無線通信機器
【課題】PHS端末などの無線通信機器を利用したデータ通信の利便性を向上する。
【解決手段】無線通信機器3は、他の電子機器用のデータと、またはメール受信若しくは着信と、のいずれかの受信を行う無線通信部11と、他の電子機器と接続可能な接続部16を介してデータを送出する送出部と、無線通信部11にて受信したデータを、当該データを送出部で送出するまでの間、一時的に格納するバッファ部24と、鳴動部99と、無線通信部11にて着信若しくはメール受信の通知受信が生じても、少なくともバッファ部24にデータが存在する場合には、鳴動部99に鳴動させないよう規制する制御部21とを備える。
【解決手段】無線通信機器3は、他の電子機器用のデータと、またはメール受信若しくは着信と、のいずれかの受信を行う無線通信部11と、他の電子機器と接続可能な接続部16を介してデータを送出する送出部と、無線通信部11にて受信したデータを、当該データを送出部で送出するまでの間、一時的に格納するバッファ部24と、鳴動部99と、無線通信部11にて着信若しくはメール受信の通知受信が生じても、少なくともバッファ部24にデータが存在する場合には、鳴動部99に鳴動させないよう規制する制御部21とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モデム通信可能な無線通信機器に関する。
【背景技術】
【0002】
PHS端末は、パーソナルコンピュータ装置などの電子機器を接続し、データ通信することができる。
たとえば特許文献1は、近距離通信機能を備えるPHS端末を開示する。電子機器は、近距離通信機能によりPHS端末と接続し、PHS端末を通じてデータ通信することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−197567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、PHS端末は、通話時とデータ通信時とで異なる通信方式を採用するため、通話用の通信方式とデータ通信用の通信方式との両方を同時に実行することができない。PHS端末は、いずれか一方の通信方式を選択して通信を実行する。
このため、PHS端末では、通話用の通信方式およびデータ通信用の通信方式のいずれか一方を優先的に選択するための設定が可能になっている。PHS端末では、たとえばデータ通信用の通信方式よりも通話用の通信方式を優先する設定が可能である。
そして、通話用の通信方式を優先する設定がなされている場合、データ通信中にPHS端末に着信があると、PHS端末は、データ通信を中断して着信用の通信に切り替える。
その結果、パーソナルコンピュータ装置などの電子機器は、データ通信中にPHS端末に着信があると、その着信によりデータ通信が中断されてしまうので、送信または受信しようとした通信データを適切に送信または受信することができない。
【0005】
このようにPHS端末などの無線通信機器では、当該機器を利用してデータ通信をする場合の利便性を向上することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点の無線通信機器は、他の電子機器用のデータと、またはメール受信若しくは着信と、のいずれかの受信を行う無線通信部と、他の電子機器と接続可能な接続部を介してデータを送出する送出部と、前記無線通信部にて受信したデータを、当該データを前記送出部で送出するまでの間、一時的に格納するバッファ部と、鳴動部と、前記無線通信部にて着信若しくはメール受信の通知受信が生じても、少なくとも前記バッファ部にデータが存在する場合には、前記鳴動部に鳴動させないよう規制する制御部とを備える。
【0007】
好適には、所定時間を計測するタイマ部を備え、前記制御部は、前記接続部によって前記他の電子機器に送出されることにより前記バッファ部から前記データが無くなってから所定時間の間に、前記無線通信部にて着信あるいはメール受信が生じた場合、前記鳴動部に鳴動させないよう規制し、前記バッファ部から前記データが無くなってから所定時間経過した後に、前記無線通信部にて着信あるいはメール受信が生じた場合、前記鳴動部に鳴動させてもよい。
【0008】
好適には、前記タイマ部は、前記無線通信部と通信を行う基地局が、第1基地局から当該第1基地局とは異なる第2基地局へと切り替えられる場合、前記所定時間を延長してもよい。
【0009】
好適には、前記タイマ部は、前記無線通信部が、通信を行う基地局によってインアクティブ状態に制御された場合、前記所定時間をインアクティブ状態に制御された時間分延長してもよい。
【0010】
好適には、前記タイマ部は、前記データの種類が、所定周期で基地局から送られているデータの一部である場合、前記所定時間を前記所定周期より長くしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、無線通信機器を利用したデータ通信の利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るPHS端末を有する通信システムの概略構成図である。
【図2】図2は、図1のサーバ装置とPC装置との間での通信処理の一例を示すシーケンスチャートである。
【図3】図3は、図1のPHS端末の外観図である。
【図4】図4は、図3のPHS端末のハードウェア構成図である。
【図5】図5は、図4の無線通信部の動作状態の説明図である。
【図6】図6は、PHS端末の音声通話またはデータ通信機能のブロック図である。
【図7】図7は、データ通信中の通信切り替え動作のフローチャートである。
【図8】図8は、タイマにより無通信期間が計測された場合の通信制御部の処理のフローチャートである。
【図9】図9は、PC装置がサーバ装置から周期的に通信データを受信する場合での無通信期間の説明図である。
【図10】図10は、タイマによる無通信期間の計測中に無線通信部がインアクティブ状態に制御された場合での無通信期間の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に関連付けて説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る通信システム1の概略構成図である。
図1の通信システム1は、パーソナルコンピュータ装置(PC、以下PC装置という。)2、PHS端末(PS)3、基地局(CS)4、通信網5、サーバ装置(SVR)6を有する。
図1の通信システム1において、PHS端末3は、PC装置2のモデムとして機能する。
【0015】
サーバ装置6は、たとえばウェブサーバ、ニュースサーバなどとして機能する。
サーバ装置6は、ウェブページデータ、定期配信ニュースのデータなどを記憶する。
そして、サーバ装置6は、通信網5を介してたとえば図1のPC装置2などの通信端末から、リクエストを受信する。
リクエストを受信したサーバ装置6は、その要求に係るデータを、通信網5を介して要求元の通信端末へ送信する。
【0016】
PC装置2は、ウェブクライアントなどとして機能する。
PC装置2は、図1のサーバ装置6からウェブページデータ、定期配信ニュースのデータなどの通信データを受信し、図示外の表示部13に表示する。
なお、PC装置2は、図1のサーバ装置6から音声データを受信した場合、図示外のスピーカから音声を出力してもよい。
【0017】
図2は、サーバ装置6とPC装置2との間での通信処理の一例を示すシーケンスチャートである。
図2では、PC装置2は、所定のHTML更新期間毎に、サーバ装置6へ定期配信ニュースのリクエストを送信する(ステップST1、ST3)。
そして、サーバ装置6は、各リクエストを受信すると、各リクエスト受信時点での最新のニュースの通信データを、PC装置2へ送信する(ステップST2、ST4)。
ニュースの通信データを受信したPC装置2は、図示外の表示部13に、当該ニュースの内容を表示する。
【0018】
図1の基地局4は、PHS端末3と無線通信する通信機器である。
複数の基地局4は、PHS端末3のサービス地域内の複数のゾーンに分散して設置される。
そして、基地局4は、ゾーン内の複数のPHS端末3と無線通信し、通信データを送受する。
【0019】
基地局4は、TDMA/TDD方式による複数のスロットを用いて、PHS端末3と通信する。
通話の場合、基地局4は、「CDMA2000 1x」の通信方式によりPHS端末3と通信する。
データ通信の場合、基地局4は、「CDMA2000 1x EV DO」の通信方式によりPHS端末3と通信する。
基地局4は、通話の場合とデータ通信の場合とで異なる通信方式によりPHS端末3と通信する。
【0020】
また、基地局4は、ゾーン内に収容した複数のPHS端末3の通信状態を個別に制御する。
たとえば、基地局4は、データ通信中に一定の無通信期間が発生したPHS端末3に対して制御信号を送信し、当該PHS端末3をインアクティブ状態M4に制御する。
これにより、当該PHS端末3に割り当てられていたスロットが開放される。基地局4は、当該開放したスロットを用いて、他のPHS端末3と通信可能になる。
【0021】
また、基地局4は、たとえばゾーン内に移動してきた新たなPHS端末3から接続要求があった場合には、当該PHS端末3にスロットを割り当てる。
これにより、基地局4とPHS端末3とは通信可能になる。このハンドオーバ処理により、PHS端末3は、PHS端末3のサービス地域内を移動しながら、通信先を複数の基地局4の間で切り替えて通話またはデータ通信が可能になる。
【0022】
通信網5は、たとえばPHS端末3の通信網5、インターネットなどの通信網5である。
通信網5には、基地局4と、サーバ装置6とが接続される。
