説明

無線装置

【課題】検出用の発振器等の回路を別途設けることなく、プロセス変動または温度変動が発生した場合にも性能を最適化しうる無線装置を提供する。
【解決手段】無線装置は、デジタルベースバンド部1−1のクロック生成用のPLL10を含む構成である。出力可変レギュレータ5は、PLL10におけるVCO6の発振周波数を制御するVCO制御電圧を入力し、VCO制御電圧に応じて出力電圧を可変して、アンプ3等の高周波回路の電源端子に電源電圧として供給する。これにより、温度変動またはプロセス変動に伴ってVCO制御電圧が変化し、VCO制御電圧に基づいて高周波回路の電源電圧が制御されるため、温度変動またはプロセス変動による性能劣化の補償がなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルベースバンド部と高周波回路とを備えた無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線装置において、特に高周波信号増幅用アンプは、半導体製造プロセスのプロセス変動、あるいは実動作時の温度変動などによって、性能変化が大きい。例えば、プロセス変動によって、アンプを構成するトランジスタの電流が少なくなると、最大発振周波数fmaxが低くなるため、周波数特性の劣化を招く。また、温度が高くなると、トランジスタの動作遅延が大きくなり、周波数特性が劣化する。
【0003】
プロセス変動または温度変動による性能劣化の課題を解決するために、回路の電源電圧を調整する電源電圧調整装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
図15は、特許文献1に記載の従来例の電源電圧調整装置の構成を示す図である。集積回路20は、主要回路21と、発振器22と、発振器の出力信号をカウントし周波数を求めるカウンタ23と、発振器の出力の周波数に基づいて電源供給回路25の出力電圧を調整する信号を出力する制御部24とを含む構成である。
【0005】
発振器22は、リングオシレータによって構成される。図16は、リングオシレータの構成の一例を示す図である。リングオシレータは、奇数個のインバータ31〜35が直列接続され、出力側のインバータ35から出力される出力信号が入力側のインバータ31の入力へフィードバックされる。リングオシレータに電源を供給すると、インバータの動作遅延時間に依存する周波数において発振する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2007/034540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発振器22のリングオシレータにおいて、インバータの動作遅延時間はプロセス変動によって変化する。例えば、トランジスタの閾値電圧Vthがプロセス変動によって低くなると、インバータの動作遅延時間が短くなり、リングオシレータの発振周波数が高くなる。反対にトランジスタの閾値電圧Vthがプロセス変動によって高くなると、インバータの動作遅延時間が長くなり、リングオシレータの発振周波数が低くなる。
【0008】
また、インバータの動作遅延時間は温度変動でも変化する。例えば、温度が低くなるとインバータの動作遅延時間が短くなり、リングオシレータの発振周波数が高くなる。反対に温度が高くなるとインバータの動作遅延時間が長くなり、リングオシレータの発振周波数が低くなる。
【0009】
上述したリングオシレータの特徴を活かして、図15の電源電圧調整装置では、発振器22の出力周波数を観測することによって、等価的にプロセス変動と温度変動を検出している。そして、検出結果に基づいた電源電圧の調整によって、主要回路の性能劣化を防いでいる。反対に、主要回路の動作マージンが増える方向にプロセスまたは温度が変動した場合は、電源電圧を下げて動作マージンを減らし低消費電力化を図ることができる。
【0010】
しかしながら、プロセス変動と温度変動を検出するための発振器を別途集積回路上に搭載することは、チップ面積が増加し、コストを増加させるという別の課題を招く。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、検出用の発振器等の回路を別途設けることなく、プロセス変動または温度変動が発生した場合にも性能を最適化しうる無線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、無線装置として、制御電圧に応じた周波数の信号を発振する電圧制御発振器を有するPLLと、前記制御電圧に基づいて出力電圧を変化させる出力可変レギュレータと、前記出力可変レギュレータの出力電圧が電源電圧として供給される高周波回路と、を含むものである。
