無線通信装置
【課題】ミリ波の周波数帯域を用いて、通信対象である被通信対象装置の位置方向情報を簡易な構成で導出し、当該所望の被通信対象装置との通信干渉を効果的に低減する。
【解決手段】アンテナ部は、ミリ波の周波数帯域を用いた無線通信で送受信される信号に対して、複数の異なる方向に指向性を有する。アンテナ制御部は、アンテナ部の複数の指向性のうち、所定方向に指向性を形成する。方向位置推定部は、指向性が形成されたアンテナ部が受信した受信信号に応じて、無線通信の通信対象である被無線通信装置の方向位置情報を推定する。表示部は、推定された被無線通信装置の方向位置情報を表示する。
【解決手段】アンテナ部は、ミリ波の周波数帯域を用いた無線通信で送受信される信号に対して、複数の異なる方向に指向性を有する。アンテナ制御部は、アンテナ部の複数の指向性のうち、所定方向に指向性を形成する。方向位置推定部は、指向性が形成されたアンテナ部が受信した受信信号に応じて、無線通信の通信対象である被無線通信装置の方向位置情報を推定する。表示部は、推定された被無線通信装置の方向位置情報を表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指向性を有するアンテナを用いて通信対象である被通信対象装置を検出する無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットへの接続形態の一つとして、無線LAN(Local Area Network)が広く普及している。この無線LANは、有線LANと異なり、LANケーブルを用いることなくインターネット等のネットワークに接続可能なLANの一形態である。無線LANは、IEEE802.11で標準化が推進され、現在ではIEEE802.11b、IEEE802.11g及びIEEE802.11aという規格が存在している。
【0003】
IEEE802.11bは、2.4GHzの周波数帯域の電波を用いて最大11Mbps程度の速度で通信を行うための規格である。IEEE802.11gは、2.4GHzの周波数帯域の電波を用いて最大54Mbps程度の速度で通信を行うための規格である。IEEE802.11aは、5.2GHzの周波数帯域の電波を用いて最大54Mbps程度の速度で通信を行うための規格である。これらの規格に準拠した機器等を用いて無線LANのネットワークを構築することで、無線LANを利用した通信を行うことができる。
【0004】
このような無線LANの規格に準拠した機器を車載用装置に適用することで、当該車載用装置を搭載した車両と、外部の無線基地局との間で無線通信を行うものの一例として、特許文献1の車載用無線LAN装置が知られている。
【0005】
ここで、特許文献1の車載用無線LAN装置の構成及び動作について図12〜図14を参照して説明する。図12は、車載用無線LAN装置20の内部構成を示したブロック図である。図13は、車載用無線LAN装置20の通信対象である無線LANアクセスポイントへの接続手順を説明するフローチャートである。図14は、周辺アクセスポイントリストの一例を示す説明図である。
【0006】
図12において、車載用無線LAN装置20は、システムMPU21、GPS受信機22、ジャイロセンサ23a、車速パルスセンサ23b、HDD24a、DVD−ROMドライブ24b、画像処理部25、ディスプレイ26、音声処理部27、マイク28a、スピーカ28b、コントロールパネル29及び無線LANモジュール30を備える。
【0007】
車載用無線LAN20の動作について説明する。図13において、車載用無線LAN装置20は、まず無線LANアクセスポイントからブロードキャストされているビーコン信号の受信信号強度(RSSI)をサーチし(S401)、自車の現在位置の周辺に存在している無線LANアクセスポイントのRSSIリストを作成する(S402)。車載用無線LAN装置20は、このRSSIリストを作成することで、現時点で利用可能な無線LANアクセスポイントを特定する。
【0008】
次に、車載用無線LAN装置20は、自車の現在位置の周辺に存在している無線LANアクセスポイントの周辺アクセスポイントリストを読み出す(S403)。この周辺アクセスポイントリストは、車載用無線LAN装置20が予め作成して保有するものであり、定期的に最新の情報に更新されている。
【0009】
図14は、周辺アクセスポイントリストの一例を示す図である。この例では、「No.」、「SSID」、無線LANアクセスポイントの「位置情報」及び「プロファイル」が示されている。プロファイルは、無線LANアクセスポイントへの接続に必要な情報が含まれた設定ファイルであり、例えばMACアドレス、暗号化方式及びその暗号化キーが含まれる。
【0010】
暗号化方式は、WEP、TKIP、AES等である。なお、HDD24a又はDVD−ROM24bのデータベースに登録されている全ての無線LANアクセスポイントに、プロファイルが予め関連付けされていなくても良い。
【0011】
図13において、車載用無線LAN装置20は、RSSIリストを用いて、周辺アクセスポイントリスト中の無線LANアクセスポイントをフィルタリングする(S404)。RSSIリストは実際に稼動している無線LANアクセスポイントのリストであるが、周辺アクセスポイントリストはあくまで当該データベース上のリストである。このため、当該位置に実際に無線LANアクセスポイントが位置するか、あるいは無線LANアクセスポイントが実際に稼動しているかどうかまでは不明である。従って、周辺アクセスポイントリストとRSSIリストとを重ね合わせることで、実際に接続可能な無線LANアクセスポイントだけをリストアップすることができる。
【0012】
車載用無線LAN装置20は、当該フィルタリング済みの周辺アクセスポイントリストの中からプロファイルのある無線LANアクセスポイントを選択し(S405)、当該無線LANアクセスポイントに対してネットワーク接続を試みる(S406)。当該接続が確立した後は、車載用無線LAN装置20は、通信状態及びアクセスポイントとの距離を監視して(S407)、接続の維持が困難となった時点で上述した一連の接続手順を再開する(S407、YES)。
【0013】
このように、この車載用無線LAN装置20によれば、車両の現在位置を特定可能なカーナビゲーション装置と連動可能に動作し、更に、無線LANアクセスポイントに接続するために必要なプロファイル情報の設定及び無線LANアクセスポイントへの接続を簡単に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−262175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1の車載用無線LAN装置を含む従来の無線通信装置は、上述したIEEE802.11等に準拠した無線通信を行うため、当該無線通信に用いられる電波は2.4GHz又は5.2GHz等のマイクロ波であった。従来の無線通信装置では、マイクロ波の周波数帯域における無線信号が用いられるため、無線通信においては指向性の無いアンテナが主に用いられていた。
【0016】
指向性の無いアンテナが無線通信に用いられると、従来の無線通信装置の通信エリア内に位置する通信対象外のアクセスポイントへ無線信号が意図に反して到達することがある。これにより、当該通信対象外のアクセスポイントでは、当該無線通信装置からの無線信号の到達によって、通信のスループットが低下することがあった。即ち、所望のアクセスポイントではない通信対象外のアクセスポイントと誤って通信することにより、当該所望のアクセスポイントと従来の無線通信装置との間では、通信干渉が発生していたという課題があった。
【0017】
この課題に関連して、Gbps(Giga bit per second)程度の高速な無線通信を実現する方法として、ミリ波の周波数帯域を用いて非常に短い波長の電波で通信する方法が検討されている。ミリ波の周波数帯域では、無線信号の信号電力の伝播減衰がマイクロ波の周波数帯域に比べてより大きいため、所定方向に高い指向性を有するアンテナを用いることが一般的である。なお、以下の説明において、所定方向に高い指向性を有するアンテナを、「指向性アンテナ」という。
【0018】
しかし、このような指向性アンテナを用いた場合、通信可能な近距離にアクセスポイントが位置するにも拘わらず、予め定められた指向性アンテナの指向性が所望の通信方向と異なる場合に、当該アクセスポイントとの間で通信することが困難であった。
【0019】
従って、特定方向に位置するアクセスポイントと限定的に通信するためには、当該アクセスポイント及び従来の無線通信装置の各絶対位置情報をそれぞれ取得し、当該無線通信装置が、当該絶対位置情報に基づいて当該アクセスポイントの位置を演算する必要があった。
【0020】
具体的には、従来の無線通信装置及びアクセスポイントにそれぞれ、絶対位置情報を計測、送信するGPS受信機等が必要であり、更に、当該無線通信装置においては当該アクセスポイントの位置を演算するための具体的構成が必要であった。従って、このような構成を、例えば携帯電話機のような小型化且つ低消費電力が要求される無線通信装置へ適用することは困難であった。
【0021】
本発明は、上述した従来の事情に鑑みてなされたもので、ミリ波の周波数帯域を用いて、通信対象である被通信対象装置の位置方向情報を簡易な構成で導出し、当該所望の被通信対象装置との間における通信干渉を効果的に低減する無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、上述した無線通信装置であって、ミリ波の周波数帯域を用いた無線通信で信号を送受信する無線通信装置であって、複数の異なる指向性を有するアンテナ部と、前記アンテナ部の複数の指向性のうち、所定方向に指向性を形成するアンテナ制御部と、前記指向性が形成された前記アンテナ部によって受信された受信信号に応じて、前記無線通信の通信対象である被無線通信装置の方向位置情報を推定する方向位置推定部と、前記推定された前記被無線通信装置の方向位置情報を表示する表示部と、を備える。
【0023】
本発明は、上述した無線通信装置であって、ミリ波の周波数帯域を用いた無線通信で信号を送受信する無線通信装置であって、所定方向に指向性を有するアンテナ部と、当該無線通信装置の位置変化に対応した角度情報を検出するジャイロセンサと、前記アンテナ部によって受信された受信信号及び前記角度情報に応じて、前記無線通信の通信対象である被無線通信装置の方向位置情報を推定する方向位置推定部と、前記推定された前記被無線通信装置の方向位置情報を表示する表示部と、を備える。
【発明の効果】
【0024】
本発明の無線通信装置によれば、ミリ波の周波数帯域を用いて、通信対象である被通信対象装置との間の相対的な位置方向情報を簡易な構成で導出し、当該所望の被通信対象装置との間における通信干渉を効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施形態の無線通信装置の内部構成を示すブロック図
【図2】第1の実施形態の無線通信装置の模式的な外観、及び当該無線通信装置とアクセスポイントとの相対的な方向位置情報を表示する表示部の様子を示す説明図
【図3】第1の実施形態の無線通信装置と、当該無線通信装置の通信エリア内に位置するアクセスポイントとの間の位置関係を示す説明図
【図4】第1の実施形態の無線通信装置の動作を説明するフローチャート
【図5】第2の実施形態の無線通信装置の内部構成を示すブロック図
【図6】第2の実施形態の無線通信装置の模式的な外観、及び当該無線通信装置とアクセスポイントとの相対的な方向位置情報を表示する表示部の様子を示す説明図
【図7】第2の実施形態の無線通信装置と、当該無線通信装置の通信エリア内に位置するアクセスポイントとの位置関係を示す説明図
【図8】第2の実施形態の無線通信装置の動作を説明するフローチャート
【図9】第3の実施形態の無線通信装置の内部構成を示すブロック図
【図10】第3の実施形態の無線通信装置と、当該無線通信装置の通信エリア内に位置するアクセスポイントとの位置関係を示す説明図
【図11】第3の実施形態の無線通信装置の動作を説明するフローチャート
【図12】従来の車載用無線LAN装置の内部構成を示したブロック図
【図13】従来の車載用無線LAN装置の通信対象である無線LANアクセスポイントへの接続手順を説明するフローチャート
【図14】周辺アクセスポイントリストの一例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明において、本発明の無線通信装置の通信対象である被無線通信装置として、例えば無線LANにおいて当該無線通信装置の通信を中継するアクセスポイントを例示する。但し、当該被無線通信装置は、当該アクセスポイントに限定されない。
【0027】
また、以下の説明において、本発明に係る無線通信装置を基準にしたアクセスポイントの位置情報及び方向情報を、「方向位置情報」と記載する。
【0028】
また、以下の説明において、本発明に係る無線通信装置は、送受信可能な周波数チャネルとして、ミリ波の周波数帯域のチャネル1及びチャネル2の計2つの周波数チャネルを用いることができるものとする。更に、当該無線通信装置の通信対象であるアクセスポイントも、同様の周波数チャネルを用いることができるものとする。以下の説明においては、チャネル数を2としたが、3以上の周波数チャネルでも同様の動作を行う。
【0029】
〔第1の実施形態〕
第1の実施形態の無線通信装置100の構成について図1〜図3を参照して説明する。図1は、第1の実施形態の無線通信装置100の内部構成を示すブロック図である。
図2は、第1の実施形態の無線通信装置100の模式的な外観、及び当該無線通信装置100とアクセスポイント301,302,303との方向位置情報を表示する表示部101の様子を示す説明図である。なお、アクセスポイント301,302,303は図3に示す。
図3は、第1の実施形態の無線通信装置100と、当該無線通信装置100の通信エリア内に位置するアクセスポイント301〜303との間の位置関係を示す説明図である。
【0030】
無線通信装置100では、図1に示すように、データバス部107を介して、表示部101、アンテナ制御部103、無線部110、方向位置推定部104、MPU(Micro Processor Unit)部105及び記憶部106部がそれぞれ接続されている。アンテナ部102は、アンテナ制御部103と接続されている。無線部110は、アンテナ制御部103及び方向位置推定部104に接続されている。
【0031】
