説明

無線通信装置および通信制御方法

【課題】共振回路を用いたアンテナから送信される放射波の収束を早める。
【解決手段】LF駆動回路162−1乃至162−pは、それぞれLFアンテナ152−1乃至152−pから信号を送信させる。CPU161は、送信データにより搬送波を変調した変調信号がLFアンテナ152−1乃至152−pのいずれかから送信された後、搬送波の位相を反転した反転搬送波を所定の時間だけ、信号を送信したLFアンテナ152用のLF駆動回路162に供給する。本発明は、例えば、パッシブエントリシステムに適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置および通信制御方法に関し、特に、車両用の無線通信装置および通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信を行う専用の携帯機を携帯し、車両のドアハンドルを握ったり、ドアハンドル付近のスイッチを操作したりするだけでドアの開錠や施錠を行うことができる機能(以下、パッシブエントリと称する)を提供するシステムを搭載した車両の普及が進んでいる。
【0003】
そのようなパッシブエントリシステムにおいて、従来、車両の各ドアにアンテナを設け、各アンテナから異なるタイミングで応答要求信号を送信し、携帯機からの応答信号の受信タイミングに基づいて、携帯機が接近しているドアを検出することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、従来、さらに各ドアだけでなく車内にもアンテナを設けて、携帯機が車外または車内(トランクルームを含む)のいずれにあるかを検出し、携帯機が車外にない場合、ドアの開錠を行わないようにして、車両の盗難等を防止することなどが行われている。
【0005】
そのような複数のアンテナが設けられたパッシブエントリシステムにおいて、各アンテナの携帯機の検知エリアを十分に確保するためには、各アンテナから携帯機に送信する応答要求信号の放射強度を強くする必要がある。
【0006】
これに対して、昇圧回路やフルブリッジ回路等を設けずに、制御抵抗を小さくしてQ値を高めることにより応答要求信号の放射強度を強くしようとした場合、共振現象を利用するため、放射波の立ち上がりや立ち下がりにある程度の時間が必要になる。
【0007】
図1は、ドアミラーに設けられているアンテナから応答要求信号を送信した後、車室内のフロントに設けられているアンテナから応答要求信号を送信した場合の携帯機の受信波形の例を示している。なお、図1において、時系列は、図中左から右に向かって進む。
【0008】
応答要求信号は、例えば、プリアンブル、ヘッダ、データ、CW(Continuous Wave)の順に送信される。そして、図内の期間T1は、CWの立ち上がりに要する期間であり、CWの送信を開始してから振幅が所定のレベル(例えば、目標値の95%)に達するまでの期間である。期間T2は、CWの振幅が所定のレベルに達してからCWの送信を停止するまでの期間であり、この間にRSSI値の測定が携帯機で行われる。期間T3は、CWの立ち下がりに要する期間であり、CWの送信を停止してからCWの振幅が所定のレベル以下になるまでの期間である。なお、RSSI値は、携帯機と車両との距離を検出する場合などに用いられる。
【0009】
ところで、CWが十分に減衰しないうちに、車室内のフロントのアンテナからプリアンブルの送信を開始すると、CWの影響により、携帯機がプリアンブルの受信を失敗する恐れがある。従って、期間T3は、CWをノイズとみなした場合にプリアンブルとCWのSN比の理論値が所定の値以上(例えば、13dB以上)になり、CWの影響が十分小さくなる時間に設定される。そして、CWの送信を停止してから、期間T3に所定のマージン分の時間を加えた期間T4が経過した後に、車室内のフロントのアンテナからプリアンブルの送信が開始される。
【0010】
一方、パッシブエントリシステムにおいては、ユーザがドアハンドルまたはスイッチを操作してから、ドアの施開錠が行われるまでの応答時間を短縮することが望まれている。従って、期間T3を短縮して、アンテナ間の応答要求信号の送信間隔を短縮することが望ましい。
【0011】
しかし、放射波の強度を強くして各アンテナの検知エリアを広げるためにQ値を大きくすると、放射波の強度がある程度のレベルまで収束するのに要する時間が長くなり、期間T3が長くなってしまう。
【0012】
ここで「Q(Quality factor)値」とは、共振の鋭さを示す値であり、Q値が大きければ大きいほど共振が鋭く急峻な周波数特性を有している。一般的にQ値が大きいほうが通信を良好に行うことができるが、周波数を上げて通信速度を速めようとした場合には、Q値を大きくしすぎると受信感度は悪化してしまう。
【0013】
