説明

無線通信システム

【課題】ペアリングおよびペアリング後の通信を適切に行う無線通信システムを提供すること。
【解決手段】無線通信システムは、無線通信を行う第1通信装置10、および第1通信装置10との間で無線通信を行う第2通信装置20を有する。第1通信装置10および第2通信装置20はそれぞれ、複数の通信用チャンネルの中から所定のチャンネルを選択する選択手段106と、選択手段106が選択したチャンネルを介して通信を行う通信手段102,103,104と、を備え、選択手段106は、第1通信装置10および第2通信装置20によるペアリング時は複数の通信用チャンネルの中であらかじめ決められているペアリング用のチャンネルを選択し、非ペアリング時はチャンネル切換え指示に応じたチャンネルを選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の無線機器にそれぞれペアリング用スイッチを設け、各機器のペアリング用スイッチを略同時に押下することによって当該無線機器間でペアリングを行わせる技術が知られている(特許文献1参照)。ペアリングとは、2つの無線機器がお互いのIDを交換して登録し合うことをいう。ペアリングを行わせることで、当該無線機器間が互いを認識し、他無線機器と混信することなく通信を行うことができる。一般に、無線機器は通信で使用する周波数帯(チャンネルと呼ぶ)が予め幾つか用意されている。また、チャンネル選択が自由に行えるよう、無線機器にはチャンネル選択操作部材が備えられている。2つの無線機器間でペアリングを行う際には、当該無線機器間で同一のチャンネルをチャンネル選択操作部材で選択してからペアリングを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4440338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、カメラなどの機器を遠隔操作で起動するための無線機器(以後リモコンと呼ぶ)のように、無線機器にチャンネル選択操作部材を設けない方が使用者にとって使いやすい場合がある。遠隔起動という単純な操作を行う単機能のリモコンは、チャンネル選択を意識することなく使用できる方が使いやすいからである。この場合、チャンネル選択操作部材を有する無線機器と、チャンネル選択操作部材を有さないリモコンとをどのようにペアリングさせるかが問題となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、無線通信を行う第1通信装置、および第1通信装置との間で無線通信を行う第2通信装置を有する無線通信システムに適用される。そして、第1通信装置および第2通信装置はそれぞれ、複数の通信用チャンネルの中から所定のチャンネルを選択する選択手段と、選択手段が選択したチャンネルを介して通信を行う通信手段と、を備え、選択手段は、第1通信装置および第2通信装置によるペアリング時は複数の通信用チャンネルの中であらかじめ決められているペアリング用のチャンネルを選択し、非ペアリング時はチャンネル切換え指示に応じたチャンネルを選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明による無線通信システムでは、ペアリングおよびペアリング後の通信を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施の形態によるカメラシステムの構成を説明する図である。
【図2】カメラ、無線アダプタおよびリモコン送信機の構成を例示するブロック図である。
【図3】フレームデータの構成を例示する図である。
【図4】ペアリング用操作ボタンが操作された場合のCPUが実行する処理の流れを説明するフローチャートである。
【図5】リモコン送信機のCPUが実行する処理の流れを説明するフローチャートである。
【図6】無線アダプタのCPUが実行する処理の流れを説明するフローチャートである。
【図7】変形例3の構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。図1は、本発明の一実施の形態による無線通信カメラシステムの構成を説明する図である。カメラシステムは、カメラ30と、リモコン送信機10とで構成される。カメラ30には、無線アダプタ20が装着されている。
【0009】