表示部101は、LCD(Liquid Crystal Display)等で構成されている。表示部101は、無線通信装置100が導出したアクセスポイント301〜303の方向位置情報に応じて、当該無線通信装置100のアイコン300、各アクセスポイント301〜303のアイコン301a,301b,301cを明示的に表示する(図2参照)。
【0032】
アンテナ部102は、複数のアンテナ、例えば3つの指向性アンテナ102a,102b,102cにより構成されている。各々の指向性アンテナ102a〜102cは、図2に示すように、それぞれ異なる所定の方向に高くて狭い指向性102aa,102bb,102ccを有するアンテナであり、アンテナ制御部103から供給される給電電力に基づいて動作する。なお、アンテナ部102を構成する各指向性アンテナ102a〜102cには、当該指向性アンテナを識別するための番号が予め付与されている。以下の説明において、各指向性アンテナ102a〜102cを識別する番号を、「セクタ番号」という。なお、本実施の形態では、指向性アンテナ102aのセクタ番号は1、指向性アンテナ102bのセクタ番号は2、指向性アンテナ102cのセクタ番号は3とする。
【0033】
各々の指向性アンテナ102a〜102cは、無線通信装置100の送受信可能な周波数チャネルにおいて、当該指向性アンテナ102a〜102cの各通信エリア内(当該通信エリアの方向も含む。以下同様。)に位置する各アクセスポイント301〜303から送信された固有情報信号を受信する。
【0034】
この固有情報信号は、各アクセスポイント301〜303の識別番号情報を含む固有の情報信号であって、以下の説明において、各アクセスポイント301〜303から送信された各当該固有情報信号を「ビーコン信号」という。
例えば、このビーコン信号には、各アクセスポイント301〜303のMACアドレス、SSID(Service Set Identifier)又はESSID(Extended Service Set Identifier)等の当該アクセスポイント301〜303の識別番号情報が含まれる。なお、このビーコン信号に関する説明は、以下の各実施形態においても同様である。
【0035】
アンテナ制御部103は、ビーコン信号の受信の際に用いる指向性アンテナを切り替えて、指向性アンテナ102a〜102cのうちいずれかの指向性アンテナから選択し、更に、当該選択された指向性アンテナに給電電力を供給する。
アンテナ制御部103は、当該選択された指向性アンテナのセクタ番号を、一時的に記憶部106に格納する。アンテナ制御部103は、当該選択された指向性アンテナの有する指向性を、アンテナ部102の指向性として形成する。
【0036】
また、無線部110は、無線通信装置100の送受信可能な周波数チャネルを上述したチャネル1又はチャネル2に設定し、当該チャネル1又はチャネル2においてアクセスポイント301〜303から送信されたビーコン信号の有無を検出する。無線部110は、当該設定されたチャネル1又はチャネル2を、一時的に記憶部106に格納する。
無線部110は、アンテナ部102の指向性を形成するように選択された、いずれかの指向性アンテナが受信したビーコン信号を、データバス部107を介して方向位置推定部104に出力する。
【0037】
方向位置推定部104は、無線部110により出力されたビーコン信号を、データバス部107を介して入力する。方向位置推定部104は、当該入力されたビーコン信号に応じて、当該ビーコン信号を送信したアクセスポイントの方向位置情報を導出する。
方向位置推定部104は、当該導出されたいずれかのアクセスポイント301〜303の方向位置情報を、データバス部107を介して記憶部106に格納する。なお、この方向位置情報の導出の詳細は後述する。
【0038】
MPU部105は、MPUで構成され、図1に示した無線通信装置100の各部の動作を制御する。例えば、MPU部105は、記憶部106に格納されたアクセスポイント301〜303の各方向位置情報に応じて、当該各アクセスポイントのアイコン300,301a,302a,303aを表示部101に表示する。なお、各アクセスポイントに対応したアイコン300,301a,301b,301c(図2参照)が有する機能を示すデータは、記憶部106に予め格納されていることが好ましい。機能を示すデータとは、プリンタ、モニタなどの種別や各アクセスポイントがサポートするデータ伝送速度やアプリケーションの種別、セキュリティ機能の有無や強度などである。
【0039】
記憶部106は、ハードディスク、フラッシュメモリ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成され、方向位置推定部104により導出されたアクセスポイント301〜303の各方向位置情報を格納する。
更に、記憶部106は、無線通信装置100の各部の動作時におけるワークメモリとして機能する。
【0040】
アクセスポイント301〜303は、図3に示すように、それぞれ独立したアクセスポイントとして動作する。アクセスポイント301〜303は、各々のアクセスポイントの識別番号情報を含むビーコン信号を、ミリ波の周波数帯域における異なる周波数チャネル(チャネル1又はチャネル2)を用いて定期的に送信している。これらのアクセスポイント301〜303の説明は、以下の各実施形態においても同様である。
【0041】
図3には、指向性アンテナ102aの指向性102aaによって形成された通信エリアで、アクセスポイント301が検出されたことが示されている。同様に、図3には、指向性アンテナ102bの指向性102bbによって形成された通信エリアで、アクセスポイント302が検出されたことが示されている。同様に、図3には、指向性アンテナ102bの指向性102bbによって形成された通信エリアと指向性アンテナ102cの指向性102ccによって形成された通信エリアとの中間地点で、アクセスポイント303が検出されたことが示されている。
【0042】
次に、無線通信装置100の動作について、図4を参照して説明する。図4は、第1の実施形態の無線通信装置100の動作を説明するフローチャートである。
【0043】
図4において、無線部110は、ミリ波の周波数帯域における周波数チャネルの番号を初期化する(S101)。即ち、無線部110は、無線通信装置100の送受信可能なミリ波の周波数帯域における周波数チャネルを、チャネル1に設定する。このチャネル1に設定されたという情報は、記憶部106に格納される。
【0044】
アンテナ制御部103は、アンテナ部102の各指向性アンテナ102a〜102cのセクタ番号を1に初期化する(S102)。即ち、アンテナ制御部103は、アンテナ部102の各指向性アンテナ102a〜102cのうち、当該アンテナ部102の指向性を形成するための指向性アンテナとして、先ず指向性アンテナ102aを選択する。
【0045】
これにより、無線通信装置100のアンテナ部102では、図3に示すように、指向性アンテナ102aの指向性102aaが形成される。無線通信装置100は、当該形成された指向性アンテナ102aの指向性102aaの通信エリア(図示しない)に、当該無線通信装置100の通信対象であるアクセスポイントが位置するか否かを検出する。
【0046】
無線部110は、ミリ波の周波数帯域におけるチャネル1内に存在する受信電界強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)を測定する(S103)。無線部110は、当該測定された受信電界強度が所定値を超える場合に(S104、YES)、ビーコン信号同期確立(S105)の動作に移行し、当該ビーコン信号のプリアンブルを検出して当該ビーコン信号の同期を確立する(S105)。無線部110は、当該ビーコン信号の同期を確立した後、当該ビーコン信号を方向位置推定部104に出力する。
【0047】
方向位置推定部104は、無線部110により出力されたビーコン信号を入力する。方向位置推定部104は、当該入力されたビーコン信号のヘッダ領域の情報に基づいて、当該ビーコン信号のデータ領域を復調する。方向位置推定部104は、当該復調されたデータ領域のデータに基づいて、当該ビーコン信号の受信電界強度及び受信SN比を導出する(S106)。更に、方向位置推定部104は、当該ビーコン信号のヘッダ領域に含まれるアクセスポイントの識別番号情報を抽出する。なお、この識別番号情報には、各アクセスポイント301〜303のMACアドレス、SSID又はESSID等が含まれている。
【0048】
方向位置推定部104は、当該抽出されたアクセスポイントの識別番号情報、ステップS106で導出されたビーコン信号の受信電界強度及び受信SN比の情報を関連づけて記憶部106に格納する(S107)。
【0049】
次に、アンテナ制御部103は、アンテナ部102の指向性アンテナ102a〜102cの現在のセクタ番号(=1)に1を加算して、セクタ番号を2とする(S108)。即ち、アンテナ制御部103は、アンテナ部102の各指向性アンテナ102a〜102cのうち、当該アンテナ部102の指向性を形成するための指向性アンテナとして、セクタ番号が2の指向性アンテナ102bを選択する。
【0050】
即ち、無線通信装置100は、ステップS109で現在のセクタ番号がアンテナ部102におけるセクタ番号の最大値を超えるまで、全ての送受信可能な周波数チャネルにおいて上述したステップS103からステップS108の動作を繰り返す(S109)。即ち、無線通信装置100は、ミリ波の周波数帯域のチャネル1で、アンテナ部102の各指向性アンテナ102a〜102cの指向性102aa〜102ccを形成し、当該形成された指向性の通信エリア内にアクセスポイントが位置するか否かを検出する。
【0051】
ステップS109で現在のセクタ番号がアンテナ部102におけるセクタ番号の最大値を超えた場合(S109、NO)、無線部110は、ミリ波の周波数帯域で現在設定している周波数チャネルを、チャネル1からチャネル2に変更する(S110)。その後、無線通信装置100は、上述したステップS102からステップS109の動作を繰り返す(S111)。例えば、ステップS111において現在設定されている周波数チャネルが最大チャネル数である2ではない場合(S111、YES)、無線通信装置100は、ミリ波の周波数帯域の周波数チャネルをチャネル2に設定する。更に、無線通信装置100は、当該チャネル2で、アンテナ部102の各指向性アンテナ102a〜102cの指向性102aa〜102ccを形成し、当該形成された指向性の通信エリア内にアクセスポイントが位置するか否かを検出する。
【0052】
以上により、記憶部106には、周波数チャネル及び指向性アンテナ102a〜102cのうちいずれかの指向性アンテナのセクタ番号に関連して、当該指向性アンテナが受信したビーコン信号の受信電界強度、受信SN比、及びアクセスポイントの識別番号情報が格納される。
【0053】
方向位置推定部104は、記憶部106に格納された各データ、具体的には受信SN比に基づいて、各アクセスポイント301〜303の方向位置情報を導出する。
なお、アクセスポイント301〜303のアンテナ利得、及びビーコン信号の信号電力は、アクセスポイント301〜303から送信されるビーコン信号に含まれているものとする。
ここで、受信SN比は、受信したビーコン信号を利用することで、各アクセスポイント301〜303が送信するビーコン信号の信号電力、アクセスポイント301〜303のアンテナ利得、伝搬距離、指向性アンテナ102a〜102cの利得及び雑音指数により定まる。
【0054】
従って、アクセスポイント301〜303のアンテナ利得、及びビーコン信号の信号電力が分かっている場合には、方向位置推定部104は、ステップS106で導出された受信SN比から伝搬距離を導出することができる。
【0055】
方向位置推定部104は、上述した記憶部106に格納された受信SN比に応じて、無線通信装置100と各アクセスポイント301〜303との方向位置情報を導出する(S112)。
【0056】
この方向位置情報のうち、無線通信装置100を基準にした各アクセスポイント301〜303の方向情報は、当該アクセスポイント301〜303から送信されたビーコン信号を受信した際のアンテナ部102の指向性に基づいて定まる。
例えば、アンテナ部102の指向性102aaが形成されている場合にアクセスポイント301からビーコン信号を受信したとき、当該アクセスポイント301の方向情報は、図3に示すように、略北西側とされる。図3において説明のために図面の上方向を北、左方向を西、右方向を東として北西と表現している。他のアクセスポイント302,303からビーコン信号をそれぞれ受信した場合においても同様である。
【0057】
また、当該方向位置情報のうち、無線通信装置100と各アクセスポイント301〜303との距離情報(位置情報)は、上述したステップS112において、記憶部106に格納された受信SN比に応じて導出されたビーコン信号の伝搬距離に基づいて推定値として定まる。
【0058】
また、図3に示すように、指向性102bbが形成された通信エリアと指向性102ccが形成された通信エリアとの中間地点でアクセスポイント303が検出される場合には、無線通信装置100は、次のようにして当該アクセスポイント303の方向位置情報を導出する。
具体的には、方向位置推定部104は、指向性102bbが形成された場合のアクセスポイントの方向位置情報と、指向性102ccが形成された場合のアクセスポイントの方向位置情報とをそれぞれ導出する。更に、方向位置推定部104は、当該導出された各方向位置情報に含まれる方向(角度)及び位置(距離)の交点を導出することで、当該アクセスポイント303の方向位置情報を導出する。
【0059】
方向位置推定部104は、当該導出されたアクセスポイントの方向位置情報を記憶部106に格納する。MPU部105は、当該記憶部106に格納されたアクセスポイントの方向位置情報を、図2に示すように、表示部101に明示的に表示する。例えば、MPU部105は、当該アクセスポイントの方向位置情報として、当該アクセスポイントの識別番号情報、例えばESSIDを表示部101に表示する。これにより、無線通信装置100は、当該無線通信装置100と接続可能なアクセスポイントの選択を、ユーザに対して容易に促すことができる。
【0060】
アクセスポイント301〜303の一使用例として、アクセスポイント301が大画面を有するテレビジョン装置、アクセスポイント302がPC(Personal Computer)、アクセスポイント303がHDD(Hard Disk Drive)レコーダのようなストレージ装置を想定する。無線通信装置100は、ミリ波の周波数帯域の周波数チャネルで、指向性の高くて狭い指向性アンテナ102a〜102cを用いて、当該指向性アンテナ102a〜102cのうちいずれかの指向性アンテナを用いて指向性を形成して、アクセスポイントの有無を検出する。
