説明

無線送受信装置

【課題】セキュリティ性を損なうことなく他の無線送受信装置の位置を測定することができる無線送受信装置を提供すること。
【解決手段】無線送受信装置101は、他の無線送受信装置と送受信を行うアンテナ11、スイッチ12、ベースバンド部16と、前記他の無線送受信装置に自機の存在が無くなったと認識されない程度の頻度で、自機のビーコン送信機会に、ビーコンフレームを送信する代わりに測距フレームを送信して前記他の無線送受信装置との距離を測距する制御部18とを備えたことを特徴とする無線送受信装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線送受信装置に関し、特に、セキュリティ性を損なうことなく他の無線送受信装置の位置を測定する無線送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速に通信を行うことができる無線通信技術として、PC(Personal Computer)と周辺機器の接続に使用される有線USBの通信に無線を利用した規格であるWUSB(ワイヤレスUSB)が検討されている。WUSBは、通信方式にUWB(ウルトラワイドバンド)を用い、無線送受信装置間の距離が3m以内なら有線のUSB2.0と同等の480Mbpsでの通信が可能であり、また、無線送受信装置間の距離が10m離れていても110Mbpsでの通信を確保することができるものである。
【0003】
また、他の方式であるUWBは、搬送波を数GHz幅の極めて広い周波数帯に拡散して送受信を行う無線通信方式であり、それぞれの周波数帯に送信されるデータはノイズ程度の強さしかないため、同じ周波数帯を使う無線送受信装置と混信することがなく、消費電力も少ないという特徴がある。さらに、UWBにおいては、超極細パルスを用いることにより高い時間分解能を持ち、この性質を使ってレーダーやポジショニングを行う「測距」をすることが可能である。すなわち、UWBは、位置測定、レーダーおよび無線通信の3つの機能を合わせ持つものであり、極めて独特な無線応用技術と言うことができる。
【0004】
一方、相手の無線送受信装置の位置を測定する技術としては、位置が既に判明している無線送受信装置に対して測位情報を求める要求信号を送信し、要求信号を受信したこれらの位置判明済み無線送受信装置が、測位情報を位置が判明していない無線送受信装置に送信し、応答のあった無線送受信装置から取得された情報と位置判明済みの無線送受信装置から受信された測位情報を使用して、位置が判明していない無線送受信装置の位置を推定するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特表2004−516463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、通信を行わない他の無線送受信装置にも影響を与えてしまうというセキュリティ性の可能性があった。
【0006】
本発明は、セキュリティ性を損なうことなく他の無線送受信装置の位置を測定することができる無線送受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の無線送受信装置は、他の無線送受信装置と送受信を行う送受信手段と、
前記他の無線送受信装置に自機の存在が無くなったと認識されない程度の頻度で、自機のビーコン送信機会に、ビーコンフレームを送信する代わりに測距フレームを送信して前記他の無線送受信装置との距離を測距する距離測定手段とを備えたことを特徴としている。
【0008】
この構成により、本発明の機構を持たない無線送受信装置に影響を与えることなく測距を実施することができるので、セキュリティ性を損なうことなく他の無線送受信装置の位置を測定することができる。
【0009】
また、本発明の無線送受信装置は、前記距離測定手段は、既にビーコングループが形成されている状態で前記他の無線送受信装置が新規にビーコングループに参入する時に使用される特別なビーコンスロットを用いて測距フレームを送信して前記他の無線送受信装置との距離を測距することを特徴としている。
【0010】
この構成により、本発明の機構を持たない無線送受信装置に影響を与えることなく他の無線送受信装置の位置を測定することができる。
【0011】
また、本発明の無線送受信装置は、前記距離測定手段は、前記他の無線送受信装置との距離を定期的に測距し、測距して得た距離を記憶することを特徴としている。
【0012】
この構成により、使用者からの指示を受けなくても距離を記憶することができる。
【0013】
また、本発明の無線送受信装置は、前記距離測定手段は、測距して得た前記他の無線送受信装置との距離が規定値より大きくなった場合、前記他の無線送受信装置との認証を解除することを特徴としている。
【0014】
この構成により、測定された距離が規定値より大きくなったら、現在の認証を解除しているので、よりセキュリティを高めることができる。
