説明

焼損保護回路を備えた加熱装置

【課題】加熱装置における過熱焼損を防止する手段を提供する。
【解決手段】加熱装置の温度制御とヒータ素子の焼損防止のために過大温度保護とを行う温度感知制御装置を有する加熱装置を提供する。温度制御装置はヒータ素子への入口に位置づけられた入口温度感知組立体と、ヒータ素子の出口端に位置づけられた出口熱電対を有し、出口熱電対は加熱装置の温度を制御し、過大温度からの保護を行う。入口温度感知組立体はヒータ素子の焼損に導くおそれのある低又は無空気流状態を検出するのに使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は焼損保護回路を備えた加熱装置に関し、2004年10月29日出願の米国予備出願第60/522705号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
標準的な熱風ヒータは、特に低又は無空気流の場合に急速に過熱してヒータ素子を焼損するに至ることがある。過熱状態で起きる素子の損傷を防ぐための従来の試みは、熱電対を素子巻き線に直接付設し、或いはサーミスタを素子の予熱部に配置し、或いは光学センサを使用して素子温度を検出するものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はこのような過熱からヒータ素子を保護するための方法、過熱を防止する制御装置を備えた加熱装置、及びかかる制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の加熱装置は、温度制御と焼損から素子を保護するための過熱温度保護の両方を兼ねることができる温度制御装置を有する。温度制御装置はヒータ素子への入口に位置した入口温度感知組立体と、ヒータ素子の出口に位置した出口熱電対とを有する。出口熱電対はヒータ温度を制御し過熱保護を行う。入口温度感知組立体はヒータ素子の破損の原因となる低又は無空気流状態を検出するのに使用される。
【0005】
本発明の1実施形態によれば、加熱装置は単相電源に対してセラミック管中に単一素子巻き線を設けた形態を有する。他の実施形態では加熱装置は高電力の単層又は三相電源に対して複数のセラミック管内に複数の平行な素子巻き線より成る多重ヒータ素子を設けた形態を有する。好ましくは多重ヒータ素子の実施例では6個のヒータ素子を有する。しかし、ユーザの要求に適するように他の数のヒータ素子を使用しても構わない。
【実施例】
【0006】
本発明の構成並びに目的及び作用及び能力をより良く理解するために添付図面を参照して実施例を詳しく説明する。
図1〜2には本発明の好ましい実施例による単一素子加熱装置1の分解図が記載されている。加熱装置1はヒータハウジング3と、電力供給部及び空気入口接続部を有するベース9を含んでいる。単一ヒータ素子8がヒータハウジング3内に配置されている。ヒータ素子8はセラミック管12内に収容された素子巻き線5を有する。加熱装置に対する温度制御装置は出口熱電対11と入口温度感知組立体7を有する。熱電対11はヒータ素子8の出口14近くでセラミック管12内に配置されている。この配置は図2及び10から良く理解できる。好ましくはスロット51がセラミック管12に切り込まれ、底に熱電対は素子巻き線に近接して配置できる。この位置に配置された熱電対はヒータハウジングの出口19に配置される熱電対よりも速い応答を行う。このような速応答性は速応答性のヒータ素子巻き線に必要である。熱電対の速応答性がなければ、ヒータ素子巻き線は温度の上昇に応答する前に過熱する可能性がある。速応答性の加熱装置は、加熱装置の時定数が熱電対の時定数と同等か又はそれより速い(短い)時定数を有する装置である。時定数は空気流、加熱装置の電力、及び設定温度に大きく依存する。応答時間は一般に熱電対及びヒータ素子の両者に対して5〜15秒である。熱電対ワイヤの寸法は応答時間とワイヤ強度を最適にするように選定すべきである。好ましくは熱電対ワイヤの直径は約0.5mmである。より太いワイヤは応答時間が遅くなり、より細いワイヤは強度が低くなる。
【0007】
出口熱電対は主として最大出口温度を制限するために使用される温度表示を与えることを意図している。これにより加熱装置の故障を起こす過熱動作状態を防ぐ。この保護はこの熱電対を単純なリレー出力温度制御器に接続して加熱装置の故障を生じる過熱状態が生じる前に電力を切り離すことにより達成される。出口熱電対はまた加熱装置の出口温度を制御するためにも使用される。オペレータは温度制御器の最高温度をセットすることができる。この熱電対は又焼損保護を与える温度制御器の警報状態を起動するためにも使用できる。温度制御回路の例は図7に示されている。
【0008】