【0061】
これにより、無線通信装置100は、方向位置情報が導出された各アクセスポイント301〜303のうち、ストレージ装置に当該無線通信装置100からファイルを送信している状態でも、電波のテレビジョン装置やPCへの当該送信信号の漏洩を抑制することができる。このため、例えば、無線通信装置100とストレージ装置との間の通信を確立することができ、同時にPCとテレビジョン装置との間の通信を確立することができる。
【0062】
従って、第1の実施形態の無線通信装置100によれば、ミリ波の周波数帯域を用いて、通信対象であるアクセスポイント301〜303との間の相対的な位置方向情報を簡易な構成で導出することができる。更に、無線通信装置100によれば、所望のアクセスポイント301〜303との通信を簡単に実現することができるため、当該所望のアクセスポイント301〜303との間における通信干渉を効果的に低減することができる。
【0063】
なお、上述した表示部101には、各アクセスポイント301〜303のアイコンとして、当該アクセスポイントの識別番号情報、例えばESSIDが表示されることが好ましい。但し、各アクセスポイント301〜303のアイコンは、当該識別番号情報に限定されない。例えば、テレビジョン装置、PC、プリンタ等の各画像データが当該アイコンとして表示部101に表示されても良い。この場合、これらの各画像データは、予め無線通信装置100の記憶部106内に格納されているとする。
【0064】
また、表示部101の上にタッチパネルが配設されていても良く、以下の各実施形態においても同様である。この場合、表示部101に表示されたアクセスポイントのアイコンのタッチ入力操作に応じて、ユーザは、所望の通信対象のアクセスポイントの方向及び位置を的確に認識した上で、当該所望のアクセスポイントの方向に指向性を形成する指向性アンテナを適切に選択可能である。
【0065】
これにより、無線通信装置100は、ユーザ所望のアクセスポイントの方向に指向性を瞬時に形成することができ、更に通信の確立時間をより短くすることができる。更に、無線通信装置100は、アクセスポイントとの通信の確立時間をより短くすることができるため、当該通信の秘匿性を高くすることができる。
【0066】
更に、ミリ波の周波数帯域に対応した狭い指向性を有する指向性アンテナは一般的に高いアンテナ利得を持つ。このため、回線品質を高めることができる。従って、無線通信装置100は、より適切な方向に指向性アンテナ102a〜102cの指向性102aa〜102ccを形成することで、ギガビットクラスの高速な無線通信も容易に実現することができる。
【0067】
〔第2の実施形態〕
第2の実施形態の無線通信装置100aの構成について図5〜図7を参照して説明する。第2の実施形態の無線通信装置100aの構成及び動作に関する説明のうち、第1の実施形態の無線通信装置100と同様の構成及び動作に関する説明は省略する。図5は、第2の実施形態の無線通信装置100aの内部構成を示すブロック図である。
図6は、第2の実施形態の無線通信装置の模式的な外観、及び当該無線通信装置100aとアクセスポイント301〜303との方向位置情報を表示する表示部101aの様子を示す説明図である。
図7は、第2の実施形態の無線通信装置100aと、当該無線通信装置100aの通信エリア内に位置するアクセスポイント301〜303との間の位置関係を示す説明図である。
【0068】
無線通信装置100aでは、図5に示すように、データバス部107aを介して、表示部101a、アンテナ制御部103a、無線部110a、方向位置推定部104a、MPU部105a、記憶部106a及びジャイロセンサ108がそれぞれ接続されている。指向性アンテナ102dは、無線部110に接続される。
【0069】
指向性アンテナ102dは、図6に示すように、予め固定的に定められた方向に高くて狭い指向性102ddを有するアンテナであり、アンテナ制御部103aから供給される給電電力に基づいて動作する。指向性アンテナ102dは、無線通信装置100aの送受信可能な周波数チャネルにおいて、当該指向性アンテナ102dの通信エリア内に位置するアクセスポイントから送信されたビーコン信号を受信する。
【0070】
アンテナ制御部103aは、指向性アンテナ102dに給電電力を供給し、当該指向性アンテナ102dで指向性102ddを形成する。
【0071】
無線部110aは、無線通信装置100aの送受信可能な周波数チャネルをチャネル1又はチャネル2に設定し、当該チャネル1又はチャネル2においてアクセスポイント301〜303から送信されたビーコン信号の有無を検出する。無線部110aは、指向性アンテナ102dが受信したビーコン信号を、データバス部107aを介して方向位置推定部104aに出力する。
無線部110aは、当該設定されたチャネル1又はチャネル2を、一時的に記憶部106aに格納する。なお、チャネル数は3以上あってもよい。
【0072】
方向位置推定部104a、MPU部105a及び記憶部106aの動作は、上述した第1の実施形態の方向位置推定部104、MPU部105及び記憶部106の動作と同様であるため、当該動作の説明は省略する。
【0073】
ジャイロセンサ108は、無線通信装置100aを保持するユーザの保持状態に対応した角度情報を検出する。ジャイロセンサ108は、当該検出された角度情報を、データバス部107aを介して方向位置推定部104a及び記憶部106aにそれぞれ出力する。
【0074】
図7には、ユーザの無線通信装置100aの保持状態に対応した角度情報に応じて指向性アンテナ102dの指向性102ddが形成された通信エリアで、アクセスポイント301が検出されたことが示されている。
同様に、ユーザの無線通信装置100aの保持状態に対応した角度情報に応じて指向性アンテナ102dの指向性102eeが形成された通信エリアで、アクセスポイント302が検出されたことが示されている。
同様に、ユーザの無線通信装置100aの保持状態に対応した角度情報に応じて指向性アンテナ102dの指向性102ffが形成された通信エリアで、アクセスポイント303が検出されたことが示されている。
【0075】
次に、無線通信装置100aの動作について、図8を参照して説明する。図8は、第2の実施形態の無線通信装置100aの動作を説明するフローチャートである。
【0076】
図8において、無線部110aは、ミリ波の周波数帯域における周波数チャネルの番号を初期化する(S201)。即ち、無線部110aは、無線通信装置100aの送受信可能なミリ波の周波数帯域における周波数チャネルをチャネル1に設定する。このチャネル1に設定されたという情報は、記憶部106aに格納される。
【0077】
無線部110aは、ミリ波の周波数帯域におけるチャネル1内に位置する受信電界強度を測定する(S202)。無線部110aは、当該測定された受信電界強度が所定値を超える場合に(S203、YES)、ビーコン信号同期確立(S204)の動作に移行し、当該ビーコン信号のプリアンブルを検出して当該ビーコン信号の同期を確立する(S204)。無線部110aは、当該ビーコン信号の同期を確立した後、当該ビーコン信号を方向位置推定部104aに出力する。
【0078】
方向位置推定部104aは、無線部110aにより出力されたビーコン信号を入力する。方向位置推定部104aは、当該入力されたビーコン信号のヘッダ領域の情報に基づいて、当該ビーコン信号のデータ領域を復調する。方向位置推定部104aは、当該復調されたデータ領域のデータに基づいて、当該ビーコン信号の受信電界強度及び受信SN比を導出する(S205)。更に、方向位置推定部104aは、当該ビーコン信号のヘッダ領域内に含まれるアクセスポイントの識別番号情報を抽出する。なお、この識別番号情報には、各アクセスポイント301〜303のMACアドレス、SSID又はESSID等が含まれている。
【0079】
このとき、ジャイロセンサ108は、無線通信装置100aを保持するユーザの保持状態に対応した角度情報を検出し(S206)、当該検出された角度情報を、データバス部107aを介して方向位置推定部104a及び記憶部106aにそれぞれ出力する。
【0080】
方向位置推定部104aは、当該抽出されたアクセスポイントの識別番号情報、ステップS205で導出されたビーコン信号の受信電界強度及び受信SN比の情報を関連づけて記憶部106aに格納する(S207)。
【0081】
次に、無線部110aは、ミリ波の周波数帯域で現在設定している周波数チャネルを、チャネル1からチャネル2に変更する(S208)。その後、無線通信装置100aは、全ての送受信可能な周波数チャネルにおいて、上述したステップS202からステップS207の動作を繰り返す(S209)。例えば、ステップS209において現在設定されている周波数チャネルが最大のチャネル数であるチャネル2ではない場合(S209、YES)、無線通信装置100aは、ミリ波の周波数帯域の周波数チャネルをチャネル2に設定する。更に、無線通信装置100aは、当該チャネル2で、ジャイロセンサ108により検出された角度情報に対応して形成された指向性アンテナ102dの指向性102dd〜102ffの通信エリア内にアクセスポイントが位置するか否かを検出する。
【0082】
以上により、記憶部106aには、周波数チャネル及び指向性アンテナ102dに対応して、当該アンテナ102dが受信したビーコン信号の受信電界強度、受信SN比、及びアクセスポイントの識別番号情報の各データが格納される。
【0083】
方向位置推定部104aは、記憶部106aに格納された各データ、具体的には受信SN比に基づいて、各アクセスポイント301〜303の方向位置情報を導出する(S210)。
【0084】
この方向位置情報のうち、無線通信装置100aを基準にした各アクセスポイント301〜303の方向は、当該アクセスポイント301〜303から送信されたビーコン信号を受信した場合のアンテナ102dの指向性が向けられた、無線通信装置100aの方向に基づいて定まる。
アンテナ102dの指向性は、ジャイロセンサ108により検出された角度情報に依存している。例えば、アクセスポイント301からビーコン信号を受信したとき、当該アクセスポイント301の方向情報は、図7に示すように、指向性102ddである場合にジャイロセンサ108により検出された角度情報とされる。他のアクセスポイント302,303からビーコン信号をそれぞれ受信した場合においても同様である。
【0085】
また、当該方向位置情報のうち、無線通信装置100aと各アクセスポイント301〜303との距離情報(位置情報)は、上述したステップS210において、記憶部106aに格納された受信SN比に応じて導出されたビーコン信号の伝搬距離に基づいて定まる。
【0086】
以上により、第2の実施形態の無線通信装置100aによれば、上述した無線通信装置100と同様に、ミリ波の周波数帯域を用いて、通信対象であるアクセスポイント301〜303との間の位置方向情報を簡易な構成で導出することができる。更に、無線通信装置100aによれば、所望のアクセスポイント301〜303との通信を簡単に実現することができるため、当該所望のアクセスポイント301〜303との間における通信干渉を効果的に低減することができる。
【0087】
上述した第1の実施形態と同様、無線通信装置100aの表示部101aには、各アクセスポイント301〜303のアイコンとして、当該アクセスポイントの識別番号情報、例えばISSIDが表示される。従って、当該表示されたアイコンのアクセスポイントと通信する場合には、ユーザが当該アクセスポイントの方向に無線通信装置100aを傾けるように保持することで、無線通信装置100aは、当該アクセスポイントとの通信を簡単に実現することができる。
【0088】
上述した第2の実施形態では、予め固定的に定められた方向に高くて狭い指向性を有する指向性アンテナ102dを用いるように説明した。但し、第2の実施形態の無線通信装置100aにおいて、当該指向性アンテナ102dの代わりに、第1の実施形態で説明したアンテナ部102を構成する指向性を切り替えることができる指向性アンテナ102a〜102cが用いられても良い。
【0089】
この場合、指向性アンテナ102a〜102cで設定する指向性は、指向性アンテナ102dで設定される通信エリアをさらに細かく分割し、通信エリアの切替えができるような、より狭い通信エリアを持つ指向性アンテナ102a‘〜102c‘を用いる。
指向性アンテナ102dが受信したビーコン信号に応じて導出されたアクセスポイントの方向にユーザが無線通信装置100aを傾けて指向性を形成することで、無線通信装置100aは、アクセスポイントの方向位置情報の推定を高精度に行うことができる。
【0090】
〔第3の実施形態〕
第3の実施形態の無線通信装置100bの構成について図9及び図10を参照して説明する。第3の実施形態の無線通信装置100bの構成及び動作に関する説明のうち、第1の実施形態の無線通信装置100、或いは第2の実施形態の無線通信装置100aと同様の構成及び動作に関する説明は省略する。図9は、第3の実施形態の無線通信装置100bの内部構成を示すブロック図である。
図10は、第3の実施形態の無線通信装置100bの模式的な外観、及び当該無線通信装置100bとアクセスポイント301〜303との方向位置情報を表示する表示部101bの様子を示す説明図である。
【0091】
無線通信装置100bでは、図9に示すように、データバス部107bを介して、表示部101b、アンテナ制御部103b、無線部110b、方向位置推定部104b、MPU部105b、記憶部106b及びジャイロセンサ108がそれぞれ接続されている。なお、ジャイロセンサ108は、無線通信装置100bに設けられていなくても良い。アンテナ部109は、アンテナ制御部103bと接続されている。無線部110bは、アンテナ制御部103b及び方向位置推定部104bに接続されている。
【0092】
アンテナ部109は、複数のアンテナ、例えば3つのアンテナ109a,109b,109c、及び当該各アンテナ109a〜109cにそれぞれ接続された位相調整部109d,109e,109fから構成されるフェーズドアレイアンテナである。
【0093】
アンテナ部109は、図9に示すように、それぞれ移相器等で構成される位相調整部109d〜109fが各アンテナ109a〜109cから送信される送信信号の位相を調整して各信号間に所定の位相差を設けることで、所定方向に指向性が形成される。アンテナ部109は、アンテナ制御部103bから供給される給電電力に基づいて動作する。
【0094】
各々のアンテナ109a〜109cは、無線通信装置100bの送受信可能な周波数チャネルにおいて、当該アンテナ109a〜109cの各通信エリア内に位置する各アクセスポイント301〜303から送信されたビーコン信号を受信する。
