無線装置
【課題】電波環境の変動に応じて、通信品質に関する指標を通知する。
【解決手段】復調器42は、受信した信号に対して復調処理する。復号器46は、復調した信号をスペクトル逆拡散処理する。さらに、CIR値204を計算してCPU26と予測器48へ出力する。予測器48は、CIR値204から次の受信のスロットタイミングでのCIR値208を導出する。CIR−DRC変換テーブル50により、CIR値208がDRCに変換される。CPU26は、受信データ200を内部処理するか、あるいは外部IF部34を経由して外部に接続されたPC20へ送信する。CIR値204をもとにユーザに通知するための通信品質指標を任意の方法でもとめ、表示部30にアンテナマーク等の形で表示する。また、この指標は外部IF部34により外部のPC20へ送る。
【解決手段】復調器42は、受信した信号に対して復調処理する。復号器46は、復調した信号をスペクトル逆拡散処理する。さらに、CIR値204を計算してCPU26と予測器48へ出力する。予測器48は、CIR値204から次の受信のスロットタイミングでのCIR値208を導出する。CIR−DRC変換テーブル50により、CIR値208がDRCに変換される。CPU26は、受信データ200を内部処理するか、あるいは外部IF部34を経由して外部に接続されたPC20へ送信する。CIR値204をもとにユーザに通知するための通信品質指標を任意の方法でもとめ、表示部30にアンテナマーク等の形で表示する。また、この指標は外部IF部34により外部のPC20へ送る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可変の通信速度を制御可能な無線装置に関する。特に、環境の変動に応じて通信速度も変動するように制御する無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代の高速無線通信方式としてcdma2000 1x−EV DO(以下、「EV−DO」という)方式が開発されている。EV−DO方式とは、cdmaOne方式を拡張し第3世代方式に対応させたcdma2000 1x方式を、さらにデータ通信に特化して伝送レートを高速化させた方式である。ここで、「EV」はEvolution、「DO」はData Onlyを意味する。
【0003】
EV−DO方式において、無線通信端末から基地局への上り回線の無線インターフェースの構成はcdma2000 1X方式とほぼ同様である。基地局から無線通信端末への下り回線の無線インターフェース構成については、1.23MHzに規定された帯域幅がcdma2000 1x方式と同一である一方、変調方式、多重化方法等がcdma2000 1x方式と大きく異なる。変調方式は、cdma2000 1x方式において使用されているQPSK、HPSKに対し、EV−DO方式において、QPSK、8−PSK、16QAMが無線通信端末における下り回線の受信状態に応じて切り替えられる。その結果、受信状態が良好な場合は、誤り耐性が低くかつ高速な伝送レートを使用し、受信状態が悪い場合は、低速であるが誤り耐性の高い伝送レートを使用する。
【0004】
また、ひとつの基地局から複数の無線通信端末への通信を同時に行うための多重化方法には、cdmaOne方式やcdma2000 1x方式で使用される符号分割多重アクセス(CDMA:Code Division Multiple Access)ではなく、時間を1/600秒単位で分割し、その時間内ではひとつの無線通信端末だけと通信を行い、さらに通信対象となる無線通信端末を単位時間ごとに切り替えて複数の無線通信端末と通信を行う時分割多重アクセス(TDMA:Time Division Multiple Access)を使用する。
【0005】
無線通信端末は、通信対象となる基地局からの下り回線の受信状態としてパイロット信号の搬送波対干渉波比(以下、「CIR:Carrier to Interference power Ratio」という)を測定し、その変動から次の受信タイミングの受信状態を予測し、それから期待される「所定の誤り率以下で受信可能な最高伝送速度」をデータレートコントロールビット(以下、「DRC:Data Rate Control bit」という)として基地局に通知する。ここで、所定の誤り率は、システム設計に依存するが通常1%程度とされる。基地局は複数の無線通信端末からのDRCを受信し、基地局内のスケジューラ機能が各時分割単位にどの無線通信端末と通信するかを決定するが、各無線通信端末との通信には、基本的に無線通信端末からのDRCをもとに可能な限り高い伝送レートを使用する。
【0006】
EV−DO方式は上記のような構成により下り回線において、セクタあたり最大2.4Mbps(Mega−bit per second)の伝送レートを可能にする。ただし、この伝送レートは、ひとつの周波数帯域と、通常複数有するセクタのうちのひとつにおいて、ひとつの基地局が接続している複数の無線通信端末とのデータ通信量の合計であり、複数の周波数帯域を使用すれば伝送レートも増加する。
【特許文献1】特開2002−300644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
EV−DO方式の下り回線における伝送レートは、前述のとおり、無線通信端末の受信状態に依存し、静止状態のもっとも受信状態がよい場合では、2.4Mbpsとなるが、車両で中・高速移動する場合には平均して500〜700kbps程度、静止状態の受信状態がよくない場合では数十kbps程度にまで低下する。そのため、無線通信端末を使用するユーザが歩行している低速移動状態または、ほぼ静止の状態において、場所により著しい伝送レートの低下が起こりうる。この状態をユーザの運用によって回避可能なように、従来の携帯電話では、受信状態をユーザに通知するいわゆるアンテナマークの表示や警告音等が使用されている。例えば、cdmaOne方式携帯電話では、Ec/Io(総入力電力対チップあたりのエネルギー)をもとにした受信状態を通知している。
【0008】
しかし、EV−DO方式の下り回線における伝送レートは、CIRの瞬時値のみでなく、予測や過去の下り回線におけるデータ伝送の誤り率等の統計データによる補正等によっても影響を受けるので、CIRをもとにした受信状態だけでは誤差を含む可能性がある。さらに、受信状態の変動による伝送レートの変動が、PDC方式携帯電話やcdmaOne方式携帯電話よりも大きいため、受信状態の測定はより高い精度を必要とする。
【0009】
一方、上り回線における無線通信端末の送信電力は、cdma2000 1x方式と同様に基地局によって制御されるが、最大送信電力は、法規制等により例えば+23dBm(200mW)ないし+24dBm(約250mW)程度に制限される。基地局は各無線通信端末からの受信電力がほぼ一定の値になるように、あるいは所要の品質を満たすように、各無線通信端末に対し送信電力の増減を随時指示する。当該指示に従って、各無線通信端末は前記最大送信電力以下の範囲で送信電力を調整する。無線通信端末が基地局から遠距離に位置する場合、上り回線の信号が基地局に届きにくくなると、基地局は無線通信端末に送信電力の増加を指示する。しかし、無線通信端末の送信電力が最大送信電力に達すると、無線通信端末はそれ以上送信電力を増加できないため、上り回線のDRCが基地局に到達しなくなり、結果として下り回線のデータ伝送も行えなくなる。
【0010】
また、無線通信端末において復調器はAGC(Automatic Gain Control)を有しているため、AGCの動作範囲において伝送レートはCIRのみに依存し、一般に受信信号電力の影響を受けない。一方、受信信号電力がAGCの動作範囲以下になるとCIRが急速に劣化し、下り回線の信号を受信できなくなる。
【0011】
本発明者はこうした状況を認識して、本発明をなしたものであり、その目的は、通信品質に関する指標を通知する無線装置を提供することである。また、通信品質に関する指標を出力する無線装置を提供することである。また、信号の受信状態に応じてデータ通信速度が大きく変化するとともに、それ以外の要因によっても通信が切断される可能性のある通信システムに適した通信品質に関する指標を導出する無線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のある態様は、無線装置である。この装置は、基地局装置から可変の通信速度で送信される信号を受信する受信手段と、受信した信号の信号対干渉波比を測定する測定手段と、測定手段によって測定した信号対干渉波比から基地局装置によって将来的に送信される信号の通信速度の第一の予測値を導出する推定手段と、測定手段によって測定した信号対干渉波比から指標値を算出する指標計算手段と、指標値と通信速度の第一の予測値に基づいて通信速度の第二の予測値を算出する計算手段と、指標値と通信速度の第二の予測値を報知する報知手段とを備える。
【0013】
本発明の別の態様も、無線装置である。この装置は、基地局装置から可変の通信速度で送信される信号を受信する受信手段と、受信した信号の信号対干渉波比を測定する測定手段と、測定手段によって測定した信号対干渉波比から基地局装置によって将来的に送信される信号の通信速度の第一の予測値を導出する推定手段と、受信した信号から所定の電力値を検出する検出手段と、予め設定した基準値と検出した電力値に基づいて指標値を算出する電力指標計算手段と、該指標値と第一の予測値に基づいて第二の予測値を算出する計算手段と、指標値と第二の予測値を報知する報知手段とを備える。
【0014】
本発明のさらに別の態様も、無線装置である。この装置は、基地局装置から可変の通信速度で送信される信号を受信する受信手段と、受信した信号の信号対干渉波比を測定する測定手段と、測定手段によって測定した信号対干渉波比から基地局装置によって将来的に送信される信号の通信速度の第一の予測値を導出する推定手段と、測定手段によって測定された信号対干渉波比から第一の指標値を算出する指標計算手段と、受信した信号から所定の電力値を検出する検出手段と、予め設定した基準値と検出した電力値に基づいて第二の指標値を算出する電力指標計算手段と、第二の指標値と通信速度の第一の予測値に基づいて通信速度の第二の予測値を算出する計算手段と、第一の指標値と通信速度の第二の予測値を報知する報知手段とを備える。
【0015】
本発明のさらに別の態様も、無線装置である。この装置は、基地局装置から可変の通信速度で送信される信号を受信する受信手段と、受信した信号の信号対干渉波比を測定する測定手段と、測定手段によって測定した信号対干渉波比から基地局装置によって将来的に送信される信号の通信速度の第一の予測値を導出する推定手段と、測定手段によって測定された信号対干渉波比から第一の指標値を算出する指標計算手段と、受信した信号から所定の電力値を検出する検出手段と、予め設定した基準値と検出した電力値に基づいて第二の指標値を算出する電力指標計算手段と、第一の指標値と通信速度の第一の予測値に基づいて通信速度の第二の予測値を算出する計算手段と、第二の指標値と通信速度の第二の予測値を報知する報知手段とを備える。
【0016】
検出手段は、所定の電力値として、受信した信号の受信電力値を検出し、電力指標計算手段は、基準値として最小受信可能電力値を設定し、該最小受信可能電力値と受信電力値に基づいて指標値を算出してもよい。また、検出手段は、所定の電力値として、受信した信号に含まれる指示情報から送信電力値を検出し、電力指標計算手段は、基準値として最大送信可能電力値を設定し、該最大送信可能電力値と送信電力値に基づいて指標値を算出してもよい。
【0017】
本発明のさらに別の態様も、無線装置である。この装置は、基地局装置から可変の通信速度で送信される信号を受信する受信手段と、受信した信号の受信電力値を検出する受信電力検出手段と、該検出した受信電力値と最小受信可能電力値に基づいて第一の指標値を算出する第一指標計算手段と、受信した信号に含まれる指示情報から送信電力値を検出する送信電力検出手段と、該検出した送信電力値と最大送信可能電力値に基づいて第二の指標値を算出する第二指標計算手段と、受信した信号の信号対干渉波比を測定する測定手段と、該測定した信号対干渉波比から基地局装置によって将来的に送信される信号の通信速度の第一の予測値を導出する推定手段と、第一の指標値と第一の予測値に基づいて第二の予測値を算出する計算手段と、第二の指標値と第二の予測値を報知する報知手段とを備える。
