダ、タグ間の電波伝搬時間の測定誤差に比較して無視できない大きさとなる。
【0012】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、アクティブ方式、セミパッシブ方式を問わず、UWBリーダとUWBタグ間の測距精度を向上することができる無線端末装置、無線基地局装置、無線測距システム、及び、無線測距方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の無線端末装置は、パルス信号を用いて無線基地局装置と無線端末装置との離間距離を測定する無線測距システムにおける前記無線端末装置であって、受信アンテナと、受信パルス信号を検波し検波信号を出力する検波手段と、前記検波信号に応じて、送信パルス信号を生成する生成手段と、前記送信パルス信号を増幅する増幅手段と、増幅された前記送信パルス信号を送信する送信アンテナと、前記受信パルス信号を受信してから、当該受信パルス信号の前記検波信号に応じて生成される前記送信パルス信号を送信するまでに要する前記無線端末装置の回路遅延時間の代表値に基づいて、前記無線基地局装置から送信されるパルス信号の前記検波信号に応じて生成された再放射パルス信号、及び、前記再放射パルス信号の前記検波信号に応じて生成された再々放射パルス信号を増幅するように、前記増幅手段をオンオフ制御する制御信号を、前記増幅手段に出力するタイミング制御手段と、を具備する構成を採る。
【0014】
本発明の無線基地局装置は、パルス信号を用いて無線基地局装置と無線端末装置との離間距離を測定する無線測距システムにおける前記無線基地局装置であって、パルス信号を送信する送信手段と、送信した前記パルス信号が、前記無線端末装置で再放射された再放射パルス信号と、前記再放射パルス信号が前記無線端末装置で再々放射された再々放射パルス信号と、を受信する受信手段と、前記再放射パルス信号の受信タイミングと前記再々放射パルス信号の受信タイミングとの時間差から、前記無線端末装置の回路遅延時間を測定する測定手段と、を具備する構成を採る。
【0015】
本発明の無線測距システムは、パルス信号を用いて無線基地局装置と無線端末装置との離間距離を測定する無線測距システムであって、前記無線基地局装置は、パルス信号を送信する送信手段と、送信した前記パルス信号が、前記無線端末装置で再放射された再放射パルス信号と、前記再放射パルス信号が前記無線端末装置で再々放射された再々放射パルス信号と、を受信する受信手段と、前記再放射パルス信号と前記再々放射パルス信号との受信タイミングの時間差から、前記無線端末装置の回路遅延時間を測定する測定手段と、を具備し、前記無線端末装置は、受信アンテナと、受信パルス信号を検波し検波信号を出力する検波手段と、前記検波信号に応じて、送信パルス信号を生成する生成手段と、前記送信パルス信号を増幅する増幅手段と、増幅された前記送信パルス信号を送信する送信アンテナと、前記受信パルス信号を受信してから、当該受信パルス信号の前記検波信号に応じて生成される前記送信パルス信号を送信するまでに要する前記無線端末装置の回路遅延時間の代表値に基づいて、前記無線基地局装置から送信されるパルス信号の前記検波信号に応じて生成された再放射パルス信号、及び、前記再放射パルス信号の前記検波信号に応じて生成された再々放射パルス信号を増幅するように、前記増幅手段をオンオフ制御する制御信号を、前記増幅手段に出力するタイミング制御手段と、を具備する構成を採る。
【0016】
本発明の無線測距方法は、パルス信号を用いて無線基地局装置と無線端末装置との離間距離を測定する無線測距方法であって、前記無線基地局装置は、パルス信号を送信し、前記無線端末装置は、受信パルス信号を検波し検波信号を出力し、前記無線基地局装置から送信されたパルス信号の前記検波信号に応じて生成された再放射パルス信号、及び、前記再放射パルス信号の前記検波信号に応じて生成された再々放射パルス信号を増幅し、増幅された前記送信パルス信号を送信し、前記無線基地局装置は、前記再放射パルス信号及び前記再々放射パルス信号を受信し、前記再放射パルス信号の受信タイミングと、前記再々放射パルス信号の受信タイミングとの時間差から、前記無線端末装置の回路遅延時間を測定するとともに、送信した前記パルス信号の送信タイミングと、前記再放射パルス信号との受信タイミングとの時間差から、前記無線端末装置の回路遅延時間を含む電波の往復時間を測定し、前記往復時間と、前記無線端末装置の回路内遅延時間とに基づいて、前記離間距離を算出するようにした。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、アクティブ方式、セミパッシブ方式を問わず、UWBリーダとUWBタグ間の測距精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1に係る無線測距システムの概略図
【図2】リーダ送信パルス、及び、リーダ送信パルスに対応する再放射パルス及び再々放射パルスを示す図
【図3】実施の形態1に係る基地局の構成を示すブロック図
【図4】実施の形態1に係る端末の構成を示すブロック図
【図5】実施の形態1におけるオンオフ制御信号を説明するための図
【図6】本発明の実施の形態2に係る基地局の構成を示すブロック図
【図7】実施の形態2に係る端末の構成を示すブロック図
【図8】実施の形態2におけるオンオフ制御信号を説明するための図
【図9】本発明の実施の形態3に係る基地局の構成を示すブロック図
【図10】本発明の実施の形態4に係る端末の構成を示すブロック図
【図11】実施の形態4に係る基地局の構成を示すブロック図
【図12】基地局と端末との間で送受信されるパルス系列の一例を示す図
【図13】本発明の実施の形態5に係る基地局の構成を示すブロック図
【図14】実施の形態5に係る端末の構成を示すブロック図
【図15】基地局と端末との間で送受信されるパルス系列の一例を示す図
【図16】本発明の実施の形態6に係る無線測距システムにおける基地局、端末、及び、反射物の配置の一例を示す図
【図17】端末の送受信パルス信号及び基地局の受信パルス信号を示す図
【図18】端末の送信パルス信号及び基地局の受信パルス信号を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
(実施の形態1)
[無線測距システムの概要]
図1は、本発明の実施の形態に係る無線測距システムを示す図である。図1において、無線測距システムは、リーダと、リーダによって、リーダとの距離が測定されるタグとを有する。以下では、説明を簡単にするために、無線測距システムがタグを1つ有する場合を例に説明するが、タグの数は1つに限定されない。
【0021】
リーダは、タグまでの離間距離を測定する。具体的には、本実施の形態では、リーダは、タグ内の回路遅延時間と、タグまでの空間伝搬時間(タグ内の回路遅延時間を含む)とを測定し、回路遅延時間を除去した空間伝搬時間から離間距離を算出する。回路遅延時間及び空間伝搬時間の測定には、インパルス方式のウルトラワイドバンド(UWB)無線信号が用いられる。
【0022】
以下、本実施の形態に係る無線測距システムの概要について説明する。
【0023】
リーダは、まず、UWBパルスを送信する。
【0024】
タグは、このUWBパルスを受信アンテナで受信し、受信UWBパルスに応じた応答UWBパルスを送信する。セミパッシブ方式が適用される場合には、受信UWBパルスは、タグにおいて増幅され、または、増幅後に包絡線検波される。そして、増幅、または、増幅後に包絡線検波されて、再びUWBパルスが発生される。そして、発生されたUWBパルスは再放射(再送信)されて、応答UWBパルスとして送信される。以下、受信UWBパルスが再放射された応答UWBパルスを、再放射パルスという。
【0025】
更に、タグは、この再放射パルスを、自装置の受信アンテナで受信し、受信した再放射パルスに応じた応答UWBパルスを送信する。セミパッシブ方式が適用される場合には、受信した再放射パルスは、タグにおいて増幅または増幅後に包絡線検波されて、再びUWBパルスが発生される。そして、発生されたUWBパルスは再放射されて、応答UWBパルスとして送信される。以下、再放射パルスが自装置により反射又は再放射された応答UWBパルスを、再々放射パルスという。
【0026】
リーダは、タグから送信された再放射パルス及び再々放射パルスを受信する。リーダは、送信したUWBパルスの送信タイミング及び再放射パルスの受信タイミングから、タグまでの空間伝搬時間を測定する。なお、この空間伝搬時間には、タグ内の回路遅延時間が含まれている。ここで、タグ内の回路遅延時間とは、タグがUWBパルスを受信してから、当該UWBパルスに応じた応答UWBパルスを送信するまでに要する時間である。リーダは、再放射パルス及び再々放射パルスの受信タイミングから、タグ内の回路遅延時間を測定する。
【0027】
以下、図2を用いて、空間伝搬時間及び回路遅延時間の測定方法について説明する。
【0028】
図2は、リーダから送信されるUWBパルス(以下「リーダ送信パルス」という)、及び、リーダ送信パルスに対応する再放射パルス及び再々放射パルスを示す図である。図2において、縦軸は信号電力を表し、横軸は時間を表す。
【0029】
リーダから送出されるリーダ送信パルス101は、リーダとタグとの離間距離を伝搬する電波の空間伝搬時間TL経過後、タグに到達する。図2において、タグ受信パルス102は、タグに到達したリーダ送信パルス101を示す。タグは、受信アンテナにおいて、タグ受信パルス102を受信する。タグ受信パルス102は、上述したように、タグの内部回路を経由して、タグの送信アンテナからリーダに対し、タグ再放射パルス103として送信される。
【0030】
ここで、タグ受信パルス102がタグに受信されてから、タグ再放射パルス103として送信されるまでの回路遅延時間をTCとする。