【0095】
アンテナ制御部103bは、アンテナ部109に給電電力を供給し、当該供給されたアンテナ部109のフェーズドアレイアンテナの指向性を制御する。アンテナ制御部103bは、無線部110bに接続される。
無線部110bは、無線通信装置100bの送受信可能な周波数チャネルをチャネル1又はチャネル2に設定し、当該チャネル1又はチャネル2においてアクセスポイント301〜303から送信されたビーコン信号の有無を検出する。無線部110bは、当該設定されたチャネル1又はチャネル2を、一時的に記憶部106bに格納する。
無線部110bは、アンテナ部109が受信したビーコン信号を、データバス部107bを介して方向位置推定部104bに出力する。
【0096】
方向位置推定部104bは、無線部110bにより出力されたビーコン信号を、データバス部107bを介して入力する。方向位置推定部104bは、当該入力されたビーコン信号に応じて、当該ビーコン信号を送信したアクセスポイントの方向位置情報を、フェーズドアレイアンテナの指向性パターン情報と各々の指向性パターンにおける、ビーコン信号の信号強度および位相情報から導出する。
【0097】
特に、ビーコン信号を受信したアクセスポイント301〜303の方向位置情報のうち、方向を推定する場合には、方向位置推定部104bが公知のMUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法に従った到来方向及び距離の推定を行うことで導出可能である。
【0098】
なお、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法とは、フェーズドアレイアンテナのような複数のアンテナに同時に到来する複数の電波の方向を測定するアルゴリズムである。具体的には、MUSIC法では、まず複数のアンテナが受信した受信信号から得られる相関行列の固有値が導出される。この導出された固有値は、アクセスポイントから送信されたビーコン信号の波数によって信号固有値と雑音固有値とに分けられ、当該雑音固有値に対応した雑音固有ベクトルが導出される。この導出された雑音固有ベクトルに基づいて角度スペクトラムが導出され、当該導出された角度スペクトラムを並列平均してMUSICスペクトラムが導出される。この導出されたMUSICスペクトラムから所望のビーコン信号の到来方向が推定される。
【0099】
方向位置推定部104bは、当該導出されたいずれかのアクセスポイント301〜303の方向位置情報を、データバス部107bを介して記憶部106bに格納する。なお、この方向位置情報の位置(距離)導出の詳細は後述する。
【0100】
MPU部105b、記憶部106b及びジャイロセンサ108の動作は、上述した第2の実施形態のMPU部105a、記憶部106a及びジャイロセンサ108の動作と同様であるため、当該動作の説明は省略する。
【0101】
図10には、アンテナ部109のフェーズドアレイアンテナの指向性109aaが形成された通信エリアで、アクセスポイント301が検出されたことが示されている。
同様に、アンテナ部109のフェーズドアレイアンテナの指向性109bbが形成された通信エリアで、アクセスポイント302が検出されたことが示されている。
同様に、アンテナ部109のフェーズドアレイアンテナの指向性109ccが形成された通信エリアで、アクセスポイント303が検出されたことが示されている。
【0102】
次に、無線通信装置100bの動作について、図11を参照して説明する。図11は、第3の実施形態の無線通信装置100bの動作を説明するフローチャートである。なお、図11に示すフローチャートの動作の前に、無線通信装置100bは、アンテナ部109のフェーズドアレイアンテナにより所定方向に指向性を形成しているものとする。
【0103】
図11において、無線部110bは、ミリ波の周波数帯域における周波数チャネルの番号を初期化する(S301)。即ち、無線部110bは、無線通信装置100bの送受信可能なミリ波の周波数帯域における周波数チャネルをチャネル1に設定する。このチャネル1に設定されたという情報は、記憶部106bに格納される。
【0104】
無線部110bは、ミリ波の周波数帯域におけるチャネル1内に位置する受信電界強度を測定する(S302)。無線部110bは、当該測定された受信電界強度が所定値を超える場合に(S303、YES)、ビーコン信号同期確立(S304)の動作に移行し、当該ビーコン信号のプリアンブルを検出して当該ビーコン信号の同期を確立する(S304)。無線部110bは、当該ビーコン信号の同期を確立した後、当該ビーコン信号を方向位置推定部104bに出力する。
【0105】
方向位置推定部104bは、無線部110bにより出力されたビーコン信号を入力する。方向位置推定部104bは、当該入力されたビーコン信号のヘッダ領域の情報に基づいて、当該ビーコン信号のデータ領域を復調する。方向位置推定部104bは、当該復調されたデータ領域のデータに基づいて、当該ビーコン信号の受信電界強度及び受信SN比を導出する(S305)。更に、方向位置推定部104bは、当該ビーコン信号のヘッダ領域内に含まれるアクセスポイントの識別番号情報を抽出する。なお、この識別番号情報には、各アクセスポイント301〜303のMACアドレス、SSID又はESSID等が含まれている。
【0106】
方向位置推定部104bは、当該抽出されたアクセスポイントの識別番号情報、ステップS305で導出されたビーコン信号の受信電界強度及び受信SN比の情報を関連づけて記憶部106bに格納する(S306)。
【0107】
次に、無線部110bは、ミリ波の周波数帯域で現在設定している周波数チャネルを、チャネル1からチャネル2に変更する(S307)。その後、無線通信装置100bは、全ての送受信可能な周波数チャネルにおいて、上述したステップS302からステップS306の動作を繰り返す(S308)。例えば、ステップS308において現在設定されている周波数チャネルが最大のチャネル数であるチャネル2ではない場合(S308、YES)、無線通信装置100bは、ミリ波の周波数帯域の周波数チャネルをチャネル2に設定する。更に、無線通信装置100bは、当該チャネル2で、アンテナ部109のフェーズドアレイアンテナにより形成された指向性109dd〜109ffの通信エリア内にアクセスポイントが位置するか否かを検出する。
【0108】
以上により、記憶部106bには、周波数チャネル及びアンテナ部109の指向性109aa〜109ccに対応して、各アンテナ109a〜109cが受信したビーコン信号の受信電界強度、受信SN比、及びアクセスポイントの識別番号情報の各データが格納される。
【0109】
方向位置推定部104bは、記憶部106bに格納された各データ、具体的には受信SN比に基づいて、各アクセスポイント301〜303の方向位置情報を導出する(S309)。
【0110】
この方向位置情報のうち、無線通信装置100bを基準にした各アクセスポイント301〜303の方向は、方向位置推定部104bが上述したMUSIC法を適用することにより導出することができる。例えば、アクセスポイント301からビーコン信号を受信したとき、当該アクセスポイント301の方向情報は、図10に示すように、アンテナ部109の指向性、及び当該MUSIC法に従って導出された角度情報に基づいて導出される。他のアクセスポイント302,303からビーコン信号をそれぞれ受信した場合においても同様である。
【0111】
また、当該方向位置情報のうち、無線通信装置100aと各アクセスポイント301〜303との距離情報(位置情報)は、上述したステップS210において、記憶部106bに格納された受信SN比に応じて導出されたビーコン信号の伝搬距離に基づいて定まる。
【0112】
以上により、第3の実施形態の無線通信装置100bによれば、上述した無線通信装置100,100aと同様に、ミリ波の周波数帯域を用いて、通信対象であるアクセスポイント301〜303との間の位置方向情報を簡易な構成で導出することができる。更に、無線通信装置100bによれば、所望のアクセスポイント301〜303との通信を簡単に実現することができるため、当該所望のアクセスポイント301〜303との間における通信干渉を効果的に低減することができる。
【0113】
なお、第3の実施形態において、方向位置推定部104bがMUSIC法を用いる代わりに、アクセスポイントの方向を推定する場合に、ジャイロセンサ108により検出された角度情報を参照して導出しても良い。この場合、ジャイロセンサ108は、無線通信装置100bを保持するユーザの保持状態に対応した角度情報を検出し、当該検出された角度情報を、データバス部107bを介して方向位置推定部104b及び記憶部106bにそれぞれ出力する。
【0114】
以上、添付図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本発明の無線通信装置はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。更に、本発明は、上述した各実施形態の無線通信装置が動作する方法としても成り立つことができる。
【0115】
なお、上述した各実施形態では、無線通信装置100,100a,100bは、送受信可能なミリ波の周波数帯域の周波数チャネルごとに、アクセスポイントの方向位置情報を導出した。更に、上述した各実施形態では、当該周波数チャネルをチャネル1及びチャネル2の2つの周波数チャネルが用いられている。
【0116】
例えば、この無線通信装置100〜100bは、当該周波数チャネルごとに導出した方向位置情報のうち、無線通信装置100〜100bから近い距離を表す方向位置情報を用いて、当該方向位置情報に対応するアクセスポイントのアイコンを表示部101〜101bに表示しても良い。
【0117】
又は、無線通信装置100〜100bは、当該周波数チャネルごとに導出した方向位置情報のうち、無線通信装置100〜100bから遠い距離を表す方向位置情報を用いて、当該方向位置情報に対応するアクセスポイントのアイコンを表示部101〜101bに表示しても良い。
【0118】
更に、無線通信装置100〜100bは、当該周波数チャネルごとに導出した方向位置情報を平均化し、当該平均化された方向位置情報に基づいて、当該方向位置情報に対応するアクセスポイントのアイコンを表示部101〜101bに表示しても良い。但し、アクセスポイントの方向位置情報の高い推定精度を得るためには、周波数チャネルごとに導出した方向位置情報を平均化した方向位置情報に基づいて、当該方向位置情報に対応するアクセスポイントのアイコンを表示部101〜101bに表示することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、ミリ波の周波数帯域を用いて、通信対象である被通信対象装置との間の位置方向情報を簡易な構成で導出して所望の被通信対象装置との通信を実現し、当該所望の被通信対象装置との通信干渉を効果的に低減する無線通信装置として有用である。
【符号の説明】
【0120】
100、100a、100b 無線通信装置
101、101a、101b 表示部
102、109 アンテナ部
102a、102b、102c、102d 指向性アンテナ
109a、109b、109c アンテナ
102aa、102bb、102cc、102dd、102ee、102ff、109aa、109bb、109cc 指向性
103、103a、103b アンテナ制御部
104、104a、104b 方向位置推定部
105、105a、105b MPU部
106、106a、106b 記憶部
107、107a、107b データバス部
108 ジャイロセンサ
109d、109e、109f 位相制御部
300、301a、301b、301c アイコン
301、302、303 アクセスポイント
【技術分野】
【0001】
本発明は、指向性を有するアンテナを用いて通信対象である被通信対象装置を検出する無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットへの接続形態の一つとして、無線LAN(Local Area Network)が広く普及している。この無線LANは、有線LANと異なり、LANケーブルを用いることなくインターネット等のネットワークに接続可能なLANの一形態である。無線LANは、IEEE802.11で標準化が推進され、現在ではIEEE802.11b、IEEE802.11g及びIEEE802.11aという規格が存在している。
【0003】
IEEE802.11bは、2.4GHzの周波数帯域の電波を用いて最大11Mbps程度の速度で通信を行うための規格である。IEEE802.11gは、2.4GHzの周波数帯域の電波を用いて最大54Mbps程度の速度で通信を行うための規格である。IEEE802.11aは、5.2GHzの周波数帯域の電波を用いて最大54Mbps程度の速度で通信を行うための規格である。これらの規格に準拠した機器等を用いて無線LANのネットワークを構築することで、無線LANを利用した通信を行うことができる。
【0004】
このような無線LANの規格に準拠した機器を車載用装置に適用することで、当該車載用装置を搭載した車両と、外部の無線基地局との間で無線通信を行うものの一例として、特許文献1の車載用無線LAN装置が知られている。
【0005】
ここで、特許文献1の車載用無線LAN装置の構成及び動作について図12〜図14を参照して説明する。図12は、車載用無線LAN装置20の内部構成を示したブロック図である。図13は、車載用無線LAN装置20の通信対象である無線LANアクセスポイントへの接続手順を説明するフローチャートである。図14は、周辺アクセスポイントリストの一例を示す説明図である。
【0006】
図12において、車載用無線LAN装置20は、システムMPU21、GPS受信機22、ジャイロセンサ23a、車速パルスセンサ23b、HDD24a、DVD−ROMドライブ24b、画像処理部25、ディスプレイ26、音声処理部27、マイク28a、スピーカ28b、コントロールパネル29及び無線LANモジュール30を備える。
【0007】
車載用無線LAN20の動作について説明する。図13において、車載用無線LAN装置20は、まず無線LANアクセスポイントからブロードキャストされているビーコン信号の受信信号強度(RSSI)をサーチし(S401)、自車の現在位置の周辺に存在している無線LANアクセスポイントのRSSIリストを作成する(S402)。車載用無線LAN装置20は、このRSSIリストを作成することで、現時点で利用可能な無線LANアクセスポイントを特定する。
【0008】
