説明

無線通信装置

【課題】意図しない通信障害による通信の切断を予防することの可能な無線通信装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る無線通信装置1は、加速度センサ部15を備え、加速度センサ部15が無線通信装置1の空間的移動を検出した際には、移動に伴う通信切断の可能性があるとして、ユーザに対して警告するとともに、データ書込み等を一時中断させることにより、ファイルシステムの破損を予防する。
特に、信頼性の要求されるデータの送信中に無線通信が切断してしまった場合であっても、事前にデータ送信を中断することができるので、そのようなデータの保護を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線通信装置に関し、特に意図しない通信障害による通信の切断を予防することの可能な無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ(PC)及びその周辺装置の小型化、軽量化が進み、ノートPC等を手軽に持ち運びできるようになった。その一方で、PC等は精密機械であることから、持ち運びによる破損の危険性も高く、破損防止のための機能も同時に研究されてきた。
【0003】
例えば、ハードディスクドライブ(HDD)等はわずかな衝撃によってもヘッド部分を破損しやすいため、HDD装置を保護するための発明もされている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、デスクトップPCにおいては、様々な周辺機器との間を有線ケーブルによって接続しても何ら問題はなかったが、ノートPCを持ち運ぼうとした場合、当然に有線ケーブルを接続したままにすることはできず、それに伴い、ケーブル接続を要しない無線LANやワイヤレスUSB等の無線通信の技術も進歩した。
【特許文献1】特開2000−268479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PC等のホスト装置が、例えばHDD等の外部記憶装置とUSB等の有線ケーブルにより接続されていたとき、外部装置に対する書込み動作中にケーブルを抜いてしまうと、外部記憶装置中のファイルシステムが破壊される可能性がある。このようなトラブルに関しては、ケーブルを抜かないように事前に警告することが可能であり、また近年のPCの普及に伴い、多くのユーザが認識している禁忌動作である。
【0006】
一方、ワイヤレスUSB等の無線通信による接続では、ユーザが意図しないタイミングで無線通信が切断し、実質的には有線ケーブルを向いた状態と同様の現象が発生する可能性がある。しかし、無線通信においては、切断の可能性を事前にユーザが認識しそれを回避することは困難であり、また切断したこと自体をユーザがすぐに認識できない場合もある。
【0007】
特に、可搬性に優れるモバイル機器においては、各装置の空間的位置が時間と共に変化する可能性が高い。そのため、その度に各装置間の無線通信の品質が変化するため、上述のような危険に常に曝されることになる。
【0008】
従って、本発明の目的は、意図しない通信障害による無線通信の切断を予防することの可能な無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するため、無線通信により伝送される電子データを他の外部装置との間で送受信する無線通信部と、移動を検出する移動検出部と、を備え、前記無線通信部は、前記移動検出部により前記移動が検出されたとき、無線通信による前記電子データの送信を中断する無線通信装置を提供する。
【0010】
上記移動検出部は、加速度により前記移動を検出するものであることが望ましい。
【0011】
また、上記無線通信装置は、前記移動検出部の検出結果に基づき前記電子データの送信を中断する際にユーザに対して中断の警告を行う警告部をさらに備えるものであってもよい。
【0012】
上記無線通信装置は、無線通信の品質を検出する通信品質検出部をさらに備え、前記警告部は、前記通信品質検出部の検出結果が品質良好であった場合には警告を行わないものであってもよい。
【0013】
上記無線通信装置は、前記移動検出部が前記無線通信装置の移動を検出したとき、通信電力を増大させるものであってもよい。
【0014】
また、本発明は、無線通信に基づいて伝送される電子データを他の外部装置との間で送受信する無線通信部と、装置自体の移動に基づく検出信号を検出する移動検出部と、前記検出信号に基づきユーザに対して警告を行う警告部とを備える無線通信装置を提供する。
【0015】
また、本発明は、無線通信により伝送される電子データを他の外部装置との間で送受信する無線通信部と、移動を検出する移動検出部と、を備え、前記無線通信部は、前記移動検出部により前記移動が検出されたとき、無線通信による前記電子データの送信中断要求を前記他の外部機器に通知する無線通信装置を提供する。
【0016】
