説明

無線通信システム

【課題】無線機器が意図しない方向からの無線信号を受信する可能性や意図しない方向に無線信号を送信する可能性を低減することができる無線通信システムを提供する。
【解決手段】状態検出部からの状態信号に基づいて状態判別部が状態を判別するとともに、送受信部により無線信号を送受信する感知器D11〜D43と、感知器を監視制御する受信機Aと、感知器と受信機との間に介在し、複数の通信階層を構成して無線信号を中継する複数の中継器B1〜B2,C1〜C3と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感知器、中継器、および受信機等を備えた無線通信システムに関し、特に、各種信号の一部を無線信号化した無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災感知器から送信された無線信号を受信して得られた火災感知データを中継する複数個の中継器と、いずれかの中継器から火災感知データが伝送されたときに所定の火災報知処理を行う監視盤とを有する火災報知システムが知られている。
【0003】
このような火災報知システムでは「火災感知器1 からの無線信号の受信に使用するタイムスロットD1〜D32を、互いに同じ周波数チャネルを使用する中継器2毎に異ならせれば、互いに同じ周波数チャネルを用いる2個以上の中継器2 に1個の火災感知器1の無線信号が同時に受信されることによる誤動作や、火災感知器1の無線信号同士の衝突が避けられる。従って、互いに同じ周波数チャネルを用いる2個以上の中継器2と同時に無線通信可能な位置に火災感知器1を配置する。」というものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−009566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の火災報知システムでは、中継器と火災感知器はそれぞれ通信範囲が大きくなるため、特別なフレームによって無線通信する必要があった。そして、通常時に中継器と火災感知器が非同期通信する一般の無線通信システムにおいては、周囲に配置された同様な無線機器と混信する可能性があった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、意図しない方向からの無線信号を受信する可能性や意図しない方向に無線信号を送信する可能性を低減できる無線通信システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る無線通信システムは、状態検出部からの状態信号に基づいて状態判別部が状態を判別するとともに、送受信部により無線信号を送受信する感知器と、感知器を監視制御する受信機と、感知器と受信機との間に介在し、複数の通信階層を構成して無線信号を中継する複数の中継器と、を備えたものである。
【0008】
本発明に係る無線通信システムは、複数の中継器は、1つの無線式中継器と、該無線式中継器の下位の階層としての1つまたは複数のリピータ中継器と、で構成され、リピータ中継器は、自己の送信する無線信号が1つ上の階層だけと1つ下の階層だけで受信されるものである。
【0009】
本発明に係る無線通信システムは、リピータ中継器の少なくとも1つは、1つ上の階層との通信と1つ下の階層との通信における通信周波数を異ならせるものである。
【0010】
本発明に係る無線通信システムは、無線式中継器とリピータ中継器と感知器の少なくとも1つは、自己の送信出力または自己の受信感度を調整できる手段を有するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、感知器と受信機との間に介在し、複数の通信階層を構成して無線信号を中継する複数の中継器と、を備えたため、中継器の状態要求信号や感知器の火災信号が意図しない方向に到達して他の同様な無線機器と混信させることなく、早く送信先に伝えることができる。また、リピータ中継器は、自己の送信する無線信号が1つ上の階層だけと1つ下の階層だけで受信されるものであるため、消費電力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態に係る無線通信システムの一例を示すシステム構成図である。
【図2】実施の形態における感知器の主要構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態におけるリピータ中継器の主要構成を示すブロック図である。
【図4】実施の形態における無線式中継器の主要構成を示すブロック図である。
【図5】実施の形態における外部試験器の主要構成を示すブロック図である。
【図6】実施の形態の状態収集処理及び火災通知処理において、無線式中継器あるいはリピータ中継器に対して送信される通信電文を説明する図である。
【図7】実施の形態の状態収集処理において、感知器に対して送信される通信電文及び感知器が送信する通信電文を説明する図である。
【図8】実施の形態の状態収集処理において、リピータ中継器が送信する通信電文を説明する図である。
【図9】実施の形態に係る状態収集処理を説明する図である。
【図10】実施の形態に係る火災通知処理を説明する図である。
【図11】実施の形態に係る無線通信システムにおける無線機器の通信範囲を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(全体構成)
図1は実施の形態に係る無線通信システムの一例を示すシステム構成図である。図1に示す無線通信システムとしての火災報知設備は、監視対象となる建物に設置され、火災や異常等の発生を検知したときにこれを報知するシステムである。
【0014】
本実施の形態に係る火災報知設備100は、図1に示すように、火災受信機Aと、火災
受信機Aに伝送線CL1により接続された無線式中継器B1と、火災受信機Aに伝送線C
L2により接続された無線式中継器B2と、監視対象となる建物の各部屋の天井に配置さ
れる無線式の感知器D11、D12、D21、D22、D31、D32、D41、D42
、D43と、無線式中継器B1と感知器D21、D22との間に介在して無線信号を中継
するリピータ中継器C1と、無線式中継器B1と感知器D31、D32との間に介在して
無線信号を中継するリピータ中継器C2、C3とを備えている。
【0015】
図1に示す外部試験器Eは、後述するが、無線式中継器B1、B2に対する無線信号を
用いた遠隔試験を行ったり、また、通信経路F1、F2、F3、F4の登録時の状態を確
認するために使用する機器である。
【0016】
なお、これ以降、無線式中継器B1、B2を無線式中継器B、感知器D11、D12、
D21、D22、D31、D32、D41、D42、D43を感知器D、及びリピータ中
継器C1、C2、C3をリピータ中継器Cと総称する場合がある。
【0017】
ここで、無線式中継器B及びこの無線式中継器Bとの間で無線通信を行う感知器D及び
リピータ中継器Cの集合をグループと称する。すなわち、無線式中継器B毎に1つのグル
ープを構成する。図1の例では、無線式中継器B1及びこの無線式中継器B1との間で無
線通信を行うリピータ中継器C1、C2、C3と感知器D11、D12、D21、D22
、D31、D32をグループG1と称する。また、無線式中継器B2及びこの無線式中継
器B2との間で無線送受信を行う感知器D41、D42、D43をグループG2と称する

【0018】
また、各グループにおいては、無線式中継器Bを基点とする複数の通信経路が確立され
ている。図1のグループG1の例では、無線式中継器B1と感知器D11、D12の間に
は通信経路F1が確立され、無線式中継器B1とリピータ中継器C1及びこのリピータ中
継器C1と感知器D21、D22の間には通信経路F2が確立されている。また、無線式
中継器B1とリピータ中継器C2、C3及びリピータ中継器C3と感知器D31、D32
の間には通信経路F3が確立されている。さらに、図1のグループG2の例では、無線式
中継器B2と感知器D41、D42、D43の間には通信経路F4が確立されている。例えば、各機器間の通信周波数は後述する切替スイッチの操作によって、グループ毎に同じ設定とすることができるが、これに限定するものではない。
【0019】
(感知器D)
