説明

無菌充填方法及び装置

【課題】インラインシステムにおいて無菌包装体の生産性を高める。
【解決手段】プリフォーム1を連続走行させながら加熱し、この加熱したプリフォームに過酸化水素のガスG又は凝結ミストMを吹き付けて殺菌し、この加熱し殺菌処理したプリフォームを同じく連続走行する金型4内でブロー成形してボトルを作り、連続走行する金型からボトルを取り出して同じく連続走行させながら内容物を充填しキャップで密封する無菌充填方法である。プリフォーム及び容器を高速で走行させつつ、適正に殺菌処理して内容物を充填し密封することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無菌充填方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PET(ポリエチレンテレフタレート)製のプリフォームを搬送しながら殺菌処理し、ブロー成形機によってプリフォームをボトルに成形し、このボトルに飲料等の内容物を充填し、キャッピングして無菌包装体とするというインラインシステムとしての無菌充填方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この従来の無菌充填方法は、プリフォームを殺菌液に浸漬し、殺菌液からプリフォームを引き上げた後に、プリフォームに加熱エアを吹き付けてプリフォームに付着した殺菌液を乾燥させようとする場合に、この乾燥用の加熱エアによる加熱でプリフォームの均一な加熱が損なわれ、ブロー成形に支障を来たすことがないようにしようというものである。すなわち、プリフォームをブロー成形のために加熱する前に、殺菌剤のガスをプリフォームに吹き付けることで、加熱エアによる殺菌液の乾燥を省略し、殺菌後においてプリフォームをブロー成形に適するように加熱しようとするものである。
【0004】
【特許文献1】特開2001−212874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来のようにプリフォームに殺菌剤のガスを吹き付けて殺菌した後に、プリフォームをブロー成形のために加熱するものとすると、この加熱段階でプリフォームが微生物により汚染されるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような問題点を解消しようというもので、容器をプリフォームの段階で適正に殺菌処理し、無菌性を維持したまま容器に成形し、この無菌の容器に内容物を充填し密封することができるインラインシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用する。
【0008】
すなわち、請求項1に係る発明は、プリフォーム(1)を連続走行させながら加熱し、この加熱したプリフォーム(1)に過酸化水素の凝結ミスト(M)又はガス(G)を吹き付けて殺菌し、この加熱し殺菌処理したプリフォーム(1)を同じく連続走行する金型(4)内でブロー成形して容器(2)を作り、この連続走行する金型(4)から容器(2)を取り出し、容器(2)を同じく連続走行させながら内容物(a)を充填し蓋(3)で密封する無菌充填方法を採用する。
【0009】
請求項2に記載されるように、請求項1に記載の無菌充填方法において、プリフォーム(1)を連続走行させながら上記加熱前に過酸化水素の凝結ミスト(M)又はガス(G)を吹き付けてプリフォーム(1)を予備殺菌することもできる。
【0010】
請求項3に記載されるように、請求項1又は請求項2に記載の無菌充填方法において、上記プリフォーム(1)及び容器(2)がPET製のものを使用することができる。
【0011】
また、請求項4に係る発明は、プリフォーム(1)を第一の搬送路上で搬送するプリフォーム用搬送手段と、容器(2)の成形用金型(4)を上記第一の搬送路に接続される第二の搬送路上で搬送する金型用搬送手段と、上記金型(4)で成形された容器(2)を上記第二の搬送路に接続される第三の搬送路上で搬送する容器用搬送手段とを有し、上記第一の搬送路に沿って配置されたヒータ(19a)により第一の搬送路上を走行するプリフォーム(1)を加熱し、上記第一の搬送路に沿って上記ヒータ(19a)よりも下流側に配置された殺菌用ノズル(6)から第一の搬送路上を走行するプリフォーム(1)に過酸化水素の凝結ミスト(M)又はガス(G)を吹き付けてプリフォーム(1)を殺菌し、上記第二の搬送路上で上記加熱され殺菌されたプリフォーム(1)を金型(4)で受け取って容器(2)にブロー成形し、上記第三の搬送路に沿って配置されたフィラー(39)とキャッパー(40)によって上記ブロー成形された容器(2)に対する内容物(a)の充填と密封を順次行うようにした無菌充填装置を採用する。