リモコン送信機10は、操作部材107aおよび107bを有する。リモコン送信機10は、操作部材107aおよび107bの操作に応じてカメラ30に対して撮影指示などの操作信号やペアリングを行うための信号を無線送信する。操作部材107aは、レリーズボタンに相当する押しボタンであり、操作部材107bは、リモコン送信機10にペアリング処理を行わせるためのペアリング用操作ボタンである。ペアリング用ボタンは、2つの無線機器間でペアリング処理(すなわち相互のID情報交換)を行わせるための操作ボタンをいう。本実施の形態では、リモコン送信機10と無線アダプタ20がお互いのID情報を交換して登録し合う。
【0010】
ペアリング済みのリモコン送信機10は、操作部材107aの操作に応じてペアリング済みの無線アダプタ20(カメラ30)に対して撮影を指示する操作信号を変調して無線送信する。ペアリング済みの無線アダプタ20は、上記リモコン送信機10からの無線信号を受信し、復調した操作信号を装着されているカメラ30へ送る。
【0011】
図2は、カメラ30、無線アダプタ20およびリモコン送信機10の構成を例示するブロック図である。図2において、無線アダプタ20およびリモコン送信機10の双方に共通に含まれるブロックは、同一符号を付して説明する。
【0012】
リモコン送信機10は、アンテナ101と、周波数ダウンコンバータ102と、変調送信回路103と、復調回路104と、発振器106と、操作部材107aおよび107bと、CPU108とを含む。リモコン送信機10のCPU108は、操作部材107aから操作信号を受けると、所定の送信データの塊(本説明ではフレームデータと呼ぶ)を生成して変調送信回路103へ出力する。変調送信回路103は、該フレームデータを所定の周波数の無線伝送可能な信号に変調した後、搬送波の形でアンテナ101を介して無線アダプタ20へ送信する。
【0013】
本説明では、無線伝送に用いる周波数をチャンネルと呼ぶ。リモコン送信機10の発振器106は、たとえば、第1chから第10chまで計10チャンネルの間で周波数が切換え可能である。リモコン送信機10は、たとえば第3chを上記所定の周波数として用いて操作信号を無線送信する。第3chへの切換えは、CPU108からの指示に基づいて発振器106が行うが、本実施形態のリモコン送信機10には、チャンネル切換えのための操作部材が備えられていない。
【0014】
また、リモコン送信機10のCPU108は、操作部材107bから操作信号を受けると、所定のペアリング処理を行う。本実施の形態によるカメラシステムは、たとえば第10chを用いてペアリング処理のための送受信を行う。第10chへの切換えは、CPU108からの指示に基づいて発振器106が行う。ペアリング処理の詳細については後述する。
【0015】
無線アダプタ20は、アンテナ101と、周波数ダウンコンバータ102と、変調送信回路103と、復調回路104と、発振器106と、操作部材107bと、CPU108とを含む。無線アダプタ20のCPU108は、アンテナ101を介して搬送波の形でフレームデータを受信する。受信した搬送波は、まず周波数ダウンコンバータ102に入力される。周波数ダウンコンバータ102は、受信したフレームデータを所定の低周波数のデータにダウンコンバートした後、復調回路104へ出力する。復調回路104では、入力された信号を復調してCPU108へ出力する。
【0016】
無線アダプタ20の発振器106は、リモコン送信機10の発振器106と同様に、第1chからら第10chまで計10チャンネルの間で周波数が切換え可能である。無線アダプタ20は、たとえば第3chを無線伝送周波数として用いて、操作信号を無線受信する。第3chへの切換えは、無線アダプタ20のCPU108からの指示に基づいて発振器106が行う。本実施形態では、カメラ30から無線アダプタ20のCPU108へチャンネル切換えの指示がなされる。
【0017】
無線アダプタ20のCPU108は、入力されるフレームデータを先頭から読み込んで解析し、解析したコマンド情報をカメラ30のCPU306へ送信する。このとき、CPU108は、フレームデータ内に含まれる同期語31(図3)が、あらかじめ設定されているデータ列と一致した場合のみ、カメラ30へコマンド情報を出力する。これによって、他の通信と混信した場合の誤動作(たとえば、他の機器を指示対象とする通信を受信したにもかかわらず、カメラ30へコマンド情報を送信すること)を防止することができる。また、無線アダプタ20のCPU108は、操作部材107bから操作信号を受けると、所定のペアリング処理を行う。上述したように、本実施の形態によるカメラシステムは第10chを用いてペアリング処理時の送受信を行う。第10chへの切換えは、CPU108からの指示に基づいて発振器106が行う。ペアリング処理の詳細については後述する。
【0018】