通信網5は、基地局4とサーバ装置6との間で送受する通信データを伝送する。
これにより、サーバ装置6とPC装置2との間で通信データの送受が可能になる。
【0023】
図3は、図1のPHS端末3の外観図である。
図3のPHS端末3は、上部筐体101、下部筐体102およびヒンジ部103を有する。
上部筐体101および下部筐体102は、略同一サイズの長方形形状を有する。
上部筐体101と下部筐体102とは、ヒンジ部103により開閉可能に連結される。
図3は、上部筐体101と下部筐体102とを開いた状態である。
上部筐体101には、表示部13が設けられる。
下部筐体102には、操作部12の複数の入力キーが設けられる。
【0024】
図4は、図3のPHS端末3のハードウェア構成図である。
PHS端末3は、たとえば無線通信部(RF)11、操作部(KEY)12、表示部(DISP)13、タイマ(RTC)15、音声モデム部(MODEM)15、USBポート(USB)16、CPU(Central Processing Unit)17、記憶部(MEM)18、およびこれらを接続するシステムバス19を有する。
【0025】
無線通信部11は、基地局4との通信チャネルを確立し、基地局4と通信データを送受する。
そして、無線通信部11は、CPU17からの入力信号に含まれる通信データを基地局4へ無線送信する。
また、無線通信部11は、基地局4から受信した通信データを含む信号をCPU17へ出力する。
これにより、無線通信部11は、たとえばCPU17から入力されたウェブページのリクエストを送信する。
また、無線通信部11は、要求したウェブページのデータを基地局4から受信し、CPU17へ出力する。
【0026】
図5は、図4の無線通信部11の動作状態の説明図である。
無線通信部11は、「CDMA2000 1x」の通信方式により基地局4と通信する音声通話モードと、「CDMA2000 1x EV DO」の通信方式により基地局4と通信するデータ通信モードとがある。
【0027】
そして、音声通話モードにおいて無線通信部11の動作状態は、通話中状態M1と、待ち受け状態M2との間で切り替わる。
通話中状態M1とは、通話用の通信データを基地局4と送受している状態をいう。
待ち受け状態M2とは、通話用の通信データを基地局4と送受していない無通信状態をいう。
【0028】
また、データ通信モードにおいて無線通信部11の動作状態は、データ通信中状態M3と、インアクティブ状態M4と、ドーマント状態(休止状態)M5との間で切り替わる。
データ通信中状態M3とは、データ通信用の通信データを基地局4と送受している状態をいう。
インアクティブ状態M4とは、データ通信用の通信データを基地局4と送受してない無通信状態をいい、基地局4によりインアクティブ制御された状態をいう。
ドーマント状態M5とは、データ通信用の通信データを基地局4と送受してない無通信状態をいい、インアクティブ状態M4において所定の時間が経過することにより無線通信部11が自ら休止した状態をいう。
【0029】
また、無線通信部11は、たとえば送信する通信データが発生したり、基地局4から通信データを受信する場合、通信データの種類に応じて音声通話モードおよびデータ通信モードの一方の通信モードを選択する。
無線通信部11は、選択した通信モードにより基地局4と通信データを送受する。
【0030】
図4の表示部13は、たとえばIPS(In Plane Switching)液晶デバイス、LCD(Liquid Crystal Display Device)、有機EL(Electro-Luminescence)デバイスなどを有する。
表示部13は、図3に示すように、PHS端末3の上部筐体101の前面に配置される。
そして、表示部13は、CPU17から入力された表示信号に含まれる表示データを表示する。
これにより、表示部13は、たとえばサーバ装置6から受信したウェブページなどを表示する。
【0031】
操作部12は、複数の入力キーを有する。
複数の入力キーには、たとえばテンキー、電源キー、通話キー、文字キーなどがある。
入力キーは、図3に示すように、PHS端末3の下部筐体102の前面に配置される。
そして、操作部12は、ユーザにより操作された入力キーに対応する入力データを含む操作信号をCPU17へ出力する。
これにより、操作部12は、表示部13に表示されたウェブページのリンクを指定する。
【0032】
タイマ14は、時刻、経過時間などを計測する。
そして、タイマ14は、CPU17により目標経過時間が設定される。CPU17は、目標経過時間の設定信号をタイマ14へ出力する。なお、この目標経過時間は、タイマ14に設定後に変更(更新)可能である。
設定された目標経過時間を計測すると、タイマ14は、CPU17へ割込信号を出力する。
【0033】
音声モデム部15は、スピーカ20およびマイクロホン21に接続される。
そして、音声モデム部15は、マイクロホン21に入力された音声をサンプリングし、音声データを含む信号をCPU17へ出力する。
また、音声モデム部15は、CPU17からの入力信号に含まれる音声データによりスピーカ20を駆動する。
これにより、スピーカ20から、たとえばサーバ装置6から受信した音声データの音声などが再生される。
また、音声モデム部15は、鳴動部99と接続されている。鳴動部99は、メール受信や着信がある場合、受信があった旨を鳴動により報知する。
【0034】
USBポート16は、USB規格に準拠した通信方式により通信する。
USBポート16は、USBケーブルにより、図1のPC装置2に接続される。
USBポート16は、PC装置2が接続されると、これを検出し、接続処理を実行する。これにより、USBポート16はPC装置2と通信データの送受が可能な状態になる。
たとえばPC装置2は、ウェブページのリクエストを含む信号をUSBポート16へ出力する。また、USBポート16は、ウェブページのデータを含む信号をPC装置2へ出力する。
PC装置2が切り離されると、USBポート16は、これを検出し、PC装置2との通信を終了する。
【0035】
記憶部18は、たとえばROM、RAM、フラッシュメモリ、EEPROMなどを有する。
記憶部18は、PHS端末3で使用する各種のデータおよびプログラムを記憶する。
記憶部18は、各種のデータとして、たとえばPC装置2から受信したウェブページのリクエスト、サーバ装置6から受信したウェブページのデータなど記憶する。
記憶部18に記憶されるプログラムは、たとえばCD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)などのコンピュータ読み取り可能な記録媒体からインストールしたものでも、インターネットなどの伝送媒体によりダウンロードしてインストールしたものでもよい。
【0036】
CPU17は、プログラムを実行するコンピュータである。
そして、CPU17が、記憶部18に記憶されるプログラムを読み込んで実行することにより、PHS端末3の制御部が実現される。
制御部は、PHS端末3の動作を制御する。
【0037】
図6は、音声通話またはデータ通信のためにPHS端末3に実現される機能を模式的に示すブロック図である。
CPU17には、通信制御部21が実現される。
また、図6には、優先モードデータ22と、切替可否データ23と、中継バッファ24とが図示されている。優先モードデータ22および中継バッファ24は、たとえば記憶部18に実現される。
【0038】
優先モードデータ22は、音声通話モードおよびデータ通信モードのうちのどちらの通信モードを優先的に実行するかを示す設定値を有する。
優先モードデータ22の設定値は、たとえば操作部12の操作により更新することができる。
たとえば音声通話モードが優先設定されている場合、PHS端末3は、データ通信中に着信などの音声通話開始イベントが発生すると、データ通信を中断し、音声通話を開始する。
具体的には、PHS端末3は、無線通信部11の通信モードを「CDMA2000 1x EV DO」から「CDMA2000 1x」に切り替える。
また、データ通信モードが優先設定されている場合、PHS端末3は、データ通信中に着信などの音声通話開始イベントが発生しても、データ通信を継続する。この場合、着信先は、PHS端末3のキャリアが準備した留守番録音サービスに接続される。
これにより、PHS端末3は、優先モードデータ22の設定に基づいて、自端末内のたとえば図示外のブラウザ機能によりデータ通信をしている場合に、データ通信を継続するか、または着信を優先するかを設定することができる。
【0039】
切替可否データ23は、データ通信モードを実行中に音声通話モードへの切り替えを許可または禁止する値を有する。
切替可否データ23の値は、通信制御部21のみにより更新可能である。
たとえばデータ通信モードにおいて実際にデータ通信を実行している場合、通信制御部21は、切替可否データ23を、音声通話モードへの切り替えを禁止に更新する。
また、データ通信モードにおいて実際にデータ通信を実行していない場合、通信制御部21は、切替可否データ23を、音声通話モードへの切り替えを許可に更新する。
【0040】
中継バッファ24は、PC装置2によるデータ通信時に、PC装置2とPHS端末3との間で送受する通信データを一時的に保持する。
たとえばUSBポート16は、PC装置2から受信したウェブページのリクエストなどの通信データを中継バッファ24に書き込む。無線通信部11は、この中継バッファ24に書き込まれた通信データを基地局4へ送信する。
また、サーバ装置6からPC装置2宛てに送信されたウェブページのデータなどの通信データは、無線通信部11により受信された後、中継バッファ24に書き込まれる。USBポート16は、中継バッファ24から通信データを読み込み、PC装置2へ送信する。