【0012】
請求項5に記載されるように、請求項4に記載の無菌充填装置において、上記第一の搬送路の上記ヒータ(19a)よりも上流側に予備殺菌用ノズル(6a)を設け、この予備殺菌用ノズル(6a)から加熱する前のプリフォーム(1)に過酸化水素の凝結ミスト(M)又はガス(G)を吹き付けてプリフォーム(1)を予備殺菌することもできる。
【0013】
請求項6に記載されるように、請求項4又は請求項5に記載の無菌充填装置において、上記プリフォーム(1)及び容器(2)がPET製のものを使用することができる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、プリフォーム(1)を連続走行させながら加熱し、この加熱したプリフォーム(1)に過酸化水素の凝結ミスト(M)又はガス(G)を吹き付けて殺菌し、この加熱し殺菌処理したプリフォーム(1)を同じく連続走行する金型(4)内でブロー成形して容器(2)を作り、連続走行する金型(4)から容器(2)を取り出して同じく連続走行させながら内容物(a)を充填し蓋(3)で密封する無菌充填方法であるから、加熱状態のプリフォームに過酸化水素の凝結ミスト(M)又はガス(G)を接触させることができ、従って、プリフォームの過酸化水素による殺菌効果を高めることができる。また、プリフォームを加熱した後に殺菌するので、加熱前にプリフォームを殺菌する場合に比べ、加熱工程でのプリフォームの微生物等による汚染を防止することができ、従って、無菌状態が維持された容器内に内容物を充填することができる。
【0015】
請求項2に記載されるように、請求項1に記載の無菌充填方法において、プリフォーム(1)を連続走行させながら上記加熱前に過酸化水素の凝結ミスト(M)又はガス(G)を吹き付けてプリフォーム(1)を予備殺菌するものとすれば、プリフォーム及び容器の殺菌効果を更に高めることができる。
【0016】
請求項3に記載されるように、請求項1に記載の無菌充填方法において、上記プリフォーム(1)及び容器(2)がPET製のものを使用する場合は、過酸化水素の容器(2)への過度な吸着を防止することができる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、プリフォーム(1)を第一の搬送路上で搬送するプリフォーム用搬送手段と、容器(2)の成形用金型(4)を上記第一の搬送路に接続される第二の搬送路上で搬送する金型用搬送手段と、上記金型(4)で成形された容器(2)を上記第二の搬送路に接続される第三の搬送路上で搬送する容器用搬送手段とを有し、上記第一の搬送路に沿って配置されたヒータ(19b)により第一の搬送路上を走行するプリフォーム(1)を加熱し、上記第一の搬送路に沿って上記ヒータ(19b)よりも下流側に配置された殺菌用ノズル(6)から第一の搬送路上を走行するプリフォーム(1)に過酸化水素の凝結ミスト(M)又はガス(G)を吹き付けてプリフォーム(1)を殺菌し、上記第二の搬送路上で上記加熱され殺菌されたプリフォーム(1)を金型(4)で受け取って容器(2)にブロー成形し、上記第三の搬送路に沿って配置されたフィラー(39)とキャッパー(40)によって上記ブロー成形された容器(2)に対する内容物(a)の充填と密封を順次行うようにした無菌充填装置であるから、加熱状態のプリフォームに過酸化水素の凝結ミスト(M)又はガス(G)を接触させることができ、従って、プリフォームの過酸化水素による殺菌効果を高めることができる。また、プリフォームを加熱した後に殺菌するので、加熱前にプリフォームを殺菌する場合に比べ、加熱工程でのプリフォームの微生物等による汚染を無視することができ、従って、無菌状態が維持された容器内に内容物を充填することができる。
【0018】
