焦電型赤外線検出装置
【課題】人体等から放射された赤外線の入射エネルギーの受光量を微調整することができる焦電型赤外線検出装置の提供。
【解決手段】少なくとも1個以上の貫通孔を有した板4を用いた焦電型赤外線検出装置で、検知領域と焦電型赤外線検出器2の間に少なくとも1個以上の貫通孔を有した板を配置する事により、人体等から放射される赤外線エネルギーの受光量を調整する事を特徴としている。
【解決手段】少なくとも1個以上の貫通孔を有した板4を用いた焦電型赤外線検出装置で、検知領域と焦電型赤外線検出器2の間に少なくとも1個以上の貫通孔を有した板を配置する事により、人体等から放射される赤外線エネルギーの受光量を調整する事を特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1個以上の貫通孔を有した板を用いた焦電型赤外線検出装置で、図2の様に赤外線検知領域と焦電型赤外線検出器の間に少なくとも1個以上の貫通孔を有した板を配置する事により、人体等から放射される赤外線エネルギーの受光量を調整する事が可能な焦電型赤外線検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の焦電型赤外線検出装置は、焦電型赤外線検出装置の設置場所、設置環境も限定されることなく、幅広い場所にて使用可能へ赤外線検知領域内からの放射赤外線を集光させる樹脂成型光学レンズを、前記焦電型赤外線検出器に焦点位置を合わせる形で設置する事により、設計区分化された赤外線検知領域を有するべく構築されている。
【0003】
前記樹脂成型光学レンズは一般に赤外線透過材から成る樹脂材が用いられており、例えば、一定範囲の検出対象面を複数の赤外線検出領域に分割化させる場合、凸形状体もしくはフレネル形状体の小レンズセグメントを密に集合配置した多集合型レンズとして構成され、前記樹脂成型光学レンズ部の外形状は肉薄球面形状もしくは非球面形状のものが多く使用されている。
【0004】
焦電型赤外線検出器へ具備される樹脂成型光学レンズ4は、集光レンズとして前記赤外線受光素子1との焦点距離関係を考慮して光学設計されており、赤外線検知領域はセグメントの配置により決定される。その赤外線検知領域内に侵入した、人体等から放射される赤外線を、焦電型赤外線検出器内部に配置された赤外線受光素子が感知する。
【0005】
赤外線検知領域を構築する際、凸形状体もしくはフレネル形状体の小レンズセグメントを集合配置した多集合型レンズとして構成されているが、人体等から放射された赤外線の入射エネルギー量を微調整する際はセグメント面積を調整する事で各赤外線検知領域から放射される赤外線エネルギーの受光量を微調整していた。
【0006】
また、赤外線検知領域は、幾何学的に無限遠に延びる。そのため、距離検知を行う場合は、焦電型赤外線検出装置自体に俯角を設ける事により、距離検知を行うことが主流となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願平6−143875号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の通り、人体等から放射された赤外線の入射エネルギー量を微調整する際はセグメント面積を調整する事で各赤外線検知領域から放射される赤外線エネルギーの受光量を微調整していたが、セグメント面積のみの変更では受光量の調整に限界があり困難であった。
【0009】
各赤外線検知領域から放射される赤外線エネルギーの受光量を調整する際、各セグメント面積の調整の他に、焦電型赤外線検出器内部に配置された赤外線受光素子形状もしくは、赤外線受光素子面積を変更する事で赤外線検知領域形状もしくは赤外線検知領域サイズ調整も可能である。しかし、焦電型赤外線検出器内部に配置された赤外線受光素子形状を変更する場合、全ての赤外線検知領域において赤外線検知領域形状もしくは赤外線検知領域サイズが変更となることから、赤外線検知領域毎での赤外線検知領域形状もしくは赤外線検知領域サイズを任意に変更する事は困難であった。
【0010】
参考として、図9に1つのセグメント面積比による焦電型赤外線検出器から得られる雑音出力に対する信号出力(倍率)の関係を示す。この場合、セグメント面積を小さくし赤外線検知領域から放射される赤外線エネルギーの受光量を少なくすることで焦電型赤外線検出器から得られる雑音出力に対する信号出力(倍率)はセグメント面積100%の時が4.0倍、セグメント面積30%の時が3.25倍と焦電型赤外線検出器以降の信号出力に差が無い事が分かる事から、セグメント面積を小さくすることによる微調整は困難となる。