次に、車載用無線LAN装置20は、自車の現在位置の周辺に存在している無線LANアクセスポイントの周辺アクセスポイントリストを読み出す(S403)。この周辺アクセスポイントリストは、車載用無線LAN装置20が予め作成して保有するものであり、定期的に最新の情報に更新されている。
【0009】
図14は、周辺アクセスポイントリストの一例を示す図である。この例では、「No.」、「SSID」、無線LANアクセスポイントの「位置情報」及び「プロファイル」が示されている。プロファイルは、無線LANアクセスポイントへの接続に必要な情報が含まれた設定ファイルであり、例えばMACアドレス、暗号化方式及びその暗号化キーが含まれる。
【0010】
暗号化方式は、WEP、TKIP、AES等である。なお、HDD24a又はDVD−ROM24bのデータベースに登録されている全ての無線LANアクセスポイントに、プロファイルが予め関連付けされていなくても良い。
【0011】
図13において、車載用無線LAN装置20は、RSSIリストを用いて、周辺アクセスポイントリスト中の無線LANアクセスポイントをフィルタリングする(S404)。RSSIリストは実際に稼動している無線LANアクセスポイントのリストであるが、周辺アクセスポイントリストはあくまで当該データベース上のリストである。このため、当該位置に実際に無線LANアクセスポイントが位置するか、あるいは無線LANアクセスポイントが実際に稼動しているかどうかまでは不明である。従って、周辺アクセスポイントリストとRSSIリストとを重ね合わせることで、実際に接続可能な無線LANアクセスポイントだけをリストアップすることができる。
【0012】
車載用無線LAN装置20は、当該フィルタリング済みの周辺アクセスポイントリストの中からプロファイルのある無線LANアクセスポイントを選択し(S405)、当該無線LANアクセスポイントに対してネットワーク接続を試みる(S406)。当該接続が確立した後は、車載用無線LAN装置20は、通信状態及びアクセスポイントとの距離を監視して(S407)、接続の維持が困難となった時点で上述した一連の接続手順を再開する(S407、YES)。
【0013】
このように、この車載用無線LAN装置20によれば、車両の現在位置を特定可能なカーナビゲーション装置と連動可能に動作し、更に、無線LANアクセスポイントに接続するために必要なプロファイル情報の設定及び無線LANアクセスポイントへの接続を簡単に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−262175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1の車載用無線LAN装置を含む従来の無線通信装置は、上述したIEEE802.11等に準拠した無線通信を行うため、当該無線通信に用いられる電波は2.4GHz又は5.2GHz等のマイクロ波であった。従来の無線通信装置では、マイクロ波の周波数帯域における無線信号が用いられるため、無線通信においては指向性の無いアンテナが主に用いられていた。
【0016】
指向性の無いアンテナが無線通信に用いられると、従来の無線通信装置の通信エリア内に位置する通信対象外のアクセスポイントへ無線信号が意図に反して到達することがある。これにより、当該通信対象外のアクセスポイントでは、当該無線通信装置からの無線信号の到達によって、通信のスループットが低下することがあった。即ち、所望のアクセスポイントではない通信対象外のアクセスポイントと誤って通信することにより、当該所望のアクセスポイントと従来の無線通信装置との間では、通信干渉が発生していたという課題があった。
【0017】
この課題に関連して、Gbps(Giga bit per second)程度の高速な無線通信を実現する方法として、ミリ波の周波数帯域を用いて非常に短い波長の電波で通信する方法が検討されている。ミリ波の周波数帯域では、無線信号の信号電力の伝播減衰がマイクロ波の周波数帯域に比べてより大きいため、所定方向に高い指向性を有するアンテナを用いることが一般的である。なお、以下の説明において、所定方向に高い指向性を有するアンテナを、「指向性アンテナ」という。
【0018】
しかし、このような指向性アンテナを用いた場合、通信可能な近距離にアクセスポイントが位置するにも拘わらず、予め定められた指向性アンテナの指向性が所望の通信方向と異なる場合に、当該アクセスポイントとの間で通信することが困難であった。
【0019】
従って、特定方向に位置するアクセスポイントと限定的に通信するためには、当該アクセスポイント及び従来の無線通信装置の各絶対位置情報をそれぞれ取得し、当該無線通信装置が、当該絶対位置情報に基づいて当該アクセスポイントの位置を演算する必要があった。
【0020】
具体的には、従来の無線通信装置及びアクセスポイントにそれぞれ、絶対位置情報を計測、送信するGPS受信機等が必要であり、更に、当該無線通信装置においては当該アクセスポイントの位置を演算するための具体的構成が必要であった。従って、このような構成を、例えば携帯電話機のような小型化且つ低消費電力が要求される無線通信装置へ適用することは困難であった。
【0021】
本発明は、上述した従来の事情に鑑みてなされたもので、ミリ波の周波数帯域を用いて、通信対象である被通信対象装置の位置方向情報を簡易な構成で導出し、当該所望の被通信対象装置との間における通信干渉を効果的に低減する無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、上述した無線通信装置であって、ミリ波の周波数帯域を用いた無線通信で信号を送受信する無線通信装置であって、複数の異なる指向性を有するアンテナ部と、前記アンテナ部の複数の指向性のうち、所定方向に指向性を形成するアンテナ制御部と、前記指向性が形成された前記アンテナ部によって受信された受信信号に応じて、前記無線通信の通信対象である被無線通信装置の方向位置情報を推定する方向位置推定部と、前記推定された前記被無線通信装置の方向位置情報を表示する表示部と、を備える。
【0023】
本発明は、上述した無線通信装置であって、ミリ波の周波数帯域を用いた無線通信で信号を送受信する無線通信装置であって、所定方向に指向性を有するアンテナ部と、当該無線通信装置の位置変化に対応した角度情報を検出するジャイロセンサと、前記アンテナ部によって受信された受信信号及び前記角度情報に応じて、前記無線通信の通信対象である被無線通信装置の方向位置情報を推定する方向位置推定部と、前記推定された前記被無線通信装置の方向位置情報を表示する表示部と、を備える。
【発明の効果】
【0024】
本発明の無線通信装置によれば、ミリ波の周波数帯域を用いて、通信対象である被通信対象装置との間の相対的な位置方向情報を簡易な構成で導出し、当該所望の被通信対象装置との間における通信干渉を効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施形態の無線通信装置の内部構成を示すブロック図
【図2】第1の実施形態の無線通信装置の模式的な外観、及び当該無線通信装置とアクセスポイントとの相対的な方向位置情報を表示する表示部の様子を示す説明図
【図3】第1の実施形態の無線通信装置と、当該無線通信装置の通信エリア内に位置するアクセスポイントとの間の位置関係を示す説明図
【図4】第1の実施形態の無線通信装置の動作を説明するフローチャート
【図5】第2の実施形態の無線通信装置の内部構成を示すブロック図
【図6】第2の実施形態の無線通信装置の模式的な外観、及び当該無線通信装置とアクセスポイントとの相対的な方向位置情報を表示する表示部の様子を示す説明図
【図7】第2の実施形態の無線通信装置と、当該無線通信装置の通信エリア内に位置するアクセスポイントとの位置関係を示す説明図
【図8】第2の実施形態の無線通信装置の動作を説明するフローチャート
【図9】第3の実施形態の無線通信装置の内部構成を示すブロック図
【図10】第3の実施形態の無線通信装置と、当該無線通信装置の通信エリア内に位置するアクセスポイントとの位置関係を示す説明図
【図11】第3の実施形態の無線通信装置の動作を説明するフローチャート
【図12】従来の車載用無線LAN装置の内部構成を示したブロック図
【図13】従来の車載用無線LAN装置の通信対象である無線LANアクセスポイントへの接続手順を説明するフローチャート
【図14】周辺アクセスポイントリストの一例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明において、本発明の無線通信装置の通信対象である被無線通信装置として、例えば無線LANにおいて当該無線通信装置の通信を中継するアクセスポイントを例示する。但し、当該被無線通信装置は、当該アクセスポイントに限定されない。
【0027】
また、以下の説明において、本発明に係る無線通信装置を基準にしたアクセスポイントの位置情報及び方向情報を、「方向位置情報」と記載する。
【0028】
また、以下の説明において、本発明に係る無線通信装置は、送受信可能な周波数チャネルとして、ミリ波の周波数帯域のチャネル1及びチャネル2の計2つの周波数チャネルを用いることができるものとする。更に、当該無線通信装置の通信対象であるアクセスポイントも、同様の周波数チャネルを用いることができるものとする。以下の説明においては、チャネル数を2としたが、3以上の周波数チャネルでも同様の動作を行う。
【0029】
〔第1の実施形態〕
第1の実施形態の無線通信装置100の構成について図1〜図3を参照して説明する。図1は、第1の実施形態の無線通信装置100の内部構成を示すブロック図である。
図2は、第1の実施形態の無線通信装置100の模式的な外観、及び当該無線通信装置100とアクセスポイント301,302,303との方向位置情報を表示する表示部101の様子を示す説明図である。なお、アクセスポイント301,302,303は図3に示す。
図3は、第1の実施形態の無線通信装置100と、当該無線通信装置100の通信エリア内に位置するアクセスポイント301〜303との間の位置関係を示す説明図である。
【0030】
無線通信装置100では、図1に示すように、データバス部107を介して、表示部101、アンテナ制御部103、無線部110、方向位置推定部104、MPU(Micro Processor Unit)部105及び記憶部106部がそれぞれ接続されている。アンテナ部102は、アンテナ制御部103と接続されている。無線部110は、アンテナ制御部103及び方向位置推定部104に接続されている。
【0031】
表示部101は、LCD(Liquid Crystal Display)等で構成されている。表示部101は、無線通信装置100が導出したアクセスポイント301〜303の方向位置情報に応じて、当該無線通信装置100のアイコン300、各アクセスポイント301〜303のアイコン301a,301b,301cを明示的に表示する(図2参照)。
【0032】
アンテナ部102は、複数のアンテナ、例えば3つの指向性アンテナ102a,102b,102cにより構成されている。各々の指向性アンテナ102a〜102cは、図2に示すように、それぞれ異なる所定の方向に高くて狭い指向性102aa,102bb,102ccを有するアンテナであり、アンテナ制御部103から供給される給電電力に基づいて動作する。なお、アンテナ部102を構成する各指向性アンテナ102a〜102cには、当該指向性アンテナを識別するための番号が予め付与されている。以下の説明において、各指向性アンテナ102a〜102cを識別する番号を、「セクタ番号」という。なお、本実施の形態では、指向性アンテナ102aのセクタ番号は1、指向性アンテナ102bのセクタ番号は2、指向性アンテナ102cのセクタ番号は3とする。
【0033】
各々の指向性アンテナ102a〜102cは、無線通信装置100の送受信可能な周波数チャネルにおいて、当該指向性アンテナ102a〜102cの各通信エリア内(当該通信エリアの方向も含む。以下同様。)に位置する各アクセスポイント301〜303から送信された固有情報信号を受信する。
【0034】
この固有情報信号は、各アクセスポイント301〜303の識別番号情報を含む固有の情報信号であって、以下の説明において、各アクセスポイント301〜303から送信された各当該固有情報信号を「ビーコン信号」という。
例えば、このビーコン信号には、各アクセスポイント301〜303のMACアドレス、SSID(Service Set Identifier)又はESSID(Extended Service Set Identifier)等の当該アクセスポイント301〜303の識別番号情報が含まれる。なお、このビーコン信号に関する説明は、以下の各実施形態においても同様である。
【0035】
アンテナ制御部103は、ビーコン信号の受信の際に用いる指向性アンテナを切り替えて、指向性アンテナ102a〜102cのうちいずれかの指向性アンテナから選択し、更に、当該選択された指向性アンテナに給電電力を供給する。
アンテナ制御部103は、当該選択された指向性アンテナのセクタ番号を、一時的に記憶部106に格納する。アンテナ制御部103は、当該選択された指向性アンテナの有する指向性を、アンテナ部102の指向性として形成する。
【0036】
また、無線部110は、無線通信装置100の送受信可能な周波数チャネルを上述したチャネル1又はチャネル2に設定し、当該チャネル1又はチャネル2においてアクセスポイント301〜303から送信されたビーコン信号の有無を検出する。無線部110は、当該設定されたチャネル1又はチャネル2を、一時的に記憶部106に格納する。
無線部110は、アンテナ部102の指向性を形成するように選択された、いずれかの指向性アンテナが受信したビーコン信号を、データバス部107を介して方向位置推定部104に出力する。
【0037】
方向位置推定部104は、無線部110により出力されたビーコン信号を、データバス部107を介して入力する。方向位置推定部104は、当該入力されたビーコン信号に応じて、当該ビーコン信号を送信したアクセスポイントの方向位置情報を導出する。
方向位置推定部104は、当該導出されたいずれかのアクセスポイント301〜303の方向位置情報を、データバス部107を介して記憶部106に格納する。なお、この方向位置情報の導出の詳細は後述する。
【0038】
MPU部105は、MPUで構成され、図1に示した無線通信装置100の各部の動作を制御する。例えば、MPU部105は、記憶部106に格納されたアクセスポイント301〜303の各方向位置情報に応じて、当該各アクセスポイントのアイコン300,301a,302a,303aを表示部101に表示する。なお、各アクセスポイントに対応したアイコン300,301a,301b,301c(図2参照)が有する機能を示すデータは、記憶部106に予め格納されていることが好ましい。機能を示すデータとは、プリンタ、モニタなどの種別や各アクセスポイントがサポートするデータ伝送速度やアプリケーションの種別、セキュリティ機能の有無や強度などである。