上記移動検出部は、加速度により前記移動を検出するものであることが望ましい。
【0017】
また、上記無線通信装置は、前記移動検出部の検出結果に基づき前記電子データの送信を中断する際にユーザに対して中断の警告を行う警告部をさらに備えるものであってもよい。
【0018】
上記無線通信装置は、無線通信の品質を検出する通信品質検出部をさらに備え、前記警告部は、前記通信品質検出部の検出結果が品質良好であった場合には警告を行わないものであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、意図しない通信障害による無線通信の切断を予防することの可能な無線通信装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
(システムの構成)
図1は、本発明に係る無線通信システムの構成を示す概略図である。無線通信システムは、無線通信装置1及びデータ格納装置2より構成され、それらは無線通信によりデータ等の送受信が可能となる。
【0022】
図1に示す無線通信装置1は、例えば、ノートPCであり、データ格納装置2は、例えば、モバイルハードディスクドライブ(モバイルHDD)であるが、本発明はこれらに限られるものではない。また、無線通信システムも、無線通信装置1及びデータ格納装置2からなるものに限られず、2以上の無線通信が可能な装置からなるシステムであれば、いかなるものでも構わない。
【0023】
無線通信の方法としては、例えば、UWB(Ultra Wide Band)が使用される。しかし、本発明に使用される無線通信はUWBに限られるものではなく、ワイヤレスUSBや無線LAN、Bluetooth(登録商標)等、いかなる無線通信の方法でも構わない。
【0024】
ノートPCからなる無線通信装置1を用いて情報処理を行う際に、処理対象となるデータが無線通信装置1ではなく、外部端末であるモバイルHDDからなるデータ格納装置2に格納されていたとする。このとき、両端末は有線接続されていなくても、互いに例えばUWB通信により無線接続が行われているのであれば、無線通信装置1は無線通信を介して、データ格納装置2より必要なデータを取得することができる。
【0025】
(無線通信装置及びデータ格納装置の内部構成)
図2は、本発明に係る無線通信システムを構成する無線通信装置1及びデータ格納装置2の構成を示すブロック図である。
【0026】
図2(a)において、無線通信装置1は、制御部11と、表示部12と、入力部13と、データ格納部14と、加速度センサ部15と、通信品質検出部16と、無線通信部17とアンテナ18とからなる。
【0027】
制御部11は、無線通信装置1の制御を司るものであり、具体的にはCPU(中央演算装置)等が用いられる。
【0028】
表示部12は、無線通信等により取得した情報の表示や、後述する無線通信の切断可能性の警告表示などを行うものであり、具体的には、ノートPCのモニタ部などに該当する。
【0029】
入力部13は、無線通信装置1に対してユーザが各種の指示を行うためのものであり、具体的には、ノートPCのキーボードやタッチパッドなどに該当する。
【0030】
データ格納部14は、無線通信装置1を駆動させるために制御部11において実行されるプログラムデータ、無線通信装置1を駆動させる際に制御部11が必要とするパラメータ、無線通信を介して受信した各種データ等を格納するものである。具体的には、ROM、RAM、HDD等から成る。上記プログラムデータ等消去不可のデータはROMに、書込みや消去は可能であるが保存を要する各種データはHDDに、一時的にしか使用されないパラメータ等はRAMに、それぞれ格納される。
【0031】
加速度センサ部15は、無線通信装置1の移動に伴う物理量を検出するものであり、移動方向とその際の加速度を検出する。
【0032】
通信品質検出部16は、後述する無線通信部17における無線通信の品質を管理し、通信品質の劣化の有無を検出する。通信品質の劣化の有無の検出は、例えば無線通信における電波強度や伝送レートに基づいて行われる。電波強度が強い或いは伝送レートが大きい場合には、通信品質が良好であり、電波強度が弱い或いは伝送レートが小さい場合には、通信品質が劣化していると検出される。特にUWB通信では、このような通信品質はリンククオリティ(Link Quality)と呼ばれる。
【0033】
無線通信部17は、後述のアンテナ18を介して、データ格納装置2等の外部端末との間におけるデータの送受信を行うものである。具体的には、UWB通信モジュールなどに該当する。
【0034】
アンテナ18は、データ格納装置2等の外部端末からの無線信号を受信し、また、データ格納装置2等の外部端末等に向けて、無線信号を送信するものである。
【0035】
また、図2(b)において、データ格納装置2は、データ制御部21と、警告部22と、データ格納部23と、加速度センサ部24と、通信品質検出部25と、無線通信部26と、アンテナ27とからなる。
【0036】