【0041】
通信制御部21は、PHS端末3の通信を制御する。
通信制御部21は、PHS端末3の通信制御のために、優先モードデータ22、タイマ14の計測時間などを読み込む。
また、通信制御部21は、必要に応じて通信データの流量を監視する。
【0042】
[優先モードデータ22に基づく、音声通話中の通信切り替え動作]
以下、優先モードデータ22に基づく基本的な通信制御を説明する。
無通信状態において無線通信部11が音声通話用の通信データを受信したり、無線通信部11が着信呼び出しを受信したり、または、操作部12において通話開始操作がなされたりすると、通信制御部21は、音声通話制御を開始する。
音声通話制御では、通信制御部21は、無線通信部11が基地局4から受信した音声通話用の通信データを音声モデム部15へ出力する。音声モデム部15は、通信データに基づいてスピーカ20を駆動する。
また、通信制御部21は、音声モデム部15がマイクロホン21の信号をサンプリングして生成した音声データを、無線通信部11へ出力する。無線通信部11は、当該音声データを基地局4へ送信する。
以上の音声通話制御により、PHS端末3は、他のPHS端末3などと音声による通話をする。
【0043】
音声通話制御中に、たとえばUSBポート16が中継バッファ24に通信データを書き込むと、通信制御部21は、優先モードデータ22を読み込む。
そして、優先モードデータ22に音声通話モードが優先設定されている場合、通信制御部21は、音声通話を継続する。これにより、PHS端末3は、そのブラウザ機能によりデータ通信中に着信があった場合、優先モードデータ22の設定に基づいて通話に切り替えることができる。
これに対して、優先モードデータ22にデータ通信モードが優先設定されている場合、通信制御部21は、音声通話を終了し、データ通信制御を開始する。通信制御部21は、無線通信部11の通信方式を切り替えた後、中継バッファ24から通信データを読み込み、無線通信部11へ出力する。無線通信部11は、通信データを基地局4へ送信する。
【0044】
[優先モードデータ22に基づく、データ通信中の通信切り替え動作]
無通信状態において無線通信部11がデータ通信用の通信データを受信したり、無線通信部11がデータ通信の呼び出しを受信したり、中継バッファ24に新たなデータ通信用の通信データが書き込まれたりすると、通信制御部21は、データ通信制御を開始する。
データ通信制御では、通信制御部21は、USBポート16が中継バッファ24にPC装置2のリクエストなどの通信データを書き込むと、この通信データを読み込み、無線通信部11へ出力する。無線通信部11は、当該音声データを基地局4へ送信する。これにより、PC装置2がサーバ装置6へ送信するリクエストなどがPHS端末3から送信される。
また、通信制御部21は、無線通信部11が基地局4から受信したデータ通信用の通信データを中継バッファ24へ書き込む。USBポート16は、中継バッファ24から通信データを読み込み、接続中のPC装置2へ送信する。これにより、PC装置2は、サーバ装置6から受信したウェブページを表示する。
【0045】
データ通信制御中に、たとえば無線通信部11が着信呼び出しを受信すると、通信制御部21は、優先モードデータ22を読み込む。
そして、優先モードデータ22にデータ通信モードが優先設定されている場合、通信制御部21は、データ通信を継続する。
これに対して、優先モードデータ22に音声通話モードが優先設定されている場合、通信制御部21は、データ通信を終了し、音声通話制御を開始する。通信制御部21は、無線通信部11の通信方式を切り替えた後、音声モデム部15から入力される音声の通信データを無線通信部11へ出力する。無線通信部11は、通信データを基地局4へ送信する。
【0046】
次に、データ通信中に着信呼び出しなどが生じた場合のPHS端末3の動作を詳しく説明する。
[データ通信中の実際の通信切り替え動作]
図7は、データ通信中の実際の通信切り替え動作のフローチャートである。
データ通信中の通信切り替え動作は、実際には、優先モードデータ22に加えて、データ通信中の通信状態に応じて実行される。
【0047】
図7では、通信制御部21は、まず、データ通信を開始する(ステップST11)。
通信制御部21は、たとえば無通信状態において無線通信部11がデータ通信用の通信データを受信するとデータ通信制御を開始する。
この他にも、通信制御部21は、無線通信部11がデータ通信の呼び出しを受信したり、中継バッファ24に新たなデータ通信用の通信データが書き込まれたりすると、データ通信制御を開始する。
次に、通信制御部21は、データ通信用の接続が確立したか否かを判断する(ステップST12)。たとえば無線通信部11がデータ通信のために基地局4と通信可能な状態になると、通信制御部21は、データ通信用の接続が確立したと判断する。
次に、通信制御部21は、PC装置2によるデータ通信であるか否かを判断する(ステップST13)。たとえばUSBポート16がPC装置2を検出した状態である場合、通信制御部21は、PC装置2によるデータ通信であると判断する。
そして、PC装置2によるデータ通信でない場合、通信制御部21は、データ通信中(データ通信モード)であるか否かを判断する(ステップST14)。データ通信中(データ通信モード)でない場合、通信制御部21は、データ通信を終了する。そして、通話着信があった場合には、鳴動部99によって着信を鳴動させる。
【0048】
データ通信中(データ通信モード)である場合、通信制御部21は、中継バッファ24が空であるか否かを判断する(ステップST15)。
たとえば中継バッファ24に無線通信部11により送信されていない未処理の通信データが残っていない場合、通信制御部21は、中継バッファ24が空であると判断する。
この他にも例えば、中継バッファ24にUSBポート16により読み出されていない未処理の通信データが残ってない場合、通信制御部21は、中継バッファ24が空であると判断する。
中継バッファ24が空でない場合、通信制御部21は、タイマ14を起動し、無通信期間を計測させる(ステップST16)。
具体的には、通信制御部21は、無通信期間をタイマ14に設定する。これにより、タイマ14は、無通信期間の計測を開始する。
【0049】
タイマ14を起動した後、通信制御部21は、再び、データ通信中(データ通信モード)であるか否かを判断する。また、通信制御部21は、中継バッファ24が空であるか否かを判断する。
そして、中継バッファ24が空でない場合、通信制御部21は、タイマ14を停止し、データ通信中の通話着信を禁止する(ステップST17)。通話着信の禁止とは、具体的には、通信制御部21は、通話着信を受信したとしても、鳴動部99による鳴動での着信報知を行わせない。通信制御部21は、データ通信中の通話着信を禁止する切替可否データ23を記憶部18に保存する(ステップST18)。
以上のように、通信制御部21は、PC装置2によるデータ通信の場合には、中継バッファ24の未処理データの有無に応じてタイマ14による無通信期間の計測の開始および中断を制御する。
【0050】
図8は、タイマ14により無通信期間が計測された場合の通信制御部21のフローチャートである。
タイマ14が無通信期間を計測し、CPU17に割込信号を出力すると、通信制御部21は、データ通信中の通話着信を許可する(ステップST21)。たとえば通信制御部21は、データ通信中の通話着信を許可する切替可否データ23を記憶部18に保存する。
【0051】
そして、実際にPC装置2によるデータ通信中に通話着信が発生すると、通信制御部21は、優先モードデータ22に音声通話モードが優先設定されている場合に、記憶部18から切替可否データ23を読み込む。
切替可否データ23が、データ通信中の通話着信を禁止する値である場合、通信制御部21は、データ通信を継続する。
切替可否データ23が、データ通信中の通話着信を許可する値である場合、通信制御部21は、データ通信を終了し、音声通話制御を開始する。
【0052】
次に、タイマ14に計測させる無通信期間について説明する。
図9は、PC装置2がサーバ装置6から周期的に通信データを受信する場合での無通信期間の説明図である。定期配信ニュースのデータなどを受信する場合、PC装置2はサーバ装置6から周期的に通信データを受信する。
図9(A)は、周期的に繰り返し受信される通信データを示す。
図9(B)は、無通信期間の初期値による動作の説明図である。
図9(C)は、周期的な通信データに対応した無通信期間による動作の説明図である。
たとえば無通信期間の初期値が30秒であり、データ通信用の通信データの受信間隔が60秒であるとする。
この場合、図9(B)および(A)に示すように、先のデータ通信用の通信データの受信(中継処理)を完了してから次のデータ通信用の通信データの受信(中継処理)を開始するまでの間に、タイマ14は、初期値による無通信期間を計測する。
また、通信制御部21は、切替可否データ23を、データ通信中の通話着信を許可する値に更新する。
よって、この間に通話着信が発生すると、通信制御部21は、次のデータ通信用の通信データを受信する前に、着信通話を開始してしまう。その結果、周期的な通信データを受信していたPC装置2は、新しい通信データを受信することができなくなってしまう。
【0053】
そこで、本実施形態では、通信制御部21は、タイマ14に無通信期間を設定する場合に、データ通信に係る通信データの種類または内容に応じて、無通信期間の初期値に、オフセット値を加算し、加算後の値をタイマ14に設定する。