【0011】
そのほかに、焦電型赤外線検出器から得られる信号出力の調整を行う際、焦電型赤外線検出器以降のアンプ回路部で構成されるアンプゲインを調整することも可能である。しかし、全ての赤外線検知領域から放射される赤外線エネルギーの受光量が焦電型赤外線検出器以降のアンプ回路部で構成されるアンプゲインにより調整されることから、セグメント毎での信号出力を調整する事は困難であった。
【0012】
また、従来の距離識別においては、焦電型赤外線検出装置に俯角を設け、無限遠に広がる赤外線検知領域を床面に投影させ、必要な赤外線検知領域を焦電型赤外線検出装置の俯角で決定する事が主流である。しかし、筐体の制約等で焦電型赤外線検出装置に俯角を設ける事が困難な場合、赤外線検知領域は幾何学的に無限遠に検知可能であることから、距離検知は困難である。
【0013】
更には、樹脂成型光学レンズは集光レンズとして焦電型赤外線検出器2内部に配置された赤外線受光素子との焦点距離関係を考慮して光学設計されており、前述赤外線受光素子に形成されたプラス極性側エリアとマイナス極性側エリアが樹脂成型光学レンズを介して赤外線検知領域として投影される。光学レンズ機能が無い場合、前述赤外線受光素子に形成されたプラス(マイナス)極性側エリア6−aとマイナス(プラス)極性側エリア6−bは光学レンズにて集光されることなく赤外線検知領域として投影されるため、プラス(マイナス)極性側エリア6−aとマイナス(プラス)極性側エリア6−bが重なり焦電型赤外線検出器以降の信号出力がキャンセルする問題もある。
【0014】
対策手法として、図11の様に焦電型赤外線検出器と樹脂成型光学レンズの間に遮蔽板7を使用し、プラス(マイナス)極性側エリア6−aとマイナス(プラス)極性側エリア6−bの重なりを防ぐ手法も存在するが、部品数アップ、遮蔽板挿入による工数アップと量産工程には不向きである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために本発明は、少なくとも1個以上の貫通孔を有した板を用いた焦電型赤外線検出装置で、赤外線検知領域と焦電型赤外線検出器の間に貫通孔を有した板を配置する事により、貫通孔を介して投影される赤外線検知領域を制限することで人体等から放射される赤外線エネルギーの受光量を調整する事が可能とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明による焦電型赤外線検出装置は、貫通孔を介して投影される赤外線検知領域を制限することで人体等から放射される赤外線エネルギーの受光量を調整する事が可能であることはもとより、貫通孔の個数、貫通孔サイズ、貫通孔形状によって赤外線検知領域毎での赤外線検知領域形状もしくは赤外線検知領域サイズを任意に変更する事が可能となる。
【0017】
また、貫通孔の配置によって、貫通孔を介して投影される赤外線検知領域も任意に変更することが可能であり、本焦電型赤外線検出装置の設置場所、設置環境も限定されることなく、幅広い状況にて使用可能となる。
【0018】
更に、樹脂成型光学レンズを使用しない場合、焦電型赤外線検出器中心と少なくとも1個以上の貫通孔を有した板の中心を結ぶ線付近に貫通孔を設けないことによって、焦電型赤外線検出器内部に配置された赤外線受光素子に形成されたプラス(マイナス)極性側エリア6−aとマイナス(プラス)極性側エリア6−bは重なる事はなく、焦電型赤外線検出器以降の信号出力がキャンセルことなく検知が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1に係わる焦電型赤外線検出装置を示す斜視構造図である。
【図2】本発明の実施例1に係わる焦電型赤外線検出装置の赤外線検知領域を示す図である。
【図3】本発明の実施例1に係わる樹脂成型光学レンズのみ使用した場合の赤外線検知領域を示す図である。
【図4】本発明の実施例2に係わる焦電型赤外線検出装置を示す斜視構造図である。
【図5】本発明の実施例2に係わる焦電型赤外線検出装置の赤外線検知領域を示す図である。
【図6】本発明の実施例2に係わる別の形態の焦電型赤外線検出装置の赤外線検知領域を示す図である。
【図7】本発明に係わる少なくとも1個以上の貫通孔を有した板の構造図である。
