説明

無線通信システム、情報展開方法

【課題】トランキング通信圏内の基地局及び各移動局が、トランキング通信圏外の移動局の位置情報を取得することが可能な無線通信システム、情報展開方法を提供する。
【解決手段】基地局の制御エリア圏内にある複数の移動局同士により当該基地局を経由して行われるトランキング通信と制御エリア圏内にある移動局と制御エリア圏外にある移動局とで当該基地局を経由せずに行われるコンベンショナル通信とを行う無線通信システムにおいて、基地局の制御エリア圏外にある移動局に、自局の位置情報及び自局固有の識別情報を基地局の制御エリア圏内にある移動局に伝達させ、基地局の制御エリア圏内にある移動局に、基地局の制御エリア圏外にある移動局から伝達された位置情報及び識別情報を基地局に伝達させ、基地局に、基地局の制御エリア圏内にある移動局から伝達された位置情報及び識別情報を基地局の制御エリア圏内にあるすべての移動局に伝達させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、情報展開方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一つの基地局と複数の移動局(例えば、車載機等の無線通信端末)からなる無線通信システムが知られている。この無線通信システムにおいては、各移動局は基地局の制御下にあり、同基地局を中継して移動局間の通信が行われる。
従って、例えば移動局が基地局の通信エリア圏外に移動した場合には、基地局との通信ができなくなるので、基地局を中継した移動局間の通信は不可能となる。
【0003】
上記した課題に対応するものとして、例えば特許文献1には、一つの基地局と複数の移動局とから成る無線通信システムにおいて、基地局を介した中継通信モード(トランキング通信)と移動局間の直接通信モード(コンベンショナル通信)との切替え制御を容易かつ確実に行えるようにした技術が開示されている。具体的には、ある移動局が基地局制御エリア圏外に移動した場合、中継通信モードから直接通信モードへと自動的に切替え制御を行い、基地局制御エリア圏内に移動した場合、直接通信モードから中継通信モードへと自動切替え制御を行うことで、手動切替えの煩わしさを解消することを可能としている。なお、当該技術においては、GPSアンテナにより取得したGPS情報に基づいて各移動局の位置情報を取得し、基地局制御エリアの圏内にあるか圏外にあるかを判定している。
【0004】
また、例えば特許文献2には、路側通信機(基地局)と車載側通信機(移動局)とで行う路車間通信と車載側通信機同士で行う車々間通信の両者を有効に連携させることにより、走行車両が必要とする広範囲の情報をリアルタイムで入手し、かつ道路交通上の安全性と利用者の利便性を高める技術が開示されている。具体的には、二つの異なる無線チャネルを用いて路車間通信と車々間通信を行うようにし、車両の移動によって生まれる通信状況の変化に対応して無線チャネルを切替えることで適宜路車間通信と車々間通信を切替えることを可能としている。つまり、車両が路側通信機の無線通信領域から外れている場合、車々間通信用の無線チャネルに切替えて通信を行うことで、確実に路側情報を取り込むことができる。なお、当該技術においては、路側通信機に対して路車間通信(トランキング通信)可能な車載側通信機が自局の位置情報を送信することで、路側通信機は各車載側通信機がどこに位置するかを把握することが可能である。そして、路側通信機が、各車載側通信機から取得した位置情報を通信可能な車載側通信機に対して送信することで、車載側通信機同士も互いの位置情報を把握することが可能である。
【0005】
また、例えば特許文献3には、基地局の通信エリア圏外に移動した移動局が、基地局の通信エリア圏内の移動局との直接通信を行うことを可能とした技術が開示されている。この特許文献3に開示された技術について、図5〜図7を用いて詳細に説明する。
【0006】
図5は、従来技術に係る無線通信システム2の概念説明図である。
図5に示すように、従来技術に係る無線通信システム2は、一つの基地局300と3つの移動局(移動局400A、移動局400B、移動局400C)とで構成されている。
移動局400A、移動局400B及び移動局400Cは、それぞれ基地局300の制御下にあり、同基地局300を中継して移動局相互間で通信(トランキング通信:F1通信)を行う。
【0007】
