説明

無電解めっき方法及び装置

【課題】埋込み銅配線の露出表面に、保護膜を選択性良く安定して形成することによって銅配線を保護することができるようにする。
【解決手段】内部に埋込み銅配線を形成した基板を用意し、基板の表面に触媒付与液を接触させて銅配線の表面に触媒を付与し、触媒付与後の基板の表面を洗浄し、洗浄後の基板の表面に還元液を接触させて基板の表面を還元処理し、還元処理後の基板の表面を洗浄し、しかる後、無電解めっき液に基板の表面を接触させて銅配線の表面に保護膜を選択的に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電解めっき方法及び無電解めっき装置に関し、特に半導体ウエハ等の基板の表面に設けた配線用凹部に銅を配線材料(導電体)として埋め込んで構成した埋込み銅配線の露出表面に、該銅配線の露出表面を保護する保護膜を選択的に形成するのに使用される無電解めっき方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模半導体集積回路(LSI)の高速化のため、配線材料としてアルミニウム合金に代えて銅を用いた配線(銅配線)が用いられ始めている。この銅配線は、予め絶縁膜(層間絶縁膜)中にビアホールやトレンチ等の配線用凹部を形成し、配線用凹部を含む基板の全表面に銅の拡散防止と接着性改善とを目的としたタンタルや窒化タンタル(TaN)などからなる薄いバリア層を形成し、その後、銅膜を配線用凹部内に埋込むように形成し、化学機械的研磨(CMP)によって、配線用凹部内以外の銅及びバリア層を除去する、いわゆるダマシン法によって一般に形成される。
【0003】
研磨後の基板の表面には、絶縁膜中に埋込まれた銅からなる配線(銅配線)の表面が直に露出しており、銅による多層配線を形成する場合には、この上に更に絶縁膜を形成する必要がある。絶縁膜として一般に用いられる酸化ケイ素(SiO)やその他の多くの材料は、銅との接着力が一般に乏しく、しかも内部を銅が速やかに拡散してしまう。このため、銅配線の露出表面を覆う絶縁膜として、SiO等の材料は、一般に用いられていない。
【0004】
基板の表面に露出している銅配線との接着力を確保でき、かつ銅の拡散を抑制できる絶縁膜材料の種類は、現在では窒化ケイ素(SiN)や炭化ケイ素(SiC)などに限られている。しかし、これらの材料であっても、銅の拡散を防止する能力は十分ではなく、また銅との接着力も十分ではない。加えて、これらの材料は、誘電率が高いので、銅配線間の静電容量を増加させ、配線信号の遅延を低減させる場合の妨げになる。
【0005】
近年、配線間の静電容量を減少させるために、内部に銅配線を形成する絶縁膜(層間絶縁膜)に低誘電率材料、いわゆるlow―k材を用いる検討が行われている。これらの低誘電率材料は、一般に密度が低く、銅の拡散速度はSiO膜などよりも更に大きい。従って、層間絶縁膜に低誘電率材料を用いた銅多層配線では、配線の長期に亘る信頼性が更に低下してしまう危険性が大きい。
【0006】
すなわち、絶縁膜(層間絶縁膜)内に形成した銅配線の露出表面をケイ素化合物等の絶縁膜で被覆する従来の方法では、配線特性の向上の制約要因となるばかりでなく、銅配線の信頼性を長期に亘って確保することが困難である。
この問題に対する一つの対策として、コバルトとタングステンの合金等からなる保護膜(蓋材)で、銅配線の露出表面を選択的に覆って銅配線を保護することが検討されている。このような保護膜は、例えば無電解めっきで得られる(特許文献1参照)。
【0007】
例えば、図1に示すように、半導体ウエハ等の基板Wの表面に堆積したSiOやlow―k材からなる絶縁膜(層間絶縁膜)2の内部に微細な配線用凹部(トレンチ)4を形成し、表面にTaN等からなるバリア層6を形成した後、例えば、銅めっきを施して、基板Wの表面に銅膜を成膜して配線用凹部4の内部に銅を埋込む。しかる後、基板Wの表面にCMP(化学機械的研磨)を施して平坦化することで、絶縁膜2の内部に銅膜からなる銅配線8を形成する。そして、この銅配線(銅膜)8の表面に、例えば無電解めっきによって得られる、CoWP合金からなる保護膜(蓋材)9を選択的に形成して銅配線8を保護する。
【0008】
一般的な無電解めっきによって、このようなCoWP合金からなる保護膜(蓋材)9を銅配線8の表面に選択的に形成する工程を説明する。先ず、CMP処理を施した半導体ウエハ等の基板を、例えば常温の希硫酸中に1分間程度浸漬させて、銅配線8の表面の酸化膜や絶縁膜2の表面に残った銅等のCMP残さ等を除去する。そして、基板の表面を純水等の洗浄液で洗浄(リンス)した後、例えば常温のパラジウム溶液(PdCl/HCl)中に基板Wを1分間程度浸漬させ、これにより、銅配線8の表面に触媒としてパラジウム(Pd)を付着させて銅配線8の露出表面を活性化させる。
【0009】
次に、基板の表面を純水等で洗浄(リンス)した後、例えば液温が80℃のCoWPめっき液中に基板を120秒間程度浸漬させて、活性化させた銅配線8の表面に選択的な無電解めっき(無電解CoWP蓋めっき)を施す。しかる後、基板の表面を純水等の洗浄液で洗浄(リンス)する。これによって、銅配線8の露出表面に、CoWP合金からなる保護膜9を選択的に形成して銅配線8を保護する。
【0010】
上記のようにして、銅配線8の露出表面に保護膜9を選択的に形成すると、図1に示すように、銅配線8以外の部位である絶縁膜2の表面に、数十nm程度の異常析出物(以下、ノジュールという)10が発生する場合がある。このように、絶縁膜2に表面に発生したノジュール10は、銅配線8の表面を覆う保護膜9の銅拡散防止効果を低減させたり、配線間の絶縁性を低下させて配線不良の原因になるおそれがある。ノジュール10の発生については、無電解めっき液の不安定化、無電解めっき膜からの部分離脱が原因であるとされており、基本的には銅配線の表面をクリーンに保ち、無電解めっき液中に汚染物が持ち込まれないようにする、というプロセス上の改善で抑制できるものと考えられていた。
【0011】
しかしながら、実際には、Pd(パラジウム)触媒を銅配線の表面に付与する工程において、Pd触媒に関連する異常析出やめっき析出不良の問題が提示されている(特許文献2参照)。この原因は、銅配線表面にPdが付与されるのと同時に、銅配線以外の部位である絶縁膜表面にも、Pdが物理的に吸着されるためであると考えられる。従って、この場合には、Pd触媒付与後に余分なPdを洗浄除去する工程を加え、また絶縁膜が多孔性のlow―k材の場合には、絶縁膜を疎水化処理することで解決が図られている(特許文献3参照)。
【0012】
一方、上記のような保護膜形成プロセスにおいて、CMPによる研磨工程により埋込み銅配線の表面が露出されてから無電解めっき工程が開始されるまでの過程、すなわち工程間の時間で、空気中の酸素に曝されて銅配線表面の酸化が進行するにしたがって、ノジュールの発生が多くなることが確認された。
【0013】
【特許文献1】米国特許第5695810号明細書
【特許文献2】特開平11―87890号公報
【特許文献3】特開2005―56945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明者らは、鋭意研究を重ねることにより、ノジュールの生成機構を解明した。すなわち、銅配線上やその近傍に生成した銅酸化物または無電解めっきを行うめっき液中の銅錯体が、無電解めっき液の還元作用によって金属銅まで還元されて、金属銅粒子(以下、銅パーティクルという)が生成され、この銅パーティクルがノジュールの核となるということが実験的にわかった。この核は、配線保護膜を形成する無電解めっきの過程で更に成長すると考えられる。以下にノジュールの原因を検討するために行った実験の詳細について説明する。
【0015】
実験には次のような構成の装置を用いた。無酸素銅板(ニラコ製、1cm×1cm×1mm)に半田でリード線を付け、それをエポキシ樹脂内に埋込み、片面のみを露出させて鏡面仕上げ(アルミナ1μm)まで研磨したものを銅配線試料として模擬的に作製した。銅配線試料に前処理を行って銅配線を銅電極とし、電気化学測定用試料として用いた。前処理には、IPA(2―プロパノール)液に銅配線試料を浸漬させて超音波洗浄することによって、研磨などの汚れを除去し、しかる後、浸漬液を超純水に替えて更に超音波洗浄した。このようにして前処理を行った銅電極試料を、乾燥させることなく、無電解めっき用のめっき液(無電解めっき液)に入れ電気化学測定を行った。このとき、参照電極には飽和KCl−銀塩化銀電極を、対極には白金線φ1mm×長さ20cmをコイルスプリング状にしたものを使用し、電気化学測定機器にはALS製のModel−400を使用した。また、使用しためっき液の組成を以下に示す。