【0039】
記憶部106は、ハードディスク、フラッシュメモリ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成され、方向位置推定部104により導出されたアクセスポイント301〜303の各方向位置情報を格納する。
更に、記憶部106は、無線通信装置100の各部の動作時におけるワークメモリとして機能する。
【0040】
アクセスポイント301〜303は、図3に示すように、それぞれ独立したアクセスポイントとして動作する。アクセスポイント301〜303は、各々のアクセスポイントの識別番号情報を含むビーコン信号を、ミリ波の周波数帯域における異なる周波数チャネル(チャネル1又はチャネル2)を用いて定期的に送信している。これらのアクセスポイント301〜303の説明は、以下の各実施形態においても同様である。
【0041】
図3には、指向性アンテナ102aの指向性102aaによって形成された通信エリアで、アクセスポイント301が検出されたことが示されている。同様に、図3には、指向性アンテナ102bの指向性102bbによって形成された通信エリアで、アクセスポイント302が検出されたことが示されている。同様に、図3には、指向性アンテナ102bの指向性102bbによって形成された通信エリアと指向性アンテナ102cの指向性102ccによって形成された通信エリアとの中間地点で、アクセスポイント303が検出されたことが示されている。
【0042】
次に、無線通信装置100の動作について、図4を参照して説明する。図4は、第1の実施形態の無線通信装置100の動作を説明するフローチャートである。
【0043】
図4において、無線部110は、ミリ波の周波数帯域における周波数チャネルの番号を初期化する(S101)。即ち、無線部110は、無線通信装置100の送受信可能なミリ波の周波数帯域における周波数チャネルを、チャネル1に設定する。このチャネル1に設定されたという情報は、記憶部106に格納される。
【0044】
アンテナ制御部103は、アンテナ部102の各指向性アンテナ102a〜102cのセクタ番号を1に初期化する(S102)。即ち、アンテナ制御部103は、アンテナ部102の各指向性アンテナ102a〜102cのうち、当該アンテナ部102の指向性を形成するための指向性アンテナとして、先ず指向性アンテナ102aを選択する。
【0045】
これにより、無線通信装置100のアンテナ部102では、図3に示すように、指向性アンテナ102aの指向性102aaが形成される。無線通信装置100は、当該形成された指向性アンテナ102aの指向性102aaの通信エリア(図示しない)に、当該無線通信装置100の通信対象であるアクセスポイントが位置するか否かを検出する。
【0046】
無線部110は、ミリ波の周波数帯域におけるチャネル1内に存在する受信電界強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)を測定する(S103)。無線部110は、当該測定された受信電界強度が所定値を超える場合に(S104、YES)、ビーコン信号同期確立(S105)の動作に移行し、当該ビーコン信号のプリアンブルを検出して当該ビーコン信号の同期を確立する(S105)。無線部110は、当該ビーコン信号の同期を確立した後、当該ビーコン信号を方向位置推定部104に出力する。
【0047】
方向位置推定部104は、無線部110により出力されたビーコン信号を入力する。方向位置推定部104は、当該入力されたビーコン信号のヘッダ領域の情報に基づいて、当該ビーコン信号のデータ領域を復調する。方向位置推定部104は、当該復調されたデータ領域のデータに基づいて、当該ビーコン信号の受信電界強度及び受信SN比を導出する(S106)。更に、方向位置推定部104は、当該ビーコン信号のヘッダ領域に含まれるアクセスポイントの識別番号情報を抽出する。なお、この識別番号情報には、各アクセスポイント301〜303のMACアドレス、SSID又はESSID等が含まれている。
【0048】
方向位置推定部104は、当該抽出されたアクセスポイントの識別番号情報、ステップS106で導出されたビーコン信号の受信電界強度及び受信SN比の情報を関連づけて記憶部106に格納する(S107)。
【0049】
次に、アンテナ制御部103は、アンテナ部102の指向性アンテナ102a〜102cの現在のセクタ番号(=1)に1を加算して、セクタ番号を2とする(S108)。即ち、アンテナ制御部103は、アンテナ部102の各指向性アンテナ102a〜102cのうち、当該アンテナ部102の指向性を形成するための指向性アンテナとして、セクタ番号が2の指向性アンテナ102bを選択する。
【0050】
即ち、無線通信装置100は、ステップS109で現在のセクタ番号がアンテナ部102におけるセクタ番号の最大値を超えるまで、全ての送受信可能な周波数チャネルにおいて上述したステップS103からステップS108の動作を繰り返す(S109)。即ち、無線通信装置100は、ミリ波の周波数帯域のチャネル1で、アンテナ部102の各指向性アンテナ102a〜102cの指向性102aa〜102ccを形成し、当該形成された指向性の通信エリア内にアクセスポイントが位置するか否かを検出する。
【0051】
ステップS109で現在のセクタ番号がアンテナ部102におけるセクタ番号の最大値を超えた場合(S109、NO)、無線部110は、ミリ波の周波数帯域で現在設定している周波数チャネルを、チャネル1からチャネル2に変更する(S110)。その後、無線通信装置100は、上述したステップS102からステップS109の動作を繰り返す(S111)。例えば、ステップS111において現在設定されている周波数チャネルが最大チャネル数である2ではない場合(S111、YES)、無線通信装置100は、ミリ波の周波数帯域の周波数チャネルをチャネル2に設定する。更に、無線通信装置100は、当該チャネル2で、アンテナ部102の各指向性アンテナ102a〜102cの指向性102aa〜102ccを形成し、当該形成された指向性の通信エリア内にアクセスポイントが位置するか否かを検出する。
【0052】
以上により、記憶部106には、周波数チャネル及び指向性アンテナ102a〜102cのうちいずれかの指向性アンテナのセクタ番号に関連して、当該指向性アンテナが受信したビーコン信号の受信電界強度、受信SN比、及びアクセスポイントの識別番号情報が格納される。
【0053】
方向位置推定部104は、記憶部106に格納された各データ、具体的には受信SN比に基づいて、各アクセスポイント301〜303の方向位置情報を導出する。
なお、アクセスポイント301〜303のアンテナ利得、及びビーコン信号の信号電力は、アクセスポイント301〜303から送信されるビーコン信号に含まれているものとする。
ここで、受信SN比は、受信したビーコン信号を利用することで、各アクセスポイント301〜303が送信するビーコン信号の信号電力、アクセスポイント301〜303のアンテナ利得、伝搬距離、指向性アンテナ102a〜102cの利得及び雑音指数により定まる。
【0054】
従って、アクセスポイント301〜303のアンテナ利得、及びビーコン信号の信号電力が分かっている場合には、方向位置推定部104は、ステップS106で導出された受信SN比から伝搬距離を導出することができる。
【0055】
方向位置推定部104は、上述した記憶部106に格納された受信SN比に応じて、無線通信装置100と各アクセスポイント301〜303との方向位置情報を導出する(S112)。
【0056】
この方向位置情報のうち、無線通信装置100を基準にした各アクセスポイント301〜303の方向情報は、当該アクセスポイント301〜303から送信されたビーコン信号を受信した際のアンテナ部102の指向性に基づいて定まる。
例えば、アンテナ部102の指向性102aaが形成されている場合にアクセスポイント301からビーコン信号を受信したとき、当該アクセスポイント301の方向情報は、図3に示すように、略北西側とされる。図3において説明のために図面の上方向を北、左方向を西、右方向を東として北西と表現している。他のアクセスポイント302,303からビーコン信号をそれぞれ受信した場合においても同様である。
【0057】
また、当該方向位置情報のうち、無線通信装置100と各アクセスポイント301〜303との距離情報(位置情報)は、上述したステップS112において、記憶部106に格納された受信SN比に応じて導出されたビーコン信号の伝搬距離に基づいて推定値として定まる。
【0058】
また、図3に示すように、指向性102bbが形成された通信エリアと指向性102ccが形成された通信エリアとの中間地点でアクセスポイント303が検出される場合には、無線通信装置100は、次のようにして当該アクセスポイント303の方向位置情報を導出する。
具体的には、方向位置推定部104は、指向性102bbが形成された場合のアクセスポイントの方向位置情報と、指向性102ccが形成された場合のアクセスポイントの方向位置情報とをそれぞれ導出する。更に、方向位置推定部104は、当該導出された各方向位置情報に含まれる方向(角度)及び位置(距離)の交点を導出することで、当該アクセスポイント303の方向位置情報を導出する。
【0059】
方向位置推定部104は、当該導出されたアクセスポイントの方向位置情報を記憶部106に格納する。MPU部105は、当該記憶部106に格納されたアクセスポイントの方向位置情報を、図2に示すように、表示部101に明示的に表示する。例えば、MPU部105は、当該アクセスポイントの方向位置情報として、当該アクセスポイントの識別番号情報、例えばESSIDを表示部101に表示する。これにより、無線通信装置100は、当該無線通信装置100と接続可能なアクセスポイントの選択を、ユーザに対して容易に促すことができる。
【0060】
アクセスポイント301〜303の一使用例として、アクセスポイント301が大画面を有するテレビジョン装置、アクセスポイント302がPC(Personal Computer)、アクセスポイント303がHDD(Hard Disk Drive)レコーダのようなストレージ装置を想定する。無線通信装置100は、ミリ波の周波数帯域の周波数チャネルで、指向性の高くて狭い指向性アンテナ102a〜102cを用いて、当該指向性アンテナ102a〜102cのうちいずれかの指向性アンテナを用いて指向性を形成して、アクセスポイントの有無を検出する。
【0061】
これにより、無線通信装置100は、方向位置情報が導出された各アクセスポイント301〜303のうち、ストレージ装置に当該無線通信装置100からファイルを送信している状態でも、電波のテレビジョン装置やPCへの当該送信信号の漏洩を抑制することができる。このため、例えば、無線通信装置100とストレージ装置との間の通信を確立することができ、同時にPCとテレビジョン装置との間の通信を確立することができる。
【0062】
従って、第1の実施形態の無線通信装置100によれば、ミリ波の周波数帯域を用いて、通信対象であるアクセスポイント301〜303との間の相対的な位置方向情報を簡易な構成で導出することができる。更に、無線通信装置100によれば、所望のアクセスポイント301〜303との通信を簡単に実現することができるため、当該所望のアクセスポイント301〜303との間における通信干渉を効果的に低減することができる。
【0063】
なお、上述した表示部101には、各アクセスポイント301〜303のアイコンとして、当該アクセスポイントの識別番号情報、例えばESSIDが表示されることが好ましい。但し、各アクセスポイント301〜303のアイコンは、当該識別番号情報に限定されない。例えば、テレビジョン装置、PC、プリンタ等の各画像データが当該アイコンとして表示部101に表示されても良い。この場合、これらの各画像データは、予め無線通信装置100の記憶部106内に格納されているとする。
【0064】
また、表示部101の上にタッチパネルが配設されていても良く、以下の各実施形態においても同様である。この場合、表示部101に表示されたアクセスポイントのアイコンのタッチ入力操作に応じて、ユーザは、所望の通信対象のアクセスポイントの方向及び位置を的確に認識した上で、当該所望のアクセスポイントの方向に指向性を形成する指向性アンテナを適切に選択可能である。
【0065】
これにより、無線通信装置100は、ユーザ所望のアクセスポイントの方向に指向性を瞬時に形成することができ、更に通信の確立時間をより短くすることができる。更に、無線通信装置100は、アクセスポイントとの通信の確立時間をより短くすることができるため、当該通信の秘匿性を高くすることができる。
【0066】
更に、ミリ波の周波数帯域に対応した狭い指向性を有する指向性アンテナは一般的に高いアンテナ利得を持つ。このため、回線品質を高めることができる。従って、無線通信装置100は、より適切な方向に指向性アンテナ102a〜102cの指向性102aa〜102ccを形成することで、ギガビットクラスの高速な無線通信も容易に実現することができる。
【0067】
〔第2の実施形態〕
第2の実施形態の無線通信装置100aの構成について図5〜図7を参照して説明する。第2の実施形態の無線通信装置100aの構成及び動作に関する説明のうち、第1の実施形態の無線通信装置100と同様の構成及び動作に関する説明は省略する。図5は、第2の実施形態の無線通信装置100aの内部構成を示すブロック図である。
図6は、第2の実施形態の無線通信装置の模式的な外観、及び当該無線通信装置100aとアクセスポイント301〜303との方向位置情報を表示する表示部101aの様子を示す説明図である。
図7は、第2の実施形態の無線通信装置100aと、当該無線通信装置100aの通信エリア内に位置するアクセスポイント301〜303との間の位置関係を示す説明図である。
【0068】
無線通信装置100aでは、図5に示すように、データバス部107aを介して、表示部101a、アンテナ制御部103a、無線部110a、方向位置推定部104a、MPU部105a、記憶部106a及びジャイロセンサ108がそれぞれ接続されている。指向性アンテナ102dは、無線部110に接続される。
【0069】
指向性アンテナ102dは、図6に示すように、予め固定的に定められた方向に高くて狭い指向性102ddを有するアンテナであり、アンテナ制御部103aから供給される給電電力に基づいて動作する。指向性アンテナ102dは、無線通信装置100aの送受信可能な周波数チャネルにおいて、当該指向性アンテナ102dの通信エリア内に位置するアクセスポイントから送信されたビーコン信号を受信する。