カメラ30は、撮影レンズ301と、シャッタ302と、撮像素子303と、測光センサ304と、シャッタ駆動装置305と、CPU306と、操作部材(レリーズスイッチ含む)307とを備える。カメラ30のCPU306は、操作部材307からの操作信号に応じてカメラ制御を行う他、無線アダプタ20のCPU108からのコマンド情報に応じてカメラ制御を行うように構成されている。
【0019】
−ペアリング処理−
ペアリング処理について説明する。図1に例示したリモコン送信機10と無線アダプタ20は、カメラ30に撮影を行わせる前にペアリング処理を済ませておく必要がある。ペアリング処理は、リモコン送信機10と無線アダプタ20とにそれぞれに設けられた操作部材107bが略同時に押下操作されることによって起動する。リモコン送信機10および無線アダプタ20が有するそれぞれのCPU108は、操作部材107bからオン操作信号が入力されてから所定時間(たとえば0.5秒)が経過するまでペアリング用のフレームデータを上記第10chを用いて定期的に繰り返して無線送信する。
【0020】
無線アダプタ20のCPU108は、上記所定時間に第10chで他の機器(リモコン送信機10)からペアリング用のフレームデータを受信した場合には、該フレームデータを送信してきた機器のIDをCPU108内の不揮発性メモリに記憶する(ペアリングIDリストに登録)。無線アダプタ20のCPU108は、ペアリング処理以降に受信したフレームデータにおける送信元IDがペアリングIDリストに登録したIDと合致する場合に、当該フレームデータに含まれるコマンドを有効なものとして扱う。
【0021】
一方、リモコン送信機10のCPU108は、上記所定時間に第10chで他の機器(無線アダプタ20)からペアリング用のフレームデータを受信した場合には、該フレームデータを送信してきた機器のIDをCPU108内の不揮発性メモリへ記憶しない。リモコン送信機10のCPU108は、撮影指示の操作信号を無線送信するだけなので他の機器からのコマンドに応じた処理をすることがなく、ID照合をする必要がないからである。
【0022】
本カメラシステムでは、ペアリングのための無線通信に予め決められたチャンネル(本例では10ch)を使う。一般に、ペアリング処理はペアリング対象の2つの無線機器を近くに置いて行うため、送受信の信号レベルが問題になることはない。そこで、ペアリング用のフレームデータの送信は、ペアリング対象の2つの無線機器以外の他の無線機器に対して影響を与えないように、通常の通信(リモコン操作信号の送信)時より送信レベルを下げる(たとえば−10dB)。
【0023】
また、リモコン送信機10および無線アダプタ20のそれぞれのCPU108は、ペアリング用のフレームデータに、自身のID情報(後述する送信元ID33)と現在設定されているチャンネルを示す情報とを含める。たとえば1バイト分のバイナリデータでチャンネルを表現する場合、200ch超までの設定チャンネルを表現できる。
【0024】
リモコン送信機10は、チャンネル切換えのための操作部材を有していないので、ユーザーの手でチャンネルを切換える(設定する)ことができない。そこでリモコン送信機10のCPU108は、現在設定されているチャンネルを示す情報の代わりにチャンネル切換え操作部材を具備しない(すなわち、チャンネル切り換え指示の受付が禁じられている)ことを示す情報を含める。上記1バイト分のデータで表現する場合、たとえば「チャンネル切換え操作部材を具備しない場合を255=0xFFで示す」とあらかじめ決めておき、上記1バイト分のデータを0xFFとする。
【0025】
チャンネル切換えのための操作部材を有していないリモコン送信機10のCPU108は、他の機器(無線アダプタ20)からペアリング用のフレームデータを受信した後、該フレームデータに含まれている情報に基づいて自身のチャンネルを切換える。具体的には、無線アダプタ20に設定されているチャンネルと同一チャンネル(本例では3ch)に切換えるように発振器106へ指示を送る。
【0026】
一方、カメラ30に装着された無線アダプタ20は、カメラ30からの指示によってチャンネルを切換えられる。本実施形態では、カメラ30におけるメニュー操作により、ユーザーの手でチャンネルの切換えが可能に構成されるので、無線アダプタ20自身にチャンネル切換え操作部材が設けられている場合と同様に扱える。このため、無線アダプタ20のCPU108は、現在設定されているチャンネルを示す情報をペアリング用のフレームデータに含めることができる。
【0027】
無線アダプタ20にチャンネル切換え操作部材が設けられている場合(本実施形態のように設けられているのと同然と扱える場合を含む)のCPU108は、ペアリング用のフレームデータ受信以降も、チャンネル切換え操作が行われない限り(カメラ30からの変更指示がない限り)設定されているチャンネル(本例では3ch)を、操作信号受信のための無線伝送周波数として維持する。