ここで、移動局400A及び移動局400Bは、それぞれ基地局300の通信エリアNの圏内にいるので、これらの移動局は基地局300を中継したF1通信が可能である。これに対し、移動局400Cは、基地局300の通信エリアNの圏外に移動したため、同基地局300と通信できず、従って、基地局300を中継した他の移動局とのF1通信は不可能となる。
【0008】
そこで、本従来技術では、各移動局にF1通信による本来の通信機能に加え、移動局間の直接通信(コンベンショナル通信:F2通信)を一時的に可能とする通信機能を新たに追加している。これにより、通信エリアN圏外の移動局400Cは、孤立することなく近傍にいる移動局400BとF2通信による直接通信が可能となる。
【0009】
図6は、従来技術に係る基地局300の概略構成を示すブロック図である。
図6に示すように、従来技術に係る基地局300は、受信用アンテナ11と、受信復調部12と、ベースバンド処理部13と、変調部14と、送信部15と、送信用アンテナ16と、を備えて構成されている。
【0010】
基地局300は、移動局からF1通信により送信される送信信号を受信用アンテナ11にて受信し、当該受信した信号に対して受信復調部12で復調及び復号等の処理を行う。受信復調部12で復調及び復号等の処理を施された信号は、ベースバンド処理部13で移動局制御用データ等のベースバンド信号とともに処理が行われ、変調部14にて所定の方式のデジタル変調処理が行われる。デジタル変調処理が施された信号は、送信部15へと出力され、所定レベルにて送信用アンテナ16により各移動局に送信される。
【0011】
図7は、従来技術に係る移動局400の概略構成を示すブロック図である。
図7に示すように、従来技術に係る移動局400は、データ発生部21と、変調部22と、送信部23と、送信用アンテナ24と、受信用アンテナ25と、受信復調部26と、受信レベル検出部27と、ビットエラー率検出部28と、メモリ部33と、第1の判別部34と、第2の判別部35と、第3の判別部36と、表示部38と、音声部39と、入力部40と、制御部41と、を備えて構成されている。
【0012】
移動局400は、データ発生部21においてマイク音声や所要データ等、通信相手の移動局に向けて送信するデータ(信号)を発生させ、変調部22で当該送信用信号に所定の方式のデジタル変調処理を行う。デジタル変調処理が施された信号は、送信部23へと出力され、所定レベルにて送信用アンテナ24により基地局300に送信される。
【0013】
また、移動局400は、基地局300からF1通信により送信される送信信号及び他の移動局からF2通信により送信される送信信号を受信用アンテナ25にて受信し、制御部41の指示に従って、当該受信した信号に対して受信復調部26で復調及び復号等の処理を行う。受信復調部26で復調及び復号等の処理を施された信号は、受信レベル検出部27にて受信レベルが検出され、ビットエラー率検出部28によりビットエラー率(BER)が検出される。
【0014】
受信レベル検出部27で検出された受信レベル及びビットエラー率検出部28で検出されたビットエラー率のデータは、メモリ部33で一旦記憶され、第1の判別部において、予め設定されている基準レベル又は基準値と比較される。第1の判別部では、受信レベルが基準レベル以下のとき、又はビットエラー率が基準値以上のときに、受信した信号を送信した相手局と交信が不可能であると判定する。
【0015】
また、第2の判別部35では、圏内の複数の移動局がそれぞれ送信した信号における受信レベル又はビットエラー率が比較され、自局との交信相手として最良の移動局が選択される。さらに、受信レベルが基準レベル以上か、又はビットエラー率が基準値以下かについても判別され、相手移動局が自局と通信可能かにつき判別される。
また、第3の判別部36では、圏外の移動局が発した直接通信(F2通信)の要求が自局を指定するものかにつき、ID又は局特定データ等から判別が行われる。
【0016】
第1の判別部34で基地局300との交信が不可能と判別されると、通信エリアNの圏外である旨が表示部38に表示される。また、第1の判別部34で通信エリアNの圏外と判別されると、その旨の音声又はアラーム音が音声部39より発せられる。
圏外の移動局が直接通信する相手移動局を指定する場合、入力部40によりID又は局特定データ等が入力される。
制御部41は、各検出結果にもとづき各判別部、メモリ部又は表示部等、図示のものを制御する。
【0017】