【0018】
本発明のさらに別の態様も、無線装置である。この装置は、基地局装置から可変の通信速度で送信される信号を受信する受信手段と、受信した信号の受信電力値を検出する受信電力検出手段と、該検出した受信電力値と最小受信可能電力値に基づいて第一の指標値を算出する第一指標計算手段と、受信した信号に含まれる指示情報から送信電力値を検出する送信電力検出手段と、該検出した送信電力値と最大送信可能電力値に基づいて第二の指標値を算出する第二指標計算手段と、受信した信号の信号対干渉波比を測定する測定手段と、該測定した信号対干渉波比から基地局装置によって将来的に送信される信号の通信速度の第一の予測値を導出する推定手段と、第二の指標値と第一の予測値に基づいて第二の予測値を算出する計算手段と、第一の指標値と第二の予測値を報知する報知手段とを備える。
【0019】
本発明のさらに別の態様も、無線装置である。この装置は、処理対象とすべき信号を受信する受信部と、受信した信号の信号対干渉波比を測定する測定部と、測定部によって過去に測定された信号対干渉波比から、信号対干渉波比の予測値を計算する予測部と、信号対干渉波比の予測値と測定した信号対干渉波比の差違に応じて、通信の維持可能性を判定する判定部とを含む。
以上の装置により、実際に測定した信号対干渉比と予測した信号対干渉比を比較することによって、通信環境の変動の大きさを推定可能である。
【0020】
本発明のさらに別の態様も、無線装置である。この装置は、基地局装置から送信される通信速度が可変の信号を受信する受信部と、受信した信号の信号対干渉波比を測定する測定部と、受信した信号から、所定の電力値を検出する検出部と、測定した信号対干渉波比から、基地局装置によって将来的に送信される信号の通信速度の予測値を導出する推定部と、予め設定した基準値と検出した電力値の差違に応じて、将来的に送信される信号の通信速度の予測値についての信頼性を示す値を計算する計算部とを含む。
【0021】
基地局装置から送信される通信速度が可変の信号には、基地局装置へ所定の信号を送信する際の送信電力に関する指示情報が含まれ、検出部は、所定の電力値として、受信した信号に含まれた送信電力に関する指示情報から送信すべき信号の電力値を検出し、計算部は、基準値として最大送信可能電力値を設定し、最大送信可能電力値と送信すべき信号の電力値の差違に応じて、通信速度の予測値についての信頼性を示す値を計算してもよい。
【0022】
「送信電力に関する指示情報」は、送信電力値を指示する直接的な情報や現在の送信電力値からの増減を指示する間接的な情報を含み、最終的に送信電力値が決定できるような情報であればよいものとする。
【0023】
検出部は、所定の電力値として、受信した信号から受信した信号の電力値を検出し、計算部は、基準値として最小受信可能電力値を設定し、最小受信可能電力値と受信した信号の電力値の差違に応じて、通信速度の予測値についての信頼性を示す値を計算してもよい。
以上の装置により、通信速度の予測値に加えて、通信速度の予測値について信頼性を示す値も計算するため、当該通信速度の予測値について、より詳細な情報を提供可能である。
【0024】
本発明のさらに別の態様も、無線装置である。この装置は、基地局装置から送信される通信速度が可変の信号を受信する受信部と、受信した信号の信号対干渉波比を測定する測定部と、測定した信号対干渉波比から、基地局装置によって将来的に送信される信号の通信速度の予測値を導出する推定部と、測定部によって過去に測定された信号対干渉波比から、信号対干渉波比の予測値を計算する予測部と、信号対干渉波比の予測値と測定した信号対干渉波比の差違に応じて、将来的に送信される信号の通信速度の予測値についての信頼性を示す値を計算する計算部とを含む。
以上の装置により、通信速度の予測値に加えて、通信環境の変動の大きさに対応した通信速度の予測値についての信頼性を示す値も計算するため、当該通信速度の予測値の変動の可能性についての情報を提供可能である。
【0025】
将来的に送信される信号の通信速度の予測値と、通信速度の予測値についての信頼性を示す値をユーザに通知する通知部をさらに含んでもよい。将来的に送信される信号の通信速度の予測値と、通信速度の予測値についての信頼性を示す値を出力する出力部をさらに含んでもよい。
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、通信品質に関する指標を通知できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(実施の形態1)
実施の形態1は、前述したcdma2000 1x−EV DO方式における端末装置について、ユーザに通信の状況を通知するために通信品質指標を表示する技術に関する。本実施の形態においては通信品質指標として、通信速度を示す指標に加えて、当該通信速度の指標の信頼性を示す指標も表示して、ユーザによる通信の状況の認識をより確実なものにする。通信速度の指標は、DRCに対応したCIRをもとに導出し、信頼性を示す指標は、端末装置が送信可能な最大送信可能電力値と、端末装置が現在送信している送信電力値の差をもとに導出する。この差は、端末装置の送信電力値が最大送信可能電力値に達している場合、基地局装置に送信電力の増加を指示されても送信電力を上げることができず、基地局装置で必要とされる受信電力が得られない結果、より上り回線が切断されやすくなることを反映している。その結果、信頼性が低ければ、通信速度が低下する可能性が高いことを示す。
【0028】
図1は、実施の形態1に係る通信システム100を示す。通信システム100は、ネットワーク10、基地局装置12、基地局用アンテナ14、端末用アンテナ16、端末装置18、PC20を含む。
【0029】
端末装置18は、PC20と接続されて、あるいは単体でユーザに使用される。また、端末用アンテナ16を有する。
基地局装置12は、ネットワーク10に接続され、また端末装置18を接続する。図1では、基地局装置12と接続した端末装置18を1台としているが、複数であってもかまわない。また、基地局用アンテナ14を有する。
【0030】
基地局装置12から端末装置18へは、下り回線60によって信号が伝送され、端末装置18から基地局装置12へは、上り回線62によって信号が伝送される。下り回線60には、パイロット信号や送信電力指示信号等を含む制御信号、データ信号が存在し、上り回線62には、DRC、データ信号等が存在する。
【0031】
図2は、端末装置18の構成を示す。端末装置18は、RF部22、ベースバンド処理部24、CPU26、メモリ28、表示部30、操作部32、外部IF部34を含み、RF部22は、共用器40、復調器42、変調器44を含み、ベースバンド処理部24は、復号器46、予測器48、CIR−DRC変換テーブル50、符号化器52、MUX54を含む。
【0032】
復調器42は、端末用アンテナ16、共用器40を介して受信した信号を復調処理する。ここで、受信した信号は、QPSK、8PSK、16QAMのいずれで変調されているものとする。また、受信した信号から受信電力値206を計算して、CPU26へ出力する。
【0033】
復号器46は、復調した信号をスペクトル逆拡散処理する。ここで、当該端末装置18に割当てられた受信データ200が存在する場合は、受信データ200をCPU26へ出力する。基地局装置12によって指示された送信電力を示すための送信電力指示信号を制御信号から抽出し、それをもとに電力制御情報202を導出して、CPU26へ出力する。さらに、制御信号からパイロット信号を抽出し、それをもとにCIR値204を計算してCPU26と予測器48へ出力する。
【0034】
予測器48は、CIR値204から次の受信のスロットタイミングでのCIR値208を導出する。予測の方法についてはスタンダード中に明確に記述されたものはないが、例としては線形予測等の方法が挙げられる。
【0035】
CIR−DRC変換テーブル50により、CIR値208がDRC210に変換される。図3は、CIR−DRC変換テーブルの一例を示すが、これはQualcomm社の文献、IEEE Communications Magazine・July 2000「CDMA/HDR:A Bandwidth−Efficient High−Speed Wireless Data Service for Nomadic Users」より引用したものである。なお、DRCは図3のような通信速度ではなく、それに対応した値であってもよい。
【0036】
CPU26は、受信データ200を内部処理するか、あるいは外部IF部34を経由して外部に接続されたPC20へ受信データ200を送信する。DRC210やその他のデータをもとにユーザに通知するための通信品質指標を導出し、表示部30にアンテナマーク等の形で表示する。また、この指標は外部IF部34により外部のPC20へ送り、PC20における動画伝送やVoIPなどのアプリケーションが指標を元にQoS制御を行うように構成することもできる。例えば、通信速度が低下してきたらDRCで要求する要求通信速度を下げる、通信速度の信頼性が低下してきたら通信データバッファを大きくしてデータ信号を先読みするなどである。また、電力制御情報202を処理し、現在の送信電力値212を修正して新たな送信電力値212を決定する。CPU26で生成されたあるいはPC20から外部IF部34を介して入力されたデータ信号は送信データ214として出力する。
【0037】
MUX54は、送信データ214とDRC210をマルチプレクスする。
符号化器52は、マルチプレクスした信号をスペクトル拡散処理する。
変調器44は、スペクトル拡散した信号を変調し、さらにその信号は、共用器40と端末用アンテナ16経由で基地局装置12へ送信される。
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリのロードされた予約管理機能のあるプログラムなどによって実現されるが、ここではCPU26、ベースバンド処理部24、RF部22等による構成を描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0038】
図4は、通信品質指標の導出の処理フローを示す。図2の復調器42、さらに復号器46に信号が入力される(S10)。復号器46でCIR値204が、さらに予測器48でCIR値208が導出される(S12)。つまり、予測器48では、CIR値204から次に受信するタイミングでのCIRを予測してCIR値208を計算する。CIR−DRC変換テーブル50は、CIR値208をDRC210に変換する(S14)。復号器46は、電力制御情報202を検出する(S18)。さらに、CPU26では、現在の送信電力値を電力制御情報202で補正して送信電力値を導出する。
【0039】
CPU26は、DRC210から通信速度指標を導出し(S16)、電力制御情報202から信頼性指標を導出する(S20)。ここでは、通信速度指標は、4bitの値で通信速度と対応したDRC210の値(単位なし)そのものか、図3に示すような通信速度(単位はbps)、またはCIR値204(単位はdB)のいずれかもしくはこれらのいずれかの値を元にした換算値とされる。換算値としては、例えばdB単位の値を−0.5dB単位で端数切捨てないし四捨五入して整数表記したものなどがあり、−23.9dBを−0.5dB単位で整数化する場合、(−23.9dB)/(−0.5dB)=47.8より、四捨五入して48を指標とする。また、信頼性指標は、送信電力値(単位dBm)と最大送信可能電力値(単位dBm)の差(単位dB)や、差を元にした換算値とされる。ここで、最大送信可能電力値は23dBmとし、換算値は上記同様に計算される。また、信頼性指標は、図5に示すテーブルを使用して導出されてもよい。一例として、信頼性指標値は、信頼性が高い場合、すなわち前述の差が大きい場合に指標値20、信頼性が低い場合に指標値0として示される。
