説明

照光機能を有する入力装置

【課題】 導光シート内を伝播する光を効率的に反射して、操作部の表示部をばらつき無く照光できる照光機能を有する入力装置を提供する。
【解決手段】 ポリカーボネートなどで形成された導光シート22の裏面22dにレーザーを照射し、ポリカーボネートの一部を分解して複数の凹部30を形成する。凹部30はその内面が凹曲面であり、且つ内面が鏡面であるため、導光シート22内を伝播した光が、凹部30の内面で上方向へ反射され、その結果、キートップ15の照光表示部15cに光を集中して与えることができ、複数のキートップ15のそれぞれをむらなく照光させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の操作部が配列している入力装置に係り、特に前記操作部を暗所で照光する機能を有する入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータや各種情報の検索装置には複数の操作部が配列したキーボードと呼ばれる入力装置が装備されている。
【0003】
最近のキーボードとして、暗所で個々の操作部を識別できるように照光する機能を備えることが要求されている。特に、ブック型またはラップトップ型のパーソナルコンピュータは、暗所において個々の操作部を目視で区別できるように、照光機能を有するキーボードを搭載することが望まれている。
【0004】
以下の特許文献1には、個々のキートップを有する操作部の裏側にエレクトロルミネッセンス素子が設置されて、操作部が裏側から照光されるキーボードが開示されている。また特許文献2には、複数のキートップを有する操作部の裏側に、広い面積のシート状の発光素子が設けられ、複数の操作部が前記発光素子で一緒に照光されるキーボードが開示されている。
【特許文献1】特開2002−251937号公報
【特許文献2】実用新案登録第3082585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載されたキーボードは、多数の操作部に個別に対応するエレクトロルミネッセンス素子が設けられるため、照光機能のためのコストが高く、同様に前記特許文献2に記載されたキーボードも、複数の操作部に対向するシート状の発光素子が設けられるためにコストが高くなる。
【0006】
また、特許文献1と特許文献2に記載のキーボードは、いずれも操作部の裏側に面発光する照光手段が設けられたものであるため、隣り合う操作部の間の隙間にも光が与えられやすく、操作部のみならずその周囲からの漏れ光が多くなって、操作部の照光品質が劣化しやすい。
【0007】
さらに、個々の操作部のキートップが指で頻繁に且つ強い力で押されるため、操作部の裏側に配置されたエレクトロルミネッセンス素子やシート状の発光素子が常に圧力を受けやすい構造であり、発光素子の故障を招きやすい。
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、個々の操作部の裏側に発光素子を配置することなく操作部を照光することができ、しかも薄い樹脂シートで照光が可能とされた照光機能を有する入力装置を提供することを目的としている。
【0009】
また本発明は、操作部の必要な箇所に光を集中させることができ、隣り合う操作部の間の隙間などからの漏れ光を低減しやすい照光機能を有する入力装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の入力装置は、複数配列する操作部と、前記操作部で入力操作される入力機能部と、複数の前記操作部に裏側から対向する導光シートと、前記導光シートの内部に光を与える光源とを有し、
前記導光シートの前記操作部に対向する表面と逆側の裏面に、前記導光シートの内部に陥没する凹部が複数形成されており、それぞれの前記凹部は、開口部が円形で内面が平滑面の凹曲面であり、前記導光シート内を伝播する光が前記内面によって前記導光シートの内部に向けて反射され、その光が前記導光シートの表面から前記操作部に与えられることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の入力装置は、操作部の裏側に配置された導光シートで光源からの光を導いて、複数の操作部のそれぞれを照光するため、光源の数が少なくて済み低コストで製造可能である。また操作部が強い力で頻繁に操作されても、裏側に発光素子が無いため、発光機能の寿命が低下することがない。