請求項5に記載されるように、請求項4に記載の無菌充填装置において、上記第一の搬送路の上記ヒータ(19b)よりも上流側に予備殺菌用ノズル(6a)を設け、この予備殺菌用ノズル(6a)から加熱する前のプリフォーム(1)に過酸化水素の凝結ミスト(M)又はガス(G)を吹き付けてプリフォーム(1)を予備殺菌するようにした場合は、殺菌効果を更に高めることができる。
【0019】
請求項6に記載されるように、請求項4又は請求項5に記載の無菌充填装置において、上記プリフォーム(1)及び容器(2)がPET製のものを使用する場合は、過酸化水素の容器(2)への過度な吸着を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に本発明を実施するための形態について説明する。
【0021】
<実施の形態1>
この実施の形態1におけるインラインシステムによれば、最終製品として図1に示す無菌包装体が製造される。
【0022】
図1に示すように、この無菌包装体は、容器であるボトル2と、蓋であるキャップ3とを備える。
【0023】
ボトル2はこの実施の形態ではPET製であるが、PETに限らずポリプロピレン、ポリエチレン等他の樹脂を用いて作ることも可能である。ボトル2の口部2aには雄ネジ2bが形成される。
【0024】
キャップ3はポリプロピレン等の樹脂を材料にして射出成形等により形成され、キャップ3の成形と同時に雌ネジ3aも形成される。
【0025】
ボトル2には、その内部があらかじめ殺菌処理された状態で、飲料等の殺菌処理済の内容物aが充填される。内容物aの充填後にキャップ3がボトルの口部2aに被せられ、雌雄ネジ3a,2bの螺合によってボトル2の口部2aが密封され、無菌包装体が完成する。
【0026】
上記ボトル2は、次に述べるような手順で無菌容器として形成され、内容物の充填、密封を経て無菌包装体とされる。
【0027】
まず、図2(A)に示すように、プリフォーム1が用意される。このプリフォームが所望の速度で連続的に搬送される。
【0028】
プリフォーム1は、PETの射出成形等によって略試験管状の有底筒状体として形成される。プリフォーム1は、図1に示したボトル2におけると同様な口部2aをその成形当初に付与される。この口部2aにはプリフォーム1の成形と同時に雄ネジ2bが形成される。
【0029】
図2(B)に示すように、プリフォーム1の走行路に沿ってヒータ19bがトンネル状に配置され、このヒータ19bによってプリフォーム1は走行しながら加熱される。プリフォーム1は、この加熱によって120℃程度まで均一に加熱される。
【0030】
プリフォーム1は加熱後も連続走行しつつ、図2(C)に示すように殺菌処理される。この殺菌処理は、殺菌剤である過酸化水素のガスGが殺菌用ノズル6から吹き付けられることによって行われる。殺菌用ノズル6はプリフォーム1の口部2aと底にそれぞれ対峙するように配置される。
【0031】
過酸化水素のガスGは、例えば図4に示す気化器7によって生成可能である。
【0032】
この気化器7は、殺菌剤である過酸化水素の水溶液を滴状にして供給する二流体スプレーである過酸化水素供給部8と、この過酸化水素供給部8から供給された過酸化水素の噴霧をその沸点以上の非分解温度以下に加熱して気化させる気化部9とを備える。過酸化水素供給部8は、過酸化水素供給路8a及び圧縮空気供給路8bからそれぞれ過酸化水素の水溶液と圧縮空気を導入して過酸化水素の水溶液を気化部9内に噴霧するようになっている。気化部9は内外壁間にヒータ9aを挟み込んだパイプであり、このパイプ内に吹き込まれた過酸化水素の噴霧を加熱し気化させる。気化した過酸化水素のガスGは吐出ノズル9bから気化部9外に凝結ミストMとなって噴出する。
【0033】
吐出ノズル9bの先端には熱風Hの流れる導管42が連結され、吐出ノズル9bから出た凝結ミストMは熱風Hに混じってガス化され、この熱風Hに乗ったガスGがフレキシブルホース等を介して上記殺菌用ノズル6へと流れる。
【0034】
殺菌用ノズル6はプリフォーム1の走行路上の定位置に設置してもよいし、プリフォーム1と同期的に移動させてもよい。
【0035】
殺菌用ノズル6から吹き出た過酸化水素のガスGはプリフォーム1の表面に接触する。プリフォーム1はすでに所定温度まで均一に加熱されていることから、プリフォーム1の表面は速やかにムラなく殺菌される。
【0036】