上記構成により、温度変動またはプロセス変動に伴って電圧制御発振器の制御電圧が変化し、制御電圧に基づいて高周波回路の電源電圧が制御されるため、温度変動またはプロセス変動が発生した場合の性能劣化が補償される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、検出用の発振器等の回路を別途設けることなく、プロセス変動または温度変動が発生した場合にも性能を最適化できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】無線装置の構成を示すブロック図
【図2】高周波信号増幅用アンプの構成の一例を示す回路図
【図3】トランジスタの代表的な特性を表すグラフ
【図4】本発明の第1の実施形態における無線装置の構成を示すブロック図
【図5】出力可変レギュレータの構成を示す図
【図6】PLLがロックしていないリングオシレータの発振周波数の温度依存性の一例を示すグラフ
【図7】PLLがロックしていないリングオシレータの発振周波数のプロセス変動依存性の一例を示すグラフ
【図8】PLLがロックしたVCO制御電圧の温度依存性の一例を示すグラフ
【図9】PLLがロックしたVCO制御電圧のプロセス変動依存性の一例を示すグラフ
【図10】温度変動に対するアンプの電源電圧特性の一例を示すグラフ
【図11】プロセス変動に対するアンプの電源電圧特性の一例を示すグラフ
【図12】本発明の第2の実施形態における無線装置の構成を示すブロック図
【図13】変調部の構成を示す図
【図14】本発明の第3の実施形態における無線装置の構成を示すブロック図
【図15】従来例の電源電圧調整装置の構成を示す図
【図16】リングオシレータの構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る実施形態の説明に先立ち、一般的な無線装置の構成および動作について説明する。
【0016】
図1は、無線装置の構成を示すブロック図である。無線装置は、デジタルベースバンド部1、変調部2、アンプ3、電池4、PLL10、レギュレータ12を有して構成される。
【0017】
デジタルベースバンド部1は、PLL10から出力される所定の周波数のクロック信号によって動作し、送信データから送信用のベースバンド信号を生成する。変調部2は、デジタルベースバンド部1から出力されるベースバンド信号を変調して高周波変調信号を生成する。アンプ3は、高周波信号増幅用アンプであり、変調部2から出力される高周波変調信号を増幅し、送信出力信号を出力する。レギュレータ12は、電池4の出力電圧を入力して所定の電圧を生成し、アンプ3の電源端子に供給する。
【0018】
図2は、高周波信号増幅に用いるアンプ3の構成の一例を示す回路図である。アンプ3は、増幅用のトランジスタQ1を有して構成される。入力信号はトランジスタQ1のゲートに入力される。トランジスタQ1のソースは、グランド接地される。トランジスタQ1のドレインは負荷L1を介して電源に接続される。トランジスタQ1のドレインと負荷L1の接続点より出力信号が出力される。トランジスタQ1のドレイン・ソース間電流をIDS、トランジスタQ1のドレイン・ソース間電圧をVDSとする。
【0019】
図3は、トランジスタの代表的な特性を表すグラフである。図3において、縦軸は最大発振周波数fmax、横軸はドレイン・ソース間電流IDSを示している。トランジスタは最大発振周波数fmaxが高いほど高周波特性が良い。ドレイン・ソース間電流IDSを増やすと、所定の周波数までは最大発振周波数fmaxが上昇するが、いずれ頭打ちし、電流を流しすぎると最大発振周波数fmaxは低下する。また、ドレイン・ソース間電圧VDSが大きいほど最大発振周波数fmaxが高くなる特徴もある。回路の設計においては、所望の最大発振周波数fmaxが得られるように、IDSおよびVDSを決定する。
【0020】
アンプ3は、半導体製造プロセスのプロセス変動、あるいは実動作時の温度変動などによって、性能変化が大きい。例えば、プロセス変動によって、アンプを構成するトランジスタの電流が少なくなると、最大発振周波数fmaxが低くなるため、周波数特性が劣化する。また、温度が高くなると、トランジスタの動作遅延が大きくなり、周波数特性が劣化する。アンプの電源電圧を上げると、ドレイン・ソース間電圧VDSが大きくなるので、トランジスタの性能を上げることができる。
【0021】
本実施形態では、無線装置におけるアンプ等の回路において、プロセス変動または温度変動による性能劣化の課題を解決するために、対象の回路に対して電源電圧を変化させて供給する構成を持つ。
【0022】
(第1の実施形態)
図4は、本発明の第1の実施形態における無線装置の構成を示すブロック図である。第1の実施形態は、無線装置における送信回路に適用した構成例を示す。
【0023】
無線装置は、デジタルベースバンド部(マップ部)1−1、変調部2、アンプ3、電池4、出力可変レギュレータ5、PLL10を有して構成される。デジタルベースバンド部1−1、変調部2、アンプ3、出力可変レギュレータ5、PLL10は、集積回路11上に形成される。特に、少なくともアンプ3とPLL10は同一チップ上に形成される。
【0024】
