説明

照合システム及び方法並びにプログラム

【課題】指紋と掌紋の照合処理の高速化を図ると共に、システム構成の簡素化、さらには、システムの低コスト化を図ること。
【解決手段】予め定められた同一のデータ構造にて構成された照合対象となる指紋データ及び掌紋データを含む指掌紋データを記憶する照合対象記憶手段と、照合対象となる一対の前記指掌紋データを読み出して照合処理を行う照合処理手段と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照合システムにかかり、特に、指紋と掌紋とを照合可能な照合システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、個人を認証するために、指紋や掌紋が用いられる。そして、指紋や掌紋の照合は、近年では、指掌紋の特徴値を利用してコンピュータにて行われている。このような指紋、掌紋の照合システムの一例が、特許文献1に開示されている。
【0003】
しかしながら、従来の指掌紋照合システムでは、指紋データと掌紋データとでデータフォーマットが異なるため、共通メモリエリアには双方のデータを格納し使用することができなかった。また、掌紋照合プログラムは、大容量のメモリ領域を必要とするため、ワークエリアとして共有メモリエリアを使用しており、上位装置側で、照合形態、照合データ種別(指紋/掌紋)に応じて照合プログラムを切り替える必要があり、指紋照合、掌紋照合の並列実行は不可能であった。
【0004】
ここで、図8に、従来例における照合システムの構成を示す。この図に示す例では、まず、プログラムメモリ領域300にロードされた指紋照合プログラム310,320等から共通にメモリアクセス可能な共有メモリ領域200に、複数のサーチ指紋データ201〜20nを保存し、各指紋照合プログラムは、照合命令時に指定されたサーチ指紋データを共有メモリ領域200から読み出して、ファイル指紋データとの照合を実施していた。また、プログラムメモリ領域300は、ロードされた指紋照合プログラム310,320、掌紋プログラム330に固定的にメモリアドレス311,312,331,332等を割り当て、各プログラムで当該プログラムに割り当てられたメモリアドレスレンジの範囲でメモリ管理を行っていた。そのため、異なる掌紋プログラムを複数搭載する場合は、固定的に割り当てられるワーク領域として使用される領域(例えば、符号332)が大容量になってしまい、プログラムに応じてメモリ使用制限を設ける必要が生じる。また、新たな掌紋プログラムを搭載する際にその都度、ハードウェアのメモリマップを変更する必要がある、という問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開2002−14934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、本発明では、上記従来例の有する不都合を改善し、特に、指紋と掌紋の照合処理の高速化を図ると共に、システム構成の簡素化、さらには、システムの低コスト化を図ることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明の一形態である照合システムは、予め定められた同一のデータ構造にて構成された照合対象となる指紋データ及び掌紋データを含む指掌紋データを記憶する照合対象記憶手段と、照合対象記憶手段から照合対象となる一対の指掌紋データを読み出して照合処理を行う照合処理手段と、を備えたことを特徴としている。
【0008】
上記発明によると、まず、照合される指紋データと掌紋データとは、予め設定された同一のデータ構造にて構成されている。そして、照合処理手段は、入力されて一時的に記憶されていたり、予めデータベースに記憶されている指掌紋データのうち、照合対象として対となりうる指紋データ、掌紋データを読み出して、照合処理を実行する。このとき、指紋、掌紋のいずれの照合処理を実行する場合であっても、データ構造が同一であるため、指紋用あるいは掌紋用の照合処理を区別して行う必要が無い。つまり、照合対象が指紋であるか掌紋であるかに応じて照合プログラムを切り替えることなく照合処理を実行することができ、システム構成の簡素化、照合処理の高速化を図ることができる。また、照合対象となる指紋データ及び掌紋データを区別することなく管理することができ、データ管理の容易化を図ることができる。
【0009】