【図8】本発明に係わる別の形態の少なくとも1個以上の貫通孔を有した板の構造図である。
【図9】従来の樹脂成型光学レンズを搭載した際の、1つのセグメント面積比と焦電型赤外線検出器から得られる雑音出力に対する信号出力(倍率)の関係を示したグラフである。
【図10】貫通孔サイズを変更したときに得られる雑音出力に対する信号出力(倍率)の関係を示したグラフである。
【図11】従来の焦電型赤外線検出器内部に配置された赤外線受光素子に形成されたプラス極性側エリアとマイナス極性側エリアの重なりを防ぐ遮蔽板を搭載した図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0020】
以下、本考案について図を参照して詳細な説明を行う。
図1は、本発明の実施例1に係わる焦電型赤外線検出装置を示す斜視構造図である。赤外線受光素子1を備えた焦電型赤外線検出器2と光学レンズ機能が無い赤外線が透過可能な高密度ポリエチレンシート3−bと少なくとも1個以上の貫通孔を有する板4からなる構成となっている。
【0021】
図2は、樹脂成型光学レンズ3−aと焦電型赤外線検出器2内部に配置された赤外線受光素子との焦点距離関係より設計区分化された貫通孔を介した赤外線検出領域5−a、樹脂成型光学レンズを介した赤外線検出領域5−bが形成される。
【0022】
尚、図2にて示している貫通孔を介した赤外線検出領域5−aは、少なくとも1個以上の貫通孔を有し、人体等から放射される赤外線エネルギーの受光量を調整する事が可能な板4を装備したときの赤外線検知領域を表し、樹脂成型光学レンズを介した赤外線検出領域5−bは、焦電型赤外線検出器2と樹脂成型光学レンズ3−aによって作り出される赤外線検知領域を表す。極小赤外線検知領域を形成する場合有効であり、樹脂成型光学レンズ3−aを介して形成された赤外線検知領域をaとした時、前述板4を用いる事によって形成された赤外線検知領域サイズは1/2.5aと極小赤外線検知領域を形成することが容易に出来る。
【0023】
更には図3に示すように、樹脂成型光学レンズ3−aを介して形成される赤外線検知領域をaとし、同様の赤外線検知領域を前述板4を用いる事によって形成する場合、焦電型赤外線検出器2から樹脂成型光学レンズ3−aの距離をaとした時、前述板4を用いる事により焦電型赤外線検出器2から前述板4の距離は1/1.15aとなり、焦電型赤外線検出装置の小型化も出来る 。
図4は、本発明の実施例2に係わる焦電型赤外線検出装置を示す斜視構造図である。前述板4に、多貫通孔を設け、更には貫通孔サイズも大小様々な貫通孔を設けている。貫通孔サイズは、φ0.5〜φ3.0とすることが好ましい。
【0024】
図4に示す通り、貫通孔の個数を増やし更には貫通孔サイズも変更する事で、各赤外線検知領域から放射される赤外線エネルギーの受光量を調整する事が容易に行うことが出来る。従って、焦電型赤外線検出装置の設置場所、設置環境も限定されることなく、幅広い場所にて使用可能である。
【0025】
更には、図5に示す通り、前述の通り貫通孔サイズを任意に設ける事で、各赤外線検知領域から放射される赤外線エネルギーの受光量を調整する事が容易に行うことが出来、距離検知に対しても効果を発揮する事が出来る。前述板4と介して形成される赤外線検知領域も幾何学的に無限遠に検知可能であるが、貫通孔サイズによる各赤外線検知領域から放射される赤外線エネルギーの受光量の調整により、距離検知が可能である。
【0026】
参考として、図−10にて貫通孔サイズを変更したときに得られる雑音出力に対する信号出力(倍率)の関係を示したグラフを示す。各貫通孔サイズによる焦電型赤外線検出器からの信号出力に差が生じている事より、距離検知が可能であることを確認した。
【0027】
図6は、本発明の実施例2に係わる別の形態の焦電型赤外線検出装置の赤外線検知領域を示す図である。図5で示す通り、樹脂成型光学レンズ3−aを使用しない手法でも同様の効果が得られる。光学レンズ機能が無い赤外線が透過可能な高密度ポリエチレンシートを使用した場合でも、焦電型赤外線検出器2中心と前述板4の中心を結ぶ線上に貫通孔を設けないことによって、不感帯を形成する事が出来る。この不感帯により焦電型赤外線検出器2内部に配置された赤外線受光素子1に形成されたプラス(マイナス)極性側エリア6−aとマイナス(プラス)極性側エリア6−bは重なる事はなく、焦電型赤外線検出器以降の信号出力がキャンセルことなく検知が使用可能となる。
【0028】