入口熱電対21を含む入口温度感知組立体7はヒータ素子8の入口16に配置されている。図4を参照するに、入口熱電対21は抵抗ワイヤのコイル25の内部でセラミック支持体27に取り付けられている。リード線S2+、S2−により電気接続が行われる。好ましくは入口温度感知組立体は、図3と図5に示したようにヒータ素子8の中心軸線に対して90度の向きに配置されている。温度制御装置の部材は図6にヒータ素子8に関連づけて示されている。リード線S1+、S1−はヒータ素子8のセラミック管12に沿って長さ方向に延長し、出口熱電対11への電気接続を行っている。ヒータ素子8及び入口温度感知組立体7のコイル25への電力はリード線L1、L2により与えられる。
【0009】
図7において、電力は回路遮断器からL1、L2に供給される。Gは接地である。交流電力は回路の片側から常閉接点である第1の固体リレー(VAC側)ヒータに流れる。ヒータ側から熱電対へのリード線S1+、S1−は出口温度制御器TC+、TC−に接続される。出口温度が設定限界を超えると、警報が起動され、そして第2の固体リレー(右側)にDCパルスが送られ、ヒータへの交流電力回路(L2)が遮断される。同様に熱電対のリード線S2+、S2−が入口温度制御器に接続される。入口温度が設定限界を超えるとDCパルスが第1の固体リレーに送られ、ヒータへの交流電力が遮断される。こうしていずれかの温度限界を超えるとヒータへの交流電力が遮断される。
【0010】
入口熱電対21の作用は低又は無空気流状態で加熱装置を焼損から保護することである。ヒータ素子8を流れる空気流量が減少すると、出口熱電対11がヒータ素子の温度を正確に監視する能力は大幅に減少する。無空気流の状態では出口熱電対11がヒータ素子の温度を検出することができなくなり、ヒータ素子の焼損に至る。入口熱電対21をコイル25の内部に設けることにより、空気流が遅くなり或いは停止したときに温度上昇する領域が生じる。正常動作中には空気はコイルを流通する。
入口熱電対21をコイル25の内部に取り付けることにより、コイルと入口熱電対の組み合わせは加熱装置の向きとは無関係に動作することができる。コイルは低出力に設計されているので、コイル内部の温度は正常動作条件ではわずかに上昇するだけである。
空気流が少ないか又は存在しない場合、コイル内部の空気は加熱され、コイル内の入口熱電対21は温度の増加を検出する。入口熱電対からの出力はコイル内部の温度を制限するために使用される。これにより低又は無空気流状態でヒータ素子の焼損を防止する。この保護は入口熱電対を図7に示した過大温度制御器などに接続することにより達成される。温度制御器は過大温度状態がヒータ素子8の入口又は出口で検出されたときに直流パルスを送ってそれぞれの固体状態リレー(SSR)を作動する。これにより加熱装置への入力電力は遮断されてヒータ素子の焼損を防ぐ。
【0011】
ヒータ素子の入口温度は当然出口温度よりも低い。好ましい実施例では入口温度感知組立体の内部の温度は約300F(149℃)であり、出口熱電対の個所の温度は約1400F(760℃)であるのがよい。これらの温度は加熱装置の構造部材やヒータ素子の変動、過大温度からの保護の程度等に依存する。好ましくは出口熱電対はK型である。入口温度ははるかに低いので入口熱電対はJまたはK型である。
通常の動作では、ある程度の行き過ぎ(オーバシュート)があるが、一般の使用では入口熱電対の個所の最高温度は約400F(204℃)である。K型熱電対を使用して入口温度及び出口温度を監視すると、電子制御回路をセットするのが容易である。
【0012】
図8及び図9は本発明の加熱装置の他の実施例を示す。この加熱装置40は6個のヒータ8を有する。ここでも入口温度感知組立体7はヒータ素子の入口端に配置され、これらのヒータ素子の中の1つだけが出口熱電対11に嵌合している。
【0013】
以上により現在のところ好ましいと思われる本発明の実施例を説明したが、本発明の範囲内で多くの変形又は修正が可能なことは当業者には明かであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の単一素子加熱装置の分解図である。
【図2】図1の単一素子加熱装置の断面図である。
【図3】図1の単一素子加熱装置の出口端の端面図である。
【図4】図1の入口温度感知組立体を例示する図である。
【図5】図1の入口温度感知組立体とヒータ素子の空間的な関係を加熱装置の入口端から見た図である。
【図6】図1の単一素子加熱装置の温度制御装置の配線図である。
【図7】本発明の加熱装置の温度制御回路を例示する概念図である。
【図8】本発明の6素子加熱装置の分解図である。
【図9】本発明の6素子加熱装置の組み立て図である。
【図10】セラミック管と出口熱電対の部分図である。
【符号の説明】
【0015】
1 加熱装置
3 ヒータハウジング
5 素子巻き線
7 入口温度感知組立体
8 ヒータ素子
9 ベース
11 出口熱電対
12 セラミック管
14 出口
16 入口
19 ヒータハウジングの出口
21 入口熱電対
25 コイル
27 セラミック支持体
40 加熱装置