【0016】
めっき液の基本組成
・CoSO・7HO:0.025mol/L
・Na・2HO:0.15mol/L
・HBO:0.5mol/L
・NaWO・2HO:0.018mol/L
・NaHPO・HO:0.2mol/L
・pH:9.0
・温度:75℃
【0017】
まず上記のように作製した銅電極を、パラジウム濃度が30ppmの硫酸パラジウム水溶液(0.5mol/L硫酸水溶液)中に30秒間浸漬させてPd触媒付与処理を行い、得られた銅電極を静止状態のめっき液中に浸漬させた。この時の銅電極の電位変化の様子を図2に示す。めっき液中において、銅電極は、約−0.25Vの浸漬電位となっており、浸漬開始40秒後に銅電極の電位が急激に下がっている。これは、めっき開始までの潜伏時間に相当する。すなわち、このように電位が十分に下がってから始めてめっき反応が開始する。また、銅電極にめっき膜(CoWP膜)が付いた状態で、同様な電位測定を行うと、めっき開始までの電位変化及び潜伏時間は存在せず、めっき膜の付いた銅電極の浸漬と同時にめっき反応が開始される。一方で、めっき液を撹拌した状態では、銅電極をめっき液に浸漬しても銅電極の電位は低下せず、めっき反応も開始されなかった。
【0018】
このことは、銅がめっき液に対してもつ浸漬電位を、Pd(パラジウム)による触媒作用で十分に卑な電位に至らせることによって始めて、めっき反応が開始されていることを示す。
このようなめっき開始の有無の違いは、次のような測定から評価できると考えた。図3にPd触媒処理をした銅電極をめっき液中に浸漬させ、カソード分極測定(電位を還元側にスキャンする方法)を行ったときの電流密度変化の様子を示す。めっき液を静止した状態に比べ、めっき液を撹拌した状態で流れるカソード電流密度(マイナス側の絶対値)が大きくなっている。
【0019】
このカソード電流が流れなくなるまで分極をすると、めっき液が撹拌されていても、無電解めっき反応が開始されることが発見された。図3に示すように、めっき液を撹拌した状態で分極し、カソード電流がゼロになり切らなかった場合では、無電解めっき反応が始まらなかった。このカソード電流がゼロになること、つまり、ある還元反応が完了することが、めっき開始の有無を決めていると言える。
【0020】
以上のように、Pd触媒処理された銅電極の電位測定において、めっき液を撹拌した状態で銅電極の電位が低下せず、めっき反応が開始されなかったのは、Pd触媒上での次亜リン酸の還元作用によりカソード還元電流がある程度流れるようになっていたが、めっき開始に必要とされる還元反応量が大き過ぎたのが原因と考えられる。
【0021】
この結果から、めっき液によって還元される生成物が作られていると言える。そして、下記の式(1)〜(3)に示すような還元反応を考えると、銅パーティクルが生じることが考えられる。すなわち、この還元で生じる銅パーティクルがノジュールの原因となることがあると考えられる。
PO+HO→HPO2―+3H+2e (1)
CuO(酸化銅)+2e+2H→2Cu(ノジュールの核)+HO (2)
CuL(銅錯体)+2e+2H→Cu(ノジュールの核)+HL (3)
【0022】
ノジュール発生の有無は、ノジュールの還元反応が生じる時の電位で決まることが推測される。例えば、めっき液中でのコバルトイオンの還元析出開始電位は実際かなり低く、上記組成のめっき液では、おおよそ−0.8〜−0.9V程度である。銅パーティクルの還元反応がこの電位に近い状態で生じた場合は、銅表面と接した銅パーティクルそのものも電位が十分に低い状態となり、コバルト等の析出反応が開始される。そして、コバルト等が一度析出してしまうと、それ自体は、めっき液に含まれる、例えば次亜リン酸に対して触媒活性であり、継続的に無電解反応が進行する。また、このような銅パーティクルでの析出では銅配線に対して密着性は悪いため、その場から離れていくと考えられ、結果として、銅配線表面以外で観察されるノジュールとなる。
【0023】
銅電極を強制的に酸化させ、めっき液中でカソード分極をしたときの結果を図4に示す。前記で行っためっき液中で生成されたものの還元電流ピークに比べ、銅電極を酸化させた場合の還元電流ピークは更に低く、これらを還元しきるのに必要な電位は−0.8Vと、コバルト等の析出開始電位に非常に近くなっていることが分かる。
このように銅の酸化生成物が還元される電位は非常に低く、よって銅パーティクルが発生したときに、そのままコバルト等の析出も開始される可能性が高いと言える。そして、結果的にノジュールが発生すると考えられる。
【0024】
本発明は上記に鑑みて成されたもので、埋込み銅配線の露出表面に、保護膜を選択性良く安定して形成することによって銅配線を保護することができる無電解めっき方法及び無電解めっき装置を提供することを目的とする。より詳細には、CMPにより埋込み銅配線の表面が露出されてから無電解めっきによる保護膜形成までの過程におけるノジュールの発生を抑制することによって、銅配線の信頼性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
請求項1に記載の発明は、内部に埋込み銅配線を形成した基板を用意し、基板の表面に触媒付与液を接触させて銅配線の表面に触媒を付与し、触媒付与後の基板の表面を洗浄し、洗浄後の基板の表面に還元液を接触させて基板の表面を還元処理し、還元処理後の基板の表面を洗浄し、しかる後、無電解めっき液に基板の表面を接触させて銅配線の表面に保護膜を選択的に形成することを特徴とする無電解めっき方法である。
【0026】
本発明によれば、埋込み銅配線の表面の電位を、還元剤によって、例えば−0.8V、好ましくは−0.9Vよりも低くし、銅の酸化生成物の還元反応を無電解めっき液ではないところで予め起こさせて銅の酸化生成物を完全に還元除去することで、その後に行われる無電解めっきプロセスで絶縁膜の表面にノジュールが発生すること防止することができる。すなわち、本発明者らは、鋭意研究を重ねることにより、銅配線上または近傍に銅の酸化生成物が存在することにより、無電解めっきプロセスでノジュールが発生することを確認し、無電解めっきを行う前に、銅の酸化生成物の還元除去を行い、生じた銅(パーティクル)を予め除去してから無電解めっきを行うことで、ノジュールの発生を抑制できることを見出した。
【0027】
請求項2に記載の発明は、前記還元液は、次亜リン酸を含み、前記金属はパラジウムで、前記触媒付与液は、無機酸でpHを2以下に調整した硫酸パラジウム溶液であることを特徴とする請求項1記載の無電解めっき方法である。
【0028】
銅配線の表面を十分に卑な電位として、銅配線上または近傍から銅の酸化生成物を還元除去するためには、触媒としてPd(パラジウム)を利用し、Pd触媒が付与された銅配線の表面上で次亜リン酸の還元力を利用して銅の生成酸化物の還元除去を行うことが好ましい。Pd触媒付与液は強酸性であるため、還元除去処理によって銅の酸化生成物及び防食剤をも除去する作用がある。CMPによる平坦化処理後の半導体ウエハ表面には、銅の腐食を防止するための防食剤が表面に残留していることがあり、上記のような還元除去がその防食剤の存在により十分に作用しない場合がある。このような場合には、Pd触媒付与液のPd濃度、pH、処理時間等の条件を適宜調整することによって、CMP処理後の表面に強固に残留する防食剤をPd触媒付与液自身の持つ作用で除去することができる。
【0029】
Pd触媒付与液は酸性である必要があり、pHは2以下であることが好ましい。Pd触媒付与液を酸性とするために、硫酸または塩酸が好ましく使用される。
Pd触媒によって十分に卑な電位を作り出せる還元剤としては、次亜リン酸とホウ素水素化化合物が挙げられる。ホウ水素化化合物は、非常に反応性が高い反面、安定性が問題とされ、扱い難い欠点がある。利便性を考えると、次亜リン酸を使用するのが好ましい。還元液の保存期間の短さや使い捨てによるコストが問題にならなければ、ホウ素水素化合物を用いても良い。
【0030】
請求項3に記載の発明は、前記無電解めっき液には次亜リン酸が含まれていることを特徴とする請求項2記載の無電解めっき方法である。
薬液によっても、銅の酸化生成物は除去可能であるかもしれないが、薬液によって銅の酸化生成物を除去しようとすると、場合によっては、薬液自体が無電解めっき液にとっては異物になることも考えられ、配線に何らかの影響を及ぼしかねないと考えられる。無電解めっき液として、次亜リン酸が含まれているものを使用することで、還元処理に用いる還元液に含まれる次亜リン酸化合物が無電解めっき液にとって異物になることを防止することができる。
【0031】