このように、特許文献3に係る無線通信システムにおいては、通信エリアN圏内の移動局が通信エリアN圏外へと出ていってしまいそうなとき、受信レベルやビットエラー率をモニタすることで、自動的にF2通信(コンベンショナル通信)へと切替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2001−95043号公報
【特許文献2】特開2008−205817号公報
【特許文献3】特開2002−281557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上記特許文献3に開示された技術のように、F1通信(トランキング通信)可能なエリアの圏外に出てしまった移動局に対して、エリア圏内の移動局とコンベンショナル通信を利用することで通信を行うことは可能であった。
しかしながら、例えば特許文献2に開示された、トランキング通信を利用して基地局及び各移動局間で互いの位置情報を共有する技術を、上記コンベンショナル通信に応用する技術は存在しなかった。
【0020】
そのため、基地局及びトランキング通信エリア圏内の各移動局は、エリア圏外へと出てしまった移動局の位置を正確に把握することができず、エリア圏外の移動局は完全に孤立した状況となってしまっていた。
【0021】
本発明は、トランキング通信圏内の基地局及び各移動局が、トランキング通信圏外の移動局の位置情報を取得することが可能な無線通信システム、情報展開方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、基地局の制御エリア圏内にある複数の移動局同士により前記基地局を経由して行われるトランキング通信と、前記基地局の制御エリア圏内にある移動局と前記基地局の制御エリア圏外にある移動局とで前記基地局を経由せずに行われるコンベンショナル通信と、を行う無線通信システムであって、前記移動局は、自局の位置情報を取得する位置情報取得手段を備え、前記基地局の制御エリア圏外にある移動局は、前記位置情報取得手段により取得した自局の位置情報及び自局固有の識別情報を、前記基地局の制御エリア圏内にあるコンベンショナル通信可能な移動局にコンベンショナル通信により伝達し、前記基地局の制御エリア圏内にある移動局は、前記基地局の制御エリア圏外にある移動局から伝達された位置情報及び識別情報を、前記基地局にトランキング通信により伝達し、前記基地局は、前記基地局の制御エリア圏内にある移動局から伝達された位置情報及び識別情報を、前記基地局の制御エリア圏内にあるすべての移動局にトランキング通信により伝達することを特徴とする。
【0023】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の無線通信システムにおいて、前記基地局の制御エリア圏内にある移動局は、前記基地局から伝達された位置情報及び識別情報を、前記基地局の制御エリア圏外にあるコンベンショナル通信可能な移動局にコンベンショナル通信により伝達することを特徴とする。
【0024】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の無線通信システムにおいて、前記位置情報取得手段は、ジャイロセンサ及び車速センサを含んで構成されることを特徴とする。
【0025】
請求項4に記載の発明は、基地局の制御エリア圏内にある複数の移動局同士により前記基地局を経由して行われるトランキング通信と、前記基地局の制御エリア圏内にある移動局と前記基地局の制御エリア圏外にある移動局とで前記基地局を経由せずに行われるコンベンショナル通信と、を行う無線通信システムによる情報展開方法であって、前記基地局の制御エリア圏外にある移動局が、自局の位置情報を取得する位置情報取得手段により取得した自局の位置情報及び自局固有の識別情報を、前記基地局の制御エリア圏内にあるコンベンショナル通信可能な移動局にコンベンショナル通信により伝達する工程と、前記基地局の制御エリア圏内にある移動局が、前記基地局の制御エリア圏外にある移動局から伝達された前記位置情報及び前記識別情報を、前記基地局にトランキング通信により伝達する工程と、前記基地局が、前記基地局の制御エリア圏内にある移動局から伝達された前記位置情報及び前記識別情報を、前記基地局の制御エリア圏内にあるすべての移動局にトランキング通信により伝達する工程と、を含む情報展開方法である。
