説明

無線LAN通信方法および装置

【課題】アクセスポイント(AP)の負荷を軽減し且つ通信品質を向上する無線LAN通信方法および装置を提供する。
【解決手段】無線LAN端末20は、CPU21の制御下でRF部24およびアンテナ25を介して、バックボーンネットワーク40に接続された複数のアクセスポイント(AP)30のうち最寄のAP30と無線通信する。無線LAN端末20が充電中であることを充電検出部23が検出すると共にPSモードのとき、ACTIVEモードに切り替え且つその旨をAP30に通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線LAN通信方法および装置に関し、特に無線LAN端末が充電中において通信の性能や品質を向上させる無線LAN通信方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通信技術やネットワーク技術が進歩するにつれて、種々の環境で通信可能にすることがユーザから期待される。例えば、従来の如くネットワークに接続されたPC(パーソナルコンピュータ)等の固定端末による通信のみならず、無線LAN(ローカルエリアネットワーク)端末を携帯することにより、無線通信可能である限り自宅やオフィスにかかわらず、例えば屋外を歩行中又は走行する車内からも通信が可能である。
【0003】
無線LAN端末等の携帯端末の内部に設けられた各種電子回路は、内蔵する電池から動作電力を得て駆動される。ここで、内蔵電池は、無線LAN端末の携帯性を考慮して小型、即ち充電電力量が比較的少ないのが一般的である。そこで、無線LAN端末の消費電力を極力低減して、1回の充電による無線LAN端末の動作時間をできる限り長くする工夫がなされている。
【0004】
そのために、無線LAN端末は、ACTIVEモードおよび省電力又はパワーセービング(PS)モードの2つのモードを備えているのが一般的である。ACTIVEモードでは、無線LAN端末は、常時Awake状態(即ち、送受信可能状態)である。一方、PSモードでは、上述したAwake状態とDoze状態、即ち送受信不能状態が規則的に遷移する待機状態であって、電池の消費電力を最小にする。
【0005】
斯かる技術分野における従来技術は、多くの技術文献に開示されている。充電器に装着されているか否かを検知してユーザに最適な報知状態を自動的に設定する携帯用通信機器が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、充電器に装着された状態では、カラーLCDの表示が見易い携帯電話機が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。更に、充電可能な電池を電源とする携帯用無線機において、電池の充電中でも携帯用無線機の送受信動作を維持するに足る電源供給を補償する携帯用無線機における電源回路が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
【特許文献1】特開2000−134293号公報(第3頁、第1図)
【特許文献2】特開2001−285472号公報(第4−5頁、第1図)
【特許文献3】特開昭62−154924号公報(第3頁、第1図、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
無線LAN端末がPSモード、即ち待機状態のとき、AP又は基地局は、無線LAN端末宛のデータ(フレーム)が到着しても直ちに送信せず、無線LAN端末の次のAwake状態まで無線LAN端末宛のデータをAPのメモリに蓄えておく。従って、データの受信に遅延が生じる。更に、APは、データ(フレーム)を必要以上に蓄えると、メモリが圧迫される。そこで、データを破棄するので、情報の欠落を生じることになる。
【0008】
本発明は、従来技術の上述した課題に鑑みなされたものであり、斯かる課題を克服又は軽減する、即ちできる限り良好な通信品質を維持可能にする無線LAN通信方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するため、本発明による無線LAN通信方法および装置は次のような特徴的な構成を採用している。
【0010】
(1)内蔵する二次電池で駆動され、選択的に省電力(PS)モード又はACTIVEモードで動作する無線LAN端末を使用して、バックボーンネットワークに接続されたアクセスポイント(AP)と無線通信する無線LAN通信方法において、
前記無線LAN端末がPSモードであるか否か判断することと、前記無線LAN端末が充電中であるか否か判断することと、前記無線LAN端末がPSモードで且つ充電中のとき、ACTIVEモードに変更すると共に前記APに対してその旨を通知することとなる無線LAN通信方法。
