説明

無線通信機器および無線通信方法

【課題】 通信速度が速い電波を用いた無線通信を行い、かつ周囲への電波の拡散を軽減させることができる無線通信機器および無線通信方法を提供する。
【解決手段】 医療測定装置10の測定部によって測定された電界強度が所定の閾値未満である場合は、第1の電力を用いたTransferJetにより近距離無線通信装置30と測定情報の授受を行い、医療測定装置10の測定部によって測定された電界強度が所定の閾値以上である場合は、第1の電力より強い電力である第2の電力を用いて無線LANアクセスポイント50を介して近距離無線通信装置30と測定情報の授受を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信機器に係り、特に周囲の電界強度に応じて無線装置から出力される電力を切り替えることができる無線通信機器および無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、医療機関等における測定機器で測定されたデータは、各患者のカルテに記入する。各患者は、カルテを持って複数の測定機器で測定を行う。例えば、特許文献1では、測定機器で測定された生体情報を携帯端末に記憶させ、測定された生体情報を赤外線を用いて携帯端末から所定の機器へ出力する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2002−345763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、赤外線を用いて携帯端末から所定の機器へ通信を行っているため、通信速度が遅くなる。また、状況に応じて電波の拡散を制御することについては考慮されていない。
【0004】
そこで、本発明は、状況に応じて周囲への電波の拡散を抑制させることができる無線通信機器および無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様によれば、無線を用いて無線端末と情報の授受を行う無線通信機器であって、前記情報を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶されている前記情報を、無線を用いて送信する無線部と、電波の電界強度を測定する測定部と、前記測定部によって測定された電界強度が閾値未満である場合は、第1の電力により前記無線部で前記無線端末と前記情報の授受を行い、前記測定部によって測定された電界強度が前記閾値以上である場合は、前記第1の電力より強い電力である第2の電力により前記無線部で前記無線端末と前記情報の授受を行うように制御する制御部と、を備えることを特徴とする無線通信機器が提供される。
【0006】
また、本発明の別の一態様によれば、無線を用いて無線端末と情報の授受を行う無線通信機器で用いられる無線通信方法あって、前記無線通信機器は、前記情報を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶されている情報を無線を用いて送信する無線部と、電波の電界強度を測定する測定部とを備え、前記測定部によって測定された電界強度が閾値未満である場合は、第1の電力により前記無線部で前記無線端末と前記情報の授受を行い、前記測定部によって測定された電界強度が閾値以上である場合は、前記第1の電力より強い電力である第2の電力により前記無線部で前記無線端末と前記情報の授受を行うように制御することを特徴とする無線通信方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、状況に応じて周囲への電波の拡散を抑制させることができる無線通信機器および無線通信方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0009】
まず、図1および図2を参照して、本発明の一実施形態に係る無線通信機器を有する無線通信システムの構成について説明する。
【0010】
図1に示すように、無線通信システムは、無線通信機器である例えば医療測定装置10およびパーソナルコンピュータ(以下、パソコンとも称する)40と、これらの無線通信機器と無線通信を行う近距離無線通信装置(無線端末)30とを有している。近距離無線通信装置30は、例えばカード型の小型装置である。無線通信機器である医療測定装置10およびパーソナルコンピュータ40は、近距離無線通信装置30と無線通信を行う。この無線通信は、例えば、TransferJetやBluetooth(登録商標)、無線LAN等の近距離無線通信を用いる。この場合、近距離無線通信装置30は、必要に応じてバッテリ等を搭載する。
【0011】