例えば、特許文献2には、複数の通信速度で通信可能な非接触通信装置において、通信速度が早くなるほどQ値を小さく設定することにより、通信速度が高速になっても安定した非接触通信を行うことができるようにする技術が提案されているが、放射波の収束時間を短縮する点については考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平9−128905号公報
【特許文献2】特開2011−10159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、共振回路を用いたアンテナから送信される放射波の収束を早めるものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一側面の無線通信装置は、車両用の携帯機と無線通信を行う車両用の無線通信装置であって、アンテナから信号を送信させる送信回路と、送信データにより搬送波を変調した変調信号をアンテナから送信した後、搬送波の位相を反転した反転搬送波を所定の時間だけ送信回路に供給する制御回路とを備える。
【0017】
本発明の一側面の無線通信装置においては、送信データにより搬送波を変調した変調信号がアンテナから送信された後、搬送波の位相を反転した反転搬送波が所定の時間だけ送信回路に供給される。
【0018】
従って、共振回路を用いたアンテナから送信される放射波の収束を早めることができる。その結果、例えば、パッシブエントリの応答時間を短縮することができる。
【0019】
このアンテナは、例えば、LFアンテナにより構成される。この送信回路は、例えば、アンテナを駆動するアンテナ駆動回路により構成される。この制御回路は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ECU(Electronic Control Unit)等の制御回路により構成される。
【0020】
この無線通信装置には、複数のアンテナを介してそれぞれ異なるタイミングで変調信号を送信させ、この制御回路には、第1のアンテナを介して変調信号を送信した後、第2のアンテナを介して変調信号を送信する前に、反転搬送波を所定の時間だけ第1のアンテナ用の送信回路に供給させることができる。
【0021】
これにより、複数のアンテナを用いたパッシブエントリの応答時間を短縮することができる。
【0022】
この制御回路には、変調信号および搬送波の位相を反転させた反転搬送波を生成させ、送信回路に供給させることができる。
【0023】
これにより、送信回路に特別な機能を設けずに、送信回路を簡素化することができる。
【0024】
この送信回路には、制御回路からの指令により反転搬送波を生成させることができる。
【0025】
これにより、制御回路で反転搬送波を生成する必要がなく、制御回路を簡素化することができる。
【0026】
この無線通信装置には、アンテナをさらに設けることができる。
【0027】
本発明の一側面の通信制御方法は、共振回路を有するアンテナから信号を送信させる送信回路を備え、アンテナを介して、車両用の携帯機と無線通信を行う車両用の無線通信装置が、送信データにより搬送波を変調した変調信号をアンテナから送信させた後、搬送波の位相を反転した反転搬送波を所定の時間だけ送信回路に供給する。
【0028】
本発明の一側面の通信制御方法においては、送信データにより搬送波を変調した変調信号がアンテナから送信された後、搬送波の位相を反転した反転搬送波が所定の時間だけ送信回路に供給される。
【0029】
従って、共振回路を用いたアンテナから送信される放射波の収束を早めることができる。その結果、例えば、パッシブエントリの応答時間を短縮することができる。
【0030】
このアンテナは、例えば、LFアンテナにより構成される。この送信回路は、例えば、アンテナを駆動するアンテナ駆動回路により構成される。
【発明の効果】
【0031】
本発明の一側面によれば、共振回路を用いたアンテナから送信される放射波の収束を早めることができる。その結果、例えば、パッシブエントリの応答時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】従来のパッシブエントリシステムにおける携帯機の受信波形の例を示す図である。
【図2】本発明を適用したパッシブエントリシステムの一実施の形態を示すブロック図である。
【図3】本発明を適用したパッシブエントリシステムの送信部の詳細な構成例を示すブロック図である。
【図4】LFアンテナの設置位置の例を示す図である。
【図5】ユーザにより携帯機を用いてドアの開錠が要求された際の、応答要求信号および応答信号の送信タイミングの例を説明するための図である。
【図6】従来の制御方法と本発明の制御方法での、LF駆動回路への入力信号とLFアンテナを流れる共振電流を比較したグラフである。
【図7】従来の制御方法と本発明の制御方法での、複数のLFアンテナを用いた場合のLF駆動回路への入力信号とLFアンテナを流れる共振電流を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態
