説明

無線通信デバイス、その製造方法及び無線通信デバイス付き金属物品

【課題】無線通信デバイスにおいて、アンテナ素子のループ長がばらつくことはなく、安定した通信性能を得る。
【解決手段】第1端子51及び第2端子52を有する無線IC素子50と、第1導体部11、第2導体部12及び第3導体部13をこの順に連接してなるループ状金属導体10と、第1主面、該第1主面と対向する第2主面及び該第1主面と該第2主面とに連続する側面を有する誘電体ブロック30と、を備えた無線通信デバイス。無線IC素子50の第1端子51はループ状金属導体10の第1導体部11に接続され、第2端子52は第3導体部13に接続されている。ループ状金属導体10は、第1導体部11が誘電体ブロック30の第1主面に配置され、第2導体部12が側面に配置され、第3導体部13が第2主面に配置されるように、誘電体ブロック30に巻き付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信デバイス、特にRFID(Radio Frequency Identification)システムに用いられる無線通信デバイス、その製造方法及び無線通信デバイス付き金属物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物品の情報管理システムとして、リーダライタと、物品に付されたRFIDタグ(無線通信デバイスとも称する)とを非接触方式で通信し、所定の情報を伝達するRFIDシステムが実用化されている。このRFIDシステムとしては、13MHz帯の高周波を用いたHF帯、900MHz帯の高周波を用いたUHF帯が一般的に使用されている。特に、UHF帯を使用するRFIDシステムは通信距離が比較的長く、また、複数のタグを一括して読取り可能であることから、物品の管理システムに好適である。この種のRFIDタグでは、高周波信号を処理する無線IC素子と高周波信号を送信/受信するアンテナ素子とを備えている。
【0003】
このようなRFIDタグとしては、従来、特許文献1,2に記載されているものが知られており、ブロック状の誘電体部材の表面にアンテナパターンを配置することによって構成され、金属物品に貼着しても動作可能である。
【0004】
しかしながら、従来のごとく、誘電体部材の表面にアンテナパターンを配置してループアンテナを構成する場合、誘電体部材の形状にばらつきがあったり、アンテナパターンの配置がばらつくと、ループ長にもばらつきが生じる不具合を有している。ループアンテナのループ長は、アンテナ素子と無線IC素子とのインピーダンスの整合回路や共振周波数の調整回路としても機能するため、ループ長がばらつくと、通信性能もばらついてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−053833号公報
【特許文献2】特開2007−272264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、アンテナ素子のループ長がばらつくことはなく、安定した通信性能を得ることのできる無線通信デバイス、その製造方法及び無線通信デバイス付き金属物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の形態である無線通信デバイスは、
第1端子及び第2端子を有する無線IC素子と、
第1導体部、第2導体部及び第3導体部をこの順に連接してなるループ状金属導体と、
第1主面、該第1主面と対向する第2主面及び該第1主面と該第2主面とに連続する側面を有する誘電体ブロックと、
を備えた無線通信デバイスであって、
前記無線IC素子の前記第1端子は前記ループ状金属導体の前記第1導体部に接続され、前記第2端子は前記第3導体部に接続されており、
前記ループ状金属導体は、前記第1導体部が前記第1主面に配置され、前記第2導体部が前記側面に配置され、前記第3導体部が前記第2主面に配置されるように、前記誘電体ブロックに巻き付けられていること、
を特徴とする。
【0008】
本発明の第2の形態である無線通信デバイスの製造方法は、
第1端子及び第2端子を有する無線IC素子と、
第1導体部、第2導体部及び第3導体部をこの順に連接してなるループ状金属導体と、
第1主面、該第1主面と対向する第2主面及び該第1主面と該第2主面とに連続する側面を有する誘電体ブロックと、
を備えた無線通信デバイスの製造方法であって、