上記導管42を省略し、吐出ノズル9bから出た過酸化水素の凝結ミストMを上記殺菌用ノズル6へと流し、殺菌用ノズル6から過酸化水素の凝結ミストMをプリフォーム1に吹き付けることも可能である。
【0037】
加熱され殺菌処理されたプリフォーム1は、図2(D)に示すように、ブロー成形に付され容器としてのボトル2に成形される。
【0038】
ブロー成形用の金型4はプリフォーム1の走行速度と同じ速度で連続的に走行しつつ、型締めされ、プリフォーム1に対してブロー成形し、成形後型開きする。
【0039】
金型4は、容器であるボトル2の完成品形状のキャビティCを有し、ボトル2の口部2aに対応した金型上部4a、ボトル2の胴部に対応した金型中央部4b、ボトル2の底部に対応した金型底部4cとに分割構成される。
【0040】
金型4の各部4a,4b,4cには、必要に応じてそれぞれ異なる温度が設定される。例えば、ボトル2の口部2aに対応した金型上部4aは、金型中央部4b及び金型底部4cと比べて低い温度に設定することができる。ボトル2の口部2aはプリフォーム1において既に形成されているため、この口部2aに熱を供給しすぎると口部2aが変形するおそれがある。そこで、この口部2aと接触する金型上部4aの温度は低くしておくことにより口部2aの変形を防止することができる。
【0041】
プリフォーム1は、その全体の温度が成形に好適な温度域に上昇するようにほぼ均一に加熱された後に、図2(D)に示すように、金型4内に装着される。また、ブローノズル5が金型4の上部4a及びプリフォーム1の口部2aを貫通してプリフォーム1内に挿入される。
【0042】
金型4が走行する間に、例えば一次ブロー用エアである熱風や二次ブロー用エアである熱風がブローノズル5からプリフォーム1内に順次吹き込まれることによって、金型4のキャビティC内でプリフォーム1が最終成形品のボトル2まで膨張する。
【0043】
このように金型4内でボトル2が成形されると、金型4が走行しつつ型開きし、図3(E)に示すように、ボトル2の完成品が金型4外へ取り出される。
【0044】
ボトル2は金型4から取り出された後も連続走行し、図3(F)に示すように、飲料等の内容物aが充填ノズル10からボトル2内に充填され、図3(G)に示すように、蓋であるキャップ3で密封される。
【0045】
かくて、無菌包装体とされたボトル2は、集積され市場へと搬出される。
【0046】
上記無菌充填方法を実施するための無菌充填装置は、例えば図5のごとく構成される。
【0047】
図5に示すように、この無菌充填装置は、口部2aを有する有底筒状のプリフォーム1(図2(A)参照)を所定の間隔で順次供給するプリフォーム供給機11と、ブロー成形機12と、成形されたボトル2に飲料等の内容物aをボトル2に充填、密封する充填機13とを備える。
【0048】
プリフォーム供給機11から充填機13に至る間には、プリフォーム1(図2(A)参照)を第一の搬送路上で搬送するプリフォーム用搬送手段と、ボトル2の完成品形状のキャビティCを有する金型4(図2(D)参照)を上記第一の搬送路に接続される第二の搬送路上で搬送する金型用搬送手段と、金型4で成形されたボトル2を上記第二の搬送路に接続される第三の搬送路上で搬送するボトル用搬送手段とが設けられる。
【0049】
プリフォーム用搬送手段の第一の搬送路と、金型用搬送手段の第二の搬送路と、ボトル用搬送手段の第三の搬送路は互いに連通し、これらの搬送路上にはプリフォーム1やボトル2を保持しつつ搬送する図示しないグリッパー等が設けられている。
【0050】
プリフォーム用搬送手段は、その第一の搬送路上に、プリフォーム1を所定の間隔で順次供給するプリフォームコンベア14を備える。また、プリフォームコンベア14の終端からプリフォーム1を受け取って搬送するホイール15,16,17,18の列と、ホイール18からプリフォーム1を受け取って走行させるコンベア19とを具備する。
【0051】
コンベア19は水平方向に長く伸びる無端搬送チェーンを有し、この無端搬送チェーンに沿って加熱部19aが設けられている。
【0052】
プリフォーム1は、プリフォームコンベア14、ホイール15,16,17,18の列を経てコンベア19に受け取られ、加熱部19a内をこのコンベア19によって往復移動する。加熱部19aの内壁面には、ヒータ19b(図2(B)参照)が張り巡らされており、コンベア19によって搬送されるプリフォーム1がこのヒータ19bによって加熱される。