図7は、貫通孔を有する板の構造図である。多数個の貫通孔を有する事で任意の赤外線検知領域を形成する事が出来、またφ0.5〜φ3.0の多サイズの貫通孔を配置する事で、各赤外線検知領域から放射される赤外線エネルギーの受光量の調整により、距離検知が可能である。尚、図7は樹脂成型光学レンズ3−aを使用しない場合に用いられ、中心部分は貫通孔と貫通孔の間に隙間を設けているが、これは図11で示す遮蔽板7と同等の効果を得る為であり、図6で示す赤外線検知領域を作り出す事が出来る。
【0029】
図8は、図7と同様に貫通孔を有する板の構造図である。尚、図8は樹脂成型光学レンズ3−aを使用する場合に用いられる。光学レンズ機能を有しているため図6と同様にプラス(マイナス)極性側エリア6−aとマイナス(プラス)極性側エリア6−bは重なる事はなく、中心部分は貫通孔を設けている。
【0030】
そのほか、前述板4を用いる事で、外的ダメージによる破損防止が出来る。例えば、前述板4の材質に金属系を使用する事で、外面から鋭利なものでダメージを加えた場合、また熱的ダメージを加えた場合でも金属系材質を使用している事、或いは貫通孔サイズがφ3max.と小さいことより、樹脂成型光学レンズ3−a或いは焦電型赤外線検出器2を外的ダメージから防ぐことが出来る。
【符号の説明】
【0031】
1 赤外線受光素子
2 焦電型赤外線検出器
3−a 樹脂成型光学レンズ
3−b 高密度ポリエチレンシート
4 貫通孔を有する板
5−a 貫通孔を介した赤外線検出領域
5−b 樹脂成型光学レンズを介した赤外線検出領域
6−a プラス(マイナス)極性側エリア
6−b マイナス(プラス)極性側エリア
7 遮蔽板
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1個以上の貫通孔を有した板を用いた焦電型赤外線検出装置で、図2の様に赤外線検知領域と焦電型赤外線検出器の間に少なくとも1個以上の貫通孔を有した板を配置する事により、人体等から放射される赤外線エネルギーの受光量を調整する事が可能な焦電型赤外線検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の焦電型赤外線検出装置は、焦電型赤外線検出装置の設置場所、設置環境も限定されることなく、幅広い場所にて使用可能へ赤外線検知領域内からの放射赤外線を集光させる樹脂成型光学レンズを、前記焦電型赤外線検出器に焦点位置を合わせる形で設置する事により、設計区分化された赤外線検知領域を有するべく構築されている。
【0003】
前記樹脂成型光学レンズは一般に赤外線透過材から成る樹脂材が用いられており、例えば、一定範囲の検出対象面を複数の赤外線検出領域に分割化させる場合、凸形状体もしくはフレネル形状体の小レンズセグメントを密に集合配置した多集合型レンズとして構成され、前記樹脂成型光学レンズ部の外形状は肉薄球面形状もしくは非球面形状のものが多く使用されている。
【0004】
焦電型赤外線検出器へ具備される樹脂成型光学レンズ4は、集光レンズとして前記赤外線受光素子1との焦点距離関係を考慮して光学設計されており、赤外線検知領域はセグメントの配置により決定される。その赤外線検知領域内に侵入した、人体等から放射される赤外線を、焦電型赤外線検出器内部に配置された赤外線受光素子が感知する。
【0005】
赤外線検知領域を構築する際、凸形状体もしくはフレネル形状体の小レンズセグメントを集合配置した多集合型レンズとして構成されているが、人体等から放射された赤外線の入射エネルギー量を微調整する際はセグメント面積を調整する事で各赤外線検知領域から放射される赤外線エネルギーの受光量を微調整していた。
【0006】
また、赤外線検知領域は、幾何学的に無限遠に延びる。そのため、距離検知を行う場合は、焦電型赤外線検出装置自体に俯角を設ける事により、距離検知を行うことが主流となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願平6−143875号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の通り、人体等から放射された赤外線の入射エネルギー量を微調整する際はセグメント面積を調整する事で各赤外線検知領域から放射される赤外線エネルギーの受光量を微調整していたが、セグメント面積のみの変更では受光量の調整に限界があり困難であった。
【0009】