【0026】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の情報展開方法において、前記基地局の制御エリア圏内にある移動局が、前記基地局から伝達された位置情報及び識別情報を、前記基地局の制御エリア圏外にあるコンベンショナル通信可能な移動局にコンベンショナル通信により伝達する工程を含む。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、トランキング通信圏内の基地局及び各移動局が、トランキング通信圏外の移動局の位置情報を取得することが可能な無線通信システム、情報展開方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態に係る無線通信システム1の概念説明図である。
【図2】本実施形態に係る基地局100の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態に係る移動局200の概略構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態に係る無線通信システム1内で行われる通信切替え処理の一例について示したフローチャートである。
【図5】従来技術に係る無線通信システム2の概念説明図である。
【図6】従来技術に係る基地局300の概略構成を示すブロック図である。
【図7】従来技術に係る移動局400の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
図1は、本実施形態に係る無線通信システム1の概念説明図である。
図1に示すように、本実施形態に係る無線通信システム1は、一つの基地局100と6つの移動局(移動局200A、移動局200B、移動局200C、移動局200D、移動局200E、移動局200F)とで構成されている。また、無線通信システム1は、各移動局は、GPS衛星Sより信号を受信して、それぞれの位置情報を得ている。
移動局200A、移動局200B、移動局200C、移動局200E及び移動局200Fは、それぞれ基地局100の制御下にあり、同基地局100を中継して移動局相互間で通信(F1通信)を行う。
【0031】
ここで、移動局200Aを基地局100の通信エリアNの圏外に移動させると、移動局200B、移動局200C、移動局200E及び移動局200Fは、それぞれ基地局100の通信エリアNの圏内にいるので、これらの移動局は基地局100を中継したF1通信が可能である。
これに対し、移動局200D及び通信エリアN圏外に移動した移動局200Aは、基地局100の通信エリアN圏外にいるので、同基地局100と通信できず、従って、基地局100を中継した他の移動局とのF1通信は不可能となる。
【0032】
そこで、本実施形態に係る各移動局は、F1通信による本来の通信機能に加え、移動局間の直接通信(F2通信)を一時的に可能とする通信機能を備える。これにより、通信エリアN圏外の移動局200A及び移動局200Dは、孤立することなく近傍にいる移動局200B及び移動局200CとF2通信による直接通信が可能となる。
【0033】
図2は、本実施形態に係る基地局100の概略構成を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施形態に係る基地局100は、受信用アンテナ101と、受信部102と、ベースバンド処理部103と、送信部104と、送信用アンテナ105と、判定部106と、制御部107と、を備えて構成されている。
【0034】
基地局100は、移動局からF1通信により送信される送信信号を受信用アンテナ101にて受信し、当該受信した信号に対して受信部102で復調及び復号等の処理を行う。ここで、移動局からF1通信により送信される送信信号は、マイク音声や自局固有の識別情報を含めた所要データに所定の変調処理を施したものである。受信部102で復調及び復号等の処理を施された信号は、ベースバンド処理部103で移動局制御用データ等のベースバンド信号とともに処理が行われ、送信部104にて所定の方式のデジタル変調処理が行われる。デジタル変調処理が施された信号は、所定レベルにて送信用アンテナ105により各移動局に送信される。
また、基地局100は、判定部106において、通信エリアN圏外の移動局が通信エリアN圏内の移動局とF2通信を行いたいときに、当該移動局から最も近くにいる移動局を判定させる。
【0035】
制御部107は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えて構成され、基地局100の各部を制御する。