請求項4に記載の発明は、基板の表面に、溶存酸素濃度が2ppm以下の触媒付与液を接触させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の無電解めっき方法である。
これにより、銅配線の表面が、触媒処理液中の溶存酸素によって酸化されてしまうことを防止することができる。
【0032】
請求項5に記載の発明は、前記還元液は、リン酸またはその塩、クエン酸またはその塩、シュウ酸またはその塩、ホウ酸またはその塩の群から選択される化合物、及び水酸化アルカリをpH調整剤として含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の無電解めっき方法である。
請求項6に記載の発明は、前記還元処理を行う還元液の温度は、70℃以上100℃以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の無電解めっき方法である。
【0033】
請求項7に記載の発明は、前記還元処理後の基板の表面の洗浄を、カソード水を用いて行うことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の無電解めっき方法である。
このように、薬液を使用することなく、カソード水、具体的には水素水を用いて還元処理後の基板の表面を洗浄することで、コストの削減を図ることができる。
【0034】
請求項8に記載の発明は、埋込み銅配線を形成した基板の表面に触媒付与液を接触させて銅配線の表面に触媒を付与し、触媒付与後の基板の表面を洗浄する触媒付与ユニットと、前記触媒付与ユニットで洗浄した基板の表面に還元液を接触させて基板の表面を還元処理し、還元処理後の基板の表面を洗浄する還元処理ユニットと、前記還元処理ユニットで洗浄した基板の表面に無電解めっき液を接触させて銅配線の表面に保護膜を選択的に形成する無電解めっきユニットを有することを特徴とする無電解めっき装置である。
【0035】
請求項9に記載の発明は、前記還元液は、次亜リン酸化合物を含み、前記触媒はパラジウムで、前記触媒付与液は、無機酸でpHを2以下に調整した硫酸パラジウム溶液であることを特徴とする請求項8記載の無電解めっき装置である。
【0036】
請求項10に記載の発明は、基板の表面に触媒付与液を接触させて銅配線の表面に触媒を付与するのに先だって、基板の表面を前洗浄する前洗浄ユニットを更に有することを特徴とする請求項8または9記載の無電解めっき装置である。
【0037】
請求項11に記載の発明は、基板の内部に設けた埋込み銅配線の表面に保護膜を無電解めっきで選択的に形成する処理を実行させるためのプログラムであって、基板の表面を、無機酸の添加によってpHを2以下になるように制御した触媒付与液に接触させて銅配線の表面に触媒を付与する工程、触媒付与処理後の基板の表面を、溶存酸素濃度が2ppm以下になるように脱気した純水で洗浄する工程、洗浄後の基板の表面に、溶存酸素濃度が2ppm以下になるように脱気した還元液を接触させて還元処理を行う工程、還元処理後の基板の表面を洗浄する工程、及び無電解めっき液に基板の表面を接触させて基板の表面に保護膜を選択的に形成する工程を順次実行させる無電解めっきを行うためのプログラムである。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、銅配線の露出表面に、無電解めっきによって保護膜を形成するまでの過程における異常析出物(ノジュール)の発生を抑制して、銅配線の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、以下の例では、図1に示すように、銅配線8の露出表面を、CoWP合金からなる保護膜(蓋材)9で選択的に覆って、銅配線8を保護膜9で保護するようにした例を示す。
【0040】
図5は、本発明の実施の形態における無電解めっき装置の平面配置図を示す。図5に示すように、この無電解めっき装置には、表面に銅配線8を形成した半導体ウエハ等の基板Wを収容した基板カセットを載置収容するロード・アンロードユニット11が備えられている。そして、排気系統を備えた矩形状の装置フレーム12の内部に、基板の表面をオゾン水やアノード水等で前洗浄する前洗浄ユニット14a、前洗浄後の基板の表面に触媒付与液を接触させて銅配線8の表面に、例えばPd等の触媒を付与し、しかる後、基板の表面を洗浄する触媒付与ユニット14b、及び触媒付与後の基板の表面に還元液を接触させ基板の表面を還元処理し、しかる後、基板の表面を洗浄する還元処理ユニット14cが配置されている。この触媒付与ユニット14bと還元処理ユニット14cは、使用する処理液が異なるだけで、同じ構成である。
【0041】
装置フレーム12の内部には、基板の表面に無電解めっきを行う無電解めっきユニット16、無電解めっき処理によって銅配線8の表面に形成された保護膜(合金膜)9の選択性を向上させるため、基板のめっき後処理を行う後処理ユニット18、後処理後の基板を乾燥させる乾燥ユニット20、及び仮置台22が配置されている。更に、装置フレーム12の内部には、ロード・アンロードユニット11に搭載された基板カセットと仮置台22との間で基板Wの受渡し行う第1基板搬送ロボット24と、仮置台22と各ユニット14a,14b,14c,16,18,20との間で基板の受渡しを行う第2基板搬送ロボット26が、それぞれ走行自在に配置されている。
【0042】
次に、図5に示す無電解めっき装置に備えられている各ユニットの詳細を以下に説明する。なお、前洗浄ユニット14aは、基板の表面に向けてオゾン水等を噴出して基板の表面を洗浄する一般的な洗浄ユニットであるので、ここでは、その説明を省略する。前洗浄ユニット14aにおいて、2液を使用する場合には、触媒付与ユニット14b及び還元処理ユニット14cと同じ構成のものを使用してもよい。
【0043】
触媒付与ユニット14b及び還元処理ユニット14cは、異なる液体の混入を防ぐ2液分離方式を採用したもので、フェースダウンで搬送された基板Wの表面(被処理面)である下面の周縁部をシールし、裏面側を押圧して基板Wを固定するようにしている。
【0044】
触媒付与ユニット14b(還元処理ユニット14c)は、図6乃至図8に示すように、フレーム50の上部に取付けた固定枠52と、この固定枠52に対して相対的に上下動する移動枠54を備えており、図9に示すように、この移動枠54に、下方に開口した有底円筒状のハウジング部56と基板ホルダ58とを有する処理ヘッド60が懸架支持されている。つまり、移動枠54には、ヘッド回転用サーボモータ62が取付けられ、このサーボモータ62の下方に延びる出力軸(中空軸)64の下端に処理ヘッド60のハウジング部56が連結されている。
【0045】
この出力軸64の内部には、図9に示すように、スプライン66を介して該出力軸64と一体に回転する鉛直軸68が挿着され、この鉛直軸68の下端に、ボールジョイント70を介して処理ヘッド60の基板ホルダ58が連結されている。基板ホルダ58は、ハウジング部56の内部に位置している。また鉛直軸68の上端は、軸受72及びブラケットを介して、移動枠54に固定した固定リング昇降用シリンダ74に連結されている。これにより、この昇降用シリンダ74の作動に伴って、鉛直軸68が出力軸64とは独立に上下動する。
【0046】
図6乃至図8に示すように、固定枠52には、上下方向に延びて移動枠54の昇降の案内となるリニアガイド76が取付けられ、ヘッド昇降用シリンダ(図示せず)の作動に伴って、移動枠54がリニアガイド76を案内として昇降する。
【0047】
図9に示すように、処理ヘッド60のハウジング部56の周壁には、この内部に基板Wを挿入する基板挿入窓56aが設けられている。また、処理ヘッド60のハウジング部56の下部には、図10及び図11に示すように、例えばポリエーテルエーテルケトン製のメインフレーム80とガイドフレーム82との間に周縁部を挟持されてシールリング84が配置されている。このシールリング84は、基板Wの下面の周縁部に当接し、ここをシールするためのものである。
【0048】
基板ホルダ58の下面周縁部には、基板固定リング86が固着され、この基板ホルダ58の基板固定リング86の内部に配置したスプリング88の弾性力を介して、円柱状のプッシャ90が基板固定リング86の下面から下方に突出する。更に、基板ホルダ58の上面とハウジング部56の上壁部との間には、内部を気密的にシールする、例えばテフロン(登録商標)製で屈曲自在な円筒状の蛇腹板92が配置されている。更に、基板ホルダ58には、この基板ホルダ58で保持した基板の上面を覆う被覆板94が備えられている。
【0049】