【0031】
タグ再放射パルス103は、タグの送信アンテナから放射された後、その一部の電力が、タグの受信アンテナに入射する。そして、タグの回路遅延時間TCを経た後、タグ再放射パルス103は、タグの送信アンテナからタグ再々放射パルス104として放射される。
【0032】
タグから送出されるタグ再放射パルス103及びタグ再々放射パルス104は、リーダとタグとの離間距離を伝搬する電波の空間伝搬時間TL経過後、タグに到達する。リーダ受信パルス105,106は、リーダに到達したタグ再放射パルス103及びタグ再々放射パルス104を示す。リーダは、受信アンテナにおいて、リーダ受信パルス105,106を受信する。
【0033】
リーダは、リーダ送信パルス101の送信タイミング、及び、リーダ受信パルス105,106の受信タイミングから、以下の時間を観測することができる。
【0034】
(a)リーダ送信パルス101の先頭時間T1から、リーダ受信パルス105の先頭時間T5までの時間差(T5−T1=TL+TC+TL)
(b)タグ再放射パルス103に対するリーダ受信パルス105の先頭時間T5から、タグ再々放射パルス104に対するリーダ受信パルス106の先頭時間T6までの時間差(T6−T5=TC)
【0035】
ここで、タグの送信アンテナとタグの受信アンテナとの距離は、タグの形状から想定されるように、タグの回路遅延時間に比較して無視し得る程度に小さい。したがって、回路遅延時間は上記で述べた、リーダ受信パルス105の受信タイミングとリーダ受信パルス106の受信タイミングとの時間差TCとなる。
【0036】
リーダは、(a)及び(b)の2つの観測時間から、((TL+TC+TL)−TC)/2=TLより、タグ内の回路遅延時間TCを含まない、リーダとタグ間の空間伝搬時間TLを測定することができる。このようにして、タグは、再放射パルス及び再々放射パルスを送信し、リーダは、再放射パルス及び再々放射パルスの到来時刻(受信タイミング)を観測する。これにより、リーダは、タグ内での回路遅延時間を測定することができ、この結果、回路遅延時間を含まない空間伝搬時間を測定することができる。空間伝搬時間が分かれば、空間伝搬時間に空間伝搬速度を乗算することにより、リーダは、リーダとタグとの離間距離を求めることができる。
【0037】
このようにして、本実施の形態では、タグ内の回路遅延時間を除去した、リーダとタグ間の実際の空間伝搬時間から、リーダとタグ間の実際の離間距離を算出する。以下では、本実施の形態に係る基地局及び端末の構成について説明する。
【0038】
[基地局の構成]
図3は、本発明の実施の形態に係る無線測距システムの基地局200の構成を示すブロック図である。基地局200は、例えば、UWB通信を行う読み取り装置(リーダ)である。
【0039】
図3において、基地局200は、タイミング信号出力部201と、送信パルス発生部202と、送信アンテナ203と、受信アンテナ204と、パルス検出部205と、距離算出部206とを有する。
【0040】
タイミング信号出力部201は、等時間間隔でクロック信号を生成する。具体的には、タイミング信号出力部201は、クロック信号として、長周期クロック信号と、短周期クロック信号との2種類のクロック信号を生成する。長周期クロック信号の周期は、測定範囲に応じて決定される。例えば、測定距離の最大値を15mとすれば、電波の往復伝搬距離は30mとなりこのとき、最大遅延波は100ナノ秒となる。また、短周期クロック信号の周期は測距分解能に相当し、通常はUWBパルス幅と同等の値に設定する。1ナノ秒は、距離分解能30cmに相当する。生成されたクロック信号は、送信パルス発生部202、パルス検出部205及び距離算出部206に出力される。
【0041】
送信パルス発生部202は、タイミング信号出力部201からの長周期クロック信号に基づいて、パルス信号を発生する。送信パルス発生部202は、長周期クロック信号に基づいて励振増幅する増幅回路と、バンドパスフィルタとを含む。増幅回路には、例えば、ステップリカバリダイオードが用いられる。この場合、送信パルス発生部202では、ステップリカバリダイオードが、長周期クロック信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジの一方において励振(つまり、エッジショック励振)することにより電流増幅し、得られた信号をバンドパスフィルタが帯域制限する。これにより、1ナノ秒程度のパルス幅(つまり、短周期程度のパルス幅)を持つパルス信号が生成される。このようにパルス信号は長周期クロック信号の周期と同じ周期で生成され、送信パルス信号として送信アンテナ203を介して送信される。
【0042】
パルス検出部205は、後述する端末300から送信される再放射パルス及び再々放射パルスを受信アンテナ204を介して受信する。パルス検出部205は、再放射パルス及び再々放射パルスを、短周期クロック信号に同期して検波し、得られた検波信号のレベルから、再放射パルス及び再々放射パルスの受信タイミング(到来時間)を取得し、取得した受信タイミングの情報を距離算出部206に出力する。
【0043】
距離算出部206は、基地局200と後述する端末300との間を電波が実際に伝搬するのに要する空間伝搬時間を算出する。具体的には、距離算出部206は、タイミング信号出力部201より得られる送信パルスの送信タイミング及び端末300より到来する再放射パルスと再々放射パルスとの到来時間差より、上述の[無線測距システムの概要]で説明した手順に従って、空間伝搬時間を算出する。そして、距離算出部206は、空間伝搬時間に電波の進行速度を乗算することにより、基地局200と端末300との間の離間距離を算出する。
【0044】
[端末の構成]
図4は、本発明の実施の形態に係る無線測距システムの端末300の構成を示すブロック図である。端末300は、例えば、UWB通信を行うタグである。
【0045】
図4において、端末300は、受信アンテナ310と、受信増幅器320と、タグ送受信回路330と、タイミング制御部340と、送信増幅器350と、送信アンテナ360とを有する。
【0046】
受信増幅器320は、受信アンテナ310を介して受信した受信パルス信号を増幅し、増幅後の受信パルス信号をタグ送受信回路330に出力する。
【0047】
図4には、タグ送受信回路330の内部構成の一例が示されている。図4に示すタグ送受信回路330は、セミパッシブ方式を採用した場合の構成例であり、タグ送受信回路330は、検波器331と、レベル検出部332と、コンパレータ333と、UWBパルス発生部334とを有する。
【0048】
検波器331は、受信増幅器320からの受信パルス信号を検波する。検波器331は、例えば、ダイオードとコンデンサとを利用した整流回路により構成され、受信増幅器320からの受信パルス信号を包絡線検波する。例えば、受信パルス信号がインパルス方式UWBのOOK(ON OFF Keying)変調信号の場合、検波器331で得られる検波結果は、1〜2ナノ秒程度のベースバンド信号となる。検波器331で得られた検波結果は、レベル検出部332に出力される。
【0049】
レベル検出部332は、タイミング制御部340からの出力タイミングに応じて、検波器331からの検波結果をサンプリングし、ベースバンド信号のレベルを検出する。レベル検出部332は、検出したベースバンド信号のレベルの情報をタイミング制御部340に出力する。
【0050】
コンパレータ333は、検波器331の検波結果を入力とし、比較基準電圧と検波結果との大小比較結果に応じて、2値化されたデジタル信号を生成し、生成したデジタル信号をUWBパルス発生部334に出力する。例えば、入力検波結果が比較基準電圧以上の場合には、コンパレータ333は、ハイレベル信号を出力する。一方、入力検波結果が比較基準電圧未満の場合には、ローレベル信号を出力する。
【0051】
UWBパルス発生部334は、端末300に備えられた電源(図示せぬ)から供給される電力を用いて、コンパレータ333からの出力信号に応じた送信パルス信号を生成し、生成した送信パルス信号を送信増幅器350に出力する。UWBパルス発生部334としては、ステップリカバリダイオードや、帯域制限された増幅器を用いることができる。
【0052】
タイミング制御部340は、タグ内の回路遅延平均時間から決定される通常UWBパルス幅の2〜20倍程度の予め定められた等時間間隔でクロック信号を生成し、クロック信号のタイミングを予め定められた間隔でずらしながら、レベル検出部332に出力する。
【0053】
更に、タイミング制御部340は、レベル検出部332によって検波されたベースバンド信号のレベルが最大となるタイミング(以下「検出タイミング」という)を検出する。そして、タイミング制御部340は、検出タイミングに基づいて、オンオフ制御信号を生成し、生成したオンオフ制御信号を送信増幅器350に出力する。オンオフ制御信号の詳細については、後述する。
【0054】
送信増幅器350は、タイミング制御部340から出力されるオンオフ制御信号に基づいてオン/オフ動作する。オンオフ制御信号がオン期間中には、送信増幅器350は、UWBパルス発生部334から出力される送信パルス信号を増幅する。増幅後の送信パルス信号は、送信アンテナ360を介して、基地局200に送信される。一方、オンオフ制御信号がオフ期間中には、送信増幅器350は動作を停止する。従って、オフ期間中の送信増幅器350の出力は、無信号となる。
【0055】
次に、タイミング制御部340から出力されるオンオフ制御信号について説明する。図5に、オンオフ制御信号の一例を示す。なお、図5において、図2と共通するパルス信号には共通の符号を付している。
【0056】
図5において、検出タイミング信号401は、タイミング制御部340から出力されるクロック信号である。
【0057】