2.変形例
【0034】
<1.実施の形態>
[パッシブエントリシステム101の構成例]
図2は、本発明を適用したパッシブエントリシステムの一実施の形態を示すブロック図である。
【0035】
パッシブエントリシステム101は、携帯機112−1乃至112−nを携帯して、例えば車両のドアハンドル付近に設けられる施錠/開錠スイッチ121−1乃至121−mを操作するだけで、ドアの開錠や施錠を行うパッシブエントリを実現するためのシステムである。パッシブエントリシステム101は、車載システム111および携帯機112−1乃至112−nを含むように構成される。
【0036】
車載システム111は、パッシブエントリの機能を搭載する車両側に設けられるシステムである。なお、車載システム111が設けられる車両の種類は、特に限定されるものではない。
【0037】
車載システム111は、施錠/開錠スイッチ121−1乃至121−m、制御部122、無線通信部123、車両制御ECU(Electronic Control Unit)124、および、施錠/開錠アクチュエータ125を含むように構成される。
【0038】
施錠/開錠スイッチ121−1乃至121−mは、車両のドアを施錠または開錠するためにユーザが操作するデバイスである。施錠/開錠スイッチ121−1乃至121−mは、ユーザにより操作されたとき、所定の操作信号を制御部122に供給する。
【0039】
なお、施錠/開錠スイッチ121−1乃至121−mの数、設置位置は任意である。例えば、施錠/開錠スイッチ121−1乃至121−mは、運転席側のドア、助手席側のドア、後方のドアのドアハンドル付近に設けられる。
【0040】
なお、以下、施錠/開錠スイッチ121−1乃至121−mを個々に区別する必要がない場合、単に施錠/開錠スイッチ121と称する。
【0041】
制御部122は、例えば、ECU、CPU等の制御ユニットにより構成される。制御部122は、車載システム111の各部を制御して、パッシブエントリに関わる処理を実行させる。
【0042】
無線通信部123は、例えば、携帯機112−1乃至112−nと無線通信を行う無線通信装置により構成される。無線通信部123は、送信部131および受信部132を含むように構成される。
【0043】
送信部131は、制御部122の制御の下に、応答要求信号を送信する。
【0044】
なお、応答要求信号は、例えば、図1を参照して上述したように、プリアンブル、ヘッダ、データ、CWの順に送信される。また、応答要求信号は、例えば、LF(Low Frequency)帯の無線信号とされる。
【0045】
受信部132は、応答要求信号に対して携帯機112−1乃至112−nから送信される応答信号を受信する。受信部132は、受信した応答信号の復調等の処理を行い、処理後の応答信号を制御部122に供給する。
【0046】
なお、応答信号は、例えば、UHF(Ultra High Frequency)帯の無線信号とされる。
【0047】
車両制御ECU124は、制御部122の制御の下に、施錠/開錠アクチュエータ125を制御して、車両のドアの施錠および開錠を制御する。
【0048】
施錠/開錠アクチュエータ125は、車両制御ECU124の制御の下に、車両の各ドアの開錠および施錠を行う。
【0049】
携帯機112−1乃至112−nは、ユーザにより携帯され、無線通信を行う通信装置である。携帯機112−1乃至112−nは、送信部131から送信された応答要求信号を受信した場合、応答信号を送信する。
【0050】
なお、携帯機112−1乃至112−nの数は任意である。また、以下、携帯機112−1乃至112−nを個々に区別する必要がない場合、単に携帯機112と称する。
【0051】
また、無線通信部123と携帯機112との間の通信方式は、特に限定されるものではなく、任意の方式を採用することができる。
【0052】
[送信部131の構成例]
図3は、図2の送信部131の詳細な構成例を示すブロック図である。送信部131は、送信回路151、LFアンテナ152−1乃至152−p、および、抵抗R1乃至Rpを含むように構成される。送信回路151は、CPU161、および、LF駆動回路162−1乃至162−pを含むように構成される。
【0053】
CPU161は、制御部122の制御の下に、所定の制御プログラムを実行することにより、送信データ供給部171、LF波キャリア供給部172、反転キャリア出力許可部173、ANDゲート174、ANDゲート175、および、ORゲート176を含む機能を実現する。
【0054】
送信データ供給部171は、応答要求信号に乗せて送信する送信データをANDゲート174に供給する。なお、送信データは、例えば、マンチェスタ符号化およびASK(Amplitude Shift Keying)変調されたデータとされ、送信データの伝送速度は、例えば、3900bps(Bits Per Second)とされる。