【0015】
また、本発明の無線送受信装置は、前記距離測定手段が測距して得た前記他の無線送受信装置との距離をリアルタイムで報知する報知手段を備えたことを特徴としている。
【0016】
この構成により、現在接続中の機器間の距離を実時間で使用者に通知しているので、使用者は常に機器間の距離情報を把握することができる。
【0017】
また、本発明の無線送受信装置は、前記距離測定手段は、前記他の無線送受信装置との距離を規定のプロトコルを用いて測距することを特徴としている。
【0018】
この構成により、測距を規定のプロトコルを用いて実施しているので、特別な機構を追加することなく測距を実施することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、セキュリティ性を損なうことなく他の無線送受信装置の位置を測定することができる無線送受信装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0021】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の無線送受信装置101の構成を示すブロック図である。後述するように、第1の実施の形態の無線送受信装置101は、他の無線送受信装置に自機の存在が無くなったと認識されない程度の頻度で、自機のビーコン送信機会にビーコンフレーム送信の代わりに測距を実施するようになっている。また、無線送受信装置101は、通信を行っている他の無線送受信装置との距離を表示または音声によりリアルタイムで報知するようになっている。また、無線送受信装置101は、他の無線送受信装置との距離の測定を規定のプロトコルを用いて実施するようになっている。
【0022】
無線送受信装置101は、指向性を有するアンテナ11と、アンテナ切り替えスイッチ12と、受信部13と、送信部14と、変復調部15と、メディアアクセスコントローラ部17と、制御部18と、報知装置19とを備えている。また、受信部13、送信部14および変復調部15は、ベースバンド部16を構成する。
【0023】
アンテナ11は、送信と受信を兼用するものであり、アンテナ切り替えスイッチ12により切り替えられ、受信部13または送信部14の何れかに接続される。
【0024】
受信部13は、アンテナ11が受信した信号をA/D変換するものであり、送信部14は、アンテナ11から送信される信号をD/A変換するものである。
【0025】
変復調部15は、アンテナ11が受信した信号またはアンテナ11から送信される信号に対し変調または復調を行うものである。また、受信部13、送信部14および変復調部15はベースバンド部16を構成している。
【0026】
メディアアクセスコントローラ部17は、ベースバンド部16と制御部18の調停を行うものであり、制御部18は無線送受信装置101の制御を行うものである。
【0027】
また、制御部18は図示しない記憶部を有しており、後述する距離測定により得られた他の無線送受信装置との距離がこの記憶部に記憶されるようになっている。なお、制御部18の記憶部に記憶された他の無線送受信装置との距離は、無線送受信装置101本体で利用する他に、無線送受信装置101が搭載される機器において利用されるようにしてもよい。
【0028】
報知装置19は、無線送受信装置101が通信を行っている他の無線送受信装置との距離を表示または音声により、実時間で、すなわちリアルタイムで報知するものである。
【0029】
なお、無線送受信装置101における無線通信は送信と受信が排他的に行われるため、メディアアクセスコントローラ部17によるベースバンド部16と制御部18の調停は必須の作業となる。
【0030】
次に、図2、図3を参照して指向性を有するアンテナ11の一例を説明する。図2(a)、図2(b)、図2(c)はそれぞれアンテナ11の構成を示す斜視図および断面図である。また、図3(a)、図3(b)はアンテナ11の放射指向性を示す図である。
【0031】
アンテナ11は、図2に示すように、同軸線路24で給電され、放射素子21と接地導体板22とで構成されるディスコーンアンテナにおいて、放射素子21の周囲に放射素子21を中心とした円錐状のテーパを有する浮遊導体板23を備えている。浮遊導体板23は、接地導体板22と同軸線路24との接続部において4方向(例えば、周方向に90度の間隔で配置)に設けられた短絡線25とスイッチ26(PINダイオードスイッチ)により接地導体板22と接続されており、電気的にオン/オフすることができる。なお、図2(b)において、細長い矢印は、同軸線路24から放射される電波の流れを示す。図2(c)においても、同様に電波が放射されている。浮遊導体板23と接地導体板22とが4箇所でスイッチ26により接続されている。図2(b)は、スイッチ26が全てオフであるときを示し、図2(c)は、スイッチ26が全てオンであるときを示す。
【0032】