感知器Dは、火災や異常等の現象に基づく検知対象物の物理量または物理的変化を検出し、検出内容に応じた状態信号を無線信号として送信する。感知器Dとして、例えば、検出した煙濃度に基づくアナログ値または火災信号を無線信号として出力する無線式の煙感知器、検出した周囲温度に基づくアナログ値または火災信号を無線信号として出力する無線式の熱感知器等が使用されている。
【0020】
図2は実施の形態における感知器の主要構成を示すブロック図である。感知器Dは、制
御回路1、電池2、定電圧回路3、電圧検出回路4、送受信回路5、アンテナ6、火災検
出回路7、表示灯回路8、登録スイッチ9を備えている。
【0021】
電池2は、定電圧回路3に直流電圧を供給する。定電圧回路3は、電池2の直流電圧を
所定電圧に制御し、制御回路1、送受信回路5、火災検出回路7、表示灯回路8に供給す
る。
【0022】
電圧検出回路4は、例えば、定電圧回路3に印加される電池2の直流電圧を検出し、検
出電圧に応じた電池電圧検出信号を制御回路1に出力する。電圧検出回路4は、電池残量
が低下したこと、あるいは電池切れの閾値より低下したことを検出すると、制御回路1に
出力して、表示灯回路8を動作させると共に、電池切れの状態情報を含む状態信号を送受
信回路5より出力させる。
【0023】
火災検出回路7は、火災現象に基づく煙または熱等の検知対象物の物理量または物理的
変化を検出する状態検出部としての機能を有して、検出内容に応じた状態信号を制御回路1に出力する。表示灯回路8は、発光ダイオード(LED)の点灯動作を制御する回路で、例えば、電池切れの場合にはLEDを点滅し、火災検出回路7により火災が検出されたときには、その点滅と異なる周期でLEDを点滅する。
【0024】
送受信回路5は、無線信号を送受信するためのアンテナ6と接続されており、送信回路
5aと受信回路5bとを備えている。受信回路5bは、所定周期で受信サンプリング動作
を行ってアンテナ6から受信された無線信号を検出し、無線信号が自己宛の場合にはその
内容に応じて受信処理を行う。そして、受信回路5bは、受信処理した信号を、制御回路
1へ出力する。また、送信回路5aは、制御回路1に制御されて、状態信号などの信号の
送信処理を行う。登録スイッチ9は、グループ内において無線信号を送受信するのに必要
な通信経路等の情報を登録するときに使用されるスイッチである。
【0025】
制御回路1は、火災検出回路7によって出力された信号に基づいて火災状態等を判別す
る状態判別部としての機能を有する。また、制御回路1は、火災状態であると判別した場
合には、表示灯回路8を制御し、LEDの点滅によって警報を行う。また、制御回路1は
、送受信回路5により受信された信号に基づいて必要な処理を行うと共に、必要に応じて
送受信回路5を制御して無線式中継器Bあるいはリピータ中継器Cに状態信号や火災信号
などを送信する。記憶素子1aは、例えばEEPROMなどの不揮発性メモリからなり、
制御回路1が実行するプログラムや各種データ、自己のアドレスが格納されている。
【0026】
また、制御回路1は、無線信号の通信周波数を切替する周波数切替スイッチ(図示せず)を備える。この切替によって、他の機器との通信周波数が設定される。そして、制御回路1は、無線信号の受信感度や無線信号の送信出力を調整する通信範囲調整手段(図示せず)を備える。この調整によって、感知器Dの通信範囲が適宜に設定される。
【0027】
さらに、制御回路1は、後述するが、登録スイッチ9がオンされたときに登録要求信号を他の機器に送信する。この登録要求信号の送信により、例えば無線式中継器Bからの無線式中継器Bが感知器Dを登録したことを示す登録信号が受信されたときには、無線式中継器Bとの間で通信経路を確立する。
【0028】
(リピータ中継器C)
リピータ中継器Cは、無線式中継器Bと感知器Dとの間に介在し、無線信号の中継を行
う。そのリピータ中継器Cは、無線式中継器Bと感知器Dとの間で互いに電波が届かない
場合に設けられる。図1のグループG1に示すリピータ中継器C2、C3のように、無線
式中継器Bと感知器Dとの間に2台以上のリピータ中継器Cを設けて中継させることも可
能である。
【0029】
図3は実施の形態におけるリピータ中継器の主要構成を示すブロック図である。
リピータ中継器Cは、制御回路11、電池2、定電圧回路3、電圧検出回路4、送受信
回路5、アンテナ6、表示灯回路8、登録スイッチ9を備えている。リピータ中継器Cは
、前述の感知器Dと異なり火災検出回路7を備えておらず、また、制御回路11の動作内
容も異なるが、その他の構成については感知器Dと基本的に同様である。なお、リピータ
中継器Cに例えば図2の感知器Dに示すような火災検出回路7や煙や熱等を感知するセン
サを設け、リピータ中継器Cが火災検出機能を有する構成としてもよい。
【0030】
また、感知器Dと同様に、制御回路11は、無線信号の通信周波数を切替する周波数切替スイッチ(図示せず)を備える。この切替によって、他の機器との通信周波数が設定される。そして、制御回路11は、無線信号の受信感度や無線信号の送信出力を調整する通信範囲調整手段(図示せず)を備える。この調整によって、リピータ中継器Cの通信範囲が適宜に設定される。
【0031】
さらに、制御回路11は、登録スイッチ10が操作されたときに登録要求信号を他の機器に送信する。この登録要求信号の送信により、例えば無線式中継器Bからの無線式中継器Bがリピータ中継器Cを登録したことを示す登録信号が受信されたときには、無線式中継器Bとの間で通信経路を確立する。
【0032】
(無線式中継器B)
無線式中継器Bは、感知器D及びリピータ中継器Cとの間で無線信号を送受信し、感知
器Dあるいはリピータ中継器Cからの無線信号を火災受信機Aに転送する機能を有してい
る。
【0033】
図4は実施の形態における無線式中継器の主要構成を示すブロック図である。
無線式中継器Bは、制御回路21、定電圧回路3、電圧検出回路4、送受信回路5、ア
ンテナ6、表示灯回路8、登録スイッチ9、受信機I/F回路22、電源線用端子20a
、信号線用端子20bを備える。無線式中継器Bは、前述の感知器Dやリピータ中継器C
のように電池駆動ではなく、火災受信機Aと電源線用端子20aとを接続する電源線を介
して火災受信機AからDC電源を供給される。また、火災受信機Aと信号線用端子20b
とが信号線(伝送線CL)で接続されており、無線式中継器Bは受信機I/F回路22を
介して火災受信機Aと信号を送受信する。
【0034】
また、感知器Dと同様に、制御回路21は、無線信号の通信周波数を切替する周波数切替スイッチ(図示せず)を備える。この切替によって、他の機器との通信周波数が設定される。そして、制御回路21は、無線信号の受信感度や無線信号の送信出力を調整する通信範囲調整手段(図示せず)を備える。この調整によって、無線式中継器Bの通信範囲が適宜に設定される。
また、記憶素子21aには、無線式中継器Bの機能を実行させるプログラムや各種データ、グループIDと登録した機器のアドレス及び通信経路情報(後述する)等が保存されている。
【0035】
無線式中継器Bは、制御回路21の動作内容及び記憶素子21aに記憶される情報が一部異なるが、その他の構成については感知器Dやリピータ中継器Cと基本的に同様である。
そして、無線式中継器Bは、登録スイッチ9がオン状態のときに登録要求信号が受信されると、登録要求信号を発した感知器Dあるいはリピータ中継器Cにそれらが登録されたことを示す登録信号を送信して通信経路を確立する。また、無線式中継器Bは、通信経路を確立した後にリピータ中継器Cからの経路変更信号が受信されたときには、感知器Dまでの通信経路をリピータ中継器C経由に変更する。
【0036】
(外部試験器E)
図5は実施の形態における外部試験器の主要構成を示すブロック図である。
外部試験器Eは、制御回路31、電池2、定電圧回路3、電圧検出回路4、送受信回路
5、アンテナ6、表示灯回路8、表示部8a、例えば、試験機能等の実行を選択する処理
選択スイッチ39、ブザー10を備えている。
電池2は、定電圧回路3に直流電圧を供給する。定電圧回路3は、電池2の直流電圧を
所定電圧に制御し、制御回路31、送受信回路5、表示灯回路8、ブザー10等に供給す
る。電圧検出回路4は、例えば、定電圧回路3に印加される電池2の直流電圧を検出し、
検出電圧に応じた電池電圧検出信号を制御回路31に出力する。電圧検出回路4は、電池