【0053】
ブロー成形機12は、上記プリフォーム供給機11の加熱部19aで加熱されたプリフォーム1を受け取ってボトル2に加熱成形する金型4及びブローノズル5(図2(D)参照)を複数セット備える。
【0054】
ブロー成形機12内には、上記金型用搬送手段の第二の搬送路が通っている。この第二の搬送路は、ホイール20,21,22,17,23の列によって構成される。なお、このホイール20,21,22,17,23の列と上記プリフォーム用搬送手段のホイール15,16,17,18の列との間ではホイール17が共用される。
【0055】
このブロー成形機12と上記プリフォーム供給機11との境界に置かれるホイール20の外周には、殺菌用ノズル6(図2(C)参照)が配置される。殺菌用ノズル6は上記加熱部19aよりも下流側で金型4(図2(D)参照)よりも上流側に位置する。殺菌用ノズル6はホイール20の外周の定位置に設置してもよいし、ホイール20の回りをプリフォーム1と同期的に旋回させてもよい。
【0056】
金型4及びブローノズル5は、ホイール21の回りに複数個配置され、ホイール21の回転とともにホイール21の周りを一定速度で旋回する。
【0057】
金型4は、図2(D)に示したように、金型上部4aと金型中央部4bと金型底部4cとを備える。ホイール20の図示しないグリッパーがプリフォーム供給機11の加熱部19aで加熱されたプリフォーム1を受け取ってホイール21の回りの金型4に受け渡すと、金型4の上中下部4a,4b,4cが合体してプリフォーム1を図2(D)のごとく把持する。金型4内のプリフォーム1はホイール21の回りを金型4及びブローノズル5と共に旋回しながら、ブローノズル5からブロー成形用の熱風をブローされボトル2の完成品に成形される。
【0058】
金型4のキャビティC内にプリフォーム1が密着しボトル2が形成されると、この金型4はホイール22に接したところで型開きし、そのボトル2をホイール22の図示しないグリッパーに受け渡す。このボトル2はホイール22,17,23を経て充填機13へと搬送される。
【0059】
充填機13は、上記ボトル用搬送手段の第三の搬送路をその内部に有する。この第三の搬送路は、ホイール27,34,35,36,37,38の列を有する。このホイール27,34,35,36,37,38の列に沿って、無菌状態のボトル2に内容物aを充填するためのフィラー39と、内容物aが充填されたボトル2にキャップ3(図1参照)を取り付けて密封するためのキャッパー40とが順に設けられる。
【0060】
なお、フィラー39及びキャッパー40は公知の装置と同様で良いため、説明を省略する。
【0061】
また、この無菌充填装置はチャンバー41で囲まれており、チャンバー41内は無菌ゾーンとグレーゾーンに仕切られている。そして、プリフォーム供給機11及びブロー成形機12はグレーゾーンに、充填機13は無菌ゾーンにそれぞれ配置されている。
【0062】
グレーゾーンにはHEPAで浄化されたエアが常時吹き込まれ、これにより、成形時に殺菌されたボトル2が微生物に二次汚染されることなく無菌ゾーンへと搬送される。
【0063】
次に、図2、図3及び図5を参照して無菌充填装置の動作を説明する。
【0064】
まず、プリフォームコンベア14、ホイール15,16,17,18の列によってプリフォーム1が加熱部19aへと搬送される。
【0065】
加熱部19aにおいてプリフォーム1は、コンベア19によって搬送されつつ、全体の温度が成形に好適な温度域まで均一に加熱される。
【0066】
加熱部19aで加熱されたプリフォーム1は、ホイール20の外周を通過する際に図2(C)のごとく殺菌用ノズル6から過酸化水素のガスG又はミストAを吹き付けられ殺菌処理された後、ホイール21の回りの金型4へと受け渡される。プリフォーム1は、金型4により図2(D)のごとく抱持され、ブローノズル5からのブロー成形用の熱風の吹き込みによってキャビティC内でボトル2の完成品まで膨張する。
【0067】
成形されたボトル2は、金型4の型開き後にホイール22のグリッパーによって金型4外に取り出され、ホイール22から下流側のホイール17,23,27,34,35,36,37,38の列へと受け渡されつつ充填機13内を走行する。