CPUは、ROMに格納された処理プログラム等を読み出して、RAMに展開して実行することにより、基地局100全体の制御を行う。
RAMは、CPUにより実行された処理プログラム等を、RAM内のプログラム格納領域に展開するとともに、入力データや上記処理プログラムが実行される際に生じる処理結果等をデータ格納領域に格納する。
ROMは、例えば、半導体メモリ等で構成され、処理プログラムやデータ等が予め記憶されている。
【0036】
図3は、本実施形態に係る移動局200の概略構成を示すブロック図である。
図3に示すように、移動局200は、受信用アンテナ201と、受信部202と、第2制御部203と、送信部204と、送信用アンテナ205と、受信レベル検出部206と、誤り率検出部207と、GPS用アンテナ208と、GPS受信部209と、ジャイロセンサ検出部210と、車速検出部211と、判定部212と、表示部213と、マイク214と、スピーカ215と、第1制御部216と、を備えて構成されている。
【0037】
移動局200は、マイク音声や自局固有の識別情報を含む所要データ等、通信相手の移動局に向けて送信するデータ(信号)を発生させ、送信部204で当該送信用信号に所定の方式のデジタル変調処理を行う。デジタル変調処理が施された信号は、所定レベルにて送信用アンテナ205により基地局100に送信される。
【0038】
また、移動局200は、基地局100からF1通信により送信される送信信号及び他の移動局からF2通信により送信される送信信号を受信用アンテナ201にて受信し、当該受信した信号に対して受信部202で復調及び復号等の処理を行う。受信部202で復調及び復号等の処理を施された信号は、第2制御部203でデジタル変調処理やF1とF2の信号を切替える処理が行われ、ベースバンド信号の処理が行われる。また、受信部202で復調及び復号等の処理を施された信号は、受信レベル検出部206にて受信レベル(RSSI)が、又誤り率検出部207にて誤り率(BER等)が、それぞれ検出される。
【0039】
また、移動局200は、GPS衛星Sから送信されるGPS信号をGPS用アンテナ208により受信し、GPS受信部209で当該受信したGPS信号を基に自局の位置情報が検出される。また、ジャイロセンサ検出部210において、加速度センサ、傾きセンサなどを有するジャイロセンサにより装置の加速度、傾き具合(移動状態)などを検出させる。さらに、車速検出部211において、車速センサにより車両の走行速度や進行方向を検出させる。このように、GPS受信部209、ジャイロセンサ検出部210、及び車速検出部211は、自局の位置情報を取得する位置情報取得手段としての機能を有する。
【0040】
また、移動局200は、判定部212において、受信レベル検出部206、GPS受信部209、ジャイロセンサ検出部210、車速検出部211により取得された各種情報を基に、予め保持している判定テーブルを参照させることで自車位置を測定させる。判定部212により測定された自車位置は、表示部213に表示される。また、表示部213は、「自局がF1通信エリア圏外に出ていきそうである旨」及び「自局がF1通信エリア圏外に出た旨」を示す警告表示を行う。
【0041】
マイク214は、ユーザから発せられた音声を音声信号に変換して第1制御部216へと出力する。第1制御部216に出力された音声信号は、第2制御部203を介して送信部204へと出力され、所定の方式のデジタル変調処理が施される。
スピーカ215は、第2制御部203で各種処理が施され、第1制御部216を介して出力された音声信号(例えば、受信電波に含まれる音声信号)を増幅して、これに基づく音声を出力する。
【0042】
第1制御部216は、例えば、CPU、RAM、ROM等を備えて構成され、移動局200の各部を制御する。
CPUは、ROMに格納された処理プログラム等を読み出して、RAMに展開して実行することにより、移動局200全体の制御を行う。
RAMは、CPUにより実行された処理プログラム等を、RAM内のプログラム格納領域に展開するとともに、入力データや上記処理プログラムが実行される際に生じる処理結果等をデータ格納領域に格納する。
ROMは、例えば、半導体メモリ等で構成され、処理プログラムやデータ等が予め記憶されている。
【0043】
図4は、本実施形態に係る無線通信システム1内で行われる通信切替え処理の一例について示したフローチャートである。