残量が低下したこと、あるいは電池切れの閾値より低下したことを検出すると、制御回路
31に出力して、表示灯回路8させる。
【0037】
送受信回路5は、無線信号を送受信するためのアンテナ6と接続されており、送信回路
5aと受信回路5bを備えている。受信回路5bは、所定周期で受信サンプリング動作を
行ってアンテナ6から受信された無線信号を検出し、受信処理した信号を制御回路31へ
出力する。また、送信回路5aは、制御回路31に制御されて、例えば、無線式中継器B
に遠隔試験を実施させるための送信処理を行う。処理選択スイッチ39は、外部試験器Eの各種機能を実行させるために選択するときに使用されるスイッチである。記憶素子31aは、例えばEEPROMなどの不揮発性メモリからなり、制御回路31が実行するプログラムや、共通IDなどの各種データが格納されている。表示部8aは、LED表示器やLCD等から構成され、各種試験結果等を表示するものである。
【0038】
(火災報知設備の動作概要)
火災報知設備100の主要な動作の一つ目は、火災監視である。具体的には、各感知器
Dは、自身の監視領域において火災発生の有無を監視する。そして、感知器Dが火災によ
る煙や熱などの環境の変化を検知すると、この検知情報が、リピータ中継器Cを介してあ
るいは直接、無線式中継器Bに無線信号により伝えられる。さらに無線式中継器Bから火
災受信機Aに対し、検知情報が伝えられる。火災受信機Aは、火災の検知情報を受信する
と、図示しない音響警報装置を制御して火災報知を行わせると共に、図示しない防火戸や
排煙機、シャッター等を作動させて延焼を防ぐ。
また、火災報知設備100の主要な動作の二つ目は、状態収集処理である。火災報知設
備100においては、これを構成する各機器に電池切れや無線通信の不良が生じると、火
災通知が行えなくなってしまう。このような不具合が生じないようにするために、各機器
の状態(電池状態や無線通信機能の状態など)を所定周期で収集する状態収集処理を行う

【0039】
(送受信処理の概要)
次に、火災報知設備100における送受信処理の概要について説明する。
火災報知設備100における無線信号の主要な送受信処理は、(1)状態収集処理、(
2)火災通知処理である。
【0040】
(1)状態収集処理
状態収集処理は、無線式中継器Bが、自身と無線信号の送受信を行う機器(リピータ中
継器C、感知器D)の状態情報(例えば、電池状態等)を収集する処理である。無線式中
継器Bは、自身の下位機器に対してその機器自身の状態情報を送信するよう要求する状態
要求信号を送信し、この状態要求信号を受信した機器は、更に自身の下位機器に対して状
態要求信号を送信する。この状態要求信号は、その通信経路の末端に至るまで中継され、
末端の機器である感知器Dは、自身の状態情報を含む信号を状態情報信号として上位機器
に対して送信する。この状態情報信号を受信した上位機器は、受信した信号に対して自身
の状態情報を含む信号を付加し、その信号を状態情報信号として上位機器へと送信する。
この状態情報信号は、通信経路の最上位機器である無線式中継器Bに至るまで順に送信さ
れる。そして、無線式中継器Bは、下位機器から収集した状態情報信号を自ら状態判定し
て、必要があれば、その状態情報信号に含まれる情報を火災受信機Aに送信する。
【0041】
状態収集処理は、無線通信の経路毎に行う。すなわち、図1の例では、まず、無線式中
継器B1が感知器D11及びD12との間(通信経路F1)で状態収集処理を行い、これ
が終了すると、無線式中継器B1がリピータ中継器C1及びこれと送受信を行う感知器D
21、D22との間(通信経路F2)で状態収集処理を行い、これが終了すると、無線式
中継器B1がリピータ中継器C2、C3及びこれと送受信を行う感知器D31、D32と
の間(通信経路F3)で状態収集処理を行う。状態収集処理は、所定周期(例えば24時
間周期)で行ってもよいし、火災報知設備100の設置年数等の状況に応じて状態収集処
理を行う周期を変化させてもよい。
【0042】
(2)火災通知処理
これは、感知器Dが検知した火災情報に基づく無線信号を、無線式中継器Bを介して火
災受信機Aに対して送信する処理である。信号の流れは、感知器D、リピータ中継器C(
介在する場合のみ)、無線式中継器B、火災受信機A、という通信経路の下位機器から上
位機器までの順となる。
【0043】
なお、無線信号を送信する際には、規格等で設定されている送信時間の範囲内で送信す
る必要がある。本実施の形態では、標準規格RCR STD−30に準拠し、送信期間が
3秒以下、送信休止時間が2秒以上である場合を例に説明する。
また、無線式中継器B、リピータ中継器C、及び感知器Dは、基本的には所定時間おき
に他の機器からの無線信号の受信を行う間欠受信を行っている。本実施の形態では、無線
式中継器Bの間欠受信間隔をTB、リピータ中継器Cの間欠受信間隔をTC、感知器Dの
間欠受信間隔をTDとする。
上記のような火災監視や状態収集の送受信処理においては無線信号により通信を行う。
無線式中継器B及びリピータ中継器Cは、火災受信機Aと感知器Dとの間に介在し、こ
れらの間で行われるべき無線通信を中継する中継器として機能する。
なお、それぞれの間欠受信間隔TB、TC、TDは個別に設定され、監視時はいわゆる非同期通信を行っている。
【0044】
また、火災報知設備100を構成する各機器には、信号の送受信を行うために必要な情
報が各機器の記憶素子に記憶されている。記憶素子に記憶される情報としては、少なくと
も、グループID、自己アドレス、上位機器アドレス、下位機器アドレス、機器番号、共
通ID、機器IDを含んでいる。
グループIDは、図1に示すグループ毎に固有に割り当てられるIDである。このグル
ープIDは、無線式中継器B、リピータ中継器C、及び感知器Dのすべての機器に対して
設定されている。
自己アドレスは、各機器に固有に割り当てられた通信アドレスであり、無線式中継器B
、リピータ中継器C、及び感知器Dのすべての機器に対して設定されている。
【0045】
上位機器アドレスは、通信階層において自身の直近上位に位置する機器のアドレスであ
る。ここで、上位とは、各機器に対して火災受信機Aにより近い側をいう。例えば、図1
のグループG1において、リピータ中継器C1の上位機器は無線式中継器B1であり、感
知器D21、D22の上位機器はリピータ中継器C1である。この上位機器アドレスは、
リピータ中継器C、及び感知器Dに対して設定されている。
下位機器アドレスは、通信階層において自身の直近下位に位置する機器のアドレスであ
る。ここで、下位とは、各機器に対して火災受信機Aから遠い側をいう。例えば、図1の
グループG1において、リピータ中継器C2の下位機器はリピータ中継器C3であり、リ
ピータ中継器C3の下位機器は感知器D31、D32である。この下位機器アドレスは、
無線式中継器B及びリピータ中継器Cに対して設定されている。
【0046】
機器番号は、1つのグループに属する同種の機器内において、各端末に固有に割り当て
られた番号である。例えば、本実施の形態では1グループに接続可能なリピータ中継器C
の最大数は6台であり、各リピータ中継器Cには01〜06のいずれかの機器番号が割り
当てられる。また、本実施の形態では1グループに接続可能な感知器Dの最大数は30台
であり、各感知器Dには01〜30のいずれかの機器番号が割り当てられる。なお、本実
施の形態では自己アドレスと機器番号とを別に設ける例を示すが、各機器に固有の情報で
ある自己アドレスを機器番号として使用することもできる。
共通IDは、火災報知設備100を構成する各機器における全ての同一機種(例えば、
無線式中継器Bまたはリピータ中継器Cまたは感知器D)を無線信号の送信先として指定
するものである。
機器IDは、製造番号等に基づいて付与される固有の番号である。各種アドレスや機器
番号と共通としてもよい。
【0047】
ここで、グループ内において無線信号を送受信するのに必要な通信経路等の情報を各機
器に登録する登録処理の概要を説明する。
まず、上位機器となる無線式中継器Bとリピータ中継器Cは、通信経路を登録するため
の動作モードとして登録モードというモードを有している。また、下位機器となるリピー
タ中継器Cと感知器Dは、通信経路の登録を要求する登録要求信号の送信が可能である。
このような構成において、登録モード状態の上位機器(無線式中継器B又はリピータ中