基地局200からのUWBパルスは、端末300の受信増幅器320において増幅された結果、検波器331において、タイミング制御部340から出力されるクロック信号で検出される。
【0058】
上述したように、タイミング制御部340は、レベル検出部332におけるレベル検出結果が最大となるように、レベル検出部332に出力するクロック信号の出力タイミングを予め定められた間隔でずらしながら、レベル検出部332に出力する。
【0059】
タイミング制御部340から出力されるクロック信号とタグ受信パルス102が到着する時刻とがずれるような場合には、レベル検出部332は、タグ受信パルス102が存在しないタイミングでレベル検出するので、レベル検出結果は、0または雑音レベルとなる。この場合、タイミング制御部340は、クロック信号の出力タイミングを予め定められた間隔でずらしながら、レベル検出部332に出力する。これにより、タグ受信パルス102に対し粗同期が取られるようになる。
【0060】
図5において、検出タイミング信号401は、レベル検出部332におけるレベル検出結果が最大となるようなクロック信号の出力タイミングである。図5に示す例は、タグ受信パルス102が到着する時刻と検出タイミング信号401がハイレベルとなる期間とがほぼ同期しており、粗同期が取られた状態を示している。
【0061】
このようにして、タイミング制御部340は、タグ受信パルス102に対して粗同期を取った段階で、レベル検出結果を最大とする検出タイミングに基づいて、送信増幅器350に対するオンオフ制御信号を生成する。具体的には、タイミング制御部340は、タグ受信パルス102に対して粗同期を取った検出タイミングから、所定時間経過後にハイレベルとなるようなオンオフ制御信号を生成する。このとき、所定時間を、例えば、端末300の回路遅延時間の最小値以下とする。これにより、タグ受信パルス102に対するタグ再放射パルス103がタグ送受信回路330から出力される期間(再放射パルス出力期間)の先頭タイミングで、送信増幅器350がオンされるようになるので、タグ再放射パルス103が送信アンテナ360から送信されるようになる。
【0062】
図5において、オンオフ制御信号402は、タグ受信パルス102が内部回路を経由してタグ再放射パルス103がタグ送受信回路330から出力される期間(再放射パルス出力期間)の直前のタイミングから、タグ再々放射パルス104がタグ送受信回路330から出力される期間(再々放射パルス出力期間)までを含めた期間(403)、ハイレベルとなる信号である。図5に示すオンオフ制御信号402は、ハイレベルとなる期間(403)が、回路遅延時間の最小値の2倍以上であり、回路遅延時間の最小値の3倍未満となる信号である。送信増幅器350は、オンオフ制御信号402がハイレベルとなる期間をオン期間とする。したがって、タグ再放射パルス103及びタグ再々放射パルス104がタグ送受信回路330から出力される期間において、送信増幅器350が既にオンされているようになるので、タグ再放射パルス103及びタグ再々放射パルス104は、送信増幅器350により増幅され、送信アンテナ360から送信されるようになる。
【0063】
また、図5において、オンオフ制御信号404は、タグ再放射パルス103が出力される期間(再放射パルス出力期間)、及び、タグ再々放射パルス104が出力される期間(再々放射パルス出力期間)、ハイレベルとなる信号である。
【0064】
図5から分かるように、オンオフ制御信号404は、オンオフ制御信号402に比べ、オン期間(ハイレベルとなる期間405,406)が短い。そのため、オンオフ制御信号404を用いる場合には、オンオフ制御信号402を用いる場合に比べ、消費電力を低減することができる。
【0065】
なお、タグ再々放射パルス104は、タグ再放射パルス103が端末300の内部回路を更に一周して送出されるパルスであり、回路遅延時間は、タグ受信パルス間隔に比べ短い。そのため、送信増幅器350がオンされる期間は、リーダ送信パルス間隔(又は、タグ受信パルス間隔)に比べ短くてよい。すなわち、オンオフ制御信号がハイレベルとなる期間は、リーダ送信パルス間隔(又は、タグ受信パルス間隔)に比べ短い。
【0066】
また、検出タイミング信号401、及びオンオフ制御信号402,404において、ハイレベルとなる期間は、UWBパルス幅に対してある程度広い時間間隔とする。例えば、UWBパルスの幅が1〜2ナノ秒であれば、ハイレベルとなる期間は、4〜20ナノ秒程度の幅とする。このようにすることで、温度変化等により、検出タイミング信号401及びオンオフ制御信号402,404とUWBパルスとが非同期となるのを防ぐことができる。
【0067】
このように、端末300の回路遅延時間の代表値(例えば、最小時間、平均時間等)に基づいて、オンオフ制御信号402,404がハイレベルとなるタイミング及び期間403,405,406を、検出タイミング信号401から、一意に設定することができる。
【0068】
このようにして、タイミング制御部340は、タグ再放射パルス103及びタグ再々放射パルス104が出力される期間(再放射パルス出力期間及び再々放射パルス出力期間)、送信増幅器350がオンされるようなオンオフ制御信号を、送信増幅器350に出力する。
【0069】
これにより、端末300から、再放射パルス及び再々放射パルスが送信される。そして、端末300が再放射パルスを受信してから、当該再放射パルスの検波信号に応じて生成される再々放射パルスを送信するまでに要する、端末300の回路遅延時間後に、再々放射パルスが、送信されるようになる。この結果、基地局200は、再放射パルスの受信タイミングと、再々放射パルスの受信タイミングとの時間差から、端末300の回路遅延時間を算出することができる。この結果、基地局200は、端末300の個体差、経年変化、及び、経時変化を補正することができるので、基地局200と端末300間の離間距離を良好な精度で測距することができるようになる。
【0070】
以上のように、本実施の形態によれば、タイミング制御部340は、基地局200から送信されたパルス信号の受信タイミング、及び、受信パルス信号を受信してから、当該受信パルス信号の検波信号に応じて生成される送信パルス信号を送信するまでに要する回路遅延時間の代表値に基づいた制御信号を、送信増幅器350に出力する。具体的には、タイミング制御部340は、基地局200から送信されたパルス信号の検波信号に応じて生成された再放射パルス、及び、再放射パルスの検波信号に応じて生成された再々放射パルスを、送信増幅器350が増幅するようなオンオフ制御する制御信号を、送信増幅器350に出力するようにした。すなわち、タイミング制御部340は、再放射パルス出力期間及び再々放射パルス出力期間、送信増幅器350をオンするオンオフ制御信号を出力する。
【0071】
これにより、端末300から、基地局200から送信される送信パルス信号に対する応答UWB信号として再放射パルスが送信され、再放射パルスに対する応答UWB信号として再々放射パルスが送信されるようになる。そして、基地局200は、再放射パルスの受信タイミングと再々放射パルスの受信タイミングとの差を測定することにより、端末300の回路遅延時間を取得することができる。これにより、基地局200は、端末300の回路遅延時間分を補正した、基地局200と端末300間の空間伝搬時間を、高い測定精度で取得することができる。この結果、基地局200と端末300間の離間距離の測定精度を向上させることができるようになる。
【0072】
(実施の形態2)
上述したように、リーダから一定周期でUWBパルスを送信することにより、リーダとタグ間の測距を行うことが可能である。ところで、パルス通信では、一定周期のタイミングでパルスを送信したり、送信しなかったりするOOK(On-Off-keying)変調により、データを同時に送信することができる。すなわち、UWBパルス通信において、データに応じてリーダ側でUWBパルスをオン/オフすることにより、データを送信することができる。リーダは、このデータ送信を利用して、タグの動作モードを、通常動作モード又は回路キャリブレーションモードのいずれかに切り替えるモード切り替え信号を通知することができる。ここで、通常動作モードとは、タグから再放射パルスのみ送出してタグとリーダ間の測距を行うモードである。また、回路キャリブレーションモードとは、タグから再放射パルス及び再々放射パルスを送出して、タグの回路遅延時間を測定し、補正するモードである。
【0073】
[基地局の構成]
図6は、本発明の実施の形態2に係る基地局の構成を示す図である。なお、図6の本実施の形態に係る基地局において、図3と共通する構成部分には、図3と同一の符号を付して説明を省略する。図6に示す基地局200Aは、図3に示す基地局200に対して、送信パルス発生部202に代えて、送信パルス発生部202Aを備える。
【0074】
送信パルス発生部202Aは、送信モード切り替え信号を入力とし、送信モード切り替え信号に応じたパルス信号系列を発生する。送信モード切り替え信号が通常動作モードを示す場合、送信パルス発生部202Aは、通常動作モードを表すパルス信号系列として例えば、「0110」を発生する。送信モード切り替え信号が回路キャリブレーションモードを示す場合、送信パルス発生部202Aは、回路キャリブレーションモードを表すパルス信号系列として、例えば「1001」を発生する。
【0075】
[端末の構成]
図7は、本発明の実施の形態2に係る端末の構成を示す図である。なお、図7の本実施の形態に係る端末において、図4と共通する構成部分には、図4と同一の符号を付して説明を省略する。図7に示す端末300Aは、図4に示す端末300に対して、タグ送受信回路330及びタイミング制御部340に代えて、タグ送受信回路330A及びタイミング制御部340Aを備える。タグ送受信回路330Aは、タグ送受信回路330に対し、送信モードデコード部335を更に追加した構成を採る。