たとえば先の例の場合、通信制御部21は、オフセット値として30秒を加算する。
これにより、タイマ14は、図9(C)に示すように、先のデータ通信用の通信データの受信を完了してから次のデータ通信用の通信データの受信を開始するまでの間に、無通信期間を計測しなくなる。
この場合、通信制御部21は、初期値にオフセット値を加算した無通信期間がタイマ14により計測された場合に、切替可否データ23を、データ通信中の通話着信を許可する値に更新する。
【0054】
図10は、タイマ14により無通信期間の計測中に無線通信部11がインアクティブ状態M4に制御された場合での無通信期間の説明図である。
図10(A)は、初期値または初期値にオフセット値を加算した無通信期間の説明図である。図10(A)では、タイマ14の無通信期間の計測期間において、無線通信部11は、3回インアクティブ状態M4に制御されている。
この場合、通信制御部21は、タイマ14に計測させている無通信期間に対して、インアクティブ状態M4の合計期間を加算し、タイマ14に計測させる。
具体的にはたとえば、通信制御部21は、タイマ14により当初の無通信期間を計測させた後、その割込みに応じてインアクティブ状態M4の合計期間をタイマ14に計測させる。
そして、この2回目の計測によるタイマ14割込みに基づいて、通信制御部21は、切替可否データ23を、データ通信中の通話着信を許可する値に更新する。
【0055】
さらに、これらの期間において基地局4の切り替えが発生した場合、通信制御部21は、タイマ14に計測させている無通信期間に対して、基地局4の切り替え期間の合計期間を加算し、タイマ14に計測させる。
具体的にはたとえば、通信制御部21は、タイマ14により当初の無通信期間を計測させた後、その割込みに応じてインアクティブ状態M4の合計期間および基地局4の切り替え期間の合計期間をタイマ14に計測させる。
そして、この2回目の計測によるタイマ14割込みに基づいて、通信制御部21は、切替可否データ23を、データ通信中の通話着信を許可する値に更新する。
【0056】
なお、通信チャネル切替やハンドオーバ処理に要する時間は、無線品質に依存し、無線エラーが多いほど時間がかかる。これらの時間は、通常、数十ミリ秒から15秒程度の範囲である。
たとえば通信チャネル切替開始から終了までに要した時間が500ミリ秒である場合、オフセット値にはたとえば1秒を設定すればよい。
また、ハンドオーバ処理に要した時間が5秒と500ミリ秒である場合には、オフセット値にはたとえば6秒を設定すればよい。
これにより、タイマ14により計測する経過期間が固定値である場合のデメリットを回避できる。
【0057】
以上のように、本実施形態では、記憶部18は、データ通信と通話との間で優先する通信方式を指定する優先モードデータ22を記憶する。
そして、通信制御部21は、中継バッファ24に未処理のデータ通信用の通信データが記憶されている期間、およびその後の無通信期間においては、通信方式を、データ通信用の通信方式から、通話用の通信方式へ切り替えない。
通信制御部21は、優先モードデータ22に通話が優先に設定され且つ通話着信があったとしても、通信方式を、データ通信用の通信方式から、通話用の通信方式へ切り替えない。
すなわち、本実施形態では、USBポート16および無線通信部11を用いたPC装置2用のデータ通信中には、通信方式を、通話用の通信方式へ切り替えない。
よって、本実施形態では、USBポート16に接続されたPC装置2は、データ通信が中断されなくなり、データ通信により送信または受信しようとした通信データを適切に送信または受信できる。
【0058】
また、本実施形態では、たとえばPC装置2のモデムとして使用したデータ通信の実行中には音声着信を無効化する。
これにより本実施形態では、PC装置2によるファイルのダウンロードやメールの送受信の実行中に音声着信が発生したとしても、その実行中の処理が中断されることがない。
【0059】
また、本実施形態では、PC装置2のモデムとしてPHS端末3を利用する場合に、PHS端末3の優先モードデータ22の設定を変更する必要がない。
よって、ユーザにとっては、通信モデムとしてPHS端末3を利用する度に、PHS端末3の優先モードデータ22の設定を変更する煩わしさがない。
【0060】
また、本実施形態では、中継バッファ24において未処理の通信データが無くなった後に、さらに中継バッファ24に新たなPC装置2の通信データが格納された場合には、通信制御部21は、データ通信用の通信方式から通話用の通信方式への切り替えを再び禁止する。
よって、本実施形態では、PC装置2によるデータ通信の実行中には通話への切り替えができなくなる。
データ通信部に接続されたPC装置2は、新たな通信データについてのデータ通信の実行中においてもデータ通信が中断されなくなり、送信または受信しようとした通信データを適切に送受できる。
【0061】
また、本実施形態では、通信制御部21は、タイマ14により計測させる無通信期間を固定的にするのではなく、可変にしている。
具体的には、本実施形態の通信制御部21は、タイマ14により初期値の無通信期間を計測中に、中継バッファ24に対してPC装置2の通信データが周期的に格納される場合、無通信期間を延長して、当該通信データの周期以上の期間をタイマ14により計測させる。
このタイマ14の計測期間の可変制御により、PHS端末3は、基地局4との間で実際にデータ通信可能な期間として、PC装置2のデータ通信に応じた適切な切り替え待ち期間を計測する。PC装置2は、たとえば周期的にニュースデータを配信するサーバ装置6から、そのニュースデータを中断されることなく受信することできる。
しかも、このPC装置2のデータ通信に応じた可変制御に加えて、本実施形態の通信制御部21は、たとえばタイマ14により経過時間を計測中に無線通信部11がインアクティブ状態M4に制御された場合には、その期間により計測期間を延長する。
また、本実施形態の通信制御部21は、タイマ14により経過時間を計測中に基地局4の切り替えが発生した場合には、その切り替えに必要な時間により計測期間を延長する。
よって、本実施形態では、無通信期間中に、インアクティブ状態M4に制御され、または基地局4のハンドオーバ制御が実行されたとしても、周期的に通信される通信データを実際に通信可能な有効期間として、当該通信データの周期に相当する有効期間を確保できる。
【0062】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0063】
たとえば上記実施形態では、無線通信部11は、データ通信用の通信方式と、通話用の通信方式との2つの通信方式の間で通信方式を切り替えている。
この他にも例えば、無線通信部11は、3つ以上の通信方式の間で通信方式を切り替えてもよい。この場合、通信制御部21は、データ通信中には、データ通信用の通信方式以外の残りの通信方式への切り替えを禁止すればよい。
【0064】
上記実施形態では、PHS端末3は、USBポート16に接続されたPC装置2のモデムとして機能している。
この他にも例えば、PHS端末3は、短距離通信部などを有し、この短距離通信部と通信するPC装置2のモデムとして機能してもよい。
【0065】
上記実施形態は、PHS端末3に本発明を適用した例である。
この他にも例えば、本発明は、2以上の通信方式を切り替え可能な携帯電話機、通信モデム機器などに適用可能である。
また、これらの無線通信機器は、無線通信するものであっても、有線通信するものであってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…通信システム、2…パーソナルコンピュータ装置(他の電子機器)、3…PHS端末(無線通信機器)、4…基地局、6…サーバ装置、11…無線通信部、14…タイマ、16…USBポート(接続部)、18…記憶部、21…通信制御部(制御部)、22…優先モードデータ(優先する通信方式の設定値)、23…切替可否データ、24…中継バッファ(バッファ部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、モデム通信可能な無線通信機器に関する。
【背景技術】
【0002】
PHS端末は、パーソナルコンピュータ装置などの電子機器を接続し、データ通信することができる。
たとえば特許文献1は、近距離通信機能を備えるPHS端末を開示する。電子機器は、近距離通信機能によりPHS端末と接続し、PHS端末を通じてデータ通信することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−197567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、PHS端末は、通話時とデータ通信時とで異なる通信方式を採用するため、通話用の通信方式とデータ通信用の通信方式との両方を同時に実行することができない。PHS端末は、いずれか一方の通信方式を選択して通信を実行する。
このため、PHS端末では、通話用の通信方式およびデータ通信用の通信方式のいずれか一方を優先的に選択するための設定が可能になっている。PHS端末では、たとえばデータ通信用の通信方式よりも通話用の通信方式を優先する設定が可能である。
そして、通話用の通信方式を優先する設定がなされている場合、データ通信中にPHS端末に着信があると、PHS端末は、データ通信を中断して着信用の通信に切り替える。
その結果、パーソナルコンピュータ装置などの電子機器は、データ通信中にPHS端末に着信があると、その着信によりデータ通信が中断されてしまうので、送信または受信しようとした通信データを適切に送信または受信することができない。
