説明

無線通信装置及び無線通信装置での共振周波数の補正方法

【課題】アンテナコイルのインダクタンスが変化した際の通信性能の劣化を抑制することが可能な技術を提供する。
【解決手段】無線通信装置100は、アンテナコイル1と、コンデンサ2と、インダクタンス検出部4と、共振周波数補正部5とを備えている。インダクタンス検出部4は、アンテナコイル1のインダクタンスを検出する。共振周波数補正部5は、アンテナコイル1とコンデンサ2とで構成される共振回路の共振周波数を、前記インダクタンス検出部での検出結果に基づいて補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナコイルとコンデンサとで構成される共振回路を用いて通信を行う無線通信装置での共振周波数の補正技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から無線通信に関して様々な技術が提案されている。例えば特許文献1には、非接触ICカードに関する技術が開示されている。また特許文献2には、携帯電話機に搭載される非接触ICチップに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−63123号公報
【特許文献2】特開2010−147743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2にも記載されているように、非接触ICカードや非接触ICチップなどでは、アンテナコイルとコンデンサとで構成される共振回路を用いて通信が行われる。このような、アンテナコイルとコンデンサとで構成される共振回路を用いて通信を行う無線通信装置においては、アンテナコイルのインダクタンスに温度変化や経時変化が生じることがある。また、無線通信装置においてアンテナコイルが固定されていない場合には、無線通信装置が落下するなどして当該無線通信装置に衝撃が加わると、アンテナコイルの位置が変化し、アンテナコイルと周辺部品との間の距離が変化することがある。このとき、周辺部品が金属等で構成されている場合には、アンテナコイルのインダクタンスが変化することがある。アンテナコイルのインダクタンスが変化すると、共振回路の共振周波数が変化し、無線通信装置の通信性能が劣化する。
【0005】
そこで、本発明は上述の点に鑑みて成されたものであり、アンテナコイルのインダクタンスが変化した際の通信性能の劣化を抑制することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る無線通信装置は、アンテナコイルとコンデンサとで構成される共振回路を用いて通信を行う無線通信装置であって、アンテナコイルと、前記アンテナコイルと共振回路を形成するコンデンサと、前記アンテナコイルのインダクタンスを検出するインダクタンス検出部と、前記インダクタンス検出部での検出結果に基づいて、前記共振回路の共振周波数を補正する共振周波数補正部とを備える。
【0007】
また、本発明に係る無線通信装置の一態様では、前記コンデンサは、複数の容量素子を有し、前記共振周波数補正部は、前記共振周波数を補正する際には、前記複数の容量素子の間での接続関係を変化させることによって前記コンデンサのキャパシタンスを変化させる。
【0008】
また、本発明に係る無線通信装置の一態様では、前記コンデンサは、バリキャップダイオードを有し、前記共振周波数補正部は、前記共振周波数を補正する際には、前記バリキャップダイオードのキャパシタンスを変化させることによって前記コンデンサのキャパシタンスを変化させる。
【0009】
また、本発明に係る無線通信装置での共振周波数の補正方法は、アンテナコイルとコンデンサとで構成される共振回路を用いて通信を行う無線通信装置における、当該共振回路の共振周波数の補正方法であって、(a)前記アンテナコイルのインダクタンスを検出する工程と、(b)前記工程(a)での検出結果に基づいて前記共振周波数を補正する工程とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アンテナコイルのインダクタンスが変化した際の通信性能の劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態に係る無線通信装置の構成を示す図である。
【図2】本実施の形態に係る共振周波数補正部及びコンデンサの構成を示す図である。
【図3】本実施の形態に係る無線通信装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】本実施の形態に係る無線通信装置の第1変形例の構成を示す図である。