これにより、基板ホルダ58を上昇させた状態で、基板Wを基板挿入窓56aからハウジング部56の内部に挿入する。すると、この基板Wは、ガイドフレーム82の内周面に設けたテーパ面82aに案内され、位置決めされてシールリング84の上面の所定位置に載置される。この状態で、基板ホルダ58を下降させ、この基板固定リング86のプッシャ90を基板Wの上面に接触させる。そして、基板ホルダ58を更に下降させることで、基板Wをスプリング88の弾性力で下方に押圧し、これによって、基板Wの表面(下面)の周縁部にシールリング84で圧接させて、ここをシールしつつ、基板Wをハウジング部56と基板ホルダ58との間で挟持して保持する。
【0050】
このように、基板Wを基板ホルダ58で保持した状態で、ヘッド回転用サーボモータ62を駆動すると、この出力軸64と該出力軸64の内部に挿着した鉛直軸68がスプライン66を介して一体に回転し、これによって、ハウジング部56と基板ホルダ58も一体に回転する。
【0051】
処理ヘッド60の下方に位置して、該処理ヘッド60の外径よりもやや大きい内径を有する上方に開口した、外槽100aと内槽100bを有する処理槽100(図12参照)が備えられている。内槽100bの外周部には、蓋体102に取付けた一対の脚部104が回転自在に支承されている。更に、図6乃至図8に示すように、脚部104には、クランク106が一体に連結され、このクランク106の自由端は、蓋体移動用シリンダ108のロッド110に回転自在に連結されている。これにより、蓋体移動用シリンダ108の作動に伴って、蓋体102は、内槽100bの上端開口部を覆う処理位置と、側方の待避位置との間を移動するように構成されている。この蓋体102の表面(上面)には、例えば純水を外方(上方)に向けて噴射する多数の噴射ノズル112aを有するノズル板112が備えられている。
【0052】
更に、図12に示すように、処理槽100の内槽100bの内部には、第1処理液タンク120から第1処理液ポンプ122の駆動に伴って供給された第1処理液を上方に向けて噴射する複数の噴射ノズル124aを有するノズル板124が、該噴射ノズル124aが内槽100bの横断面の全面に亘ってより均等に分布した状態で配置されている。この内槽100bの底面には、第1処理液(排液)を外部に排出する排水管126が接続されている。この排水管126の途中には、三方弁128が介装され、この三方弁128の一つの出口ポートに接続された戻り管130を介して、必要に応じて、この第1処理液(排液)を第1処理液タンク120に戻して再利用できるようになっている。
【0053】
蓋体102の表面(上面)に設けられたノズル板112は、第2処理液供給源132に接続されている。これによって、第2処理液が噴射ノズル112aから基板の表面に向けて噴射される。また、外槽100aの底面にも、排水管127が接続されている。
【0054】
これにより、基板を保持した処理ヘッド60を下降させて、処理槽100の内槽100bの上端開口部を処理ヘッド60で塞ぐように覆い、この状態で、処理槽100の内槽100bの内部に配置したノズル板124の噴射ノズル124aから第1処理液を、基板Wに向けて噴射することで、基板Wの下面(処理面)の全面に亘って第1処理液を均一に噴射し、しかも第1処理液の外部への飛散を防止しつつ第1処理液を排水管126から外部に排出する。
【0055】
更に、処理ヘッド60を上昇させ、処理槽100の内槽100bの上端開口部を蓋体102で閉塞した状態で、処理ヘッド60で保持した基板Wに向けて、蓋体102の上面に配置したノズル板112の噴射ノズル112aから第2処理液を噴射することで、基板Wの下面(処理面)の全面に亘って第2処理液を均一に噴射する。この第2処理液は、外槽100aと内槽100bの間を通って、排水管127を介して排出されるので、内槽100bの内部に流入することが防止されて、第1処理液に混ざることが防止される。
【0056】
この触媒付与ユニット14b(還元処理ユニット14c)によれば、図6に示すように、処理ヘッド60を上昇させた状態で、この内部に基板Wを挿入して保持し、しかる後、図7に示すように、処理ヘッド60を下降させて処理槽100の内槽100bの上端開口部を覆う位置に位置させる。そして、処理ヘッド60を回転させて、処理ヘッド60で保持した基板Wを回転させながら、図12に示すように、内槽100bの内部に配置したノズル板124の噴射ノズル124aから、第1処理液を基板Wに向けて噴射することで、基板Wの全面に亘って第1処理液を均一に噴射する。そして、処理ヘッド60を上昇させて所定位置で停止させ、図8に示すように、待避位置にあった蓋体102を処理槽100の内槽100bの上端開口部を覆う位置まで移動させる。そして、この状態で、処理ヘッド60で保持して回転させた基板Wに向けて、蓋体102の上面に配置したノズル板112の噴射ノズル112aから第2処理液を噴射する。これにより、基板Wの第1処理液と第2処理液による処理を、2つの液体が混ざらないようにしながら行うことができる。
【0057】
無電解めっきユニット16を図13乃至図19に示す。この無電解めっきユニット16は、めっき槽200(図17及び図19参照)と、このめっき槽200の上方に配置されて基板Wを着脱自在に保持する基板ヘッド204を有している。
【0058】
基板ヘッド204は、図13に詳細に示すように、ハウジング部230とヘッド部232とを有し、ヘッド部232は、吸着ヘッド234と該吸着ヘッド234の周囲を囲繞する基板受け236から主に構成されている。そして、ハウジング部230の内部には、基板回転用モータ238と基板受け駆動用シリンダ240が収納され、この基板回転用モータ238の出力軸(中空軸)242の上端はロータリジョイント244に、下端はヘッド部232の吸着ヘッド234にそれぞれ連結され、基板受け駆動用シリンダ240のロッドは、ヘッド部232の基板受け236に連結されている。ハウジング部230の内部には、基板受け236の上昇を機械的に規制するストッパ246が設けられている。
【0059】
ここで、吸着ヘッド234と基板受け236との間には、スプライン構造が採用され、基板受け駆動用シリンダ240の作動に伴って基板受け236は吸着ヘッド234と相対的に上下動するが、基板回転用モータ238の駆動によって出力軸242が回転すると、この出力軸242の回転に伴って、吸着ヘッド234と基板受け236が一体に回転するように構成されている。
【0060】
吸着ヘッド234の下面周縁部には、図14乃至図16に詳細に示すように、下面をシール面として基板Wを吸着保持する吸着リング250が押えリング251を介して取付けられ、この吸着リング250の下面に円周方向に連続させて設けた凹状部250aと吸着ヘッド234内を延びる真空ライン252とが吸着リング250に設けた連通孔250bを介して互いに連通するようになっている。これにより、凹状部250a内を真空引きすることで、基板Wを吸着保持するのであり、このように、小さな幅(径方向)で円周状に真空引きして基板Wを保持することで、真空による基板Wへの影響(たわみ等)を最小限に抑え、しかも吸着リング250を無電解めっき液中に浸すことで、基板Wの表面(下面)のみならず、エッジについても、全て無電解めっき液に浸すことが可能となる。基板Wのリリースは、真空ライン252にNを供給して行う。
【0061】
一方、基板受け236は、下方に開口した有底円筒状に形成され、その周壁には、基板Wを内部に挿入する基板挿入窓236aが設けられ、下端には、内方に突出する円板状の爪部254が設けられている。更に、この爪部254の上部には、基板Wの案内となるテーパ面256aを内周面に有する突起片256が備えられている。
【0062】
これにより、図14に示すように、基板受け236を下降させた状態で、基板Wを基板挿入窓236aから基板受け236の内部に挿入する。すると、この基板Wは、突起片256のテーパ面256aに案内され、位置決めされて爪部254の上面の所定位置に載置保持される。この状態で、基板受け236を上昇させ、図15に示すように、この基板受け236の爪部254上に載置保持した基板Wの上面を吸着ヘッド234の吸着リング250に当接させる。次に、真空ライン252を通して吸着リング250の凹状部250aを真空引きすることで、基板Wの上面の周縁部を該吸着リング250の下面にシールしながら基板Wを吸着保持する。そして、無電解めっき処理を行う際には、図16に示すように、基板受け236を数mm下降させ、基板Wを爪部254から離して、吸着リング250のみで吸着保持した状態となす。これにより、基板Wの表面(下面)の周縁部が、爪部254の存在によってめっきされなくなることを防止することができる。
【0063】