データ制御部21は、データ格納装置1の制御を司るものであり、上述の制御部11同様にCPU(中央演算装置)等が用いられる。
【0037】
警告部22は、無線通信の切断可能性の警告を行うものであり、具体的には、警告灯の点滅や、スピーカ等からの警告音の発生によりユーザに対して無線通信の切断可能性を警告する。
【0038】
データ格納部23、加速度センサ部24、及び通信品質検出部25は、それぞれ上述した無線通信装置1のデータ格納部14、加速度センサ部15、及び通信品質検出部16と同様のものである。
【0039】
無線通信部26及びアンテナ27もまた、上述の無線通信部17及びアンテナ18と同様の目的を有する。
【0040】
例えば、無線通信装置1に格納されているデータをデータ格納装置2へ転送しようとした場合、ユーザが入力部13より指示を入力すると、制御部11は該当するデータをデータ格納部14より読出し、無線通信部17を介して、データ格納装置2へ送信する。
【0041】
一方の、データ格納装置2は、無線通信部26において当該データを受信すると、データ制御部21が、データ格納部23に当該データを格納する。
【0042】
逆に、データ格納装置2に格納されているデータを無線通信装置1へ転送しようとした場合には、データ制御部21は転送するデータをデータ格納部24から読出し、無線通信部26を介して、無線通信装置1へ送信する。
【0043】
また、無線通信時に無線通信装置1が移動すると、加速度センサ部15が当該移動に伴う加速度を検出し、制御部11へ通知する。制御部11は表示部12を介してユーザに警告を行うとともに、無線通信部17に対してデータの送信を中断させることとなる。
【0044】
(無線通信装置1が移動した際の予防動作)
次に、本発明に係る無線通信システムにおける無線通信切断予防の方法について、フローチャートを参照しつつ説明する。
【0045】
最初に、データ送信中に無線通信装置1が移動した場合において、一時的にデータの転送を中断させることにより、データ書込み中の通信切断によりファイルシステムが破壊されることを防止する場合の動作を説明する。
【0046】
図3は、無線通信装置1が移動した際に一時的にデータ格納装置2へのデータ送信を中断する処理の流れを示すフローチャートである。
【0047】
なお、以下に説明する動作は、特に記載のない限り、無線通信装置1に内蔵される制御部11が行うものとする。
【0048】
最初に、データ格納装置2等の外部端末との間で無線通信がなされる(ステップS101)。次に、加速度センサ部15により無線通信装置1の移動が検出されたか否かの判断を行う(ステップS102)。加速度センサ部15において無線通信装置1の移動が検出されない場合には(S102:No)、後述のステップS109へ処理を移す。
【0049】
一方、加速度センサ部15において無線通信装置1の移動が検出された場合には(S102:Yes)、無線通信切断のおそれがあるとして、データ格納装置2へデータ送信中であるか否かの判断を行う(ステップS103)。現時点においてデータ格納装置2へデータ送信していないと判断した場合には(S103:No)、ステップS106へ処理を移す。
【0050】
なお、ここでいう「データ送信」において送信されるデータには、通信先端末に対するコマンドと、データ格納部14及び23に格納されるコンテンツデータ等の、双方を含むものであり、本明細書における「データ送信」全てにおいて該当するものである。
【0051】
一方、現に無線通信部17を介してデータ格納装置2へデータ送信中であると判断した場合には(S103:Yes)、表示部12等を介してユーザへ対して警告を行い(ステップS104)、続いてデータ格納装置2へのデータ送信を強制終了し、データ送信を一時的に中断する(ステップS105)。
【0052】
そして、データ格納装置2へのデータ送信が一時停止中となり(ステップS106)、再び加速度センサ部15により無線通信装置1の移動が検出されたか否かの判断を行う(ステップS107)。加速度センサ部15により無線通信装置1の移動が検出されたと判断した場合には(S107:Yes)、無線通信切断のおそれが存続しているものとして、上述のステップS106へ処理を戻す。
【0053】
その一方、加速度センサ部15により無線通信装置1の移動が一定時間検出されなかった場合には(S107:No)、無線通信切断のおそれはなくなったものとして、データ格納装置2へのデータ送信を再開する(ステップS108)。
尚このデータ送信停止中(S106)に、無線通信装置1とデータ格納装置2との間の無線通信接続が切断されている場合には、両者間の無線通信接続を再開した上でデータ送信を再開する(S108)。
【0054】
続いて、データ格納装置2との間における無線通信が終了したか否かの判断を行う(ステップS109)。データ格納装置2との間における無線通信がまだ継続している場合には(S109:No)、上述のステップS101へ処理を戻し、データ格納装置2との間における無線通信が終了した場合には(S109:Yes)、移動検出処理を終了する。