継器C)に対し、下位機器(リピータ中継器C又は感知器D)から自身のアドレスを含む
登録要求信号が送信されると、上位機器は、登録要求信号に含まれるアドレスを自身の下
位機器アドレスとして設定するとともに、その下位機器に対して自己アドレスを含む登録
信号を送信する。この登録信号を受信した下位機器(リピータ中継器C又は感知器D)は
、登録信号に含まれるアドレスを自身の上位機器アドレスとして設定する。このような処
理を通信経路を構成する各機器について行うことにより、その通信経路が確立される。な
お、登録モードへの移行や登録要求信号の送信は、登録スイッチ9を使用者に操作される
ことによって実行される。また、この登録処理は、火災報知設備100を新たに設置する
際に行うほか、火災報知設備100を設置した後に機器を増設する場合にも行うことがで
きる。
【0048】
(通信電文)
次に、本実施の形態に係る火災報知設備100で用いられる通信電文について説明する
。ここで説明する通信電文は、上述の(1)状態収集処理、(2)火災通知処理において
用いられる通信電文である。
実施の形態の火災報知設備100では、送受信処理の種類((1)状態収集処理または(2)火災通知処理)と、送信元機器の種別、及び受信元機器の種別によって、使用する通信電文が定められている。まずは、各通信電文を具体的に説明する。
【0049】
図6は実施の形態の状態収集処理及び火災通知処理において、無線式中継器あるいはリ
ピータ中継器に対して送信される通信電文を説明する図である。
図6に示す通信スロット110は、送信元(無線式中継器Bまたはリピータ中継器C
)からリピータ中継器C、あるいは、送信元(リピータ中継器Cまたは感知器D)から無
線式中継器Bまたはリピータ中継器Cに信号を伝送する送信スロット111と、他の機器
からの信号を受信する連続受信スロット112から構成される。
【0050】
送信スロット111は、連続する複数(本実施の形態では60)の基本フレーム101
で構成される。すなわち、送信スロット111では、基本フレーム101を連続して複数
回送信する。基本フレーム101は、例えば、同期信号、送信元を識別するためのグルー
プIDや送信元アドレス、フレーム番号、データ等を含んでいる。
送信スロット111の長さは、無線式中継器Bの間欠受信間隔TB及びリピータ中継器
Cの間欠受信間隔TCの長さよりも長くなるよう設定されており、無線式中継器Bとリピ
ータ中継器Cが送信スロット111のうちのいずれかの基本フレーム101を受信できる
ようになっている。
なお、送信スロット111による送信を開始する前には、送信前CS(送信前キャリア
センス)を行い、他の機器が無線信号を送信中でないことを確認した後に送信を開始する

【0051】
連続受信スロット112は、無線信号の送信を行わない送信休止期間であり、受信回路
を起動して無線信号の受信処理を行う時間帯である。連続受信スロット112は、火災転
送信号用エリア113と、火災通知信号用エリア114と、その他信号用エリア115と
を備える。火災転送信号用エリア113は他の機器から転送される火災転送信号を受信す
るためのエリア、火災通知信号用エリア114は感知器Dから送信される火災通知信号を
受信するためのエリア、その他信号用エリア115は、火災転送信号と火災通知信号以外
の制御要求信号または状態情報信号を受信するためのエリアである。他の機器は、この火
災転送信号用エリア113、火災通知信号用エリア114、その他信号用エリア115に
対して、対応する信号を送信することができるようになっている。本実施の形態では、無
線信号の重要性が高い順に、火災転送信号用エリア113、火災通知信号用エリア114
、その他信号用エリア115の順番でエリアが設けられている。
【0052】
図7は実施の形態の状態収集処理において、感知器に対して送信される通信電文及び感
知器が送信する通信電文を説明する図である。図7(A)は、感知器Dに対して無線式中
継器Bまたはリピータ中継器Cが送信する通信電文を示し、図7(B)は、感知器Dが送
信する通信電文を示している。なお、図7(B)では、間欠受信タイミングの異なる複数
の感知器Dの送受信動作例を示している。
【0053】
図7(A)に示すブロック通信120は、送信スロット121と、連続受信スロット1
22と、送信スロット123と、連続受信スロット124と、送信スロット125と、連
続受信スロット126とで構成される。送信スロット121、123、125は、連続す
る複数の基本フレーム101で構成される。すなわち、送信スロット121、123、1
25では、基本フレーム101を連続して複数回送信する。なお、送信スロット121に
よる送信を開始する前には、送信前CS(送信前キャリアセンス)を行い、他の機器が無
線信号を送信中でないことを確認した後に送信を開始する。
【0054】
連続受信スロット122、124、126は、無線信号の送信を行わない送信休止期間
であり、受信回路を起動して無線信号の受信処理を行う。
ブロック通信120では、無線信号を送信する送信期間(送信スロット121、123
、125)と、無線信号を送信しない送信休止期間(連続受信スロット122、124、
126)とを交互に繰り返す。
【0055】
ここで、ブロック通信120を構成する各スロットの時間について説明する。まず、無
線信号の送信処理は、前述のように規格に従い、送信期間が3秒以下、送信休止時間が2
秒以上となるように設定される必要がある。一方で、受信側である感知器Dは、間欠受信
間隔TD(本実施の形態では7秒)ごとに間欠受信を行っているとともに、各感知器Dの
間欠受信のタイミングは異なりうる。したがって、各感知器Dが間欠受信において無線信
号を受信するためには、各感知器Dの間欠受信のタイミングが、信号送信元の送信スロッ
ト121、123、125のいずれかに含まれている必要がある。
そこで、本実施のブロック通信120では、送信スロット121、連続受信スロット1
22、送信スロット123の合計時間が、感知器Dの間欠受信間隔TD(7秒)以下であ
り、かつ、連続受信スロット122(図7における区間T1)の7秒後が送信スロット1
25に含まれるようにしている。このようにすることで、すべての感知器Dが、送信スロ
ット121、123、125のいずれかで送信された無線信号を受信できるようにしてい
る。すなわち、例えば、ある感知器Dの間欠受信タイミングが、連続受信スロット122
に含まれていた場合でも、その感知器Dは、次の間欠受信タイミングにおいて送信スロッ
ト125で送信された無線信号を受信することができる。
【0056】
図7(B)に示すように、感知器Dは、無線式中継器Bまたはリピータ中継器Cからの
無線信号を受信すると、短縮フレーム102を送信する。この短縮フレーム102は、例
えば、同期信号、送信元を識別するためのグループIDや送信元アドレス、データ等を含
んでいる。
【0057】
ここで、感知器Dが応答の信号として短縮フレーム102を送信するタイミングについ
て説明する。まず、連続受信スロット122についてさらに説明する。図7(A)に示す
ように、連続受信スロット122は、各感知器Dそれぞれからの無線信号を受信するため
のエリアに分かれた感知器返送スロット129を含んでいる。感知器返送スロット129
は、グループに接続可能な感知器Dの台数分のエリア(本実施の形態では30エリア)に
分かれている。
各感知器Dは、送信スロット121、123、125で送信されたいずれかの基本フレ
ーム101を受信すると、受信した基本フレーム101に含まれるフレーム番号に基づい
て、その送信スロット(送信スロット121、123、125のいずれか)が終了するま
で待機する。そして、予め各感知器Dの記憶素子1aに記憶された感知器返送スロット1
29の各エリアのタイミングに関する情報に基づいて、感知器Dは、感知器返送スロット
129のエリアのうち、自身に割り当てられた機器番号に対応したエリア(時間帯)に対
して、無線信号を送信する。例えば、機器番号5番の感知器Dは、感知器返送スロット1
29の5番目のエリアに対して無線信号を送信する。このように、感知器Dによって受信
の時間帯(感知器Dの送信時間帯)を定めておくことで、複数の感知器Dによって信号が
同時に送信されることにより電文が破壊されることを抑制することができる。また、1回
のブロック通信120で複数の感知器Dからの無線信号を受信できるので、受信に要する