(2)前記無線LAN端末が非充電中のとき、ACTIVEモードである場合には、PSモードに変更すると共に前記APに対してその旨を通知する上記(1)の無線LAN通信方法。
(3)前記無線LAN端末から前記APへの通知は、MACフレームの基本フォーマットのフレーム制御部のパワーマネージメントモードにおいて行う上記(1)又は(2)の無線LAN通信方法。
(4)前記パワーマネージメントモードは、ビットを「0」又は「1」でACTIVEモード又はPSモードとする上記(3)の無線LAN通信方法。
(5)内蔵する二次電池で駆動され、選択的に省電力(PS)モード又はACTIVEモードで動作する無線LAN端末を使用して、バックボーンネットワークに接続されたアクセスポイント(AP)と無線通信する無線LAN通信装置において、
前記無線LAN端末は、各部の動作を制御するCPUおよび充電中か否かを検出する充電検出部を備え、前記無線LAN端末が省電力(PS)モードであり且つ充電中であるとき、前記ACTIVEモードに切り替えると共に前記APに対してパワーマネージメントモードの変更を通知する無線LAN通信装置。
(6)前記バックボーンネットワークは、Ethernet(登録商標)バックボーンネットワークである上記(5)の無線LAN通信装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明の無線LAN通信方法および装置によると、次の如き実用上の顕著な効果が得られる。即ち、待機・充電時の無線LAN端末は、待機・充電でないときに比較して通信品質の向上および通信の遅延が少ない。
【実施例】
【0012】
以下、本発明による無線LAN通信方法および装置の好適実施例の構成および動作を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
先ず、図1は、本発明による無線LAN通信装置の全体構成を示すブロック図である。この無線LAN通信装置10は、無線LAN端末20、Ethernet(登録商標)等のバックボーンネットワーク40に接続された基地局であるアクセスポイント(以下、APという場合もある)30により構成される。尚、図1中には、1個のAP30のみを示すが、実際にはサービスエリア又はアプリケーションに応じて複数のAPがネットワーク40を介して異なる場所に接続されているものとする。同様に、図1中には、1台のみの無線LAN端末20を図示するが、ユーザ数に応じて多数の無線LAN端末20が存在し、それぞれ最寄のAP30と無線通信されること勿論である。
【0014】
無線LAN端末20は、制御部であるCPU(中央処理装置)21、通信処理部22、充電検出部23、RF(無線)部24およびアンテナ25を備えている。また、AP30は、アンテナ31を備えている。
【0015】
次に、図2、図3および図4を参照して、図1に示す無線LAN通信装置10の動作を説明する。図2は、無線LAN端末装置10の全体動作を説明するシーケンス図である。図3は、無線LAN端末20の動作、特に通信待受け動作を説明するフローチャートである。また、図4は、MACフレームの基本フォーマットを示す。
【0016】
図2のシーケンス図を参照して、無線LAN端末(又は端末)20およびAP30間の動作を説明する。先ず、無線LAN端末20は、その内蔵電池の消耗を抑えるためにPSモードで動作中であるとする(ステップA1)。無線LAN端末装置20のこの状態は、無線LAN端末装置20からアンテナ25を介して無線によりAP30に送信(通知)されるので、AP30は、無線LAN端末20がPSモードで動作していることを認識する(ステップA2)。
【0017】
次に、無線LAN端末20のユーザが、この無線LAN端末20を充電器(図示せず)に接続して、AC電源から内蔵電池を充電すると、無線LAN端末装置20の充電検出部23がこれを検出して、充電中であると判断するので、無線LAN端末20のCPU21は、その動作モードをPSモードからACTIVEモードに自動的に切り替える(ステップA3)。そして、無線LAN端末20は、RF部24およびアンテナ25を介して、パワーマネージメントの変更をAP30に通知する(ステップA4)。そこで、AP30は、無線LAN端末20がACTIVEモードで動作していると認識する(ステップA5)。
【0018】
上述の如く、無線LAN端末20が充電中の際に、その動作モードをACTIVEモードに切り替える理由は、次のとおりである。即ち、充電中は、無線LAN端末20はAC電源から動作電力の供給を受けるので、電池の消耗を考慮する必要がなく、更に無線LAN端末20をACTIVEモードにすることにより、この無線LAN端末20に着信があった場合に、直ちに(遅延なく)転送可能であり、AP30のメモリにその通信内容を蓄積する必要がないためである。これにより、無線LAN端末20およびAP30間で良好な通信を維持することが可能である。