【0028】
−フレームデータの構成−
図3は、本実施の形態のカメラシステムが無線送信する1回のフレームデータの構成を例示する図である。通信方式によって異なるものの、通常はフレームの始めに同期語31がある(SFDとも呼ばれる)。同期語31は、フレームデータの開始を検出するためのパターンであり、通常は1バイト(2バイトでもよい)データである。通信方式によってあらかじめ標準となる同期語31が定められているので、所定の受信期間内に受信側の機器が受信デコードした信号が当該標準の同期語31と一致する場合にのみ、受信側の機器において以降の受信が有効になる。
【0029】
同期語31の次に、不図示のデータ数(バイト数)を示すデータが続く。「データ数」は、通信データ容量(バイト数)を示すデータであり、フレームデータの情報量を意味する。受信側の機器は、同期語31を検出後に「データ数」で示されたバイト数のデータをデコードして1回の受信を終了する。
【0030】
送信先ID32は、送信先(リモコン送信機10から見た場合は、カメラ30に装着されている無線アダプタ20)を指定するIDやネットワークアドレスを示すデータである。送信元ID33は、発信元(リモコン送信機10)を指定するIDやネットワークアドレスを示すデータである。なお、IDはバイナリデータで表現してもよいし、ASCIIコードの文字列で表現してもよい。どの表現を採用するかについては、あらかじめシステムの取り決めで決めておく。たとえば、3文字以上かつ8文字以内のASCII文字列でIDを表現する場合、リモコン送信機10のIDを“RC_01”、無線アダプタ20のIDを“RCV_01”と表せる。
【0031】
コマンド34は、受信側の機器に対する指示内容を示すデータ群によって構成される。パラメータ35は、コマンド34に必要なパラメータ群によって構成される。チェックデータ36は、フレームデータの最後に位置するチェック用データである。たとえば、CRCによる誤り検出データ生成アルゴリズムで生成された2バイトのデータによって構成される。受信側の機器は、チェックデータ36に基づいてエラー判定を行い、エラーを判定した場合には当該フレームデータを廃棄するように構成されている。なお、図3の構成は例示であって、データの出現順番は異なるものでもかまわない。
【0032】
一般に、ペアリング処理においてペアリング用のフレームデータを送信するのは送信相手が決まっていない状態である。この場合のリモコン送信機10および無線アダプタ20のCPU108は、それぞれが送信相手を不特定として(送信先IDを指定しない)送信する。このような送信先を不特定とする送信はブロードキャストと呼ばれる。ペアリング用のコマンドは、図3の送信フレームにおいてコマンド34の位置に特定のコードとして置かれる。
【0033】
上述したCPU108が行う処理の流れについて、図4、図5、図6に例示するフローチャートを参照して説明する。
−リモコン送信機と無線アダプタとで共通する処理−
リモコン送信機10のCPU108、および無線アダプタ20のCPU108は、それぞれ不図示の電池が装填されると、図4による処理を所定間隔で繰り返し行う。
【0034】
図4のステップS51において、CPU108は、ペアリング用操作ボタンが操作されたか否かを判定する。CPU108は、操作部材107bから操作信号が入力された場合にステップS51を肯定判定してステップS52へ進む。CPU108は、操作部材107bから操作信号が入力されない場合には、ステップS51を否定判定して当該判定処理を繰り返す。
【0035】
ステップS52において、CPU108は、チャンネル切換え操作部材を有するか否かを判定する。CPU108は、チャンネル切換え操作部材を具備する場合(本実施形態のように具備するのと同然と扱える場合を含む)にステップS52を肯定判定してステップS53へ進む。CPU108は、チャンネル切換え操作部材を具備しない場合(チャンネル切り換え指示を受け付けが禁じられていることから、具備するのと同然と扱えない場合を含む)にはステップS52を否定判定してステップS57へ進む。
【0036】
ステップS53において、CPU108は、ペアリング用のフレームデータに現在設定されているチャンネルを示す情報を含めるようにしてステップS54へ進む。ステップS54において、CPU108は発振器106へ指示を送り、チャンネルを第10chに切換えさせてステップS55へ進む。
【0037】