デジタルベースバンド部1−1は、PLL10から出力される所定の周波数のクロック信号によって動作し、送信データから送信ベースバンド信号として直交信号のI信号およびQ信号を生成して出力する。つまり、デジタルベースバンド部1−1は、送信データをIQ平面上の信号点にマッピングする。
変調部2は、デジタルベースバンド部1−1から出力されるI信号およびQ信号を変調して高周波変調信号を生成する。アンプ3は、変調部2から出力される高周波変調信号を増幅し、送信出力信号を出力する。
【0025】
出力可変レギュレータ5は、PLL10から出力されるVCO制御電圧に基づいてアンプ3の電源電圧を変化させる。出力可変レギュレータ5の入力には、外部電源端子を介して電池4が接続され、電池4の出力電圧が供給される。出力可変レギュレータ5の出力には、アンプ3の電源端子が接続され、アンプ3にVCO制御電圧に応じた可変の電源電圧が供給される。
【0026】
図5は、出力可変レギュレータ5の構成を示す図である。出力可変レギュレータ5は、電圧変換回路61、オペアンプ62、トランジスタQ2を有して構成される。PLL10からのVCO制御電圧が入力される出力制御電圧端子には、電圧変換回路61の入力端が接続され、電圧変換回路61の出力端がオペアンプ62の負側入力端に接続される。電圧変換回路61は、VCO制御電圧をオペアンプ62の入力電圧レベルに変換する回路である。
【0027】
オペアンプ62の出力端には、トランジスタQ2のゲートが接続され、トランジスタQ2のドレインが接続される外部電源端子に電池4からの出力電圧が供給される。トランジスタQ2のソースが出力端子に接続され、出力端子よりアンプ3の電源端子に出力可変レギュレータ5の出力電圧が供給される。また、トランジスタQ2のソースは、直列接続された抵抗R1、R2を介して接地され、抵抗R1と抵抗R2との接続点がオペアンプ62の正側入力端に接続される。これにより、出力可変レギュレータ5の出力電圧が抵抗R1、R2により分圧されてオペアンプ62に帰還される。
【0028】
PLL10は、電圧制御発振器(VCO)6と、VCO6の出力周波数をカウントするカウンタ7と、基準信号とカウンタ7の出力信号の位相を比較し、誤差信号を出力する位相比較器8と、位相比較器8の出力の誤差信号の交流成分を取り除くフィルタ9と、を含む構成である。フィルタ9の出力は、VCO6の出力周波数を制御するためのVCO制御電圧として、VCO6へフィードバック入力される。また、VCO制御電圧は、出力可変レギュレータ5の出力制御電圧端子にも入力される。
【0029】
VCO6は、リングオシレータによって構成される。図6は、PLL10がロックしていないリングオシレータの発振周波数の温度依存性の一例を示すグラフである。図6において、横軸はVCO制御電圧、縦軸は発振周波数を示している。図6に示すように、低温になると、発振周波数−VCO制御電圧のカーブは、周波数が高くなる方向にシフトする。高温になると、低温とは逆に周波数が低くなる方向にシフトする。リングオシレータを構成するインバータの動作遅延時間が低温では短くなり、高温では長くなるためである。fckは、PLL10がロックした周波数を表す。
【0030】
図7は、PLL10がロックしていないリングオシレータの発振周波数のプロセス変動依存性の一例を示すグラフである。図7において、横軸はVCO制御電圧、縦軸は発振周波数を示している。図7に示すように、リングオシレータにおけるトランジスタの閾値電圧Vthが低くなる方にプロセス変動が発生すると、発振周波数−VCO制御電圧のカーブは、周波数が高くなる方向にシフトする。トランジスタの閾値電圧Vthが高くなる方向にプロセス変動が発生すると、逆に周波数が低くなる方向にシフトする。リングオシレータを構成するインバータの動作遅延時間が、トランジスタの閾値電圧Vthが低いと短くなり、トランジスタの閾値電圧Vthが高いと長くなるためである。
【0031】
無線装置の動作時においては、PLL10はロックし、VCO6の出力周波数は所定の周波数fckに固定されている。図6から、周波数fckを発振する場合のVCO制御電圧は、温度に依存して変化する。同様に、図7から、周波数fckを発振する場合のVCO制御電圧は、トランジスタの閾値電圧Vthに依存して変化する。図8は図6に対応し、図9は図7に対応する。
【0032】
図8は、PLL10がロックしたVCO制御電圧の温度依存性の一例を示すグラフである。図8において、横軸は温度、縦軸はVCO制御電圧を示している。図9は、PLL10がロックしたVCO制御電圧のプロセス変動依存性の一例を示すグラフである。図9において、横軸はトランジスタの閾値電圧Vth、縦軸はVCO制御電圧を示している。図8および図9から、VCO制御電圧の観測によって、温度またはプロセスの変動を検出できる。
【0033】
特許文献1の電源電圧調整装置では、リングオシレータの出力周波数の観測によって、温度またはプロセスの変動を検出していた。しかし、検出用のリングオシレータを別途備える必要があった。
【0034】