時間を短縮することができる。
【0058】
次に、間欠受信タイミングの異なる感知器Dの動作例を、図7(B)を参照して説明す
る。まず、機器番号01の感知器Dは、間欠受信により送信スロット123の45フレー
ム目の基本フレーム101を受信し、これに対する応答としての短縮フレーム102を、
連続受信スロット124の感知器返送スロット129の1番目のエリアに対して送信する
。また、機器番号02の感知器Dは、間欠受信により送信スロット121の48フレーム
目の基本フレーム101を受信し、これに対する応答としての短縮フレーム102を、連
続受信スロット122の感知器返送スロット129の2番目のエリアに対して送信する。
また、番号03の感知器Dは、間欠受信により送信スロット125の55フレーム目の基
本フレーム101を受信し、これに対する応答としての短縮フレーム102を、連続受信
スロット126の感知器返送スロット129の3番目のエリアに対して送信する。
このように、各感知器Dは、信号を受信した送信スロット(送信スロット121、12
3、125のいずれか)に続く連続受信スロット(連続受信スロット122、124、1
26のいずれか)において、短縮フレーム102を送信する。
【0059】
図8は実施の形態の状態収集処理において、リピータ中継器が送信する通信電文を説明
する図である。より具体的には、図8に示す通信電文は、状態収集処理においてリピータ
中継器Cが、無線式中継器Bまたはリピータ中継器Cに対して送信するものある。
図8に示す通信スロット130は、リピータ中継器Cから他のリピータ中継器Cまたは
無線式中継器Bに対して信号を伝送する送信スロット131と、他の機器からの信号を受
信する連続受信スロット132から構成される。
【0060】
送信スロット131は、連続する複数(本実施の形態では10)の連送フレーム103
で構成される。すなわち、送信スロット131では、連送フレーム103を連続して複数
回送信する。
この送信スロット131は、無線式中継器Bあるいはリピータ中継器Cに対して無線信
号を送るものである。したがって、送信スロット131の長さは、無線式中継器Bの間欠
受信間隔TB及びリピータ中継器Cの間欠受信間隔TCの長さよりも長くなるよう設定さ
れており、無線式中継器Bとリピータ中継器Cが送信スロット131のうちのいずれかの
連送フレーム103を受信できるようになっている。
なお、送信スロット131による送信を開始する前には、送信前CS(送信前キャリア
センス)を行い、他の機器が無線信号を送信中でないことを確認した後に送信を開始する

【0061】
連送フレーム103は、機器毎に順番に割り当てられた、感知器情報201と、リピータ中継器情報202と、無線式中継器情報203と、から構成される機器情報を含んでいる。感知器情報201は、1台の無線式中継器Bと通信可能な感知器Dの台数分(本実施の形態では30)のデータエリアで構成されている。リピータ中継器情報202は、1台の無線式中継器Bと通信可能なリピータ中継器Cの台数分(本実施の形態では6)のデータエリアで構成されている。なお、無線式中継器情報203は、外部試験器Eと通信可能な無線式中継器Bの台数分(本実施の形態では1)のデータエリアで構成されているが、状態収集処理時は使用せずに「空き」であるので外部試験器Eのコマンド処理動作は後述する。
よって、無線式中継器Bからの状態要求信号に対しては、連送フレーム103は、感知器情報201と、リピータ中継器情報202と、が含まれるために、無線式中継器Bが早くかつ容易に各機器状態を確認することができる。
【0062】
連続受信スロット132は、無線信号の送信を行わず他の機器からの信号を受信待機す
る時間帯であり、火災転送信号用エリア133と、火災通知信号用エリア134と、その
他信号用エリア135とを備える。連続受信スロット132、火災転送信号用エリア13
3、火災通知信号用エリア134、及びその他信号用エリア135は、それぞれ、図6で
示した連続受信スロット112、火災転送信号用エリア113、火災通知信号用エリア1
14、及びその他信号用エリア115と同様の構成である。
【0063】
(送受信処理の詳細)
次に、(1)状態収集処理、及び(2)火災通知処理について、これらの処理で使用さ
れる通信電文を含めて更に説明する。
【0064】
(1)状態収集処理
図9は実施の形態に係る状態収集処理を説明する図である。なお、図9では、図1に示
す無線式中継器B1と無線通信を行う通信経路のうち、通信経路F1(感知器D11、D
12の通信経路)と、通信経路F3(リピータ中継器C2、C3、感知器D31、32の
通信経路)を例に説明する。
【0065】
まず、無線式中継器B1は、火災受信機Aからの状態要求信号を受信したものとする。
(S301)無線式中継器B1は、通信経路F1に属する機器のうち、記憶素子に記憶
されている下位機器アドレスに対し、状態要求信号を送信する。この例では、無線式中継
器B1の通信経路F1における下位機器は感知器D11、D12であるので、無線式中継
器B1は、状態要求信号を、ブロック通信120(図7(A))にて送信する。
一方、感知器D11、D12は、間欠受信間隔TDで間欠受信を行っており、無線式中
継器B1がブロック通信120の送信スロット121、123、125のいずれかで送信
した状態要求信号を受信する。この例では、感知器D12は送信スロット123で送信さ
れた状態要求信号を受信し、感知器D11は送信スロット125で送信された状態要求信
号を受信したものとする。
【0066】
(S302)感知器D12は、状態要求信号を受信すると、短縮フレーム102により
自身の状態情報を含む状態情報信号を送信する。より具体的には、無線式中継器B1の、
連続受信スロット124の感知器返送スロット129の自身の機器番号に対応するエリア
において(図7)、状態情報信号を送信する。
(S303)感知器D11は、状態要求信号を受信すると、短縮フレーム102により
自身の状態情報を含む状態情報信号を送信する。より具体的には、無線式中継器B1の、
連続受信スロット126の感知器返送スロット129の自身の機器番号に対応するエリア
において(図7)、状態情報信号を送信する。
【0067】
このステップS301〜S303により通信経路F1の状態収集処理は終了し、無線式
中継器B1は、感知器D11及び感知器D12の状態情報を収集したこととなる。
なお、図1の例では、通信経路F1の状態収集処理が終了した後には通信経路F2の状
態収集処理を行うが、通信経路F2における処理内容は通信経路F3の処理内容に含まれ
ているため、ここでは説明を省略し、以下、通信経路F3の状態収集処理を説明する。
【0068】
(S304)無線式中継器B1は、通信経路F3に属する機器のうち、記憶素子に記憶
されている下位機器アドレスに対し、状態要求信号を送信する。この例では、無線式中継
器B1の通信経路F3における下位機器はリピータ中継器C2であるので、無線式中継器
B1は、状態要求信号を、通信スロット110の送信スロット111(図6)にて送信す
る。無線式中継器B1は、送信スロット111により状態要求信号を送信した後は、受信
機能を起動して連続受信スロット112の受信待機状態に移行する。
一方、リピータ中継器C2は、間欠受信間隔TCで間欠受信を行っており、無線式中継
器B1が送信スロット111で送信した状態要求信号を受信する。
【0069】
(S305)リピータ中継器C2は、無線式中継器B1が送信した状態要求信号を受信
すると、自身の記憶素子に記憶されている下位機器アドレスに対し、状態要求信号を中継
送信する。この例では、リピータ中継器C2の下位機器はリピータ中継器C3であるので
、リピータ中継器C2は、状態要求信号を、通信スロット110の送信スロット111(
図6)にて送信する。
【0070】
ここで、リピータ中継器C2が状態要求信号を送信するタイミングにおいて、無線式中
継器B1は、連続受信スロット112の受信待機状態である(S304)。無線式中継器
B1は、リピータ中継器C2がリピータ中継器C3宛に送信した状態要求信号を連続受信
スロット112にて受信し(S304の破線参照)、これにより、状態要求信号が相手に
正常に受信されたことを認識する。なお、図示しないが、ステップS304の連続受信ス
ロット112にて、リピータ中継器C2により送信された状態要求信号を受信できない場
