説明

無線通信装置

【課題】複数の端末が複数の伝送路を選択できる通信方式において、伝送路状態が劣化してもシステム全体の通信利用率(スループット)の低下を軽減する。
【解決手段】基地局からの信号を受信する受信部605には受信レベル測定部607が接続されており、この受信レベル測定部607により、この端末が選択可能な全てのチャネルについてその受信レベルが観測される。この観測結果は、チャネル情報として送信データとともに基地局へ送信される。基地局は、各端末からのチャネル情報に基づいて使用するチャネルを割り当て、該割り当て結果が各端末へ送信される。各端末は、その次のパケット送信時には割り当てられたチャネルを使用してそのデータを送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の端末と複数のデータ伝送路を有する無線通信システムにおいて、前記端末とデータ伝送路との組み合わせを任意の時間間隔で変更することができる無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図11は、無線通信回線での基地局へのアクセス方法の例を示す図である。ここでは、1つの基地局と複数(≧1)の端末局からなる集中制御型システムで、システム周波数帯域を複数の周波数チャネルに分割し(FDMA)、各周波数チャネルをスロット毎に時分割多重(TDMA)した場合の例を示している。また、この例では、全チャネルをf1〜f4の4チャネルとし、1つのユーザ端末に対して1つの周波数チャネルが割り当て可能であるとする。
図示するように、基地局1109から各ユーザ端末1101〜1104に周波数チャネルf1〜f4が割り当てられている。図において、各端末に割り当てられたチャネルは☆印で示している。各ユーザ端末1101〜1104は、基地局1109から異なる伝搬環境に位置するため、フェージング状態1105〜1108で示すように、それぞれが異なる周波数フェージングパターンを周波数チャネルf1〜f4に受けている。
【0003】
第1の従来技術(以下、「従来方式例1」と呼ぶ。)として、回線交換型アクセス制御の例を示す。この方式では、各端末に割り当てられた周波数チャネルは、情報伝送が終了するまで保持される。
図12の表1209は、図11に示した例における、ある時点での各ユーザ端末の受信レベルの状態(受信SN比)の一例をまとめた表である。ユーザ端末1201〜1204に対して周波数チャネル1205〜1208(f1〜f4)が割り当てられている。ユーザ端末1201の周波数チャネル1205のf1での受信SN比は4.4dB、ユーザ端末1202の周波数チャネル1206のf2での受信SN比は11.0dB、ユーザ端末1203の周波数チャネル1207のf3での受信SN比は11.5dB、ユーザ端末1204の周波数チャネル1208のf4での受信SN比は10.5dBであることを示している。
【0004】
ここで、QPSKで図11の基地局1109から送信した場合、誤り率(Bit Error Rate)10-3を満たす所要品質(QoS)SN比を10dB以上とし、SN比10dB以上の場合はパケット受信成功、SN比10dB未満の場合は受信失敗であるとすると、図12の表1209で網掛けで表示されているユーザ端末1201は割り当てられた周波数チャネル1205のf1でのSN比が4.4dBで所要品質を満足するためのSN比10dB以上という条件を満たさない。この場合は、システムに空きチャネルが無いため、ユーザ端末1201は受信状態が回復して割り当てられた周波数チャネル1205のf1が所要品質を満足するまで、パケットを送信することができない。よって、その時のスループット(送信成功パケット数/送信可能パケット数)は3/4=0.75となる。
もし空きチャネルがあれば、ユーザ端末1201は図11の基地局1109に選択可能な周波数チャネルの受信レベルを通知し、新たに割り当て可能な空きチャネルの受信レベルが所要品質レベルを満足する場合はチャネル割り当てを変更して送信することができる。
【0005】
次に、第2の従来技術(以下、「従来方式例2」と呼ぶ。)として、伝送路状態の変動に合わせて伝送チャネルを適応的に切り替えるパケットアクセス制御方式(ACS方式)について説明する(非特許文献1)。この方式と前述した従来方式例1との違いは、各ユーザ端末は、送信可能な全周波数チャネルの受信SN比を計測して、基地局に送信を行い、基地局側は、一定の時間間隔で通信品質の良いところから順に再割り当てを行うことである。