【0012】
また、導光シートの裏面に凹曲面の内面を有する凹部が形成されて、導光シート内を伝播する光が、曲面である前記内面で導光シートの内部に反射されさらに導光シートの表面から操作部に与えられるため、操作部の照光したい場所に光を集中させることができる。また、凹部の内面は平滑面であるため、導光シート内を伝播した光が、前記内面で乱反射せず、光が減衰するのを防止しやすい。そのため、光源から離れた箇所の操作部に対しても高い照度で照光することが可能である。
【0013】
本発明は、前記凹部の大きさや形状を任意に変えることで、光源からの距離に応じた照光光量のばらつきなどを防止できる。
【0014】
例えば、前記凹部の深さ寸法および前記裏面に対する前記内面の立ち上がり角度を、前記導光シートの場所によって相違させる。この場合、前記光源から離れるにしたがって、前記深さ寸法が大きくなり且つ前記角度が大きくなることが好ましい。
【0015】
また、同一の前記操作部に光を与える領域に、前記深さ寸法および前記角度の相違する凹部を混在させることができる。
【0016】
異なる形状の凹部を混在させることで、操作部の照光すべき箇所の場所や形状および広さに応じた最適な照光が可能になる。
【0017】
また、前記凹部の前記開口部の直径を、前記導光シートの場所によって相違させることが可能である。
【0018】
さらに、複数の前記凹部の配列密度を、前記導光シートの場所によって相違させる。この場合、前記光源に近い前記操作部に対向する前記凹部の配列密度よりも、前記光源から離れた前記操作部に対向する前記凹部の配列密度の方が高いことが好ましい。
【0019】
本発明は、前記操作部は隙間を介して並んでおり、前記凹部が、それぞれの前記操作部と重なる領域に形成されていることが好ましい。
【0020】
コンピュータ用のキーボードなどのように、操作部が隙間を介して並んでいる場合に、この隙間に多くの光が与えられることがないように、前記凹部の大きさや形状および数などを調整することで、操作部の周囲からの漏れ光を少なくできる。
【0021】
本発明は、前記導光シートに形成された前記凹部は、レーザー光のエネルギーによって前記導光シートを形成する合成樹脂材料の一部が分解されて形成されたものである。
【0022】
なお、本明細書での操作部とは、以下の実施の形態のキーボードの場合には、キートップと、このキートップを押圧動作自在に支持する可動支持部材、およびキートップに押圧方向と逆向きの付勢力を与える弾性部材を含む概念である。また、以下の実施の形態以外の構造の操作部の場合も、押圧操作部とこの押圧操作部を支持する機構を含む概念である。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、薄い導光シートを複数の入力部の裏側に配置することで薄型で照光機能を有する入力装置を構成できる。また個々の操作部に対向する発光素子が不要であるため、コストを低減でき、操作部を頻繁に操作しても照光機能の寿命が低下することもない。
【0024】
また、操作部の照光すべき箇所に光を集中させることができ、また光源からの距離の変化の影響を受けにくく、それぞれの操作部の照光の明るさのばらつきを少なくできる。さらに、導光シート内を伝播する光が乱反射による減衰を生じにくいので、光源から光でそれぞれの操作部を高い照度で照光することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は本発明の入力装置の実施の形態を部分的に示す平面図、図2は図1の入力装置をII−II線で切断した断面拡大図である。図3は照光機能部の構造を示す拡大図である。図4(A)(B)(C)は、導光シートの裏面に形成された凹部の形状をレーザー顕微鏡で測定した出力線図である。
【0026】
図1に示す入力装置1は、ブック型またはラップトップ型あるいはディスクトップ型のパーソナルコンピュータなどのキーボードとして使用される。
【0027】
入力装置1は、金属製のシャーシ2を有しており、シャーシ2の上に複数の操作部10a,10b,10c,10d,10eが縦方向および横方向に配列している。操作部10a、操作部10b、操作部10c、操作部10dおよび操作部10eは、それぞれの操作部に設けられたキートップ15の大きさによって区別しているだけであり、個々の操作部の構造は実質的に同じである。図2には、キートップ15の寸法が最も小さい2つの操作部10a,10aが示されている。