前記無線IC素子の前記第1端子を前記ループ状金属導体の前記第1導体部に接続し、前記第2端子を前記第3導体部に接続する工程と、
前記ループ状金属導体を、前記第1導体部が前記第1主面に配置され、前記第2導体部が前記側面に配置され、前記第3導体部が前記第2主面に配置されるように、前記誘電体ブロックに巻き付ける工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の第3の形態である無線通信デバイス付き金属物品は、
第1端子及び第2端子を有する無線IC素子と、
第1導体部、第2導体部及び第3導体部をこの順に連接してなるループ状金属導体と、
第1主面、該第1主面と対向する第2主面及び該第1主面と該第2主面とに連続する側面を有する誘電体ブロックと、
を備えた無線通信デバイス付き金属物品であって、
前記無線IC素子の前記第1端子は前記ループ状金属導体の前記第1導体部に接続され、前記第2端子は前記第3導体部に接続されており、
前記ループ状金属導体は、前記第1導体部が前記第1主面に配置され、前記第2導体部が前記側面に配置され、前記第3導体部が前記第2主面に配置されるように、前記誘電体ブロックに巻き付けられていること、
を特徴とする。
【0010】
前記無線通信デバイスにおいては、第1導体部、第2導体部及び第3導体部をこの順に連接してなるループ状金属導体を誘電体ブロックに巻き付けて構成されており、ループ状金属導体は予め平面状に展開した状態で形成されるため、誘電体ブロックに巻き付けた場合、誘電体ブロックの形状や寸法的なばらつきに影響されることなく、第1導体部、第2導体及び第3導体部からなるループ長にばらつきを生じることがない。それゆえ、ループ状金属導体はインピーダンスの整合回路や共振周波数の調整回路として安定して機能し、通信信頼性を損なうことがない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アンテナ素子のループ長がばらつくことはなく、安定した通信性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施例である無線通信デバイスを示し、(A)は分解斜視図、(B)は外観斜視図である。
【図2】第1実施例である無線通信デバイスにおけるループ状金属導体を示し、(A)は展開図、(B)は斜視図である。
【図3】第1実施例である無線通信デバイスの使用状態を示す斜視図である。
【図4】第1実施例である無線通信デバイスの他の使用状態を示す垂直断面図である。
【図5】第1実施例である無線通信デバイスの変形例を示し、(A)は平面図、(B)は使用状態の側面図である。
【図6】第2実施例である無線通信デバイスを示し、(A)は分解斜視図、(B)は外観斜視図である。
【図7】第3実施例である無線通信デバイスを示し、(A)は外観斜視図、(B)は部分垂直断面図である。
【図8】第4実施例である無線通信デバイスを示し、(A)は分解斜視図、(B)は外観斜視図である。
【図9】第5実施例である無線通信デバイスを示し、(A)は分解斜視図、(B)は外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る無線通信デバイス、その製造方法及び無線通信デバイス付き金属物品の実施例について添付図面を参照して説明する。なお、各図において、共通する部品、部分は同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
(無線通信デバイスの概略説明)
まず、本発明に係る無線通信デバイスについてその概略を説明する。この無線通信デバイスは、第1端子及び第2端子を有する無線IC素子と、第1導体部、第2導体部及び第3導体部をこの順に連接してなるループ状金属導体と、第1主面、該第1主面と対向する第2主面及び該第1主面と該第2主面とに連続する側面を有する誘電体ブロックと、を備えている。そして、無線IC素子の第1端子はループ状金属導体の第1導体部に接続され、第2端子は第3導体部に接続されている。さらに、ループ状金属導体は、第1導体部が誘電体ブロックの第1主面に配置され、第2導体部がその側面に配置され、第3導体部が第2主面に配置されるように、誘電体ブロックに巻き付けられている。
【0015】