【0044】
まず、当該処理を行うに当たっての前提について説明する。
移動局200Aは、トランキング通信(F1通信)エリア圏内にあり、基地局100とF1通信を行っている。
移動局200Aは、判定部212において、受信レベル検出部206、GPS受信部209、ジャイロセンサ検出部210、車速検出部211により取得された各種情報を基に、予め保持している判定テーブルに照らし合わせて自局の位置情報を取得し、当該取得した位置情報を定期的に基地局100に送信する。なお、この取得した位置情報と、識別情報を定期的に基地局100に送信する処理は、移動局200Aに限らずF1通信エリア圏内にあるすべての移動局が行うものであるため、基地局100はエリア圏内にあるすべての移動局の位置情報を取得することができるようになっている。
基地局100は、各移動局から送られてきた位置情報と識別情報をエリア圏内の全移動局に送信する。そうすることで、エリア圏内の移動局同士が基地局100経由で互いの位置情報を把握することが可能となる。なお、各移動局が取得した他局の位置情報は、識別情報と共に第1制御部216にて管理される。本実施形態では、全ての送信において自局の識別情報が付加されるため、受信側の局は受信した情報がどの局の情報なのか認識する事が可能である。
上記したように、位置情報の取得手段として、GPS受信部209以外にジャイロセンサ検出部210及び車速検出部211を用いることで、例えば屋根のある場所やビル陰などのGPS情報を受信できない場所においても、位置情報を取得することができる。
【0045】
次に、F1通信エリア圏内にある移動局200Aが、当該エリア圏外へと移動するときの処理について図4を用いて説明する。
まず、図4に示すように、移動局200Aは、F1通信エリア圏外へと出ていきそうになった場合、受信レベル、誤り率、位置情報の取得手段により、その位置においてその旨を自動的に認識する(ステップS101)。
【0046】
F1通信エリア圏外へと出ていきそうである旨が認識されると、基地局100に対して当該エリア圏外に出ていきそうである旨を位置情報及び識別情報を含めて警告通知すると同時に、表示部213にその旨を示す警告表示を行う(ステップS102)。なお、エリア圏外へと出る直前の旨を認識する動作処理は、判定部212が保持する判定テーブルを参照して行われる。判定部212は、基地局100からの電波が明らかに届く距離であっても、基地局100との間にビルや山がある場合等、基地局100から送信される信号レベルが下がる場合は、位置情報だけでなく受信レベルや誤り率も考慮して圏外へ出て行きそうな旨の判断を行う。
【0047】
基地局100は、移動局200Aから送信された警告通知を受信すると、制御部107において、移動局200Aとコンベンショナル通信(F2通信)で通信可能な範囲にいる移動局を、F1通信エリア圏内の各移動局から送られてきた位置情報に基づいて検索する(ステップS103)。その間、移動局200Aは、F1通信エリア圏内にて基地局100からの応答(通信可能な移動局のF2周波数通知)待ちの状態となる(ステップS104)。
【0048】
本実施形態では、移動局200AとF2通信可能な移動局を検索した結果、移動局200Bを発見したものとする(ステップS105)。なお、検索した結果、移動局200AとF2通信可能な移動局が複数存在した場合は、移動局200Aに最も近い移動局を通信対象とする。
【0049】
次に、基地局100は、発見した移動局200Bに対して、移動局200AとF2通信を行うことの承認依頼を送信する(ステップS106)。
【0050】
移動局200Bは、基地局100から送信された承認依頼を受信すると、移動局200AとのF2通信が可能であるか否かを判断し、F2通信が可能である場合は、基地局100に対してF2通信を行える旨の承認通知(F2通信で使用する周波数情報を含む)を送信する(ステップS107)。なお、移動局200AとのF2通信が可能であるか否かの判断は、人為的に行われてもよく、この無線通信システム1を管理する者がF2通信に使用する周波数を予め全ての移動局200に設定しておくことで、自動的に行われるようにしてもよい。
【0051】
基地局100は、移動局200Bから送信された承認通知を受信すると、移動局200Aに対して移動局200BのF2周波数を通知する(ステップS108)。
【0052】
移動局200Aは、基地局100から送信された移動局200BのF2周波数の通知を受信すると、ステップS104での待機状態が解除され、F2通信が可能な状態となる。