【0028】
図2に示すように、入力装置1は、前記シャーシ2の上に照光機能部20が設置され、前記照光機能部20の上に、アルミニウムなどの金属板で形成された支持板11が設置され、支持板11の上にメンブレン積層体12が設置されている。それぞれの操作部10aが設けられる部分では、前記支持板11に第1の支持片11aと第2の支持片11bが上方に向けて折り曲げられている。それぞれの操作部10aが設けられる部分で、第1の支持片11aは図2の紙面に直交する方向に離れて一対設けられており、第2の支持片11bも前記紙面に直交する方向に離れて一対設けられている。メンブレン積層体12には穴12aが開口しており、前記第1の支持片11aと第2の支持片11bが、前記穴12a内を通過してメンブレン積層体12よりも上方に突出している。
【0029】
それぞれの操作部10aにはキートップ15が設けられており、キートップ15と支持板11との間に、第1の可動支持部材16と第2の可動支持部材17が設けられている。第1の可動支持部材16は、その一端16aが第1の支持片11aに回動自在に支持され、他端16bがキートップ15の下部に回動自在で且つ横方向へスライド自在に支持されている。第2の可動支持部材17は、一端17aがキートップ15の下部に回動自在に支持され、他端17bが第2の支持片11bに回動自在で且つ横方向へスライド自在に支持されている。第1の可動支持部材16と第2の可動支持部材17は、その中央部どうしが回動自在に連結されており、第1の可動支持部材16と第2の可動支持部材17とでX型の支持リンクが構成されている。
【0030】
前記メンブレン積層体12とキートップ15との間には弾性部材18が設けられている。弾性部材18は合成ゴムで形成されており、キートップ15に対してメンブレン積層体12から離れる方向である上向きの付勢力が与えられている。弾性部材18の下側の内部は空洞であり、この空洞内に下向きの押圧凸部18aが一体に形成されている。
【0031】
前記メンブレン積層体12は、下側可撓性シート12bと上側可撓性シート12cと、前記両可撓性シート12b,12cの間に挟まれたスペーサシート12dとが積層されている。前記弾性部材18の押圧凸部18aが対向する部分で、前記スペーサシート12dに穴が形成されて、この部分に入力機能部19が形成されている。入力機能部19では、下側可撓性シート12bの上面および上側可撓性シート12cの下面に、互いに対向する接点電極が設けられている。また、下側可撓性シート12bの上面と上側可撓性シート12cの下面には、それぞれの入力機能部19に設けられた接点電極に導通する導電層のリードパターンが形成されている。
【0032】
それぞれの操作部10aにおいて、キートップ15を押すと、第1の可動支持部材16の一端16aが第1の支持片11aとの係合部を支点として回動し、第2の可動支持部材17の一端17aがキートップ15の下部で回動して、キートップ15が下降する。このとき、弾性部材18がキートップ15で押し潰されるとともに、押圧凸部18aで入力機能部19が押されて、入力機能部19の接点電極どうしが接触してキー入力信号が得られる。
【0033】
前記照光機能部20は、シャーシ2の上に設置される反射シート21と、その上に設置される導光シート22と、さらにその上に重ねられたマスクシート23とを有している。図3に示すように、反射シート21の端部に穴21aが開口し、導光シート22の端部に穴22aが開口している。シャーシ3上にはフレキシブル配線基板が貼着されており、このフレキシブル配線基板に実装された発光ダイオード装置24が、前記穴21aと穴22aの内部に挿入されて、導光シート22の内部に光を与える光源として機能している。
【0034】
発光ダイオード装置24は、透明なパッケージの内部に発光ダイオードのベアチップが収納されたものである。発光ダイオード装置24は、穴22a内において導光シート22の端面22bに対向しており、発光ダイオード装置24から発せられる光が、前記端面22bから導光シート22の内部に導かれる。
【0035】
図3では、導光シート22が比較的厚い寸法で図示されているが、実際の導光シート22は、厚さ寸法が1mm未満であり、好ましくが500μm未満である。この実施の形態の導光シート22は厚さが300μmである。