即ち、無線通信デバイスは、ループ状に連接された第1導体部、第2導体部及び第3導体部によって構成されたループアンテナ素子を有しており、このループアンテナ素子が誘電体ブロックの第1主面、側面及び第2主面に跨って巻き付けられた構造(折返し型ループアンテナ構造)を有している。
【0016】
このような無線通信デバイスは、無線IC素子の第1端子をループ状金属導体の第1導体部に接続し、第2端子を第3導体部に接続する工程と、ループ状金属導体を、第1導体部が誘電体ブロックの第1主面に配置され、第2導体部がその側面に配置され、第3導体部が第2主面に配置されるように、誘電体ブロックに巻き付ける工程とによって製造される。
【0017】
本無線通信デバイスによれば、予め平面状に展開した状態でループ状金属導体を形成し、このループ状金属導体を誘電体ブロックに巻き付けているため、誘電体ブロックの形状や寸法的なばらつきに影響されることなく、かつ、巻き付けかたが不均一であったりしても、ループ長(ループの内周長、外周長)にばらつきを生じることはない。それゆえ、インピーダンスの整合が安定化し、共振周波数の変動や放射利得の減少が抑えられ、安定した通信性能が得られる。
【0018】
本無線通信デバイスにあっては、無線IC素子が搭載されている。この無線IC素子は、入出力端子である第1端子及び第2端子を備えている。これらの端子は、基本的には平衡給電端子であるが、一方の端子をグランド端子としてもよい。この無線IC素子は、信号処理回路やメモリ回路などを有しており、基本的には半導体集積回路チップとして構成されていることが好ましい。無線IC素子としては、ベアチップであってもよく、パッケージICとして構成されていてもよい。また、無線IC素子は半導体集積回路チップを整合回路や共振回路を有する給電回路基板に搭載されたものであってもよい。
【0019】
ループ状金属導体は、さらに、無線IC素子の第1端子に接続される第1給電部と、第2端子に接続される第2給電部とを有していてもよく、第1給電部は第1導体部に接続され、第2給電部は第3導体部に接続される。
【0020】
誘電体ブロックは、長辺部と短辺部とを有する直方体形状をなしていることが好ましく、ループ状金属導体はその長辺部が位置する側面を中心として誘電体ブロックに巻き付けられていることが好ましい。換言すれば、ループ状金属導体は、誘電体ブロックの長辺部が位置する側面にループの内周部分が位置するように巻き付けられていることが好ましい。ループ長(特に、ループ部の内周長)は、使用周波数の半波長までの長さであれば、長いほうが好ましい。即ち、ループ長は使用周波数の半波長の長さに近いほうが好ましい。また、ループ部の外周長は長いほうが放射利得が向上する点で好ましい。よって、小型の無線通信デバイスを実現する場合には、ループ部の内周長や外周長が長くなるように、ループ状金属導体はそのループ部が誘電体ブロックの長辺部が位置する側面に配置されることが好ましい。
【0021】
さらに、ループ状金属導体を誘電体ブロックの長辺部が位置する側面に第2導体部が位置するように巻きつければ、第2導体部の幅寸法を太くすることが可能となる。本無線通信デバイスでは、ループ部の内周長がインピーダンスや共振周波数の調整に大きく寄与し、ループの外周長が放射利得の向上に大きく寄与する。そのため、第2導体部の幅寸法を大きくすることで、インピーダンスや共振周波数の調整と放射利得の調整とを独立したパラメータとして処理しやすくなり、設計が容易になる。
【0022】
なお、前述した、ループ状金属導体がその長辺部を中心として誘電体ブロックに巻き付けられているとは、ループ状金属導体が誘電体ブロックの少なくとも第1主面、側面及び第2主面に跨って巻き付けられている状態を意味している。従って、誘電体ブロックが直方体形状であれば、第1主面、長辺部を含む一方の側面、第2主面に加えて長辺部を含む他方の側面にまでループ状金属導体が延長されていてもよい。
【0023】
また、ループ状金属導体の第1導体部及び第3導体部は、誘電体ブロックの短辺部の寸法とほぼ同じ幅寸法を有していることが好ましい。即ち、第1導体部及び第3導体部は誘電体ブロックの第1主面及び第2主面のほぼ全面を占めていること(換言すれば、平面視で同じ形状であること)が好ましく、第1主面及び第2主面が平面視で長方形状であれば、第1導体部及び第3導体部も平面視で長方形状であることが好ましい。第1主面及び第2主面が平面視で円形状であれば、第1導体部及び第3導体部も平面視で円形状であることが好ましい。第1主面及び第2主面における第1導体部及び第3導体部の面積を大きくすることで、放射利得の向上を図ることができる。
