説明

焼き菓子製造装置

【課題】気体吹き付けにより生地に直接触れることなく厚さが均一の薄い皮を衛生的に製造することができる焼き菓子製造装置を提供する。
【解決手段】2分した焼き菓子の一方の表面形状をした成形凹部4を有する上焼き型2および他方の表面形状をした成形凹部4を有する下焼き型2が上下に重ね合わせ可能に接続された焼き型1を移動させながら、上焼き型2および下焼き型3のそれぞれの成形凹部4に生地を供給し、下焼き型2の生地の上に餡を載せ、上焼き型2または下焼き型3のいずれか一方を回転させて生地の間に餡を挟んで形成された成形体を焼き型1で焼き上げる焼き菓子製造装置において成形凹部4に供給された生地に気体を吹き付けて生地を広げて薄くする気体吹き付け装置が、成形凹部4に生地が供給された後に移動した位置にある上焼き型2および下焼き型3のそれぞれの上方に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サクッとした食感を有する薄い皮で餡を包んだ鯛焼き、回転焼きなどの焼き菓子の製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鯛焼き、人形焼き、回転焼きなどの焼き菓子製造方法は、焼き型に生地を入れ、餡を挟んで焼き上げる。例えば、鯛焼きの場合、鯛の形が彫られた下型に小麦粉等を溶かした生地を流し込み、その上に餡を載せ、さらに生地を流して餡を包んだ後、上型で覆って二つの型を合わせて下方から加熱し、上下の焼き型を回転させて焼き上げていく(特許文献1,2参照)。
【0003】
前記従来の鯛焼きでは、皮が厚く(約6mm〜8mm)、全体がふっくらと形成され、餡を包む皮が軟らかくスポンジケーキのような食感をしている。この皮が厚く軟らかい鯛焼きに対して、サクッとした薄い皮(約2mm〜3mm)で餡をつつんだ鯛焼きも賞味されている。
【0004】
薄い皮の鯛焼きは、皮が厚い鯛焼きを製造する従来の鯛焼き製造装置をそのまま使っても製造できないため、もっぱら手作業により、焼き型に生地を入れ、ステンレスのヘラで焼き型の底から上方へ延ばして薄くし、その上に餡を載せ、その上に生地をかけて覆った後、焼き型を被せて焼き上げていた。
【0005】
皮が薄い焼き菓子を手作業によらない製造装置として、例えば、特許文献3に、外面側生地焼成板の整形凹部に生地が供給され、整形凹部に内面側生地焼成板の整形突部が入れ込まれ、生地が圧搾されて薄厚に整形され、整形された生地が外面側及び内面側から焼き上げられ、焼き上げられた皮部の間に餡類を挟んで一体にする焼き菓子製造装置が提案されている。
【特許文献1】特開平10−56942号公報
【特許文献2】特開2005−278622号公報
【特許文献3】特開2005−102624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
薄い皮の焼き菓子を手作業で作る場合、へらを用いて皮を均等な厚さに薄くするのに手間もかかるため、焼き菓子を効率よく大量に製造することができなかった。さらに、生地を薄くしようとするあまりヘラで何度も擦るために極薄の部分が発生して餡が外に出たり、餡が透けて見えたりして商品価値がなくなり廃棄処分せざるを得ない場合があり、材料の無駄があった。また、逆に餡が見えないようにするために皮が厚めになってサックとした食感が得られない場合があって品質にばらつきがあった。さらに、生地の延ばし過ぎにより生地が型からはみ出してバリが形成されやすく、そのためにバリ取り作業をしなくてはならない場合があった。
【0007】
また、前記特許文献3の焼き菓子製造装置では、圧搾の際に整形突部が生地に接触して付着すると、衛生上の問題があるために付着した生地の除去などの対策を講じなければならない。また、型の内面が細かく複雑な凹凸をしている場合には、成形凹部と成形凸部が正確に位置決めされないと、生地が全体にわたり均等な厚さになりにくいという欠点がある。
【0008】