各赤外線検知領域から放射される赤外線エネルギーの受光量を調整する際、各セグメント面積の調整の他に、焦電型赤外線検出器内部に配置された赤外線受光素子形状もしくは、赤外線受光素子面積を変更する事で赤外線検知領域形状もしくは赤外線検知領域サイズ調整も可能である。しかし、焦電型赤外線検出器内部に配置された赤外線受光素子形状を変更する場合、全ての赤外線検知領域において赤外線検知領域形状もしくは赤外線検知領域サイズが変更となることから、赤外線検知領域毎での赤外線検知領域形状もしくは赤外線検知領域サイズを任意に変更する事は困難であった。
【0010】
参考として、図9に1つのセグメント面積比による焦電型赤外線検出器から得られる雑音出力に対する信号出力(倍率)の関係を示す。この場合、セグメント面積を小さくし赤外線検知領域から放射される赤外線エネルギーの受光量を少なくすることで焦電型赤外線検出器から得られる雑音出力に対する信号出力(倍率)はセグメント面積100%の時が4.0倍、セグメント面積30%の時が3.25倍と焦電型赤外線検出器以降の信号出力に差が無い事が分かる事から、セグメント面積を小さくすることによる微調整は困難となる。
【0011】
そのほかに、焦電型赤外線検出器から得られる信号出力の調整を行う際、焦電型赤外線検出器以降のアンプ回路部で構成されるアンプゲインを調整することも可能である。しかし、全ての赤外線検知領域から放射される赤外線エネルギーの受光量が焦電型赤外線検出器以降のアンプ回路部で構成されるアンプゲインにより調整されることから、セグメント毎での信号出力を調整する事は困難であった。
【0012】
また、従来の距離識別においては、焦電型赤外線検出装置に俯角を設け、無限遠に広がる赤外線検知領域を床面に投影させ、必要な赤外線検知領域を焦電型赤外線検出装置の俯角で決定する事が主流である。しかし、筐体の制約等で焦電型赤外線検出装置に俯角を設ける事が困難な場合、赤外線検知領域は幾何学的に無限遠に検知可能であることから、距離検知は困難である。
【0013】
更には、樹脂成型光学レンズは集光レンズとして焦電型赤外線検出器2内部に配置された赤外線受光素子との焦点距離関係を考慮して光学設計されており、前述赤外線受光素子に形成されたプラス極性側エリアとマイナス極性側エリアが樹脂成型光学レンズを介して赤外線検知領域として投影される。光学レンズ機能が無い場合、前述赤外線受光素子に形成されたプラス(マイナス)極性側エリア6−aとマイナス(プラス)極性側エリア6−bは光学レンズにて集光されることなく赤外線検知領域として投影されるため、プラス(マイナス)極性側エリア6−aとマイナス(プラス)極性側エリア6−bが重なり焦電型赤外線検出器以降の信号出力がキャンセルする問題もある。
【0014】
対策手法として、図11の様に焦電型赤外線検出器と樹脂成型光学レンズの間に遮蔽板7を使用し、プラス(マイナス)極性側エリア6−aとマイナス(プラス)極性側エリア6−bの重なりを防ぐ手法も存在するが、部品数アップ、遮蔽板挿入による工数アップと量産工程には不向きである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために本発明は、少なくとも1個以上の貫通孔を有した板を用いた焦電型赤外線検出装置で、赤外線検知領域と焦電型赤外線検出器の間に貫通孔を有した板を配置する事により、貫通孔を介して投影される赤外線検知領域を制限することで人体等から放射される赤外線エネルギーの受光量を調整する事が可能とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明による焦電型赤外線検出装置は、貫通孔を介して投影される赤外線検知領域を制限することで人体等から放射される赤外線エネルギーの受光量を調整する事が可能であることはもとより、貫通孔の個数、貫通孔サイズ、貫通孔形状によって赤外線検知領域毎での赤外線検知領域形状もしくは赤外線検知領域サイズを任意に変更する事が可能となる。
【0017】
また、貫通孔の配置によって、貫通孔を介して投影される赤外線検知領域も任意に変更することが可能であり、本焦電型赤外線検出装置の設置場所、設置環境も限定されることなく、幅広い状況にて使用可能となる。
【0018】