図13の表1309は、前記図11に示した例における、ある時点での各ユーザ端末の受信レベルの状態(受信SN比)の一例をまとめた表である。ユーザ端末1301は、前回のチャネル割り当てタイミングで、周波数チャネル1305のf1を割り当て(☆印)されているが、割り当てされていない周波数チャネル1306〜1308、すなわちf2〜f4の受信SN比も測定して基地局に送信している。他のユーザ端末1302〜1304も同様に、周波数チャネル1305〜1308の受信SN比を測定して基地局に送信しており、図13の表1309が得られる。表1309中、所要品質レベル10dB以上を満足しない部分は斜線で表示している。
【0006】
図13の表1309より、品質レベルの良い状態からユーザ端末−周波数チャネルの組み合わせをランクにして並べたものを図14の表1401に示す。1402はランクを示し、1403はユーザ端末、1404は周波数チャネル、1405は各端末で計測された受信SN比を示す。
この従来方式例2では、通信品質の良いところから順に再割り当てを行うので、まず、最も品質の良い組み合わせランク1のユーザ端末2と周波数チャネルf3を選択する。1つの周波数チャネルに対してユーザ端末数は1つ割り当てが可能であるから、表1401からユーザ端末2と周波数チャネルf3を選択し、その組み合わせをランクから除外したものが図14の表1406である。ランク1でユーザ端末2が選択されたため、端末欄1408からユーザ端末2を含む組み合わせであるランク9〜ランク11を除外し、またランク1で周波数チャネルf3が選択されたので、周波数チャネル欄1409から周波数チャネルf3を含む組み合わせ、すなわち、ランク7、ランク8、ランク14を除外する。表1406において、除外されたランクは網掛け、選択されたランクはランクの数字を○で囲んで表記している。
【0007】
次に、除外されたランクの中で最も通信品質の良い組み合わせの2つ目を選択すると、表1406よりランク2の組み合わせである端末1と周波数チャネルf4の組み合わせが選択できる。
図15の表1501に、ランク2の組み合わせを選択した後の様子を示す。ランク2でユーザ端末1が選択されたため、図15の端末欄1503からユーザ端末1を含む組み合わせであるランク15、ランク16を除外し、またランク2で周波数チャネルf4が選択されたので、周波数チャネル欄1504から周波数チャネルf4を含む組み合わせ、ランク5、ランク13をあらたに除外する。除外されたランクは網掛け、選択されたランクはランクの数字を○で囲んで表示している。
同様な処理を繰り返すと、図15の表1506になり、選択組み合わせとしてランク1、2、3、12の組み合わせが決定され、次回の再割り当ての時間タイミングでユーザ端末と周波数チャネルの割り当てを変更する。このとき選択組み合わせのランク1、2、3、12の受信SN比は、すべて所要品質10dB以上を満足するので、その時のスループット(送信成功パケット数/送信可能パケット数)は4/4=1となる。
このように、従来方式例1では送信不能であったユーザ端末も、この従来方式例2では送信することが可能となり、スループットを改善することができる。
【0008】
次に、各通信品質レベルの平均値が低い場合について説明する。図16の表1601は従来方式例1の場合の各ユーザ端末の受信SN比の一例を示し、表1611は従来方式例2の場合の各ユーザ端末の受信SN比の一例を示している。図表の意味は、これまで説明してきたことと同じで、所要品質10dB以上が有効チャネルである。
表1601の従来方式例1では、各々のユーザ端末に割り当てられた周波数チャネルについてのみ受信レベルを測定している。表1601の周波数チャネル1603のf2は所要品質10dB以上を満たさないので網掛けで表記している。よって、従来方式例1の表1601のスループット(送信成功パケット数/送信可能パケット数)は3/4=0.75となる。
【0009】
表1611の従来方式例2は、各ユーザ端末が周波数チャネル1612のf1から周波数チャネル1615のf4までの全周波数チャネルの受信SN比を測定した結果である。表1611中、所要品質レベル10dB以上を満足しない部分は網掛けで表示している。網掛けの部分が多く、前記図13に示した例と比較すると平均SN比が劣化していることがわかる。