【図5】本実施の形態に係る無線通信装置の第2変形例の部分構成を示す図である。
【図6】本実施の形態に係る無線通信装置の第2変形例の部分構成を示す図である。
【図7】本実施の形態に係る無線通信装置の第3変形例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本実施の形態に係る無線通信装置100の構成を示す図である。本実施の形態に係る無線通信装置100は、例えば、非接触ICカードであって、リーダライタと無線通信を行う。
【0013】
図1に示されるように、無線通信装置100は、アンテナコイル1と、コンデンサ2と、メイン処理部3と、インダクタンス検出部4と、共振周波数補正部5とを備えている。
【0014】
アンテナコイル1は、リーダライタからの送信信号を受信するとともに、メイン処理部3で形成された、リーダライタ向けの送信信号を送信する。アンテナコイル1は、一本の導線が複数回巻かれて構成されている。
【0015】
コンデンサ2は、そのキャパシタンス(静電容量)が可変であって、アンテナコイル1と共振回路を構成する。コンデンサ2の一端2a及び他端2bがアンテナコイル1の一端1a及び他端1bとそれぞれ電気的に接続されることによって共振回路を構成する。無線通信装置100は、この共振回路を用いてリーダライタと通信を行う。以後、共振回路と言えば、アンテナコイル1とコンデンサ2とで構成された共振回路を意味するものとし、共振周波数と言えば、当該共振回路の共振周波数を意味するものとする。
【0016】
共振周波数は、無線通信装置100とリーダライタとの間の通信に使用される無線周波数(キャリア周波数)に応じて設定される。例えば、無線通信装置100が1種類のリーダライタだけと通信する際には、そのリーダライタとの間の通信で使用される無線周波数と一致するように、共振周波数が設定される。
【0017】
一方で、無線通信装置100が複数種類のリーダライタと通信する際には、各リーダライタとの間で所望の通信性能を確保できるように共振周波数が設定される。これにより、無線通信装置100は、使用する無線周波数が異なる複数種類のリーダライタのそれぞれと適切に通信することが可能となる。
【0018】
メイン処理部3は、コンデンサ2の一端2a及び他端2bと接続されており、アンテナコイル1で受信された受信信号(共振回路で受信された受信信号)が入力される。メイン処理部3は、入力された受信信号に基づいて、無線通信装置100の電源電圧を生成する。無線通信装置100は、この電源電圧を使用して動作を行う。またメイン処理部3は、アンテナコイル1での受信信号に対して復調処理等を行って、当該受信信号に含まれるデータを取得する。さらにメイン処理部3は、リーダライタ向けの送信データを生成する。そして、メイン処理部3は、生成した送信データに基づいて搬送波を変調して送信信号を生成し、それをアンテナコイル1に入力する。これにより、アンテナコイル1からは、リーダライタ向けの送信信号が無線送信される。
【0019】
インダクタンス検出部4は、アンテナコイル1のインダクタンスを検出し、その検出結果を共振周波数補正部5に通知する。インダクタンス検出部4は、選択回路40,41と、接続制御部42と、第1クロック発生器43と、第2クロック発生器44と、位相比較器45とを備えている。
【0020】
選択回路40は、アンテナコイル1の一端1aを、コンデンサ2の一端2aに接続するか、位相比較器45の入力端子に接続するかを、接続制御部42による制御によって切り替える。選択回路41は、アンテナコイル1の他端1bを、コンデンサ2の他端2bに接続するか、第1クロック発生器43の出力端子に接続するかを、接続制御部42による制御によって切り替える。
【0021】
第1クロック発生器43は、所定周波数の第1クロック信号CLK1を生成して出力する。選択回路41によって、アンテナコイル1の他端1bと、第1クロック発生器43の出力端子とが電気的に接続されている場合には、第1クロック信号CLK1は、アンテナコイル1の他端1bに入力される。そして、選択回路40によって、アンテナコイル1の一端1aと、位相比較器45の入力端子とが電気的に接続されている場合には、位相比較器45には、アンテナコイル1の一端1aから出力される第1クロック信号CLK1が入力される。第2クロック発生器44は、第1クロック信号CLK1と同じ周波数の第2クロック信号CLK2を生成して位相比較器45に出力する。
【0022】