ステップS55において、CPU108は、ペアリング用のフレームデータを送信させてステップS56へ進む。ステップS56において、CPU108は発振器106へ指示を送り、チャンネルを第10chから元のチャンネルに戻すように切換えさせてステップS51へ戻る。
【0038】
上述したステップS52を否定判定して進むステップS57において、CPU108は、ペアリング用のフレームデータにチャンネル切換え操作部材を具備しない(すなわち、チャンネル切り換え指示の受け付けが禁じられている)ことを示す情報を含めるようにしてステップS54へ進む。
【0039】
−リモコン送信機における処理−
リモコン送信機10のCPU108は、不図示の電池が装填され通電されると、図5による処理を所定時間間隔で起動する。図5のステップS1において、CPU108は、無線通信を受信したか否かを判定する。CPU108は、フレームデータをエラー無く受信した場合にステップS1を肯定判定してステップS2へ進む。CPU108は、フレームデータを受信していない、または受信したもののエラー判定した場合には、ステップS1を否定判定して当該判定処理を繰り返す。
【0040】
ステップS2において、CPU108はブロードキャスト送信か否かを判定する。CPU108は、受信したフレームデータにおいて送信先ID32(図3)が指定されていない場合、ステップS2を肯定判定してステップS3へ進む。CPU108は、受信したフレームにおいて送信先ID32(図3)が指定されている場合、ステップS2を否定判定してステップS10へ進む。
【0041】
ステップS3において、CPU108は、受信したフレームデータにおけるコマンド34(図3)に格納されるコードに基づいてコマンド分析を行い、ステップS4へ進む。ステップS4において、CPU108はペアリング用のフレームデータか否かを判定する。CPU108は、上記分析結果がペアリング用のフレームデータである場合、ステップS4を肯定判定してステップS5へ進む。CPU108は、上記分析結果がペアリング用のフレームデータでない場合にはステップS4を否定判定し、ステップS1へ戻る。ステップS1へ戻る場合は、上述した処理を繰り返す。
【0042】
ステップS5において、CPU108はペアリング期間中か否かを判定する。CPU108は、操作部材107b(ペアリング用操作ボタン)の操作が解除されて所定時間(たとえば0.5秒)が経過していない場合はステップS5を肯定判定してステップS7へ進む。CPU108は、操作部材107b(ペアリング用操作ボタン)の操作解除から所定時間が経過している場合にはステップS5を否定判定し、ステップS1へ戻る。ステップS1へ戻るのは、ペアリング期間中でない場合にペアリング用のフレームデータを受信しても、ペアリング処理を行わないようにするためである。ステップS1へ戻る場合は、上述した処理を繰り返す。
【0043】
ステップS7において、CPU108は、送信側(本例の場合は無線アダプタ20)がチャンネル切換え操作部材を有するか否かを判定する。CPU108は、コマンド34(図3)に格納されるコードにおいて、現在設定されているチャンネルを示す1バイトの情報が255=0xFFである場合、ステップS7を否定判定してステップS9へ進む。CPU108は、コマンド34(図3)に格納されるコードにおいて、現在設定されているチャンネルを示す1バイトの情報が255=0xFFでない場合、ステップS7を肯定判定してステップS8へ進む。
【0044】
ステップS8において、CPU108は発振器106へ指示を送り、チャンネルを第3chに切換えさせてステップS1へ戻る。第3chは、本実施形態の無線アダプタ20から送信された上記コマンド34内の1バイト情報に基づく。ステップS9において、CPU108は発振器106へ指示を送り、チャンネルを所定のデフォールトチャンネル(たとえば第1ch)に切換えさせてステップS1へ戻る。デフォールトチャンネルは、たとえばチャンネル切換え操作部材を具備しない(すなわち、チャンネル切り換え指示の受け付けが禁じられている)無線機器同士で通信を行えるように、あらかじめシステムの取り決めで決めておく非常用の通信チャンネルである。
【0045】
上述したステップS2を否定判定して進むステップS10において、CPU108は、受信したフレームデータにおける送信元ID33(図3)がペアリングIDリストとして登録されているIDと一致するか否かを判定する。CPU108は、IDが一致する場合に、受信したフレームデータがペアリング済みの通信相手から送信されたものであると肯定判定してステップS11へ進む。CPU108は、IDが一致しない場合には、受信したフレームデータがペアリング済みの通信相手から送信されたものでないと否定判定してステップS1へ戻る。
【0046】