このように構成されたアンテナ11においては、図2(c)に示すスイッチ26を全てオンとしたときの放射方向は、図2(b)に示すスイッチ26を全てオフとしたときの放射方向に比べて、図の上方向(電界面内方向)へ指向される。
【0033】
図3(a)は、図2に示したアンテナ11の鉛直上方向を0度として、放射される電波の電界面内で観測角度を変化させた場合の放射指向性を示すものである。また、図3(b)は、放射指向性のグラフである。図中には、4方向のスイッチ26を全てオフにした場合の放射指向性を破線で示し、4方向のスイッチ26を全てオンにした場合の放射指向性を実線で示す。4方向のスイッチ26を全てオフにした場合には、利得が最大となる角度は38度である。一方、4方向のスイッチ26を全てオフにした場合には、利得が最大となる角度は29度となり、指向性が変化している。
【0034】
このような電界方向への指向性の変化(または磁界方向への指向性の変化)は、スイッチ26の素子により短絡された部分がインダクタンスとして働くためと考えられ、短絡部分では電界強度分布が変化する。具体的には、短絡部付近の電界強度が小さくなり、短絡されてない側の電界強度が大きくなる。このため、スイッチ26をオンまたはオフにすることにより短絡部を切り替えて指向性を変化させることが可能となる。また、4方向のスイッチ26を全てオフにした場合の利得の最大値は、4方向のスイッチ26を全てオフにした場合よりも増大している。
【0035】
このように、無線送受信装置101は、アンテナ11が無指向性から特定の指向性角度まで任意に制御ができるように構成されている。また、無線送受信装置101は、特開2006−80958号公報に記載された技術によりアンテナ11の指向性を制御するようにしてもよい。
【0036】
次に、以上のように構成された無線送受信装置101の動作を説明する。
【0037】
図4に示すように、無線送受信装置101は、ビーコンフレーム1の代わりに、ビーコンフレーム1が無くなってしまったと他の無線送受信装置に認識されない程度の頻度で、数スーパーフレーム(sf)おきに測距フレーム2を送受信する。これにより、無線送受信装置100は、常に他の無線送受信装置との間の距離を測定する。
【0038】
例えば、UWB規格の1つであるWiMedia MAC仕様では、Super Frameと呼ばれる時間間隔で、自機の情報(場合によっては近隣の他局の情報も)をビーコンフレームに乗せて送信している。このビーコンフレームは、同期外れ、或いは送信/受信障害を考慮し、3回に1回は抜けても良い規定になっている。このため、Super Frameに参加している無線送受信装置は、ビーコン送受信のための特別な期間は、ビーコン以外のフレームが受信された場合、上記の規定により受信したフレームを無視することになる。
【0039】
従って、この特別な測距方法は、測距を実施したい無線局間で予めネゴシエーションしておくことにより、他局に無用な影響を与えることなく実施することができる。
【0040】
ここで、無線送受信装置101が行う「距離測定」の具体的な手順について説明する。WiMedia MAC規格では、Range Measurementプロトコルを利用することで距離測定を実現している。
【0041】
具体的な手順としては、まず自機(無線送受信装置101)は、通信相手がRange Measurement実施が可能かどうかを問い合わせる(測定直前でなくとも可)。Range Measurementの実施が可能な場合は測定直前に自機のタイマをオンにし、通信相手にもタイマをオンするようにリクエストするプロトコルを送信する。なお、これと同時に測定回数を通知する。上記プロトコルを受信した通信相手はタイマをオンにし、更に規定時間(SIFS)後、Acknowledgement(確認応答)を送信する。
【0042】
自機がRangeMeasurementRequest(RM1)プロトコルを送信し、規定時間(SIFS)後、通信相手はImmediate Ack(ImmAck)(RM2)を送信する。
【0043】
自機および通信相手は、各々、送信時および受信時のタイマ値を保持する。これを通知された測定回数回繰り返す。測定完了後、通信相手は測定回数分記録したタイマ値をレポートするプロトコル(例えば10回測定したら10回分をまとめて)を送信する。自身はタイマをオフし、通信相手にImmAckを送信する。
【0044】
ImmAckを受信した通信相手は自身のタイマをオフする。Range Measurementにおける「測定」の詳細を図5を参照して説明する。規定のレートおよびフレーム形式(RangeMeasurementRequest(RM1)およびImmediateAck(ImmAck)(RM2))でフレーム交換を行う。内部遅延、規定のインターフレームスペース(図5ではSIFS→ShortInterFrameSpace)を考慮して、測定したFlight timesから機器間で実際に送信に要した時間を計算し距離を算出する。ベースクロックが時間の最小分解能となる。