合には、無線式中継器B1は、通信異常等何らかの異常が発生したものと判断し、状態要
求信号を再送する。
一方、リピータ中継器C3は、間欠受信間隔TCで間欠受信を行っており、リピータ中
継器C2がステップS305で送信した状態要求信号を受信する。
【0071】
(S306)リピータ中継器C3は、リピータ中継器C2が送信した状態要求信号を受
信すると、自身の記憶素子に記憶されている下位機器アドレスに対し、状態要求信号を送
信する。この例では、リピータ中継器C3の下位機器は感知器D31、D32であるので
、リピータ中継器C3は、状態要求信号を、ブロック通信120の送信スロット121、
123、125(図7(A))にて送信する。
【0072】
ここで、リピータ中継器C3が状態要求信号を送信するタイミングにおいて、リピータ
中継器C2は、連続受信スロット112の受信待機状態である(S305)。リピータ中
継器C2は、リピータ中継器C3が送信した状態要求信号を連続受信スロット112にて
受信し(S305の破線参照)、これにより、状態要求信号が相手に正常に受信されたこ
とを認識する。なお、図示しないが、ステップS305の連続受信スロット112にて、
リピータ中継器C3により送信された状態要求信号を受信できない場合には、リピータ中
継器C2は、通信異常等何らかの異常が発生したものと判断し、状態要求信号を再送する

一方、感知器D31、D32は、間欠受信間隔TDで間欠受信を行っており、リピータ
中継器C3が送信スロット121、123、125のいずれかで送信した状態要求信号を
受信する。この例では、感知器D32は送信スロット123で送信された状態要求信号を
受信し、感知器D31は送信スロット125で送信された状態要求信号を受信したものと
する。
【0073】
(S307)感知器D32は、状態要求信号を受信すると、短縮フレーム102により
自身の状態情報を含む状態情報信号を送信する。より具体的には、無線式中継器B1の、
連続受信スロット124の感知器返送スロット129の自身の機器番号に対応するエリア
において(図7)、状態情報信号を送信する。
(S308)感知器D31は、状態要求信号を受信すると、短縮フレーム102により
自身の状態情報を含む状態情報信号を送信する。より具体的には、無線式中継器B1の、
連続受信スロット126の感知器返送スロット129の自身の機器番号に対応するエリア
において(図7)、状態情報信号を送信する。
【0074】
このステップS306、307、308により、リピータ中継器C3は、自身の下位機
器(感知器D31、D32)の状態情報を収集したこととなる。
【0075】
(S309)リピータ中継器C3は、自身の記憶素子に記憶されている上位機器アドレ
スに対し、状態情報信号を送信する。この例では、リピータ中継器C3の上位機器はリピ
ータ中継器C2であるので、リピータ中継器C3は、通信スロット130の送信スロット
131(図8)によりリピータ中継器C3が送信した通信スロット130のその他信号用
エリア135のタイミングで状態情報信号を送信する。このとき送信する連送フレーム1
03は、ステップS306で受信した感知器D31、D32からの状態情報信号に含まれ
る状態情報を感知器情報201に含むとともに、リピータ中継器C3自身の状態情報をリ
ピータ中継器情報202に含んでいる。すなわち、リピータ中継器C3から送信される状
態情報信号には、リピータ中継器C3の下位機器である感知器D31、D32及びリピー
タ中継器C3の状態情報が含まれている。
一方、リピータ中継器C2は、間欠受信間隔TCで間欠受信を行っており、リピータ中
継器C3がステップS309で送信した状態情報信号を受信する。
【0076】
(S310)リピータ中継器C2は、リピータ中継器C3が送信した状態情報信号を受
信すると、自身の記憶素子に記憶されている上位機器アドレスに対し、状態情報信号を送
信する。この例では、リピータ中継器C2の上位機器は無線式中継器B1であるので、リ
ピータ中継器C2は、通信スロット130の送信スロット131(図8)により状態情報
信号を送信する。このとき送信する連送フレーム103の感知器情報201には感知器D
31、D32の状態情報を含み、リピータ中継器情報202にはリピータ中継器C3、C
2の状態情報を含んでいる。すなわち、リピータ中継器C2は、下位機器から受信した状
態情報信号に対して自身の状態情報を付加した信号を、状態情報信号として送信する。
【0077】
ここで、リピータ中継器C2が状態情報信号を送信するタイミングにおいて、リピータ
中継器C3は、連続受信スロット132の受信待機状態である(S309)。リピータ中
継器C3は、リピータ中継器C2が無線式中継器B1宛に送信した状態情報信号を連続受
信スロット132にて受信し(S309の破線参照)、これにより、状態情報信号が相手
に正常に受信されたことを認識する。なお、図示しないが、ステップS309の連続受信
スロット132にて、リピータ中継器C2により送信された状態情報信号を受信できない
場合には、リピータ中継器C3は、通信異常等何らかの異常が発生したものと判断し、状
態情報信号を再送する。
一方、無線式中継器B1は、間欠受信間隔TBで間欠受信を行っており、リピータ中継
器C2がステップS310で送信した状態要求信号を受信する。
【0078】
(S311)無線式中継器B1は、リピータ中継器C2が送信した状態情報信号を受信
すると、送信元の機器に対して、リピータ中継器C2が送信した通信スロット130のそ
の他信号用エリア135のタイミングで信号を受信したことを表す信号である受信応答信
号を送信する。
リピータ中継器C2は、無線式中継器B1により送信された受信応答信号をステップS
310の連続受信スロット132において受信し、これにより、状態情報信号が相手に正
常に受信されたことを認識する。なお、図示しないが、ステップS310の連続受信スロ
ット132にて、無線式中継器B1により送信された受信応答信号を受信できない場合に
は、リピータ中継器C2は、通信異常等何らかの異常が発生したものと判断し、状態情報
信号を再送する。
【0079】
また、図示しないが、無線式中継器B1は、自身のグループの全通信経路の状態収集処
理が終了すると、収集した状態情報を含む信号を自ら状態判定するとともに、必要であれ
ば、その状態情報信号に含まれる情報を火災受信機Aに送信する。また、ステップS31
1では、無線式中継器B1がリピータ中継器C2に対して受信応答信号を送信する例を示
しているが、無線式中継器B1と火災受信機Aとの間で無線通信を行う構成であれば、無
線式中継器B1から火災受信機Aに対して送信される状態情報を含む信号を、リピータ中
継器C2に対する受信応答信号に代えてもよい。
【0080】
このように、本実施の形態の火災報知設備100においては、図9のステップS305
、S306、S310に示すように、リピータ中継器Cが中継先の機器に対して送信する
状態情報信号が、中継元の機器に対して受信したことを示す応答信号を兼ねている。この
ため、信号を正常に受信したことを示す応答信号を中継元機器に対して別途送信する場合
と比較して、信号送信回数を低減でき、消費電流を低減できるとともに通信トラフィック
を抑制できる。
【0081】
なお、ブロック通信120では、必ずしもすべてのスロット(送信スロット121、連
続受信スロット122、送信スロット123、連続受信スロット124、送信スロット1
25、及び連続受信スロット126)をしなくてもよく、その通信経路に属するすべての
感知器Dからの状態情報信号を受信した時点で、信号の送信を中止することができる。例
えば、連続受信スロット122において、すべての感知器Dからの状態情報信号を受信し
た場合には、ブロック通信120の送信元であるリピータ中継器Cまたは無線式中継器B
は、送信スロット123以降の処理を行わない。このようにすることで、無駄な通信処理
を行う必要がなく、消費電流を低減できるとともに、情報伝達の遅れを防ぐことができる

また、連続受信スロット122、124、126のいずれにおいても、自己の通信経路
に属する感知器Dから状態情報信号を受信できない場合には、リピータ中継器Cまたは無
線式中継器Bは、当該感知器Dに割り当てられた感知器返送スロット129のエリアを「
無応答」と判断し、これを含めた状態情報信号として上位の機器に送信する。