ステップS11において、CPU108は受信したフレームデータにおけるコマンド34(図3)に格納されるコードに基づいてコマンド分析を行い、ステップS12へ進む。ステップS12において、CPU108は、分析したコマンドに応じて所定のコマンド処理を行ってステップS1へ戻る。ステップS1へ戻る場合は、上述した処理を繰り返す。
【0047】
−無線アダプタにおける処理−
無線アダプタ20のCPU108は、不図示の電池が装填されると、図6による処理を起動する。図6において、図5の場合と同一の処理を行うステップには同一符号を記して説明を省略する。なお、本実施形態の場合、リモコン送信機10から無線アダプタ20へ送信されるコマンドは、カメラ30に対する撮影処理の起動を指示するための撮影起動コマンドである。
【0048】
ステップS5を肯定判定して進むステップS6において、CPU108は、上記ペアリング期間に受信したペアリング用のフレームデータに基づき、送信元ID(図3)をペアリングIDリストに登録し、図1へ戻る。
【0049】
ステップS4を否定判定して進むステップS13において、CPU108は、他のブロードキャスト送信されたコマンドに応じて所定の処理を行ってステップS1へ戻る。
【0050】
以上説明した実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)無線通信を行うリモコン送信機10、および該リモコン送信機10との間で無線通信を行う無線アダプタ20を有する無線通信カメラシステムにおいて、リモコン送信機10および無線アダプタ20はそれぞれ、複数の通信用チャンネルの中から所定のチャンネルを選択する発振器106と、該発振器106が選択したチャンネルを介して通信を行う周波数ダウンコンバータ102,復調回路104、変調送信回路103と、を備える。そして、発振器106は、リモコン送信機10および無線アダプタ20によるペアリング時は複数の通信用チャンネルの中であらかじめ決められているペアリング用のチャンネル(第10ch)を選択し、非ペアリング時はチャンネル切換え指示に応じたチャンネルを選択するようにしたので、ペアリング時の通信およびペアリング後(非ペアリング時)の通信を適切に行うことができる。
【0051】
(2)上記(1)の無線通信カメラシステムにおいて、リモコン送信機10および無線アダプタ20はそれぞれ、周波数ダウンコンバータ102,復調回路104、変調送信回路103による通信内容を制御するCPU108をさらに備え、該CPU108は、チャンネル切換え指示の受け付けが許可されている場合、ペアリング前に発振器106が選択していたチャンネルを示す情報をペアリング時の送信内容に含めるように変調送信回路103を制御する。これにより、ペアリング後(非ペアリング時)の通信に用いるチャンネルの候補をペアリング相手に伝えることができる。
【0052】
(3)上記(2)の無線通信カメラシステムにおいて、CPU108は、チャンネル切換え指示の受けつけが禁止されている場合、該チャンネル切換え指示を受け付けないことを示す情報をペアリング時の送信内容に含めるように変調送信回路103を制御する。これにより、ペアリング後(非ペアリング時)の通信に用いるチャンネルを変更できない旨をペアリング相手に伝えることができる。
【0053】
(4)上記(2)の無線通信カメラシステムにおいて、発振器106は、チャンネル切換え指示の受けつけが禁止されている場合であって、ペアリング時に周波数ダウンコンバータ102,復調回路104で受信された通信内容にペアリング相手がペアリング前に選択していたチャンネルを示す情報が含まれている場合、該情報が示すチャンネルをペアリング後に選択するので、ペアリング相手から伝えられたチャンネルに切り換えることができる。これにより、ペアリング後(非ペアリング時)の通信を適切に行える。
【0054】
上述した無線通信カメラシステムでは、ペアリングを行う2つの無線機器、すなわちリモコン送信機10および無線アダプタ20の双方が、仮に、チャンネル切換え指示の受け付けを許可されており、それぞれが互いに異なるチャンネルに切換えられている場合でも、ペアリングコマンドは上記ペアリング用のチャンネル(第10Ch)で送信されるので、ペアリング前に双方に設定されているチャンネルにかかわらず、正しくペアリングを行える。
【0055】
ただし、ペアリング後(非ペアリング時)は、リモコン送信機10および無線アダプタ20の双方において、それぞれを同じチャンネルに切換え設定しなければ、ペアリング後の通信を行うことはできない。この理由は、双方におけるユーザーの手でチャンネルを切換える(設定する)操作を優先するためである。
【0056】
