照射装置
【課題】 ワークをより均一に照射することのできる照射装置を提供する。
【解決手段】 照射装置100を、xy平面上に配されたワーク200をx軸方向に移動させるためのワーク移動手段110と、xy平面に平行に配された基板121に複数個の光源S1,1〜Sm,nをm行n列(mは2以上の整数、nは1以上の整数)に配してなる照射部120とを備えたものとし、1行1列目に配された光源S1,1の中心Aと2行1列目に配された光源S2,1の中心Bとを結ぶ線分ABは、x軸に対して傾斜するように設定した。
【解決手段】 照射装置100を、xy平面上に配されたワーク200をx軸方向に移動させるためのワーク移動手段110と、xy平面に平行に配された基板121に複数個の光源S1,1〜Sm,nをm行n列(mは2以上の整数、nは1以上の整数)に配してなる照射部120とを備えたものとし、1行1列目に配された光源S1,1の中心Aと2行1列目に配された光源S2,1の中心Bとを結ぶ線分ABは、x軸に対して傾斜するように設定した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個の光源を有する照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル情報を記録するための媒体として、DVDやCD等の光ディスクが広く用いられるようになってきている。これらの光ディスクは、微細な凹凸が形成された樹脂基盤の表面に光反射膜を形成し、該光反射膜の表面に該光反射膜の劣化を防止するための保護層を設けることによって製造するのが一般的となっている。前記保護層は、通常、前記光反射膜の表面に塗布された光硬化性樹脂に紫外線を照射して、該光硬化性樹脂を硬化させることによって形成される。光硬化性樹脂を硬化させるのに用いられる照射装置は、これまでに種々のものが提案されているが、その殆どは、放電管を使用するものであり、光源は、1つであることが多かった。
【0003】
一方、特許文献1には、複数個の発光ダイオードを光源として配置した基板と、該基板の光源側に配されて2種類以上の配光を制御するレンズとを備え、該レンズを可動とすることにより配光を切替え可能としたことを特徴とする照明器具が記載されている([請求項1]及び[図1]参照)。これにより、発光ダイオードから発せられた光を広げたり集光させたりといった可変配光を実現することが可能になり、広い範囲を照射する場合と狭い範囲を高照度で照射する場合とのいずれであっても好適に用いることのできる照明器具を提供することができるとされている([0034]参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−199891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の照明器具は、光源とワークとの間にレンズを配するものであったために、照射光のエネルギー損失が大きく、必ずしもエネルギー効率のよいものとは言えなかった。また、特許文献1の照明器具は、レンズを配した分だけ複雑な構成になっており、照射部のコンパクト化が困難なものであった。照射光のエネルギー効率や照射部のコンパクト化の観点からは、光源とワークとの間にレンズを配さないことが好ましいが、これでは、照射光がワークを局所的に照射してしまい、光硬化性樹脂が不均一に硬化されるおそれがある。照射光の均一性は、光源の配置ピッチを短くすることで高めることができるが、光源の配置や放熱に必要なスペースを考えると、光源の配置ピッチを短くするのにも限界がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ワークをより均一に照射することのできる照射装置を提供するものである。また、照射光のエネルギー損失を少なくして、エネルギー効率を高めることもできる照射装置を提供するものである。さらに、照射部のコンパクト化も容易な照射装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、xy平面上に配されたワークをx軸方向に移動させるためのワーク移動手段と、xy平面に平行に配された基板に複数個の光源をm行n列(mは2以上の整数、nは1以上の整数)に配してなる照射部とを備えた照射装置であって、前記照射部のうち1行1列目に配された光源S1,1の中心Aと2行1列目に配された光源S2,1の中心Bとを結ぶ線分ABがx軸に対して傾斜してなる照射装置を提供することによって解決される。これにより、前記照射部をx軸方向から見たときにおける前記光源のみかけの配置ピッチpyを短くして、前記光源の実際の配置ピッチよりも短いピッチ(配置ピッチpyに一致する)でワークを照射することが可能になる。
【0008】
ここで、「xy平面上に配されたワークをx軸方向に移動させる」とは、ワークと照射部との運動を相対的に表現したものである。すなわち、ワーク移動手段は、位置固定された照射部に対してワークを移動させるものであってもよいし、位置固定されたワークに対して照射部を移動させるものであってもよい。また、ワークと照射部とを異なる速さで同時に移動させるものであってもよい。