【0019】
次に、無線LAN端末20のユーザが、この無線LAN端末20を充電器から取り外して充電を中止すると、無線LAN端末20は、電池駆動動作となる。そこで、無線LAN端末20の充電検出部23は、非充電を検出し、PSモードへ移行する(ステップA6)。そして、無線LAN端末20は、RF部24およびアンテナ25を介してAP30に対して、パワーマネージメントモードの変更を通知する(ステップA7)。アンテナ31を介してこの通知を受け取ったAP30は、無線LAN端末20がPSモードで動作していると認識する(ステップA8)。
【0020】
次に、図4に示すMACフレームは、上部に例示する如く、フレーム制御、デユレーション/ID、アドレス1、アドレス2、アドレス3、シーケンス制御、アドレス4、フレーム本体(ボディ)およびFCSにより構成される。この制御フレームは、図4中の下部に拡大して示す如く、プロトコル・バージョン、タイプ、サブタイプ、To DS、From DS、More Flag、Retry、パワーマネージメント、More Data、WepおよびOrderにより構成される。上述した無線LAN端末20からAP30に対するパワーマネージメントモードの変更通知(ステップA4およびステップA7)は、このフレーム制御のパワーマネージメント(ビット12)を「0」又は「1」とすることにより、それぞれACTIVEモード又はPSモードを選択変更可能である。
【0021】
次に、図3のフローチャートを参照して、無線LAN端末20における通信待受け動作を説明する。無線LAN端末20の充電検出部23により、この無線LAN端末20が充電中か否かを判断する(ステップB1)。充電中の場合(ステップB1:YES)には、この無線LAN端末20がPSモードであるか否かを判断する(ステップB2)。PSモードの場合(ステップB2:YES)には、この無線LAN端末20をACTIVEモードに変更し且つAP30に対してパワーマネージメントモードの変更を通知する(ステップB3)。即ち、無線LAN端末20が充電中で且つPSモードである場合(ステップB1およびB2が共にYES)にのみ無線LAN端末20をACTIVEモードに切り替える。
【0022】
一方、無線LAN端末20が充電中でない場合(ステップB1:NO)には、無線LAN端末20がACTIVEモードであるか否かを判断する(ステップB4)。ACTIVEモードである場合(ステップB4:YES)には、無線LAN端末20をPSモードに変更し、AP30に対してパワーマネージメントモードの変更を通知する(ステップB5)。ここで、ACTIVEモードでない場合(ステップB4:NO)および上述したステップB2でPSモードでない場合(ステップB2:NO)には、何らのアクションもしない(ステップB6)。
【0023】
次に、図5は、PSモード時の無線LAN端末20およびAP30の動作を示すタイミングチャートである。図5中の上部にAP30の動作を示し、下部に無線LAN端末20の動作を示す。無線LAN端末20は、上述の如くAwake状態(送受信可能状態)およびDoze状態(送受信不能状態)を、予め決められた一定周期で反復する。そこで、無線LAN端末20がDoze状態の期間中のこの無線LAN端末20宛のデータ(フレーム)は、AP30に設けられたメモリに蓄積され、次のAwake状態の到来を待って送信される。従って、図示の如く遅延が生じ、通信の品質が劣化する。
【0024】
一方、図6は、無線LAN装置20がACTIVEモードである場合の、AP30(図6中の上部)および無線LAN端末20(図6中の下部)の動作を示すタイミングチャートである。無線LAN端末20がACTIVEモードのときは、常にAwake状態であるので、無線LAN端末20はAP30と直ちに通信可能である。即ち、AP30からの無線LAN端末20宛のデータ(フレーム)は、直ちに無線LAN端末20へ送信され、同様に無線LAN端末20からのデータもAP30へ直ちに送信可能である。換言すると、無線LAN端末20宛のデータを、内部のメモリに蓄積する必要がないので、AP30の負荷を軽減することが可能である。
【0025】
以下、上述の如く、無線LAN端末20がACTIVEモードであることをAP30に通知することによるAP30の負荷軽減効果について更に詳述する。AP30には、その通信エリア内にある複数の無線LAN端末20がPSモードであるとき、通信中でない場合でも、それぞれのパワーマネージメントのために以下の処理負担がかかる。