これに対し、リモコン送信機10のように、無線通信システムを構成する無線機器の一方でチャンネル切換え指示の受けつけが禁止されている場合は、該チャンネル切換え指示の受けつけが禁止されている機器(リモコン送信機10)は、他方の機器(無線アダプタ20)から伝えられたチャンネルへ上記(4)のように切換えるので、ペアリング後(非ペアリング時)の通信を適切に行える。
【0057】
(変形例1)
上述した無線アダプタ20において、ペアリング処理中に受信したペアリング用のフレームデータに、チャンネル切換え操作部材を具備することを示す情報(すなわち、ペアリング相手の無線機器に現在設定されているチャンネルを示す情報)が含まれている場合、該情報に基づいて設定チャンネルの一致/不一致をユーザーに報知する構成を付加してもよい。
【0058】
たとえば、他の通信機器に設定されているチャンネルが第5chで、無線アダプタ20に設定されているチャンネルが第5chの場合に、無線アダプタ20は、双方の無線通信機器に設定されているチャンネルが一致することを示す緑色LEDランプを点灯させる。
【0059】
一方、他の通信機器に設定されているチャンネルが第5chで、無線アダプタ20に設定されているチャンネルが第6chの場合には、無線アダプタ20は、双方の無線通信機器に設定されているチャンネルが一致しないことを示す赤色LEDランプを点灯させる。
【0060】
変形例1によれば、設定チャンネルを変更する必要があるか否か視覚的に知らせるので、チャンネルの不一致を理由に無線操作できないなどの不測の事態の発生時に役立つ。なお、LEDランプ等の視覚的な報知ではなく、音声による聴覚的な報知の仕方であってもよい。
【0061】
(変形例2)
上記変形例1に加えて、双方の無線通信機器に設定されているチャンネルが一致しない場合には、他の通信機器に設定されているチャンネルを報知する構成を付加するようにしてもよい。具体的には、他の通信機器に設定されているチャンネルを示す表示を行う表示器を無線アダプタ20に付加する。他の通信機器に設定されているチャンネルが分かれば、無線アダプタ20の設定チャンネルを他の通信機器に設定されているチャンネルと一致するように変更操作を促すことができるので、ユーザーにとって使いやすくなる。
【0062】
(変形例3)
無線アダプタ20とカメラ30との組み合わせを2組用意し、一方のレリーズタイミング信号を他方へ無線送信するように構成してもよい。図7は、変形例3の構成を例示する図である。カメラ30には無線アダプタ20が装着され、カメラ30Bには無線アダプタ20Bが装着されている。カメラ30とカメラ30Bとは同様の構成を有し、無線アダプタ20と無線アダプタ20Bとは同様の構成を有する。無線アダプタ20と無線アダプタ20Bとの間であらかじめペアリング処理が行われる。
【0063】
ユーザーがカメラ30に対してレリーズ操作を行うと、カメラ30のCPU306は撮影処理を開始させるとともに、無線アダプタ20のCPU108へレリーズタイミング信号を送る。無線アダプタ20のCPU108は、変調送信回路103を制御して、該レリーズタイミング信号を無線アダプタ20Bへ送信させる。
【0064】
無線アダプタ20Bの復調回路104は、復調したレリーズタイミング信号を無線アダプタ20のCPU108へ送る。無線アダプタ20のCPU108は、レリーズタイミング信号をカメラ30BのCPU306へ送信する。CPU306は、レリーズタイミング信号に応じてカメラ30Bの撮影処理を開始させる。変形例3によれば、2台のカメラ30、30Bを連動して撮影させることができる。
【0065】
(変形例4)
変形例3の構成において、無線アダプタ20と20Bの双方がチャンネル切換え操作部材を具備しない場合(装着されているカメラ30、30Bにおけるメニュー操作によってチャンネル切換え操作が禁止されることにより、チャンネル切換え操作部を具備するのと同然と扱えない場合を含む)が想定される。この場合の発振器106は、チャンネル切換え指示の受けつけが禁止されている場合であって、ペアリング時に周波数ダウンコンバータ102,復調回路104で受信された通信内容にペアリング相手がチャンネル切換え指示を受け付けないことを示す情報が含まれている場合、複数のチャンネルの中であらかじめ決められているチャンネル(第1ch)をペアリング後に選択する。あらかじめ無線通信システムで取り決めておいた非常用の通信チャンネルに切換えることで、チャンネルの不一致を理由に無線操作できないなどの不測の事態の発生を防ぐことができる。
【0066】
(変形例5)