無線通信機器である医療測定装置10およびパーソナルコンピュータ40は、それぞれ上述した規格に対応した近距離無線通信部12および近距離無線通信部42を備えている。これらの近距離無線通信部12および近距離無線通信部42は、2つ以上の通信方式に対応しており、例えば、TransferJetおよび無線LANに対応しているものとする。また、近距離無線通信部12および近距離無線通信部42は、必要に応じて内部で2つの規格に対応した2つのユニット(第1の無線部、第2の無線部)に分かれている構成にしてもよい。
【0012】
図2に示すように、無線通信機器である医療測定装置10およびパーソナルコンピュータ40が近距離無線通信装置30と無線通信を行う場合、無線通信を行う電波出力の電力を切り替えることができる。例えば、医療測定装置10は、電波出力の電力が弱い電力(第1の電力、例えば、TransferJet)を用いて近距離無線通信装置30と無線通信を行う(通信範囲α:無線通信の制限の厳しいエリア)。この場合、例えば周囲が医療機器に囲まれており、電波を拡散することが望ましくない。
【0013】
一方、例えば、パーソナルコンピュータ40は、電波出力の電力が第1の電力より強い電力(第2の電力、例えば、無線LAN)を用いて近距離無線通信装置30と無線通信を行う(通信範囲β:無線通信の制限の緩いエリア)。この場合、例えば周囲が医療機器から離れた医者の個室等であり、無線LANのアクセスポイント50等から通常の通信を行う電波を出力しても問題のない場所である。また、上述した電波出力の電力値は、エリア毎の無線通信の制限のレベルに合わせて予め設定する。なお、第1の電力を用いて近距離無線通信装置30と通信を行う場合、医療測定装置10から第2の電力を用いて近距離無線通信装置30と通信を行う場合より、医療測定装置10と近距離無線通信装置30とは短い距離(より近距離)で通信を行うものである。
【0014】
上述した電波出力の電力の強弱の切り替えは、無線通信機器の周囲の電界強度を測定することで行う。無線通信機器の周囲の電界強度を測定する場合、所定の閾値を定め、測定された電界強度が、この閾値より低い場合は、電波を拡散させることを禁止されている区域であると判別し、電波出力の電力が弱い電力(第1の電力)を用いて近距離無線通信装置30と無線通信を行う。一方、測定された電界強度が、この閾値以上である場合は、電波を拡散させることを禁止されていない区域であると判別し、電波出力の電力が第1の電力より強い電力(第2の電力)を用いて近距離無線通信装置30と無線通信を行う。無線通信の制限の緩いエリアでは、高速な通信に切り替えることができる。
【0015】
図3は、医療測定装置10の構成を示したブロック図である。
【0016】
医療測定装置10は、制御部(測定部)11、近距離無線通信部12、記憶部13を備える。制御部11は、電界強度測定用のアンテナ11aを備え、電界強度測定用のアンテナ11aによる周囲の電界強度の測定、無線通信の電波の出力電力の制御等を行う。周囲の電界強度の測定は、ある地点における電波の強さを測定する装置(電界強度測定装置)を用いて行う。一般的には、放送や無線通信のサービスエリア確認、放送受信工事、妨害波測定などにおいて使用される装置である。
【0017】
電界強度の測定は、利得の校正されたアンテナを使用して、アンテナに誘起された電圧を測定用受信機(電界強度計)で測定することにより行なう。測定値は、実効長1mのアンテナに誘起する電圧に換算して、例えば dBμV/m のように表わす。電界強度測定用のアンテナ11aは、周波数ごとに校正されており、実効長1mのアンテナとの利得差が補正係数として示されているので、電界強度計と組み合わせることにより電界強度を求めることができる。アンテナの形状には、ループアンテナ、ダイポールアンテナ、バイコニカルアンテナ、対数周期アンテナなどがあり、測定周波数や使用場所などの条件に応じて選択する。近距離無線通信部12は、例えば、TransferJetやBluetooth、無線LAN等の規格沿った無線通信デバイスである。記憶部13は、医療測定装置10で測定された測定情報(所定の情報)等を記憶する。また必要に応じて、近距離無線通信部12と認証処理を行う場合は、認証情報を記憶する。さらに、タイマーのカウントの閾値(後述:図5参照)等も記憶する。
【0018】
以上のように構成された無線通信システムでは、図4に示すように、近距離無線通信装置30を携帯した患者は、自らが移動して、複数の医療測定装置10〜医療測定装置10−3で測定を行う。例えば、医療測定装置10は血圧計、医療測定装置10−2はCTスキャン、医療測定装置10−3は体重計等である。測定が終わるとそのたびに、測定されたそれぞれの医療測定装置10〜医療測定装置10−3から測定データを例えばTransferJet等の近距離無線通信を用いて近距離無線通信装置30に受信する。医療測定装置10〜医療測定装置10−3は、周囲の電界強度を測定することにより、TransferJet等の比較的弱い電波を用いる近距離無線通信を行うよう設定されているものとする。