【0045】
WiMediaMACでは4種類のベースクロック(時間の分解能を規定)が規定されており、最大周波数は4224MHzである。以下2112MHz、1056MHz、528MHzとなっている。周波数が大きい程ベースクロックの1周期の時間が短くなるため、測距の分解能も上がる。4224MHzでは7.1cm、2112MHzでは14.2cm、1056MHzでは28.4cm、528MHzでは56.8cmとなる。結局、4224MHzのベースクロックで測定した結果、100クロックかかったとすれば、その距離は「100×7.1cm=710cm」となる。
【0046】
従来は、上記の手順をビーコン周期以外のタイミングで実施していたが、本実施の形態では、自機及び通信相手のビーコン周期のタイミングで上記の手順を行うようになっている。
【0047】
図4において、ビーコンフレーム1は、Super Frame(約65ms)周期で送受信される。本実施の形態では、9×SuperFrame周期で、ビーコンフレーム1の代わりに測距フレーム2を送受信することによりRange Measurementが実施される。但し、Range MeasurementはWiMediaMAC仕様ではcommandフレームであり、本来はビーコンでは使用できないが、本実施の形態ではビーコンが見失われない頻度で、少なくとも3Super Frame以上離して実施するようになっている。
【0048】
また、本実施の形態では、ネゴシエーションは、通常のcommandフレームの送受信のためのタイミング、すなわちビーコン送受信以外のタイミングで、WiMediaMAC規格で定義された(但し、具体的な中身はベンダに任されている)Application−Specific control frameにて実施するようになっている。従って、本実施の形態は、ネゴシエーションを実施する無線送受信装置間でApplication−Specificフレームの送受信ができることを前提としている。Application−Specificフレームの「中身」であるpayloadは“Specifier ID(2 Octets)+データ(NA)”で好きなように定義できる。なお、Specifier IDはベンダ固有番号である。従って、Dataを図6に示すフォーマットで定義し、以下の処理を実行する。なお、数値はHexであり、無線等で使用されるフォーマットに従うものとする。また、無線送受信装置101が、無線送受信装置101と同様に構成された無線送受信装置102に対して測距しようとした場合、DestAddr=“102のアドレス”、SrcAddr=“101のアドレス”となる。また、処理を中止する場合は以下のステップ2または3または4でCommand=“0”とすればよい。
【0049】
まず、ElementID=“01”:ask RM availabilityとして、測距可能かどうかを問い合わせる(ステップ1)。なお、CommandはDon’t careである。
【0050】
次いで、ElementID=“02”:answer RM availabilityとして、測距可能かどうかを返答する(ステップ2)。なお、Command=“0”は不可、“1”は可であり、SrcとDestの中身はひっくり返る。
【0051】
次いで、ElementID=“04”:Super Frame Periodとして、測距を実施するSuperFrame周期を得る(ステップ3)。なお、Command=“period”であり、0で測距が解除となる。
【0052】
次いで、ElementID=“08”:Countdown Super Frame Numberとして、測距を実施するまでの残りのSuperFrame数を得る(ステップ4)。なお、Command=“number”であり、0で測距を解除、それ以外はこのコマンド以降で実施する。
【0053】
このように、本実施の形態の無線送受信装置101は、他の無線送受信装置に自機の存在が無くなったと認識されない頻度で、自機のビーコン送信機会にビーコンフレーム1送信の代わりに測距フレーム2を送受信して測距を実施しているので、無線送受信装置101と同様の構成を有しない他の無線送受信装置に影響を与えることなく、測距を実施することができる。
【0054】
また、本実施の形態の無線送受信装置101は、接続中の他の無線送受信装置との距離をリアルタイムに報知しているので、使用者は常に他の無線送受信装置との距離情報を把握することができる。
【0055】
また、本実施の形態の無線送受信装置101は、距離測定を規定のプロトコルを用いて実施しているので、距離測定のための特別な機構を追加することなく距離測定を実施することができる。
【0056】
(第2の実施の形態)