そこで、本発明は、気体吹き付けにより生地に直接触れることなく厚さが均一の薄い皮を衛生的に製造することができる焼き菓子製造装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の焼き菓子製造装置は、2分した焼き菓子の一方の表面形状をした成形凹部を有する第1焼き型および他方の表面形状をした成形凹部を有する第2焼き型が上下に重ね合わせ可能に接続された焼き型を移動させながら、前記第1焼き型および第2焼き型のそれぞれの成形凹部に生地を供給し、第1焼き型の生地の上に餡を載せ、第1焼き型と第2焼き型とを上下に重ねて生地の間に餡を挟んで形成された成形体を焼き上げる焼き菓子製造装置において、前記成形凹部に供給された生地に気体を吹き付けて生地を広げて薄くする気体吹き付け装置が、前記成形凹部に生地が供給された後に移動した位置にある第2焼き型および第1焼き型のそれぞれの上方に配置されていることを特徴とする。
【0010】
前記気体吹き付け装置は、第1焼き型および第2焼き型を覆うフードに、生地に気体を吹き付ける気体吹き付けノズルおよび、フード内に吹き込まれた気体を排気する排気口を備えた構成にすることができる。
【0011】
焼き型は、第1焼き型および第2焼き型のそれぞれの成形凹部に生地を供給し、第1焼き型の生地の上に餡を載せ、第1焼き型と第2焼き型とを上下に重ねて生地の間に餡を挟んで形成された成形体を形成する成形ラインおよび、成形体を回転させて全体を焼き上げていく焼成ラインに並べられ、順送りにより成形ラインから焼成ラインへ送られ、再び成形ラインへ戻されて循環させる。
【0012】
成形ラインには、焼き型の成形凹部に生地を供給する生地供給装置、生地供給装置から成形凹部に供給された生地の上に餡を供給する餡供給装置を配置する。また、生地供給装置は第1焼き型および第2焼き型に生地を供給する供給配管を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の焼き菓子製造装置では、気体の吹き付けにより、適量の生地が予熱状態にある焼き型の下から周壁に上昇して貼り付いて薄い皮を形成することができるので、均等な薄い皮を形成することができる。その結果、品質が一定した焼き菓子を製造することができるので、生地や製品の廃棄処分がなくなって材料の無駄がなくなる。
【0014】
また、本発明の焼き菓子製造装置では、気体の吹きつけであるために生地が付着して残る部分がないので、生地の付着に伴う衛生上の問題がなくなる。
【0015】
また、本発明の焼き菓子製造装置は、手作業に比べて、熟練を要することなく大量に製造できるので、省エネを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0017】
図1(a)は本発明の焼き菓子製造装置の平面図、(b)は正面図、(c)は側面図、図2は本発明の成形ラインおよび焼成ラインの説明図、図3は本発明で使用する焼き型を示し、(a)は図2のA−A線矢視図、(b)はB−B線直前の矢視図、図4は本発明で使用する生地供給装置の生地供給配管の配置を示す図、図5は本発明で使用する気体吹き付けノズルの配置を示す図である。
【0018】
図1において、本実施例の焼き菓子製造装置は、成形ラインAと焼成ラインBが配置されている。成形ラインAは焼き型1の第1焼き型2と第2焼き型3に皮となる生地を供給し、皮の上に餡を供給し、第1焼き型2と第2焼き型3を上下に重ねて生地の間に餡を挟んで一体にして成形体を形成する。
【0019】
焼成ラインBは第1焼き型2と第2焼き型3を重ねた焼き型1を回転させて成形体の全体を焼き上げていく。成形ラインAおよび焼成ラインBに並べられた焼き型1は、順送りされ、成形ラインAから焼成ラインBへ送られ、再び成形ラインAへ戻されて循環する。焼き型1は、例えば、プッシャーやスプロケットなどにより玉突き方式で押して順送りする機構、あるいはコンベヤに載せて搬送するなど公知の搬送機構により搬送する。
【0020】
焼成ラインBでは、焼き型1は下方からガスバーナなどの加熱手段により焼き型内温度が約130℃以上程度になるように加熱され、薄い皮が焼成されていく。
【0021】
図2、図3に示すように、焼き型1は第1焼き型2と第2焼き型3からなる。第2焼き型2および第1焼き型3は、いずれか一方の焼き型2または3を起こして180度回転させることにより上下に重ね合わせ可能に回転軸1aにより接続されている。第1焼き型2と第2焼き型3の内面には鯛や人形などの焼き菓子2分した表面形状が彫られた成形凹部4が形成されている。第1焼き型2の成形凹部4は皮Kの上に餡Sを入れるので、餡の供給時に餡がこぼれないようにするため、第2焼き型3に比べて深く形成されている。
【0022】