【0019】
受信した測定データは、近距離無線通信装置30からパーソナルコンピュータ40にパーソナルコンピュータ40の近距離無線通信部42を介して例えば無線LAN等の近距離無線を用いて転送する。パーソナルコンピュータ40は、周囲の電界強度を測定することにより、無線LAN等の比較的弱い電波よりは強い電波を用いる近距離無線通信を行うよう設定されているものとする。なお、上述した医療測定装置10〜医療測定装置10−3は、必要に応じて、近距離無線通信部12〜近距離無線通信部12−3の周囲に電波拡散防止用のシールドを設けるようにしてもよい。このシールドは、近距離無線通信部12〜近距離無線通信部12−3の内、例えば、図6に示すように、近距離無線通信装置30をかざす(またはタッチする)側面に以外の3面にシールド100を設けるようにする。
【0020】
図5は、上述した無線通信機器である医療測定装置10の処理を示すフローチャートである。なお、上述した無線通信機器であるパーソナルコンピュータ40も同様の処理を行うものである。
【0021】
医療測定装置10は、電界強度測定用のアンテナ11aにより医療測定装置10の周囲の電界強度(電力E)を測定する(ステップS101)。医療測定装置10の周囲の電界強度を測定する場合、医療測定装置10の記憶部13に予め記憶された閾値(例えば、E0)が測定できるような電界強度測定用のアンテナ11aを用いる。ステップS102で、医療測定装置10によって測定された電波強度(電力E)が閾値(E0)以上であった場合は、医療測定装置10の電波の出力電力を強く設定する(図2のβの状態)。すなわち上述した第2の電力とする(ステップS103)。この第2の電力を用いて近距離無線通信装置30と通信を行う(医療測定装置10から近距離無線通信装置30に測定データを送信する)。必要に応じて認証も行ってもよい。
【0022】
一方、ステップS102で、医療測定装置10によって測定された電波強度(電力E)が閾値(E0)未満であった場合は、医療測定装置10の電波の出力電力を弱く設定する(図2のαの状態)。すなわち上述した第1の電力とする(ステップS104)。この第1の電力を用いて近距離無線通信装置30と通信を行う(近距離無線通信装置30からパーソナルコンピュータ40に測定データを送信する)。必要に応じて認証も行ってもよい。なお、第1の電力を用いて近距離無線通信装置30と通信を行う場合、例えばTrensferJetを用いた場合は、機器同士を接触させることにより通信を行う。この場合、第1の電力を用いているので、伝送速度を例えば10Mbps程度に落として通信を行う。これにより、通信中のデータのエラーを軽減させることができる。
【0023】
パーソナルコンピュータ40は、例えば医療測定装置10とは離れた別室に置かれている医師のコンピュータである。近距離無線通信装置30からパーソナルコンピュータ40に測定データを送信して、例えば、患者の診断を行う。なお、第2の電力を用いて近距離無線通信装置30と通信を行う場合、例えば無線LANを用いた場合は、第2の電力を用いているので、伝送速度を例えば400Mbps程度に上げて通信を行う。
【0024】
次に医療測定装置10は、内蔵しているタイマーのカウントを+1とする(ステップS105)。このタイマーをカウントするカウンターは、一定時間に例えば+1を行うものであり、送信電力の制御時間に一定の周期を持たせることができる。タイマーのカウントが予め設定された閾値(例えば、CountMax)となった場合は(ステップS106のYES)。タイマーをリセットする(ステップS107)。そして医療測定装置10は、医療測定装置10の電界強度の測定の終了の指示があった場合は(ステップS108のYES)、終了する。
【0025】
なお、上述した第1の電力による無線通信は、例えば、TransferJetを用いるが、これに限定されることはなく、例えば、ICタグ等の電界誘導を用いて近距離無線通信を行う方式であればよい。
【0026】
上述した実施形態によれば、医療機関等で、医療測定装置で測定された測定データを容易に集計することができ、かつ、医療機関等の無線通信の制限の厳しいエリアを検出して自動的に電波の出力電力を切り替え、電界誘導を用いて近距離無線通信を行う方式による通信を行うことにより、電波の拡散を防止しながら、無線による高速な通信を行うことができる。
【0027】