本実施形態では、デジタルベースバンド部1−1のクロック信号を生成するPLL10のリングオシレータを流用し、新たに検出用の回路として別のリングオシレータを設けない構成としている。動作時においてはPLL10がロックし、出力周波数が固定されてしまうため、特許文献1の電源電圧調整装置において用いられた出力周波数の観測では、温度またはプロセスの変動は検出が困難である。したがって、本実施形態では、VCO制御電圧の観測によって、等価的に集積回路11における温度またはプロセスの変動を検出する。
【0035】
本実施形態では、VCO制御電圧を出力可変レギュレータ5に入力し、VCO制御電圧の変化に応じて出力可変レギュレータ5の出力電圧を変化させる。これによって、集積回路11において温度またはプロセスの変動があった場合に、温度またはプロセスの変動に応じてアンプ3の電源電圧を制御できる。図10は、温度変動に対するアンプの電源電圧特性の一例を示すグラフ、図11は、プロセス変動に対するアンプの電源電圧特性の一例を示すグラフである。
【0036】
先に述べたように、温度が高くなるとアンプの周波数特性が劣化するが、図10のようにアンプの電源電圧が上がるので、周波数特性劣化が補償される。反対に温度が下がった場合はアンプの周波数特性が良化するので、アンプの電源電圧を下げることで低消費電力化を図ることができる。
【0037】
また、プロセス変動によりトランジスタの閾値電圧Vthが高くなるとアンプの周波数特性が劣化するが、図11のようにアンプの電源電圧が上がるので、周波数特性劣化が補償される。反対にトランジスタの閾値電圧Vthが下がった場合はアンプの周波数特性が良化するので、アンプの電源電圧を下げることで低消費電力化を図ることができる。
【0038】
以上のように、デジタルベースバンド部のクロック生成用PLLのVCO制御電圧に基づいてアンプの電源電圧を制御することによって、リングオシレータのような変動検出用の回路を別途専用に設けることなく、温度変動またはプロセス変動が発生した場合にも性能を最適化しうる無線装置を提供できる。
【0039】
特に、ミリ波帯を用いて無線通信する無線装置においては、信号の周波数が高いため、より大きな効果を得ることができる。例えば、60GHzのミリ波帯を用いた無線装置では、高周波回路の最大発振周波数fmaxが100GHz程度であり、高周波信号の周波数と近いため、最大発振周波数fmaxが回路性能に大きく作用する。したがって、高周波回路の電源電圧のVCO制御電圧に応じた制御によって、温度変動またはプロセス変動による性能劣化を適切に補償できる。
【0040】
なお、上述した第1の実施形態では、アンプの電源電圧を可変レギュレータにより変化させる構成としたが、VCO制御電圧に応じた電源電圧の制御によって性能劣化を補償する対象としては、アンプに限らない。また、第1の実施形態では送信回路の構成例を示したが、送信回路に限らない。
【0041】
(第2の実施形態)
図12は、本発明の第2の実施形態における無線装置の構成を示すブロック図である。第2の実施形態は、第1の実施形態の変形例であり、アンプと同様に変調部の電源電圧をVCO制御電圧に基づいて変化させる無線装置である。
【0042】
出力可変レギュレータ5の出力端子は、アンプ3の電源端子に接続され、変調部2の電源端子に接続される。その他の構成は図4に示した第1の実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0043】
図13は、変調部2の構成を示す図である。変調部2は、基準信号を基にローカル信号を生成するPLL50と、ローカル信号によって直交信号のI信号およびQ信号を変調する直交変調器51とを含む構成である。PLL50は、発振器52と、発振器52の出力周波数をカウントするカウンタ53と、基準信号とカウンタ53の出力信号の位相を比較し、誤差信号を出力する位相比較器54と、位相比較器54の出力の誤差信号の交流成分を取り除くフィルタ55と、を含む構成である。
【0044】
直交変調器51と発振器52を含む高周波回路部56には、電源電圧として、出力可変レギュレータ5の出力電圧が供給される。
【0045】
第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に、PLL10のVCO制御電圧の変化に応じて出力可変レギュレータ5の出力電圧を変化させ、出力電圧をアンプ3および変調部2に電源電圧として供給する。集積回路11の温度変動またはプロセス変動に伴ってVCO制御電圧が変化し、VCO制御電圧に応じて変調部2の電源電圧が可変される。
【0046】
以上のように、デジタルベースバンド部のクロック生成用PLLのVCO制御電圧に基づいて変調部の電源電圧を制御することによって、リングオシレータのような変動検出用の回路を別途専用に設けることなく、温度変動またはプロセス変動が発生した場合にも変調部の性能を最適化しうる無線装置を提供できる。特に、ミリ波帯を用いて無線通信する無線装置においては、信号の周波数が高いため、より大きな効果を得ることができる。
【0047】
(第3の実施形態)