図17は、めっき槽200の詳細を示す。このめっき槽200は、底部において、めっき液供給管308(図19参照)に接続され、周壁部にめっき液回収溝260が設けられている。めっき槽200の内部には、ここを上方に向かって流れる無電解めっき液の流れを安定させる2枚の整流板262,264が配置され、更に底部には、めっき槽200の内部に導入される無電解めっき液の液温を測定する温度測定器266が設置されている。また、めっき槽200の周壁外周面のめっき槽200で保持した無電解めっき液の液面よりやや上方に位置して、直径方向のやや斜め上方に向けてめっき槽200の内部に、pHが6〜7.5の中性液からなる停止液、例えば純水を噴射する噴射ノズル268が設置されている。これにより、無電解めっき終了後、ヘッド部232で保持した基板Wを無電解めっき液の液面よりやや上方まで引き上げて一旦停止させ、この状態で、基板Wに向けて噴射ノズル268から純水(停止液)を噴射して基板Wを直ちに冷却し、これによって、基板Wに残った無電解めっき液によって無電解めっきが進行してしまうことを防止することができる。
【0064】
更に、めっき槽200の上端開口部には、アイドリング時等のめっき処理の行われていない時に、めっき槽200の上端開口部を閉じて該めっき槽200内のめっき液の無駄な蒸発と放熱を防止するめっき槽カバー270が開閉自在に設置されている。
【0065】
このめっき槽200は、図19に示すように、底部において、めっき液貯槽302から延び、途中にめっき液供給ポンプ304、フィルタ305及び三方弁306を介装しためっき液供給管308に接続されている。更に、めっき槽200のめっき液回収溝260は、めっき液貯槽302から延びるめっき液回収管に接続されている。これにより、めっき処理中にあっては、めっき槽200の内部に、この底部から無電解めっき液を供給し、めっき槽200を溢れる無電解めっき液をめっき液回収溝260からめっき液貯槽302へ回収することで、無電解めっき液が循環できるようになっている。また、三方弁306の一つの出口ポートには、めっき液貯槽302に戻るめっき液戻り管312が接続されている。これにより、めっき待機時にあっても、無電解めっき液を循環させることができるようになっている。
【0066】
特に、この例では、めっき液供給ポンプ304を制御することで、めっき待機時及びめっき処理時に循環する無電解めっき液の流量を個別に設定できるようになっている。すなわち、めっき待機時の無電解めっき液の循環流量は、例えば2〜20L/minで、めっき処理時の無電解めっき液の循環流量は、例えば0〜10L/minに設定される。これにより、めっき待機時に無電解めっき液の大きな循環流量を確保して、セル内のめっき浴の液温を一定に維持し、めっき処理時には、無電解めっき液の循環流量を小さくして、より均一な膜厚の保護膜(めっき膜)を成膜することができる。
【0067】
めっき槽200の底部付近には、めっき槽200の内部に導入される無電解めっき液の液温を測定して、この測定結果を元に、下記のヒータ316及び流量計318を制御する温度測定器266が設けられている。
【0068】
この例では、別置きのヒータ316を使用して昇温させ、流量計318を通過させた水を熱媒体に使用し、熱交換器320をめっき液貯槽302内の無電解めっき液中に設置して該めっき液を間接的に加熱する加熱装置322と、めっき液貯槽302内の無電解めっき液を循環させて攪拌する攪拌ポンプ324が備えられている。これは、無電解めっきにあっては、無電解めっき液を高温(約80℃程度)にして使用することがあり、これと対応するためであり、この方法によれば、インライン・ヒーティング方式に比べ、非常にデリケートな無電解めっき液に不要物等が混入するのを防止することができる。
【0069】
この例によれば、無電解めっき液は、基板Wと接触してめっきを行うときに、基板Wの温度が70〜90℃となるように液温が設定され、液温のばらつき範囲が±2℃以内となるように制御される。
【0070】
無電解めっきユニット16には、めっき液貯槽302内の無電解めっき液を抽出するめっき液抽出部330と、この抽出された無電解めっきユニット16が保有するめっき液の組成を、例えば吸光光度法、滴定法、電気化学的測定などで分析するめっき液組成分析部332が備えられている。このめっき液組成分析部332は、例えばコバルトイオン濃度をめっき液の吸光度分析、イオンクロマトグラフ分析、キャピラリー電気泳動分析またはキレート滴定分析により測定する。
【0071】
無電解めっき液の液温は、高くなるほどめっき速度が速くなり、低すぎるとめっき反応が起こらないことから、一般的には60〜95℃で、65〜85℃であることが好ましく、70〜75℃であることがより好ましい。基本的には、めっきを実際に行っているか否かに関わらず、一度温度を上げたら下げないことが望ましく、55℃以上にしておくことが望まれる。
【0072】
図18は、めっき槽200の側方に付設されている洗浄槽202の詳細を示す。この洗浄槽202の底部には、純水等のリンス液を上方に向けて噴射する複数の噴射ノズル280がノズル板282に取付けられて配置され、このノズル板282は、ノズル上下軸284の上端に連結されている。更に、このノズル上下軸284は、ノズル位置調整用ねじ287と該ねじ287と螺合するナット288との螺合位置を変えることで上下動し、これによって、噴射ノズル280と該噴射ノズル280の上方に配置される基板Wとの距離を最適に調整できるようになっている。
【0073】
更に、洗浄槽202の周壁外周面の噴射ノズル280より上方に位置して、直径方向のやや斜め下方に向けて洗浄槽202の内部に純水等の洗浄液を噴射して、基板ヘッド204のヘッド部232の、少なくともめっき液に接液する部分に洗浄液を吹き付けるヘッド洗浄ノズル286が設置されている。
【0074】
この洗浄槽202にあっては、基板ヘッド204のヘッド部232で保持した基板Wを洗浄槽202内の所定の位置に配置し、噴射ノズル280から純水等の洗浄液(リンス液)を噴射して基板Wを洗浄(リンス)するのであり、この時、ヘッド洗浄ノズル286から純水等の洗浄液を同時に噴射して、基板ヘッド204のヘッド部232の、少なくとも無電解めっき液に接液する部分を該洗浄液で洗浄することで、無電解めっき液に浸された部分に析出物が蓄積してしまうことを防止することができる。
【0075】
この無電解めっきユニット16にあっては、基板ヘッド204を上昇させた位置で、前述のようにして、基板ヘッド204のヘッド部232で基板Wを吸着保持し、めっき槽200の無電解めっき液を循環させておく。
そして、めっき処理を行うときには、めっき槽200のめっき槽カバー270を開き、基板ヘッド204を回転させながら下降させ、ヘッド部232で保持した基板Wをめっき槽200内の無電解めっき液に浸漬させる。
【0076】
そして、基板Wを所定時間めっき液中に浸漬させた後、基板ヘッド204を上昇させて、基板Wをめっき槽200内の無電解めっき液から引き上げ、必要に応じて、前述のように、基板Wに向けて噴射ノズル268から純水(停止液)を噴射して基板Wを直ちに冷却し、更に基板ヘッド204を上昇させて基板Wをめっき槽200の上方位置まで引き上げて、基板ヘッド204の回転を停止させる。
【0077】
次に、基板ヘッド204のヘッド部232で基板Wを吸着保持したまま、基板ヘッド204を洗浄槽202の直上方位置に移動させる。そして、基板ヘッド204を回転させながら洗浄槽202内の所定の位置まで下降させ、噴射ノズル280から純水等の洗浄液(リンス液)を噴射して基板Wを洗浄(リンス)し、同時に、ヘッド洗浄ノズル286から純水等の洗浄液を噴射して、基板ヘッド204のヘッド部232の、少なくとも無電解めっき液に接液する部分を該洗浄液で洗浄する。
【0078】
この基板Wの洗浄が終了した後、基板ヘッド204の回転を停止させ、基板ヘッド204を上昇させて基板Wを洗浄槽202の上方位置まで引き上げ、更に基板ヘッド204を第2基板搬送ロボット26との受渡し位置まで移動させ、この第2基板搬送ロボット26に基板Wを受渡して次工程に搬送する。
【0079】
図20は、後処理ユニット18を示す。後処理ユニット18は、基板W上のパーティクルや不要物をロール状ブラシで強制的に取り除くようにしたユニットで、基板Wの外周部を挟み込んで基板Wを保持する複数のローラ410と、ローラ410で保持した基板Wの表面に薬液(2系統)を供給する薬液用ノズル412と、基板Wの裏面に純水(1系統)を供給する純水用ノズル(図示せず)がそれぞれ備えられている。
【0080】