ここで表1611をもとに、受信品質レベルの良い状態からユーザ端末−周波数チャネルの組み合わせをランクにして並べ、これまで説明のように、最も所要品質の良い組み合わせのランクから順次選択した結果を図17の表1701に示す。選択された組み合わせはランク欄1702から数字の○で囲まれたもので、ランク1のユーザ端末3−周波数チャネルf3、ランク3のユーザ端末4−周波数チャネルf2、ランク5のユーザ端末1−周波数チャネルf1、ランク14のユーザ端末2−周波数チャネルf4、が選択されてその組み合わせで送信を行う。
ここで、ランク14はS/N欄1705を参照すると、9.2dBとなって、所要品質を満足しないため網掛けで表示されている。よって、従来方式例2の表1611のスループット(送信成功パケット数/送信可能パケット数)は3/4=0.75となり、スループットの観点から見ると、従来方式例1と比較して改善ができない場合がある。
【0010】
次に、回線の状態によって伝送速度が可変できる場合について検討する。前記図16に示した表1601と表1611の数値は同じとし、さらに、次の条件を追加する。
追加条件:受信レベルが11dB以上の場合は、変調方式(あるいは、データの符号化率)を変えて、送信データを1.25倍送信可能とする。
すなわち、回線がすべて11dB以上であれば、1回線につきデータを1.25倍送信可能なので、最大で4×1.25=5スループットの送信が可能になる。よって、受信レベル10dB以上で11dB未満の場合は、送信量1、受信レベル11dB以上の場合は送信量1.25とすると、表1601の従来方式例1の総送信量は、1.25+0+1.25+1=3.5となる。また表1611の従来方式例2の場合は、図17の表1701で網掛けされていないランクを選択すると総送信量は、1.25+1.25+1.25+0=3.75となる。
このように、従来方式例2は、従来方式例1に比べて特性は改善されているが、もし回線すべてに10dB以上、11dB未満の回線を割り当てることが可能であれば、総送信量は1+1+1+1=4となり、より特性が改善できる可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】牟田修、赤岩芳彦「周波数選択性フェージング下での適応チャネル選択方式」電子情報通信学会論文誌B Vol.J82-b No.5 pp.991-1000、1999年5月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のように、伝送路状態の変動に合わせて伝送チャネルを適応的に切り替える従来方式例2によれば、伝送チャネルを情報伝送が終了するまで固定する従来方式例1の場合に比較して、スループットを向上させることができる。しかしながら、チャネルの再割り当てに際し、通信品質の良いところから順に再割り当てを行っているため、各伝送チャネルの通信品質レベルの平均値が低い場合には、必ずしもスループットの向上を図ることができないという問題点があった。
また、通信品質以外の伝送条件を追加した場合でも、システム全体として、より効率を向上させることを可能にする、柔軟な割り当て手段も求められている。
【0013】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたもので、ユーザ端末が選択可能なチャネル数が少ない場合でも効率的にユーザ端末−チャネル割り当てを行いスループットを向上させることを目的とするものである。
また本発明は、スループットが同じ場合、従来方式と比較して必要な送信電力が少なくてすみシステム全体の干渉を抑制することで、収容端末数を増加させる方式を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の無線通信装置は、複数のサブキャリアの中から割り当てられた1以上のサブキャリアを用いて基地局との間でデータ伝送する無線通信装置であって、前記基地局と自無線通信装置との間の複数の周波数に対する複数のチャネル情報をデータ情報とともに前記基地局へ通知するものである。
また、2つ以上のサブキャリアをサブキャリア群とし、前記チャネル情報をサブキャリア群単位で前記基地局へ通知するものである。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、複数の伝送路がフェージングを受けて劣化した場合、すべて伝送路が劣化することは少なく、いくつかの良い(所要品質を満足する)伝送路をシステム全体で各端末に割り当てることで、スループットの高効率化がはかれる。
また、本発明では、システムの評価を複数組み合わせることで、スループットの高く、かつ伝送路品質の最も良い組み合わせを選択できることで、伝送路品質の向上ができる。