【0009】
さらに、「複数個の光源をm行n列に配してなる照射部」とは、必ずしも「m×n個の光源のみを配してなる照射部」を意味せず、「m×n個の光源がm行n列に配された部分を有する照射部」という意味である。例えば、m×n個の光源がm行n列に配された部分の外側に、前記m×n個の光源の配列に含まれない他の光源が配されている照射部であっても、m×n個の光源がm行n列に配された部分を有することには変わらないため、その構成は、本発明の技術的範囲に含まれるものとする。
【0010】
前記光源を配列する行数mは、2以上の整数であれば特に限定されないが、3以上であると好ましく、4以上であるとさらに好ましい。このように、行数mを増やすことによって、前記光源の列方向の配置ピッチpnを短く設定することなく、前記照射部をx軸方向から見たときにおける前記光源のみかけのピッチpyを短く設定することが可能になる。一方、前記光源を配列する列数nは、1以上の整数であれば特に限定されないが、2以上であると好ましく、3以上であるとより好ましく、4以上であるとさらに好ましい。このように、列数mを増やすことによって、前記照射部のx軸方向の長さを短く設定することが可能になり、前記照射部をよりコンパクトにすることができる。
【0011】
ここで、図1に示すように、列数nが2以上の整数である照射部を用いる場合について考えてみる。このような照射部を用いる場合には、図2に示すように、線分CDがワークの移送方向(x軸)に対して平行になる向きに照射部を配すると、ワークを最も狭いピッチで等間隔に照射でき、ワークを最適な条件で照射することが可能になる。ただし、点Cは、1行2列目に配された光源S1,2の中心であり、点Dは、線分ABをm:m-1に外分する点である。このとき、線分ABは、ワークの移送方向(x軸)に対して角度θ1で傾斜している。
【0012】
具体的に、角度θ1を求めてみる。図2に示すように、中心Cから直線ABに下ろした垂線の足を点Eとすると、tanθ1は下記式(2)で表すことができる。
【数2】
続いて、|CE|と|DE|を、前記光源の行方向の配置ピッチpm(|AB|に等しい)と、前記光源の列方向の配置ピッチpn(|AC|に等しい)と、線分ACが線分ABに対してなす角度(∠BACの大きさ)θ2とを用いて表すと、下記式(3),(4)が得られる。
【数3】
【数4】
上記式(3),(4)の|CE|と|DE|を上記式(2)に代入すると下記式(5)が得られる。
【数5】
上記式(5)をθ1について解くと下記式(1)が得られる。
【数6】
すなわち、列数nが2以上の整数である場合には、線分ABのx軸に対してなす角度θ1を、上記式(1)を満たすように設定すれば、ワークを最適な条件で照射することが可能になる。
【0013】
このとき、角度θ2は、0°より大きく180°より小さい値であれば特に限定されないが、90°であると好ましい。これにより、各光源を碁盤の目状に配することが可能になり、前記基板に対する前記光源の実装が容易になる。また、前記光源の幾つかに不良や故障等の不具合が見つかった場合に、取り外しヘッドや取り付けヘッド等の光源着脱手段を、不具合の見つかった位置に機械的かつ正確に位置決めさせて、前記光源の交換を容易に行うこともできるようになる。
【0014】
線分ABをx軸に対して傾斜させて配する角度設定手段が設けられてなることも好ましい。これにより、前記光源の位置決めを容易に行うことが可能になる。角度設定手段は、線分ABをx軸に対して傾斜させて配するためのものであれば特に限定されないが、線分ABのx軸に対してなす角度θ1を上記式(1)を満たす値に設定するものであるとより好ましい。また、角度設定手段を設ける場所は、前記基板と装置本体とを相互に位置決めできる場所であれば特に限定されず、前記基板であってもよいし、照射装置本体に設けてもよい。角度設定手段としては、貫通孔や、係合凹部や、係合凸部が例示される。
【0015】
前記光源の照射面から前記ワークの被照射面までの照射距離Lは、光源の配置や、光源を構成する発光体の種類や、ワークの種類等によっても異なり、特に限定されるものではないが、前記照射部をx軸方向からみたときにおける前記光源のみかけの配置ピッチpyに対する照射距離Lの比(L/py)が、0.5〜10になるように設定するとよい。比(L/py)が0.5未満であると、照射光の均一性が低下するおそれがあるし、比(L/py)が10を超えると、照射光の照射範囲が著しく狭くなるおそれがあるためである。ここで、みかけの配置ピッチpyは、図2における|AF|に相当し、下記式(6)で表すことができる。
【数7】
ただし、点Fは、中心Bから、線分CDに垂直で点Aを通る直線に下ろした垂線の足である。
【0016】