【0055】
LF波キャリア供給部172は、所定の周波数(例えば、125kHz)のパルス信号である搬送波をANDゲート174およびANDゲート175に供給する。なお、ANDゲート175には、搬送波の位相が反転されて入力される。すなわち、ANDゲート174とANDゲート175には、周波数が同じで互いに逆位相の搬送波が入力される。
【0056】
なお、以下、位相が反転された搬送波を、反転搬送波と称する。
【0057】
反転キャリア出力許可部173は、反転キャリア出力許可信号をANDゲート175に供給することにより、ANDゲート175からの反転搬送波の出力を制御する。反転キャリア出力許可信号は、例えば、ANDゲート175からの反転搬送波の出力を許可する場合、Highに設定され、許可しない場合、Lowに設定される。
【0058】
ANDゲート174は、送信データと搬送波との論理積をとることにより、送信データにより搬送波を変調した変調信号を生成し、ORゲート176に供給する。
【0059】
ANDゲート175は、反転搬送波と反転キャリア出力許可信号の論理積をとることにより生成される信号をORゲート176に供給する。従って、ANDゲート175は、反転キャリア出力許可信号がHighのとき、反転搬送波をORゲート176に供給し、反転キャリア出力許可信号がLowのとき、反転搬送波をORゲート176に供給しない。
【0060】
ORゲート176は、ANDゲート174から供給される変調信号と、ANDゲート175から供給される信号の論理和をとり、その結果得られる信号(以下、入力信号と称する)をLF駆動回路162−1乃至162−pのいずれか1つを選択して、供給する。
【0061】
このように、CPU161は、LF駆動回路162−1乃至162−pへの変調信号および反転搬送波の供給を制御する。
【0062】
LF駆動回路162−1乃至162−pは、ORゲート176から供給される入力信号に基づいて駆動され、入力信号に基づく電波をLFアンテナ152−1乃至152−pから放射させる。これにより、応答要求信号が、送信回路151からLFアンテナ152−1乃至152−pを介して携帯機112−1乃至112−pに送信される。
【0063】
LFアンテナ152−i(iは1からpまでの自然数)は、それぞれコンデンサCiとコイルLiを直列接続した共振回路を有し、抵抗Riを介して、LF駆動回路162−iに接続されている。
【0064】
なお、以下、LF駆動回路162−1乃至162−pを個々に区別する必要がない場合、単にLF駆動回路162と称する。また、以下、LFアンテナ152−1乃至152−pを個々に区別する必要がない場合、単にLFアンテナ152と称する。さらに、以下、抵抗R1乃至Rp、コンデンサC1乃至Cp、コイルL1乃至Lpをそれぞれ個々に区別する必要がない場合、それぞれ単に抵抗R、コンデンサC、コイルLと称する。
【0065】
[LFアンテナ152の設置位置の例]
図4は、LFアンテナ152の設置位置の例を示している。ここでは、LFアンテナ152−1乃至152−6の6つのアンテナが車両201に設置されている例が示されている。
【0066】
LFアンテナ152−1は、例えば、車両201の運転席側の車外に位置する携帯機112を検出するために、運転席側のドアの外側に設けられている。LFアンテナ152−2は、例えば、車両201の助手席側の車外に位置する携帯機112を検出するために、助手席側のドアの外側に設けられている。LFアンテナ152−3は、例えば、車両201の後方の車外に位置する携帯機112を検出するために、後方のドアの外側に設けられている。
【0067】
LFアンテナ152−4は、例えば、車両201の車室内の前部の座席(運転席および助手席)付近に位置する携帯機112を検出するために、車室内の前方に設けられている。LFアンテナ152−5は、例えば、車両201の車室内の後部の座席付近に位置する携帯機112を検出するために、車室内の中央に設けられている。LFアンテナ152−6は、例えば、車両201のトランクルーム内に位置する携帯機112を検出するために、トランクルーム内に設けられている。
【0068】
[応答要求信号および応答信号の送信タイミング]
図5は、図4に示されるようにLFアンテナ152−1乃至152−6が車両201に設置されている場合に、ユーザにより携帯機112を用いてドアの開錠が要求された際の、応答要求信号および応答信号の送信タイミングの例を示している。
【0069】
なお、ここでは、携帯機112−1乃至112−6(図5内では携帯機1乃至6と表す)の6つの携帯機が、パッシブエントリシステム101に設けられている場合の例を示している。
【0070】