そして、上記指掌紋データは、少なくとも指掌紋の部位を特定する部位情報と指掌紋の特徴値情報とを含む、ことを特徴としている。さらに、照合処理手段は、部位情報に基づいて相互に対応する一対の指掌紋データを照合対象記憶手段から読み出し、当該一対の指掌紋データの特徴値情報に基づいて照合処理を行う、ことを特徴としている。これにより、同一のデータ構造である指紋データ、掌紋データが、少なくとも部位情報と特徴値情報を含むことで、各指や掌の各部位を特定して照合処理を実行することができ、照合処理の信頼性の向上を図ることができる。
【0010】
また、上記照合処理手段は、複数対の指掌紋データの照合処理を連続あるいは並列に実行する、ことを特徴としている。これにより、同一の者の複数の指紋や掌紋といった異なる照合対象を連続して、あるいは、並列に実行する場合であっても、上述したように照合プログラムを切り替えることが無いため、高速に照合処理を実行することができる。
【0011】
また、照合処理手段が複数の照合処理を実行する際に、当該各照合処理のワーク領域として一部のメモリ領域がそれぞれ割り当てられる共有メモリ領域を備えた、ことを特徴としている。さらに、照合処理手段による各照合処理を実現する各照合プログラムごとに、予め固定的に割り当てられた同一容量の固定メモリ領域をそれぞれ備えた、ことを特徴としている。これにより、各照合処理時に共有メモリ領域からワーク領域が割り当てられて照合処理が実行されるため、照合プログラムごとに予め割り当てる固定メモリ容量を抑制でき、また、プログラム搭載時のメモリマップの変更を抑制することができる。特に、ベースとなる必要最低限のメモリ領域として同一サイズの固定メモリ領域を割り当てておくことで、未使用プログラムによる無駄なメモリの割り当てを抑制できる。
【0012】
また、本発明の他の形態は、コンピュータにて、指掌紋データの照合を行う照合方法であって、上記コンピュータが、予め定められた同一のデータ構造にて構成された照合対象となる指紋データ及び掌紋データを含む指掌紋データが記憶された照合対象記憶手段から、照合対象となる一対の指掌紋データを読み出して、当該一対の指掌紋データの照合処理を行う、ことを特徴としている。
【0013】
そして、上記コンピュータが、複数対の指掌紋データの照合処理を連続あるいは並列に実行する、ことを特徴としている。また、コンピュータが、複数の照合処理を実行する際に、共有メモリ領域の一部のメモリ領域を各照合処理のワーク領域としてそれぞれ割り当てる、ことを特徴としている。さらに、上記コンピュータが、各照合処理を実現する各照合プログラムごとに、同一容量の固定メモリ領域をそれぞれ予め割り当てておく、ことを特徴としている。
【0014】
また、本発明の他の形態であるプログラムは、指掌紋データの照合を行うコンピュータに、予め定められた同一のデータ構造にて構成された照合対象となる指紋データ及び掌紋データを含む指掌紋データが記憶された照合対象記憶手段から、照合対象となる一対の指掌紋データを読み出して、当該一対の指掌紋データの照合処理を行う照合処理手段、を実現させる、ことを特徴としている。
【0015】
上述した構成の方法及びプログラムの発明であっても、上記照合システムと同様に作用し、上述した本発明の目的を達成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以上のように構成され機能するので、これによると、指紋、掌紋のいずれの照合処理を実行する場合であっても、データ構造が同一であるため、指紋用あるいは掌紋用の照合処理を区別して行う必要が無く、つまり、照合対象が指紋であるか掌紋であるかに応じて照合プログラムを切り替えることなく照合処理を実行することができ、システム構成の簡素化、照合処理の高速化を図ることができる。また、照合対象となる指紋データ及び掌紋データを区別することなく管理することができ、データ管理の容易化を図ることができる、という従来にない優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明における照合システムは、上位装置からの指令に応じて、指紋、掌紋の照合を行うシステムである。以下、具体的な構成及び動作を、実施例にて説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明の第1の実施例を、図1乃至図7を参照して説明する。図1は、照合システムの構成を示すブロック図であり、図2乃至図3は、照合処理装置の構成を示す機能ブロック図である。図4は、掌紋の部位を示す説明図であり、図5乃至図6は、指紋データ、掌紋データのデータ構成を示す図である。図7は、照合システムの動作を示すシーケンス図である。
【0019】
[構成]