また、本発明は、上述した実施形態そのままに限定されるものではない。本発明は、実施段階では、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変更して具現化できる。
【0028】
さらに、上述した実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜に組み合わせることで、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る無線通信システムの構成の概念を示す図。
【図2】同実施形態に係る無線通信システムの電波の出力範囲の概念を示す図。
【図3】同実施形態に係る医療測定装置の主要な構成を示すブロック図。
【図4】同実施形態に係る無線通信システムの処理の概念を示す図。
【図5】同実施形態に係る無線通信装置を適用した無線通信方法の処理について説明するためのフローチャート。
【図6】同実施形態に係る医療測定装置が備えるシールドを模式的に示した図。
【符号の説明】
【0030】
10…医療測定装置、12、12−1、12−2、42…近距離無線通信部、11…制御部、13…記憶部、30…近距離無線通信装置、40…パーソナルコンピュータ、50…無線LANアクセスポイント、100…シールド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線を用いて無線端末と情報の授受を行う無線通信機器であって、
前記情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されている前記情報を、無線を用いて送信する無線部と、
電波の電界強度を測定する測定部と、
前記測定部によって測定された電界強度が閾値未満である場合は、第1の電力により前記無線部で前記無線端末と前記情報の授受を行い、前記測定部によって測定された電界強度が前記閾値以上である場合は、前記第1の電力より強い電力である第2の電力により前記無線部で前記無線端末と前記情報の授受を行うように制御する制御部と、を備えることを特徴とする無線通信機器。
【請求項2】
前記無線部で前記第1の電力により前記無線端末と通信を行う場合、前記無線部で前記第2の電力により前記無線端末と通信を行う場合より、前記無線部と前記無線端末とは短い距離で通信を行うことを特徴とする請求項1に記載の無線通信機器。
【請求項3】
前記無線部からの電波の拡散を防止するシールド部をさらに備えていることを特徴とする請求項2記載の無線通信機器。
【請求項4】
前記無線部で前記第1の電力により前記無線端末と通信を行う場合、前記無線部で前記第2の電力により前記無線端末と通信を行う場合より、前記無線部と前記無線端末との伝送速度を落として通信を行うことを特徴とする請求項1に記載の無線通信機器。
【請求項5】
前記無線部は、第1の無線部と第2の無線部とを備えており、前記第1の無線部は前記第1の電力を用い、前記第2の無線部は前記第2の電力を用いて前記無線端末と前記情報の授受を行うことを特徴とする請求項1に記載の無線通信機器。
【請求項6】
無線を用いて無線端末と情報の授受を行う無線通信機器で用いられる無線通信方法あって、
前記無線通信機器は、前記情報を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶されている情報を無線を用いて送信する無線部と、電波の電界強度を測定する測定部とを備え、
前記測定部によって測定された電界強度が閾値未満である場合は、第1の電力により前記無線部で前記無線端末と前記情報の授受を行い、前記測定部によって測定された電界強度が閾値以上である場合は、前記第1の電力より強い電力である第2の電力により前記無線部で前記無線端末と前記情報の授受を行うように制御することを特徴とする無線通信方法。
【請求項7】
前記無線部で前記第1の電力により前記無線端末と通信を行う場合、前記無線部で前記第2の電力により前記無線端末と通信を行う場合より、前記無線部と前記無線端末とは短い距離で通信を行うことを特徴とする請求項6に記載の無線通信方法。
【請求項8】
前記無線部で前記第1の電力により前記無線端末と通信を行う場合、前記無線部で前記第2の電力により前記無線端末と通信を行う場合より、前記無線部と前記無線端末との伝送速度を落として通信を行うことを特徴とする請求項6に記載の無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−41223(P2010−41223A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199907(P2008−199907)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】