【0024】
ループ状金属導体の第1導体部と第3導体部とは、誘電体ブロックを介して対向しており、両者の間で容量が形成される。この容量成分も、ループ部の内周長と同様に、共振周波数の調整や無線IC素子とアンテナ素子とのインピーダンスの整合に寄与する。なお、ループ部の内周長をある程度大きく形成できるのであれば、インピーダンスの調整は第1導体部と第3導体部との間に形成される容量成分よりもループ部の内周長の影響が大きくなる。本無線通信デバイスは折れ曲がったり、湾曲面に貼着されてもループ部の内周長はほとんど変化しないので、インピーダンスもほとんど変化しない。つまり、このような構造は誘電体ブロックの折れ曲がりや湾曲に対して通信性能にあまり変化を来さない。
【0025】
誘電体ブロックとしては、セラミックや樹脂あるいは紙などを素材とすることができ、特に、ガスボンベのような湾曲面に貼着される無線通信デバイスの場合、可撓性を有することが好ましい。可撓性を有する誘電体ブロックとしては、例えば、シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂のような弾性素材(エラストマ)を用いることができる。なお、平面に貼着される無線通信デバイスの場合、必ずしも可撓性を有する必要はなく、セラミックやエポキシ樹脂などの硬質素材を用いることができる。誘電体ブロックは全体が均一な材料で形成されている必要はなく、様々な誘電率を有する誘電体を組み合わせてもよく、内部に空洞を有していてもよい。
【0026】
ループ状金属導体は、誘電体ブロックに巻き付けることができるように折り曲げ加工が可能な金属薄板を使用することが好ましい。金属薄板は、硬質なものであってもよいが、特に、ガスボンベのような湾曲面に貼着される無線通信デバイスの場合、可撓性を有することが好ましい。また、ループ状金属導体として、金属フープ材のような金属薄板を単独で用いてもよいが、PETなどの基材フィルムに金属箔(銅箔やアルミ箔)をラミネートしたもの、導電性薄膜を成膜したものを用いてもよい。金属材料としては銅や銀を主成分とする比抵抗の小さな材料を好適に用いることができる。
【0027】
ループ状金属導体は無線IC素子が内側となるように誘電体ブロックに巻き付けられていることが好ましく、誘電体ブロックには無線IC素子を収容するためのキャビティが設けられていることが好ましい。これにより、誘電体ブロックが無線IC素子の保護材として機能する。
【0028】
本無線通信デバイスがガスボンベのような湾曲面に貼着される場合、デバイスが湾曲面に沿うことを助長するために、金属導体はその全面が誘電体ブロックに接着・固定されていないことが好ましく、金属導体と誘電体ブロックとの間には非接着領域が設けられていることが好ましい。特に、ループ部分は、インピーダンスの整合を図っていることから、このループ部分を誘電体ブロックに固定し、他の部分を誘電体ブロックに固定しないことが好ましい。
【0029】
前記無線通信デバイスは、主としてUHF帯のRFIDシステムに用いられる。即ち、このループアンテナ素子はHF帯で用いられる磁界型のループアンテナよりもむしろUHF帯で用いられる電界型のループアンテナとして有用である。但し、UHF帯に用いることに限定するものではなく、サイズなどに応じてHF帯やそれ以外の周波数帯のRFIDシステムに用いることができる。
【0030】
ところで、前記無線通信デバイスは、特に、金属物品に貼着することにより無線通信デバイス付き金属物品として構成することができる。無線通信デバイスをその第3導体部を金属面に向けて接着剤などを介して貼着することにより、第3導体部と金属物品とが容量を介して結合する。この容量は使用周波数において電気的に直結する容量であればよい。なお、第3導体部と金属物品とは直接電気的に接続されていてもよい。金属物品には本無線通信デバイスを直接貼着してもよいが、無線通信デバイスを保護ケースに収容し、該保護ケースを金属物品に貼着してもよい。
【0031】
(第1実施例、図1〜図4参照)
第1実施例である無線通信デバイス1Aは、図1に示すように、ループ状金属導体10と誘電体ブロック30と無線IC素子50とを備えている。ループ状金属導体10は第1導体部11、第2導体部12及び第3導体部13がループ状に連接されており、第1導体部11と第3導体部13の端部には互いに対向する第1給電部11aと第2給電部13aとが形成されている。第1導体部11と第3導体部13とはその他端において第2導体部12で連続している。