【0005】
このようにPHS端末などの無線通信機器では、当該機器を利用してデータ通信をする場合の利便性を向上することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点の無線通信機器は、他の電子機器用のデータと、またはメール受信若しくは着信と、のいずれかの受信を行う無線通信部と、他の電子機器と接続可能な接続部を介してデータを送出する送出部と、前記無線通信部にて受信したデータを、当該データを前記送出部で送出するまでの間、一時的に格納するバッファ部と、鳴動部と、前記無線通信部にて着信若しくはメール受信の通知受信が生じても、少なくとも前記バッファ部にデータが存在する場合には、前記鳴動部に鳴動させないよう規制する制御部とを備える。
【0007】
好適には、所定時間を計測するタイマ部を備え、前記制御部は、前記接続部によって前記他の電子機器に送出されることにより前記バッファ部から前記データが無くなってから所定時間の間に、前記無線通信部にて着信あるいはメール受信が生じた場合、前記鳴動部に鳴動させないよう規制し、前記バッファ部から前記データが無くなってから所定時間経過した後に、前記無線通信部にて着信あるいはメール受信が生じた場合、前記鳴動部に鳴動させてもよい。
【0008】
好適には、前記タイマ部は、前記無線通信部と通信を行う基地局が、第1基地局から当該第1基地局とは異なる第2基地局へと切り替えられる場合、前記所定時間を延長してもよい。
【0009】
好適には、前記タイマ部は、前記無線通信部が、通信を行う基地局によってインアクティブ状態に制御された場合、前記所定時間をインアクティブ状態に制御された時間分延長してもよい。
【0010】
好適には、前記タイマ部は、前記データの種類が、所定周期で基地局から送られているデータの一部である場合、前記所定時間を前記所定周期より長くしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、無線通信機器を利用したデータ通信の利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るPHS端末を有する通信システムの概略構成図である。
【図2】図2は、図1のサーバ装置とPC装置との間での通信処理の一例を示すシーケンスチャートである。
【図3】図3は、図1のPHS端末の外観図である。
【図4】図4は、図3のPHS端末のハードウェア構成図である。
【図5】図5は、図4の無線通信部の動作状態の説明図である。
【図6】図6は、PHS端末の音声通話またはデータ通信機能のブロック図である。
【図7】図7は、データ通信中の通信切り替え動作のフローチャートである。
【図8】図8は、タイマにより無通信期間が計測された場合の通信制御部の処理のフローチャートである。
【図9】図9は、PC装置がサーバ装置から周期的に通信データを受信する場合での無通信期間の説明図である。
【図10】図10は、タイマによる無通信期間の計測中に無線通信部がインアクティブ状態に制御された場合での無通信期間の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に関連付けて説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る通信システム1の概略構成図である。
図1の通信システム1は、パーソナルコンピュータ装置(PC、以下PC装置という。)2、PHS端末(PS)3、基地局(CS)4、通信網5、サーバ装置(SVR)6を有する。
図1の通信システム1において、PHS端末3は、PC装置2のモデムとして機能する。
【0015】
サーバ装置6は、たとえばウェブサーバ、ニュースサーバなどとして機能する。
サーバ装置6は、ウェブページデータ、定期配信ニュースのデータなどを記憶する。
そして、サーバ装置6は、通信網5を介してたとえば図1のPC装置2などの通信端末から、リクエストを受信する。
リクエストを受信したサーバ装置6は、その要求に係るデータを、通信網5を介して要求元の通信端末へ送信する。
【0016】
PC装置2は、ウェブクライアントなどとして機能する。
PC装置2は、図1のサーバ装置6からウェブページデータ、定期配信ニュースのデータなどの通信データを受信し、図示外の表示部13に表示する。
なお、PC装置2は、図1のサーバ装置6から音声データを受信した場合、図示外のスピーカから音声を出力してもよい。
【0017】
図2は、サーバ装置6とPC装置2との間での通信処理の一例を示すシーケンスチャートである。
図2では、PC装置2は、所定のHTML更新期間毎に、サーバ装置6へ定期配信ニュースのリクエストを送信する(ステップST1、ST3)。
そして、サーバ装置6は、各リクエストを受信すると、各リクエスト受信時点での最新のニュースの通信データを、PC装置2へ送信する(ステップST2、ST4)。
ニュースの通信データを受信したPC装置2は、図示外の表示部13に、当該ニュースの内容を表示する。
【0018】
図1の基地局4は、PHS端末3と無線通信する通信機器である。
複数の基地局4は、PHS端末3のサービス地域内の複数のゾーンに分散して設置される。
そして、基地局4は、ゾーン内の複数のPHS端末3と無線通信し、通信データを送受する。
【0019】
基地局4は、TDMA/TDD方式による複数のスロットを用いて、PHS端末3と通信する。
通話の場合、基地局4は、「CDMA2000 1x」の通信方式によりPHS端末3と通信する。
データ通信の場合、基地局4は、「CDMA2000 1x EV DO」の通信方式によりPHS端末3と通信する。
基地局4は、通話の場合とデータ通信の場合とで異なる通信方式によりPHS端末3と通信する。
【0020】
また、基地局4は、ゾーン内に収容した複数のPHS端末3の通信状態を個別に制御する。
たとえば、基地局4は、データ通信中に一定の無通信期間が発生したPHS端末3に対して制御信号を送信し、当該PHS端末3をインアクティブ状態M4に制御する。
これにより、当該PHS端末3に割り当てられていたスロットが開放される。基地局4は、当該開放したスロットを用いて、他のPHS端末3と通信可能になる。
【0021】
また、基地局4は、たとえばゾーン内に移動してきた新たなPHS端末3から接続要求があった場合には、当該PHS端末3にスロットを割り当てる。
これにより、基地局4とPHS端末3とは通信可能になる。このハンドオーバ処理により、PHS端末3は、PHS端末3のサービス地域内を移動しながら、通信先を複数の基地局4の間で切り替えて通話またはデータ通信が可能になる。
【0022】
通信網5は、たとえばPHS端末3の通信網5、インターネットなどの通信網5である。
通信網5には、基地局4と、サーバ装置6とが接続される。
通信網5は、基地局4とサーバ装置6との間で送受する通信データを伝送する。
これにより、サーバ装置6とPC装置2との間で通信データの送受が可能になる。
【0023】
図3は、図1のPHS端末3の外観図である。
図3のPHS端末3は、上部筐体101、下部筐体102およびヒンジ部103を有する。
上部筐体101および下部筐体102は、略同一サイズの長方形形状を有する。
上部筐体101と下部筐体102とは、ヒンジ部103により開閉可能に連結される。
図3は、上部筐体101と下部筐体102とを開いた状態である。
上部筐体101には、表示部13が設けられる。
下部筐体102には、操作部12の複数の入力キーが設けられる。
【0024】
図4は、図3のPHS端末3のハードウェア構成図である。
PHS端末3は、たとえば無線通信部(RF)11、操作部(KEY)12、表示部(DISP)13、タイマ(RTC)15、音声モデム部(MODEM)15、USBポート(USB)16、CPU(Central Processing Unit)17、記憶部(MEM)18、およびこれらを接続するシステムバス19を有する。
【0025】
無線通信部11は、基地局4との通信チャネルを確立し、基地局4と通信データを送受する。
そして、無線通信部11は、CPU17からの入力信号に含まれる通信データを基地局4へ無線送信する。
また、無線通信部11は、基地局4から受信した通信データを含む信号をCPU17へ出力する。
これにより、無線通信部11は、たとえばCPU17から入力されたウェブページのリクエストを送信する。
また、無線通信部11は、要求したウェブページのデータを基地局4から受信し、CPU17へ出力する。
【0026】
図5は、図4の無線通信部11の動作状態の説明図である。
無線通信部11は、「CDMA2000 1x」の通信方式により基地局4と通信する音声通話モードと、「CDMA2000 1x EV DO」の通信方式により基地局4と通信するデータ通信モードとがある。
【0027】
そして、音声通話モードにおいて無線通信部11の動作状態は、通話中状態M1と、待ち受け状態M2との間で切り替わる。
通話中状態M1とは、通話用の通信データを基地局4と送受している状態をいう。
待ち受け状態M2とは、通話用の通信データを基地局4と送受していない無通信状態をいう。
【0028】
また、データ通信モードにおいて無線通信部11の動作状態は、データ通信中状態M3と、インアクティブ状態M4と、ドーマント状態(休止状態)M5との間で切り替わる。
データ通信中状態M3とは、データ通信用の通信データを基地局4と送受している状態をいう。
インアクティブ状態M4とは、データ通信用の通信データを基地局4と送受してない無通信状態をいい、基地局4によりインアクティブ制御された状態をいう。