図5において、時系列は、最下段の矢印で示されるように図中左から右に向かって進む。また、図中上下に並ぶ各段は、各信号の送信タイミングを示している。より詳細には、「要求」と示されている期間は、応答要求信号の送信期間を示し、「応答」と示されている期間は、応答信号の送信期間を示している。「妨害波」と示されている期間は、各LFアンテナ152の想定される検知エリアの外に位置する携帯機112が応答要求信号を受信するのを防止するための妨害波の送信期間を示している。「開錠」と示されている期間は、ドアの開錠を指令する開錠指令信号の出力期間を示している。
【0071】
「SW」の段は、施錠/開錠スイッチ121の操作信号の出力タイミングを示している。車両201のドアを開錠するために施錠/開錠スイッチ121のいずれかがユーザにより操作されると、時刻t1において、操作された施錠/開錠スイッチ121から出力される操作信号がHighからLowになる。施錠/開錠スイッチ121の操作信号がLowになると、制御部122は、送信部131のCPU161に要求応答信号の送信を指令する。これにより、ドアの開錠処理が開始される。
【0072】
「車内前方」の段は、LFアンテナ152−4から車両201の車室内の前部(運転席および助手席付近)に送信される応答要求信号の送信タイミングを示している。
【0073】
「車内中央」の段は、LFアンテナ152−5から車両201の車室内の中央(後部座席付近)に送信される応答要求信号の送信タイミングを示している。
【0074】
「車内後方」の段は、LFアンテナ152−6から車両201の後方のトランクルーム内に送信される応答要求信号の送信タイミングを示している。
【0075】
「車外操作側」の段は、LFアンテナ152−1またはLFアンテナ152−2のうち施錠/開錠スイッチ121が操作された側(以下、操作側と称する)のLFアンテナ152から、車両201の操作側の車外に送信される応答要求信号および妨害波の送信タイミングを示している。
【0076】
「車外反対側」の段は、LFアンテナ152−1またはLFアンテナ152−2のうち操作側の反対側のLFアンテナ152から、車両201の操作側と反対側の車外に送信される応答要求信号および妨害波の送信タイミングを示している。
【0077】
「車外後方」の段は、LFアンテナ152−3から車両201の後方の車外に送信される妨害波の送信タイミングを示している。
【0078】
「携帯機1」乃至「携帯機6」の段は、それぞれ、携帯機112−1乃至112−6から送信される応答信号の送信タイミングを示している。
【0079】
「出力」の段は、制御部122が、施錠/開錠スイッチ121が操作されたドアの開錠を車両制御ECU124に指令する開錠指令信号の出力タイミングを示している。
【0080】
図5に示されるように、応答要求信号は、互いに衝突しないように、各LFアンテナ152から異なるタイミングで送信される。また、車内のLFアンテナ152−4乃至152−6からは、より確実に携帯機112が受信できるように、2回ずつ応答要求信号が送信される。
【0081】
具体的には、時刻t2から時刻t3の期間において、車外操作側のLFアンテナ152から応答要求信号が送信される。また、車両201の操作側と反対側の車外に位置する携帯機112が応答要求信号を受信しないように、車外反対側のLFアンテナ152から妨害波が送信される。
【0082】
次に、車外操作側のLFアンテナ152からの応答要求信号の立ち下がりを待機する待機期間Ta1の経過後、時刻t4から時刻t5の期間において、車内前方のLFアンテナ152−4から1回目の応答要求信号が送信される。また、車外に位置する携帯機112が応答要求信号を受信しないように、LFアンテナ152−1乃至152−3から妨害波が送信される。
【0083】
次に、LFアンテナ152−4からの応答要求信号の立ち下がりを待機する待機期間Ta2の経過後、時刻t6から時刻t7の期間において、車内中央のLFアンテナ152−5から1回目の応答要求信号が送信される。また、車外に位置する携帯機112が応答要求信号を受信しないように、LFアンテナ152−1乃至152−3から妨害波が送信される。
【0084】
次に、LFアンテナ152−5からの応答要求信号の立ち下がりを待機する待機期間Ta3の経過後、時刻t8から時刻t9の期間において、車内後方のLFアンテナ152−6から1回目の応答要求信号が送信される。また、車外に位置する携帯機112が応答要求信号を受信しないように、LFアンテナ152−1乃至152−3から妨害波が送信される。
【0085】
次に、LFアンテナ152−6からの応答要求信号の立ち下がりを待機する待機期間Ta4の経過後、時刻t10から時刻t11の期間において、車内前方のLFアンテナ152−4から2回目の応答要求信号が送信される。また、車外に位置する携帯機112が応答要求信号を受信しないように、LFアンテナ152−1乃至152−3から妨害波が送信される。
【0086】
次に、LFアンテナ152−4からの応答要求信号の立ち下がりを待機する待機期間Ta5の経過後、時刻t12から時刻t13の期間において、車内中央のLFアンテナ152−5から2回目の応答要求信号が送信される。また、車外に位置する携帯機112が応答要求信号を受信しないように、LFアンテナ152−1乃至152−3から妨害波が送信される。