【0032】
無線IC素子50は、RF信号を処理するもので、第1及び第2給電部11a,13aに接合されている。即ち、無線IC素子50は入出力電極である第1端子51及び第2端子52を有し、第1端子51及び第2端子52が第1給電部11a及び第2給電部13aに接合されている。この接合は、半田バンプなどによる電気的な直接結合(DC接続)であるが、電磁界結合であってもよい。
【0033】
ここで、無線通信デバイス1Aの構成をその製造方法とともに説明する。まず、図1(A)に示す誘電体ブロック30及び支持フィルム20の表面に設けたループ状金属導体10を準備する。ループ状金属導体10は、前述のように、第1導体部11と第2導電部12と第3導体部13とが図2(A)に示す展開状態で形成されている。第1給電部11a及び第2給電部13aには無線IC素子50が既に接合されている。これらの各部材の材料は前述のものが使用されている。
【0034】
ここで、誘電体ブロック30の上面から側面及び下面にわたってループ状金属導体10を保持した支持フィルム20を巻き付けるようにして接着する。図1(A)、図2(A)に示す点線dは巻き付ける際の折曲げ線である(他の図においても同じ)。このとき、第1導体部11は誘電体ブロック30の上面に位置し、給電部11a、13a及び第2導体部12は主として誘電体ブロック30の側面に位置し、第3導体部13は誘電体ブロック30の下面に位置する。接着剤は支持フィルム20の裏面に塗布されているが、誘電体ブロック30の表面に塗布されていてもよく、あるいは両面接着テープを使用してもよい。なお、ループ状金属導体10がその折曲げ形状を保持できる材料で形成されていれば、接着剤は必ずしも必要ではない。また、支持フィルム20も必ずしも必要なものではない。
【0035】
以上のごとく製造された無線通信デバイス1Aは図1(B)に示す外観をなしている。無線IC素子50は金属導体10の外側に接合されている。本無線通信デバイス1Aにあっては、給電部11a,13aと第1導体部11と第2導体部12と第3導体部13とで形成されるループ部によってループ状アンテナ素子が形成される。このループ部はその内周長が無線IC素子50とアンテナ素子とのインピーダンスや共振周波数に大きく影響することは前述のとおりである。即ち、第1導体部11の幅W1、第2導体部12の幅W2、第3導体部13の幅W3、給電部11a,13aの幅W4などで、共振周波数や共振抵抗、動作帯域などのアンテナ特性が規定される。
【0036】
また、誘電体ブロック30は長辺部と短辺部とを有する直方体形状をなし、ループ状金属導体10は長辺部が位置する側面を中心として誘電体ブロック30に巻き付けられる。換言すれば、ループ状金属導体10は、誘電体ブロック30の長辺部が位置する側面にループの内周部分が位置するように巻き付けられている。第1導体部11の幅W1及び第3導体部13の幅W3は誘電体ブロック30の短辺部の寸法とほぼ同じ寸法である。
【0037】
本無線通信デバイス1Aは、図3に示すように、金属物品61の表面に貼着されて使用される(無線通信デバイス付き金属物品とも称することができる)。この場合、第3導体部13が金属物品61に直接電気的に接続されることになり、放射特性としては金属物品61の法線方向に指向性が生じ、RFIDシステムのリーダライタとの通信が可能である。
【0038】
また、無線通信デバイス1Aは、図4に示すように、樹脂製の保護ケース60に収容した状態で金属物品61の表面に接着剤62を介して貼着されてもよい(無線通信デバイス付き金属物品とも称することができる)。この場合、第3導体部13は金属物品61に対して保護ケース60の底部60a及び接着剤62を介して容量結合することになる。この容量は使用周波数において電気的に直結する容量であることが好ましい。
【0039】
この無線通信デバイス付き金属物品にあっては、保護ケース60を使用することで、無線通信デバイス1Aの耐環境性が良好なものとなる。なお、図3及び図4では、金属物品61を本無線通信デバイス1Aの補助的な放射素子として使用する形態を示しているが、本無線通信デバイス1Aは金属と結合させることなく、単独でもリーダライタと比較的短い距離ではあるが通信が可能である。
【0040】
(変形例、図5参照)