位相比較器45は、アンテナコイル1の一端1aから出力される第1クロック信号CLK1の位相と、第2クロック発生器44から出力される第2クロック信号CLK2の位相とを比較して、当該2つの位相の差を示す位相差信号を出力する。アンテナコイル1のインダクタンスが変化すると、それに応じて、アンテナコイル1の一端1aから出力される第1クロック信号CLK1の位相が変化することから、位相比較器45から出力される位相差信号は、アンテナコイル1のインダクタンスの変化に応じて変化することになる。よって、当該位相差信号は、アンテナコイル1のインダクタンスを示していると言える。
【0023】
インダクタンス検出部4は、第1クロック発生器43からアンテナコイル1を通じて入力される第1クロック信号CLK1と、第2クロック発生器44から入力される第2クロック信号CLK2との間の位相差を検出し、当該位相差を示す位相差信号を、アンテナコイル1のインダクタンスを検出した結果を示す検出信号DSとして出力する。
【0024】
共振周波数補正部5は、インダクタンス検出部4での検出結果に基づいて、アンテナコイル1とコンデンサ2とで構成される共振回路の共振周波数を補正する。図2は共振周波数補正部5とコンデンサ2の構成を示す図である。
【0025】
図2に示されるように、コンデンサ2は、互いにキャパシタンスが異なっている複数の容量素子20〜23で構成されている。また共振周波数補正部5は、複数の選択回路50〜52と接続制御部53とを備えている。共振周波数補正部5は、共振周波数を補正する際には、複数の容量素子20〜23の間の接続関係を変化させることによって、コンデンサ2のキャパシタンスを変化させる。
【0026】
容量素子20〜23の一端は、互いに接続されており、当該一端がコンデンサ2の一端2aとなっている。容量素子20〜23の他端は、選択回路50〜52にそれぞれ接続されている。容量素子23の一端は、選択回路50〜52のそれぞれに接続されている。そして、容量素子23の他端が、コンデンサ2の他端2bとなっている。
【0027】
接続制御部53は、インダクタンス検出部4から出力される検出信号DSに基づいて、選択回路50〜52を制御する。選択回路50は、接続制御部53による制御によって、容量素子23一端に、容量素子20の他端を接続するか否かを切り替える。選択回路51は、接続制御部53による制御によって、容量素子23一端に、容量素子21の他端を接続するか否かを切り替える。選択回路52は、接続制御部53による制御によって、容量素子23一端に、容量素子22の他端を接続するか否かを切り替える。
【0028】
本実施の形態では、選択回路50〜52が接続制御部53によって制御されることによって、3つの容量素子20〜22のうちの少なくとも1つが容量素子23に接続される。そして、共振周波数補正部5は、複数の容量素子20〜23の間の接続関係を変化させることにより、コンデンサ2のキャパシタンスを7通りに変化させることができる。
【0029】
コンデンサ2がとり得るキャパシタンスとしては、容量素子23に対して容量素子20だけが直列接続された場合のキャパシタンスと、容量素子23に対して容量素子21だけが直列接続された場合のキャパシタンスと、容量素子23に対して容量素子22だけが直列接続された場合のキャパシタンスと、容量素子23に対して、並列接続された容量素子20,21が直列接続された場合のキャパシタンスと、容量素子23に対して、並列接続された容量素子20,22が直列接続された場合のキャパシタンスと、容量素子23に対して、並列接続された容量素子21,22が直列接続された場合のキャパシタンスと、容量素子23に対して、並列接続された容量素子20〜22が直列接続された場合のキャパシタンスとの7通りが存在する。以後、この7通りのキャパシタンスを、値の小さいものから順にC1〜C7と呼ぶ。
【0030】
本実施の形態に係る共振周波数補正部5は、コンデンサ2のキャパシタンスを変化させることによって共振回路の共振周波数を補正する。以下に、無線通信装置100での共振周波数の補正方法について詳細に説明する。本実施の形態に係る無線通信装置100では、リーダライタからの信号を受信する前においては、アンテナコイル1とコンデンサ2とが接続されている。また、無線通信装置100の出荷時においては、コンデンサ2のキャパシタンスは、C1〜C7の真ん中の値、つまりC4に設定されている。無線通信装置100では、アンテナコイル1のインダクタンスが基準値から変化していない場合には、コンデンサ2のキャパシタンスがC4のときに、共振周波数が最適値をとるようになっている。この基準値としては、例えば、無線通信装置100の出荷時における常温でのアンテナコイル1のインダクタンスが採用される。