【0068】
充填機13においてボトル2には、図3(F)のごとく飲料等の滅菌処理された内容物aがフィラー39の充填ノズル10により充填される。内容物aが充填されたボトル2は、キャッパー40によりキャップ3が施されて密封され(図1、図3(G)参照)、チャンバー41の出口から排出される。上述したようにフィラー39及びキャッパー40は公知の装置であるため、ボトル2への内容物の充填方法及びボトル2の密封方法の説明は省略する。
【0069】
<実施の形態2>
この実施の形態2におけるインラインシステムによっても、最終製品として図1に示す無菌包装体と同様な無菌包装体が製造される。
【0070】
この実施の形態2では、上記ボトル2は、次に述べるような手順で無菌容器として形成され、内容物aの充填、密封を経て無菌包装体とされる。
【0071】
まず、図6(A)に示すように、実施の形態1の場合と同様なプリフォーム1が用意される。このプリフォーム1が所望の速度で連続的に搬送される。
【0072】
プリフォーム1は連続走行しながら、図6(B)に示すように、予備殺菌用ノズル6aから殺菌剤である過酸化水素のガスGaを吹き付けられて殺菌処理される。予備殺菌用ノズル6aはプリフォーム1の口部2aと底にそれぞれ対峙するように配置される。
【0073】
この予備殺菌用の過酸化水素のガスGaは、実施の形態1で用いた気化器6(図4参照)によって生成可能である。
【0074】
なお、過酸化水素のガスGaに代えて凝結ミストMaをプリフォーム1に吹き付けて予備殺菌することも可能である。
【0075】
予備殺菌処理されたプリフォーム1は、図6(C)に示すように、その走行路に沿ってトンネル状に配置されたヒータ19bによって走行しながら加熱される。プリフォーム1は、この加熱によって120℃程度まで均一に加熱される。
【0076】
プリフォーム1は加熱後も連続走行しつつ、図6(D)に示すように殺菌処理される。この殺菌処理は、殺菌剤である過酸化水素のガスGが殺菌用ノズル6から吹き付けられることによって行われる。殺菌用ノズル6はプリフォーム1の口部2aと底にそれぞれ対峙するように配置される。
【0077】
プリフォーム1が、上記加熱前の予備殺菌に加えて加熱後においても殺菌剤である過酸化水素のガスGによって更に殺菌されることから、プリフォーム1が上記加熱工程で微生物に汚染されたとしても、再度殺菌処理することができる。
【0078】
この過酸化水素のガスGは、上記予備殺菌用の過酸化水素ガスGaと同じ供給源から供給することができるが、この過酸化水素のガスGの流量は必要に応じて上記予備殺菌用の過酸化水素のガスGaの流量の例えば二倍とされる。
【0079】
殺菌用ノズル6はプリフォーム1の走行路上の定位置に設置してもよいし、プリフォーム1と同期的に移動させてもよく、実施の形態1と同様に設けられる。
【0080】
殺菌用ノズル6から吹き出た過酸化水素のガスGはプリフォーム1の表面に接触する。プリフォーム1はすでに均一温度に加熱されていることから、プリフォーム1の表面は速やかにムラなく殺菌される。
【0081】
なお、実施の形態1で述べたと同様に、過酸化水素のガスGに代えて過酸化水素の凝結ミストMを殺菌用ノズル6からプリフォーム1に向かって吹き付けることも可能である。
【0082】
加熱され殺菌処理されたプリフォーム1は、図7(E)に示すように、ブロー成形に付され容器としてのボトル2に成形される。
【0083】
ブロー成形用の金型4はプリフォーム1の走行速度と同じ速度で連続的に走行しつつ、型締めされ、プリフォーム1をブロー成形し、型開きする。
【0084】
金型4は、実施の形態1と同様に構成され、その各部4a,4b,4cも同様に温度設定される。
【0085】
プリフォーム1は、その全体の温度が成形に好適な温度域に上昇するようにほぼ均一に加熱された後に、図7(E)に示すように、金型4内に装着される。また、ブローノズル5が金型上部4a及びプリフォーム1の口部2aを貫通してプリフォーム1内に挿入される。
【0086】
金型4が走行する間に、一次ブロー用エア、二次ブロー用エアがブローノズル5からプリフォーム1内に吹き込まれることによって、金型4のキャビティC内でプリフォーム1が最終成形品のボトル2まで膨張する。
【0087】