これにより、基板Wをローラ410で保持し、ローラ駆動モータを駆動してローラ410を回転させて基板Wを回転させ、同時に薬液用ノズル412及び純水ノズルから基板Wの表裏面に所定の薬液を供給し、図示しない上下ロールスポンジ(ロール状ブラシ)で基板Wを上下から適度な圧力で挟み込んで洗浄する。なお、ロールスポンジを単独にて回転させることにより、洗浄効果を増大させることもできる。
【0081】
更に、後処理ユニット18は、基板Wのエッジ(外周部)に当接しながら回転するスポンジ419が備えられ、このスポンジ419を基板Wのエッジに当てて、ここをスクラブ洗浄するようになっている。
【0082】
図21は、乾燥ユニット20を示す。この乾燥ユニット20は、先ず化学洗浄及び純水洗浄を行い、しかる後、スピンドル回転により洗浄後の基板Wを完全乾燥させるようにしたユニットで、基板Wのエッジ部を把持するクランプ機構420を備えた基板ステージ422と、このクランプ機構420の開閉を行う基板着脱用昇降プレート424を有している。この基板ステージ422は、スピンドル回転用モータ426の駆動に伴って高速回転するスピンドル428の上端に連結されている。
【0083】
更に、クランプ機構420で把持した基板Wの上面側に位置して、超音波発振器により特殊ノズルを通過する際に超音波を伝達して洗浄効果を高めた純水を供給するメガジェットノズル430と、回転可能なペンシル型洗浄スポンジ432が、旋回アーム434の自由端側に取付けられて配置されている。これにより、基板Wをクランプ機構420で把持して回転させ、旋回アーム434を旋回させながら、メガジェットノズル430から純水を洗浄スポンジ432に向けて供給しつつ、基板Wの表面に洗浄スポンジ432を擦り付けることで、基板Wの表面を洗浄する。なお、基板Wの裏面側にも、純水を供給する洗浄ノズル(図示せず)が備えられ、この洗浄ノズルから噴射される純水で基板Wの裏面も同時に洗浄される。
そして、このようにして洗浄した基板Wは、スピンドル428を高速回転させることでスピン乾燥させられる。
【0084】
また、クランプ機構420で把持した基板Wの周囲を囲繞して処理液の飛散を防止する洗浄カップ436が備えられ、この洗浄カップ436は、洗浄カップ昇降用シリンダ438の作動に伴って昇降するようになっている。
なお、この乾燥ユニット20にキャビテーションを利用したキャビジェット機能も搭載するようにしてもよい。
【0085】
次に、この無電解めっき装置による一連の処理(無電解めっき処理)について、図22を参照して説明する。
先ず、表面に銅配線8を形成した基板Wを、該基板Wの表面を上向き(フェースアップ)で収納してロード・アンロードユニット11に搭載した基板カセットから、1枚の基板Wを第1基板搬送ロボット24で取出して仮置台22に搬送して該仮置台22上に載置する。この仮置台22に載置された基板Wを、第2基板搬送ロボット26で前洗浄ユニット14aに搬送する。
【0086】
この前洗浄ユニット14aでは、基板Wをフェースダウンで保持して、この表面に洗浄液による前洗浄を行う。この例では、BTA(ベンゾトリアゾール)などの有機化合物からなる防食剤を酸化分解させて基板の表面から除去するため、アノード水(酸化水)として、濃度が10ppm以上のオゾン水を用い、オゾン水を基板の表面に向けて噴射することで、基板の前洗浄を行っている。ここで課題となるのが、銅配線自体にダメージを与えないことである。銅配線は非常に酸化(腐食)しやすいので、酸性液のオゾン水を使用することは好ましくなく、オゾン水自体はどちらかというとアルカリ性して用いることが好ましい。これにより、銅を腐食させることなく、有機物を分解できる。また、超音波をかけてしまうとオゾンガスが抜けやすくなるので好ましくない。
【0087】
なお、Pd触媒付与液は、コストもかかるので、基本的に回収して再利用するが、前洗浄ユニット14aでの処理で防食剤などが溶け出すと、下記の触媒付与処理の時にPdイオンと配位し、銅イオンと置換するPdの活量が減少してしまう。Pdの濃度分析では所定濃度検出されても、Pdイオンの活性度(置換する能力)までは評価できず、Pd触媒付与が不十分で無電解めっきが開始され難くなってしまう恐れがある。しかし、銅のCMPで用いる薬液の種類によって、同じ防食作用を持っていても、Pdに対して活性度を下げないものもあり得る。このような場合には、この基板の前洗浄処理を省略することもできる。
【0088】
なお、ウエットプロセス(湿式処理)ではなく、ドライプロセスによって基板の前洗浄を行っても良い。このドライプロセスとしては、アニール処理が挙げられる。特に不活性ガス下で基板をアニールすることによって、銅の酸化を抑えつつ、有機物だけを気化させることができる。BTAが銅と化合物を形成していて、不活性ガス下での基板のアニールよってはBTAが除去できない場合には、酸素によってある程度酸化作用を持たせことで、BTAを除去することができる。ドライプロセス以外の方法としては、UV照射、プラズマ照射が挙げられる。
【0089】
そして、前処理後の基板を触媒付与ユニット14bに搬送し、この触媒付与ユニット14bの基板ホルダ58で基板Wをフェースダウンで保持し、基板の表面に、例えばPd触媒付与液を接触させて銅配線8の表面に触媒を付与する。つまり、図7に示すように、内槽100bの上端開口部を覆う位置に処理ヘッド60を位置させ、内槽100b内に配置したノズル板112の噴射ノズル112aから第1処理液タンク120内の第1処理液を基板Wに向けて噴出する。この第1処理液として、例えばPd触媒付与液を使用し、これによって、銅配線8の表面に触媒を付与する。
【0090】
触媒金属としては、白金族元素、コバルト、ニッケルのいずれもが使用できる。しかし、置換めっきを実質的に考えるならば、銅よりも貴な金属に限られる。また、下記の還元処理を次亜リン酸を用いて行う場合、次亜リン酸に対して十分な触媒活性を得られるものとなると、金(Au)またはパラジウム(Pd)となる。更に、イオンとしての安定性を考えるとAuを用いるのは現実的ではない。このため、還元剤として次亜リン酸を使用する場合には、触媒としてPdを用いることが好ましい。
【0091】
Pd水溶液(Pd触媒付与液)は酸性である必要があり、pHは2以下であることが望ましい。これ以上高いとPdが水酸化Pdや酸化Pdになり沈殿してしまう。またPd濃度は、15ppm以上である必要である。これ以下だと、Pdが十分に置換されない恐れがある。Pd濃度の上限は、数百ppm程度である。
【0092】
Pd触媒付与液を酸性とするために、硫酸または塩酸を用いることが好ましい。塩酸を用いた場合は、塩化Pd触媒付与液特有の特異吸着性のため、銅配線以外の部分にもPdが付いてしまうことがある。硫酸を用いた硫酸Pd触媒付与液は、Pdイオンの安定性が長期間持続するという特長がある。従って、硫酸Pd触媒付与液を用いるのがコスト的にベストである。ただし、液中の溶存酸素の存在により銅配線を腐食してしまう。そのため、液中溶存酸素を2ppm以下とすることが好ましい。硫酸濃度は0.1mol/L〜1mol/L程度が好ましい。液温に関しては、室温以下であることが好ましい。
【0093】
硫酸Pd触媒付与液であっても、ある程度使用すると、置換された銅イオンが蓄積され、Pdの置換反応に影響を及ぼすことがある。そのため、銅イオン濃度は、50ppm以上にならないようにすることが好ましい。
また、このPd触媒付与液によってBTAなどの防食剤の除去効果を期待する場合、防食剤によってPdの活性度が下がることが懸念される。その場合は、適時Pd処理液を交換することが好ましい。
【0094】
触媒付与ユニット14bで、銅配線8の表面にPd等の触媒を付与した後、基板の表面を純水で洗浄(リンス)する。つまり、基板Wを保持した基板ホルダ58を内槽100bの上方まで上昇させ、内槽100bの上部を蓋体102で覆った後、蓋体102に設けたノズル板112の噴射ノズル112aから第2処理液を基板Wに向けて噴出する。この第2処理液として、好ましくは脱気させた純水を使用し、これによって、基板Wの表面を純水で洗浄(リンス)する。
【0095】
例えば、硫酸Pd触媒付与液を使用して銅配線8の表面にPd触媒を付与した基板の表面を純水で洗浄すると、純水中で含まれる溶存酸素によって、洗浄中にも銅配線8の腐食が起こる。これは、銅配線8の表面にPdが付与されたことにより、純水中の溶存酸素の還元反応が起こりやすくなることによって、銅配線8の腐食が促進されることが原因である。このため、溶存酸素濃度を、好ましくは2ppm以下に脱気させた純水を使用して基板Wの表面を洗浄することで、銅配線8の腐食を防止することが好ましい。純水のpHは7以上であることが好ましい。
【0096】