【0036】
導光シート22は、操作部10aに向けられた表面22cとシャーシ2に向けられた裏面22dが、共に平滑な鏡面の平坦面である。導光シート22には、所定の面積の反射領域25が区分されて設定されており、それぞれの反射領域25に、複数の凹部30が形成されている。
【0037】
個々の凹部30は、導光シート22の裏面22dのきわめて小さい面積の領域に、CO2レーザーなどを照射してエネルギーを与え、導光シート22を構成する材料の一部を分解して除去することで形成されている。そのため、導光シート22は、透明で且つレーザーのエネルギーで分解できる材料で形成されている。薄くて比較的強度が高くレーザーのエネルギーで分解できる透明な材料としては、ポリカーボネート、ウレタン、シリコンなどが使用可能である。
【0038】
凹部30は、導光シート22の裏面22dに、微小スポットのレーザーのエネルギーを与えて、導光シート22を構成する材料の一部を分解して形成されるため、裏面22dから見たときの個々の凹部30の開口部の形状は円形である。また、開口径は凹部30の底部に向かうにしたがって徐々に小さくなり、底部は凹球面形状であり、凹部30の内面全体が凹曲面形状である。また、凹部30が材料を分解することで形成されているため、凹部30の内面はその全域において平滑な面、すなわち鏡面である。ここでの平滑な面または鏡面とは、面粗度が表面22cおよび裏面22dと同程度であることを意味している。また、平滑な面または鏡面とは、導光シート22の内部を伝播する光がシートの内部から凹部30の内面に当たったときに、その内面において光が乱反射されず、内面の角度に応じてシート内で入射角と反射角の原理にしたがって反射される性質を意味している。
【0039】
図3に示すように、発光ダイオード装置24から発せられ、端面22bから導光シート22内に入射した光Lは、表面22cでの反射と裏面22dでの反射とを繰り返して導光シート22の内部を伝播する。導光シート22の内部を伝播する光が、凹部30の内面に当たると、その光が当たる位置で凹部30の内面に接する仮想平面に対して入射角と反射角がほぼ同等となるように導光シート22の内部に向けて反射されて表面22cに向けられる。そして、導光シート22の表面22cから出た光で操作部10aが照光される。
【0040】
図3に示すように、キートップ15の本体部15aはポリカーボネートなどの透明な材料または半透明で光を透過できる材料で形成されており、本体部15aの表面が塗装や無電解メッキで形成された光を透過できない被覆層15bとなっている。この被覆層15bの一部がCO2レーザーなどで除去されて、照光表示部15cが形成されている。図1に示す入力装置1では、個々のキートップ15の表面に形成された照光表示部15cによって文字や記号または数字が表示されている。
【0041】
図1では、導光シート22の裏面22dに形成されている反射領域25(凹部30が形成されている領域)が、破線で囲まれて示されている。反射領域25は、それぞれの操作部10a,10b,10c,10d,10eに設けられたキートップ15と上下に重なる領域に形成されており、隣り合う操作部の間の隙間、すなわち隣り合うキートップ15の隙間の下には反射領域25が存在していない。また、反射領域25は、それぞれのキートップ15に形成されている照光表示部15cの真下において照光表示部15cよりもやや広い面積に形成されている。図1に示すように、それぞれのキートップ15に設けられた照光表示部15cは、その下の反射領域25の範囲内からはみ出ていない。
【0042】
図3に示すように、導光シート22の上に重ねられているマスクシート23は、遮光部23aと光通過部23bを有している。遮光部23aは透明なシートの表面を黒色などに塗装することで形成され、または非透明なシートで構成されている。光通過部23bは、開口部またはシートの透明な部分で形成されている。光通過部23bは、反射領域25の真上に位置し、反射領域25と同じ面積か、または反射領域25よりもやや広い面積で形成されている。反射領域25の上方の領域以外は遮光部23aで覆われており、隣り合うキートップ15の隙間の下側には遮光部23aが存在している。
【0043】