このように金型4内でボトル2が成形されると、金型4が走行しつつ型開きし、図7(F)に示すように、ボトル2の完成品が金型4外へ取り出される。
【0088】
ボトル2は金型4から取り出された後も連続走行し、図7(G)に示すように、飲料等の内容物aが口部2aから充填され、図7(H)に示すように、蓋であるキャップ3で密封される。
【0089】
かくて、無菌包装体とされたボトル2は、集積され梱包され市場へと搬出される。
【0090】
上記無菌充填方法を実施するための無菌充填装置は、例えば図8のごとく構成される。
【0091】
図8に示すように、この無菌充填装置は、実施の形態1のものとほぼ同様な構成であるが、プリフォーム供給機11におけるプリフォームコンベア14がホイール15に接続される箇所よりもやや上流側に予備殺菌用ノズル6aが増設されている点で実施の形態1のものと相違する。
【0092】
予備殺菌用ノズル6aは殺菌用ノズル6と略同様な構成を有する。予備殺菌用ノズル6aはホイール18の外周の定位置に設置してもよいし、ホイール18の回りをプリフォーム1と同期的に旋回させてもよい。
【0093】
次に、図6乃至図8を参照して無菌充填装置の動作を説明する。
【0094】
まず、プリフォームコンベア14、ホイール15,16,17,18の列によってプリフォーム1が加熱部19aへと搬送される。
【0095】
プリフォーム1がプリフォームコンベア14からホイール15に入る前において、予備殺菌用ノズル6aから過酸化水素のガスGa又は凝結ミストMaがプリフォーム1に吹き付けられる(図6(B)参照)。
【0096】
予備殺菌されたプリフォーム1は、加熱部19aにおいてコンベア19によって搬送されつつ全体の温度が成形に好適な温度域まで加熱される(図6(C)参照)。
【0097】
加熱部19aで加熱されたプリフォーム1は、ホイール20の外周を通過する際に図6(D)のごとく殺菌用ノズル6から過酸化水素のガスG又は凝結ミストMを吹き付けられ殺菌処理された後、ホイール21の回りの金型4へと受け渡される。
【0098】
このように、上記ヒータ19bよりも上流側において予備殺菌用ノズル6aから加熱前のプリフォーム1に過酸化水素のガスGa又は凝結ミストMaが吹き付けられて予備殺菌されたうえで、さらにこの殺菌用ノズル6から過酸化水素のガスG又は凝結ミストMが吹き付けられることから、プリフォーム1の殺菌効果が更に向上する。
【0099】
プリフォーム1は、金型4により図7(E)のごとく抱持され、ブローノズル5からの熱風の吹き込みによってキャビティC内でボトル2の完成品まで膨張する。
【0100】
成形されたボトル2は、金型4の型開き後にホイール22の図示しないグリッパーによって金型4外に取り出され、ホイール22から下流側のホイール17,23,27,34,35,36,37,38の列へと受け渡されつつ充填機13内を走行する。
【0101】
充填機13においてボトル2には、フィラー39の充填ノズル10により飲料等の滅菌処理された内容物aが充填される(図7(G)参照)。内容物aが充填されたボトル2は、キャッパー40によりキャップ3が施されて密封され(図1、図7(H)参照)、チャンバー41の出口から排出される。
【0102】
上述したようにフィラー39及びキャッパー40は公知の装置であるため、ボトル2への内容物の充填方法及びボトル2の密封方法の説明は省略する。
【0103】
その他、この実施の形態2において実施の形態1の場合と同様な箇所には同じ符号を付して示し、重複した説明を省略する。
【0104】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されることなく種々の形態にて実施可能である。例えば、本発明が適用される容器はPETボトルに限定されず、種々の樹脂製容器に適用することができる。容器の成形はインジェクションブローに限定されず、ダイレクトブロー等各種のブロー成形によって成形可能である。また、プリフォームや容器を搬送する搬送手段は、図4に示したホイール搬送装置に限定されない。容器が成形された順に所定の搬送速度で搬送可能な種々の搬送装置、例えばベルト搬送装置、バケット搬送装置、エア搬送装置を使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明に係る無菌充填方法及び装置によって製造される無菌包装体の一例を示す部分切欠正面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る無菌充填方法の前半の各工程を表す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る無菌充填方法の後半の各工程を表す説明図である。