【0055】
以上のような処理を行うことにより、無線通信装置1の移動により無線通信が切断しそうな場合に、加速度センサ部15が無線通信装置1の移動を検出し、ユーザへ告知するとともに、実際の無線通信の切断の有無にかかわらずデータ書込みを一時的に中断することができ、データ書込み中の通信切断に伴うファイルシステムの破壊等の弊害を防止することができる。
【0056】
特に、信頼性の要求されるデータの送信中に無線通信が切断してしまった場合であっても、事前にデータ送信を中断することができるので、そのようなデータの保護を図ることができる。
【0057】
なお、上記処理は無線通信装置1からデータ格納装置2へのデータ送信の場合の処理であるが、データ格納装置2から無線通信装置1へのデータ送信の場合であっても、同様の処理がなされる。
上述の例では、ユーザに警告を発した後、データ送信を必ず停止しているが、これに限らずユーザへの警告のみに止め、データ送信の停止は行わないようにしてもよい(以下のデータ格納装置2が移動した際の予防動作についても同様)。この場合データ送信の停止を行うか否かはユーザが選択することとなり、例えば多少の移動で特にデータ送信の停止を行う必要が無い場合等に柔軟に対処でき、また、データ送信に気づかずにユーザが無線通信装置1を移動させようとした場合に、この移動をやめる等の対応も取ることができる。
【0058】
(データ格納装置2が移動した際の予防動作)
次に、データ受信時にデータ格納装置が移動した場合において、一時的にデータの送信を中断させることにより、データ書込み中の通信切断によりファイルシステムが破壊されることを防止する場合の動作について説明する。
【0059】
図4は、データ格納装置2が移動した際に一時的にデータ格納装置2へのデータ送信を中断させる動作を示すフローチャートである。
【0060】
なお、以下に説明する動作は、特に記載のない限り、無線通信装置1に関する動作は内蔵される制御部11が、データ格納装置2に関する動作は内蔵されるデータ制御部21が、それぞれ行うものとする。
【0061】
最初に、無線通信装置1とデータ格納装置2との間で無線通信がなされる(ステップS111、ステップS211)。次に、加速度センサ部24によりデータ格納装置2の移動が検出されたか否かの判断を行う(ステップS212)。加速度センサ部24によりデータ格納装置2の移動が検出されなかったと判断した場合には(S212:No)、このままこの処理を終了させる。
【0062】
一方、加速度センサ部24においてデータ格納装置2の移動が検出されたと判断した場合には(S212:Yes)、無線通信切断のおそれがあるとして、無線通信装置1からデータ格納装置2へデータ送信中であるか否かの判断を行う(ステップS213)。現時点において無線通信装置1からのデータ送信を受けていないと判断した場合には(S213:No)、ステップS216へ処理を移す。
【0063】
一方、無線通信部26を介して無線通信装置1からデータ送信中であると判断した場合には(S213:Yes)、警告部22を介してユーザへ対して警告を行い(ステップS214)、無線通信装置1に対して無線通信切断のおそれがある旨の通知の信号を送信させる(ステップS215)。
【0064】
無線通信切断のおそれがある旨の通知の信号を受信した無線通信装置1においても、ユーザに対して表示部12などによって警告を行い(ステップS112)、続いてデータ格納装置2へのデータ送信を強制終了し、データ送信を一時的に中断する(ステップS113)。
【0065】
そして、無線通信装置1からデータ格納装置2へのデータ送信が一時停止中となり(ステップS114、ステップS216)、再び加速度センサ部24によりデータ格納装置2の移動が検出されたか否かの判断を行う(ステップS217)。加速度センサ部24によりデータ格納装置2の移動が検出されたと判断した場合には(S217:Yes)、無線通信切断のおそれが存続しているとして、上述のステップS216へ処理を戻す。
【0066】
その一方、加速度センサ部24によりデータ格納装置2の移動が一定時間検出されなかったと判断した場合には(S217:No)、無線通信切断のおそれが低減したものとして、無線通信装置1に対してデータ送信再開を通知し(ステップS218)、無線通信装置1からデータ格納装置2へのデータ送信を再開する(ステップS115、ステップS219)。そしてこの処理を終了させる。
尚無線通信装置1からデータ格納装置2へのデータ送信停止中に(S216)無線通信装置1とデータ格納装置2との間の無線通信接続が切断されている場合には、両者間の無線通信接続を再開した上でデータ送信再開をデータ格納装置2から無線通信装置1へ通知する(S218)。
【0067】
以上のような処理を行うことにより、データ格納装置2の移動により無線通信が切断しそうな場合に、加速度センサ部24がデータ格納装置2の移動を検出し、ユーザへ警告するとともに、実際の無線通信の切断の有無にかかわらずデータ書込みを一時的に中断することができるので、データ書込み中の通信切断に伴うファイルシステムの破壊等の弊害を防止することができる。