図3に示すように、導光シート22の下に反射シート21が敷かれている。反射シート21の表面は金属色の反射面または白色の反射面であり、導光シート22の裏面22dから下方へ漏れた光を導光シート22の内部に向けて反射できるようになっている。なお、凹部30の内面は鏡面であり、導光シート22の内部を伝播して前記凹部30の内面に当たった光は、導光シート22と空気との屈折率の差によって多くの光成分が導光シート22の内部に反射されるため、前記反射シート21は特に設けなくてもよい。
【0044】
図2に示すように、照光機能部20の上には金属製の支持板11が存在しているが、この支持板11には、少なくとも前記反射領域25の上に開口部11cが形成されて、支持板11が光の透過を妨げない構造となっている。
【0045】
さらに、メンブレン積層体12と、第1と第2の可動支持部材16,17および弾性部材18は、透明な材料または半透明などの光を透過できる材料で形成されている。よって、反射領域25の凹部30によって上方へ反射された光は、メンブレン積層体12と、第1と第2の可動支持部材16,17および弾性部材18を透過して前記キートップ15に与えられる。
【0046】
または、第1と第2の可動支持部材16,17および弾性部材18などが、表面で光を反射できまたは光を拡散できるように白色系の合成樹脂材料などで形成されており、メンブレン積層体12を透過した光が反射されまたは拡散されてキートップ15に与えられてもよい。
【0047】
図4(A)(B)(C)は、ポリカーボネートで形成された導光シート22の裏面22dにCO2レーザーを照射して実際に加工した凹部30の面の形状をレーザー顕微鏡で測定した結果を示している。図4は、凹部30の中心を通り且つ裏面22dに垂直な面で切断した断面の形状を示す出力線図である。
【0048】
図4(A)(B)(C)に示すように、裏面22dに対するCO2レーザーの照射時間やエネルギーを変えることによって、凹部30の開口部31の直径φや、凹部30の底部32の裏面22dからの深さ寸法Dなどを自由に設定することができる。図4(A)はCO2レーザーの照射時間が最も長く、図4(C)はCO2レーザーの照射時間が最も短く、図4(B)はその中間である。よって、開口部31の直径φは、図4(A)が一番大きく、図4(C)が一番小さい。また深さ寸法Dは、図4(A)が最も深く、図4(C)が最も浅い。
【0049】
図4に示す線図から、凹部30の内面33が、裏面22dおよび開口部31から底部32まで滑らかに連続する凹曲面であり、底部32がほぼ凹球面であることを確認できる。裏面22dに対する内面33の傾斜角度θは、図4(A)が最も大きく、図4(C)が最も小さい。
【0050】
図4(A)に示す凹部30は、開口部31の直径φが229.8μmで深さ寸法Dが66.11μm、図4(B)に示す凹部30は、直径φが207.7μm、深さ寸法Dが65.81μm、図4(C)に示す凹部30は、直径φが111.1μm、深さ寸法Dが8.024μmである。
【0051】
このように、凹部30は開口部31の直径φが500μm以下で、好ましくは300μm以下である。深さ寸法Dは、5μm以上で、導光シート22の板厚の1/3以下が好ましい。
【0052】
図3に示すように、導光シート22の内部を伝播する光が、シートの内部において凹部30の内面33に当たると、その光は主に表面22cに向けて反射されるが、図4(A)に示すように、凹部30の深さ寸法Dが大きく、内面33の傾斜角度θが大きいほど、光を垂直上方に指向させる能力が高くなる。また凹部30の深さ寸法Dが大きく、内面33の傾斜角度θが大きいほど、導光シート22内を伝播する光のうちの内面33で反射する光量が多くなる。
【0053】
よって、光源である発光ダイオード装置24から反射領域25までの距離や、反射領域25の広さまたは照光表示部15cの大きさなどに応じて、同じ導光シート22内で、凹部30の直径φや深さ寸法Dを異ならせることで、発光ダイオード装置24からの距離の差による光量のばらつきを防止しやすくなる。また、凹部30によって光を照光表示部15cに向けて反射する際の指向性を高くできるため、例えばマスクシート23が存在していなくても、隣り合うキートップ15の間の隙間から上方への漏れ光を少なくしやすい。
【0054】
凹部30の配置としては、発光ダイオード装置24から近い反射領域25よりも遠い反射領域25内に形成される凹部30の深さ寸法Dを大きくし、その結果角度θを大きくすることが好ましい。なお、同じ反射領域25内においても、発光ダイオード装置24から離れるにしたがって深さ寸法Dおよび角度θを段階的に大きくすることも好ましい。