【0040】
CPU26は、通信速度指標と信頼性指標を表示部30で表示するか、外部IF部34から出力する(S22)。図6(a)−(b)は、表示部30の表示内容を示す。アンテナバー300が通信速度指標を、アイコン302が信頼性指標を示す。また、図6(a)は、通信速度指標が低く、信頼性指標が高い場合、図6(b)は、通信速度指標が高く、信頼性指標が低い場合を示す。また、図7に示すLED点灯パターンによって、ユーザに通知してもよい。ここで、通信速度指標と信頼性指標は、それぞれ緑色、赤色といった別のLEDで表示される。また、点滅1と点滅2のちがいは、点滅2の方が、点灯している比率が高いものとする。
【0041】
本実施の形態によれば、通信速度指標にDRCを用いることにより、直接的に通信速度の目安を得ることができる。また、信頼性指標に「送信電力値と最大送信可能電力値の差」を使用するため、端末装置での受信状態がよく、高CIR/高DRCで高い通信速度が期待できる環境においても、送信電力値が最大送信可能電力値に近い場合に、将来的に送信電力値が最大送信可能電力値に達し、それでも不十分な場合に上り回線の信号が基地局装置に到達しないことによる通信断をあらかじめ予測できる。
【0042】
(実施の形態2)
実施の形態2は、実施の形態1と同様にEV−DO方式における端末装置について、通信品質指標として通信速度を示す指標と当該通信速度の指標の信頼性を示す指標を表示する技術に関する。実施の形態1では、信頼性を示す指標を送信電力値をもとに導出したが、実施の形態2では、端末装置が受信可能な最小受信可能電力値と、端末装置が現在受信している受信電力値の差をもとに導出する。この差は、端末装置のAGCの動作範囲では通信速度はCIRに依存して、受信電力値の影響を受けないが、受信電力値がAGCの動作範囲以下になるとCIRが急激に劣化し、下り回線が切断されやすくなることを反映している。その結果、信頼性が低ければ、通信速度が低下する可能性が高いことを示す。
【0043】
実施の形態2における端末装置18として、図2に示されるものが有効である。また、実施の形態2における通信品質指標の導出の処理フローとしては、図4に示されるものが有効である。ここでは、ステップ18とステップ20の処理が異なる。ステップ18に対応して、復調器42が受信電力値206を検出する。ステップ20に対応して、信頼性指標は、受信電力値206(単位dBm)と最小受信可能電力値(単位dBm)の差(単位dB)や、差を元にした換算値とされる。また、信頼性指標は、図5と同様なテーブルを使用して導出されてもよい。ここで最小受信可能電力値は、予め当該端末装置18に対応した値を設定する。
【0044】
本実施の形態によれば、信頼性指標に「受信電力値と最低受信可能電力値の差」を使用するため、下り回線の信号が受信できる強度の下限近傍である場合、基地局装置からの下り回線の信号が受信できないことによる通信断をあらかじめ予測できる。
【0045】
(実施の形態3)
実施の形態3は、実施の形態1、2と同様に、EV−DO方式における端末装置について、通信品質指標として通信速度を示す指標と当該通信速度の指標の信頼性を示す指標を表示する技術に関する。実施の形態3では、信頼性を示す指標を1/600秒ごとに受信したスロットで測定されるCIRと、任意のアルゴリズムで求めた将来的な予測CIRの差より導出する。この差は、一般的に、通信環境の変化が少ない静止状態で小さいが、端末装置の移動状態では予測CIRはCIRより低くなる傾向があり、通信環境の変化の有無を反映する。
【0046】
実施の形態3における端末装置18として、図2に示されるものが有効である。
図8は、通信品質指標の導出の処理フローを示す。図2の復調器42、さらに復号器46に信号が入力される(S30)。復号器46でCIR値204が導出される(S32)。さらに予測器48で次の受信タイミングのCIR値208が導出され、CIR−DRC変換テーブル50は、CIR値208をDRC210に変換する(S34)。CPU26は、DRC210から通信速度指標を導出する(S36)。一方、CPU26は、CIR値204から予測CIR値を計算する(S38)。予測CIR値は、例えば、過去のCIR値204をもとに外挿補間等によって計算される。なお、予測CIR値の変わりに予測器48で計算したCIR値208を使用してもよい。
【0047】
さらに、CPU26は、信頼性指標を計算する(S40)。通信環境の変化の度合いと「CIR値204と予測CIRの差」の関係は予測に用いるアルゴリズムに依存するが、例えば、静止状態では指標値が15前後、低速移動状態では指標値が10前後、高速移動状態では指標値が5前後となるような、予測アルゴリズムを使用すればよい。CPU26は、通信速度指標と信頼性指標を表示部30で表示するか、外部IF部34から出力する(S42)。また、通信速度指標を信頼性指標で補正してより信頼のある通信速度を表示してもよい。なお、その場合の式の例としては次のとおりである。
(数1)
下り通信速度指標=DRCに対応した通信速度×α
ただし、αは以下の通りである。
(数2)
|CIR値と予測CIRの値の差|≧20(dB)のとき
α=0
|CIR値と予測CIRの値の差|<20のとき
α=(20−|CIR値と予測CIRの値の差|)×0.05
【0048】
本実施の形態によれば、信頼性指標として、通信環境の変化の有無を示す「実測CIRと予測CIRの差」を使用するために、送信あるいは受信の状態が通信断に近い状況からすぐに通信断に至る可能性が高いか、あるいは低いかを指標に含めることができる。これは上り回線又は下り回線の通信状態が通信断に近い状態で、通信状態の変動が大きい場合は通信状態が通信断にいたる可能性が高く、一方通信状態の変動が小さければその状態が維持され、通信断に直ちに至る可能性は低いと考えることができるからである。
【0049】
(実施の形態4)
実施の形態4は、これまでの実施の形態と同様に、EV−DO方式における端末装置についての通信品質指標を表示する技術に関する。本実施の形態では、上り回線と、下り回線の通信品質指標を別に表示する。上り回線の通信品質指標は、端末装置が送信可能な最大送信可能電力値と、端末装置が現在送信している送信電力値の差をもとに導出する。一方、下り回線の通信品質指標は、DRCにより予測される通信速度の値を「端末装置が受信可能な最小受信可能電力値と、端末装置が現在受信している受信電力値の差」で補正して導出する。補正の方法は、「端末装置が受信可能な最小受信可能電力値と、端末装置が現在受信している受信電力値の差」が0になったときに、「通信品質の指標」が最低値になるようにする。
【0050】
実施の形態4における端末装置18として、図2に示されるものが有効である。
図9は、実施の形態4に係る通信品質指標の導出の処理フローを示す。図2の復調器42、さらに復号器46に信号が入力される(S50)。復号器46でCIR値204が、さらに予測器48でCIR値208が導出される(S52)。CIR−DRC変換テーブル50は、CIR値208をDRC210に変換する(S54)。復調器42が受信電力値206を検出する(S56)。CPU26は、「受信電力値206と最小受信可能電力値の差」が所定のしきい値以上の場合に、DRC210より定まる通信速度(38.4kbps〜2457.6kbps)をそのまま下り回線60の通信品質指標とし、しきい値以下の場合に、以下に示す値を下り回線60の通信品質指標とする(S58)。
【0051】
(数3)
下り通信速度指標=DRCに対応した通信速度×(受信電力値−最小受信可能電力値)÷10
ここで、下り回線60の通信品質指標の単位はbpsとする。また、他の例として下り回線60の通信品質指標としてCIR値208を用いる場合、CIRの最低値を−15dBとして、「受信電力値206と最小受信可能電力値の差」が所定のしきい値以上の場合に、CIR値208をそのまま下り回線60の通信品質指標とし、しきい値以下の場合に、以下に示す値を下り回線60の通信品質指標とする。
【0052】
(数4)
下り通信品質指標=(CIR+15)×(受信電力値−最小受信可能電力値)÷10−15
ここで、下り回線60の通信品質指標の単位はdBとする。
復号器46は、電力制御情報202から送信電力を検出する(S60)。CPU26は、電力制御情報202から上り回線62の通信品質指標を計算する(S62)。CPU26は、下り通信品質指標と上り通信品質指標を表示部30で表示するか、外部IF部34から出力する(S64)。
【0053】
本実施の形態によれば、下り回線の通信品質指標として「受信電力値と最低受信可能電力値の差」とDRCまたはCIRを使用するため、予測される下り回線の通信速度に加えて、下り回線の通信状態の悪化による通信速度低下の可能性も反映した指標を得ることができる。具体的には例えば基地局装置から離れていてかつ周囲に他の基地局装置が無い場所では干渉波が存在しないため、CIRは高いものの受信電力値が最低受信可能電力値に近く、下り回線の通信状態が急速に悪化する可能性が指標値に反映される。また、上り通信品質指標に「送信電力値と最大送信可能電力値の差」を使用するため、端末装置での受信状態がよく、高CIR/高DRCで高い通信速度が期待できる環境においても、送信電力値が最大送信可能電力値に近い場合に、将来的に送信電力値が最大送信可能電力値に達し、それでも不十分な場合に上り回線の信号が基地局装置に到達しないことによる通信断をあらかじめ予測できる。
【0054】
(実施の形態5)
これまで述べた実施の形態では、通信品質指標をユーザが通信の状況を認識するために表示した。本実施の形態では、端末装置が当該通信品質指標を所定のネットワークで使用されるアプリケーションに出力し、アプリケーションが当該通信品質指標を参照して、通信速度等を設定する。すなわち、EV−DO方式等の無線通信網上でストリーミングビデオ等のアプリケーションを使用する場合、無線通信網上で送受できる通信速度は電波環境の変化や他のユーザによるトラフィックの発生等さまざまな要因により変化するため、アプリケーションによるストリーミングに使用可能な通信速度の確保が困難である。
【0055】
アプリケーションが、高い通信速度を前提としてビデオを伝送した場合、その通信速度が確保できた場合は高品位の画質を得ることができるが、通信速度が変動により前提とする値を下回った場合、画像情報の欠落や動画の停止等の品質の低下が発生する。一方、通信速度の変動に備えて低い通信速度を前提としてビデオを伝送した場合、実際の通信速度に関わらず低品位の動画しか得られない。端末装置で導出された通信品質指標は、通信速度の設定のために使用される。
【0056】
図10は、本実施の形態に係るアプリケーションシステムの構成を示す。図10は、図1における通信システム100の構成に加えて、サーバ56を含む。ここでは、PC20でアプリケーションクライアントを動作させている。端末装置18は基地局装置12からの受信したパイロット信号および受信電力、送信電力を元にDRC及び通信品質指標である品質情報を決定し、DRCを基地局に送信し、品質情報をPC20に通知する。PC20は品質情報、さらに受信バッファの空き容量や受信データ信号の誤り率等の各種の情報をもとにして、EV−DO方式のトラフィックチャネル上で使用可能な通信速度を推定し、当該通信速度を端末装置18、基地局装置12、ネットワーク10を経由してサーバ56に通知し、それをもとにサーバ56は送出する動画データの通信速度を増減する。
【0057】
本実施の形態によれば、PCやネットワーク等でのアプリケーションに通信品質指標を通知することによって、通信品質指標をQoS(Quality of Service)制御の判断基準として使用できる。
【0058】
(実施の形態6)
本実施の形態は、EV−DO方式とcdma2000 1x方式の複合端末や複数の無線方式を組み合わせて、環境により最適な通信方式を選択して通信する方式(以下、「シームレス通信」という)において、通信品質指標をEV−DO方式の通信品質を求めるパラメータとして利用する。