さらに、本発明では、従来方式と比較して、スループットが同じ場合は、全体の平均受信SN比が低い、すなわち、送信電力が低いところでも同じスループットが得られるため、マルチセルの場合、他セルへの干渉を抑えることができるため、システム全体の収容端末数が増加するという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明における複数の端末と複数のデータ伝送路の組み合わせの全数探索による割り当て手順を説明するための図である。
【図2】従来方式例2と本発明の第2の例の評価方法について説明するための図である。
【図3】第2の例の割り当て手順を示した図(その1)である。
【図4】第2の例の割り当て手順を示した図(その2)である。
【図5】MC−CDMA方式に適用する場合について説明するための図である。
【図6】移動機の構成例を示すブロック図である。
【図7】基地局の構成例を示すブロック図である。
【図8】割り当て評価回路の処理アルゴリズムを示すフローチャートである。
【図9】アルゴリズムの割り当て手順について説明した図である。
【図10】第2の例の方式の効果を説明するための図である。
【図11】無線通信回線での基地局へのアクセス方法の例を示す図である。
【図12】従来方式例1(固定割り当て方式)を説明するための図である。
【図13】従来方式例2(ACS方式)を説明するための図である。
【図14】従来方式例2の最大値割り当て方法を説明するための図(その1)である。
【図15】従来方式例2の最大値割り当て方法を説明するための図(その2)である。
【図16】平均SN比が低い場合での従来方式例1と従来方式例2について説明するための図である。
【図17】従来方式例2の最大値割り当て方法の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、本発明の無線通信装置における各端末に対するデータ伝送路割り当ての第1の例について、図1を参照して説明する。この例では、前記複数の端末と前記複数のデータ伝送路の全ての組み合わせについて、要求される伝送条件からシステム全体としての有効利用度を評価し、全数探索を行うことによって割り当てを決定する。
例として、各ユーザ端末の受信SN比が、既に説明した図16の従来方式例2の表1611に示した値である場合を考える。前記従来方式例2では図17の表1701に示すような割り当てをおこなっている。
この例では、図1の表101に示すようにすべての端末とチャネルの割り当ての組み合わせパターンを算出する。例えば、欄102のパターン1は、端末1にチャネルf1、端末2にチャネルf2、端末3にチャネルf3、端末4にチャネルf4を割り当てる場合を示している。パターンの総数は4!=24通りである。
次に、表101に対応した各チャネルの受信レベル表をまとめたのが表111である。ここで所要品質を満足しない10dB未満のチャネルは網掛けで表示している。
この各パターンの中で、10dB以上の回線がいくつ確保できたかを計算した結果が表111の欄117の評価(1)(回線数)である。例えば、パターン1の場合は、端末1と端末3と端末4が所要品質を満足するので回線数は3である。表111の欄117評価(1)(回線数)で最も数値の高いものはパターン4とパターン23の2つである。このように評価値が等しいときは、番号の若い方を優先するものとすると、ここではパターン番号の小さいパターン4を選択割り当てとして決定する。これによって、スループット(送信成功パケット数/送信可能パケット数)は4/4=1となり、従来方式例2と比較して改善していることがわかる。
【0018】
さらに、前述した追加の伝送条件(11dB以上は送信1.25倍)がある場合を考えてみると、欄118評価(2)として総送信量を計算する。ここでは、全てのパターンについて総送信量を計算しているが、前述の欄117の評価(1)の後、その評価値が最も高いパターン4とパターン24の総送信量のみを算出するようにしても良い。この例では、評価(2)の最大値はパターン4の4.75である。そこで、このパターン4を選択するものとする。この結果は、前述した従来方式例2の場合と比較して改善している。
このように、目的によって、評価値基準を追加したり、変更したり、あるいは組み合わせることにより、システム全体として最適な状態で回線を利用することができる。
【0019】
次に、上記例よりも演算量が少ない、第2の例について説明する。