更に、樹脂成型光学レンズを使用しない場合、焦電型赤外線検出器中心と少なくとも1個以上の貫通孔を有した板の中心を結ぶ線付近に貫通孔を設けないことによって、焦電型赤外線検出器内部に配置された赤外線受光素子に形成されたプラス(マイナス)極性側エリア6−aとマイナス(プラス)極性側エリア6−bは重なる事はなく、焦電型赤外線検出器以降の信号出力がキャンセルことなく検知が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1に係わる焦電型赤外線検出装置を示す斜視構造図である。
【図2】本発明の実施例1に係わる焦電型赤外線検出装置の赤外線検知領域を示す図である。
【図3】本発明の実施例1に係わる樹脂成型光学レンズのみ使用した場合の赤外線検知領域を示す図である。
【図4】本発明の実施例2に係わる焦電型赤外線検出装置を示す斜視構造図である。
【図5】本発明の実施例2に係わる焦電型赤外線検出装置の赤外線検知領域を示す図である。
【図6】本発明の実施例2に係わる別の形態の焦電型赤外線検出装置の赤外線検知領域を示す図である。
【図7】本発明に係わる少なくとも1個以上の貫通孔を有した板の構造図である。
【図8】本発明に係わる別の形態の少なくとも1個以上の貫通孔を有した板の構造図である。
【図9】従来の樹脂成型光学レンズを搭載した際の、1つのセグメント面積比と焦電型赤外線検出器から得られる雑音出力に対する信号出力(倍率)の関係を示したグラフである。
【図10】貫通孔サイズを変更したときに得られる雑音出力に対する信号出力(倍率)の関係を示したグラフである。
【図11】従来の焦電型赤外線検出器内部に配置された赤外線受光素子に形成されたプラス極性側エリアとマイナス極性側エリアの重なりを防ぐ遮蔽板を搭載した図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0020】
以下、本考案について図を参照して詳細な説明を行う。
図1は、本発明の実施例1に係わる焦電型赤外線検出装置を示す斜視構造図である。赤外線受光素子1を備えた焦電型赤外線検出器2と光学レンズ機能が無い赤外線が透過可能な高密度ポリエチレンシート3−bと少なくとも1個以上の貫通孔を有する板4からなる構成となっている。
【0021】
図2は、樹脂成型光学レンズ3−aと焦電型赤外線検出器2内部に配置された赤外線受光素子との焦点距離関係より設計区分化された貫通孔を介した赤外線検出領域5−a、樹脂成型光学レンズを介した赤外線検出領域5−bが形成される。
【0022】
尚、図2にて示している貫通孔を介した赤外線検出領域5−aは、少なくとも1個以上の貫通孔を有し、人体等から放射される赤外線エネルギーの受光量を調整する事が可能な板4を装備したときの赤外線検知領域を表し、樹脂成型光学レンズを介した赤外線検出領域5−bは、焦電型赤外線検出器2と樹脂成型光学レンズ3−aによって作り出される赤外線検知領域を表す。極小赤外線検知領域を形成する場合有効であり、樹脂成型光学レンズ3−aを介して形成された赤外線検知領域をaとした時、前述板4を用いる事によって形成された赤外線検知領域サイズは1/2.5aと極小赤外線検知領域を形成することが容易に出来る。
【0023】
更には図3に示すように、樹脂成型光学レンズ3−aを介して形成される赤外線検知領域をaとし、同様の赤外線検知領域を前述板4を用いる事によって形成する場合、焦電型赤外線検出器2から樹脂成型光学レンズ3−aの距離をaとした時、前述板4を用いる事により焦電型赤外線検出器2から前述板4の距離は1/1.15aとなり、焦電型赤外線検出装置の小型化も出来る 。
図4は、本発明の実施例2に係わる焦電型赤外線検出装置を示す斜視構造図である。前述板4に、多貫通孔を設け、更には貫通孔サイズも大小様々な貫通孔を設けている。貫通孔サイズは、φ0.5〜φ3.0とすることが好ましい。
【0024】
図4に示す通り、貫通孔の個数を増やし更には貫通孔サイズも変更する事で、各赤外線検知領域から放射される赤外線エネルギーの受光量を調整する事が容易に行うことが出来る。従って、焦電型赤外線検出装置の設置場所、設置環境も限定されることなく、幅広い場所にて使用可能である。
【0025】
更には、図5に示す通り、前述の通り貫通孔サイズを任意に設ける事で、各赤外線検知領域から放射される赤外線エネルギーの受光量を調整する事が容易に行うことが出来、距離検知に対しても効果を発揮する事が出来る。前述板4と介して形成される赤外線検知領域も幾何学的に無限遠に検知可能であるが、貫通孔サイズによる各赤外線検知領域から放射される赤外線エネルギーの受光量の調整により、距離検知が可能である。
【0026】