【0059】
図11は、本実施の形態に係る複数システムの選択動作の一例を示す。複数システムとしては、EV−DO方式、簡易型携帯電話、W−LAN(Wireless−LAN)とする。ここでは、横軸に時間を示し、縦軸にそれぞれのシステムにおけるスループットを示す。なお、W−LANについては、使用可能あるいは使用不可のみを示す。具体的には、EV−DO方式の通信速度指標が90kbps程度、簡易型携帯電話が128kbps程度が期待できる受信電界強度、W−LANが圏外という場合は簡易型携帯電話を選択し、環境が変化してEV−DO方式の通信速度指標が200kbps程度になれば、EV−DO方式に切り替えるなどの制御をする。
【0060】
図12は、複数システムの選択動作のフローチャートを示す。ここでは、W−LAN、EV−DO方式、簡易型携帯電話の順に優先順位を設けて、システムを選択する。EV−DO方式に対して品質情報を、W−LANに対してRSSI値を、簡易型携帯電話に対してスループットを取得する(S100)。W−LANのRSSI値が−90dBmより大きい場合(S102のY)、W−LANを選択する(S114)。一方、W−LANのRSSI値が−90dBm以下の場合(S102のN)、かつEV−DO方式の品質情報がしきい値より大きい場合(S104のY)、EV−DO方式を選択する(S116)。一方、EV−DO方式の品質情報がしきい値以下の場合(S104のN)、かつ簡易型携帯電話のスループットが64kbpsより大きい場合(S106のY)、簡易型携帯電話を選択する(S118)。
【0061】
一方、簡易型携帯電話のスループットが64kbps以下の場合(S106のN)、かつW−LANが使用可能な場合(S108のY)、W−LANを選択する(S114)。一方、W−LANが使用不可能な場合(S108のN)、かつEV−DO方式が使用可能な場合(S110のY)、EV−DO方式を選択する(S116)。一方、EV−DO方式が使用不可能な場合(S110のN)、かつ簡易型携帯電話が使用可能な場合(S112のY)、簡易型携帯電話を選択する(S118)。一方、簡易型携帯電話が使用不可能な場合(S112のN)、接続不可になる(S120)。以上の処理は、データを受信している期間続行する(S122のY)が、データを受信しなくなれば(S122のN)終了する。
【0062】
本実施の形態によれば、シームレス通信におけるシステム選択の基準として、EV−DO方式については通信品質指標を使用することによって、より正確な選択基準を提供可能にする。
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0063】
実施の形態1から3において、CPU26は、通信品質指標のひとつとして、送信電力値等から信頼性指標を計算した。しかし、これらに限られず、さまざまな電力値から計算された値を組み合わせて通信品質指標としてもよい。例えば、新たな信頼性指標として、送信電力値に対応した信頼性指標と受信電力値に対応した信頼性指標を組み合わせたり、あるいは新たな通信速度指標として、予測CIR値で補正した通信速度指標を使用してもよい。本変形例により、前者では、上り回線62と下り回線60の電波伝搬環境の非対称性から上り回線62は送信電力値と最大送信電力値の差が大きいが、下り回線60の信号は受信できる強度の下限に近い場合、基地局装置からの下り回線60の信号が受信できないことによる通信断をあらかじめ予測することができ、後者では、送信あるいは受信の状態が通信断に近い状況からすぐに通信断に至る可能性が高いか低いかを指標に含めることができる。
【0064】
さらに、送信電力値に対応した信頼性指標と受信電力値に対応した信頼性指標を組み合わせた新たな信頼性指標に通信環境の変化を反映させた補正をしてもよい。例えば、CIRないし受信電力値の短時間(例えば20ms)の平均値をもとに、それより長い期間(例えば1sec)における前記短時間平均値の最小値と最大値の差を計算し、その値が大きいほど通信環境の変化が大きいと考える。CIRの1秒間における20ms毎の短時間平均値の最小値と最大値の差を用いて補正する場合、最大値と最小値の差が10dB以上の場合は、補正値を10とし、差が10dB以下の場合は、最大値と最小値の差を補正値として、信頼性指標を示す値を補正する。一方、受信電力値において、最大値と最小値の差が20dB以上の場合は、補正値を10とし、差が20dB以下の場合は、最大値と最小値の差に1/2を乗じた値を補正値として、信頼性指標を示す値を補正する。本変形例より、通信品質指標をより詳細に表示可能である。
【0065】
実施の形態1において、表示部30は、通信速度指標としてアンテナバー300を表示し、信頼性指標としてアイコン302を表示している。しかし、表示部30の表示はこれに限られず、通信速度指標を通信速度の数字として表示してもよいし、バイブレーションのような形でユーザに通知してもよい。本変形例により、表示部30の表示内容がユーザにより明確になる。
通信速度指標と信頼性指標を両方表示することにより、ユーザは通信の状況をより確実に知ることができる。また、通信速度指標を信頼性指標で補正することでより信頼性のある通信速度が表示できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施の形態1に係る通信システムを示す構成図である。
【図2】図1の端末装置の構成を示す図である。
【図3】図2のCIR−DRC変換テーブルを示す図である。
【図4】図2の通信品質指標の導出を示す処理フローである。
【図5】図2の信頼性指標への変換テーブルを示す図である。
【図6】図6(a)−(b)は、図2の表示部の表示内容を示す図である。
【図7】図2の表示部のLED点灯パターンを示す図である。
【図8】実施の形態3に係る通信品質指標の導出を示す処理フローである。
【図9】実施の形態4に係る通信品質指標の導出を示す処理フローである。
【図10】実施の形態5に係るアプリケーションシステムの構成を示す図である。
【図11】実施の形態6に係る複数システムの選択動作を示す図である。
【図12】図11の複数システムの選択動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
10 ネットワーク、 12 基地局装置、 14 基地局用アンテナ、 16 端末用アンテナ、 18 端末装置、 20 PC、 22 RF部、 24 ベースバンド処理部、 26 CPU、 28 メモリ、 30 表示部、 32 操作部、 34 外部IF部、 40 共用器、 42 復調器、 44 変調器、 46 復号器、 48 予測器、 50 CIR−DRC変換テーブル、 52 符号化器、 54 MUX、 56 サーバ、 60 下り回線、 62 上り回線、 100 通信システム、 200 受信データ、 202 電力制御情報、 204 CIR値、 206 受信電力値、 208 CIR値、 210 DRC、 212 送信電力値、 214 送信データ、 300 アンテナバー、 302 アイコン。
【技術分野】
【0001】
本発明は可変の通信速度を制御可能な無線装置に関する。特に、環境の変動に応じて通信速度も変動するように制御する無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代の高速無線通信方式としてcdma2000 1x−EV DO(以下、「EV−DO」という)方式が開発されている。EV−DO方式とは、cdmaOne方式を拡張し第3世代方式に対応させたcdma2000 1x方式を、さらにデータ通信に特化して伝送レートを高速化させた方式である。ここで、「EV」はEvolution、「DO」はData Onlyを意味する。
【0003】
EV−DO方式において、無線通信端末から基地局への上り回線の無線インターフェースの構成はcdma2000 1X方式とほぼ同様である。基地局から無線通信端末への下り回線の無線インターフェース構成については、1.23MHzに規定された帯域幅がcdma2000 1x方式と同一である一方、変調方式、多重化方法等がcdma2000 1x方式と大きく異なる。変調方式は、cdma2000 1x方式において使用されているQPSK、HPSKに対し、EV−DO方式において、QPSK、8−PSK、16QAMが無線通信端末における下り回線の受信状態に応じて切り替えられる。その結果、受信状態が良好な場合は、誤り耐性が低くかつ高速な伝送レートを使用し、受信状態が悪い場合は、低速であるが誤り耐性の高い伝送レートを使用する。
【0004】
また、ひとつの基地局から複数の無線通信端末への通信を同時に行うための多重化方法には、cdmaOne方式やcdma2000 1x方式で使用される符号分割多重アクセス(CDMA:Code Division Multiple Access)ではなく、時間を1/600秒単位で分割し、その時間内ではひとつの無線通信端末だけと通信を行い、さらに通信対象となる無線通信端末を単位時間ごとに切り替えて複数の無線通信端末と通信を行う時分割多重アクセス(TDMA:Time Division Multiple Access)を使用する。
【0005】
無線通信端末は、通信対象となる基地局からの下り回線の受信状態としてパイロット信号の搬送波対干渉波比(以下、「CIR:Carrier to Interference power Ratio」という)を測定し、その変動から次の受信タイミングの受信状態を予測し、それから期待される「所定の誤り率以下で受信可能な最高伝送速度」をデータレートコントロールビット(以下、「DRC:Data Rate Control bit」という)として基地局に通知する。ここで、所定の誤り率は、システム設計に依存するが通常1%程度とされる。基地局は複数の無線通信端末からのDRCを受信し、基地局内のスケジューラ機能が各時分割単位にどの無線通信端末と通信するかを決定するが、各無線通信端末との通信には、基本的に無線通信端末からのDRCをもとに可能な限り高い伝送レートを使用する。
【0006】
EV−DO方式は上記のような構成により下り回線において、セクタあたり最大2.4Mbps(Mega−bit per second)の伝送レートを可能にする。ただし、この伝送レートは、ひとつの周波数帯域と、通常複数有するセクタのうちのひとつにおいて、ひとつの基地局が接続している複数の無線通信端末とのデータ通信量の合計であり、複数の周波数帯域を使用すれば伝送レートも増加する。
【特許文献1】特開2002−300644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
EV−DO方式の下り回線における伝送レートは、前述のとおり、無線通信端末の受信状態に依存し、静止状態のもっとも受信状態がよい場合では、2.4Mbpsとなるが、車両で中・高速移動する場合には平均して500〜700kbps程度、静止状態の受信状態がよくない場合では数十kbps程度にまで低下する。そのため、無線通信端末を使用するユーザが歩行している低速移動状態または、ほぼ静止の状態において、場所により著しい伝送レートの低下が起こりうる。この状態をユーザの運用によって回避可能なように、従来の携帯電話では、受信状態をユーザに通知するいわゆるアンテナマークの表示や警告音等が使用されている。例えば、cdmaOne方式携帯電話では、Ec/Io(総入力電力対チップあたりのエネルギー)をもとにした受信状態を通知している。
【0008】
しかし、EV−DO方式の下り回線における伝送レートは、CIRの瞬時値のみでなく、予測や過去の下り回線におけるデータ伝送の誤り率等の統計データによる補正等によっても影響を受けるので、CIRをもとにした受信状態だけでは誤差を含む可能性がある。さらに、受信状態の変動による伝送レートの変動が、PDC方式携帯電話やcdmaOne方式携帯電話よりも大きいため、受信状態の測定はより高い精度を必要とする。
【0009】