【0055】
また、発光ダイオード装置24から近い反射領域25よりも遠い反射領域25内に形成される凹部30の配列密度を高くすることが好ましい。なお、同じ反射領域25内においても、発光ダイオード装置24から離れるにしたがって配列密度を高くすることが好ましい。
【0056】
なお、同じ反射領域25内において、深さ寸法Dと直径φが相違する凹部を混在させると、照光表示部15cに光を集中させたり、照光表示部15cの文字などの大きさに応じた光量の照光などが可能になる。
【0057】
凹部30は導光シート22の裏面22dにレーザーを照射することで形成でき、その照射時間や照射エネルギーを変えることで、同じ導光シート22に複数種類の凹部30を自由に設計して配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の入力装置の一例としてキーボードの一部を示す平面図、
【図2】図1の入力装置をII−II線で切断した拡大断面図、
【図3】照光機能部の構造を拡大して示す説明図、
【図4】(A)(B)(C)は、ポリカーボネートの導光シートに形成された凹部の形状の実測値を示す線図、
【符号の説明】
【0059】
1 入力装置
2 シャーシ
10a,10b,10c,10d,10e 操作部
11 支持板
11a 第1の支持片
11b 第2の支持片
12 メンブレン積層体
15 キートップ
15a 本体部
15b 被覆層
15c 照光表示部
16 第1の可動支持部材
17 第2の可動支持部材
18 弾性部材
19 入力機能部
20 照光機能部
22 導光シート
22c 表面
22d 裏面
24 発光ダイオード装置
30 凹部
31 開口部
32 底部
33 内面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数配列する操作部と、前記操作部で入力操作される入力機能部と、複数の前記操作部に裏側から対向する導光シートと、前記導光シートの内部に光を与える光源とを有し、
前記導光シートの前記操作部に対向する表面と逆側の裏面に、前記導光シートの内部に陥没する凹部が複数形成されており、それぞれの前記凹部は、開口部が円形で内面が平滑面の凹曲面であり、前記導光シート内を伝播する光が前記内面によって前記導光シートの内部に向けて反射され、その光が前記導光シートの表面から前記操作部に与えられることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記凹部の深さ寸法および前記裏面に対する前記内面の立ち上がり角度が、前記導光シートの場所によって相違している請求項1記載の入力装置。
【請求項3】
前記光源から離れるにしたがって、前記深さ寸法が大きくなり且つ前記角度が大きくなる請求項2記載の入力装置。
【請求項4】
同一の前記操作部に光を与える領域に、前記深さ寸法および前記角度の相違する凹部が混在している請求項2または3記載の入力装置。
【請求項5】
前記凹部の前記開口部の直径が、前記導光シートの場所によって相違している請求項1ないし4のいずれかに記載の入力装置。
【請求項6】
複数の前記凹部の配列密度が、前記導光シートの場所によって相違している請求項1ないし5のいずれかに記載の入力装置。
【請求項7】
前記光源に近い前記操作部に対向する前記凹部の配列密度よりも、前記光源から離れた前記操作部に対向する前記凹部の配列密度の方が高い請求項6記載の入力装置。
【請求項8】
前記操作部は隙間を介して並んでおり、前記凹部が、それぞれの前記操作部と重なる領域に形成されている請求項1ないし7のいずれかに記載の入力装置。
【請求項9】
前記導光シートに形成された前記凹部は、レーザー光のエネルギーによって前記導光シートを形成する材料の一部を分解して形成したものである請求項1ないし8のいずれかに記載の入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−97801(P2010−97801A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267178(P2008−267178)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】