図7を参照して第2の実施の無線送受信装置101について説明する。第2の実施の形態の無線送受信装置101は、第1の実施の形態の構成に加えて、既にビーコングループが形成されている状態で、他の無線送受信装置が新規にビーコングループに参入する時に使用される特別なビーコンスロットを用いて距離測定を実施するようになっている。なお、前述の実施の形態と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0057】
図7に示すように、無線送受信装置101は、特別なビーコンスロットSN0またはSN1で測距フレーム2の送受信を行う。本実施の形態ではSN0で測距フレームの送受信を行っている。また、無線送受信装置101は、測距フレーム2の送受信による測距の実施に先だって相手の無線送受信装置との間で予めネゴシエーションをしておく。ネゴシエーションを行っていない場合は、相手の無線送受信装置は、本来このスロットではビーコンフレーム1のみが送受信されることになっているため測距フレーム2を破棄する。また、無線送受信装置101は、測距フレーム2の送受信による測距を常に実施して相手の無線送受信装置との距離を測定する。
【0058】
このように、本実施の形態の無線送受信装置101は、既にビーコングループが形成されている状態で他の無線送受信装置が新規にビーコングループに参入する時に使用される特別なビーコンスロットを用いて測距を実施しているので、本発明の機構を有しない無線送受信装置に影響を与えることなく、測距を実施することができる。
【0059】
(第3の実施の形態)
図8、図9を参照して第3の実施の無線送受信装置101について説明する。第3の実施の形態においては、第2の実施の形態の構成に加えて、測定された他の無線送受信装置との距離が規定値より大きくなった場合に、現在の認証を解除するようになっている。なお、前述の実施の形態と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
無線送受信装置101は、第1の実施の形態および第2の実施の形態による測距を常に実施することにより、無線送受信装置102等の他の無線送受信装置との距離を測定して制御部18の記憶部に記憶するようになっている。そして、無線送受信装置101は、制御部18の記憶部に予め定められた距離rにより決定する認証エリア1001の外に無線送受信装置102が離れた場合に認証を解除するようになっている。
【0061】
図9は、無線送受信装置101が無線送受信装置102との間で行う認証の例として、4−Way handshakeを用いた認証(Authentication)の具体的な手順について説明するための図である。認証とは、通信の相手方が誰かを確かめることであり、図においては、認証者(Authenticator)が通信の相手方(Supplicant)と鍵の交換を行い、通信の相手方が誰かを確かめるようになっている。なお、“4(four)−Way handshake”とは、認証1回につき4回の鍵交換が行われるためこのように呼ばれている。
【0062】
まず、お互いに同じキー(PMK:Pairwise Master Key)を持ち合う。次いで、AuthenticatorからSupplicantへのEAPOL−Key(ANonce)の送信においては、PMKを種に、認証者が乱数を発生して相手方に送信する。これを元に、相手方は一時限りのKey(PTK:Pairwise Master Key)を生成する。なお、SNonceとは、Supplicant Nonceのことである。
【0063】
次いで、SupplicantからAuthenticatorへのEAPOL−Key(SNonce、MIC、RSN IE)の送信においては、相手方もPMKを種に、乱数を発生して相手方に送信する。これを元に、認証者も一時限りのKey(PTK:Pairwise Master Key)を生成する。
【0064】
次いで、AuthenticatorからSupplicantへのEAPOL−Key(ANonce、MIC、RSN IE)の送信においては、生成したPTKを相手方に送信する。相手側はこのKeyをインストールする。
【0065】
次いで、SupplicantからAuthenticatorへのEAPOL−Key(SNonce、MIC)の送信においては、生成したPTKを認証者に送信する。認証者はこのKeyをインストールする。なお、ANonceとは、Authenticator Nonceのことである。
【0066】
なお、4−Way handshakeにおける認証の解除は、「鍵を放棄する(鍵を使用しない状態にする)」ことにより実現される。また、「認証」を「同一ビーコングループ内のデバイス」という定義にするなら、自機のビーコンを停止するか、または、自機のビーコンパラメータから同一ビーコングループであったデバイスのパラメータを抜き、同一ビーコングループでは無くなったことを周辺に宣言することにより実現される。
【0067】
このように、本実施の形態の無線送受信装置101は、測定された距離が規定値より大きくなったら、現在の認証を解除しているので、よりセキュリティを高めることができる。