【0087】
次に、LFアンテナ152−5からの応答要求信号の立ち下がりを待機する待機期間Ta6の経過後、時刻t14から時刻t15の期間において、車内後方のLFアンテナ152−6から2回目の応答要求信号が送信される。また、車外に位置する携帯機112が応答要求信号を受信しないように、LFアンテナ152−1乃至152−3から妨害波が送信される。
【0088】
そして、携帯機112−1乃至携帯機112−6のいずれかが、これらのいずれかの応答要求信号を受信した場合、応答要求信号を受信した携帯機112は、時刻t16乃至時刻t17の期間において、応答信号を送信する。
【0089】
制御部122は、受信部132を介して、携帯機112から応答信号を受信した場合、受信した応答信号に基づいて、応答信号を送信した携帯機112が車外または車内のいずれに位置するかを判定する。応答信号を送信した携帯機112が車外に位置する場合、時刻t18において、制御部122は、操作側のドアの開錠を指令する開錠指令信号の車両制御ECU124への供給を開始する。
【0090】
開錠指令信号が供給された車両制御ECU124は、施錠/開錠アクチュエータ125を制御して、操作側のドアを開錠する。従って、施錠/開錠スイッチ121が操作された場合に、車外で携帯機112が検出されたとき、操作側のドアの開錠が行われる。一方、施錠/開錠スイッチ121が操作された場合に、車内でのみ携帯機112が検出されたとき、あるいは、携帯機112が検出されなかったとき、ドアの開錠は行われない。
【0091】
ところで、ユーザがドアの開錠を要求してから実際にドアが開錠されるまでの応答時間は、短いほど好ましい。この応答時間が長くなると、ユーザが待機する時間が長くなり、ユーザに不快感を与えてしまう恐れがあるからである。従って、時刻t1において施錠/開錠スイッチ121が操作されてから、時刻t18において実際にドアの開錠が開始されるまでの時間を短縮することが望まれる。
【0092】
これに対して、パッシブエントリシステム101では、応答要求信号の立ち下がりの待機期間Ta1乃至Ta6を短縮することにより、パッシブエントリの応答時間が短縮される。
【0093】
[パッシブエントリの応答時間の短縮方法]
ここで、図6および図7を参照して、パッシブエントリシステム101におけるパッシブエントリの応答時間の短縮方法について説明する。
【0094】
図6は、応答要求信号の送信終了時に、LF駆動回路162に供給される入力信号を、従来のパッシブエントリシステムと同様の方法により制御した場合と、本発明の方法により制御した場合の、入力信号、および、LF駆動回路162からLFアンテナ152に流れる共振電流の波形を比較した図である。図6の左側は、従来の制御方法により制御した場合の波形の例を示し、右側は、本発明の制御方法により制御した場合の波形の例を示している。
【0095】
応答要求信号の送信が終了する時刻teの直前において、応答要求信号の値が1(High)である場合、搬送波と同じ変調信号が入力信号としてLF駆動回路162に供給され、LF駆動回路162が駆動される。これにより、入力信号(=搬送波)に同期して、搬送波と同じ周波数の共振電流が、LF駆動回路162から抵抗Rを介してLFアンテナ152を流れる。
【0096】
そして、従来の制御方法では、応答要求信号の送信終了後(時刻teの後)、LF駆動回路162への入力信号の供給が停止される。これにより、LFアンテナ152を流れる共振電流が、抵抗Rの作用等により徐々に減衰し、最終的に0になる。この共振電流の収束に要する時間が、応答要求信号の立ち下がりに要する時間とほぼ等しくなる。
【0097】
一方、本発明の制御方法では、応答要求信号の送信が終了する時刻teから所定の期間だけ、反転キャリア出力許可部173が、反転キャリア出力許可信号をLowからHighに切り換える。その結果、時刻teから所定の期間、ANDゲート175から反転搬送波が出力される。一方、応答要求信号の送信終了に伴い、送信データ供給部171からの送信データの出力が停止する(送信データの値が0になる)。その結果、ANDゲート174からの変調信号の出力が停止する。
【0098】
これにより、時刻teから所定の期間、ORゲート176からLF駆動回路162に反転搬送波が供給される。従って、LF駆動回路162は、時刻teまで搬送波と同じ変調信号に基づいて駆動されるのに対し、時刻teから所定の期間だけ、搬送波と逆位相の反転搬送波に基づいて駆動される。
【0099】
これにより、LFアンテナ152を流れる共振電流の減衰が速まり、強震電流の収束時間が短縮され、応答要求信号の立ち下がりに要する時間が短縮される。
【0100】