その後、移動局200Aが移動し、F1通信エリアの圏外へと移動した場合、受信レベル、誤り率、位置情報の取得手段により、移動局200Aは圏外である旨を認識することとなる(ステップS109)。
エリア圏外と認識されると、その旨を表示部213に警告表示し(ステップS110)、第1制御部216及び第2制御部203の協働により、移動局200BとのF2通信を開始する(ステップS111)。移動局200Aと移動局200Bとの間でF2通信が確立されると、移動局200Aは当該F2通信を利用して位置情報と識別情報を定期的に送信する。
【0053】
次に、移動局200Bは、移動局200Aから定期的に受信している移動局200Aの位置情報と識別情報を、F1通信を利用して基地局100へと送信する(ステップS112)。
基地局100は、移動局200Bから送信された移動局200Aの位置情報と識別情報を受信すると、当該移動局200Aの位置情報と識別情報をF1通信エリア圏内の各移動局に対して送信し情報を展開する(ステップS113)。
【0054】
このように、本実施形態に係る無線通信システム1において、基地局100の制御エリアN圏外にある移動局(移動局200A)は、自局の位置情報及び自局固有の識別情報を、基地局100の制御エリアN圏内にあるコンベンショナル通信可能な移動局(移動局200B)にコンベンショナル通信により伝達し、基地局100の制御エリアN圏内にある移動局(移動局200B)は、基地局100の制御エリアN圏外にある移動局(移動局200A)から伝達された位置情報及び識別情報を、基地局100にトランキング通信により伝達し、基地局100は、基地局100の制御エリアN圏内にある移動局(移動局200B)から伝達された位置情報を基地局100の制御エリアN圏内にあるすべての移動局に伝達する。
【0055】
これにより、トランキング通信エリア圏外にある移動局の位置情報を、中継役の移動局及び基地局を経由してトランキング通信エリア圏内にあるすべての移動局に展開することができるので、トランキング通信エリア圏内にある移動局は、トランキング通信エリア圏外にある移動局の位置情報を取得することができる。
【0056】
以上、本発明に係る実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0057】
例えば、上記実施形態では、無線通信システム1を構成する移動局200の数を6つとしているが、特に制限はなく、任意の数構成することが可能である。
【0058】
また、上記実施形態では、図4において、F1通信エリア圏外の移動局として移動局200Aを、F1通信エリア圏内の移動局として移動局200Bを、それぞれ例示して説明しているが、例えば図1に示したように、F1通信エリア圏外の移動局として200Dが、F1通信エリア圏内の移動局として移動局200Cが、上記移動局200A、200Bと共存している場合についてここで説明する。
【0059】
F1通信エリア圏外の移動局200Dは、F1通信エリア圏内の移動局200Cとの間でF2通信を行っている。移動局200Cは、基地局100から展開される他局の位置情報を定期的に受信する。すなわち、移動局200Dは、移動局200Cを経由して他の移動局の位置情報を定期的に取得することとなる。
もし仮に、基地局100がF1通信エリア圏内の移動局200Aの位置情報を取得していた場合、移動局200Dは、移動局200Aの位置情報を取得することが可能となる。一方で、移動局200Aの側も、移動局200Bを経由して移動局200Dの位置情報を取得することができるので、F1通信エリア圏外にある移動局同士(例えば移動局200Aと200D)がお互いの位置情報を共有することが可能となり、F1通信エリア圏外にある移動局同士が通信可能な距離であればF2通信を行うことも可能となる。
【0060】
このように、本実施形態に係る無線通信システム1において、基地局100の制御エリア圏内にある移動局(移動局200C)は、基地局100から伝達された位置情報及び識別情報を基地局100の制御エリア圏外にある移動局(移動局200D)にコンベンショナル通信により伝達する。
【0061】
すなわち、中継役の移動局が、現在中継している移動局の他にトランキング通信エリア圏外にいる移動局の位置情報を基地局経由で取得し、当該取得した位置情報を現在中継している移動局に送信することで、トランキング通信エリア圏外にいる移動局同士において互いに位置情報を把握することが可能となる。