ドーマント状態M5とは、データ通信用の通信データを基地局4と送受してない無通信状態をいい、インアクティブ状態M4において所定の時間が経過することにより無線通信部11が自ら休止した状態をいう。
【0029】
また、無線通信部11は、たとえば送信する通信データが発生したり、基地局4から通信データを受信する場合、通信データの種類に応じて音声通話モードおよびデータ通信モードの一方の通信モードを選択する。
無線通信部11は、選択した通信モードにより基地局4と通信データを送受する。
【0030】
図4の表示部13は、たとえばIPS(In Plane Switching)液晶デバイス、LCD(Liquid Crystal Display Device)、有機EL(Electro-Luminescence)デバイスなどを有する。
表示部13は、図3に示すように、PHS端末3の上部筐体101の前面に配置される。
そして、表示部13は、CPU17から入力された表示信号に含まれる表示データを表示する。
これにより、表示部13は、たとえばサーバ装置6から受信したウェブページなどを表示する。
【0031】
操作部12は、複数の入力キーを有する。
複数の入力キーには、たとえばテンキー、電源キー、通話キー、文字キーなどがある。
入力キーは、図3に示すように、PHS端末3の下部筐体102の前面に配置される。
そして、操作部12は、ユーザにより操作された入力キーに対応する入力データを含む操作信号をCPU17へ出力する。
これにより、操作部12は、表示部13に表示されたウェブページのリンクを指定する。
【0032】
タイマ14は、時刻、経過時間などを計測する。
そして、タイマ14は、CPU17により目標経過時間が設定される。CPU17は、目標経過時間の設定信号をタイマ14へ出力する。なお、この目標経過時間は、タイマ14に設定後に変更(更新)可能である。
設定された目標経過時間を計測すると、タイマ14は、CPU17へ割込信号を出力する。
【0033】
音声モデム部15は、スピーカ20およびマイクロホン21に接続される。
そして、音声モデム部15は、マイクロホン21に入力された音声をサンプリングし、音声データを含む信号をCPU17へ出力する。
また、音声モデム部15は、CPU17からの入力信号に含まれる音声データによりスピーカ20を駆動する。
これにより、スピーカ20から、たとえばサーバ装置6から受信した音声データの音声などが再生される。
また、音声モデム部15は、鳴動部99と接続されている。鳴動部99は、メール受信や着信がある場合、受信があった旨を鳴動により報知する。
【0034】
USBポート16は、USB規格に準拠した通信方式により通信する。
USBポート16は、USBケーブルにより、図1のPC装置2に接続される。
USBポート16は、PC装置2が接続されると、これを検出し、接続処理を実行する。これにより、USBポート16はPC装置2と通信データの送受が可能な状態になる。
たとえばPC装置2は、ウェブページのリクエストを含む信号をUSBポート16へ出力する。また、USBポート16は、ウェブページのデータを含む信号をPC装置2へ出力する。
PC装置2が切り離されると、USBポート16は、これを検出し、PC装置2との通信を終了する。
【0035】
記憶部18は、たとえばROM、RAM、フラッシュメモリ、EEPROMなどを有する。
記憶部18は、PHS端末3で使用する各種のデータおよびプログラムを記憶する。
記憶部18は、各種のデータとして、たとえばPC装置2から受信したウェブページのリクエスト、サーバ装置6から受信したウェブページのデータなど記憶する。
記憶部18に記憶されるプログラムは、たとえばCD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)などのコンピュータ読み取り可能な記録媒体からインストールしたものでも、インターネットなどの伝送媒体によりダウンロードしてインストールしたものでもよい。
【0036】
CPU17は、プログラムを実行するコンピュータである。
そして、CPU17が、記憶部18に記憶されるプログラムを読み込んで実行することにより、PHS端末3の制御部が実現される。
制御部は、PHS端末3の動作を制御する。
【0037】
図6は、音声通話またはデータ通信のためにPHS端末3に実現される機能を模式的に示すブロック図である。
CPU17には、通信制御部21が実現される。
また、図6には、優先モードデータ22と、切替可否データ23と、中継バッファ24とが図示されている。優先モードデータ22および中継バッファ24は、たとえば記憶部18に実現される。
【0038】
優先モードデータ22は、音声通話モードおよびデータ通信モードのうちのどちらの通信モードを優先的に実行するかを示す設定値を有する。
優先モードデータ22の設定値は、たとえば操作部12の操作により更新することができる。
たとえば音声通話モードが優先設定されている場合、PHS端末3は、データ通信中に着信などの音声通話開始イベントが発生すると、データ通信を中断し、音声通話を開始する。
具体的には、PHS端末3は、無線通信部11の通信モードを「CDMA2000 1x EV DO」から「CDMA2000 1x」に切り替える。
また、データ通信モードが優先設定されている場合、PHS端末3は、データ通信中に着信などの音声通話開始イベントが発生しても、データ通信を継続する。この場合、着信先は、PHS端末3のキャリアが準備した留守番録音サービスに接続される。
これにより、PHS端末3は、優先モードデータ22の設定に基づいて、自端末内のたとえば図示外のブラウザ機能によりデータ通信をしている場合に、データ通信を継続するか、または着信を優先するかを設定することができる。
【0039】
切替可否データ23は、データ通信モードを実行中に音声通話モードへの切り替えを許可または禁止する値を有する。
切替可否データ23の値は、通信制御部21のみにより更新可能である。
たとえばデータ通信モードにおいて実際にデータ通信を実行している場合、通信制御部21は、切替可否データ23を、音声通話モードへの切り替えを禁止に更新する。
また、データ通信モードにおいて実際にデータ通信を実行していない場合、通信制御部21は、切替可否データ23を、音声通話モードへの切り替えを許可に更新する。
【0040】
中継バッファ24は、PC装置2によるデータ通信時に、PC装置2とPHS端末3との間で送受する通信データを一時的に保持する。
たとえばUSBポート16は、PC装置2から受信したウェブページのリクエストなどの通信データを中継バッファ24に書き込む。無線通信部11は、この中継バッファ24に書き込まれた通信データを基地局4へ送信する。
また、サーバ装置6からPC装置2宛てに送信されたウェブページのデータなどの通信データは、無線通信部11により受信された後、中継バッファ24に書き込まれる。USBポート16は、中継バッファ24から通信データを読み込み、PC装置2へ送信する。
【0041】
通信制御部21は、PHS端末3の通信を制御する。
通信制御部21は、PHS端末3の通信制御のために、優先モードデータ22、タイマ14の計測時間などを読み込む。
また、通信制御部21は、必要に応じて通信データの流量を監視する。
【0042】
[優先モードデータ22に基づく、音声通話中の通信切り替え動作]
以下、優先モードデータ22に基づく基本的な通信制御を説明する。
無通信状態において無線通信部11が音声通話用の通信データを受信したり、無線通信部11が着信呼び出しを受信したり、または、操作部12において通話開始操作がなされたりすると、通信制御部21は、音声通話制御を開始する。
音声通話制御では、通信制御部21は、無線通信部11が基地局4から受信した音声通話用の通信データを音声モデム部15へ出力する。音声モデム部15は、通信データに基づいてスピーカ20を駆動する。
また、通信制御部21は、音声モデム部15がマイクロホン21の信号をサンプリングして生成した音声データを、無線通信部11へ出力する。無線通信部11は、当該音声データを基地局4へ送信する。
以上の音声通話制御により、PHS端末3は、他のPHS端末3などと音声による通話をする。
【0043】
音声通話制御中に、たとえばUSBポート16が中継バッファ24に通信データを書き込むと、通信制御部21は、優先モードデータ22を読み込む。
そして、優先モードデータ22に音声通話モードが優先設定されている場合、通信制御部21は、音声通話を継続する。これにより、PHS端末3は、そのブラウザ機能によりデータ通信中に着信があった場合、優先モードデータ22の設定に基づいて通話に切り替えることができる。
これに対して、優先モードデータ22にデータ通信モードが優先設定されている場合、通信制御部21は、音声通話を終了し、データ通信制御を開始する。通信制御部21は、無線通信部11の通信方式を切り替えた後、中継バッファ24から通信データを読み込み、無線通信部11へ出力する。無線通信部11は、通信データを基地局4へ送信する。
【0044】
[優先モードデータ22に基づく、データ通信中の通信切り替え動作]
無通信状態において無線通信部11がデータ通信用の通信データを受信したり、無線通信部11がデータ通信の呼び出しを受信したり、中継バッファ24に新たなデータ通信用の通信データが書き込まれたりすると、通信制御部21は、データ通信制御を開始する。
データ通信制御では、通信制御部21は、USBポート16が中継バッファ24にPC装置2のリクエストなどの通信データを書き込むと、この通信データを読み込み、無線通信部11へ出力する。無線通信部11は、当該音声データを基地局4へ送信する。これにより、PC装置2がサーバ装置6へ送信するリクエストなどがPHS端末3から送信される。