【0076】
送信モードデコード部335は、コンパレータ333によって2値化されたデジタル信号から、送信モード切り替え信号を抽出し、基地局200Aからの要求が通常動作モードか回路キャリブレーションモードのいずれかであるかを判定する。送信モードデコード部335は、送信モードの判定結果をタイミング制御部340Aに出力する。
【0077】
タイミング制御部340Aは、送信モードの判定結果に応じたオンオフ制御信号を生成し、生成したオンオフ制御信号を送信増幅器350に出力する。図8を用いて、タイミング制御部340Aから出力されるオンオフ制御信号について説明する。
【0078】
図8は、オンオフ制御信号の一例を示す図である。なお、図8において、図5と共通するパルス信号には共通の符号を付している。上述したように、これらオンオフ制御信号がハイレベルとなる期間、送信増幅器350がオンされる。
【0079】
図8において、オンオフ制御信号402は、回路キャリブレーションモード時のオンオフ制御信号である。オンオフ制御信号402は、タグ受信パルス102が端末300Aの内部回路を経由してタグ再放射パルス103としてタグ送受信回路330Aから出力される期間(再放射パルス出力期間)の直前のタイミングから、タグ再々放射パルス104がタグ送受信回路330Aから出力される期間(再々放射パルス出力期間)までを含めた期間(403)、ハイレベルとなっている。
【0080】
一方、オンオフ制御信号501は、通常動作モード時のオンオフ制御信号である。オンオフ制御信号501は、タグ受信パルス102が端末300Aの内部回路を経由してタグ再放射パルス103としてタグ送受信回路330Aから出力される期間(再放射パルス出力期間)の直前から、タグ再放射パルス103がタグ送受信回路330Aから出力される期間(再放射パルス出力期間)を含む期間(502)、ハイレベルとなっている。
【0081】
このように、基地局200Aから送信モードとして、通常動作モードが通知される場合、タイミング制御部340Aは、タグ再放射パルス103が出力される期間(再放射パルス出力期間)だけ、送信増幅器350がオンされるようなオンオフ制御信号を、送信増幅器350に出力する。これにより、回路キャリブレーションモード時以外においては、タグ再々放射パルス104が送出されないようになるため、端末300Aから不要な電波の放射が低減される。この結果、複数タグが存在する場合やマルチパス環境においてパルスが複雑に伝搬するシステムにおいて、モード切替により回路キャリブレーションを容易にするとともに消費電力が低減されるようになる。
【0082】
以上のように、本実施の形態によれば、送信モード切り替え信号に基づいて、端末300Aは、回路遅延時間を測定する回路キャリブレーションモードか、基地局200Aと端末300Aとの離間距離を測定する測距モードか否かを判定する送信モードデコード部335を具備する。そして、タイミング制御部340Aは、回路キャリブレーションモード時に、送信増幅器350が再放射パルス及び再々放射パルスを増幅するようなオンオフ制御信号を、送信増幅器350に出力する。すなわち、タイミング制御部340Aは、回路キャリブレーションモード時に、再放射パルス出力期間及び再々放射パルス出力期間、送信増幅器350をオンするオンオフ制御信号を出力する。更に、タイミング制御部340Aは、通常動作モード時に、送信増幅器350が再放射パルスを増幅するようなオンオフ制御信号を、送信増幅器350に出力するようにした。
【0083】
これにより、端末300Aの回路遅延時間が、温度上昇等により変動する場合においても、基地局200Aは、例えば、定期的に回路キャリブレーションモードを示す送信モード切り替え信号を端末300Aに通知することにより、端末300Aから基地局200Aに対し、再放射パルス及び再々放射パルスが送出されるようになる。この結果、基地局200Aは、端末300Aの回路遅延時間を取得することができ、基地局200Aと端末300Aとの離間距離を精度良く測定することができる。また、回路遅延時間が変動しないとみなせる期間内では、基地局200Aは、通常動作モードを示す送信モード切り替え信号を端末300Aに通知することにより、端末300Aから基地局200Aに対し、再々放射パルスが送信されなくなる。この結果、不要な電波の放射が低減され、複数タグが存在する場合やマルチパス環境においてパルスが複雑に伝搬するシステムにおいて、モード切替により回路キャリブレーションを容易にするとともに消費電力が低減されるようになる。
【0084】
また、基地局200Aは、UWBパルスをオン/オフすることにより、回路キャリブレーションモード又は通常動作モードのいずれかを表すパルス信号系列を用いて、送信モード切り替え信号を通知することができる。このように、測距のための送信パルス信号を生成する送信パルス発生部202Aを流用して、送信モード切り替え信号を生成することができ、送信モード切り替え信号を生成するための新たな回路の追加を回避することができる。
【0085】
なお、検出タイミング信号401、及びオンオフ制御信号402、404と同様に、オンオフ制御信号501において、ハイレベルとなる期間は、UWBパルス幅に対してある程度広い時間間隔とする。このようにすることで、温度変化等により、オンオフ制御信号501と再放射パルスとが非同期となるのを防ぐことができる。
【0086】
また、回路キャリブレーションモード時のオンオフ制御信号は、オンオフ制御信号402に限られず、図5のオンオフ制御信号404を用いるようにしても良い。
【0087】
(実施の形態3)
実施の形態1で述べたように、タグから送出される再放射パルス及び再々放射パルスを用いて、タグ内の回路遅延時間が測定される。このとき、マルチパス環境においては、再放射パルスが近傍の反射体に反射して、再々放射パルスと区別がつかない場合が考えられる。そこで、本実施の形態では、リーダは、すべてのタグからのパルスに対し、到来方向を推定し、最も短時間で到達するパルスすなわち先頭波を再放射パルスと判定し、その到来方向と同じ方向から到来するパルスを再々放射パルスと判定する。
【0088】
[基地局の構成]
図9は、本発明の実施の形態に係る基地局の構成を示す図である。なお、図9の本実施の形態に係る基地局において、図3と共通する構成部分には、図3と同一の符号を付して説明を省略する。図9に示す基地局200Bは、図3に示す基地局200に対して、電波到来方向推定部211を更に追加した構成を採る。
【0089】
電波到来方向推定部211は、端末300から送信されるすべての受信パルス信号に対し、その到来方向を推定する。具体的には、基地局200Bは、複数のアンテナ(アレーアンテナ)を有し、電波到来方向推定部211は、複数のアンテナで受信した受信パルス信号群に対して、到来方向推定アルゴリズムを適用することにより、受信パルス信号の到来方向を求める。到来方向推定アルゴリズムとしては、複数アンテナで受信した受信パルス信号群を、各受信パルス信号の位相を変化させながら加算して、加算値のピークを検出する方法を用いることができる。又は、到来方向推定アルゴリズムとして、MUSIC若しくはESPRITなどの相関行列の固有ベクトルを用いて算出する高分解能推定方法を用いることができる。
【0090】
そして、電波到来方向推定部211は、最も短時間で到達するパルス、すなわち先頭波を再放射パルスと判定し、その到来方向と同じ方向から到来するパルスを再々放射パルスと判定する。パルス検出部205は、電波到来方向推定部211により判定された再放射パルスと再々放射パルスの到来時間を検出する。そして、距離算出部206は、再放射パルスと再々放射パルスの到来時間差より、実施の形態1の[無線測距システムの概要]で説明した手順に従って、基地局200Bと端末300との間に要する空間伝搬時間及び基地局200Bと端末300との間の離間距離を算出する。
【0091】
以上のように、本実施の形態では、基地局200Bは、電波到来方向推定部211を更に具備し、電波到来方向推定部211は、最も短時間で到達するパルスを再放射パルスと判定し、その到来方向と同じ方向から到来するパルスを再々放射パルスと判定する。そして、距離算出部206は、再放射パルスと同一方向から到来する再々放射パルスとの受信タイミングの時間差から、端末300の回路遅延時間を測定する。これにより、複数タグが存在し、パルスが複数到来する場合やマルチパス環境のように、マルチパス反射波が混在するような場合においても、基地局200Bは、混在する受信パルス信号から、再放射パルスと再々放射パルスを抽出することができる。この結果、基地局200Bは、端末300の回路遅延時間を測定することができ、回路遅延時間による誤差を除去した精度が高い測距を行うことができるようになる。
【0092】
(実施の形態4)
実施の形態2では、基地局が主導となり回路キャリブレーションモードへの移行を決定し、基地局が端末にその旨の通知をする場合について説明した。本実施の形態では、端末が主導となり回路キャリブレーションモードへの移行を決定する場合について説明する。
【0093】
本実施の形態では、端末は、再放射パルスと再々放射パルスとに異なる符号系列を付加する。
【0094】
図10は、本発明の実施の形態に係る端末の構成を示すブロック図である。なお、図10の本実施の形態に係る端末において、図4と共通する構成部分には、図4と同一の符号を付して説明を省略する。
【0095】
再放射用符号系列記憶部410は、端末400から送信される再放射パルスに付加する符号系列(再放射用符号系列)を記憶する。再放射用符号系列記憶部410は、記憶した符号系列を符号系列切換部440に出力する。
【0096】
再々放射用符号系列記憶部420は、端末400から送信される再々放射パルスに付加する符号系列(再々放射用符号系列)を記憶する。再々放射用符号系列記憶部420は、記憶した符号系列を符号系列切換部440に出力する。