無線アダプタ20の構成をカメラ30内に組み込んで一体構成にしてもよい。また、カメラ30を例に説明したが、カメラ30に代えて、携帯電話機やフォトフレーム、プロジェクタ、携帯型情報端末などの電子機器にも無線アダプタ20を装着可能に構成する、あるいは無線アダプタ20の構成を上記電子機器内に組み込んで一体構成することで、本発明による無線通信システムを構成してよい。
【0067】
以上の説明はあくまで一例であり、上記の実施形態の構成に何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0068】
10…リモコン送信機
20、20B…無線アダプタ
30…カメラ
101…アンテナ
102…周波数ダウンコンバータ
103…変調送信回路
104…復調回路
106…発振器
108…CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信を行う第1通信装置、および前記第1通信装置との間で無線通信を行う第2通信装置を有する無線通信システムにおいて、
前記第1通信装置および前記第2通信装置はそれぞれ、
複数の通信用チャンネルの中から所定のチャンネルを選択する選択手段と、
前記選択手段が選択したチャンネルを介して通信を行う通信手段と、を備え、
前記選択手段は、前記第1通信装置および前記第2通信装置によるペアリング時は前記複数の通信用チャンネルの中であらかじめ決められているペアリング用のチャンネルを選択し、非ペアリング時はチャンネル切換え指示に応じたチャンネルを選択することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記第1通信装置および前記第2通信装置はそれぞれ、
前記通信手段による通信内容を制御する通信制御手段をさらに備え、
前記通信制御手段は、前記チャンネル切換え指示の受け付けが許可されている場合、前記ペアリング前に前記選択手段が選択していたチャンネルを示す情報を前記ペアリング時の送信内容に含めるように前記通信手段を制御することを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
請求項2に記載の無線通信システムにおいて、
前記通信制御手段は、前記チャンネル切換え指示の受けつけが禁止されている場合、前記チャンネル切換え指示を受け付けないことを示す情報を前記ペアリング時の送信内容に含めるように前記通信手段を制御することを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
請求項2に記載の無線通信システムにおいて、
前記選択手段は、前記チャンネル切換え指示の受けつけが禁止されている場合であって、前記ペアリング時に前記通信手段で受信された通信内容に前記ペアリング前に選択していたチャンネルを示す情報が含まれている場合、該情報が示すチャンネルを前記ペアリング後に選択することを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
請求項3に記載の無線通信システムにおいて、
前記選択手段は、前記チャンネル切換え指示の受けつけが禁止されている場合であって、前記ペアリング時に前記通信手段で受信された通信内容に前記チャンネル切換え指示を受け付けないことを示す情報が含まれている場合、前記複数のチャンネルの中であらかじめ決められているチャンネルを前記ペアリング後に選択することを特徴とする無線通信システム。
【請求項6】
請求項3に記載の無線通信システムにおいて、
前記チャンネル切換え指示の受けつけが許可されている場合であって、前記ペアリング時に前記通信手段で受信された通信内容に基づいて前記第1通信装置および前記第2通信装置間の選択チャンネルが異なることを判定した場合、これを報知する報知手段をさらに備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項7】
請求項3に記載の無線通信システムにおいて、
前記チャンネル切換え指示の受けつけが許可されている場合であって、前記ペアリング時に前記通信手段で受信された通信内容に基づいて前記第1通信装置および前記第2通信装置間の選択チャンネルが異なることを判定した場合、前記通信内容に含まれる設定チャンネルを示す表示を行う表示手段をさらに備えることを特徴とする無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−169818(P2012−169818A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28511(P2011−28511)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】