【0062】
その他、無線通信システム1を構成する各装置(基地局100及び移動局200)の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 無線通信システム
100 基地局
101 受信用アンテナ
102 受信部
103 ベースバンド処理部
104 送信部
105 送信用アンテナ
106 判定部
107 制御部
200 移動局
201 受信用アンテナ
202 受信部
203 制御部
204 送信部
205 送信用アンテナ
206 受信レベル検出部
207 誤り率検出部
208 GPS用アンテナ
209 GPS受信部
210 ジャイロセンサ検出部
211 車速検出部
212 判定部
213 表示部
214 マイク
215 スピーカ
216 第1制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局の制御エリア圏内にある複数の移動局同士により前記基地局を経由して行われるトランキング通信と、前記基地局の制御エリア圏内にある移動局と前記基地局の制御エリア圏外にある移動局とで前記基地局を経由せずに行われるコンベンショナル通信と、を行う無線通信システムであって、
前記移動局は、自局の位置情報を取得する位置情報取得手段を備え、
前記基地局の制御エリア圏外にある移動局は、前記位置情報取得手段により取得した自局の位置情報及び自局固有の識別情報を、前記基地局の制御エリア圏内にあるコンベンショナル通信可能な移動局にコンベンショナル通信により伝達し、
前記基地局の制御エリア圏内にある移動局は、前記基地局の制御エリア圏外にある移動局から伝達された位置情報及び識別情報を、前記基地局にトランキング通信により伝達し、
前記基地局は、前記基地局の制御エリア圏内にある移動局から伝達された位置情報及び識別情報を、前記基地局の制御エリア圏内にあるすべての移動局にトランキング通信により伝達することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
さらに、前記基地局の制御エリア圏内にある移動局は、前記基地局から伝達された位置情報及び識別情報を、前記基地局の制御エリア圏外にあるコンベンショナル通信可能な移動局にコンベンショナル通信により伝達することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記位置情報取得手段は、ジャイロセンサ及び車速センサを含んで構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
基地局の制御エリア圏内にある複数の移動局同士により前記基地局を経由して行われるトランキング通信と、前記基地局の制御エリア圏内にある移動局と前記基地局の制御エリア圏外にある移動局とで前記基地局を経由せずに行われるコンベンショナル通信と、を行う無線通信システムによる情報展開方法であって、
前記基地局の制御エリア圏外にある移動局が、自局の位置情報を取得する位置情報取得手段により取得した自局の位置情報及び自局固有の識別情報を、前記基地局の制御エリア圏内にあるコンベンショナル通信可能な移動局にコンベンショナル通信により伝達する工程と、
前記基地局の制御エリア圏内にある移動局が、前記基地局の制御エリア圏外にある移動局から伝達された前記位置情報及び前記識別情報を、前記基地局にトランキング通信により伝達する工程と、
前記基地局が、前記基地局の制御エリア圏内にある移動局から伝達された前記位置情報及び前記識別情報を、前記基地局の制御エリア圏内にあるすべての移動局にトランキング通信により伝達する工程と、を含む情報展開方法。
【請求項5】
さらに、前記基地局の制御エリア圏内にある移動局が、前記基地局から伝達された位置情報及び識別情報を、前記基地局の制御エリア圏外にあるコンベンショナル通信可能な移動局にコンベンショナル通信により伝達する工程を含む請求項4に記載の情報展開方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−114738(P2011−114738A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270959(P2009−270959)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】