【0031】
図3は、共振周波数を補正する際の無線通信装置100の動作を示す図である。図3に示されるように、ステップs1において、コンデンサ2に接続されたアンテナコイル1がリーダライタからの信号を受信すると、ステップs2において、メイン処理部3は受信信号に基づいて電源電圧を生成する。この電源電圧は、第1クロック発生器43、第2クロック発生器44、位相比較器45等に供給される。
【0032】
次にステップs3において、選択回路40は、接続制御部42による制御によって、アンテナコイル1の一端1aと位相比較器45とを接続し、選択回路41は、接続制御部42による制御によって、アンテナコイル1の他端1bと第1クロック発生器43とを接続する。これにより、第1クロック信号CLK1がアンテナコイル1の他端1bに入力され、アンテナコイル1の一端1aから出力される第1クロック信号CLK1が位相比較器45に入力される。
【0033】
次にステップs4において、位相比較器45は、アンテナコイル1の一端1aから出力される第1クロック信号CLK1と、第2クロック発生器44からの第2クロック信号CLK2との間の位相差を検出し、その位相差を示す位相差信号を検出信号DSとして出力する。これにより、インダクタンス検出部4での、アンテナコイル1のインダクタンスの検出結果が共振周波数補正部5に通知される。
【0034】
次にステップs5において、共振周波数補正部5は、検出信号DSに基づいて、アンテナコイル1のインダクタンスの基準値からの変化量を取得する。共振周波数補正部5には、無線通信装置100の出荷時における検出信号DSが基準検出信号DSとして予め記憶されている。この基準検出信号DSは、無線通信装置100の出荷時におけるアンテナコイル1のインダクタンス、つまり基準値を示している。共振周波数補正部5は、基準検出信号DSと、ステップs4で生成された検出信号DSとに基づいて、アンテナコイル1のインダクタンスの基準値からの変化量を求める。そしてステップs6において、共振周波数補正部5は、求めた変化量に応じてコンデンサ2のキャパシタンスを変化させて、共振周波数を補正する。これにより、アンテナコイル1のインダクタンスの変化による共振周波数のずれが低減される。
【0035】
ここで、アンテナコイル1のインダクタンスをLとし、コンデンサ2のキャパシタンスをCとすると、共振周波数f0は、以下の式で表される。
【0036】
【数1】

【0037】
共振周波数補正部5は、アンテナコイル1のインダクタンスLが基準値から大きくなっていれば、その変化量に応じた量だけ、コンデンサ2のキャパシタンスCをC4(初期値)よりも小さくして、インダクタンスLの変化による共振周波数f0のずれが小さくなるようにする。
【0038】
一方で、共振周波数補正部5は、アンテナコイル1のインダクタンスLが基準値から小さくなっていれば、その変化量に応じた量だけ、コンデンサ2のキャパシタンスCをC4よりも大きくして、インダクタンスLの変化による共振周波数f0のずれが小さくなるようにする。
【0039】
共振周波数補正部5では、例えば、アンテナコイル1のインダクタンスの基準値からの変化量と、当該変化量だけ当該インダクタンスが基準値から変化した場合において共振周波数が適切な値となるコンデンサ2のキャパシタンスCとの対応関係を示すテーブルが予め記憶されている。共振周波数補正部5は、このテーブルに基づいてコンデンサ2のキャパシタンスCを変更する。
【0040】
なお、アンテナコイル1のインダクタンスが基準値から変化していなければ、コンデンサ2のキャパシタンスは変化されず、現状の値が維持される。
【0041】
ステップs6が実行されると、ステップs7において、選択回路40は、接続制御部42に制御されることによって、アンテナコイル1の一端1aとコンデンサ2の一端2aとを接続し、選択回路41は、接続制御部42に制御されることによって、アンテナコイル1の他端1bとコンデンサ2の他端2bとを接続する。これにより、アンテナコイル1とコンデンサ2とで再び共振回路が構成されるようになる。この共振回路の共振周波数は、ステップs6での補正により、適切な値に設定されていることから、無線通信装置100は、当該共振回路を使用して、リーダライタと適切に通信することができる。
【0042】