一方、上り回線における無線通信端末の送信電力は、cdma2000 1x方式と同様に基地局によって制御されるが、最大送信電力は、法規制等により例えば+23dBm(200mW)ないし+24dBm(約250mW)程度に制限される。基地局は各無線通信端末からの受信電力がほぼ一定の値になるように、あるいは所要の品質を満たすように、各無線通信端末に対し送信電力の増減を随時指示する。当該指示に従って、各無線通信端末は前記最大送信電力以下の範囲で送信電力を調整する。無線通信端末が基地局から遠距離に位置する場合、上り回線の信号が基地局に届きにくくなると、基地局は無線通信端末に送信電力の増加を指示する。しかし、無線通信端末の送信電力が最大送信電力に達すると、無線通信端末はそれ以上送信電力を増加できないため、上り回線のDRCが基地局に到達しなくなり、結果として下り回線のデータ伝送も行えなくなる。
【0010】
また、無線通信端末において復調器はAGC(Automatic Gain Control)を有しているため、AGCの動作範囲において伝送レートはCIRのみに依存し、一般に受信信号電力の影響を受けない。一方、受信信号電力がAGCの動作範囲以下になるとCIRが急速に劣化し、下り回線の信号を受信できなくなる。
【0011】
本発明者はこうした状況を認識して、本発明をなしたものであり、その目的は、通信品質に関する指標を通知する無線装置を提供することである。また、通信品質に関する指標を出力する無線装置を提供することである。また、信号の受信状態に応じてデータ通信速度が大きく変化するとともに、それ以外の要因によっても通信が切断される可能性のある通信システムに適した通信品質に関する指標を導出する無線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のある態様は、無線装置である。この装置は、基地局装置から可変の通信速度で送信される信号を受信する受信手段と、受信した信号の信号対干渉波比を測定する測定手段と、測定手段によって測定した信号対干渉波比から基地局装置によって将来的に送信される信号の通信速度の第一の予測値を導出する推定手段と、測定手段によって測定した信号対干渉波比から指標値を算出する指標計算手段と、指標値と通信速度の第一の予測値に基づいて通信速度の第二の予測値を算出する計算手段と、指標値と通信速度の第二の予測値を報知する報知手段とを備える。
【0013】
本発明の別の態様も、無線装置である。この装置は、基地局装置から可変の通信速度で送信される信号を受信する受信手段と、受信した信号の信号対干渉波比を測定する測定手段と、測定手段によって測定した信号対干渉波比から基地局装置によって将来的に送信される信号の通信速度の第一の予測値を導出する推定手段と、受信した信号から所定の電力値を検出する検出手段と、予め設定した基準値と検出した電力値に基づいて指標値を算出する電力指標計算手段と、該指標値と第一の予測値に基づいて第二の予測値を算出する計算手段と、指標値と第二の予測値を報知する報知手段とを備える。
【0014】
本発明のさらに別の態様も、無線装置である。この装置は、基地局装置から可変の通信速度で送信される信号を受信する受信手段と、受信した信号の信号対干渉波比を測定する測定手段と、測定手段によって測定した信号対干渉波比から基地局装置によって将来的に送信される信号の通信速度の第一の予測値を導出する推定手段と、測定手段によって測定された信号対干渉波比から第一の指標値を算出する指標計算手段と、受信した信号から所定の電力値を検出する検出手段と、予め設定した基準値と検出した電力値に基づいて第二の指標値を算出する電力指標計算手段と、第二の指標値と通信速度の第一の予測値に基づいて通信速度の第二の予測値を算出する計算手段と、第一の指標値と通信速度の第二の予測値を報知する報知手段とを備える。
【0015】
本発明のさらに別の態様も、無線装置である。この装置は、基地局装置から可変の通信速度で送信される信号を受信する受信手段と、受信した信号の信号対干渉波比を測定する測定手段と、測定手段によって測定した信号対干渉波比から基地局装置によって将来的に送信される信号の通信速度の第一の予測値を導出する推定手段と、測定手段によって測定された信号対干渉波比から第一の指標値を算出する指標計算手段と、受信した信号から所定の電力値を検出する検出手段と、予め設定した基準値と検出した電力値に基づいて第二の指標値を算出する電力指標計算手段と、第一の指標値と通信速度の第一の予測値に基づいて通信速度の第二の予測値を算出する計算手段と、第二の指標値と通信速度の第二の予測値を報知する報知手段とを備える。
【0016】
検出手段は、所定の電力値として、受信した信号の受信電力値を検出し、電力指標計算手段は、基準値として最小受信可能電力値を設定し、該最小受信可能電力値と受信電力値に基づいて指標値を算出してもよい。また、検出手段は、所定の電力値として、受信した信号に含まれる指示情報から送信電力値を検出し、電力指標計算手段は、基準値として最大送信可能電力値を設定し、該最大送信可能電力値と送信電力値に基づいて指標値を算出してもよい。
【0017】
本発明のさらに別の態様も、無線装置である。この装置は、基地局装置から可変の通信速度で送信される信号を受信する受信手段と、受信した信号の受信電力値を検出する受信電力検出手段と、該検出した受信電力値と最小受信可能電力値に基づいて第一の指標値を算出する第一指標計算手段と、受信した信号に含まれる指示情報から送信電力値を検出する送信電力検出手段と、該検出した送信電力値と最大送信可能電力値に基づいて第二の指標値を算出する第二指標計算手段と、受信した信号の信号対干渉波比を測定する測定手段と、該測定した信号対干渉波比から基地局装置によって将来的に送信される信号の通信速度の第一の予測値を導出する推定手段と、第一の指標値と第一の予測値に基づいて第二の予測値を算出する計算手段と、第二の指標値と第二の予測値を報知する報知手段とを備える。
【0018】
本発明のさらに別の態様も、無線装置である。この装置は、基地局装置から可変の通信速度で送信される信号を受信する受信手段と、受信した信号の受信電力値を検出する受信電力検出手段と、該検出した受信電力値と最小受信可能電力値に基づいて第一の指標値を算出する第一指標計算手段と、受信した信号に含まれる指示情報から送信電力値を検出する送信電力検出手段と、該検出した送信電力値と最大送信可能電力値に基づいて第二の指標値を算出する第二指標計算手段と、受信した信号の信号対干渉波比を測定する測定手段と、該測定した信号対干渉波比から基地局装置によって将来的に送信される信号の通信速度の第一の予測値を導出する推定手段と、第二の指標値と第一の予測値に基づいて第二の予測値を算出する計算手段と、第一の指標値と第二の予測値を報知する報知手段とを備える。
【0019】
本発明のさらに別の態様も、無線装置である。この装置は、処理対象とすべき信号を受信する受信部と、受信した信号の信号対干渉波比を測定する測定部と、測定部によって過去に測定された信号対干渉波比から、信号対干渉波比の予測値を計算する予測部と、信号対干渉波比の予測値と測定した信号対干渉波比の差違に応じて、通信の維持可能性を判定する判定部とを含む。
以上の装置により、実際に測定した信号対干渉比と予測した信号対干渉比を比較することによって、通信環境の変動の大きさを推定可能である。
【0020】
本発明のさらに別の態様も、無線装置である。この装置は、基地局装置から送信される通信速度が可変の信号を受信する受信部と、受信した信号の信号対干渉波比を測定する測定部と、受信した信号から、所定の電力値を検出する検出部と、測定した信号対干渉波比から、基地局装置によって将来的に送信される信号の通信速度の予測値を導出する推定部と、予め設定した基準値と検出した電力値の差違に応じて、将来的に送信される信号の通信速度の予測値についての信頼性を示す値を計算する計算部とを含む。
【0021】
基地局装置から送信される通信速度が可変の信号には、基地局装置へ所定の信号を送信する際の送信電力に関する指示情報が含まれ、検出部は、所定の電力値として、受信した信号に含まれた送信電力に関する指示情報から送信すべき信号の電力値を検出し、計算部は、基準値として最大送信可能電力値を設定し、最大送信可能電力値と送信すべき信号の電力値の差違に応じて、通信速度の予測値についての信頼性を示す値を計算してもよい。
【0022】
「送信電力に関する指示情報」は、送信電力値を指示する直接的な情報や現在の送信電力値からの増減を指示する間接的な情報を含み、最終的に送信電力値が決定できるような情報であればよいものとする。
【0023】
検出部は、所定の電力値として、受信した信号から受信した信号の電力値を検出し、計算部は、基準値として最小受信可能電力値を設定し、最小受信可能電力値と受信した信号の電力値の差違に応じて、通信速度の予測値についての信頼性を示す値を計算してもよい。
以上の装置により、通信速度の予測値に加えて、通信速度の予測値について信頼性を示す値も計算するため、当該通信速度の予測値について、より詳細な情報を提供可能である。
【0024】
本発明のさらに別の態様も、無線装置である。この装置は、基地局装置から送信される通信速度が可変の信号を受信する受信部と、受信した信号の信号対干渉波比を測定する測定部と、測定した信号対干渉波比から、基地局装置によって将来的に送信される信号の通信速度の予測値を導出する推定部と、測定部によって過去に測定された信号対干渉波比から、信号対干渉波比の予測値を計算する予測部と、信号対干渉波比の予測値と測定した信号対干渉波比の差違に応じて、将来的に送信される信号の通信速度の予測値についての信頼性を示す値を計算する計算部とを含む。
以上の装置により、通信速度の予測値に加えて、通信環境の変動の大きさに対応した通信速度の予測値についての信頼性を示す値も計算するため、当該通信速度の予測値の変動の可能性についての情報を提供可能である。
【0025】
将来的に送信される信号の通信速度の予測値と、通信速度の予測値についての信頼性を示す値をユーザに通知する通知部をさらに含んでもよい。将来的に送信される信号の通信速度の予測値と、通信速度の予測値についての信頼性を示す値を出力する出力部をさらに含んでもよい。
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、通信品質に関する指標を通知できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(実施の形態1)
実施の形態1は、前述したcdma2000 1x−EV DO方式における端末装置について、ユーザに通信の状況を通知するために通信品質指標を表示する技術に関する。本実施の形態においては通信品質指標として、通信速度を示す指標に加えて、当該通信速度の指標の信頼性を示す指標も表示して、ユーザによる通信の状況の認識をより確実なものにする。通信速度の指標は、DRCに対応したCIRをもとに導出し、信頼性を示す指標は、端末装置が送信可能な最大送信可能電力値と、端末装置が現在送信している送信電力値の差をもとに導出する。この差は、端末装置の送信電力値が最大送信可能電力値に達している場合、基地局装置に送信電力の増加を指示されても送信電力を上げることができず、基地局装置で必要とされる受信電力が得られない結果、より上り回線が切断されやすくなることを反映している。その結果、信頼性が低ければ、通信速度が低下する可能性が高いことを示す。
【0028】
図1は、実施の形態1に係る通信システム100を示す。通信システム100は、ネットワーク10、基地局装置12、基地局用アンテナ14、端末用アンテナ16、端末装置18、PC20を含む。
【0029】
端末装置18は、PC20と接続されて、あるいは単体でユーザに使用される。また、端末用アンテナ16を有する。
基地局装置12は、ネットワーク10に接続され、また端末装置18を接続する。図1では、基地局装置12と接続した端末装置18を1台としているが、複数であってもかまわない。また、基地局用アンテナ14を有する。
【0030】
基地局装置12から端末装置18へは、下り回線60によって信号が伝送され、端末装置18から基地局装置12へは、上り回線62によって信号が伝送される。下り回線60には、パイロット信号や送信電力指示信号等を含む制御信号、データ信号が存在し、上り回線62には、DRC、データ信号等が存在する。