本実施例における照合システムは、図1に示すように、照合処理装置1と、上位装置2と、ファイル記憶装置3と、入力装置4と、を備えている。そして、上位装置2と照合処理装置1は所定のケーブルやネットワークを介して接続されており、上位装置2からの照合処理命令に応じて、照合処理装置1が照合処理を実行するよう構成されている。以下、各装置について詳述する。
【0020】
入力装置4は、例えば、スキャナ装置であり、探索対象となるサーチデータである指紋データ、掌紋データ(指掌紋データ)を上位装置2に入力するための装置である。この入力されるサーチデータは、入力装置4に直接、指や掌を押し当てて読み取られた押捺照合用のデータであってもよく、あるいは、事前に採取された遺留照合用のデータであってもよい。
【0021】
そして、上記サーチデータである指紋データ、掌紋データは、それぞれが同一のデータ構造にて構成されており、つまり、共通データフォーマットにて定義されている。指紋データ、掌紋データの一例を、図5に示す。この図に示すように、各データは、指紋・指種(部位)情報、軸情報、特徴点データ、ゾーンデータ、を有するデータ構造を採っている。そして、紋様・指種(部位)情報エリアには、それぞれのデータが、指紋データであるか掌紋データであるかを示す紋様情報と、指紋データの場合は、どの指の指紋データであるかを示す指種番号、掌紋データの場合には、部位情報エリアに掌紋のどの部位であるかを示す情報あるいは全部位が含まれているかを示す情報、が格納されている。軸情報エリアには、照合を実行する際に基点座標とする中心軸情報を格納している。特徴点データエリアには、指紋、掌紋の特徴点となる点の座標情報(特徴点数分)および特徴点数を格納している。ゾーンデータエリアには、指紋、掌紋の画像をブロックに分け、画像の明瞭・不明瞭情報を抽出したゾーン情報(ゾーン数分)とゾーン数を格納している。なお、図4に、掌紋データの部位の一例を示す。このように、指掌紋データは、少なくとも指掌紋の部位を特定する部位情報と指掌紋の特徴値情報とを含んでいる。ここで、上述した指掌紋データのデータ構造は一例であって、他のデータ構造を有していてもよい。
【0022】
そして、一人の照合対象者から指紋データが5指分、掌紋データが1部位分、入力された場合には、図6に示すように、5指分の指紋データ(1)〜(5)と、1部位分の掌紋データ(6)とが、1つのサーチデータとして取り扱われる。なお、これら指紋データ、掌紋データからなるサーチデータは、後述するように、上位装置2から照合処理命令と共に、照合処理装置1に転送され、当該照合処理装置1内に一時的に記憶される。
【0023】
また、ファイル記憶装置3(照合対象記憶手段)には、予め登録された照合対象となる指紋データ、掌紋データといったファイルデータが予め蓄積されている。つまり、ファイル記憶装置3には、上記サーチデータと対となって照合される指紋データ、掌紋データのデータベースとして登録されている。そして、ファイルデータとしての指紋データ、掌紋データも、上記サーチデータとしての指紋データ、掌紋データと同一のデータ構造であり、例えば、図5、図6に示すようなデータ構造にて構成されている。なお、これらファイルデータは、後述するように、上位装置2から照合処理装置1に転送される。
【0024】
また、上位装置2は、入力装置4から入力されたサーチデータである指掌紋データを受け付けて、接続された照合処理装置1に転送を行う。また、ファイル記憶装置3に予め記憶されたファイルデータである指掌紋データを読み出して、照合処理装置1に転送し、照合処理命令を行う。このとき、照合処理命令には、指紋照合か掌紋照合か両照合かを示す照合種別、押捺照合か遺留照合かを示す照合形態、照合対象とするサーチデータ番号、照合対象とする指種番号(部位番号)が含まれるものとする。なお、指種番号および部位番号は複数指定可能とする。また、上位装置2は、照合処理装置1から通知される照合結果を受け付けて、装備されたディスプレイなどの出力装置から出力する。
【0025】
次に、照合処理装置1の構成について、図2乃至図3を参照して説明する。なお、図2は、照合処理装置1全体の構成を示す機能ブロック図であり、図3は、照合処理装置1のメモリ構成を示すブロック図である。
【0026】
図2に示すように、照合処理装置1は、演算装置であるCPU(1A)と、記憶装置であるメモリ(1B)とが装備されたコンピュータである。そして、CPU(1A)には、所定のプログラムが組み込まれることにより、上位装置IF制御部11と、プログラム制御部12と、メモリ制御部13と、が構築されている。さらに、メモリ(1B)には、共有メモリ領域14と、共有ヒープ領域15と、プログラムメモリ領域16と、が形成されている。以下、さらに詳述する。