51 スロット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度制御装置とヒータハウジングに収納されたヒータ素子とから構成され、前記温度制御装置は入口温度感知組立体と出口熱電対を含み、前記出口熱電対は前記ヒータ素子の出口端に配置され、前記入口温度感知組立体は前記ヒータ素子の入口端に配置され、前記入口温度感知組立体は抵抗性コイルと該コイル内に配置された入口熱電対とを有する、加熱装置。
【請求項2】
前記入口熱電対及び出口熱電対は、最高温度条件が感知されたときに前記ヒータ素子への電源を遮断するリレーを作動する温度制御器をそれぞれ有する請求項1の加熱装置。
【請求項3】
前記ヒータ素子と前記抵抗性コイルは直列に接続されている請求項1の加熱装置。
【請求項4】
前記抵抗性コイルはセラミック支持体の周りに巻装されている請求項1の加熱装置。
【請求項5】
前記ヒータ素子は中心軸線を有し、前記入口温度感知組立体は前記ヒータ素子の中心軸線に対して90度の角度に配置されている請求項1の加熱装置。
【請求項6】
前記ヒータ素子は中心軸線を有し、前記入口温度感知組立体は前記ヒータ素子の中央軸線から外れた位置に配置されている請求項1の加熱装置。
【請求項7】
前記両熱電対及びヒータ素子は5〜15秒の応答時間を有する請求項1の加熱装置。
【請求項8】
前記ヒータ素子は、素子巻き線を収容するセラミック管であって一端に前記出口熱電対を受けるスロットを備えているものを有する請求項1の加熱装置。
【請求項9】
温度制御装置とヒータハウジングに収納されたヒータ素子とから構成され、前記温度制御装置は入口温度感知組立体と出口熱電対を含み、前記出口熱電対は前記ヒータ素子の出口端に配置され、前記入口温度感知組立体は前記ヒータ素子の入口端に配置され、前記入口温度感知組立体は低又は無空気流状態を検出し、前記出口熱電対は前記ヒータ素子の出口温度を検出するように構成されている、加熱装置。
【請求項10】
温度制御装置とヒータハウジングに収納したヒータ素子とから構成され、
前記ヒータ素子は中心軸線を有すると共に素子巻き線を収容するセラミック管を有し、
前記温度制御装置は入口温度感知組立体と出口熱電対を含み、
前記出口熱電対は、前記ヒータ素子の出口端に前記素子巻き線に近接して配置され、
前記入口温度感知組立体は前記ヒータ素子の入口端に前記中心軸線から外れた状態で配置され、
前記入口温度感知組立体はセラミック支持体の周りに巻かれた抵抗性コイルと、前記コイルの内部に配置された入口熱電対を有している、加熱装置。
【請求項11】
ヒータ素子を有する加熱装置のための温度制御装置において、前記温度制御装置は、前記ヒータ素子の出口端に配置された出口熱電対と、前記ヒータ素子の入口端に配置された入口温度感知組立体とからなり、前記入口温度感知組立体は加熱された入口熱電対を有し、前記入口熱電対及び前記出口熱電対は、最高温度条件が感知されたときに前記ヒータ素子への電源を遮断するリレーを作動する温度制御器をそれぞれ有する温度制御装置。
【請求項12】
前記入口熱電対は抵抗性コイル内に配置されている請求項11の温度制御装置。
【請求項13】
前記入口熱電対は低空気流又は無空気流状態を検出し、前記出口熱電対は前記ヒータ素子の出口温度を検出するように構成されている請求項11の制御装置。
【請求項14】
(a)第1の温度制御器に接続された出口熱電対を備えた加熱装置の出口温度を検出し、
(b)第2の温度制御器に接続された加熱された入口熱電対を備えた前記加熱装置の入口端への空気流量を検出し、
(c)最大出口温度が検出されたときに前記第1の温度制御器からの第1の信号を第1のリレーに送り、前記第1の信号により前記リレーを作動させて前記加熱装置への電源を切断し、
(d)低又は無空気流状態が検出されたときに前記第2の温度制御器からの第2の信号を第2のリレーに送り、前記第2の信号により前記第2のリレーを作動させて前記加熱装置への電源を切断する、加熱装置の制御方法。
【請求項15】
最大出口温度が検出されたときに警報を発する請求項14の制御方法。
【請求項16】
低又は無空気流状態は前記入口熱電対により検出される温度上昇である請求項14の制御方法。
【請求項17】
第1の信号は前記出口熱電対が約760℃の温度を感知したときに発生される請求項14の制御方法。
【請求項18】
前記第2の信号は前記入口熱電対が約149℃を検出したときに発生される請求項14の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−138625(P2006−138625A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−314420(P2005−314420)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(394001685)オスラム・シルバニア・インコーポレイテッド (68)
【Fターム(参考)】