【0031】
図2は、端末装置18の構成を示す。端末装置18は、RF部22、ベースバンド処理部24、CPU26、メモリ28、表示部30、操作部32、外部IF部34を含み、RF部22は、共用器40、復調器42、変調器44を含み、ベースバンド処理部24は、復号器46、予測器48、CIR−DRC変換テーブル50、符号化器52、MUX54を含む。
【0032】
復調器42は、端末用アンテナ16、共用器40を介して受信した信号を復調処理する。ここで、受信した信号は、QPSK、8PSK、16QAMのいずれで変調されているものとする。また、受信した信号から受信電力値206を計算して、CPU26へ出力する。
【0033】
復号器46は、復調した信号をスペクトル逆拡散処理する。ここで、当該端末装置18に割当てられた受信データ200が存在する場合は、受信データ200をCPU26へ出力する。基地局装置12によって指示された送信電力を示すための送信電力指示信号を制御信号から抽出し、それをもとに電力制御情報202を導出して、CPU26へ出力する。さらに、制御信号からパイロット信号を抽出し、それをもとにCIR値204を計算してCPU26と予測器48へ出力する。
【0034】
予測器48は、CIR値204から次の受信のスロットタイミングでのCIR値208を導出する。予測の方法についてはスタンダード中に明確に記述されたものはないが、例としては線形予測等の方法が挙げられる。
【0035】
CIR−DRC変換テーブル50により、CIR値208がDRC210に変換される。図3は、CIR−DRC変換テーブルの一例を示すが、これはQualcomm社の文献、IEEE Communications Magazine・July 2000「CDMA/HDR:A Bandwidth−Efficient High−Speed Wireless Data Service for Nomadic Users」より引用したものである。なお、DRCは図3のような通信速度ではなく、それに対応した値であってもよい。
【0036】
CPU26は、受信データ200を内部処理するか、あるいは外部IF部34を経由して外部に接続されたPC20へ受信データ200を送信する。DRC210やその他のデータをもとにユーザに通知するための通信品質指標を導出し、表示部30にアンテナマーク等の形で表示する。また、この指標は外部IF部34により外部のPC20へ送り、PC20における動画伝送やVoIPなどのアプリケーションが指標を元にQoS制御を行うように構成することもできる。例えば、通信速度が低下してきたらDRCで要求する要求通信速度を下げる、通信速度の信頼性が低下してきたら通信データバッファを大きくしてデータ信号を先読みするなどである。また、電力制御情報202を処理し、現在の送信電力値212を修正して新たな送信電力値212を決定する。CPU26で生成されたあるいはPC20から外部IF部34を介して入力されたデータ信号は送信データ214として出力する。
【0037】
MUX54は、送信データ214とDRC210をマルチプレクスする。
符号化器52は、マルチプレクスした信号をスペクトル拡散処理する。
変調器44は、スペクトル拡散した信号を変調し、さらにその信号は、共用器40と端末用アンテナ16経由で基地局装置12へ送信される。
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリのロードされた予約管理機能のあるプログラムなどによって実現されるが、ここではCPU26、ベースバンド処理部24、RF部22等による構成を描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0038】
図4は、通信品質指標の導出の処理フローを示す。図2の復調器42、さらに復号器46に信号が入力される(S10)。復号器46でCIR値204が、さらに予測器48でCIR値208が導出される(S12)。つまり、予測器48では、CIR値204から次に受信するタイミングでのCIRを予測してCIR値208を計算する。CIR−DRC変換テーブル50は、CIR値208をDRC210に変換する(S14)。復号器46は、電力制御情報202を検出する(S18)。さらに、CPU26では、現在の送信電力値を電力制御情報202で補正して送信電力値を導出する。
【0039】
CPU26は、DRC210から通信速度指標を導出し(S16)、電力制御情報202から信頼性指標を導出する(S20)。ここでは、通信速度指標は、4bitの値で通信速度と対応したDRC210の値(単位なし)そのものか、図3に示すような通信速度(単位はbps)、またはCIR値204(単位はdB)のいずれかもしくはこれらのいずれかの値を元にした換算値とされる。換算値としては、例えばdB単位の値を−0.5dB単位で端数切捨てないし四捨五入して整数表記したものなどがあり、−23.9dBを−0.5dB単位で整数化する場合、(−23.9dB)/(−0.5dB)=47.8より、四捨五入して48を指標とする。また、信頼性指標は、送信電力値(単位dBm)と最大送信可能電力値(単位dBm)の差(単位dB)や、差を元にした換算値とされる。ここで、最大送信可能電力値は23dBmとし、換算値は上記同様に計算される。また、信頼性指標は、図5に示すテーブルを使用して導出されてもよい。一例として、信頼性指標値は、信頼性が高い場合、すなわち前述の差が大きい場合に指標値20、信頼性が低い場合に指標値0として示される。
【0040】
CPU26は、通信速度指標と信頼性指標を表示部30で表示するか、外部IF部34から出力する(S22)。図6(a)−(b)は、表示部30の表示内容を示す。アンテナバー300が通信速度指標を、アイコン302が信頼性指標を示す。また、図6(a)は、通信速度指標が低く、信頼性指標が高い場合、図6(b)は、通信速度指標が高く、信頼性指標が低い場合を示す。また、図7に示すLED点灯パターンによって、ユーザに通知してもよい。ここで、通信速度指標と信頼性指標は、それぞれ緑色、赤色といった別のLEDで表示される。また、点滅1と点滅2のちがいは、点滅2の方が、点灯している比率が高いものとする。
【0041】
本実施の形態によれば、通信速度指標にDRCを用いることにより、直接的に通信速度の目安を得ることができる。また、信頼性指標に「送信電力値と最大送信可能電力値の差」を使用するため、端末装置での受信状態がよく、高CIR/高DRCで高い通信速度が期待できる環境においても、送信電力値が最大送信可能電力値に近い場合に、将来的に送信電力値が最大送信可能電力値に達し、それでも不十分な場合に上り回線の信号が基地局装置に到達しないことによる通信断をあらかじめ予測できる。
【0042】
(実施の形態2)
実施の形態2は、実施の形態1と同様にEV−DO方式における端末装置について、通信品質指標として通信速度を示す指標と当該通信速度の指標の信頼性を示す指標を表示する技術に関する。実施の形態1では、信頼性を示す指標を送信電力値をもとに導出したが、実施の形態2では、端末装置が受信可能な最小受信可能電力値と、端末装置が現在受信している受信電力値の差をもとに導出する。この差は、端末装置のAGCの動作範囲では通信速度はCIRに依存して、受信電力値の影響を受けないが、受信電力値がAGCの動作範囲以下になるとCIRが急激に劣化し、下り回線が切断されやすくなることを反映している。その結果、信頼性が低ければ、通信速度が低下する可能性が高いことを示す。
【0043】
実施の形態2における端末装置18として、図2に示されるものが有効である。また、実施の形態2における通信品質指標の導出の処理フローとしては、図4に示されるものが有効である。ここでは、ステップ18とステップ20の処理が異なる。ステップ18に対応して、復調器42が受信電力値206を検出する。ステップ20に対応して、信頼性指標は、受信電力値206(単位dBm)と最小受信可能電力値(単位dBm)の差(単位dB)や、差を元にした換算値とされる。また、信頼性指標は、図5と同様なテーブルを使用して導出されてもよい。ここで最小受信可能電力値は、予め当該端末装置18に対応した値を設定する。
【0044】
本実施の形態によれば、信頼性指標に「受信電力値と最低受信可能電力値の差」を使用するため、下り回線の信号が受信できる強度の下限近傍である場合、基地局装置からの下り回線の信号が受信できないことによる通信断をあらかじめ予測できる。
【0045】
(実施の形態3)
実施の形態3は、実施の形態1、2と同様に、EV−DO方式における端末装置について、通信品質指標として通信速度を示す指標と当該通信速度の指標の信頼性を示す指標を表示する技術に関する。実施の形態3では、信頼性を示す指標を1/600秒ごとに受信したスロットで測定されるCIRと、任意のアルゴリズムで求めた将来的な予測CIRの差より導出する。この差は、一般的に、通信環境の変化が少ない静止状態で小さいが、端末装置の移動状態では予測CIRはCIRより低くなる傾向があり、通信環境の変化の有無を反映する。
【0046】
実施の形態3における端末装置18として、図2に示されるものが有効である。
図8は、通信品質指標の導出の処理フローを示す。図2の復調器42、さらに復号器46に信号が入力される(S30)。復号器46でCIR値204が導出される(S32)。さらに予測器48で次の受信タイミングのCIR値208が導出され、CIR−DRC変換テーブル50は、CIR値208をDRC210に変換する(S34)。CPU26は、DRC210から通信速度指標を導出する(S36)。一方、CPU26は、CIR値204から予測CIR値を計算する(S38)。予測CIR値は、例えば、過去のCIR値204をもとに外挿補間等によって計算される。なお、予測CIR値の変わりに予測器48で計算したCIR値208を使用してもよい。
【0047】
さらに、CPU26は、信頼性指標を計算する(S40)。通信環境の変化の度合いと「CIR値204と予測CIRの差」の関係は予測に用いるアルゴリズムに依存するが、例えば、静止状態では指標値が15前後、低速移動状態では指標値が10前後、高速移動状態では指標値が5前後となるような、予測アルゴリズムを使用すればよい。CPU26は、通信速度指標と信頼性指標を表示部30で表示するか、外部IF部34から出力する(S42)。また、通信速度指標を信頼性指標で補正してより信頼のある通信速度を表示してもよい。なお、その場合の式の例としては次のとおりである。
(数1)
下り通信速度指標=DRCに対応した通信速度×α
ただし、αは以下の通りである。
(数2)
|CIR値と予測CIRの値の差|≧20(dB)のとき
α=0
|CIR値と予測CIRの値の差|<20のとき
α=(20−|CIR値と予測CIRの値の差|)×0.05
【0048】
本実施の形態によれば、信頼性指標として、通信環境の変化の有無を示す「実測CIRと予測CIRの差」を使用するために、送信あるいは受信の状態が通信断に近い状況からすぐに通信断に至る可能性が高いか、あるいは低いかを指標に含めることができる。これは上り回線又は下り回線の通信状態が通信断に近い状態で、通信状態の変動が大きい場合は通信状態が通信断にいたる可能性が高く、一方通信状態の変動が小さければその状態が維持され、通信断に直ちに至る可能性は低いと考えることができるからである。
【0049】
(実施の形態4)
実施の形態4は、これまでの実施の形態と同様に、EV−DO方式における端末装置についての通信品質指標を表示する技術に関する。本実施の形態では、上り回線と、下り回線の通信品質指標を別に表示する。上り回線の通信品質指標は、端末装置が送信可能な最大送信可能電力値と、端末装置が現在送信している送信電力値の差をもとに導出する。一方、下り回線の通信品質指標は、DRCにより予測される通信速度の値を「端末装置が受信可能な最小受信可能電力値と、端末装置が現在受信している受信電力値の差」で補正して導出する。補正の方法は、「端末装置が受信可能な最小受信可能電力値と、端末装置が現在受信している受信電力値の差」が0になったときに、「通信品質の指標」が最低値になるようにする。