なお、上記の例では、コンデンサ2のキャパシタンスは7通りに変化させることが可能であったが、コンデンサ2のキャパシタンスを7通りよりも多く変化させることができるようにしても良い。図2の例では、容量素子23に対して接続することが可能な容量素子は3つであったが、4つ以上にすることによって、コンデンサ2のキャパシタンスを7通りよりも多く変化させることができる。また、図2の例では、選択回路40と容量素子23との間には、容量素子20〜22及び選択回路50〜52から成る回路が1段だけ設けられていたが、選択回路40と容量素子23との間において、当該回路を多段接続することによって、コンデンサ2のキャパシタンスを7通りよりも多く変化させることができる。
【0043】
以上のように、本実施の形態では、インダクタンス検出部4での、アンテナコイル1のインダクタンスの検出結果に基づいて、共振回路の共振周波数が補正されるため、当該インダクタンスが変化した際の共振周波数のずれを小さくすることができる。よって、インダクタンスが変化した際の通信性能の劣化を抑制することができる。
【0044】
なお、一般的に、コンデンサ2を構成する部品を適切に選択することによって、コンデンサ2のキャパシタンスの意図しない変化(温度変化等)を十分に抑制することができる。したがって、本実施の形態のように、コンデンサ2のキャパシタンスの意図しない変化を考慮せずに共振周波数を補正したとしても、共振周波数を適切な値に設定することができる。
【0045】
<第1変形例>
上記の実施の形態では、インダクタンス検出部4で得られる検出信号DSから、アンテナコイル1のインダクタンスの基準値からの変化量を求めて、求めた変化量に基づいて共振周波数を補正したが、当該変化量を求めることなく共振周波数を補正しても良い。
【0046】
例えば、事前実験やシミュレーションなどによって、アンテナコイル1のインダクタンスが変化した際の検出信号DSと、当該検出信号DSが得られる際のアンテナコイル1のインダクタンスと適切な共振周波数を形成するコンデンサ2のキャパシタンスとの対応関係を求めておいて、その対応関係を共振周波数補正部5に予め記憶させておく。そして、共振周波数補正部5は、予め記憶する当該対応関係と、インダクタンス検出部4から出力される検出信号DSに基づいて、コンデンサ2のキャパシタンスを変化させて共振周波数を補正する。
【0047】
このような場合であっても、アンテナコイル1のインダクタンスが変化した際の共振周波数のずれを小さくすることができ、通信性能の劣化を抑制することができる。
【0048】
<第2変形例>
上記の実施の形態では、コンデンサ2を複数の容量素子20〜23で構成していたが、図4に示されるように、コンデンサ2をバリキャップダイオード25で構成しても良い。バリキャップダイオード25のキャパシタンスは、共振周波数補正部5によって制御される。
【0049】
本例のように、コンデンサ2をバリキャップダイオード25で構成することによって、コンデンサ2のキャパシタンスを簡単に細かく変化させることができる。よって、共振周波数をより精度良く補正することができる。
【0050】
<第3変形例>
上記の例では、コンデンサ2のキャパシタンスを意図的に変化させることによって共振周波数を補正していたが、この代わりに、アンテナコイル1のインダクタンスを意図的に変化させることによって共振周波数を補正しても良い。図5はこの場合の無線通信装置100でのアンテナコイル1の周辺部分を示す図である。
【0051】
図5に示されるように、本変形例に係る無線通信装置100では、アンテナコイル1のインダクタンスを調整することが可能なインダクタンス調整部55が設けられている。このインダクタンス調整部55は、上述の接続制御部53によって制御され、当該接続制御部53とともに、共振周波数を補正する共振周波数補正部5を構成する。本変形例では、コンデンサ2のキャパシタンスは固定であるため、上述の選択回路50〜52は不要である。
【0052】
インダクタンス調整部55は、アンテナコイル1において、導線が巻かれている巻回部分1cから、選択回路41に接続された一端1bまでの部分1d(以後、「調整部分1d」と呼ぶ)の長さを変化させることによって、アンテナコイル1全体のインダクタンスを変化させる。本実施の形態では、アンテナコイル1の調整部分1dの長さを3通りに変化させることによって、アンテナコイル1のインダクタンスを3通りに変化させる。
【0053】