【図4】過酸化水素のガスを生成するための気化器の一例を示す垂直断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る無菌充填装置の概略を示す平面図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る無菌充填方法の前半の各工程を表す説明図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る無菌充填方法の後半の各工程を表す説明図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る無菌充填装置の概略を示す平面図である。
【符号の説明】
【0106】
1…プリフォーム
2…ボトル
3…キャップ
4…金型
6…殺菌用ノズル
6a…予備殺菌用ノズル
19a…ヒータ
39…フィラー
40…キャッパー
a…内容物
G,Ga…過酸化水素のガス
M,Ma…過酸化水素の凝結ミスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリフォームを連続走行させながら加熱し、この加熱したプリフォームに過酸化水素の凝結ミスト又はガスを吹き付けて殺菌し、この加熱し殺菌処理したプリフォームを同じく連続走行する金型内でブロー成形して容器を作り、この連続走行する金型から容器を取り出し、容器を同じく連続走行させながら内容物を充填し蓋で密封することを特徴とする無菌充填方法。
【請求項2】
請求項1に記載の無菌充填方法において、プリフォームを連続走行させながら上記加熱前に過酸化水素の凝結ミスト又はガスを吹き付けてプリフォームを予備殺菌することを特徴とする無菌充填方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の無菌充填方法において、上記プリフォーム及び容器がPET製であることを特徴とする無菌充填方法。
【請求項4】
プリフォームを第一の搬送路上で搬送するプリフォーム用搬送手段と、容器の成形用金型を上記第一の搬送路に接続される第二の搬送路上で搬送する金型用搬送手段と、上記金型で成形された容器を上記第二の搬送路に接続される第三の搬送路上で搬送する容器用搬送手段とを有し、上記第一の搬送路に沿って配置されたヒータにより第一の搬送路上を走行するプリフォームを加熱し、上記第一の搬送路に沿って上記ヒータよりも下流側に配置された殺菌用ノズルから第一の搬送路上を走行するプリフォームに過酸化水素の凝結ミスト又はガスを吹き付けてプリフォームを殺菌し、上記第二の搬送路上で上記加熱され殺菌されたプリフォームを金型で受け取って容器にブロー成形し、上記第三の搬送路に沿って配置されたフィラーとキャッパーによって上記ブロー成形された容器に対する内容物の充填と密封を順次行うようにしたことを特徴とする無菌充填装置。
【請求項5】
請求項4に記載の無菌充填装置において、上記第一の搬送路の上記ヒータよりも上流側に予備殺菌用ノズルを設け、この予備殺菌用ノズルから加熱する前のプリフォームに過酸化水素の凝結ミスト又はガスを吹き付けてプリフォームを予備殺菌するようにしたことを特徴とする無菌充填装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の無菌充填装置において、上記プリフォーム及び容器がPET製であることを特徴とする無菌充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−274740(P2009−274740A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127016(P2008−127016)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】