図7は、従来の制御方法と本発明の制御方法で、アンテナA乃至Cの3つのLFアンテナ152から応答要求信号を順番に送信する場合において、LF駆動回路162の入力信号および各アンテナを流れる共振電流の波形を模式的に示す図である。図7の上側は、従来の制御方法により制御した場合の波形の例を示し、下側は、本発明の制御方法により制御した場合の波形の例を示している。
【0101】
図7の上側のグラフに示されるように、従来の制御方法では、時刻ta1において、アンテナA用のLF駆動回路162への入力信号の供給が開始される。これにより、アンテナAに共振電流が流れ始め、アンテナAからの応答要求信号の送信が開始される。そして、時刻ta2においてアンテナA用のLF駆動回路162への入力信号の供給が停止され、アンテナAを流れる共振電流が徐々に減衰する。
【0102】
その後、アンテナAの共振電流が所定のレベルまで収束し、アンテナAから送信される応答要求信号が立ち下がった後、時刻ta3において、アンテナB用のLF駆動回路162への入力信号の供給が開始される。これにより、アンテナBに共振電流が流れ始め、アンテナBからの応答要求信号の送信が開始される。そして、時刻ta4においてアンテナB用のLF駆動回路162への入力信号の供給が停止され、アンテナBを流れる共振電流が徐々に減衰する。
【0103】
その後、アンテナBの共振電流が所定のレベルまで収束し、アンテナBから送信される応答要求信号が立ち下がった後、時刻ta5において、アンテナC用のLF駆動回路162への入力信号の供給が開始される。これにより、アンテナCに共振電流が流れ始め、アンテナCからの応答要求信号の送信が開始される。そして、時刻ta6においてアンテナC用のLF駆動回路162への入力信号の供給が停止され、アンテナCを流れる共振電流が徐々に減衰し、時刻ta7において所定のレベルまで収束する。
【0104】
一方、図7の下側のグラフに示されるように、本発明の制御方法では、時刻tb1において、アンテナA用のLF駆動回路162への入力信号の供給が開始される。これにより、アンテナAに共振電流が流れ始め、アンテナAからの応答要求信号の送信が開始される。そして、時刻tb2においてアンテナA用のLF駆動回路162への入力信号の供給が停止されるとともに、時刻tb2から所定の期間、アンテナA用のLF駆動回路162に反転搬送波が供給される。これにより、アンテナAを流れる共振電流が、従来の制御方法と比べて早く減衰する。
【0105】
その後、アンテナAの共振電流が所定のレベルまで収束し、アンテナAから送信される応答要求信号が立ち下がった後、時刻tb3において、アンテナB用のLF駆動回路162への入力信号の供給が開始される。これにより、アンテナBに共振電流が流れ始め、アンテナBからの応答要求信号の送信が開始される。そして、時刻tb4においてアンテナB用のLF駆動回路162への入力信号の供給が停止されるとともに、時刻tb4から所定の期間、アンテナB用のLF駆動回路162に反転搬送波が供給される。これにより、アンテナBを流れる共振電流が、従来の制御方法と比べて早く減衰する。
【0106】
その後、アンテナBの共振電流が所定のレベルまで収束し、アンテナBから送信される応答要求信号が立ち下がった後、時刻tb5において、アンテナC用のLF駆動回路162への入力信号の供給が開始される。これにより、アンテナCに共振電流が流れ始め、アンテナCからの応答要求信号の送信が開始される。そして、時刻tb6においてアンテナC用のLF駆動回路162への入力信号の供給が停止されるとともに、時刻tb6から所定の期間、アンテナC用のLF駆動回路162に反転搬送波が供給される。これにより、アンテナCを流れる共振電流が、従来の制御方法と比べて早く減衰する。
【0107】
このように、本発明の制御方法によれば、従来の制御方法と比較して、各アンテナを流れる共振電流の収束が早くなる。従って、1つのアンテナからの応答要求信号の送信が終了した後、次のアンテナからの応答要求信号の送信を開始するまでの待機時間を短縮することができる。その結果、アンテナAからの応答要求信号の送信を開始してから、アンテナCからの応答要求信号が立ち下がるまでの時間を、図内に示される時間Tdだけ短縮することができる。
【0108】
その結果、ユーザが施錠/開錠スイッチ121を操作してから実際にドアが開錠されるまでのパッシブエントリの応答時間を短縮することができ、ユーザに不快感を与えることを防止できる。
【0109】
<2.変形例>
以下、本発明の実施の形態の変形例について説明する。
【0110】
本発明は、複数のLFアンテナ152から応答要求信号を送信する場合だけでなく、1つのLFアンテナ152から、応答要求信号を連続して送信する場合にも効果を奏することができる。具体的には、例えば、LFアンテナ152から応答要求信号を送信した後、その応答要求信号が収束するのを待って、同じLFアンテナ152から連続して応答要求信号を送信する場合にも効果を奏することができる。
【0111】