【0068】
特に、信頼性の要求されるデータの転送中に無線通信が切断してしまった場合であっても、事前にデータ送信を中断することができるので、そのようなデータの保護を図ることができる。
【0069】
なお、上記処理は無線通信装置1からデータ格納装置2へのデータ送信の場合の処理であるが、データ格納装置2から無線通信装置1へのデータ送信の場合であっても、同様の処理がなされる。
【0070】
(通信品質に応じた警告機能の切替動作)
次に、通信品質に応じて、警告機能の作動の有無を切替える動作について説明する。
【0071】
上述のように、通信中の各端末の移動に伴い、ユーザへ警告を発すると共に、書込みを中断することで、ファイルシステムの破壊を事前に防止することができる。しかし状況によってはユーザは装置を少し動かすだけでその度に警告を受けることとなり煩わしいと感じることがある。
【0072】
そこで、多少の動作で通信が切断される可能性の低い場合には、警告機能を動作させないことも可能である。このとき、通信切断の可能性の大小は、通信品質の優劣を基準に判断する。
【0073】
図5は、無線通信装置1において、無線通信品質の優劣に応じて、ユーザへの通信切断可能性の通知(警告)の有無を切替える場合の動作例を示すフローチャートである。
【0074】
最初に、データ格納装置2等の外部端末との間で無線通信がなされる(ステップS121)。次に、通信品質検出部16により通信品質情報を取得させる(ステップS122)。通信品質検出部16は、無線通信部17より通信信号を取得し、その通信のリンククオリティに係る情報を取得する。
【0075】
次に、上記取得されたリンククオリティ情報を元に、通信の切断危険性のレベルを判定し(ステップS123)、無線品質が一定の値以上であるか否かの判断を行う(ステップS124)。
【0076】
無線品質が一定の値以上であると判断した場合には(S124:Yes)、通信の切断危険性レベルが低いものと判断し(ステップS125)、通信切断危険性についての警告機能をオフに設定する(ステップS126)。
【0077】
一方、無線品質が一定の値未満であると判断した場合には(S124:No)、通信の切断危険性レベルが高いものと判断し(ステップS127)、通信切断危険性についての警告機能をオンに設定する(ステップS128)。
【0078】
次に、加速度センサ部15により無線通信装置1の移動が検出されたか否かの判断を行う(ステップS129)。加速度センサ部15により無線通信装置1の移動が検出されなかったと判断した場合には(S129:No)、このままこの処理を終了させる。
【0079】
一方、加速度センサ部15において無線通信装置1の移動が検出されたと判断した場合には(S129:Yes)、無線通信切断のおそれがあるとして、警告機能がオンであるか否かの判断を行う(ステップS130)。警告機能がオフであると判断した場合には(S130:No)、このまま処理を終了させるが、警告機能がオンであると判断した場合には(s130:Yes)、表示部12等を介してユーザへ対して通信の切断可能性のあることを通知する(ステップS131)。そしてこの処理を終了させる。
【0080】
以上のような処理を行うことにより、無線通信の品質が高い場合には、警告機能を動作させないことができるので、通信切断の可能性が低いにもかかわらず、僅かな装置の移動で警告を発せられる煩わしさを解消することができる。
【0081】
(通信出力の調整による通信切断の回避動作)
次に、無線通信が切断されそうな際には、通信出力を一時的に増大させることにより、通信の切断を回避させる動作について説明する。
【0082】
図6は、無線通信装置1が移動された際に一時的に送信出力を増大させて通信の継続を図る際の動作を示すフローチャートである。
【0083】
最初に、データ格納装置2等の外部端末との間で無線通信がなされる(ステップS141)。次に、加速度センサ部15により無線通信装置1の動きが検出されたか否かの判断を行う(ステップS142)。
【0084】
加速度センサ部15により無線通信装置1の移動が検出されたと判断した場合には(S142:Yes)、無線通信切断のおそれがあるとして、送信電力を増大することができるか否かの判断を行う(ステップS143)。
【0085】
現時点における送信電力が最大送信電力よりも小さく、送信電力を増大することが可能であると判断した場合には(S143:Yes)、設定変更により送信電力を一時的に増大させる(ステップS144)。
【0086】
一方、加速度センサ部15において無線通信装置1の移動が検出されなかったと判断した場合と(S142:No)、既に現時点における送信電力が最大送信電力であって送信電力の増大が困難であると判断した場合には(S143:No)、いずれの場合も通常の送信電力を維持する(ステップS145)。そしてこの処理を終了させる。
【0087】