【0097】
なお、ここで、再放射用符号系列と再々放射用符号系列とは、異なる符号系列である。これら符号系列は、後述の符号系列切換部440において、再放射パルス出力期間と再々放射パルス出力期間とで切り替えられて、送信増幅器450に出力される。
【0098】
キャリブレーションモード制御部430は、回路キャリブレーションモードに移行するための制御信号を生成する。端末400の回路遅延時間は、回路内に使用される部品のバラツキ、或いは温度特性等の原因から発生する。そこで、例えば定期的に端末400を回路キャリブレーションモードに移行させ、後述の基地局500が回路遅延時間を測定することにより、例えば温度が変化する場合においても、温度変化に起因して回路遅延時間が変化することによる測距誤差を軽減することができる。そこで、キャリブレーションモード制御部430は、例えば定期的に、回路キャリブレーションモードに移行することを示す制御信号を符号系列切換部440に出力する。
【0099】
符号系列切換部440は、タイミング制御部340から出力されるオンオフ制御信号、再放射用符号系列、再々放射用符号系列、及び、キャリブレーションモード制御部430から出力される制御信号を入力とする。符号系列切換部440は、回路キャリブレーションに移行することを示す制御信号が入力されると、再放射パルス及び再々放射パルスに付加する符号系列を、再放射パルスと再々放射パルスとで、異なる付加符号系列に切り替える。
【0100】
具体的には、符号系列切換部440は、オンオフ制御信号を用いて、再放射パルス出力期間と再々放射パルス出力期間とを区別する信号を生成する。タイミング制御部340から出力されるオンオフ制御信号は、図5に示したように、再放射パルスが送信増幅器450に出力される期間(再放射パルス出力期間)及び再々放射パルスが送信増幅器450に出力される期間(再放射パルス出力期間)で送信増幅器450がオンになるように制御する信号である。そのため、符号系列切換部440は、オンオフ制御信号に基づいて、再放射パルス出力期間と再々放射パルス出力期間とを区別する信号を生成することができる。
【0101】
そして、符号系列切換部440は、生成した信号に基づいて、再放射用符号系列又は再々放射用符号系列のどちらか一方を選択する。具体的には、符号系列切換部440は、生成した信号が、再放射パルス出力期間を示す場合、再放射用符号系列を選択し、生成した信号が、再々放射パルス出力期間を示す場合、再々放射用符号系列を選択する。符号系列切換部440は、選択した符号系列を送信増幅器450に出力する。
【0102】
このようにして、符号系列切換部440は、再放射パルスと再々放射パルスとに付加される符号系列を変更し、変更後の符号系列を送信増幅器450に出力する。
【0103】
送信増幅器450は、タイミング制御部340から出力されるオンオフ制御信号及び符号系列切換部440から出力される符号系列に基づいてオン/オフ動作する。具体的には、オンオフ制御信号がオン期間中であり、符号系列が「1」の場合には、送信増幅器450は、UWBパルス発生部334から出力される送信パルス信号を増幅する。増幅後の送信パルス信号は、送信アンテナ360を介して、基地局500に送信される。
【0104】
一方、オンオフ制御信号がオフ期間中、又は、符号系列が「0」の場合には、送信増幅器450は動作を停止する。従って、オフ期間中、又は、符号系列が「0」の場合、送信増幅器450の出力は、無信号となる。
【0105】
図11は、本発明の実施の形態に係る基地局の構成を示すブロック図である。なお、図11の本実施の形態に係る基地局500において、図3と共通する構成部分には、図3と同一の符号を付して説明を省略する。
【0106】
パルス検出部510は、端末400から送信されるパルス(再放射パルス及び再々放射パルス)を受信アンテナ204を介して受信し、タイミング信号出力部201から出力される短周期クロック信号に同期してパルスを検波して、受信パルス信号を検出する。パルス検出部510は、検出した受信パルス信号を符号系列検出部520に出力する。
【0107】
符号系列検出部520は、タイミング信号出力部201から出力される長周期クロック信号を用いて、パルス検出部510から出力される受信パルス信号から、再放射用符号系列又は再々放射用符号系列を検出する。なお、符号系列検出部520における符号検出方法については、後述する。また、符号系列検出部520は、再放射用符号系列又は再々放射用符号系列を検出した場合に、これら検出に用いた受信パルス信号の受信タイミングの情報を距離算出部206に出力する。
【0108】
図12は、基地局500と端末400との間で送受信されるパルス系列の一例を示している。
【0109】
基地局500は、基準パルス信号である送信パルス信号を、長周期クロック信号の周期ごとに、一定間隔(パルス間隔)で生成して、生成した送信パルス信号を送信パルス系列600として、送信アンテナ203から送信する。図12において、送信パルス601は、基地局500から送信された最初の送信パルスである。送信パルス602は、一定間隔が経過してから送信された2つ目の送信パルスである。以降の送信パルス603から送信パルス607は、一定間隔ごとに送信される送信パルスである。
【0110】
端末400は、基地局500から送信された送信パルス系列600(送信パルス601〜607)を受信し、各送信パルスに対する再放射パルスを基地局500に向けて送信する。ここで、端末400は、再放射パルスを送信する際、再放射パルスを搬送波と見なして、符号系列に応じて再放射パルスに対してASK変調を行う。ASK変調により、再放射パルスに対して再送用符号系列が付加される。
【0111】
一例として、再送用符号系列が2進数で「1010011」と表される場合について考える。この時、送信パルス系列600(送信パルス601〜607)を受信した端末400が、再放射するパルス系列は、パルス系列610(パルス611〜614)となる。
【0112】
具体的には、再送用符号系列の先頭ビットは「1」であるので、端末400は、パルス611を送信パルス601に対する再放射パルスとして送信する。次に、再送用符号系列の2ビット目は「0」であることから、端末400は、送信パルス602に対する再放射パルスを送信しない。次に、再送用符号系列の3ビット目は「1」であることから、端末400は、パルス612を送信パルス603に対する再放射パルスとして送信する。次に、再送用符号系列の4ビット目及び5ビット目は「0」であることから、端末400は、送信パルス604及び送信パルス605に対する再放射パルスを送信しない。次に再送用符号系列の6ビット目及び7ビット目は「1」であることから、端末400は、パルス613及びパルス614をそれぞれ送信パルス606及び送信パルス607に対する再放射パルスとして送信する。
【0113】
このようにして、端末400は、パルス系列610(パルス611〜614)を用いて、再放射用符号系列「1010011」を送信する。
【0114】
同様にして、端末400は、パルス系列620(パルス621〜パルス624)を用いて、再々放射用符号系列「1010111」を送信する。
【0115】
基地局500は、パルス系列610及びパルス系列620を受信する。そして、符号系列検出部520は、受信したこれらパルス系列から、再放射用符号系列及び再々放射用符号系列を検出し、受信したパルスが、再放射パルスか再々放射パルスか判定する。
【0116】
例えば、符号系列検出部520は、パルス系列610及びパルス系列620と、再放射用符号系列及び再々放射用符号系列との相関演算をそれぞれ行うことにより、再放射用符号系列又は再々放射用符号系列を検出する。すなわち、符号系列検出部520は、パルス系列610及びパルス系列620と再放射用符号系列との相関演算結果が既定の値を超えた場合、再放射用符号系列を検出したと判定する。また、符号系列検出部520は、パルス系列610及びパルス系列620と再々放射用符号系列との相関演算結果が既定の値を超えた場合、再々放射用符号系列を検出したと判定する。
【0117】
なお、基地局500には、パルス系列610及びパルス系列620に含まれる再放射パルス及び再々放射パルスが交互に到着する。図12を用いて説明すると、基地局500には、パルス611、パルス621、パルス612、パルス622、パルス613、パルス623、パルス614、パルス624の順に、再放射パルス及び再々放射パルスが基地局500に到着する。
【0118】
そこで、符号系列検出部520は、タイミング信号出力部201から出力される長周期クロック信号を用いて、長周期クロック信号をずらしながら、パルス間隔毎に、パルス系列610及びパルス系列620と再放射用符号系列及び再々放射用符号系列との相関演算を行う。
【0119】
そして、符号系列検出部520は、再放射用符号系列が検出されたパルス系列を、再放射パルスが含まれるパルス系列と判定する。また、符号系列検出部520は、再々放射用符号系列が検出されたパルス系列を、再々放射パルスが含まれるパルス系列と判定する。
【0120】
符号系列検出部520は、再放射用符号系列が検出されたパルス系列の受信タイミングを、再放射パルスの受信タイミングの情報として、距離算出部206に出力する。また、符号系列検出部520は、再々放射用符号系列が検出されたパルス系列の受信タイミングを、再々放射パルスの受信タイミングの情報として、距離算出部206に出力する。
【0121】
このようにして、基地局500は、再々放射パルスを検出した場合に、端末400が回路キャリブレーションモードに切り替わったことを検知することができる。そのため、端末400から基地局500への回路キャリブレーションに移行する旨の通知をせずとも、基地局500は、回路キャリブレーションに移行したことを認識することができる。また、端末400を回路キャリブレーションモードに移行させる制御を外部から行うことなく、端末400は、自律的に回路キャリブレーションモードに移行することができる。これにより、無線測距システムを簡略化することができるので、システムにかかるコストを低く抑えることができる。