なお、リピータ中継器Cが自らの「無応答」を含めた状態情報信号を送信せずに、無線
式中継器Bが記憶素子21aに保存された下位機器アドレス(機器番号)に基づいて判断
してもよい。
【0082】
(2)火災通知処理
図10は火災通知処理を説明する図である。なお、図10(A)は、図1に示す無線式
中継器B1と無線通信を行う通信経路のうち、通信経路F1(感知器D11、D12の通
信経路)を示し、図10(B)は、通信経路F3(リピータ中継器C2、C3、感知器D
31、32の通信経路)を示している。以下、火災通知処理について、図10と、前述の
図5〜図7を参照して説明する。なお、図1の通信経路F2の処理内容については、これ
と同様の処理が通信経路F3と処理内容に含まれているため、ここでは説明を省略する。
【0083】
図10(A)では、感知器D12の監視領域にて火災が発生した場合を例に示している

(S401)感知器D12は、火災発生を検知すると、通信スロット110の送信スロ
ット111(図6)により、火災検知情報を含む火災信号を、記憶素子1aに記憶された
上位機器アドレス宛に送信する。この例では、感知器D12の上位機器は無線式中継器B
1であるので、感知器D12は、無線式中継器B1に対して火災信号を送信する。感知器
D12は、送信スロット111により火災信号を送信した後は、受信機能を起動して連続
受信スロット112の受信待機状態に移行する。
一方、無線式中継器B1は、間欠受信間隔TBで間欠受信を行っており、感知器D12
がステップS401で送信した火災信号を受信する。
【0084】
(S402)無線式中継器B1は、感知器D12からの火災信号を受信すると、送信元
の機器である感知器D12に対して、感知器D12が送信した通信スロット110のその
他信号用エリア115のタイミングで信号を受信したことを表す信号である受信応答信号
を送信する。
感知器D12は、無線式中継器B1により送信された受信応答信号をステップS401
の連続受信スロット112において受信し、これにより、火災信号が相手に正常に受信さ
れたことを認識する。なお、図示しないが、ステップS401の連続受信スロット112
にて、無線式中継器B1により送信された受信応答信号を受信できない場合には、感知器
D12は、通信異常等何らかの異常が発生したものと判断し、火災信号を再送する。
【0085】
図10(B)では、感知器D31の監視領域にて火災が発生した場合を例に示している

(S501)感知器D31は、火災発生を検知すると、通信スロット110の送信スロ
ット111(図6)により、火災信号を、記憶素子1aに記憶された上位機器アドレス宛
に送信する。この例では、感知器D31の上位機器はリピータ中継器C3であるので、感
知器D31は、リピータ中継器C3に対して火災信号を送信する。感知器D31は、送信
スロット111により火災信号を送信した後は、受信機能を起動して連続受信スロット1
12の受信待機状態に移行する。
一方、リピータ中継器C3は、間欠受信間隔TCで間欠受信を行っており、感知器D3
1がステップS501で送信した火災信号を受信する。
【0086】
(S502)リピータ中継器C3は、感知器D31からの火災信号を受信すると、記憶
素子11aに記憶された上位機器アドレス(ここではリピータ中継器C2のアドレス)に
対し、感知器D31が送信した通信スロット110の火災転送信号用エリア113のタイ
ミングで火災転送信号を送信する。リピータ中継器C3は、火災転送信号を送信した後は
、受信機能を起動して連続受信スロット112の受信待機状態に移行する。
このリピータ中継器C3が送信した火災転送信号は、感知器D31が、連続受信スロッ
ト112において受信し(S501の破線参照)、感知器D31はこの火災転送信号の受
信により、自身が送信した火災信号が正常にリピータ中継器C3に受信されたことを認識
する。
一方、間欠受信間隔TCで間欠受信を行っているリピータ中継器C2も、リピータ中継
器C3により送信された火災転送信号を受信する。
【0087】
(S503)リピータ中継器C2は、リピータ中継器C3からの火災転送信号を受信す
ると、送信スロット111(図6)により、火災転送信号を、リピータ中継器C3が送信
した通信スロット110の火災転送信号用エリア113のタイミングで記憶素子11aに
記憶された上位機器アドレス(ここでは無線式中継器B1のアドレス)に対して送信する
。リピータ中継器C2は、火災転送信号を送信した後は、受信機能を起動して連続受信ス
ロット112の受信待機状態に移行する。
このリピータ中継器C2が送信した火災転送信号は、リピータ中継器C3が、連続受信
スロット112において受信し(S502の破線参照)、リピータ中継器C3はこの火災
転送信号の受信により、自身が送信した火災信号が正常にリピータ中継器C2に受信され
たことを認識する。
一方、間欠受信間隔TBで間欠受信を行っている無線式中継器B1も、リピータ中継器
C2により送信された火災転送信号を受信する。
【0088】
(S504)無線式中継器B1は、リピータ中継器C2からの火災転送信号を受信する
と、この火災転送信号の送信元であるリピータ中継器C2に対し、リピータ中継器C2が
送信した通信スロット110のその他信号用エリア115のタイミングで受信の応答信号
を送信する。
リピータ中継器C2は、連続受信スロット112において無線式中継器B1からの受信
応答信号を受信し、これにより、自身が送信した火災転送信号が正常に無線式中継器B1
に受信されたことを認識することができる。
【0089】
なお、図10(B)の例のように、無線式中継器Bと感知器Dとの間にリピータ中継器
Cを介在させる構成であっても、各機器の配置や電波状況によっては、感知器Dから送信
された火災信号を無線式中継器Bが直接受信することができる場合もある。このような場
合、無線式中継器Bは、リピータ中継器Cからの火災転送信号が届いていなくとも、感知
器Dから送信された火災信号により火災が発生したことを認識し、火災信号を火災受信機
Aに送信する。このため、感知器Dから火災受信機Aへ火災信号を早期に伝達できる。
【0090】
図11は、実施の形態に係る無線通信システムにおける無線機器の通信範囲を説明する図である。(A)は感知器Dと無線式中継器Bとの間にリピータ中継器Cが1台も設置されていない例である。一方、(B)は感知器Dと無線式中継器Bとの間にリピータ中継器Cが2台設置されている例である。(A)と(B)は比較しやすいように、感知器Dと無線式中継器Bの距離は同じとするとともに、感知器D、リピータ中継器Cおよび無線式中継器Bの通信範囲はそれぞれ同じとしている。
(A)では、感知器Dと無線式中継器Bが相互に通信するためには、半径R1で通信範囲A1としなくてはならない。このため、意図しない方向からの無線信号を受信する可能性や意図しない方向に無線信号を送信する可能性が高い。
一方、(B)では、感知器Dと無線式中継器Bが2台のリピータCを介して相互に通信するためには、半径R2で通信範囲A2とすればよい。
すなわち、少なくともリピータ中継器C1の送信する無線信号が1つ下の階層の感知器D1だけと1つ上の階層のリピータ中継器C2だけに受信される。または、少なくともリピータ中継器C2の送信する無線信号が1つ下の階層のリピータ中継器C1だけと1つ上の階層の無線式中継器B1だけに受信される。
ここで、少なくとも感知器D1の送信する無線信号が1つ上の階層のリピータ中継器C1だけに受信されるようにしてもよい。また、少なくとも無線式中継器B1の送信する無線信号が1つ下の階層のリピータ中継器C2だけに受信されるようにしてもよい。
なお、それぞれの機器の通信範囲が等しければ、リピータ中継器Cの台数を増やすほど無線式中継器Bとリピータ中継器Cと感知器Dの通信範囲が狭くなり、状態要求信号や火災信号が1つの階層ずつ中継される傾向となるため、他の機器と混信する可能性を低くできる。さらに、例えば、それぞれの機器の制御回路1の受信用アンプ(図示せず)または送信用アンプ(図示せず)の増幅率が低く設定されるため、無線通信にかかる消費電流を低減できる。
感知器Dとリピータ中継器Cと無線式中継器Bは、それぞれの機器毎の設置状態や駆動状態に応じて通信範囲を異ならせてもよい。これらの構成以外でも複数の調整手段(図示せず)を設けて受信感度や送信出力を調整できるようにしてもよい。