【0070】
アンテナ制御部103aは、指向性アンテナ102dに給電電力を供給し、当該指向性アンテナ102dで指向性102ddを形成する。
【0071】
無線部110aは、無線通信装置100aの送受信可能な周波数チャネルをチャネル1又はチャネル2に設定し、当該チャネル1又はチャネル2においてアクセスポイント301〜303から送信されたビーコン信号の有無を検出する。無線部110aは、指向性アンテナ102dが受信したビーコン信号を、データバス部107aを介して方向位置推定部104aに出力する。
無線部110aは、当該設定されたチャネル1又はチャネル2を、一時的に記憶部106aに格納する。なお、チャネル数は3以上あってもよい。
【0072】
方向位置推定部104a、MPU部105a及び記憶部106aの動作は、上述した第1の実施形態の方向位置推定部104、MPU部105及び記憶部106の動作と同様であるため、当該動作の説明は省略する。
【0073】
ジャイロセンサ108は、無線通信装置100aを保持するユーザの保持状態に対応した角度情報を検出する。ジャイロセンサ108は、当該検出された角度情報を、データバス部107aを介して方向位置推定部104a及び記憶部106aにそれぞれ出力する。
【0074】
図7には、ユーザの無線通信装置100aの保持状態に対応した角度情報に応じて指向性アンテナ102dの指向性102ddが形成された通信エリアで、アクセスポイント301が検出されたことが示されている。
同様に、ユーザの無線通信装置100aの保持状態に対応した角度情報に応じて指向性アンテナ102dの指向性102eeが形成された通信エリアで、アクセスポイント302が検出されたことが示されている。
同様に、ユーザの無線通信装置100aの保持状態に対応した角度情報に応じて指向性アンテナ102dの指向性102ffが形成された通信エリアで、アクセスポイント303が検出されたことが示されている。
【0075】
次に、無線通信装置100aの動作について、図8を参照して説明する。図8は、第2の実施形態の無線通信装置100aの動作を説明するフローチャートである。
【0076】
図8において、無線部110aは、ミリ波の周波数帯域における周波数チャネルの番号を初期化する(S201)。即ち、無線部110aは、無線通信装置100aの送受信可能なミリ波の周波数帯域における周波数チャネルをチャネル1に設定する。このチャネル1に設定されたという情報は、記憶部106aに格納される。
【0077】
無線部110aは、ミリ波の周波数帯域におけるチャネル1内に位置する受信電界強度を測定する(S202)。無線部110aは、当該測定された受信電界強度が所定値を超える場合に(S203、YES)、ビーコン信号同期確立(S204)の動作に移行し、当該ビーコン信号のプリアンブルを検出して当該ビーコン信号の同期を確立する(S204)。無線部110aは、当該ビーコン信号の同期を確立した後、当該ビーコン信号を方向位置推定部104aに出力する。
【0078】
方向位置推定部104aは、無線部110aにより出力されたビーコン信号を入力する。方向位置推定部104aは、当該入力されたビーコン信号のヘッダ領域の情報に基づいて、当該ビーコン信号のデータ領域を復調する。方向位置推定部104aは、当該復調されたデータ領域のデータに基づいて、当該ビーコン信号の受信電界強度及び受信SN比を導出する(S205)。更に、方向位置推定部104aは、当該ビーコン信号のヘッダ領域内に含まれるアクセスポイントの識別番号情報を抽出する。なお、この識別番号情報には、各アクセスポイント301〜303のMACアドレス、SSID又はESSID等が含まれている。
【0079】
このとき、ジャイロセンサ108は、無線通信装置100aを保持するユーザの保持状態に対応した角度情報を検出し(S206)、当該検出された角度情報を、データバス部107aを介して方向位置推定部104a及び記憶部106aにそれぞれ出力する。
【0080】
方向位置推定部104aは、当該抽出されたアクセスポイントの識別番号情報、ステップS205で導出されたビーコン信号の受信電界強度及び受信SN比の情報を関連づけて記憶部106aに格納する(S207)。
【0081】
次に、無線部110aは、ミリ波の周波数帯域で現在設定している周波数チャネルを、チャネル1からチャネル2に変更する(S208)。その後、無線通信装置100aは、全ての送受信可能な周波数チャネルにおいて、上述したステップS202からステップS207の動作を繰り返す(S209)。例えば、ステップS209において現在設定されている周波数チャネルが最大のチャネル数であるチャネル2ではない場合(S209、YES)、無線通信装置100aは、ミリ波の周波数帯域の周波数チャネルをチャネル2に設定する。更に、無線通信装置100aは、当該チャネル2で、ジャイロセンサ108により検出された角度情報に対応して形成された指向性アンテナ102dの指向性102dd〜102ffの通信エリア内にアクセスポイントが位置するか否かを検出する。
【0082】
以上により、記憶部106aには、周波数チャネル及び指向性アンテナ102dに対応して、当該アンテナ102dが受信したビーコン信号の受信電界強度、受信SN比、及びアクセスポイントの識別番号情報の各データが格納される。
【0083】
方向位置推定部104aは、記憶部106aに格納された各データ、具体的には受信SN比に基づいて、各アクセスポイント301〜303の方向位置情報を導出する(S210)。
【0084】
この方向位置情報のうち、無線通信装置100aを基準にした各アクセスポイント301〜303の方向は、当該アクセスポイント301〜303から送信されたビーコン信号を受信した場合のアンテナ102dの指向性が向けられた、無線通信装置100aの方向に基づいて定まる。
アンテナ102dの指向性は、ジャイロセンサ108により検出された角度情報に依存している。例えば、アクセスポイント301からビーコン信号を受信したとき、当該アクセスポイント301の方向情報は、図7に示すように、指向性102ddである場合にジャイロセンサ108により検出された角度情報とされる。他のアクセスポイント302,303からビーコン信号をそれぞれ受信した場合においても同様である。
【0085】
また、当該方向位置情報のうち、無線通信装置100aと各アクセスポイント301〜303との距離情報(位置情報)は、上述したステップS210において、記憶部106aに格納された受信SN比に応じて導出されたビーコン信号の伝搬距離に基づいて定まる。
【0086】
以上により、第2の実施形態の無線通信装置100aによれば、上述した無線通信装置100と同様に、ミリ波の周波数帯域を用いて、通信対象であるアクセスポイント301〜303との間の位置方向情報を簡易な構成で導出することができる。更に、無線通信装置100aによれば、所望のアクセスポイント301〜303との通信を簡単に実現することができるため、当該所望のアクセスポイント301〜303との間における通信干渉を効果的に低減することができる。
【0087】
上述した第1の実施形態と同様、無線通信装置100aの表示部101aには、各アクセスポイント301〜303のアイコンとして、当該アクセスポイントの識別番号情報、例えばISSIDが表示される。従って、当該表示されたアイコンのアクセスポイントと通信する場合には、ユーザが当該アクセスポイントの方向に無線通信装置100aを傾けるように保持することで、無線通信装置100aは、当該アクセスポイントとの通信を簡単に実現することができる。
【0088】
上述した第2の実施形態では、予め固定的に定められた方向に高くて狭い指向性を有する指向性アンテナ102dを用いるように説明した。但し、第2の実施形態の無線通信装置100aにおいて、当該指向性アンテナ102dの代わりに、第1の実施形態で説明したアンテナ部102を構成する指向性を切り替えることができる指向性アンテナ102a〜102cが用いられても良い。
【0089】
この場合、指向性アンテナ102a〜102cで設定する指向性は、指向性アンテナ102dで設定される通信エリアをさらに細かく分割し、通信エリアの切替えができるような、より狭い通信エリアを持つ指向性アンテナ102a‘〜102c‘を用いる。
指向性アンテナ102dが受信したビーコン信号に応じて導出されたアクセスポイントの方向にユーザが無線通信装置100aを傾けて指向性を形成することで、無線通信装置100aは、アクセスポイントの方向位置情報の推定を高精度に行うことができる。
【0090】
〔第3の実施形態〕
第3の実施形態の無線通信装置100bの構成について図9及び図10を参照して説明する。第3の実施形態の無線通信装置100bの構成及び動作に関する説明のうち、第1の実施形態の無線通信装置100、或いは第2の実施形態の無線通信装置100aと同様の構成及び動作に関する説明は省略する。図9は、第3の実施形態の無線通信装置100bの内部構成を示すブロック図である。
図10は、第3の実施形態の無線通信装置100bの模式的な外観、及び当該無線通信装置100bとアクセスポイント301〜303との方向位置情報を表示する表示部101bの様子を示す説明図である。
【0091】
無線通信装置100bでは、図9に示すように、データバス部107bを介して、表示部101b、アンテナ制御部103b、無線部110b、方向位置推定部104b、MPU部105b、記憶部106b及びジャイロセンサ108がそれぞれ接続されている。なお、ジャイロセンサ108は、無線通信装置100bに設けられていなくても良い。アンテナ部109は、アンテナ制御部103bと接続されている。無線部110bは、アンテナ制御部103b及び方向位置推定部104bに接続されている。
【0092】
アンテナ部109は、複数のアンテナ、例えば3つのアンテナ109a,109b,109c、及び当該各アンテナ109a〜109cにそれぞれ接続された位相調整部109d,109e,109fから構成されるフェーズドアレイアンテナである。
【0093】
アンテナ部109は、図9に示すように、それぞれ移相器等で構成される位相調整部109d〜109fが各アンテナ109a〜109cから送信される送信信号の位相を調整して各信号間に所定の位相差を設けることで、所定方向に指向性が形成される。アンテナ部109は、アンテナ制御部103bから供給される給電電力に基づいて動作する。
【0094】
各々のアンテナ109a〜109cは、無線通信装置100bの送受信可能な周波数チャネルにおいて、当該アンテナ109a〜109cの各通信エリア内に位置する各アクセスポイント301〜303から送信されたビーコン信号を受信する。
【0095】
アンテナ制御部103bは、アンテナ部109に給電電力を供給し、当該供給されたアンテナ部109のフェーズドアレイアンテナの指向性を制御する。アンテナ制御部103bは、無線部110bに接続される。
無線部110bは、無線通信装置100bの送受信可能な周波数チャネルをチャネル1又はチャネル2に設定し、当該チャネル1又はチャネル2においてアクセスポイント301〜303から送信されたビーコン信号の有無を検出する。無線部110bは、当該設定されたチャネル1又はチャネル2を、一時的に記憶部106bに格納する。
無線部110bは、アンテナ部109が受信したビーコン信号を、データバス部107bを介して方向位置推定部104bに出力する。
【0096】
方向位置推定部104bは、無線部110bにより出力されたビーコン信号を、データバス部107bを介して入力する。方向位置推定部104bは、当該入力されたビーコン信号に応じて、当該ビーコン信号を送信したアクセスポイントの方向位置情報を、フェーズドアレイアンテナの指向性パターン情報と各々の指向性パターンにおける、ビーコン信号の信号強度および位相情報から導出する。
【0097】
特に、ビーコン信号を受信したアクセスポイント301〜303の方向位置情報のうち、方向を推定する場合には、方向位置推定部104bが公知のMUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法に従った到来方向及び距離の推定を行うことで導出可能である。
【0098】
なお、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法とは、フェーズドアレイアンテナのような複数のアンテナに同時に到来する複数の電波の方向を測定するアルゴリズムである。具体的には、MUSIC法では、まず複数のアンテナが受信した受信信号から得られる相関行列の固有値が導出される。この導出された固有値は、アクセスポイントから送信されたビーコン信号の波数によって信号固有値と雑音固有値とに分けられ、当該雑音固有値に対応した雑音固有ベクトルが導出される。この導出された雑音固有ベクトルに基づいて角度スペクトラムが導出され、当該導出された角度スペクトラムを並列平均してMUSICスペクトラムが導出される。この導出されたMUSICスペクトラムから所望のビーコン信号の到来方向が推定される。
【0099】
方向位置推定部104bは、当該導出されたいずれかのアクセスポイント301〜303の方向位置情報を、データバス部107bを介して記憶部106bに格納する。なお、この方向位置情報の位置(距離)導出の詳細は後述する。
【0100】
MPU部105b、記憶部106b及びジャイロセンサ108の動作は、上述した第2の実施形態のMPU部105a、記憶部106a及びジャイロセンサ108の動作と同様であるため、当該動作の説明は省略する。
【0101】
図10には、アンテナ部109のフェーズドアレイアンテナの指向性109aaが形成された通信エリアで、アクセスポイント301が検出されたことが示されている。
同様に、アンテナ部109のフェーズドアレイアンテナの指向性109bbが形成された通信エリアで、アクセスポイント302が検出されたことが示されている。
同様に、アンテナ部109のフェーズドアレイアンテナの指向性109ccが形成された通信エリアで、アクセスポイント303が検出されたことが示されている。
【0102】
次に、無線通信装置100bの動作について、図11を参照して説明する。図11は、第3の実施形態の無線通信装置100bの動作を説明するフローチャートである。なお、図11に示すフローチャートの動作の前に、無線通信装置100bは、アンテナ部109のフェーズドアレイアンテナにより所定方向に指向性を形成しているものとする。
【0103】
図11において、無線部110bは、ミリ波の周波数帯域における周波数チャネルの番号を初期化する(S301)。即ち、無線部110bは、無線通信装置100bの送受信可能なミリ波の周波数帯域における周波数チャネルをチャネル1に設定する。このチャネル1に設定されたという情報は、記憶部106bに格納される。