以上のような処理を行うことにより、無線通信装置1の移動に伴い、通信切断のおそれが生じた際には、通信出力を一時的に増大させることができるので、通信の切断を生じ難くすることができる。
【0088】
なお、上記した実施の形態において、無線通信装置1の移動に伴う加速度を検出するものとして加速度センサ部を用いた構成を説明したが、この加速度センサは、例えば、HDDにおいて磁気ヘッドと磁気ディスクが衝撃によって接触することを防ぐために異常な動きを検出して磁気ヘッドを退避させる目的で設けられるものを用いても良い。また、HDD搭載の加速度センサに限定されず、回路基板等に搭載された加速度センサであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明に係る無線通信システムの構成を示す概略図である。
【図2】本発明に係る無線通信システムを構成する無線通信装置及びデータ格納装置の構成を示すブロック図である。
【図3】無線通信装置が移動した際に一時的にデータ格納装置へのデータ送信を中断させる動作を示すフローチャートである。
【図4】データ格納装置が移動した際に一時的にデータ格納装置へのデータ送信を中断させる動作を示すフローチャートである。
【図5】無線通信装置において、無線通信品質の優劣に応じて、ユーザに対する通信切断可能性の通知の有無を切替える場合の動作例を示すフローチャートである。
【図6】無線通信装置が移動した際に一時的に送信出力を増大させて通信の継続を図る際の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0090】
1、無線通信装置 2、データ格納装置 11、制御部 12、表示部 13、入力部
14、23、データ格納部 15、24、加速度センサ部 16、25、通信品質検出部
17、26、無線通信部 18、27、アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信により伝送される電子データを他の外部装置との間で送受信する無線通信部と、
移動を検出する移動検出部と、を備え、
前記無線通信部は、前記移動検出部により前記移動が検出されたとき、無線通信による前記電子データの送信を中断することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記移動検出部は、加速度により前記移動を検出することを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記移動検出部の検出結果に基づき前記電子データの送信を中断する際にユーザに対して中断の警告を行う警告部をさらに備えることを特徴とする請求項1または2記載の無線通信装置。
【請求項4】
無線通信の品質を検出する通信品質検出部をさらに備え、
前記警告部は、前記通信品質検出部の検出結果が品質良好であった場合には警告を行わないことを特徴とする請求項3記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記無線通信部は、前記移動検出部が前記無線通信装置の移動を検出したとき、通信電力を増大させることを特徴とする請求項1または2記載の無線通信装置。
【請求項6】
無線通信に基づいて伝送される電子データを他の外部装置との間で送受信する無線通信部と、
装置自体の移動に基づく検出信号を検出する移動検出部と、
前記検出信号に基づきユーザに対して警告を行う警告部とを備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項7】
無線通信により伝送される電子データを他の外部装置との間で送受信する無線通信部と、
移動を検出する移動検出部と、を備え、
前記無線通信部は、前記移動検出部により前記移動が検出されたとき、無線通信による前記電子データの送信中断要求を前記他の外部機器に通知することを特徴とする無線通信装置。
【請求項8】
前記移動検出部は、加速度により前記移動を検出することを特徴とする請求項7記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記移動検出部の検出結果に基づき前記電子データの送信を中断する際にユーザに対して中断の警告を行う警告部をさらに備えることを特徴とする請求項7または8記載の無線通信装置。
【請求項10】
無線通信の品質を検出する通信品質検出部をさらに備え、
前記警告部は、前記通信品質検出部の検出結果が品質良好であった場合には警告を行わないことを特徴とする請求項9記載の無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−158471(P2007−158471A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−347263(P2005−347263)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】