(1)各無線LAN端末20のデータが到着したときに、これらのデータを蓄えるバッファ(メモリ)を用意し、それを蓄える。
(2)ビーコン(制御信号)周期毎に、各無線LAN端末20宛のデータ蓄積を示すPNB(Partial Virtual Bitmap)を再構築する。
(3)蓄積データがあることを無線LAN端末20に通知し、データを送信する。全てのデータの送信ができない場合には、次の送信機会まで蓄積するか又はタイムアウトで破棄する。
(4)競合期間又は非競合期間により、PSオードの無線LAN端末20同士が衝突しないようなビーコンを組み立てる。
【0026】
しかし、無線LAN端末20がACTIVEモードであることをAP30に通知することにより、上述したAP30の管理下のPSモードの無線LAN端末20の台数を減らすので、AP30の処理を軽減することが可能であることに注目されたい。
【0027】
以上、本発明による無線LAN通信方法および装置の好適実施例の構成および動作を詳述した。しかし、斯かる実施例は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて、種々の変形変更が可能であること、当業者には容易に理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による無線LAN通信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1中の無線LAN装置およびAPの全体動作を示すシーケンス図である。
【図3】図1中の無線LAN端末の動作を説明するフローチャートである。
【図4】MACフレームの基本フォーマットを示す図である。
【図5】無線LAN端末のPSモード時の無線LAN端末およびAPの動作説明図である。
【図6】無線LAN端末のACTIVEモード時の無線LAN端末およびAPの動作説明図である。
【符号の説明】
【0029】
10 無線LAN通信装置
20 無線LAN端末
21 CPU
23 充電検出部
25、31 アンテナ
30 アクセスポイント(AP)
40 バックボーンネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内蔵する二次電池で駆動され、選択的に省電力(PS)モード又はACTIVEモードで動作する無線LAN端末を使用して、バックボーンネットワークに接続されたアクセスポイント(AP)と無線通信する無線LAN通信方法において、
前記無線LAN端末がPSモードであるか否か判断することと、前記無線LAN端末が充電中であるか否か判断することと、前記無線LAN端末がPSモードで且つ充電中のとき、ACTIVEモードに変更すると共に前記APに対してその旨を通知することとなることを特徴とする無線LAN通信方法。
【請求項2】
前記無線LAN端末が非充電中のとき、ACTIVEモードである場合には、PSモードに変更すると共に前記APに対してその旨を通知することを特徴とする請求項1に記載の無線LAN通信方法。
【請求項3】
前記無線LAN端末から前記APへの通知は、MACフレームの基本フォーマットのフレーム制御部のパワーマネージメントモードにおいて行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の無線LAN通信方法。
【請求項4】
前記パワーマネージメントモードは、ビットを「0」又は「1」でACTIVEモード又はPSモードとすることを特徴とする請求項3に記載の無線LAN通信方法。
【請求項5】
内蔵する二次電池で駆動され、選択的に省電力(PS)モード又はACTIVEモードで動作する無線LAN端末を使用して、バックボーンネットワークに接続されたアクセスポイント(AP)と無線通信する無線LAN通信装置において、
前記無線LAN端末は、各部の動作を制御するCPUおよび充電中か否かを検出する充電検出部を備え、前記無線LAN端末が省電力(PS)モードであり且つ充電中であるとき、前記ACTIVEモードに切り替えると共に前記APに対してパワーマネージメントモードの変更を通知することを特徴とする無線LAN通信装置。
【請求項6】
前記バックボーンネットワークは、Ethernet(登録商標)バックボーンネットワークであることを特徴とする請求項5に記載の無線LAN通信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−196934(P2006−196934A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−3310(P2005−3310)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)
【Fターム(参考)】