まず、図2を参照しつつ、この第2の例のアルゴリズムの説明を従来方式例2と比較して述べる。図2の表201に、前記図16に示した従来方式例2の表を再掲する。また、表202は第2の例による処理方法を示す表である。ここで、表202と表201とを比較すると、本例と従来方式例2との相違点は評価列207と評価行208を追加している点である。
ここで評価列207とは、各端末が送信可能な(所要品質10dB以上を満たす)周波数チャネルがいくつあるかを各端末毎に計算したものである。例えば、端末1は周波数チャネルf1の203〜f4の206のうち所要品質10dB以上を満たすチャネルはf1、f3、f4の3チャネルなので評価3、端末2は周波数チャネルf1の203〜f4の206のうち所要品質10dB以上を満たすチャネルはf3の1チャネルなので評価1、同様に端末3は評価3、端末4は評価3となる。すなわち、評価列207には、各端末についてのデータ伝送路の選択自由度が示されている。
次に、前記評価行208とは、各周波数チャネルが割り当て可能(所要品質10dB以上を満たす)な端末がいくつあるかを各周波数チャネル毎に計算したものである。例えば、周波数チャネルf1で割り当て可能端末は、端末1、端末3、端末4の3つの端末なので評価3、周波数チャネルf2で割り当て可能端末は、端末4の1つの端末なので評価1、同様に周波数チャネルf3は評価3、周波数チャネルf4は評価3となっている。すなわち、評価行208には、各データ伝送路についての端末の選択自由度が示されている。
【0020】
そして、この例では、まず評価値の最も小さいものから割り当てをおこなう。評価値が同じ場合は、端末側の評価、すなわち評価列207を優先するものとする。この例では、評価値の最も低い組み合わせは、評価列207では端末2で評価値は1、評価行208では周波数チャネルf2で評価が1であるが、評価列207を優先するので、評価列の端末2を選択する。この端末2で選択できる周波数チャネルがf3しかないのでf3を割り当てる。
割り当てが完了した端末2と周波数チャネルf3を除いたものを図3の表301に示す。端末2の行と周波数チャネルf3の部分は選択できない(割り当て完了)ので網掛けで示す。そして、再度、評価を行う。
【0021】
図3の表301において、評価列306で端末1で割り当て可能な周波数チャネルはf1とf4の2チャネルなので評価2、端末3は評価2、端末4は評価3となる。同様に、評価行307は、周波数チャネルf1に割り当て可能な端末は端末1、端末3、端末4の3端末なので評価3、周波数チャネルf2は評価1、周波数チャネルf4は評価3となる。
評価列306、評価行307で最も評価値が低いものは周波数f2の評価1なのでこれを2番目に割り当てる。周波数f2で割り当て可能なのは端末4のみなので、端末4を割りあてる。
今割り当てた端末4と周波数チャネルf2を除いて、同様に評価値を求めたものが、図3の表308である。評価の方法は、これまで説明した通りである。
表308の評価列313と評価行314で最も低い評価値は2で複数の候補がある。この場合は評価列313を優先し、かつ番号の若い端末からわりあてることにすると、端末1の周波数チャネルf1(f4より番号が若い)を割り当てる。
【0022】
今割り当てた端末1と周波数チャネルf1とを除くと、最終割り当ては、図4の表401となる。よって端末3と周波数チャネルf4を割り当てる。
選択されたユーザ端末と周波数チャネルとその時のSN比をまとめると表407となる。
このように、この例によれば、すべてが所要品質10dB以上を割り当てることができ、スループット(送信成功パケット数/送信可能パケット数)は4/4=1となり、受信レベルの平均値が低く従来方式例2で改善できなかった場合でも効果を期待できる。
【0023】
次に、チャネル割り当てをMC−CDMA方式に適用した例について、図5を参照して説明する。この場合には、サブキャリアを複数のセグメントに分割して、各セグメントごとにユーザに割り当てる構成とし、各セグメントを前述した周波数チャネルと同様に取り扱えばよい。
図5において、501はMC−CDMA方式のセグメント分割の一例を示している。ここでは、502のセグメント1から503のセグメント8までの8つのセグメントに分割している。図中、504はUser1のフェージング状態、505はUser2のフェージング状態の例を示し、このように各ユーザ毎に異なるフェージング状態となる。
表507は、ある時点における各ユーザ毎の各セグメントのSN比を示す表である。ここでは変調方式QPSKにおいて伝送誤り率10-3を満たす所要SN比を10dBとし10dB以上であれば送信(受信成功)、それ以下であれば送信しない(受信失敗)ものとする。この表507に、前記図2の表202に示したような評価列と評価行を付加して、前述した第2の例と同様に処理を行えばよい。