また、本発明は、複数のLFアンテナ152から同じ種類の信号を送信する場合だけでなく、複数のLFアンテナ152から異なるタイミングで異なる種類の信号を送信する場合にも効果を奏することができる。同様に、本発明は、1つのLFアンテナ152から異なる種類の信号を連続して送信する場合にも効果を奏することができる。
【0112】
さらに、送信回路151の構成は上述した例に限定されるものではない。例えば、図3のCPU161の機能の一部または全部をハードウエアにより構成するようにしてもよい。また、例えば、CPU161の機能の一部または全部を制御部122が実行するようにしたり、制御部122の機能の一部をCPU161が実行するようにしてもよい。さらに、例えば、CPU161からの指令により、LF駆動回路162で反転搬送波を生成するようにしてもよい。また、例えば、ANDゲート174乃至ORゲート176を各LF駆動回路162に対して1つずつ設けるようにしてもよい。
【0113】
また、以上の説明では、ドアの開錠を行う場合の例を示したが、本発明は、ドアの施錠など他の操作を行う場合にも適用できる。
【0114】
さらに、本発明は、パッシブエントリシステム以外にも、車両側から応答要求信号を送信し、応答要求信号に対して携帯機から応答信号を送信して、何らかの処理を行うシステムに適用することができる。
【0115】
なお、本明細書において、システムとは、複数の構成要素(装置、モジュール(部品)等)の集合を意味し、すべての構成要素が同一筐体中にあるか否かは問わない。
【0116】
また、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0117】
101 パッシブエントリシステム
111 車載システム
112−1乃至112−n 携帯機
121−1乃至121−m 施錠/開錠スイッチ
122 制御部
123 無線通信部
124 車両制御ECU
125 施錠/開錠アクチュエータ
131 送信部
132 受信部
151 送信回路
152−1乃至152−p LFアンテナ
161 CPU
162−1乃至162−p LF駆動回路
171 送信データ供給部
172 LF波キャリア供給部
173 反転キャリア出力許可部
174,175 ANDゲート
176 ORゲート
R1乃至Rp 抵抗
C1乃至Cp コンデンサ
L1乃至Lp コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振回路を有するアンテナを介して、車両用の携帯機と無線通信を行う車両用の無線通信装置において、
前記アンテナから信号を送信させる送信回路と、
送信データにより搬送波を変調した変調信号を前記アンテナから送信した後、前記搬送波の位相を反転した反転搬送波を所定の時間だけ前記送信回路に供給する制御回路と
を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記無線通信装置は、複数の前記アンテナを介してそれぞれ異なるタイミングで前記変調信号を送信し、
前記制御回路は、第1の前記アンテナを介して前記変調信号を送信した後、第2の前記アンテナを介して前記変調信号を送信する前に、前記反転搬送波を所定の時間だけ第1の前記アンテナ用の前記送信回路に供給する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記変調信号および前記搬送波の位相を反転させた前記反転搬送波を生成し、前記送信回路に供給する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記送信回路は、前記制御回路からの指令により前記反転搬送波を生成する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記アンテナをさらに備える
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項6】
共振回路を有するアンテナから信号を送信させる送信回路を備え、前記アンテナを介して、車両用の携帯機と無線通信を行う車両用の無線通信装置が、送信データにより搬送波を変調した変調信号を前記アンテナから送信させた後、前記搬送波の位相を反転した反転搬送波を所定の時間だけ前記送信回路に供給する
ことを特徴とする通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−68033(P2013−68033A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208484(P2011−208484)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(510123839)オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社 (110)
【Fターム(参考)】