また、リピータ中継器Bとリピータ中継器Cは、複数の周波数切替スイッチを設けて、上の階層の機器と下の階層の機器との無線通信における通信周波数を異ならせてもよい。
上記説明では、無線式中継器Bと感知器Dとの間にリピータ中継器Cが2台設置される例を示したが、リピータ中継器Cは少なくとも1台以上あればよい。(無線式中継器Bと合わせて2台以上あればよい)
【0091】
前述したとおり、外部試験器Eを用いるとそれぞれの機器に対する各種コマンドを実行することができる。ここで、外部試験器Eからの状態要求の処理動作について説明する。
このとき、外部試験器Eの処理選択スイッチ39を操作すると、外部試験器Eが無線式中継器Bに対し、無線式中継器Bと通信経路情報として登録されている下の階層のリピータ中継器Cと感知器Dとの状態要求を開始させる。
無線式中継器Bによる状態収集処理時と同じ通信電文によりリピータ中継器Cを介して感知器Dで受信される。そして、感知器Dが状態情報信号を短縮フレームにより送信すると同じ通信電文によりリピータ中継器Cと無線式中継器Bを介して外部試験器Eで受信される。他にも外部試験器Eから無線式中継器B等に対して復旧や火災試験やLED点灯などが制御できる。なお、外部試験器Eからのコマンドは別のものとしてもよい。
ここで、リピータ中継器Cと無線式中継器Bは、図8に示す通信スロット130により送信するが、無線式中継器Bの状態収集処理時とは異なり、無線式中継器情報203に無線式中継器Bの状態信号データが格納される。
一方、感知器情報201とリピータ中継器情報202は、無線式中継器Bからの状態収集処理時と同様に感知器Dとリピータ中継器Cの状態信号データが格納される。
よって、外部試験器Eのコマンドに対しては、連送フレーム103は、感知器情報201と、リピータ中継器情報202と、無線式中継器情報203と、が含まれるために、外部試験器Eが早くかつ容易に各機器状態を確認することができる。
【0092】
図1においては、無線式中継器B1とリピータ中継器C2、C3と感知器D31、D32により通信経路F3が確立されている。
例えば、通信経路F3に感知器D30(図示せず)を増設する場合、感知器D31、D32と同様に、リピータ中継器C3の下位機器アドレスと登録してもよいが、リピータ中継器C2の下位機器アドレスと登録してもよい。このとき、リピータ中継器C2は、リピータ中継器C3に通信スロット110により状態要求信号を送信するとともに、増設された感知器D30にブロック通信120により状態要求信号を送信する。
【0093】
以上のように本実施の形態の状態収集処理において、リピータ中継器Cは、状態要求信
号送信の最中に感知器Dからの火災通知信号を受信した場合には、ブロック通信120に
よる状態要求信号の送信を中止し、火災転送信号の送信を開始する。このようにすること
で、感知器Dから送信された火災を知らせる信号を、無線式中継器Bがより早急に受信す
ることができる。例えば、図10(A)と図10(B)とを参照して分かるように、図1
0(A)に示す状態収集処理が終了してから火災通知処理を開始したとすると、無線式中
継器B1に火災転送信号が到達するまでの時間は、図10(B)と比較して長くなってし
まう。しかしながら、本実施の形態によれば、無線式中継器B1はより早期に火災転送信
号を受信できる。
【0094】
また、無線式中継器Bと感知器Dとの間にリピータ中継器Cを介在させる構成であって
も、例えば各機器の配置や電波状況によって感知器Dからの無線信号を無線式中継器Bが
直接受信可能である場合には、無線式中継器Bは、感知器Dからの火災通知信号を受信処
理するようにした。このため、無線式中継器Bは、リピータ中継器Cからの火災転送信号
が届いていなくとも、感知器Dから送信された火災通知信号により火災が発生したことを
認識することができる。このように、無線式中継器Bは、感知器Dが検知した火災をより
早期に認識できる。また、無線式中継器Bが、感知器Dからの火災通知信号を火災受信機
Aに転送することにより、感知器Dから火災受信機Aへ火災を知らせる信号を早期に伝達
できる。
【0095】
また、リピータ中継器C、感知器Dは、送信する信号の種別によって、受信側機器の対
応するエリアに対して信号を送信する。このように、信号の種別によって受信の時間帯(
送信側機器における送信時間帯)を定めておくことで、複数の種類の信号が同時に送信さ
れることにより電文が破壊されることを抑制することができる。また、送信する信号の種
別によって受信側機器における受信のエリア(時間帯)を分けたので、重要性の高い火災
信号の送信を優先することができ、火災信号を早期伝達することができる。
【0096】
なお、上記実施の形態においては、無線式中継器Bが火災受信機Aから状態要求信号を
受信すると各経路の感知器D等の状態情報信号を火災受信機Aに送信している。これに限
定されずに、無線式中継器Bが自らのタイミングで各経路の感知器D等の状態収集と状態
判定を行ってもよい。この場合、火災や異常(電池切れや無応答等)が発生などの必要時
に、火災受信機Aに対して状態情報信号を送信すればよい。
【0097】
本発明は、火災感知器以外に異常検出用などの警報器に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0098】
1 制御回路、1a 記憶素子、2 電池、3 定電圧回路、4 電圧検出回路、5
送受信回路、5a 送信回路、5b 受信回路、6 アンテナ、7 火災検出回路、8
表示灯回路、8a 表示部、9 登録スイッチ、10 ブザー、11 制御回路、11a
記憶素子、20a 電源線用端子、20b 信号線用端子、21 制御回路、21a
記憶素子、22 受信機I/F回路、31 制御回路、31a 記憶素子、39 処理選
択スイッチ、100 火災報知設備、101 基本フレーム、102 短縮フレーム、1
03 連送フレーム、110 通信スロット、111 送信スロット、112 連続受信
スロット、113 火災転送信号用エリア、114 火災通知信号用エリア、115 そ
の他信号用エリア、120 ブロック通信、121 送信スロット、122 連続受信ス
ロット、123 送信スロット、124 連続受信スロット、125 送信スロット、1
26 連続受信スロット、129 感知器返送スロット、130 通信スロット、131
送信スロット、132 連続受信スロット、133 火災転送信号用エリア、134
火災通知信号用エリア、135 その他信号用エリア、201 感知器情報、202 リ
ピータ中継器情報、203 無線式中継器情報、A 火災受信機、B 無線式中継器、C リピータ中継器、D 感知器、E 外部試験器、F1〜F4 通信経路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
状態検出部からの状態信号に基づいて状態判別部が状態を判別するとともに、送受信部により無線信号を送受信する感知器と、 前記感知器を監視制御する受信機と、
前記感知器と前記受信機との間に介在し、複数の通信階層を構成して無線信号を中継する複数の中継器と、を備えたことを特徴とする無線通信システム。

【請求項2】
前記複数の中継器は、前記受信機と信号線により接続される1つの無線式中継器と、該無線式中継器の下位の階層としての1つまたは複数のリピータ中継器と、で構成され、
前記リピータ中継器の少なくとも1つは、自己の送信する無線信号が1つ上の階層だけと1つ下の階層だけで受信されることを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。

【請求項3】
前記リピータ中継器の少なくとも1つは、1つ上の階層との通信と1つ下の階層との通信における通信周波数を異ならせることを特徴とする請求項2記載の無線通信システム。

【請求項4】
前記無線式中継器と前記リピータ中継器と前記感知器の少なくとも1つは、自己の送信出力または自己の受信感度を調整できる手段を有することを特徴とする請求項2乃至3記載の無線通信システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−3926(P2013−3926A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135805(P2011−135805)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】