前記第1実施例では、支持フィルム20の裏面全体を誘電体ブロック30に接着する構成を採用している。しかし、無線通信デバイス1Aがガスボンベのような湾曲面に貼着される場合、デバイス1Aが湾曲面に沿うことを助長するために、ループ状金属導体10はその全面が誘電体ブロック30に接着・固定されていないことが好ましく、ループ状金属導体10と誘電体ブロック30との間には非接着領域が設けられていることが好ましい。
【0041】
例えば、図5(A)に示すように、斜線を付した部分を非接着領域Nとしてもよい。このように誘電体ブロック30に対して部分的に非接着領域Nを設けることで、図5(B)に示すように、デバイス1Aを金属物品61の湾曲面に貼着した場合、非接着領域Nにおいてループ状金属導体10(支持フィルム20)と誘電体ブロック30とが滑りを生じ、誘電体ブロック30及びループ状金属導体10が湾曲しやすくなる。特に、給電部11a,13aを含んで形成されるループ部分は、ループ状アンテナ素子におけるインピーダンスの整合を図っていることから、このループ部分を誘電体ブロック30に固定し、他の部分を誘電体ブロック30に固定しないことが好ましい。
【0042】
(第2実施例、図6参照)
第2実施例である無線通信デバイス1Bは、図6に示すように、第1導体部11の幅寸法を若干小さくしたもので、その分第2給電部13aは長く形成されている。従って、給電部11a,13aに接合された無線IC素子50は誘電体ブロック30の上面に配置されることになる。
【0043】
本無線通信デバイス1Bにおけるループ状金属導体10のループ状アンテナ素子としての機能は前記第1実施例と同様である。
【0044】
(第3実施例、図7参照)
第3実施例である無線通信デバイス1Cは、図7に示すように、無線IC素子50がループ状金属導体10の内側に接合されており、ループ状金属導体10を誘電体ブロック30に巻き付けた状態で無線IC素子50は誘電体ブロック30の側面に形成したキャビティ31に収容されている。その他の構成や製造方法は前記第1実施例と同様である。なお、本無線通信デバイス1Cにおいて、ループ状金属導体10は支持フィルム20の裏面側に設けられている。
【0045】
(第4実施例、図8参照)
第4実施例である無線通信デバイス1Dは、図8に示すように、第2給電部13aを屈曲させて第1給電部11aに対向させたものである。その他の構成や製造方法は前記第1実施例と同様である。
【0046】
(第5実施例、図9参照)
第5実施例である無線通信デバイス1Eは、図9に示すように、第1導体部11及び第3導体部13の幅を大きくしたもので、このような第1導体部11及び第3導体部13によって、誘電体ブロック30の第1主面及び第2主面における短辺方向全域にわたって放射導体が形成されることになる。これにより、放射利得の向上を図ることができる。
【0047】
(他の実施例)
なお、本発明に係る無線通信デバイス、その製造方法及び無線通信デバイス付き金属物品は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明は、無線通信デバイス、その製造方法及び無線通信デバイス付き金属物品に有用であり、特に、アンテナ素子のループ長がばらつくことがなく、安定した通信性能を発揮する点で優れている。
【符号の説明】
【0049】
1A〜1E…無線通信デバイス
10…ループ状金属導体
11…第1導体部
11a…第1給電部
12…第2導体部
13…第3導体部
13a…第2給電部
30…誘電体ブロック
31…キャビティ
50…無線IC素子
51…第1端子
52…第2端子
61…金属物品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子及び第2端子を有する無線IC素子と、
第1導体部、第2導体部及び第3導体部をこの順に連接してなるループ状金属導体と、
第1主面、該第1主面と対向する第2主面及び該第1主面と該第2主面とに連続する側面を有する誘電体ブロックと、
を備えた無線通信デバイスであって、
前記無線IC素子の前記第1端子は前記ループ状金属導体の前記第1導体部に接続され、前記第2端子は前記第3導体部に接続されており、
前記ループ状金属導体は、前記第1導体部が前記第1主面に配置され、前記第2導体部が前記側面に配置され、前記第3導体部が前記第2主面に配置されるように、前記誘電体ブロックに巻き付けられていること、
を特徴とする無線通信デバイス。
【請求項2】