インダクタンス調整部55は、複数の端子550a〜550cを有する選択回路550を備えている。端子550aは導線1eによって選択回路41と接続されており、端子550bは導線1fによって巻回部分1cと接続されている。また、端子550cは、導線1gによって巻回部分1cと接続されており、端子550dは、導線1hによって巻回部分1cと接続されている。選択回路550は、接続制御部53による制御により、端子550aに対して、端子550b〜550dのいずれか一つを接続する。導線1f,1g,1hの長さは、この順で大きくなっている。図5では、導線1e〜1hのそれぞれを等化回路(インダクタ)で示している。
【0054】
以上のようなインダクタンス調整部55において、選択回路550が端子550aと端子550bとを接続すると、アンテナコイル1の調整部分1dの長さが最小となる。このときのアンテナコイル1のインダクタンスをL1と呼ぶ。また、選択回路550が端子550aと端子550cとを接続すると、アンテナコイル1の調整部分1dの長さが2番目に小さくなる。このときのアンテナコイル1のインダクタンスをL2と呼ぶ。そして、選択回路550が端子550aと端子550dとを接続すると、アンテナコイル1の調整部分1dの長さが最大となる。このときのアンテナコイル1のインダクタンスをL3と呼ぶ。L1〜L3は、この順に大きくなっている。
【0055】
L1〜L3には、経時変化等によって、意図しない変化が生じることがある。本変形例に係る無線通信装置100の出荷時においては、アンテナコイル1のインダクタンスはL2に設定されている。したがって、無線通信装置100の出荷時における常温でのL2が、アンテナコイル1のインダクタンスの基準値となる。
【0056】
以上のような構成を有する本変形例に係る無線通信装置100では、共振周波数補正部5が、検出信号DSに基づいて、アンテナコイル1のインダクタンスの基準値からの変化量を取得すると、取得した変化量に応じて、アンテナコイル1のインダクタンスを変化させて共振周波数を補正する。例えば、アンテナコイル1のインダクタンスが基準値から大きくなっていれば、共振周波数補正部5は、アンテナコイル1のインダクタンスをL2からL1に変化させて、インダクタンスの変化による共振周波数のずれが小さくなるようにする。
【0057】
一方で、アンテナコイル1のインダクタンスが基準値から小さくなっていれば、共振周波数補正部5は、アンテナコイル1のインダクタンスをL2からL3に変化させて、インダクタンスの変化による共振周波数のずれが小さくなるようにする。
【0058】
このように、アンテナコイル1のインダクタンスを意図的に変化させることによって、共振回路の共振周波数を補正する場合であっても、アンテナコイル1のインダクタンスが変化した際の共振周波数のずれを小さくすることができ、通信性能の劣化を抑制することができる。
【0059】
なお、アンテナコイル1のインダクタンスは3通りよりも多く変化できるようにしても良い。例えば、インダクタンス調整部550を図6に示されるように構成することによって、アンテナコイル1のインダクタンスを9通りに変化させることができる。
【0060】
図6に示されるインダクタンス調整部550には、複数の端子551a〜551dを有する選択回路551がさらに設けられている。端子551b〜551dは、導線1i〜1kによって選択回路550の端子550aにそれぞれ接続されている。端子551aは、上述の導線1eによって選択回路41に接続されている。選択回路551は、接続制御部53による制御によって、端子551aに対して、3つの端子551b〜551dのいずれか一つを接続する。導線1i〜1kの長さは互いに異なっている。
【0061】
図6のインダクタンス調整部55においては、選択回路550,551のそれぞれでの端子間の接続状態を変化させることによって、アンテナコイル1のインダクタンスを9通りに変化させることができる。
【0062】
図6の例では、券回部分1cと導線1eの間において、選択回路とそれに接続された3つの導線とで構成される回路を多段(2段)接続することによって、アンテナコイル1のインダクタンスを3通りよりも多く変化できるようにしたが、他の方法を用いて、アンテナコイル1のインダクタンスを3通りよりも多く変化できるようにしても良い。例えば、図5の例において、選択回路550によって導線1eと接続することが可能な導線の数を4つ以上にすることによって、アンテナコイル1のインダクタンスを3通りよりも多く変化できるようにしても良い。
【0063】
<第4変形例>