【0024】
次に、上述したチャネル割り当てを実行することのできる本発明の無線通信装置の構成について説明する。
図6は移動機の構成の一例を示すブロック図である。
送信データ601は、制御部602を介して送信用ベースバンド部603に送られ、パケットデータとされて送信部604を介してアンテナから送信される。基地局から受信した信号は受信部605によりベースバンド信号に変換され、受信用ベースバンド部606、制御部602を介して入力データ601とされる。
前記受信部605には受信レベル測定部607が接続されており、この受信レベル測定部607により、この移動機が選択可能な全てのチャネルについてその受信レベル(受信SN比)を観測する。この観測結果は前記制御部602に供給され、チャネル情報として前記送信データ(データ情報)とともに基地局へ送信される。
【0025】
図7は、基地局の構成の一例を示すブロック図である。
各移動機(ユーザ端末)から送られたデータ情報とチャネル情報は、受信部701を介してベースバンド部702でベースバンド信号に変換されて、データ分割器703で、各ユーザ対応に分割される。各ユーザ端末毎のデータ情報(704)は、それぞれ対応するチャネルデータとされ、制御部707に供給される。また、各ユーザ端末からの観測データであるチャネル情報(705)は割り当て評価回路706に供給される。割り当て評価回路706からの割り当て結果は制御部707へ通知され、各ユーザ端末へのデータ送信時に、次の端末−チャネル割り当てをベースバンド部709から送信部710を経て各端末へ送信する。
この端末−チャネル割り当てを受信した前記各移動機は、その次のパケット送信時には割り当てられたチャネルを使用してそのデータを送信することとなる。なお、このチャネル再割り当てのタイミングとしては、スロット単位であってもよいし、あるいは、複数スロット単位であっても良く、任意の時間間隔とすることができる。ただし、前記フェージング周期よりも短い時間間隔であることが望ましい。
【0026】
図8は、前記図7の割り当て評価回路706における処理の流れを示すフローチャートである。ここでは、前記第2の例として説明した選択自由度を評価値とするアルゴリズムを用いるものとする。
801で各端末の各チャネルの受信レベルを取得し、それをもとに802で端末−チャネル受信レベル表を作成する(図5の表507に相当)。次に、端末のチャネル割り当て自由度算出処理803で各端末毎にそのチャネル割り当て自由度の算出を行い、最小値選択処理804でAを算出する。すなわち、作成した端末−チャネル受信レベル表から、各端末ごとに割り当て可能なチャネル数(各端末についてのデータ伝送路の選択自由度)を算出し、その最小値Aを求める。
同様にチャネルの側から見た端末の割り当て自由度の算出をチャネルの端末割り当て自由度算出処理805で行い、最小値選択処理806でBを算出する。
最小値選択処理807では、前記最小値選択処理804および805それぞれから求めたA、Bの最小値Mを算出する。ここで、M=Aならば、最小値探索処理808で、最小値Mをもつチャネル候補の中から、チャネルの端末の割り当て自由度を比較して最小値aを探索する。
【0027】
例えば、図9の表901に示す状況であったときは、表901において、評価902(端末のチャネル割り当て自由度)と評価903(チャネルの端末割り当て自由度)の最小値は2で、904で示された端末1が対象である。候補のチャネルは、905で示されたチャネルf1とf2である。ここで、チャネルf1、f2の評価903(チャネルの端末割り当て自由度)は、f1は4で、f2は3である。よって評価値の低いf2が選択され、a=3、すなわち端末1−f2の組み合わせが候補となる。もし、903の評価も同じ場合には、結果を一意にするため、チャネル番号の小さいものを割り当てる。
また、M=Bならば最小値探索809で、最小値Mをもつ端末候補の中から、端末のチャネルの割り当て自由度の最小値bを探索する。さらに、M=A=Bならば、最小値探索処理808と809の両方をおこなう必要がある。
【0028】
次に、最小値選択処理810では、a、bのうち小さい値をもつ端末―チャネルの組み合わせの1つを決定する。
そして、811において、すべての端末について割り当てが終了したか否かを判定し、終了した場合は、端末−チャネル割り当て処理813で端末−チャネル割り当て表(図4の表407に相当)を作成して終了し、図7の制御部707から各端末へ送信される。