【0027】
まず、上位装置IF制御部11は、上述した上位処理装置2とのデータの送受信処理を行う。また、プログラム制御部12(照合処理手段)は、照合プログラムの動作を制御する機能を有する。具体的には、図3に示すように、メモリ(1B)に形成されたプログラムメモリ領域16内に照合プログラムP10,P11,P1nをロードする。このとき、各照合プログラムエリアP10,P11,P1nは、照合プログラムの命令セクションが保持される命令部P101,P111,P1n1と、プログラムが使用可能なデータ部P102,P112,P1n2と、を有している。これら各データ部P102等は、同一サイズ(容量)の領域として予め固定的に割り当てられる。
【0028】
また、プログラム制御部12は、上位装置2から転送された照合対象となる指掌紋データをメモリ制御部13に渡したり、当該指掌紋データや照合処理命令を、照合プログラムエリアP10,P11,P1nに渡す。これにより、プログラムメモリ領域16にロードされた照合プログラムにて照合処理を実行する。このとき、各照合プログラムは、共有ヒープ領域15の一部を、照合処理を実行するメモリ領域であるワーク領域として割り当てる。そして、各照合プログラムは、ロードされたときに固定的に割り当てられているデータ部P10等や上記共有ヒープ領域15内に割り当てられたワーク領域にて、照合処理を実行する。なお、共有ヒープ領域15には、各照合プログラム毎にワーク領域が割り当てられるため、後述するように、複数の指掌紋データの照合処理を、連続して、あるいは、並列に実行することができる。
【0029】
また、メモリ制御部13は、上記共有メモリ領域14と共有ヒープ領域15とのメモリ管理及び制御を行う。具体的には、共有メモリ領域14には、図3に示すように、上述したように上位装置2から転送されるサーチデータである指紋データD10〜D1n、掌紋データD20〜D2nを格納する。このとき、指紋データ、掌紋データは、上述したように共通のデータフォーマットにて構成されているため、共通メモリ領域14には双方のデータを格納し使用することができる。このように、共有メモリ領域14には、照合対象となる指掌紋データが一時的ではあるが格納されるため、上述したファイル記憶装置3と同様に、照合対象記憶手段として機能する。また、共有ヒープ領域15は、上述したプログラム制御部12による照合プログラムの実行時に出されるメモリ割り当て要求に応じて、各照合処理ごとのワーク領域としてそれぞれ割り当てられるメモリ領域である。
【0030】
[動作]
次に、上記構成の照合システムの動作を、図7のシーケンス図を参照して説明する。まず、照合処理装置1内では、プログラム制御部12によって、プログラムメモリ領域16に照合プログラムがロードされる(ステップS1)。このとき、図3に示すように、各照合プログラムエリアP10等には、各命令部P101等及び各データ部P102等が固定的にメモリマップされた状態になっている。なお、照合プログラムのロードは、後述するように、上位装置2から照合処理命令を受けてから行われてもよい。
【0031】
そして、上位装置2は、照合対象となるサーチデータである指紋データ、掌紋データの入力を受け付けると(ステップS2)、この受け付けたサーチデータを照合処理装置1に転送する(ステップS3)。すると、照合処理装置1は、上位装置IF制御部11にて上位装置1からサーチデータを受信し、このサーチデータを照合処理装置1内のプログラム制御部12に渡す。そして、プログラム制御部12は、受信したサーチデータをメモリ制御部13を介して共有メモリ領域14に保存する(ステップS4)。
【0032】
続いて、上位装置2は、ファイル記憶装置3から照合対象となるファイルデータである予め登録された指紋データ、掌紋データを読み出し(ステップS5)、この読み出したファイルデータを照合処理装置1に転送すると共に、照合処理命令を行う(ステップS6)。この時、照合処理命令には、指紋照合か掌紋照合か両照合かを示す照合種別、押捺照合か遺留照合かを示す照合形態、照合対象とするサーチデータ番号、照合対象とする指種番号(部位番号)が含まれるものとする。指種番号および部位番号は複数指定可能とする。
【0033】
その後、ファイルデータ、照合処理命令を受信した照合処理装置1内のプログラム制御部12は、照合処理命令を分析し(ステップS7)、当該照合処理命令の照合種別から指紋照合、掌紋照合であるかを判別し、照合対象とする指種番号(部位番号)からファイルデータから該当するファイル指紋データ(ファイルデータに複数指紋が格納されている場合)を切り出す(ステップS8)。また、指定されたサーチデータ番号から該当するサーチデータをメモリ制御部13を介して共有メモリ領域14から読み出し、対象となる指種番号(複数指定あり)から該当するサーチ指紋データを切り出す(ステップS9)。