【0050】
実施の形態4における端末装置18として、図2に示されるものが有効である。
図9は、実施の形態4に係る通信品質指標の導出の処理フローを示す。図2の復調器42、さらに復号器46に信号が入力される(S50)。復号器46でCIR値204が、さらに予測器48でCIR値208が導出される(S52)。CIR−DRC変換テーブル50は、CIR値208をDRC210に変換する(S54)。復調器42が受信電力値206を検出する(S56)。CPU26は、「受信電力値206と最小受信可能電力値の差」が所定のしきい値以上の場合に、DRC210より定まる通信速度(38.4kbps〜2457.6kbps)をそのまま下り回線60の通信品質指標とし、しきい値以下の場合に、以下に示す値を下り回線60の通信品質指標とする(S58)。
【0051】
(数3)
下り通信速度指標=DRCに対応した通信速度×(受信電力値−最小受信可能電力値)÷10
ここで、下り回線60の通信品質指標の単位はbpsとする。また、他の例として下り回線60の通信品質指標としてCIR値208を用いる場合、CIRの最低値を−15dBとして、「受信電力値206と最小受信可能電力値の差」が所定のしきい値以上の場合に、CIR値208をそのまま下り回線60の通信品質指標とし、しきい値以下の場合に、以下に示す値を下り回線60の通信品質指標とする。
【0052】
(数4)
下り通信品質指標=(CIR+15)×(受信電力値−最小受信可能電力値)÷10−15
ここで、下り回線60の通信品質指標の単位はdBとする。
復号器46は、電力制御情報202から送信電力を検出する(S60)。CPU26は、電力制御情報202から上り回線62の通信品質指標を計算する(S62)。CPU26は、下り通信品質指標と上り通信品質指標を表示部30で表示するか、外部IF部34から出力する(S64)。
【0053】
本実施の形態によれば、下り回線の通信品質指標として「受信電力値と最低受信可能電力値の差」とDRCまたはCIRを使用するため、予測される下り回線の通信速度に加えて、下り回線の通信状態の悪化による通信速度低下の可能性も反映した指標を得ることができる。具体的には例えば基地局装置から離れていてかつ周囲に他の基地局装置が無い場所では干渉波が存在しないため、CIRは高いものの受信電力値が最低受信可能電力値に近く、下り回線の通信状態が急速に悪化する可能性が指標値に反映される。また、上り通信品質指標に「送信電力値と最大送信可能電力値の差」を使用するため、端末装置での受信状態がよく、高CIR/高DRCで高い通信速度が期待できる環境においても、送信電力値が最大送信可能電力値に近い場合に、将来的に送信電力値が最大送信可能電力値に達し、それでも不十分な場合に上り回線の信号が基地局装置に到達しないことによる通信断をあらかじめ予測できる。
【0054】
(実施の形態5)
これまで述べた実施の形態では、通信品質指標をユーザが通信の状況を認識するために表示した。本実施の形態では、端末装置が当該通信品質指標を所定のネットワークで使用されるアプリケーションに出力し、アプリケーションが当該通信品質指標を参照して、通信速度等を設定する。すなわち、EV−DO方式等の無線通信網上でストリーミングビデオ等のアプリケーションを使用する場合、無線通信網上で送受できる通信速度は電波環境の変化や他のユーザによるトラフィックの発生等さまざまな要因により変化するため、アプリケーションによるストリーミングに使用可能な通信速度の確保が困難である。
【0055】
アプリケーションが、高い通信速度を前提としてビデオを伝送した場合、その通信速度が確保できた場合は高品位の画質を得ることができるが、通信速度が変動により前提とする値を下回った場合、画像情報の欠落や動画の停止等の品質の低下が発生する。一方、通信速度の変動に備えて低い通信速度を前提としてビデオを伝送した場合、実際の通信速度に関わらず低品位の動画しか得られない。端末装置で導出された通信品質指標は、通信速度の設定のために使用される。
【0056】
図10は、本実施の形態に係るアプリケーションシステムの構成を示す。図10は、図1における通信システム100の構成に加えて、サーバ56を含む。ここでは、PC20でアプリケーションクライアントを動作させている。端末装置18は基地局装置12からの受信したパイロット信号および受信電力、送信電力を元にDRC及び通信品質指標である品質情報を決定し、DRCを基地局に送信し、品質情報をPC20に通知する。PC20は品質情報、さらに受信バッファの空き容量や受信データ信号の誤り率等の各種の情報をもとにして、EV−DO方式のトラフィックチャネル上で使用可能な通信速度を推定し、当該通信速度を端末装置18、基地局装置12、ネットワーク10を経由してサーバ56に通知し、それをもとにサーバ56は送出する動画データの通信速度を増減する。
【0057】
本実施の形態によれば、PCやネットワーク等でのアプリケーションに通信品質指標を通知することによって、通信品質指標をQoS(Quality of Service)制御の判断基準として使用できる。
【0058】
(実施の形態6)
本実施の形態は、EV−DO方式とcdma2000 1x方式の複合端末や複数の無線方式を組み合わせて、環境により最適な通信方式を選択して通信する方式(以下、「シームレス通信」という)において、通信品質指標をEV−DO方式の通信品質を求めるパラメータとして利用する。
【0059】
図11は、本実施の形態に係る複数システムの選択動作の一例を示す。複数システムとしては、EV−DO方式、簡易型携帯電話、W−LAN(Wireless−LAN)とする。ここでは、横軸に時間を示し、縦軸にそれぞれのシステムにおけるスループットを示す。なお、W−LANについては、使用可能あるいは使用不可のみを示す。具体的には、EV−DO方式の通信速度指標が90kbps程度、簡易型携帯電話が128kbps程度が期待できる受信電界強度、W−LANが圏外という場合は簡易型携帯電話を選択し、環境が変化してEV−DO方式の通信速度指標が200kbps程度になれば、EV−DO方式に切り替えるなどの制御をする。
【0060】
図12は、複数システムの選択動作のフローチャートを示す。ここでは、W−LAN、EV−DO方式、簡易型携帯電話の順に優先順位を設けて、システムを選択する。EV−DO方式に対して品質情報を、W−LANに対してRSSI値を、簡易型携帯電話に対してスループットを取得する(S100)。W−LANのRSSI値が−90dBmより大きい場合(S102のY)、W−LANを選択する(S114)。一方、W−LANのRSSI値が−90dBm以下の場合(S102のN)、かつEV−DO方式の品質情報がしきい値より大きい場合(S104のY)、EV−DO方式を選択する(S116)。一方、EV−DO方式の品質情報がしきい値以下の場合(S104のN)、かつ簡易型携帯電話のスループットが64kbpsより大きい場合(S106のY)、簡易型携帯電話を選択する(S118)。
【0061】
一方、簡易型携帯電話のスループットが64kbps以下の場合(S106のN)、かつW−LANが使用可能な場合(S108のY)、W−LANを選択する(S114)。一方、W−LANが使用不可能な場合(S108のN)、かつEV−DO方式が使用可能な場合(S110のY)、EV−DO方式を選択する(S116)。一方、EV−DO方式が使用不可能な場合(S110のN)、かつ簡易型携帯電話が使用可能な場合(S112のY)、簡易型携帯電話を選択する(S118)。一方、簡易型携帯電話が使用不可能な場合(S112のN)、接続不可になる(S120)。以上の処理は、データを受信している期間続行する(S122のY)が、データを受信しなくなれば(S122のN)終了する。
【0062】
本実施の形態によれば、シームレス通信におけるシステム選択の基準として、EV−DO方式については通信品質指標を使用することによって、より正確な選択基準を提供可能にする。
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0063】
実施の形態1から3において、CPU26は、通信品質指標のひとつとして、送信電力値等から信頼性指標を計算した。しかし、これらに限られず、さまざまな電力値から計算された値を組み合わせて通信品質指標としてもよい。例えば、新たな信頼性指標として、送信電力値に対応した信頼性指標と受信電力値に対応した信頼性指標を組み合わせたり、あるいは新たな通信速度指標として、予測CIR値で補正した通信速度指標を使用してもよい。本変形例により、前者では、上り回線62と下り回線60の電波伝搬環境の非対称性から上り回線62は送信電力値と最大送信電力値の差が大きいが、下り回線60の信号は受信できる強度の下限に近い場合、基地局装置からの下り回線60の信号が受信できないことによる通信断をあらかじめ予測することができ、後者では、送信あるいは受信の状態が通信断に近い状況からすぐに通信断に至る可能性が高いか低いかを指標に含めることができる。
【0064】
さらに、送信電力値に対応した信頼性指標と受信電力値に対応した信頼性指標を組み合わせた新たな信頼性指標に通信環境の変化を反映させた補正をしてもよい。例えば、CIRないし受信電力値の短時間(例えば20ms)の平均値をもとに、それより長い期間(例えば1sec)における前記短時間平均値の最小値と最大値の差を計算し、その値が大きいほど通信環境の変化が大きいと考える。CIRの1秒間における20ms毎の短時間平均値の最小値と最大値の差を用いて補正する場合、最大値と最小値の差が10dB以上の場合は、補正値を10とし、差が10dB以下の場合は、最大値と最小値の差を補正値として、信頼性指標を示す値を補正する。一方、受信電力値において、最大値と最小値の差が20dB以上の場合は、補正値を10とし、差が20dB以下の場合は、最大値と最小値の差に1/2を乗じた値を補正値として、信頼性指標を示す値を補正する。本変形例より、通信品質指標をより詳細に表示可能である。
【0065】
実施の形態1において、表示部30は、通信速度指標としてアンテナバー300を表示し、信頼性指標としてアイコン302を表示している。しかし、表示部30の表示はこれに限られず、通信速度指標を通信速度の数字として表示してもよいし、バイブレーションのような形でユーザに通知してもよい。本変形例により、表示部30の表示内容がユーザにより明確になる。
通信速度指標と信頼性指標を両方表示することにより、ユーザは通信の状況をより確実に知ることができる。また、通信速度指標を信頼性指標で補正することでより信頼性のある通信速度が表示できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施の形態1に係る通信システムを示す構成図である。
【図2】図1の端末装置の構成を示す図である。
【図3】図2のCIR−DRC変換テーブルを示す図である。
【図4】図2の通信品質指標の導出を示す処理フローである。
【図5】図2の信頼性指標への変換テーブルを示す図である。
【図6】図6(a)−(b)は、図2の表示部の表示内容を示す図である。
【図7】図2の表示部のLED点灯パターンを示す図である。
【図8】実施の形態3に係る通信品質指標の導出を示す処理フローである。
【図9】実施の形態4に係る通信品質指標の導出を示す処理フローである。
【図10】実施の形態5に係るアプリケーションシステムの構成を示す図である。
【図11】実施の形態6に係る複数システムの選択動作を示す図である。
【図12】図11の複数システムの選択動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