また、通信制御部21は、無線通信部11が基地局4から受信したデータ通信用の通信データを中継バッファ24へ書き込む。USBポート16は、中継バッファ24から通信データを読み込み、接続中のPC装置2へ送信する。これにより、PC装置2は、サーバ装置6から受信したウェブページを表示する。
【0045】
データ通信制御中に、たとえば無線通信部11が着信呼び出しを受信すると、通信制御部21は、優先モードデータ22を読み込む。
そして、優先モードデータ22にデータ通信モードが優先設定されている場合、通信制御部21は、データ通信を継続する。
これに対して、優先モードデータ22に音声通話モードが優先設定されている場合、通信制御部21は、データ通信を終了し、音声通話制御を開始する。通信制御部21は、無線通信部11の通信方式を切り替えた後、音声モデム部15から入力される音声の通信データを無線通信部11へ出力する。無線通信部11は、通信データを基地局4へ送信する。
【0046】
次に、データ通信中に着信呼び出しなどが生じた場合のPHS端末3の動作を詳しく説明する。
[データ通信中の実際の通信切り替え動作]
図7は、データ通信中の実際の通信切り替え動作のフローチャートである。
データ通信中の通信切り替え動作は、実際には、優先モードデータ22に加えて、データ通信中の通信状態に応じて実行される。
【0047】
図7では、通信制御部21は、まず、データ通信を開始する(ステップST11)。
通信制御部21は、たとえば無通信状態において無線通信部11がデータ通信用の通信データを受信するとデータ通信制御を開始する。
この他にも、通信制御部21は、無線通信部11がデータ通信の呼び出しを受信したり、中継バッファ24に新たなデータ通信用の通信データが書き込まれたりすると、データ通信制御を開始する。
次に、通信制御部21は、データ通信用の接続が確立したか否かを判断する(ステップST12)。たとえば無線通信部11がデータ通信のために基地局4と通信可能な状態になると、通信制御部21は、データ通信用の接続が確立したと判断する。
次に、通信制御部21は、PC装置2によるデータ通信であるか否かを判断する(ステップST13)。たとえばUSBポート16がPC装置2を検出した状態である場合、通信制御部21は、PC装置2によるデータ通信であると判断する。
そして、PC装置2によるデータ通信でない場合、通信制御部21は、データ通信中(データ通信モード)であるか否かを判断する(ステップST14)。データ通信中(データ通信モード)でない場合、通信制御部21は、データ通信を終了する。そして、通話着信があった場合には、鳴動部99によって着信を鳴動させる。
【0048】
データ通信中(データ通信モード)である場合、通信制御部21は、中継バッファ24が空であるか否かを判断する(ステップST15)。
たとえば中継バッファ24に無線通信部11により送信されていない未処理の通信データが残っていない場合、通信制御部21は、中継バッファ24が空であると判断する。
この他にも例えば、中継バッファ24にUSBポート16により読み出されていない未処理の通信データが残ってない場合、通信制御部21は、中継バッファ24が空であると判断する。
中継バッファ24が空でない場合、通信制御部21は、タイマ14を起動し、無通信期間を計測させる(ステップST16)。
具体的には、通信制御部21は、無通信期間をタイマ14に設定する。これにより、タイマ14は、無通信期間の計測を開始する。
【0049】
タイマ14を起動した後、通信制御部21は、再び、データ通信中(データ通信モード)であるか否かを判断する。また、通信制御部21は、中継バッファ24が空であるか否かを判断する。
そして、中継バッファ24が空でない場合、通信制御部21は、タイマ14を停止し、データ通信中の通話着信を禁止する(ステップST17)。通話着信の禁止とは、具体的には、通信制御部21は、通話着信を受信したとしても、鳴動部99による鳴動での着信報知を行わせない。通信制御部21は、データ通信中の通話着信を禁止する切替可否データ23を記憶部18に保存する(ステップST18)。
以上のように、通信制御部21は、PC装置2によるデータ通信の場合には、中継バッファ24の未処理データの有無に応じてタイマ14による無通信期間の計測の開始および中断を制御する。
【0050】
図8は、タイマ14により無通信期間が計測された場合の通信制御部21のフローチャートである。
タイマ14が無通信期間を計測し、CPU17に割込信号を出力すると、通信制御部21は、データ通信中の通話着信を許可する(ステップST21)。たとえば通信制御部21は、データ通信中の通話着信を許可する切替可否データ23を記憶部18に保存する。
【0051】
そして、実際にPC装置2によるデータ通信中に通話着信が発生すると、通信制御部21は、優先モードデータ22に音声通話モードが優先設定されている場合に、記憶部18から切替可否データ23を読み込む。
切替可否データ23が、データ通信中の通話着信を禁止する値である場合、通信制御部21は、データ通信を継続する。
切替可否データ23が、データ通信中の通話着信を許可する値である場合、通信制御部21は、データ通信を終了し、音声通話制御を開始する。
【0052】
次に、タイマ14に計測させる無通信期間について説明する。
図9は、PC装置2がサーバ装置6から周期的に通信データを受信する場合での無通信期間の説明図である。定期配信ニュースのデータなどを受信する場合、PC装置2はサーバ装置6から周期的に通信データを受信する。
図9(A)は、周期的に繰り返し受信される通信データを示す。
図9(B)は、無通信期間の初期値による動作の説明図である。
図9(C)は、周期的な通信データに対応した無通信期間による動作の説明図である。
たとえば無通信期間の初期値が30秒であり、データ通信用の通信データの受信間隔が60秒であるとする。
この場合、図9(B)および(A)に示すように、先のデータ通信用の通信データの受信(中継処理)を完了してから次のデータ通信用の通信データの受信(中継処理)を開始するまでの間に、タイマ14は、初期値による無通信期間を計測する。
また、通信制御部21は、切替可否データ23を、データ通信中の通話着信を許可する値に更新する。
よって、この間に通話着信が発生すると、通信制御部21は、次のデータ通信用の通信データを受信する前に、着信通話を開始してしまう。その結果、周期的な通信データを受信していたPC装置2は、新しい通信データを受信することができなくなってしまう。
【0053】
そこで、本実施形態では、通信制御部21は、タイマ14に無通信期間を設定する場合に、データ通信に係る通信データの種類または内容に応じて、無通信期間の初期値に、オフセット値を加算し、加算後の値をタイマ14に設定する。
たとえば先の例の場合、通信制御部21は、オフセット値として30秒を加算する。
これにより、タイマ14は、図9(C)に示すように、先のデータ通信用の通信データの受信を完了してから次のデータ通信用の通信データの受信を開始するまでの間に、無通信期間を計測しなくなる。
この場合、通信制御部21は、初期値にオフセット値を加算した無通信期間がタイマ14により計測された場合に、切替可否データ23を、データ通信中の通話着信を許可する値に更新する。
【0054】
図10は、タイマ14により無通信期間の計測中に無線通信部11がインアクティブ状態M4に制御された場合での無通信期間の説明図である。
図10(A)は、初期値または初期値にオフセット値を加算した無通信期間の説明図である。図10(A)では、タイマ14の無通信期間の計測期間において、無線通信部11は、3回インアクティブ状態M4に制御されている。
この場合、通信制御部21は、タイマ14に計測させている無通信期間に対して、インアクティブ状態M4の合計期間を加算し、タイマ14に計測させる。
具体的にはたとえば、通信制御部21は、タイマ14により当初の無通信期間を計測させた後、その割込みに応じてインアクティブ状態M4の合計期間をタイマ14に計測させる。
そして、この2回目の計測によるタイマ14割込みに基づいて、通信制御部21は、切替可否データ23を、データ通信中の通話着信を許可する値に更新する。
【0055】
さらに、これらの期間において基地局4の切り替えが発生した場合、通信制御部21は、タイマ14に計測させている無通信期間に対して、基地局4の切り替え期間の合計期間を加算し、タイマ14に計測させる。
具体的にはたとえば、通信制御部21は、タイマ14により当初の無通信期間を計測させた後、その割込みに応じてインアクティブ状態M4の合計期間および基地局4の切り替え期間の合計期間をタイマ14に計測させる。
そして、この2回目の計測によるタイマ14割込みに基づいて、通信制御部21は、切替可否データ23を、データ通信中の通話着信を許可する値に更新する。
【0056】
なお、通信チャネル切替やハンドオーバ処理に要する時間は、無線品質に依存し、無線エラーが多いほど時間がかかる。これらの時間は、通常、数十ミリ秒から15秒程度の範囲である。
たとえば通信チャネル切替開始から終了までに要した時間が500ミリ秒である場合、オフセット値にはたとえば1秒を設定すればよい。
また、ハンドオーバ処理に要した時間が5秒と500ミリ秒である場合には、オフセット値にはたとえば6秒を設定すればよい。
これにより、タイマ14により計測する経過期間が固定値である場合のデメリットを回避できる。
【0057】
以上のように、本実施形態では、記憶部18は、データ通信と通話との間で優先する通信方式を指定する優先モードデータ22を記憶する。