図14は、本発明の第3の実施形態における無線装置の構成を示すブロック図である。第3の実施形態は、無線装置における受信回路に適用した構成例を示す。
【0048】
無線装置は、デジタルベースバンド部(デマップ部)1−2、復調部18、アンプ19、電池4、出力可変レギュレータ5、PLL10を有して構成される。デジタルベースバンド部1−2、復調部18、アンプ19、出力可変レギュレータ5、PLL10は、集積回路11上に形成されている。特に、少なくともアンプ19とPLL10は同一チップ上に形成される。
【0049】
アンプ19は、高周波信号増幅用アンプであり、高周波変調信号である受信入力信号を増幅し、復調部18に出力する。復調部18は、アンプ19により増幅された受信入力信号を復調し、受信ベースバンド信号として直交信号のI信号およびQ信号を出力する。
デジタルベースバンド部1−2は、PLL10から出力される所定の周波数のクロック信号により動作し、復調部18おいて復調されたI信号およびQ信号から受信データを取得する。つまり、デジタルベースバンド部1−2は、IQ平面上マッピングされた信号点から受信データをデマップする。
【0050】
出力可変レギュレータ5の出力端子は、アンプ19の電源端子に接続される。PLL10、出力可変レギュレータ5等の構成は第1の実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0051】
第3の実施形態では、第1の実施形態と同様に、PLL10のVCO制御電圧の変化に応じて出力可変レギュレータ5の出力電圧を変化させ、出力電圧を受信回路のアンプ19に電源電圧として供給する。集積回路11の温度変動またはプロセス変動に伴ってVCO制御電圧が変化し、VCO制御電圧に応じてアンプ19の電源電圧が可変される。
【0052】
以上のように、デジタルベースバンド部のクロック生成用PLLのVCO制御電圧に基づいて受信回路のアンプの電源電圧を制御することによって、リングオシレータのような変動検出用の回路を別途専用に設けることなく、温度変動またはプロセス変動が発生した場合にも性能を最適化しうる無線装置を提供できる。特に、ミリ波帯を用いて無線通信する無線装置においては、信号の周波数が高いため、より大きな効果を得ることができる。
【0053】
なお、第2の実施形態と同様にして、復調部の高周波回路部等にも出力可変レギュレータ5の出力電圧を供給し、温度変動またはプロセス変動による性能劣化に対して補償できる。
【0054】
なお、本発明は、本発明の趣旨ならびに範囲を逸脱することなく、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が様々な変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、検出用の発振器等の回路を別途設けることなく、プロセス変動または温度変動が発生した場合にも性能を最適化できる効果を有し、デジタルベースバンド部と高周波回路とを備えた無線装置等として有用である。
【符号の説明】
【0056】
1 デジタルベースバンド部
1−1 デジタルベースバンド部(マップ部)
1−2 デジタルベースバンド部(デマップ部)
2 変調部
3 アンプ
4 電池
5 出力可変レギュレータ
6 電圧制御発振器(VCO)
7、53 カウンタ
8、54 位相比較器
9、55 フィルタ
10 PLL
11 集積回路
12 レギュレータ
18 復調部
19 アンプ
51 直交変調器
52 発振器
61 電圧変換回路
62 オペアンプ
Q1、Q2 トランジスタ
L1 負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御電圧に応じた周波数の信号を発振する電圧制御発振器を有するPLLと、
前記制御電圧に基づいて出力電圧を変化させる出力可変レギュレータと、
前記出力可変レギュレータの出力電圧が電源電圧として供給される高周波回路と、
を備えた無線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線装置であって、
前記PLLと前記高周波回路とが、同一の集積回路上に構成される無線装置。
【請求項3】
請求項2に記載の無線装置であって、
前記高周波回路は、高周波信号増幅用アンプ、変調部の高周波回路部、復調部の高周波回路部のうちの、少なくとも一つを含む無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−191342(P2012−191342A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51894(P2011−51894)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、総務省、超高速近距離無線伝送技術等の研究開発の委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】