参考として、図−10にて貫通孔サイズを変更したときに得られる雑音出力に対する信号出力(倍率)の関係を示したグラフを示す。各貫通孔サイズによる焦電型赤外線検出器からの信号出力に差が生じている事より、距離検知が可能であることを確認した。
【0027】
図6は、本発明の実施例2に係わる別の形態の焦電型赤外線検出装置の赤外線検知領域を示す図である。図5で示す通り、樹脂成型光学レンズ3−aを使用しない手法でも同様の効果が得られる。光学レンズ機能が無い赤外線が透過可能な高密度ポリエチレンシートを使用した場合でも、焦電型赤外線検出器2中心と前述板4の中心を結ぶ線上に貫通孔を設けないことによって、不感帯を形成する事が出来る。この不感帯により焦電型赤外線検出器2内部に配置された赤外線受光素子1に形成されたプラス(マイナス)極性側エリア6−aとマイナス(プラス)極性側エリア6−bは重なる事はなく、焦電型赤外線検出器以降の信号出力がキャンセルことなく検知が使用可能となる。
【0028】
図7は、貫通孔を有する板の構造図である。多数個の貫通孔を有する事で任意の赤外線検知領域を形成する事が出来、またφ0.5〜φ3.0の多サイズの貫通孔を配置する事で、各赤外線検知領域から放射される赤外線エネルギーの受光量の調整により、距離検知が可能である。尚、図7は樹脂成型光学レンズ3−aを使用しない場合に用いられ、中心部分は貫通孔と貫通孔の間に隙間を設けているが、これは図11で示す遮蔽板7と同等の効果を得る為であり、図6で示す赤外線検知領域を作り出す事が出来る。
【0029】
図8は、図7と同様に貫通孔を有する板の構造図である。尚、図8は樹脂成型光学レンズ3−aを使用する場合に用いられる。光学レンズ機能を有しているため図6と同様にプラス(マイナス)極性側エリア6−aとマイナス(プラス)極性側エリア6−bは重なる事はなく、中心部分は貫通孔を設けている。
【0030】
そのほか、前述板4を用いる事で、外的ダメージによる破損防止が出来る。例えば、前述板4の材質に金属系を使用する事で、外面から鋭利なものでダメージを加えた場合、また熱的ダメージを加えた場合でも金属系材質を使用している事、或いは貫通孔サイズがφ3max.と小さいことより、樹脂成型光学レンズ3−a或いは焦電型赤外線検出器2を外的ダメージから防ぐことが出来る。
【符号の説明】
【0031】
1 赤外線受光素子
2 焦電型赤外線検出器
3−a 樹脂成型光学レンズ
3−b 高密度ポリエチレンシート
4 貫通孔を有する板
5−a 貫通孔を介した赤外線検出領域
5−b 樹脂成型光学レンズを介した赤外線検出領域
6−a プラス(マイナス)極性側エリア
6−b マイナス(プラス)極性側エリア
7 遮蔽板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個以上の貫通孔を有した板を検知領域と焦電型赤外線検出器の間に配置し、貫通孔を介して投影される検知領域を制限することで、人体等から放射される赤外線エネルギーの受光量を調整する焦電型赤外線検出装置。
【請求項2】
前述の板に有している貫通孔に関し、貫通孔の個数と貫通孔サイズによって、人体等から放射される赤外線エネルギーの受光量を調整する請求項1に記載された焦電型赤外線検出装置。
【請求項1】
少なくとも1個以上の貫通孔を有した板を検知領域と焦電型赤外線検出器の間に配置し、貫通孔を介して投影される検知領域を制限することで、人体等から放射される赤外線エネルギーの受光量を調整する焦電型赤外線検出装置。
【請求項2】
前述の板に有している貫通孔に関し、貫通孔の個数と貫通孔サイズによって、人体等から放射される赤外線エネルギーの受光量を調整する請求項1に記載された焦電型赤外線検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−44586(P2013−44586A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181229(P2011−181229)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000229081)日本セラミック株式会社 (129)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000229081)日本セラミック株式会社 (129)
【Fターム(参考)】
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