成形ラインAには、焼き型1の移動方向に沿って、第1焼き型2および第2焼き型3に生地Kを供給するための生地供給装置5および、黒餡、白餡あるいはカスタード餡などの餡Sを供給する餡供給装置6,7,8がそれぞれ配置されている。黒餡、白餡またはカスタード餡は、選択した餡に従って餡供給装置6,7または8から供給される。
【0023】
生地が供給される第1焼き型2と第2焼き型3は離れているので、生地供給装置5から第1焼き型2と第2焼き型3のそれぞれに生地供給配管9,10が配置されており、第1焼き型2と第2焼き型3へ生地が供給される。図4に示すように、生地供給配管9,10は、焼き菓子の大きさや成形凹部4の形状に応じて複数本配置されている(図4ではそれぞれ4本の生地供給配管9a,9bが配置されている)。生地の供給量は、制御装置により弁の開閉を制御して行う。
【0024】
第1焼き型2と第2焼き型3のそれぞれの成形凹部4に供給された生地を薄くするため、図5に示すように、生地が供給されて移動した第2焼き型2と第1焼き型3の位置に、第1焼き型2と第2焼き型3の上に気体吹き付け装置10が配置されている。
【0025】
気体吹き付け装置10は、第1焼き型2と第2焼き型3を覆うフード11を備え、フード11は第1焼き型2と第2焼き型3の移動を妨げない範囲でできる限り近接して配置する。フード11には、第1焼き型2と第2焼き型3のそれぞれの成形凹部4に供給された生地に気体を吹き付ける気体吹き付けノズル12と、吹き付けられた気体を排気により逃がす排気口13が設けられる。気体吹き付けノズル12と排気口13はそれぞれ複数設けられ、気体吹き付けノズル12から生地に吹き付けられ生地を広げて薄くし、反射した気体は排気口13から排気される。生地は、気体吹き付けにより、余熱状態にある焼き型2,3の周壁に上昇して貼り付いて薄い皮が形成される。
【0026】
気体吹き付けノズル12から生地に吹き付ける気体の圧力を調整することにより、広がる生地の厚みを調整することが可能となる。
【0027】
第1焼き型2で薄く広げられた生地の上に、黒餡、白餡またはカスタード餡のうち、選択した餡が餡供給装置6,7または8から供給される。
【0028】
第1焼き型2または第2焼き型3を回転装置で起こして180度回転させて上下に重ね合わせ、生地の間に餡を挟んで一体にして成形体が形成される。
【0029】
次に本発明の焼き菓子製造装置の使用方法を主に図2を用いて説明する。
【0030】
(1)成形ラインAの搬入位置S1で焼き型1から焼き菓子を取り出し、次の移動位置S2にある第1焼き型2および第2焼き型3の成形凹部4の表面を、焼き上がりの焼き菓子が焼き型1から離れ易くするため油拭きする。
【0031】
(2)油拭き後、次の位置S3に移動した第1焼き型2の成型凹部4に、小麦粉、調味料などを水に溶かした生地を生地供給装置5から生地供給配管9aを通して供給する。
【0032】
(3)生地を供給後に移動した位置S4で気体吹き込み装置のフード11の下に移動した第1焼き型2の成型凹部4の生地に向けて気体吹き付けノズル12から気体を吹き付けて生地を周囲に広げて薄くした生地(通常、約2mm〜3mm)を形成する。
【0033】
(4)薄い生地を形成後に移動した位置S5で餡供給装置から第1焼き型2の薄くした生地の上に黒餡Sが供給される。
【0034】
(5)次に第2焼き型3の移動位置S6で、第2焼き型3の成型凹部4に生地供給装置の生地供給配管9bを通して生地を供給する。なお、図2において、第2焼き型3の成型凹部4へ生地を供給する位置S6は、第1焼き型2に黒餡Kが供給されてから3回先に移動した位置になっているが、同時に供給すると、生地が焼き上がってくっつかない場合があるので、位置をずらせて生地供給配管9bを配置しているためである。
【0035】
(6)第2焼き型3への生地の供給後、その次の位置S7で気体吹き込み装置のフード11の下に移動した第2焼き型3の生地に向けて気体吹き付けノズル12から気体を吹き付けて生地を広げて薄くする。
【0036】
(7)次の移動位置S8で第2焼き型3が回転して第1焼き型2の上に重なり、生地の間に黒餡を挟んで一体となった成形体が形成される。第2焼き型3の回転は、第2焼き型3の移動に伴い、第2焼き型3を下から持ち上げて回転させる構造にしておく。
【0037】
(8)次の移動位置S9にある上下に重ねた焼き型1を回転させる。回転させることにより、第1焼き型2の皮が第2焼き型3の皮より焼き時間が長くなって裏と表の焼き上がりが不均一になるのを防ぐ。