【0104】
無線部110bは、ミリ波の周波数帯域におけるチャネル1内に位置する受信電界強度を測定する(S302)。無線部110bは、当該測定された受信電界強度が所定値を超える場合に(S303、YES)、ビーコン信号同期確立(S304)の動作に移行し、当該ビーコン信号のプリアンブルを検出して当該ビーコン信号の同期を確立する(S304)。無線部110bは、当該ビーコン信号の同期を確立した後、当該ビーコン信号を方向位置推定部104bに出力する。
【0105】
方向位置推定部104bは、無線部110bにより出力されたビーコン信号を入力する。方向位置推定部104bは、当該入力されたビーコン信号のヘッダ領域の情報に基づいて、当該ビーコン信号のデータ領域を復調する。方向位置推定部104bは、当該復調されたデータ領域のデータに基づいて、当該ビーコン信号の受信電界強度及び受信SN比を導出する(S305)。更に、方向位置推定部104bは、当該ビーコン信号のヘッダ領域内に含まれるアクセスポイントの識別番号情報を抽出する。なお、この識別番号情報には、各アクセスポイント301〜303のMACアドレス、SSID又はESSID等が含まれている。
【0106】
方向位置推定部104bは、当該抽出されたアクセスポイントの識別番号情報、ステップS305で導出されたビーコン信号の受信電界強度及び受信SN比の情報を関連づけて記憶部106bに格納する(S306)。
【0107】
次に、無線部110bは、ミリ波の周波数帯域で現在設定している周波数チャネルを、チャネル1からチャネル2に変更する(S307)。その後、無線通信装置100bは、全ての送受信可能な周波数チャネルにおいて、上述したステップS302からステップS306の動作を繰り返す(S308)。例えば、ステップS308において現在設定されている周波数チャネルが最大のチャネル数であるチャネル2ではない場合(S308、YES)、無線通信装置100bは、ミリ波の周波数帯域の周波数チャネルをチャネル2に設定する。更に、無線通信装置100bは、当該チャネル2で、アンテナ部109のフェーズドアレイアンテナにより形成された指向性109dd〜109ffの通信エリア内にアクセスポイントが位置するか否かを検出する。
【0108】
以上により、記憶部106bには、周波数チャネル及びアンテナ部109の指向性109aa〜109ccに対応して、各アンテナ109a〜109cが受信したビーコン信号の受信電界強度、受信SN比、及びアクセスポイントの識別番号情報の各データが格納される。
【0109】
方向位置推定部104bは、記憶部106bに格納された各データ、具体的には受信SN比に基づいて、各アクセスポイント301〜303の方向位置情報を導出する(S309)。
【0110】
この方向位置情報のうち、無線通信装置100bを基準にした各アクセスポイント301〜303の方向は、方向位置推定部104bが上述したMUSIC法を適用することにより導出することができる。例えば、アクセスポイント301からビーコン信号を受信したとき、当該アクセスポイント301の方向情報は、図10に示すように、アンテナ部109の指向性、及び当該MUSIC法に従って導出された角度情報に基づいて導出される。他のアクセスポイント302,303からビーコン信号をそれぞれ受信した場合においても同様である。
【0111】
また、当該方向位置情報のうち、無線通信装置100aと各アクセスポイント301〜303との距離情報(位置情報)は、上述したステップS210において、記憶部106bに格納された受信SN比に応じて導出されたビーコン信号の伝搬距離に基づいて定まる。
【0112】
以上により、第3の実施形態の無線通信装置100bによれば、上述した無線通信装置100,100aと同様に、ミリ波の周波数帯域を用いて、通信対象であるアクセスポイント301〜303との間の位置方向情報を簡易な構成で導出することができる。更に、無線通信装置100bによれば、所望のアクセスポイント301〜303との通信を簡単に実現することができるため、当該所望のアクセスポイント301〜303との間における通信干渉を効果的に低減することができる。
【0113】
なお、第3の実施形態において、方向位置推定部104bがMUSIC法を用いる代わりに、アクセスポイントの方向を推定する場合に、ジャイロセンサ108により検出された角度情報を参照して導出しても良い。この場合、ジャイロセンサ108は、無線通信装置100bを保持するユーザの保持状態に対応した角度情報を検出し、当該検出された角度情報を、データバス部107bを介して方向位置推定部104b及び記憶部106bにそれぞれ出力する。
【0114】
以上、添付図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本発明の無線通信装置はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。更に、本発明は、上述した各実施形態の無線通信装置が動作する方法としても成り立つことができる。
【0115】
なお、上述した各実施形態では、無線通信装置100,100a,100bは、送受信可能なミリ波の周波数帯域の周波数チャネルごとに、アクセスポイントの方向位置情報を導出した。更に、上述した各実施形態では、当該周波数チャネルをチャネル1及びチャネル2の2つの周波数チャネルが用いられている。
【0116】
例えば、この無線通信装置100〜100bは、当該周波数チャネルごとに導出した方向位置情報のうち、無線通信装置100〜100bから近い距離を表す方向位置情報を用いて、当該方向位置情報に対応するアクセスポイントのアイコンを表示部101〜101bに表示しても良い。
【0117】
又は、無線通信装置100〜100bは、当該周波数チャネルごとに導出した方向位置情報のうち、無線通信装置100〜100bから遠い距離を表す方向位置情報を用いて、当該方向位置情報に対応するアクセスポイントのアイコンを表示部101〜101bに表示しても良い。
【0118】
更に、無線通信装置100〜100bは、当該周波数チャネルごとに導出した方向位置情報を平均化し、当該平均化された方向位置情報に基づいて、当該方向位置情報に対応するアクセスポイントのアイコンを表示部101〜101bに表示しても良い。但し、アクセスポイントの方向位置情報の高い推定精度を得るためには、周波数チャネルごとに導出した方向位置情報を平均化した方向位置情報に基づいて、当該方向位置情報に対応するアクセスポイントのアイコンを表示部101〜101bに表示することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、ミリ波の周波数帯域を用いて、通信対象である被通信対象装置との間の位置方向情報を簡易な構成で導出して所望の被通信対象装置との通信を実現し、当該所望の被通信対象装置との通信干渉を効果的に低減する無線通信装置として有用である。
【符号の説明】
【0120】
100、100a、100b 無線通信装置
101、101a、101b 表示部
102、109 アンテナ部
102a、102b、102c、102d 指向性アンテナ
109a、109b、109c アンテナ
102aa、102bb、102cc、102dd、102ee、102ff、109aa、109bb、109cc 指向性
103、103a、103b アンテナ制御部
104、104a、104b 方向位置推定部
105、105a、105b MPU部
106、106a、106b 記憶部
107、107a、107b データバス部
108 ジャイロセンサ
109d、109e、109f 位相制御部
300、301a、301b、301c アイコン
301、302、303 アクセスポイント
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミリ波の周波数帯域を用いた無線通信で信号を送受信する無線通信装置であって、
複数の異なる方向に指向性を有するアンテナ部と、
前記アンテナ部の複数の指向性のうち、所定方向に指向性を形成するアンテナ制御部と、
前記指向性が形成された前記アンテナ部によって受信された受信信号に応じて、前記無線通信の通信対象である被無線通信装置の方向位置情報を推定する方向位置推定部と、
前記推定された前記被無線通信装置の方向位置情報を表示する表示部と、
を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信装置であって、
前記アンテナ部は、複数の指向性アンテナを含み、前記複数の指向性アンテナは、それぞれ所定方向に指向性を有し、
前記アンテナ制御部は、
前記複数の指向性アンテナから切り替えて、前記アンテナ部の指向性を形成する
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
ミリ波の周波数帯域を用いた無線通信で信号を送受信する無線通信装置であって、
所定方向に指向性を有するアンテナ部と、
当該無線通信装置の位置変化に対応した角度情報を検出するジャイロセンサと、
前記アンテナ部によって受信された受信信号及び前記角度情報に応じて、前記無線通信の通信対象である被無線通信装置の方向位置情報を推定する方向位置推定部と、
前記推定された前記被無線通信装置の方向位置情報を表示する表示部と、
を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項4】
請求項1に記載の無線通信装置であって、
前記アンテナ部は、複数のアンテナと、前記各アンテナで受信された各受信信号の位相を調整する位相調整部とを含み、
前記アンテナ制御部は、前記複数のアンテナから送信される各送信信号間に所定量の位相差を前記位相調整部に設定することを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の無線通信装置であって、
前記アンテナ部は、前記被無線通信装置から送信された当該被無線通信装置の識別情報を含む固有情報信号を受信し、
前記方向位置推定部は、前記固有情報信号の受信における周波数チャネルの受信電界強度が所定の閾値を超える場合に、前記無線通信装置に対する前記被無線通信装置の方向位置情報を推定することを特徴とする無線通信装置。
【請求項6】
請求項5に記載の無線通信装置であって、
前記方向位置推定部により推定された前記方向位置情報を格納する記憶部、を更に備え、
前記方向位置推定部は、前記受信された固有情報信号に基づいて、当該固有情報信号の受信電界強度及び受信信号SN比を導出し、当該導出された受信電界強度、受信信号SN比及び前記被無線通信装置の識別情報を前記記憶部に記憶することを特徴とする無線通信装置。
【請求項7】
請求項6に記載の無線通信装置であって、
前記方向位置推定部は、前記周波数チャネルを切り替え、当該切り替えられた周波数チャネルの受信電界強度が所定の閾値を超える場合に、前記無線通信装置に対する前記被無線通信装置の方向位置情報を推定することを特徴とする無線通信装置。
【請求項1】
ミリ波の周波数帯域を用いた無線通信で信号を送受信する無線通信装置であって、
複数の異なる方向に指向性を有するアンテナ部と、
前記アンテナ部の複数の指向性のうち、所定方向に指向性を形成するアンテナ制御部と、
前記指向性が形成された前記アンテナ部によって受信された受信信号に応じて、前記無線通信の通信対象である被無線通信装置の方向位置情報を推定する方向位置推定部と、
前記推定された前記被無線通信装置の方向位置情報を表示する表示部と、
を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信装置であって、
前記アンテナ部は、複数の指向性アンテナを含み、前記複数の指向性アンテナは、それぞれ所定方向に指向性を有し、
前記アンテナ制御部は、
前記複数の指向性アンテナから切り替えて、前記アンテナ部の指向性を形成する
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
ミリ波の周波数帯域を用いた無線通信で信号を送受信する無線通信装置であって、
所定方向に指向性を有するアンテナ部と、
当該無線通信装置の位置変化に対応した角度情報を検出するジャイロセンサと、
前記アンテナ部によって受信された受信信号及び前記角度情報に応じて、前記無線通信の通信対象である被無線通信装置の方向位置情報を推定する方向位置推定部と、
前記推定された前記被無線通信装置の方向位置情報を表示する表示部と、
を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項4】
請求項1に記載の無線通信装置であって、
前記アンテナ部は、複数のアンテナと、前記各アンテナで受信された各受信信号の位相を調整する位相調整部とを含み、
前記アンテナ制御部は、前記複数のアンテナから送信される各送信信号間に所定量の位相差を前記位相調整部に設定することを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の無線通信装置であって、
前記アンテナ部は、前記被無線通信装置から送信された当該被無線通信装置の識別情報を含む固有情報信号を受信し、
前記方向位置推定部は、前記固有情報信号の受信における周波数チャネルの受信電界強度が所定の閾値を超える場合に、前記無線通信装置に対する前記被無線通信装置の方向位置情報を推定することを特徴とする無線通信装置。
【請求項6】
請求項5に記載の無線通信装置であって、
前記方向位置推定部により推定された前記方向位置情報を格納する記憶部、を更に備え、
前記方向位置推定部は、前記受信された固有情報信号に基づいて、当該固有情報信号の受信電界強度及び受信信号SN比を導出し、当該導出された受信電界強度、受信信号SN比及び前記被無線通信装置の識別情報を前記記憶部に記憶することを特徴とする無線通信装置。
【請求項7】
請求項6に記載の無線通信装置であって、
前記方向位置推定部は、前記周波数チャネルを切り替え、当該切り替えられた周波数チャネルの受信電界強度が所定の閾値を超える場合に、前記無線通信装置に対する前記被無線通信装置の方向位置情報を推定することを特徴とする無線通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−78172(P2012−78172A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222765(P2010−222765)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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