【0122】
また、基地局500と端末400との間で、回路キャリブレーションに移行する旨の通信をする必要が無いため、一定期間内に測位できるタグ数に影響を与えずに、基地局500は、端末400の回路遅延時間を測定することができる。さらに、回路キャリブレーションモードに移行する旨の通信が不要のため、端末400及び基地局500の消費電力を抑えることができる。
【0123】
また、基地局500は、パルス系列610及びパルス系列620に付加された符号系列を検出することにより、受信パルスが再放射パルスであるか、或いは、再々放射パルスであるかを判定することができる。そのため、マルチパス環境下においても、基地局500は、最初に到来した再放射パルス及び再々放射パルスを用いることにより、端末400の回路遅延時間を測定することができる。
【0124】
なお、再放射符号系列及び再々放射符号系列は、端末400の固有のIDから一意に定まる符号としてもよい。この場合には、複数の端末から再放射パルス及び再々放射パルスが送信される場合においても、基地局500は、各端末を区別し、かつ、再放射パルス及び再々放射パルスを端末毎に抽出することが出来るため、各端末の回路遅延時間を測定することができる。
【0125】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態2で説明したように、基地局が端末に回路キャリブレーションモードに移行する旨の通知をする場合において、端末が、再放射パルスと再々放射パルスとに異なる符号系列を付加する場合について説明する。
【0126】
[基地局の構成]
図13は、本発明の実施の形態に係る基地局の構成を示すブロック図である。なお、図13の本実施の形態に係る基地局において、図6及び図11と共通する構成部分には、図6及び図11と同一の符号を付して説明を省略する。
【0127】
符号系列検出部520Aは、タイミング信号出力部201から出力される長周期クロック信号を用いて、パルス検出部510から出力される受信パルス信号から、再放射用符号系列又は再々放射用符号系列を検出する。なお、符号系列検出部520Aにおける符号検出方法については、後述する。また、符号系列検出部520Aは、再放射用符号系列又は再々放射用符号系列を検出した場合に、これら検出に用いた受信パルス信号の受信タイミングの情報を距離算出部206に出力する。
【0128】
図14は、本発明の実施の形態に係る端末の構成を示すブロック図である。なお、図14の本実施の形態に係る端末700において、図7及び図10と共通する構成部分には、図7及び図10と同一の符号を付して説明を省略する。
【0129】
送信モードデコード部710は、送信モードデコード部335と同様に、コンパレータ333によって2値化されたデジタル信号から、送信モード切り替え信号を抽出し、基地局500Aからの要求が通常動作モードか回路キャリブレーションモードのいずれかであるかを判定する。送信モードデコード部710は、送信モードの判定結果をタイミング制御部340A及びキャリブレーションモード制御部720に出力する。
【0130】
キャリブレーションモード制御部720は、送信モードの判定結果が回路キャリブレーションモードの場合、キャリブレーションモード制御部430と同様に、回路キャリブレーションモードに移行するための制御信号を生成する。そして、キャリブレーションモード制御部720は、回路キャリブレーションモードに移行することを示す制御信号を符号系列切換部730に出力する。
【0131】
符号系列切換部730は、タイミング制御部340Aから出力されるオンオフ制御信号、再放射用符号系列、再々放射用符号系列、及び、キャリブレーションモード制御部720から出力される制御信号を入力とする。符号系列切換部730は、回路キャリブレーションに移行することを示す制御信号が入力されると、再放射パルス及び再々放射パルスに付加する符号系列を、再放射パルスと再々放射パルスとで、異なる符号系列に切り替える。
【0132】
具体的には、符号系列切換部730は、オンオフ制御信号を用いて、再放射パルス出力期間と再々放射パルス出力期間とを区別する信号を生成する。タイミング制御部340Aから出力されるオンオフ制御信号は、図5に示したように、再放射パルスが出力される期間(再放射パルス出力期間)及び再々放射パルスが出力される期間(再放射パルス出力期間)で送信増幅器450がオンになるように制御する信号である。そのため、符号系列切換部730は、オンオフ制御信号に基づいて、再放射パルス出力期間と再々放射パルス出力期間とを区別する信号を生成することができる。
【0133】
そして、符号系列切換部730は、生成した信号に基づいて、再放射用符号系列又は再々放射用符号系列のどちらか一方を選択する。具体的には、符号系列切換部730は、生成した信号が、再放射パルス出力期間を示す場合、再放射用符号系列を選択し、生成した信号が、再々放射パルス出力期間を示す場合、再々放射用符号系列を選択する。符号系列切換部730は、選択した符号系列を送信増幅器450に出力する。
【0134】
このようにして、符号系列切換部730は、再放射パルスと再々放射パルスとに付加される符号系列を変更し、変更後の符号系列を送信増幅器450に出力する。
【0135】
図15は、基地局500Aと端末700との間で送受信されるパルス系列の一例を示している。
【0136】
図15において、送信パルス系列810は、基地局500Aから送信されるパルス系列を示す。なお、送信パルス系列810のうち、パルス群800は、符号系列「11010」に応じて、基準パルス信号をASK変調することにより得られたパルス群である。ここで、符号系列「11010」は、回路キャリブレーションを示す符号系列である。パルス群800には、符号系列「11010」の系列長(図15の例では5個)のASK変調後のパルスが含まれている。以下、回路キャリブレーションを示す符号系列「11010」が用いられるパルス群800に含まれるパルスが出力される期間を、パルス群出力期間と呼ぶ。
【0137】
基地局500Aは、パルス群800を繰り返して、送信パルス系列810として送信する。
【0138】
そして、端末700は、実施の形態4と同様に、再放射パルスに再放射用符号系列を付加して送信する。ただし、本実施の形態では、実施の形態4とは異なり、端末700は、パルス群800に含まれる送信パルスのうち、最初に到着する送信パルスに対する再放射パルスの再放射パルス出力期間の先頭タイミングからパルス群出力期間が終了するまでの間、再放射用符号系列のうち同一の符号を用いる。
【0139】
図15において、パルス系列820は、再放射用符号系列として「101001」が付加された様子を示している。すなわち、符号系列切換部730は、最初のパルス群800に対する再放射パルスに対しては、「1」を用いて、ASK変調することにより、再放射用符号系列を付加する。そして、符号系列切換部730は、2番目のパルス群800に対する再放射パルスに対しては、「0」を用いて、ASK変調することにより、再放射用符号系列を付加する。以降、3〜6番目のパルス群800に対する再放射パルスに対しては、「1」、「0」、「0」、「1」を用いて、ASK変調することにより、再放射用符号系列を付加する。
【0140】
同様に、本実施の形態では、端末700は、パルス群800に含まれる送信パルスのうち、最初に到着する送信パルスに対する再々放射パルスの再々放射パルス出力期間の先頭タイミングからパルス群出力期間が終了するまでの間、再々放射用符号系列のうち同一の符号を用いる。
【0141】
図15において、パルス系列830は、再々放射用符号系列として「101011」が付加された様子を示している。すなわち、符号系列切換部730は、最初のパルス群800に対する再々放射パルスに対しては、「1」を用いて、ASK変調することにより、再々放射用符号系列を付加する。そして、符号系列切換部730は、2番目のパルス群800に対する再々放射パルスに対しては、「0」を用いて、ASK変調することにより、再々放射用符号系列を付加する。以降、3〜6番目のパルス群800に対する再々放射パルスに対しては、「1」、「0」、「1」、「1」を用いて、ASK変調することにより、再々放射用符号系列を付加する。
【0142】
このように、符号系列切換部730は、回路キャリブレーションモードへの移行指示を示す符号系列の符号長分のパルスから構成されるパルス群ごとに、再放射用符号系列又は再々放射用符号系列を順次付加する。
【0143】
このようにして、基地局500Aから送信される送信パルス系列から、端末700の送信モードデコード部710が、事前に決定される回路キャリブレーションモードを示す符号系列を検出した場合に、端末700は回路キャリブレーションモードに移行する。そして、端末700は、上述の手順により再放射パルス及び再々放射パルスを送信する。
【0144】
基地局500Aは、パルス群ごとに付加される再放射用符号系列及び再々放射用符号系列を検出する。なお、再放射用符号系列及び再々放射用符号系列が付加されたパルス群には、回路キャリブレーションモードを示す符号系列が含まれている。また、実施の形態4で述べたように、基地局500Aには、再放射パルス及び再々放射パルスが交互に到着する。
【0145】
そこで、符号系列検出部520Aは、タイミング信号出力部201から出力される長周期クロック信号を用いて、長周期クロック信号をずらしながら、パルス間隔毎に、パルス系列820及びパルス系列830と回路キャリブレーションモードを示す符号系列との相関演算を行う。
【0146】