【0038】
(9)回転後、成形ラインAの搬出位置S10から焼き型2を焼成ラインBへ移動させる。
【0039】
(10)焼成ラインで重なった焼き型1を押していくとともに、回転させながら成形体の上下を均等に焼き上げていく。焼き型1の反転は焼き型1の移動に伴い、焼き型1を下から持ち上げて回転させる構造にしておく。
【0040】
(11)焼成ラインBの搬出位置S11から焼き型1を成形ラインAの搬入位置S0に移動させる。
【0041】
(12)成形ラインの搬入位置S0で第2焼き型3を回転させて開き、焼き上がった焼き菓子を取り出す。
【0042】
以上の(1)〜(12)の動作を繰り返して焼き菓子を製造する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】(a)は本発明の焼き菓子製造装置の平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図2】本発明の焼き菓子の製造工程の説明図である。
【図3】本発明で使用する焼き型を示し、(a)は図2のA−A線矢視図、(b)はB−B線直前の矢視図である。
【図4】本発明で使用する生地供給装置の生地供給配管の配置を示す図である。
【図5】本発明で使用する気体吹き付けノズルの配置を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1:焼き型
1a:回転軸
2:第1焼き型
3:第2焼き型
4:成形凹部
5:生地供給装置
6:餡供給装置(黒餡)
7:餡供給装置(白餡)
8:餡供給装置(カスタード餡)
9a,9b:生地供給配管
10:気体吹き付け装置
11:フード
12:気体吹き付けノズル
13:排気口
A:成形ライン
B:焼成ライン
K:皮
S:餡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2分した焼き菓子の一方の表面形状をした成形凹部を有する第1焼き型および他方の表面形状をした成形凹部を有する第2焼き型が上下に重ね合わせ可能に接続された焼き型を移動させながら、前記第1焼き型および第2焼き型のそれぞれの成形凹部に生地を供給し、第1焼き型の生地の上に餡を載せ、第1焼き型と第2焼き型とを上下に重ねて生地の間に餡を挟んで形成された成形体を焼き上げる焼き菓子製造装置において、
前記成形凹部に供給された生地に気体を吹き付けて生地を広げて薄くする気体吹き付け装置が、前記成形凹部に生地が供給された後に移動した位置にある第2焼き型および第1焼き型のそれぞれの上方に配置されていることを特徴とする焼き菓子製造装置。
【請求項2】
気体吹き付け装置が、第1焼き型および第2焼き型を覆うフードに、生地に気体を吹き付ける気体吹き付けノズルおよび、フード内に吹き込まれた気体を排気する排気口を備えたことを特徴とする請求項1記載の焼き菓子装置。
【請求項3】
焼き型が、第1焼き型および第2焼き型のそれぞれの成形凹部に生地を供給し、第1焼き型の生地の上に餡を載せ、第1焼き型と第2焼き型とを上下に重ねて生地の間に餡を挟んで形成された成形体を形成する成形ラインおよび、成形体を回転させて全体を焼き上げていく焼成ラインに並べられ、順送りにより成形ラインから焼成ラインへ送られ、再び成形ラインへ戻されて循環することを特徴とする請求項1または2に記載の焼き菓子製造装置。
【請求項4】
成形ラインに焼き型の成形凹部に生地を供給する生地供給装置、生地供給装置から成形凹部に供給された生地の上に餡を供給する餡供給装置を備えたことを特徴とする請求項3に記載の焼き菓子製造装置。
【請求項5】
生地供給装置が第1焼き型および第2焼き型に生地を供給する供給配管を備えていることを特徴とする請求項4に記載の焼き菓子製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−35486(P2010−35486A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202189(P2008−202189)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(508236767)株式会社 天下鯛焼本舗 (1)
【Fターム(参考)】