【0068】
なお、第1〜第3の実施の形態の無線送受信装置101を、画像入力装置、印刷装置、画像形成装置等の画像機器、または情報処理装置等の機器に搭載することにより、無線送受信装置101を搭載した他の機器との位置関係を常に規定、把握することができるので、よりセキュリティ性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上のように、本発明に係る無線送受信装置は、セキュリティ性を損なうことなく他の無線送受信装置の位置を測定することができるという効果を有し、他の無線送受信装置との距離を測定する無線送受信装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】第1の実施の形態の無線送受信装置の構成を示すブロック図
【図2】(a)第1の実施の形態の無線送受信装置のアンテナの構成を示す斜視図 (b)第1の実施の形態の無線送受信装置のアンテナの構成を示す断面図 (c)第1の実施の形態の無線送受信装置のアンテナの構成を示す断面図
【図3】(a)第1の実施の形態の無線送受信装置のアンテナの指向性を示す図 (b)第1の実施の形態の無線送受信装置のアンテナの指向性を示す図
【図4】第1の実施の形態の無線送受信装置の距離測定に用いるビーコンフレームを示す図
【図5】第1の実施の形態の無線送受信装置の測距に用いるプロトコルを説明する図
【図6】第1の実施の形態の無線送受信装置のネゴシエーションのフォーマットを示す図
【図7】第2の実施の形態の無線送受信装置が送受信するビーコンスロットを示す図
【図8】第3の実施の形態の無線送受信装置と他の無線送受信装置との位置関係を示す図
【図9】第3の実施の形態の無線送受信装置の認証手順を説明する図
【符号の説明】
【0071】
1 ビーコンフレーム
2 測距フレーム
3 ビーコンピリオド始点
4 ビーコンピリオド終点
10 ビーコンスロット
11 アンテナ(送受信手段)
12 アンテナ切り替えスイッチ(送受信手段)
13 受信部
14 送信部
15 変復調部
16 ベースバンド部(送受信手段)
17 メディアアクセスコントローラ部
18 制御部(距離測定手段)
19 報知装置(報知手段)
25 短絡線
26 スイッチ
101、102 無線送受信装置
1001 認証エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の無線送受信装置と送受信を行う送受信手段と、
前記他の無線送受信装置に自機の存在が無くなったと認識されない程度の頻度で、自機のビーコン送信機会に、ビーコンフレームを送信する代わりに測距フレームを送信して前記他の無線送受信装置との距離を測距する距離測定手段とを備えたことを特徴とする無線送受信装置。
【請求項2】
前記距離測定手段は、既にビーコングループが形成されている状態で前記他の無線送受信装置が新規にビーコングループに参入する時に使用される特別なビーコンスロットを用いて測距フレームを送信して前記他の無線送受信装置との距離を測距することを特徴とする請求項1に記載の無線送受信装置。
【請求項3】
前記距離測定手段は、前記他の無線送受信装置との距離を定期的に測距し、測距して得た距離を記憶することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線送受信装置。
【請求項4】
前記距離測定手段は、測距して得た前記他の無線送受信装置との距離が規定値より大きくなった場合、前記他の無線送受信装置との認証を解除することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の無線送受信装置。
【請求項5】
前記距離測定手段が測距して得た前記他の無線送受信装置との距離をリアルタイムで報知する報知手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の無線送受信装置。
【請求項6】
前記距離測定手段は、前記他の無線送受信装置との距離を規定のプロトコルを用いて測距することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の無線送受信装置。
【請求項7】
前記無線送受信装置は画像機器に搭載されることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の無線送受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−79089(P2008−79089A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257272(P2006−257272)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】