そして、通信制御部21は、中継バッファ24に未処理のデータ通信用の通信データが記憶されている期間、およびその後の無通信期間においては、通信方式を、データ通信用の通信方式から、通話用の通信方式へ切り替えない。
通信制御部21は、優先モードデータ22に通話が優先に設定され且つ通話着信があったとしても、通信方式を、データ通信用の通信方式から、通話用の通信方式へ切り替えない。
すなわち、本実施形態では、USBポート16および無線通信部11を用いたPC装置2用のデータ通信中には、通信方式を、通話用の通信方式へ切り替えない。
よって、本実施形態では、USBポート16に接続されたPC装置2は、データ通信が中断されなくなり、データ通信により送信または受信しようとした通信データを適切に送信または受信できる。
【0058】
また、本実施形態では、たとえばPC装置2のモデムとして使用したデータ通信の実行中には音声着信を無効化する。
これにより本実施形態では、PC装置2によるファイルのダウンロードやメールの送受信の実行中に音声着信が発生したとしても、その実行中の処理が中断されることがない。
【0059】
また、本実施形態では、PC装置2のモデムとしてPHS端末3を利用する場合に、PHS端末3の優先モードデータ22の設定を変更する必要がない。
よって、ユーザにとっては、通信モデムとしてPHS端末3を利用する度に、PHS端末3の優先モードデータ22の設定を変更する煩わしさがない。
【0060】
また、本実施形態では、中継バッファ24において未処理の通信データが無くなった後に、さらに中継バッファ24に新たなPC装置2の通信データが格納された場合には、通信制御部21は、データ通信用の通信方式から通話用の通信方式への切り替えを再び禁止する。
よって、本実施形態では、PC装置2によるデータ通信の実行中には通話への切り替えができなくなる。
データ通信部に接続されたPC装置2は、新たな通信データについてのデータ通信の実行中においてもデータ通信が中断されなくなり、送信または受信しようとした通信データを適切に送受できる。
【0061】
また、本実施形態では、通信制御部21は、タイマ14により計測させる無通信期間を固定的にするのではなく、可変にしている。
具体的には、本実施形態の通信制御部21は、タイマ14により初期値の無通信期間を計測中に、中継バッファ24に対してPC装置2の通信データが周期的に格納される場合、無通信期間を延長して、当該通信データの周期以上の期間をタイマ14により計測させる。
このタイマ14の計測期間の可変制御により、PHS端末3は、基地局4との間で実際にデータ通信可能な期間として、PC装置2のデータ通信に応じた適切な切り替え待ち期間を計測する。PC装置2は、たとえば周期的にニュースデータを配信するサーバ装置6から、そのニュースデータを中断されることなく受信することできる。
しかも、このPC装置2のデータ通信に応じた可変制御に加えて、本実施形態の通信制御部21は、たとえばタイマ14により経過時間を計測中に無線通信部11がインアクティブ状態M4に制御された場合には、その期間により計測期間を延長する。
また、本実施形態の通信制御部21は、タイマ14により経過時間を計測中に基地局4の切り替えが発生した場合には、その切り替えに必要な時間により計測期間を延長する。
よって、本実施形態では、無通信期間中に、インアクティブ状態M4に制御され、または基地局4のハンドオーバ制御が実行されたとしても、周期的に通信される通信データを実際に通信可能な有効期間として、当該通信データの周期に相当する有効期間を確保できる。
【0062】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0063】
たとえば上記実施形態では、無線通信部11は、データ通信用の通信方式と、通話用の通信方式との2つの通信方式の間で通信方式を切り替えている。
この他にも例えば、無線通信部11は、3つ以上の通信方式の間で通信方式を切り替えてもよい。この場合、通信制御部21は、データ通信中には、データ通信用の通信方式以外の残りの通信方式への切り替えを禁止すればよい。
【0064】
上記実施形態では、PHS端末3は、USBポート16に接続されたPC装置2のモデムとして機能している。
この他にも例えば、PHS端末3は、短距離通信部などを有し、この短距離通信部と通信するPC装置2のモデムとして機能してもよい。
【0065】
上記実施形態は、PHS端末3に本発明を適用した例である。
この他にも例えば、本発明は、2以上の通信方式を切り替え可能な携帯電話機、通信モデム機器などに適用可能である。
また、これらの無線通信機器は、無線通信するものであっても、有線通信するものであってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…通信システム、2…パーソナルコンピュータ装置(他の電子機器)、3…PHS端末(無線通信機器)、4…基地局、6…サーバ装置、11…無線通信部、14…タイマ、16…USBポート(接続部)、18…記憶部、21…通信制御部(制御部)、22…優先モードデータ(優先する通信方式の設定値)、23…切替可否データ、24…中継バッファ(バッファ部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の電子機器用のデータと、またはメール受信若しくは着信と、のいずれかの受信を行う無線通信部と、
他の電子機器と接続可能な接続部を介してデータを送出する送出部と、
前記無線通信部にて受信したデータを、当該データを前記送出部で送出するまでの間、一時的に格納するバッファ部と、
鳴動部と、
前記無線通信部にて着信若しくはメール受信の通知受信が生じても、少なくとも前記バッファ部にデータが存在する場合には、前記鳴動部に鳴動させないよう規制する制御部と
を備える無線通信機器。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信機器であって、
所定時間を計測するタイマ部を備え、
前記制御部は、
前記接続部によって前記他の電子機器に送出されることにより前記バッファ部から前記データが無くなってから所定時間の間に、前記無線通信部にて着信あるいはメール受信が生じた場合、前記鳴動部に鳴動させないよう規制し、
前記バッファ部から前記データが無くなってから所定時間経過した後に、前記無線通信部にて着信あるいはメール受信が生じた場合、前記鳴動部に鳴動させる
無線通信機器。
【請求項3】
請求項2に記載の無線通信機器であって、
前記タイマ部は、
前記無線通信部と通信を行う基地局が、第1基地局から当該第1基地局とは異なる第2基地局へと切り替えられる場合、前記所定時間を延長する
無線通信機器。
【請求項4】
請求項2または3に記載の無線通信機器であって、
前記タイマ部は、
前記無線通信部が、通信を行う基地局によってインアクティブ状態に制御された場合、前記所定時間をインアクティブ状態に制御された時間分延長する
無線通信機器。
【請求項5】
請求項2または4のいずれか一項に記載の無線通信機器であって、
前記タイマ部は、
前記データの種類が、所定周期で基地局から送られているデータの一部である場合、前記所定時間を前記所定周期より長くする
無線通信機器。
【請求項1】
他の電子機器用のデータと、またはメール受信若しくは着信と、のいずれかの受信を行う無線通信部と、
他の電子機器と接続可能な接続部を介してデータを送出する送出部と、
前記無線通信部にて受信したデータを、当該データを前記送出部で送出するまでの間、一時的に格納するバッファ部と、
鳴動部と、
前記無線通信部にて着信若しくはメール受信の通知受信が生じても、少なくとも前記バッファ部にデータが存在する場合には、前記鳴動部に鳴動させないよう規制する制御部と
を備える無線通信機器。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信機器であって、
所定時間を計測するタイマ部を備え、
前記制御部は、
前記接続部によって前記他の電子機器に送出されることにより前記バッファ部から前記データが無くなってから所定時間の間に、前記無線通信部にて着信あるいはメール受信が生じた場合、前記鳴動部に鳴動させないよう規制し、
前記バッファ部から前記データが無くなってから所定時間経過した後に、前記無線通信部にて着信あるいはメール受信が生じた場合、前記鳴動部に鳴動させる
無線通信機器。
【請求項3】
請求項2に記載の無線通信機器であって、
前記タイマ部は、
前記無線通信部と通信を行う基地局が、第1基地局から当該第1基地局とは異なる第2基地局へと切り替えられる場合、前記所定時間を延長する
無線通信機器。
【請求項4】
請求項2または3に記載の無線通信機器であって、
前記タイマ部は、
前記無線通信部が、通信を行う基地局によってインアクティブ状態に制御された場合、前記所定時間をインアクティブ状態に制御された時間分延長する
無線通信機器。
【請求項5】
請求項2または4のいずれか一項に記載の無線通信機器であって、
前記タイマ部は、
前記データの種類が、所定周期で基地局から送られているデータの一部である場合、前記所定時間を前記所定周期より長くする
無線通信機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−114727(P2011−114727A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270803(P2009−270803)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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