前記ループ状金属導体は、さらに、前記無線IC素子の前記第1端子に接続される第1給電部と、前記第2端子に接続される第2給電部とを有し、
前記第1給電部は前記第1導体部に接続され、前記第2給電部は前記第3導体部に接続されていること、
を特徴とする請求項1に記載の無線通信デバイス。
【請求項3】
前記誘電体ブロックは、長辺部と短辺部とを有する直方体形状をなし、
前記ループ状金属導体は前記長辺部が位置する側面を中心として前記誘電体ブロックに巻き付けられていること、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無線通信デバイス。
【請求項4】
前記ループ状金属導体の前記第1導体部及び前記第3導体部は、前記誘電体ブロックの短辺部の寸法とほぼ同じ幅寸法を有していること、を特徴とする請求項3に記載の無線通信デバイス。
【請求項5】
前記ループ状金属導体は可撓性金属薄板によって形成されており、
前記誘電体ブロックは可撓性を有する材料にて形成されていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の無線通信デバイス。
【請求項6】
前記ループ状金属導体は可撓性フィルム上に設けられており、該可撓性フィルムとともに前記誘電体ブロックに巻き付けられていること、を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の無線通信デバイス。
【請求項7】
前記ループ状金属導体と前記誘電体ブロックとの間には非接着領域が設けられていること、を特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の無線通信デバイス。
【請求項8】
前記ループ状金属導体は前記無線IC素子が内側となるように前記誘電体ブロックに巻き付けられており、
前記誘電体ブロックには前記無線IC素子を収容するためのキャビティが設けられていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の無線通信デバイス。
【請求項9】
第1端子及び第2端子を有する無線IC素子と、
第1導体部、第2導体部及び第3導体部をこの順に連接してなるループ状金属導体と、
第1主面、該第1主面と対向する第2主面及び該第1主面と該第2主面とに連続する側面を有する誘電体ブロックと、
を備えた無線通信デバイスの製造方法であって、
前記無線IC素子の前記第1端子を前記ループ状金属導体の前記第1導体部に接続し、前記第2端子を前記第3導体部に接続する工程と、
前記ループ状金属導体を、前記第1導体部が前記第1主面に配置され、前記第2導体部が前記側面に配置され、前記第3導体部が前記第2主面に配置されるように、前記誘電体ブロックに巻き付ける工程と、
を備えたことを特徴とする無線通信デバイスの製造方法。
【請求項10】
第1端子及び第2端子を有する無線IC素子と、
第1導体部、第2導体部及び第3導体部をこの順に連接してなるループ状金属導体と、
第1主面、該第1主面と対向する第2主面及び該第1主面と該第2主面とに連続する側面を有する誘電体ブロックと、
を備えた無線通信デバイス付き金属物品であって、
前記無線IC素子の前記第1端子は前記ループ状金属導体の前記第1導体部に接続され、前記第2端子は前記第3導体部に接続されており、
前記ループ状金属導体は、前記第1導体部が前記第1主面に配置され、前記第2導体部が前記側面に配置され、前記第3導体部が前記第2主面に配置されるように、前記誘電体ブロックに巻き付けられていること、
を特徴とする無線通信デバイス付き金属物品。
【請求項11】
前記金属物品と前記ループ状金属導体の前記第3導体部とは直接電気的に接続していること、を特徴とする請求項10に記載の無線通信デバイス付き金属物品。
【請求項12】
前記金属物品と前記グランド導体とは容量を介して結合していること、を特徴とする請求項10に記載の無線通信デバイス付き金属物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−252664(P2012−252664A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126854(P2011−126854)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】