10 ネットワーク、 12 基地局装置、 14 基地局用アンテナ、 16 端末用アンテナ、 18 端末装置、 20 PC、 22 RF部、 24 ベースバンド処理部、 26 CPU、 28 メモリ、 30 表示部、 32 操作部、 34 外部IF部、 40 共用器、 42 復調器、 44 変調器、 46 復号器、 48 予測器、 50 CIR−DRC変換テーブル、 52 符号化器、 54 MUX、 56 サーバ、 60 下り回線、 62 上り回線、 100 通信システム、 200 受信データ、 202 電力制御情報、 204 CIR値、 206 受信電力値、 208 CIR値、 210 DRC、 212 送信電力値、 214 送信データ、 300 アンテナバー、 302 アイコン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局装置から可変の通信速度で送信される信号を受信する受信手段と、
前記受信した信号の信号対干渉波比を測定する測定手段と、
前記測定手段によって測定した信号対干渉波比から前記基地局装置によって将来的に送信される信号の通信速度の第一の予測値を導出する推定手段と、
前記測定手段によって測定した信号対干渉波比から指標値を算出する指標計算手段と、
前記指標値と通信速度の第一の予測値に基づいて通信速度の第二の予測値を算出する計算手段と、
前記指標値と通信速度の第二の予測値を報知する報知手段と、
を備えたことを特徴とする無線装置。
【請求項2】
基地局装置から可変の通信速度で送信される信号を受信する受信手段と、
前記受信した信号の信号対干渉波比を測定する測定手段と、
前記測定手段によって測定した信号対干渉波比から前記基地局装置によって将来的に送信される信号の通信速度の第一の予測値を導出する推定手段と、
前記受信した信号から所定の電力値を検出する検出手段と、
予め設定した基準値と前記検出した電力値に基づいて指標値を算出する電力指標計算手段と、該指標値と第一の予測値に基づいて第二の予測値を算出する計算手段と、
前記指標値と第二の予測値を報知する報知手段と、
を備えたことを特徴とする無線装置。
【請求項3】
基地局装置から可変の通信速度で送信される信号を受信する受信手段と、
前記受信した信号の信号対干渉波比を測定する測定手段と、前記測定手段によって測定した信号対干渉波比から前記基地局装置によって将来的に送信される信号の通信速度の第一の予測値を導出する推定手段と、前記測定手段によって測定された信号対干渉波比から第一の指標値を算出する指標計算手段と、
前記受信した信号から所定の電力値を検出する検出手段と、予め設定した基準値と前記検出した電力値に基づいて第二の指標値を算出する電力指標計算手段と、
前記第二の指標値と通信速度の第一の予測値に基づいて通信速度の第二の予測値を算出する計算手段と、前記第一の指標値と通信速度の第二の予測値を報知する報知手段と、
を備えたことを特徴とする無線装置。
【請求項4】
基地局装置から可変の通信速度で送信される信号を受信する受信手段と、
前記受信した信号の信号対干渉波比を測定する測定手段と、前記測定手段によって測定した信号対干渉波比から前記基地局装置によって将来的に送信される信号の通信速度の第一の予測値を導出する推定手段と、前記測定手段によって測定された信号対干渉波比から第一の指標値を算出する指標計算手段と、
前記受信した信号から所定の電力値を検出する検出手段と、予め設定した基準値と前記検出した電力値に基づいて第二の指標値を算出する電力指標計算手段と、
前記第一の指標値と通信速度の第一の予測値に基づいて通信速度の第二の予測値を算出する計算手段と、前記第二の指標値と通信速度の第二の予測値を報知する報知手段と、
を備えたことを特徴とする無線装置。
【請求項5】
前記検出手段は、所定の電力値として、前記受信した信号の受信電力値を検出し、
前記電力指標計算手段は、基準値として最小受信可能電力値を設定し、該最小受信可能電力値と前記受信電力値に基づいて指標値を算出することを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の無線装置。
【請求項6】
前記検出手段は、所定の電力値として、前記受信した信号に含まれる指示情報から送信電力値を検出し、
前記電力指標計算手段は、基準値として最大送信可能電力値を設定し、該最大送信可能電力値と前記送信電力値に基づいて指標値を算出することを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の無線装置。
【請求項7】
基地局装置から可変の通信速度で送信される信号を受信する受信手段と、
前記受信した信号の受信電力値を検出する受信電力検出手段と、該検出した受信電力値と最小受信可能電力値に基づいて第一の指標値を算出する第一指標計算手段と、
前記受信した信号に含まれる指示情報から送信電力値を検出する送信電力検出手段と、該検出した送信電力値と最大送信可能電力値に基づいて第二の指標値を算出する第二指標計算手段と、
前記受信した信号の信号対干渉波比を測定する測定手段と、該測定した信号対干渉波比から前記基地局装置によって将来的に送信される信号の通信速度の第一の予測値を導出する推定手段と、
前記第一の指標値と第一の予測値に基づいて第二の予測値を算出する計算手段と、前記第二の指標値と第二の予測値を報知する報知手段と、
を備えたことを特徴とする無線装置。
【請求項8】
基地局装置から可変の通信速度で送信される信号を受信する受信手段と、
前記受信した信号の受信電力値を検出する受信電力検出手段と、該検出した受信電力値と最小受信可能電力値に基づいて第一の指標値を算出する第一指標計算手段と、
前記受信した信号に含まれる指示情報から送信電力値を検出する送信電力検出手段と、該検出した送信電力値と最大送信可能電力値に基づいて第二の指標値を算出する第二指標計算手段と、
前記受信した信号の信号対干渉波比を測定する測定手段と、該測定した信号対干渉波比から前記基地局装置によって将来的に送信される信号の通信速度の第一の予測値を導出する推定手段と、
前記第二の指標値と第一の予測値に基づいて第二の予測値を算出する計算手段と、前記第一の指標値と第二の予測値を報知する報知手段と、
を備えたことを特徴とする無線装置。
【請求項1】
基地局装置から可変の通信速度で送信される信号を受信する受信手段と、
前記受信した信号の信号対干渉波比を測定する測定手段と、
前記測定手段によって測定した信号対干渉波比から前記基地局装置によって将来的に送信される信号の通信速度の第一の予測値を導出する推定手段と、
前記測定手段によって測定した信号対干渉波比から指標値を算出する指標計算手段と、
前記指標値と通信速度の第一の予測値に基づいて通信速度の第二の予測値を算出する計算手段と、
前記指標値と通信速度の第二の予測値を報知する報知手段と、
を備えたことを特徴とする無線装置。
【請求項2】
基地局装置から可変の通信速度で送信される信号を受信する受信手段と、
前記受信した信号の信号対干渉波比を測定する測定手段と、
前記測定手段によって測定した信号対干渉波比から前記基地局装置によって将来的に送信される信号の通信速度の第一の予測値を導出する推定手段と、
前記受信した信号から所定の電力値を検出する検出手段と、
予め設定した基準値と前記検出した電力値に基づいて指標値を算出する電力指標計算手段と、該指標値と第一の予測値に基づいて第二の予測値を算出する計算手段と、
前記指標値と第二の予測値を報知する報知手段と、
を備えたことを特徴とする無線装置。
【請求項3】
基地局装置から可変の通信速度で送信される信号を受信する受信手段と、
前記受信した信号の信号対干渉波比を測定する測定手段と、前記測定手段によって測定した信号対干渉波比から前記基地局装置によって将来的に送信される信号の通信速度の第一の予測値を導出する推定手段と、前記測定手段によって測定された信号対干渉波比から第一の指標値を算出する指標計算手段と、
前記受信した信号から所定の電力値を検出する検出手段と、予め設定した基準値と前記検出した電力値に基づいて第二の指標値を算出する電力指標計算手段と、
前記第二の指標値と通信速度の第一の予測値に基づいて通信速度の第二の予測値を算出する計算手段と、前記第一の指標値と通信速度の第二の予測値を報知する報知手段と、
を備えたことを特徴とする無線装置。
【請求項4】
基地局装置から可変の通信速度で送信される信号を受信する受信手段と、
前記受信した信号の信号対干渉波比を測定する測定手段と、前記測定手段によって測定した信号対干渉波比から前記基地局装置によって将来的に送信される信号の通信速度の第一の予測値を導出する推定手段と、前記測定手段によって測定された信号対干渉波比から第一の指標値を算出する指標計算手段と、
前記受信した信号から所定の電力値を検出する検出手段と、予め設定した基準値と前記検出した電力値に基づいて第二の指標値を算出する電力指標計算手段と、
前記第一の指標値と通信速度の第一の予測値に基づいて通信速度の第二の予測値を算出する計算手段と、前記第二の指標値と通信速度の第二の予測値を報知する報知手段と、
を備えたことを特徴とする無線装置。
【請求項5】
前記検出手段は、所定の電力値として、前記受信した信号の受信電力値を検出し、
前記電力指標計算手段は、基準値として最小受信可能電力値を設定し、該最小受信可能電力値と前記受信電力値に基づいて指標値を算出することを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の無線装置。
【請求項6】
前記検出手段は、所定の電力値として、前記受信した信号に含まれる指示情報から送信電力値を検出し、
前記電力指標計算手段は、基準値として最大送信可能電力値を設定し、該最大送信可能電力値と前記送信電力値に基づいて指標値を算出することを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の無線装置。
【請求項7】
基地局装置から可変の通信速度で送信される信号を受信する受信手段と、
前記受信した信号の受信電力値を検出する受信電力検出手段と、該検出した受信電力値と最小受信可能電力値に基づいて第一の指標値を算出する第一指標計算手段と、
前記受信した信号に含まれる指示情報から送信電力値を検出する送信電力検出手段と、該検出した送信電力値と最大送信可能電力値に基づいて第二の指標値を算出する第二指標計算手段と、
前記受信した信号の信号対干渉波比を測定する測定手段と、該測定した信号対干渉波比から前記基地局装置によって将来的に送信される信号の通信速度の第一の予測値を導出する推定手段と、
前記第一の指標値と第一の予測値に基づいて第二の予測値を算出する計算手段と、前記第二の指標値と第二の予測値を報知する報知手段と、
を備えたことを特徴とする無線装置。
【請求項8】
基地局装置から可変の通信速度で送信される信号を受信する受信手段と、
前記受信した信号の受信電力値を検出する受信電力検出手段と、該検出した受信電力値と最小受信可能電力値に基づいて第一の指標値を算出する第一指標計算手段と、
前記受信した信号に含まれる指示情報から送信電力値を検出する送信電力検出手段と、該検出した送信電力値と最大送信可能電力値に基づいて第二の指標値を算出する第二指標計算手段と、
前記受信した信号の信号対干渉波比を測定する測定手段と、該測定した信号対干渉波比から前記基地局装置によって将来的に送信される信号の通信速度の第一の予測値を導出する推定手段と、
前記第二の指標値と第一の予測値に基づいて第二の予測値を算出する計算手段と、前記第一の指標値と第二の予測値を報知する報知手段と、
を備えたことを特徴とする無線装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−113455(P2008−113455A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307934(P2007−307934)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【分割の表示】特願2003−38901(P2003−38901)の分割
【原出願日】平成15年2月17日(2003.2.17)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【分割の表示】特願2003−38901(P2003−38901)の分割
【原出願日】平成15年2月17日(2003.2.17)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]