図7は本変形例に係る無線通信装置100の構成を示す図である。図7に示されるように、本変形例に係る無線通信装置100では、図1に示される無線通信装置100と比較して、第1クロック発生器43の代わりにVCO(voltage controlled oscillator)46が設けられるとともに、ループフィルタ47がさらに設けられている。本変形例では、VCOから出力されるクロック信号が第1クロック信号CLK1として選択回路41に入力される。そして、VCO46、第2クロック発生器44、位相比較器45及びループフィルタ47によって、第1クロック信号CLK1の位相を、第2クロック信号CLK2の位相に一致させるPLL回路が構成されている。
【0064】
ループフィルタ47は、ローパスフィルタであって、位相比較器45から出力される位相差信号に対してフィルタリングを行って出力する。ループフィルタ47からの出力信号は、第1クロック信号CLK1の位相を制御するための制御信号としてVCO46に入力される。
【0065】
以上のような構成を有する本変形例に係る無線通信装置100においては、アンテナコイル1のインダクタンスが変化すると、それに応じて、位相比較器45に入力される第1クロック信号CLK1の位相が変化することから、ループフィルタ47から出力される制御信号は、アンテナコイル1のインダクタンスの変化に応じて変化する。よって、当該制御信号は、アンテナコイル1のインダクタンスを示していると言える。本変形例では、この制御信号を、インダクタンス検出部4での、アンテナコイル1のインダクタンスの検出結果を示す検出信号DSとして、共振周波数補正部5に入力する。共振周波数補正部5は、入力された検出信号DSに基づいて、上記と同様にして、共振周波数を補正する。
【0066】
なお、上記の第1〜第3変形例においても、本変形例と同様に、第1クロック発生器43の代わりにVCO46を設けるとともに、ループフィルタ47をさらに設けて、ループフィルタ47の出力信号を検出信号DSとして共振周波数補正部5に入力しても良い。
【0067】
<その他の変形例>
上記の例では、本願発明を非接触ICカードに適用する場合を例にあげて説明したが、本願発明は他の無線通信装置にも適用することができる。例えば、本願発明は、RFID(Radio Frequency IDentification)や、特許文献2に記載されているような、携帯電話機等に内蔵される非接触ICチップに適用することができる。また、本願発明は、非接触ICカード等と通信を行うリーダライタにも適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 アンテナコイル
2 コンデンサ
4 インダクタンス検出部
5 共振周波数補正部
20〜23 容量素子
25 バリキャップダイオード
100 無線通信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナコイルとコンデンサとで構成される共振回路を用いて通信を行う無線通信装置であって、
アンテナコイルと、
前記アンテナコイルと共振回路を形成するコンデンサと、
前記アンテナコイルのインダクタンスを検出するインダクタンス検出部と、
前記インダクタンス検出部での検出結果に基づいて、前記共振回路の共振周波数を補正する共振周波数補正部と
を備える、無線通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信装置であって、
前記コンデンサは、複数の容量素子を有し、
前記共振周波数補正部は、前記共振周波数を補正する際には、前記複数の容量素子の間での接続関係を変化させることによって前記コンデンサのキャパシタンスを変化させる、無線通信装置。
【請求項3】
請求項1及び請求項2のいずれか一つに記載の無線通信装置であって、
前記コンデンサは、バリキャップダイオードを有し、
前記共振周波数補正部は、前記共振周波数を補正する際には、前記バリキャップダイオードのキャパシタンスを変化させることによって前記コンデンサのキャパシタンスを変化させる、無線通信装置。
【請求項4】
アンテナコイルとコンデンサとで構成される共振回路を用いて通信を行う無線通信装置における、当該共振回路の共振周波数の補正方法であって、
(a)前記アンテナコイルのインダクタンスを検出する工程と、
(b)前記工程(a)での検出結果に基づいて前記共振周波数を補正する工程と
を備える、無線通信装置での共振周波数の補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−114822(P2012−114822A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263960(P2010−263960)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】