【0034】
続いて、プログラム制御部12は、指定された照合形態(遺留指紋か押捺指紋)に応じて対応する照合プログラムP10等(例では照合形態は遺留照合)に切り出した対となるサーチ指紋データとファイル指紋データとを転送する。なお、上述したように、予め照合プログラムエリアP10には遺留照合用指紋プログラムが、照合プログラムエリアP11には押捺照合用プログラムが、プログラムロードされているが、各照合プログラムのワーク領域としてのメモリ領域が、共有ヒープ領域15に割り当てられている。
【0035】
そして、照合プログラムエリアP10等では、プログラム制御部12から渡されたサーチ指紋データとファイル指紋データとの照合処理を実行する(ステップS10)。例えば、各データの特徴値が一致するか否かによって照合する。その後、その照合結果をプログラム制御部12に返却する。
【0036】
続いて、プログラム制御部12は、指定された指番号が複数指定されている場合、引き続きサーチデータからサーチ指紋データの切り出し、ファイルデータからファイル指紋データとの切り出しを指定数分行い、照合プログラムエリアP10等において対となるサーチ指紋データとファイル指紋データとの照合を指定データ数分実施する。複数指定されている場合、プログラム制御部12は、照合プログラムエリアP10等において返却された照合結果を対象照合分の結果をマージして、上位装置IF制御部11を介して上位装置2に照合結果を送信する(ステップS11)。
【0037】
同様に、掌紋照合の場合は、照合処理命令に含まれる照合種別から掌紋照合であることを判別し、ファイルデータからファイル掌紋データを切り出す(ファイルデータにファイル指紋データが含まれる場合)。また、指定されたサーチデータ番号から該当するサーチデータをメモリ制御部13を介して共有メモリ領域14から読み出し、サーチ掌紋データを切り出す(サーチデータにサーチ指紋データが含まれる場合)。そして、プログラム制御部12は、指定された照合形態(遺留指紋か押捺指紋)に応じて対応する照合プログラムエリアに切り出したサーチ掌紋データとファイル掌紋データとを転送し、照合プログラムエリアは、プログラム制御部12から渡されたサーチ掌紋データとファイル掌紋データとを照合実施して照合結果をプログラム制御部12に返却する。プログラム制御部12は、照合プログラムエリアにおいて返却された照合結果を上位装置IF制御部11を介して上位装置2に照合結果を送信する。照合処理命令に指紋照合と掌紋照合の両方が指定されている場合、指紋照合(最大5指分)と掌紋照合との結果をマージして上位装置2に返却する。
【0038】
以上説明したように、本発明においては、以下のような効果を奏する。第1の効果は、指紋データと掌紋データとでデータフォーマットを共通にすることで、共通メモリエリアには双方のデータを格納し使用する事ができ、また照合種別、照合形態に応じて特性にあった照合プログラムによる照合処理を実行可能とすることで、上位装置からJOB単位で実施する照合処理を切り替えずに済む。また、共通データフォーマットを使用することで上位装置内のDBを照合種別に応じて分ける必要性がなく、リソース管理も容易となる。また、指紋、掌紋照合データを一度に転送可能とすることで、上位装置と照合処理装置間のデータ転送数のオーバーヘッド低減を図ると共に指紋・掌紋データをまとまった区分でDB化することが可能で、DB管理の簡単にすることが可能である。また、サーチデータに指紋・掌紋データを加えることで照合特定率を高める。
【0039】
さらに、第2の効果は、指紋、掌紋プログラムからのメモリ割り当て要求に応じてメモリ割り当てを行う機能を有することで、各指紋、掌紋プログラム間で命令、データ領域のベースとなるメモリマップは同一サイズとして、ワーク領域として使用するメモリ領域は共有ヒープ領域のエリアを使用して、メモリ領域の再利用化を有効にすることで、新たな掌紋プログラムを搭載する際に、ハードウェアのメモリマップの変更無しで照合プログラムをサポート可能となる。つまり、必要最低限のメモリ領域の固定的なメモリマッピングによって、未使用プログラムのメモリエリアによる無駄なメモリリソース割り当てを無くすことが可能である。そして、照合処理で使用するワークメモリ領域は、内部に固定的にメモリアサインするのではなく、共有ヒープ領域からメモリ確保を行い使用することで、メモリの有効利用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、警察や認証機関にて指紋、掌紋の照合を行うために利用することができ、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】照合システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】照合処理装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】照合処理装置のメモリの構成を示すブロック図である。