割り当てが残っていた場合には、決定された端末−チャネルの組み合わせを除いて、端末のチャネル割り当て自由度算出処理803とチャネルの端末割り当て自由度算出処理805から繰り返しおこなう。
【0029】
フローチャート手順中、808と809で、評価が同じ場合には、結果を一意にするために、チャネル番号、あるいは端末番号の小さいものを候補とする。
また、804や806で、ともに最小値が選択できない場合は、どのような端末とチャネルの組み合わせをおこなっても送信不可の状態を示す。その場合は、813の手順に飛んで、その時点で既に決定された端末−チャネルの組み合わせのみの割り当て表を作成して終了する。なお、残りの端末−チャネル組み合わせを適当におこなって送信する方法もあるが、送信失敗が予め判っているので、無線区間に余分な干渉を発生させないために、本アルゴリズムでは無理に組み合わせを行わないようにしている。
なお、以上においては、第2の例として説明したアルゴリズムの場合について説明したが、全数探索を行うアルゴリズムについても同様に行うことができる。
【0030】
図10は、平均SN比に対するスループット(送信パケット数/全セグメント数)特性を示す図であり、□は第2の例のアルゴリズムを採用した場合、△は従来方式例2(ACS方式)の場合を示している。シミュレーション条件は、8ユーザ8セグメント(1ユーザ1セグメントの割り当て)下りリンクの条件で評価を行った。基地局からの送信電力は一定で各ユーザの平均SN比は等しいものとし、また各ユーザはすべてのセグメントのSN比を計測後、上り回線でその受信状態を基地局に正確に通知できるものとした。さらに各セグメント間のSN比は無相関で、レイリーフェージングの影響を受けるものとした。
図10のシミュレーション結果から明らかなように、第2の例が従来方式例2より優れたパケット廃棄率特性を示すことが判る。特に、平均受信SN比が10dBのとき、最大15.6%(=第2の例のスループット/従来方式例2のスループット)の特性改善となった。
【0031】
なお、以上の説明では、各端末に割り当てるデータ伝送路(チャネル)が周波数チャネルである場合を例にとって説明したが、TDMAにおけるタイムスロット、CDMAにおける拡散符号を各端末に割り当てる場合にも、全く同様に適用することができる。また、周波数チャネル、タイムスロット、拡散符号の2以上のものを組み合わせて端末に割り当てる場合にも、同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
601 移動機入出力データ
602 移動機制御部
603 移動機送信用ベースバンド部
604 移動機送信部
605 移動機受信部
606 移動機受信用ベースバンド部
607 移動機受信レベル測定部
701 基地局受信部
702 基地局受信用ベースバンド部
703 データ分割器
704 チャネルデータ
705 受信レベル情報
706 割り当て評価回路
707 基地局制御部
708 基地局入出力データ
709 基地局送信用ベースバンド部
710 基地局送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサブキャリアの中から割り当てられた1以上のサブキャリアを用いて基地局との間でデータ伝送する無線通信装置であって、
前記基地局と自無線通信装置との間の複数の周波数に対する複数のチャネル情報をデータ情報とともに前記基地局へ通知することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
2つ以上のサブキャリアをサブキャリア群とし、前記チャネル情報をサブキャリア群単位で前記基地局へ通知することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−220253(P2010−220253A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140246(P2010−140246)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【分割の表示】特願2001−50810(P2001−50810)の分割
【原出願日】平成13年2月26日(2001.2.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】