次に、触媒付与処理後の基板Wを還元処理ユニット14cに搬送し、この還元処理ユニット14cの基板ホルダ58で基板Wをフェースダウンで保持し、基板の表面に還元液を接触させて、基板の表面の還元処理を行う。つまり、図7に示すように、内槽100bの上端開口部を覆う位置に処理ヘッド60を位置させ、内槽100b内に配置したノズル板112の噴射ノズル112aから第1処理液タンク120内の第1処理液を基板Wに向けて噴出する。この第1処理液として還元液を使用し、これによって、基板Wの表面の還元処理を行う。
【0097】
還元剤としては、次亜リン酸(塩)を用いることが好ましい。還元剤としては、次亜リン酸の他にも、ホウ水素化化合物、ヒドラジン化合物、及びジアルキルボランが挙げられる。例えば、触媒としてPdを使用した場合、Pd触媒によって十分に卑な電位を作り出せる還元剤として、次亜リン酸とホウ素水素化化合物が挙げられる。ホウ水素化化合物は、非常に反応性が高い反面、安定性が問題とされ、扱い難い欠点がある。利便性を考えると、還元剤として次亜リン酸を使用するのが好ましい。還元液の保存期間の短さや使い捨てによるコストが問題にならなければ、還元剤としてホウ素水素化合物を用いても良い。
【0098】
十分な還元力を得る基準としては、還元剤によって銅の表面電位(飽和KCl−銀塩化銀電極基準)が−0.8Vよりも小さく、より好ましくは、−0.9V以下の状態になることである。還元剤として次亜リン酸を使用し、銅の表面電位(飽和KCl−銀塩化銀電極基準)を−0.8Vよりも小さく、より好ましくは、−0.9V以下とすることで、銅配線上やその近傍に生成した銅酸化物等の銅の酸化生成物は、前述の式(1)〜(3)に示すように、銅(パーティクル)となって還元液中に浮遊し、還元液と共に除去される。つまり、この銅(パーティクル)は、銅配線8に対して密着性が悪く、その場から容易に離れていく。
【0099】
このように、銅の酸化生成物の還元反応を無電解めっき液ではないところで予め起こさせて銅の酸化生成物を完全に還元除去してから無電解めっきを行うことで、無電解めっきプロセスで絶縁膜の表面にノジュールが発生すること防止することができる。
【0100】
還元剤として次亜リン酸を使用した場合、還元液に含まれる次亜リン酸の濃度は、0.1mol/L以上であることが好ましく、還元液のpHは8.5以上であることが好ましい。また、還元液の温度は、70〜100℃であることが好ましい。所定のpHに制御するに当たっては、リン酸またはその塩、クエン酸またはその塩、シュウ酸またはその塩、ホウ酸またはその塩、及びTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)等の水酸化アルカリ用いることが好ましい。
【0101】
同様に、還元剤としてホウ素水素化化合物を使用した場合、還元液に含まれるホウ素水素化化合物の濃度は、0.01mol/L以上であることが好ましく、還元液のpHは12.5以上であることが好ましい。また、還元液の温度は5℃以上あることが好ましい。
【0102】
還元処理ユニット14cで、還元処理後の基板の表面をカソード水等で洗浄する。つまり、基板Wを保持した基板ホルダ58を内槽100bの上方まで上昇させ、内槽100bの上部を蓋体102で覆った後、蓋体102に設けたノズル板112の噴射ノズル112aから第2処理液を基板Wに向けて噴出する。この第2処理液として、好ましくは、カソード水を使用し、これによって、基板Wの表面をカソード水等で洗浄する。
【0103】
還元処理によって生じた銅(パーティクル)は、銅配線8及び絶縁膜2上に残っていることがある。そこで、それを洗い流すために、基板Wの表面を洗浄液で洗浄する。なお、界面活性剤や錯化剤などの薬液によって、銅配線8及び絶縁膜2上に残っている銅(パーティクル)を洗い流すようにしてもよいが、洗い流すという目的上、液は使い捨てが好ましい。このため、薬液の使用及び処理コストを考えると、薬液は用いない方が好ましい。
【0104】
洗浄液として、カソード水、具体的には、溶存水素濃度が、好ましくは2ppm以上の水素水を用いることで、薬液を使用しないようにすることができる。液は使い回しではなく、使い捨て方式で使用するのが最も好ましい。さらに超音波洗浄と併用することがより好ましい。また、表面(被処理面)を下向きにし、下から線上液をスプレー噴射して洗い流すのが好ましい。いずれの方法においても、不活性ガス雰囲気にしておくことが好ましく、洗浄時間は、例えば数秒から30秒間位である。
【0105】
次に、基板を無電解めっきユニット16に搬送する。無電解めっきユニット16では、基板Wをフェースダウンで保持した基板ヘッド204を下降させて、基板Wをめっき槽200内の無電解めっき液に浸漬させ、これによって、無電解めっき(無電解CoWP蓋めっき)を施す。つまり、例えば、液温が80℃のCoWPめっき液中に、基板Wを、例えば120秒程度浸漬させて、活性化させた銅配線8の表面に選択的な無電解めっき(無電解CoWP蓋めっき)を施す。
【0106】
還元剤として、次亜リン酸を使用した場合、無電解めっき液として、次亜リン酸が含まれているものを使用することが好ましい。これは、還元剤として次亜リン酸が用いられていると、Pd触媒で次亜リン酸反応を一度起こさせているので、めっき反応が直ぐに開始しやすくなるためである。めっき反応が直ぐに開始されることによって、無電解めっき液に含まれる錯化剤などの影響で銅配線が溶解したり、酸化生成物を生じたりすることがない。しかも、無電解めっき液に異物が含まれてしまうことを防止することができる。
【0107】
無電解めっき液の温度に比べ、基板(めっき対象物)の温度が低すぎると、還元処理で低くなっている電位が高くなり、無電解めっき液に含まれる錯化剤などによって銅の溶解や化合物形成反応が起きてしまい、めっき反応が始まらないことがある。このため、無電解めっきを行うにあたって、基板を、めっき液の温度に対して、例えば±10℃で予め加温しておくことが好ましい。基板を加温する場合、不活性ガス雰囲気にしておくことで、温度が上がっても銅が酸化しないようにすることが好ましい。
【0108】
そして、基板Wをめっき液の液面から引き上げた後、噴射ノズル268から基板Wに向けて純水等のめっき停止液を噴出し、これによって、基板Wの表面のめっき液を停止液に置換させて無電解めっきを停止させる。次に、基板Wを保持した基板ヘッド204を洗浄槽202内の所定の位置に位置させ、洗浄槽202内のノズル板282の噴射ノズル280から純水を基板Wに向けて噴出して、基板Wを洗浄(リンス)し、同時にヘッド洗浄ノズル286から純水をヘッド部232に噴出してヘッド部232を洗浄する。これによって、銅配線8の表面に、CoWP合金膜からなる保護膜9を選択的に形成して銅配線8を保護する。
【0109】
次に、この無電解めっき処理後の基板Wを第2基板搬送ロボット26で後処理ユニット18に搬送し、ここで、基板Wの表面に形成された保護膜(金属膜)9の選択性を向上させて歩留りを高めるためのめっき後処理(後洗浄)を施す。つまり、基板Wの表面に、例えばロールスクラブ洗浄やペンシル洗浄による物理的な力を加えつつ、めっき後処理液(薬液)を基板Wの表面に供給し、これにより、絶縁膜(層間絶縁膜)2上に残っている金属微粒子等のめっき残留物を完全に除去して、めっきの選択性を向上させる。
【0110】
そして、このめっき後処理後の基板Wを第2基板搬送ロボット26で乾燥ユニット20に搬送し、ここで必要に応じてリンス処理を行い、しかる後、基板Wを高速で回転させてスピン乾燥させる。
このスピン乾燥後の基板Wを、第2基板搬送ロボット26で仮置台22の上に置き、この仮置台22の上に置かれた基板を、第1基板搬送ロボット24でロード・アンロードユニット11に搭載された基板カセットに戻す。
【0111】
上記の例では、銅配線8の表面に、CoWP合金膜からなる保護膜9を選択的に形成した例を示しているが、保護膜9として、CoWB、CoPまたはCoB等の他のコバルト系合金、NiWP、NiWB、NiPまたはNiB等のニッケル系合金からなる膜を使用してもよい。
これまで本発明の一実施例について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【0112】
(実施例)
表面をCMP処理して埋込み銅配線を形成した半導体ウエハを試料として用意し、この試料を、特に雰囲気を制御することなく、カセット内に10日間保管した。そして、この試料を無電解めっき装置に搬入し、基板の表面に、Pd濃度が30ppmの硫酸Pd触媒付与液を接触させて、銅配線の表面にPd触媒を付与し、触媒付与後の基板の表面を、溶存酸素濃度を2ppm以下に脱気した純水で洗浄(リンス)した。しかる後、基板の表面を還元液に接触させて、基板の表面を還元処理し、還元処理後の基板の表面をカソード水(水素水)で洗浄した。この還元液として、下記の無電解めっき液からコバルトとタングステンを除き、pH及び液温を無電解めっき液と同じにしたものを使用し、1分間還元処理を行った。