更に、符号系列検出部520Aは、タイミング信号出力部201から出力される長周期クロック信号を用いて、パルス群出力間隔毎に、パルス系列820及びパルス系列830と回路キャリブレーションモードを示す符号系列との相関演算結果と、再放射用符号系列及び再々放射用符号系列との相関演算を行う。そして、得られた相関演算結果が、既定の値を超えた場合、符号系列検出部520Aは、再放射用符号系列又は再々放射用符号系列を検出したと判定する。そして、符号系列検出部520Aは、再放射用符号系列が検出されたパルス系列を、再放射パルスが含まれるパルス系列と判定する。また、符号系列検出部520Aは、再々放射用符号系列が検出されたパルス系列を、再々放射パルスが含まれるパルス系列と判定する。
【0147】
符号系列検出部520Aは、再放射用符号系列が検出されたパルス系列の受信タイミングを、再放射パルスの受信タイミングの情報として、距離算出部206に出力する。また、符号系列検出部520Aは、再々放射用符号系列が検出されたパルス系列の受信タイミングを、再々放射パルスの受信タイミングの情報として、距離算出部206に出力する。これにより、基地局500Aは、端末700の回路遅延時間を測定することができるようになる。
【0148】
このようにして、基地局500Aから端末700に、回路キャリブレーションモードに移行することを通知する場合には、端末700は、回路キャリブレーションモードを通知する符号系列長毎に、再放射パルスに再放射用符号系列を付加し、再々放射パルスに再々放射用符号系列を付加する。基地局500Aは、測距のための送信パルス信号を生成する送信パルス発生部202Aを流用して、送信モード切り替え信号を生成することができるため、送信モード切り替え信号を生成するための新たな回路の追加を回避することができる。また、端末700は、コンパレータ333の検出結果を流用して、送信モード切り替え信号を検出することが出来るため、複雑な回路を追加せずにコストの増加を抑えつつ、基地局500Aは、端末700を回路キャリブレーションモードに制御することができる。
【0149】
また、基地局500Aは、パルス系列820及びパルス系列830に付加された符号系列を検出することにより、受信パルスが再放射パルスであるか、或いは、再々放射パルスであるかを判定することができる。そのため、マルチパス環境下においても、基地局500Aは、最初に到来した再放射パルス及び再々放射パルスを用いることにより、端末700の回路遅延時間を測定することができる。
【0150】
(実施の形態6)
本実施の形態では、反射物が存在するマルチパス環境においても、精度良く測位することができる無線測距システムについて説明する。
【0151】
反射物が存在するマルチパス環境においては、複数の反射波が基地局において受信される。
【0152】
図16は、本実施の形態に係る無線測距システムにおける基地局、端末、及び、反射物の配置の一例を示す図である。なお、基地局及び端末の構成は、実施の形態1から実施の形態5で説明したいずれの構成を採ってもよい。
【0153】
図16において、経路(1)及び経路(2)は、基地局から送信された送信パルスが、端末に到達するまでの経路を表す。図16に示すように、送信パルスが基地局から端末に到達する経路には、2種類の経路が存在する。経路(1)は、送信パルスが、基地局から端末に直接到達する経路である。一方、経路(2)は、送信パルスが、基地局から反射物の方向に送信され、反射物で反射した後に端末へ到達する経路である。
【0154】
同様に、図16において、経路(3)及び経路(4)は、端末から送信された送信パルスが、基地局に到達するまでの経路を表す。図16に示すように、送信パルスが端末から基地局に到達する経路には、2種類の経路が存在する。経路(3)は、送信パルスが、端末から基地局に直接到達する経路である。一方、経路(4)は、送信パルスが、端末から反射物の方向に送信され、反射物で反射した後に基地局へ到達する経路である。
【0155】
図17は、基地局と端末との間に、図16に示すように、2種類の経路がある場合の送受信パルス信号を示している。図17において、図中、横軸は時間を示し、縦軸はパルスの振幅を示す。なお、図17は、送受信パルス信号のうち、再放射パルスに関するパルス信号のみを示している。
【0156】
図17Aは、基地局から送信された送信パルス信号を、端末が受信した受信パルス信号を表している。受信パルス901は、基地局から送信され、端末に直接到来する(経路(1))到来波(直接波)を示している。受信パルス902は、基地局から送信された送信パルスが、反射物により反射されて端末に到来する(経路(2))到来波(反射波)を示している。
【0157】
図17Bは、受信パルス901及び受信パルス902を受信した端末から送信される送信パルス信号(再放射パルス)を示している。再放射パルス911は、受信パルス901に対するパルスを示し、再放射パルス912は、受信パルス902に対するパルスを示す。
【0158】
図17Cは、端末が、図17Bに示した送信パルス信号(再放射パルス)を送信した場合に、基地局が受信する受信パルス信号を示している。
【0159】
受信パルス921は、端末から送信された再放射パルス911が、基地局に直接到来するパルスを示している。すなわち、受信パルス921は、基地局から送信され、直接波として端末で受信された受信パルス901が、端末から再放射パルス911として送信され、直接波として基地局で受信される経路(経路(1)及び経路(3))をたどったパルスである。
【0160】
受信パルス922は、以下のパルス(1)及びパルス(2)の合成波である。
【0161】
パルス(1):基地局から送信され、直接波として端末で受信された受信パルス901が、端末から再放射パルス911として送信され、反射波として基地局で受信される到来経路(経路(1)及び経路(4))をたどったパルス。
パルス(2):基地局から送信され、壁等の反射物で反射され、反射波として端末で受信された受信パルス902が、端末から再放射パルス912として送信され、直接波として基地局で受信される到来経路(経路(2)及び経路(3))をたどったパルス。
【0162】
受信パルス923は、端末から送信された再放射パルス912が、壁等の反射物により反射され、基地局に到来するパルスを示している。すなわち、受信パルス923は、基地局から送信され、壁等の反射物で反射され、反射波として端末で受信された受信パルス902が、端末から再放射パルス912として送信され、壁等の反射物で反射され、反射波として基地局で受信される到来経路(経路(2)及び経路(4))をたどったパルスである。
【0163】
図18は、基地局と端末との間に図16に示すように、2種類の経路がある場合の送受信パルス信号を示している。図18において、図中、横軸は時間を示し、縦軸はパルスの振幅を示す。
【0164】
図18Aは、端末が、図17Aに示される受信パルス信号を受信した場合に、端末から送信される送信パルス信号を示している。なお、図18Aにおいて、図17Bと同様のパルスに対しては同一の符号を付し説明を省略する。
【0165】
図18Aにおいて、パルス913は、端末が、再放射パルス911を受信し、再放射パルス911に対する再送信されるパルスである。すなわち、パルス913は、パルス901に対する再々放射パルスである。
【0166】
ここで、端末は、受信パルス信号に含まれる受信パルスの全てを再々送信するのではなく、端末の回路遅延時間を測定するのに必要となる受信パルスのみを再々送信する。例えば、端末は、受信パルスの強度を測定し、強度が最も大きい受信パルスのみを再々送信するように制御する。一例として、図17Aに示す受信パルス信号を例に説明する。図17Aから分かるように、受信パルス901の強度は受信パルス902の強度に比べ大きい。そのため、端末は、受信パルス901に対する再々放射パルス913のみを送信し、受信パルス902に対する再々放射パルスを送信しないよう制御する。上述したように、受信パルス902は、基地局から送信された受信パルス901が、壁等の反射物により反射されて端末に到来する到来波(反射波)である。したがって、端末が、受信パルス901に対する再々放射パルス913のみを再々送信し、受信パルス902に対する再々放射パルスを送信しないよう制御することにより、端末から不要なパルスが送信されなくなる。そして、これにより、基地局のエリア内に存在する他のタグに対する影響を軽減することができるようになる。
【0167】
なお、図18Bは、端末が、図18Aに示される送信パルス信号を送信した場合に、基地局が受信する受信パルス信号を表している。なお、図18Bにおいて、図17Cと同様のパルスに対しては同一の符号を付し説明を省略する。
【0168】
受信パルス924は、端末から送信された再々放射パルス913が、基地局に直接波として受信されるパルスを表す。受信パルス925は、端末から送信された再々放射パルス913が、反射物で反射され、基地局が受信したパルスを表す。すなわち、受信パルス924及び受信パルス925は、受信パルス901が端末により再々放射され、基地局が再び受信したパルスである。
【0169】
すなわち、上記各実施の形態に係る端末のタイミング制御部は、受信パルス902に対して粗同期を取った検出タイミングから、所定時間経過後にハイレベルとなるようなオンオフ制御信号を生成する。このとき、所定時間を、例えば、端末の回路遅延時間の最小値以下とする。これにより、受信パルス902に対する再放射パルス912がタグ送受信回路から出力される期間(再放射出力期間)の先頭タイミングで、送信増幅器がオンされるようになるので、再放射パルス912が送信アンテナから送信されるようになる。但し、本実施の形態では、タイミング制御部は、受信パルス901の強度が受信パルス902の強度より大きいため、受信パルス902に対する再々放射パルスがタグ送受信回路から出力される期間(再放射出力期間)、送信増幅器がオンされないようなオンオフ制御信号を生成する。