【図4】掌紋の部位を示す説明図である。
【図5】指紋データ、掌紋データのデータ構成例を示す図である。
【図6】指紋データ、掌紋データのデータ構成例を示す図である。
【図7】照合システムの動作を示すシーケンス図である。
【図8】従来例における照合処理装置の構成を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0042】
1 照合処理装置
2 上位装置
3 ファイル記憶装置
4 入力装置
11 上位装置IF制御部
12 プログラム制御部
13 メモリ制御部
14 共有メモリ領域
15 共有ヒープ領域
16 プログラムメモリ領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた同一のデータ構造にて構成された照合対象となる指紋データ及び掌紋データを含む指掌紋データを記憶する照合対象記憶手段と、
前記照合対象記憶手段から照合対象となる一対の前記指掌紋データを読み出して照合処理を行う照合処理手段と、
を備えたことを特徴とする照合システム。
【請求項2】
前記指掌紋データは、少なくとも指掌紋の部位を特定する部位情報と指掌紋の特徴値情報とを含む、ことを特徴とする請求項1記載の照合システム。
【請求項3】
前記照合処理手段は、前記部位情報に基づいて相互に対応する一対の前記指掌紋データを前記照合対象記憶手段から読み出し、当該一対の指掌紋データの前記特徴値情報に基づいて照合処理を行う、ことを特徴とする請求項2記載の照合システム。
【請求項4】
前記照合処理手段は、複数対の前記指掌紋データの照合処理を連続あるいは並列に実行する、ことを特徴とする請求項3記載の照合システム。
【請求項5】
前記照合処理手段が複数の照合処理を実行する際に、当該各照合処理のワーク領域として一部のメモリ領域がそれぞれ割り当てられる共有メモリ領域を備えた、ことを特徴とする請求項4記載の照合システム。
【請求項6】
前記照合処理手段による各照合処理を実現する各照合プログラムごとに、予め固定的に割り当てられた同一容量の固定メモリ領域をそれぞれ備えた、ことを特徴とする請求項5記載の照合システム。
【請求項7】
コンピュータにて、指掌紋データの照合を行う照合方法であって、
前記コンピュータが、予め定められた同一のデータ構造にて構成された照合対象となる指紋データ及び掌紋データを含む指掌紋データが記憶された照合対象記憶手段から、照合対象となる一対の前記指掌紋データを読み出して、当該一対の指掌紋データの照合処理を行う、
ことを特徴とする照合方法。
【請求項8】
前記コンピュータが、複数対の前記指掌紋データの照合処理を連続あるいは並列に実行する、ことを特徴とする請求項7記載の照合方法。
【請求項9】
前記コンピュータが、複数の照合処理を実行する際に、共有メモリ領域の一部のメモリ領域を各照合処理のワーク領域としてそれぞれ割り当てる、ことを特徴とする請求項8記載の照合方法。
【請求項10】
前記コンピュータが、前記各照合処理を実現する各照合プログラムごとに、同一容量の固定メモリ領域をそれぞれ予め割り当てておく、ことを特徴とする請求項9記載の照合方法。
【請求項11】
指掌紋データの照合を行うコンピュータに、
予め定められた同一のデータ構造にて構成された照合対象となる指紋データ及び掌紋データを含む指掌紋データが記憶された照合対象記憶手段から、照合対象となる一対の前記指掌紋データを読み出して、当該一対の指掌紋データの照合処理を行う照合処理手段、
を実現させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−242686(P2008−242686A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80536(P2007−80536)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】