【0113】
次に、試料の表面を、下記の組成の無電解めっき液に接触させて、銅配線の表面にCoWP保護膜を析出させた。
めっき液の基本組成
・CoSO・7HO:0.25mol/L
・Na・2HO:0.15mol/L
・HBO:0.5mol/L
・NaWO・2HO:0.018mol/L
・NaHPO・HO:0.2mol/L
・pH:9.0
・温度:75℃
しかる後、めっき後の試料を純水で洗浄し、乾燥させた。
【0114】
(比較例1〜3)
表面をCMP処理して埋込み銅配線を形成した半導体ウエハを試料として用意した。そして、CMP直後(比較例1)、CMP処理から3日経過後(比較例2)及びCMP処理から10日経過後(比較例3)に、試料をPd濃度の30ppmの硫酸Pd触媒付与液に30秒間浸漬させて銅配線の表面にPd触媒を付与し、しかる後、基板を純水で30秒洗浄した。そして、上記と同じ組成の無電解めっき液に試料を150秒間浸漬させ、銅配線の表面にCoWP膜を析出させ、仕上げに純水洗浄を行った。ここで使用したいずれの液体においても、溶存酸素除去は行っていない。
【0115】
上記実施例及び比較例1〜3におけるノジュールの発生量の関係を図23に示す。この図23において、比較例3でのノジュール発生量を100としている。
この図23の比較例1〜3から、CMP処理後からの時間が長くなるほど銅酸化が進んでおり、酸化生成物によるノジュール発生量が増加していることが分かる。そして、実施例にあっては、ノジュールが発生しなくなっていることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】従来の無電解めっきによって配線を保護する保護膜を形成した状態を示す断面図である。
【図2】銅電極を無電解めっき液に浸漬させた時の電位の時間変化を示すグラフである。
【図3】銅電極を無電解めっき液中に浸漬させてカソード分極測定(電位を還元側にスキャンする方法)を行ったときの電流密度変化の様子を示すグラフである。
【図4】強制酸化させた銅電極を無電解めっき液中でカソード分極させたときの電位の時間変化を示すグラフである。
【図5】本発明の実施の形態の無電解めっき装置を示す平面配置図である。
【図6】触媒付与ユニット(還元処理ユニット)の基板受渡し時における外槽を省略した正面図である。
【図7】触媒付与ユニット(還元処理ユニット)の第1処理液による処理時における外槽を省略した正面図である。
【図8】触媒付与ユニット(還元処理ユニット)の第2処理液による処理時における外槽を省略した正面図である。
【図9】触媒付与ユニット(還元処理ユニット)の基板受渡し時における処理ヘッドを示す断面図である。
【図10】図9のA部拡大図である。
【図11】触媒付与ユニット(還元処理ユニット)の基板固定時における図10相当図である。
【図12】触媒付与ユニット(還元処理ユニット)の系統図である。
【図13】無電解めっきユニットの基板受渡し時における基板ヘッドを示す断面図である。
【図14】図13のB部拡大図である。
【図15】無電解めっきユニットの基板固定時における基板ヘッドを示す図14相当図である。
【図16】無電解めっきユニットのめっき処理時における基板ヘッドを示す図14相当図である。
【図17】無電解めっきユニットのめっき槽カバーを閉じた時のめっき槽を示す一部切断の正面図である。
【図18】無電解めっきユニットの洗浄槽を示す断面図である。
【図19】無電解めっきユニットの系統図である。
【図20】後処理ユニットを示す平面図である。
【図21】乾燥ユニットを示す縦断正面図である。
【図22】図5に示す無電解めっき装置における処理を示すフロー図である。
【図23】実施例及び比較例1〜3におけるノジュール発生量を示すグラフである。
【符号の説明】
【0117】
4 配線用凹部
8 銅配線
9 保護膜
11 ロード・アンロードユニット
12 装置フレーム
14a 前洗浄ユニット
14b 触媒付与ユニット
14c 還元処理ユニット
16 無電解めっきユニット
18 後処理ユニット
20 乾燥ユニット
58 基板ホルダ
60 処理ヘッド
84 シールリング
86 基板固定リング
92 蛇腹板
100 処理槽
102 蓋体
120 第1処理液タンク
132 第2処理液供給源
200 めっき槽
202 洗浄槽
204 基板ヘッド
230 ハウジング部
232 ヘッド部
234 吸着ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に埋込み銅配線を形成した基板を用意し、
基板の表面に触媒付与液を接触させて銅配線の表面に触媒を付与し、
触媒付与後の基板の表面を洗浄し、
洗浄後の基板の表面に還元液を接触させて基板の表面を還元処理し、
還元処理後の基板の表面を洗浄し、しかる後、
無電解めっき液に基板の表面を接触させて銅配線の表面に保護膜を選択的に形成することを特徴とする無電解めっき方法。
【請求項2】
前記還元液は、次亜リン酸を含み、前記触媒はパラジウムで、前記触媒付与液は、無機酸でpHを2以下に調整した硫酸パラジウム溶液であることを特徴とする請求項1記載の無電解めっき方法。
【請求項3】
前記無電解めっき液には次亜リン酸が含まれていることを特徴とする請求項2記載の無電解めっき方法。
【請求項4】
基板の表面に、溶存酸素濃度が2ppm以下の触媒付与液を接触させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の無電解めっき方法。
【請求項5】
前記還元液は、リン酸またはその塩、クエン酸またはその塩、シュウ酸またはその塩、ホウ酸またはその塩の群から選択される化合物、及び水酸化アルカリをpH調整剤として含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の無電解めっき方法。
【請求項6】
前記還元処理を行う還元液の温度は、70℃以上100℃以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の無電解めっき方法。
【請求項7】
前記還元処理後の基板の表面の洗浄を、カソード水を用いて行うことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の無電解めっき方法。
【請求項8】
埋込み銅配線を形成した基板の表面に触媒付与液を接触させて銅配線の表面に触媒を付与し、触媒付与後の基板の表面を洗浄する触媒付与ユニットと、
前記触媒付与ユニットで洗浄した基板の表面に還元液を接触させて基板の表面を還元処理し、還元処理後の基板の表面を洗浄する還元処理ユニットと、
前記還元処理ユニットで洗浄した基板の表面に無電解めっき液を接触させて銅配線の表面に保護膜を選択的に形成する無電解めっきユニットを有することを特徴とする無電解めっき装置。
【請求項9】
前記還元液は、次亜リン酸を含み、前記触媒はパラジウムで、前記触媒付与液は、無機酸でpHを2以下に調整した硫酸パラジウム溶液であることを特徴とする請求項8記載の無電解めっき装置。
【請求項10】
基板の表面に触媒付与液を接触させて銅配線の表面に触媒を付与するのに先だって、基板の表面を前洗浄する前洗浄ユニットを更に有することを特徴とする請求項8または9記載の無電解めっき装置。
【請求項11】
基板の内部に設けた埋込み銅配線の表面に保護膜を無電解めっきで選択的に形成する処理を実行させるためのプログラムであって、
基板の表面を、無機酸の添加によってpHを2以下になるように制御した触媒付与液に接触させて銅配線の表面に触媒を付与する工程、
触媒付与処理後の基板の表面を、溶存酸素濃度が2ppm以下になるように脱気した純水で洗浄する工程、
洗浄後の基板の表面に、溶存酸素濃度が2ppm以下になるように脱気した還元液を接触させて還元処理を行う工程、
還元処理後の基板の表面を洗浄する工程、及び
無電解めっき液に基板の表面を接触させて基板の表面に保護膜を選択的に形成する工程
を順次実行させる無電解めっきを行うためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2007−270224(P2007−270224A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−96069(P2006−96069)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】