【0170】
なお、以上の説明では、端末は、基地局から送信されるパルスを、再々放射する場合に、受信パルス信号のうち、強度が最も大きい受信パルスに対する再々放射パルスのみを送信する場合について説明した。この場合において、実施の形態4及び実施の形態5で述べたように、再放射パルスに再放射用符号系列を付加し、再々放射パルスに再々放射用符号系列を付加するようにしてもよい。
【0171】
なお、上記各実施の形態では、端末がセミパッシブ方式を採用した場合について説明したが、セミパッシブ方式に限られず、本発明は、端末がアクティブ方式を採用した場合についても同様に適用することができる。
【0172】
また、上記各実施の形態では、基地局及び端末のいずれも、送信アンテナと受信アンテナとを別々に備える場合について説明したが、サーキュレータ等を用いて、信号分離をすることにより、送信アンテナと受信アンテナとを1個のアンテナで共用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明に係る無線端末装置、無線基地局装置、無線測距システム、及び、無線測距方法は、アクティブ方式、セミパッシブ方式を問わず、UWBリーダとUWBタグ間の測距精度を向上させることができ、例えば、無線測位装置、無線測距装置等として有用であり、また、無線センサー等の用途にも応用できる。
【符号の説明】
【0174】
200,200A,200B,500,500A 基地局
201 タイミング信号出力部
202,202A 送信パルス発生部
203,360 送信アンテナ
204,310 受信アンテナ
205,510 パルス検出部
206 距離算出部
300,300A,400,700 端末
320 受信増幅器
330,330A タグ送受信回路
331 検波器
332 レベル検出部
333 コンパレータ
334 UWBパルス発生部
335,710 送信モードデコード部
340,340A タイミング制御部
350,450 送信増幅器
410 再放射用符号系列記憶部
420 再々放射用符号系列記憶部
430,720 キャリブレーションモード制御部
440,730 符号系列切換部
520,520A 符号系列検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス信号を用いて無線基地局装置と無線端末装置との離間距離を測定する無線測距システムにおける前記無線端末装置であって、
受信アンテナと、
受信パルス信号を検波し検波信号を出力する検波手段と、
前記検波信号に応じて、送信パルス信号を生成する生成手段と、
前記送信パルス信号を増幅する増幅手段と、
増幅された前記送信パルス信号を送信する送信アンテナと、
前記受信パルス信号を受信してから、当該受信パルス信号の前記検波信号に応じて生成される前記送信パルス信号を送信するまでに要する前記無線端末装置の回路遅延時間の代表値に基づいて、前記無線基地局装置から送信されるパルス信号の前記検波信号に応じて生成された再放射パルス信号、及び、前記再放射パルス信号の前記検波信号に応じて生成された再々放射パルス信号を増幅するように、前記増幅手段をオンオフ制御する制御信号を、前記増幅手段に出力するタイミング制御手段と、
を具備する無線端末装置。
【請求項2】
前記制御信号は、前記再放射パルス信号及び前記再々放射パルス信号が前記増幅手段に出力される期間、ハイレベルとなる信号であり、
前記増幅手段は、前記制御信号がハイレベルの期間、前記送信パルス信号を増幅する、
請求項1に記載の無線端末装置。
【請求項3】
前記無線端末装置の回路遅延時間を測定するキャリブレーションモード、又は、前記離間距離を測定する測距モードに切り替える制御手段と、
再放射用符号系列と、前記再放射用符号系列と異なる再々放射用符号系列とを記憶する記憶手段と、
前記キャリブレーションモード時に、前記制御信号に基づいて、前記再放射パルス信号が前記増幅手段に出力される期間には、前記再放射用符号系列を前記増幅手段に出力し、前記再々放射パルス信号が前記増幅手段に出力される期間には、前記再々放射用符号系列を前記増幅手段に出力する切換手段と、を更に具備し、
前記増幅手段は、前記切換手段から出力される符号系列に応じて、前記送信パルス信号を増幅する、
請求項1に記載の無線端末装置。
【請求項4】
送信モード切り替え信号に基づいて、前記無線端末装置の回路遅延時間を測定するキャリブレーションモードか、前記離間距離を測定する測距モードか否かを判定するモード判定手段、を更に具備し、
前記タイミング制御手段は、前記キャリブレーションモード時に、前記増幅手段が前記再放射パルス信号及び前記再々放射パルス信号を増幅するような前記制御信号を、前記増幅手段に出力し、前記測距モード時に、前記増幅手段が前記再放射パルス信号のみを増幅するような前記制御信号を、前記増幅手段に出力する、
請求項1に記載の無線端末装置。
【請求項5】
前記送信モード切り替え信号は、UWBパルス信号のオン又はオフにより通知される、
請求項4に記載の無線端末装置。
【請求項6】
再放射用符号系列と、前記再放射用符号系列と異なる再々放射用符号系列とを記憶する記憶手段と、
前記制御信号に基づいて、前記再放射パルス信号が前記増幅手段に出力される期間には、前記再放射用符号系列を前記増幅手段に出力し、前記再々放射パルス信号が前記増幅手段に出力される期間には、前記再々放射用符号系列を前記増幅手段に出力する切換手段と、を更に具備し、
前記増幅手段は、前記切換手段から出力される符号系列に応じて、前記送信パルス信号を増幅する、
請求項4に記載の無線端末装置。
【請求項7】
パルス信号を用いて無線基地局装置と無線端末装置との離間距離を測定する無線測距システムにおける前記無線基地局装置であって、
パルス信号を送信する送信手段と、
送信した前記パルス信号が、前記無線端末装置で再放射された再放射パルス信号と、前記再放射パルス信号が前記無線端末装置で再々放射された再々放射パルス信号と、を受信する受信手段と、
前記再放射パルス信号の受信タイミングと前記再々放射パルス信号の受信タイミングとの時間差から、前記無線端末装置の回路遅延時間を測定する測定手段と、
を具備する無線基地局装置。
【請求項8】
前記測定手段は、送信した前記パルス信号の送信タイミングと、前記再放射パルス信号の受信タイミングとの時間差から、前記無線端末装置の回路遅延時間を含む電波の往復時間を測定し、前記往復時間と、前記無線端末装置の回路遅延時間とに基づいて、前記離間距離を算出する、
請求項7に記載の無線基地局装置。
【請求項9】
電波到来方向推定手段、を更に具備し、
前記測定手段は、最も短時間で到達するパルス信号を前記再放射パルス信号と判定し、前記再放射パルス信号と同一方向から到来するパルス信号を前記再々放射パルス信号と判定し、前記無線端末装置の回路遅延時間を測定する、
請求項7に記載の無線基地局装置。
【請求項10】
パルス信号を用いて無線基地局装置と無線端末装置との離間距離を測定する無線測距システムであって、
前記無線基地局装置は、
パルス信号を送信する送信手段と、
送信した前記パルス信号が、前記無線端末装置で再放射された再放射パルス信号と、前記再放射パルス信号が前記無線端末装置で再々放射された再々放射パルス信号と、を受信する受信手段と、
前記再放射パルス信号と前記再々放射パルス信号との受信タイミングの時間差から、前記無線端末装置の回路遅延時間を測定する測定手段と、を具備し、
前記無線端末装置は、
受信アンテナと、
受信パルス信号を検波し検波信号を出力する検波手段と、
前記検波信号に応じて、送信パルス信号を生成する生成手段と、
前記送信パルス信号を増幅する増幅手段と、
増幅された前記送信パルス信号を送信する送信アンテナと、
前記受信パルス信号を受信してから、当該受信パルス信号の前記検波信号に応じて生成される前記送信パルス信号を送信するまでに要する前記無線端末装置の回路遅延時間の代表値に基づいて、前記無線基地局装置から送信されるパルス信号の前記検波信号に応じて生成された再放射パルス信号、及び、前記再放射パルス信号の前記検波信号に応じて生成された再々放射パルス信号を増幅するように、前記増幅手段をオンオフ制御する制御信号を、前記増幅手段に出力するタイミング制御手段と、を具備する
無線測距システム。
【請求項11】
パルス信号を用いて無線基地局装置と無線端末装置との離間距離を測定する無線測距方法であって、
前記無線基地局装置は、
パルス信号を送信し、
前記無線端末装置は、
受信パルス信号を検波し検波信号を出力し、
前記無線基地局装置から送信されたパルス信号の前記検波信号に応じて生成された再放射パルス信号、及び、前記再放射パルス信号の前記検波信号に応じて生成された再々放射パルス信号を増幅し、
増幅された前記送信パルス信号を送信し、
前記無線基地局装置は、
前記再放射パルス信号及び前記再々放射パルス信号を受信し、
前記再放射パルス信号の受信タイミングと、前記再々放射パルス信号の受信タイミングとの時間差から、前記無線端末装置の回路遅延時間を測定するとともに、
送信した前記パルス信号の送信タイミングと、前記再放射パルス信号との受信タイミングとの時間差から、前記無線端末装置の回路遅延時間を含む電波の往復時間を測定し、前記往復時間と、前記無線端末装置の回路内遅延時間とに基づいて、前記離間距離を算出する、
無線測距方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2010−276594(P2010−276594A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270523(P2009−270523)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】