前記光源は、発光ダイオードや電球等の各種の光源を用いることができるが、なかでも、主として紫外線を照射する発光ダイオードで構成されたものであることが好ましい。これにより、前記光源を長寿命で低消費電力なものとすることが可能になる。ここで、「主として紫外線を照射する発光ダイオード」とは、紫外線の波長領域10〜400nmにピークが現れる波長スペクトル特性を有する発光ダイオードをいう。照射部を形成する各光源は、1個の発光体(発光素子等)のみによって構成したものであってもよいし、複数個の発光体を集約して構成したものであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によって、ワークをより均一に照射することのできる照射装置を提供することが可能になる。また、照射光のエネルギー損失を少なくして、エネルギー効率を高めることができる照射装置を提供することも可能になる。さらに、照射部のコンパクト化が容易な照射装置を提供することも可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の照射装置の好適な実施態様を、図面を用いてより具体的に説明する。図3は、照射装置100とワーク200をz軸正側からみた状態を示した図である。図4は、図3の照射装置100における光源S1,1〜S5,1及びS1,2の位置関係を示した図である。図5は、照射装置100とワーク200をy軸負側からみた状態を示した図である。図6は、照射装置100とワーク200をx軸正側からみた状態を示した図である。図7は、他の実施態様の照射部をz軸負側からみた状態を示した図である。本実施態様の照射装置100では、ワーク200がDVDとなっている。
【0019】
[照射装置] 照射装置100は、図3〜図6に示すように、xy平面上に配されたワーク200をx軸方向に移動させるためのワーク移動手段110と、xy平面に平行に配された基板121に複数個の光源を配してなる照射部120とを備えたものとなっている。xy平面(ワーク移送面)は、非水平に配してもよいが、本実施態様の照射装置100においては、水平に配している。また、照射部120は、z軸負側(ワーク200の鉛直下側)に配してもよいが、本実施態様の照射装置100においては、z軸正側(ワーク200の鉛直上側)に配している。照射装置100は、複数枚の基板121をx軸方向に沿って配したものであってもよい。
【0020】
[ワーク移動手段] ワーク移動手段110は、xy平面上に配されたワークをx軸方向に移動させるものであれば特に限定されず、作業アーム等を駆動する機構のものであってもよいが、本実施態様の照射装置100においては、図3と図5と図6に示すように、ベルト式のコンベアを採用している。ワーク200は、コンベアのベルト上面に載置されて移送される。コンベアのベルトには、ワーク200を位置決めするための凹凸や突起等を設けてもよい。本実施態様の照射装置100において、ワーク移動手段110は、図示省略の固定手段によって位置固定された照射部120に対してワーク200を矢印a(図3と図5を参照)の向きに移送するものとなっている。
【0021】
[照射部] 照射部120は、図3に示すように、基板121と、基板121に配列された光源S1,1〜S5,20と、基板121及び光源S1,1〜S5,20を収めるケース123とを備えたものとなっている。各光源S1,1〜S5,20は、複数個の発光体を組み合わせて構成したものであってもよいが、本実施態様の照射装置100においては、それぞれ1個の発光体で構成しており、該発光体として、日亜化学工業株式会社製の発光ダイオード(型式NCCU033)を採用している。この発光ダイオードは、波長365nmに強度ピークを有する照射光を発するものであり、主として紫外線を照射するものとなっている。
【0022】
光源S1,1〜Sm,nを配列する行数mや列数nは、光源S1,1〜Sm,nの配置ピッチや、光源S1,1〜Sm,nに用いる発光体の種類や寸法、又はワーク200の種類や寸法等によって適宜調整され、特に限定されるものではないが、本実施態様の照射装置100においては、図3に示すように、行数mが5となっており、列数nが20となっている。また、線分ACの線分ABに対してなす角度θ2も、特に限定されるものではないが、本実施態様の照射装置100においては、図4に示すように、90°に設定されている。さらに、配置ピッチpmと配置ピッチpnも、各光源S1,1〜Sm,nの寸法等によって適宜調整され、特に限定されるものではないが、本実施態様の照射装置100においては、いずれも7.8mmに設定し、配置ピッチpmと配置ピッチpnとを一致させている。このため、各光源S1,1〜Sm,nの中心は、正方格子の各格子点に一致するようになっている。
【0023】
光源S1,1の中心Aと光源S2,1の中心Bとを結ぶ線分ABは、図3と図4に示すように、x軸に対して傾斜するように配している。本実施態様の照射装置100において、線分ABがx軸に対してなす角度θ1(図4参照)は、約11.3°に設定されている。この角度θ1は、上記式(1)の行数mに5を、配置ピッチpmに7.8mmを、配置ピッチpnに7.8mmを、角度θ2に90°を代入して求めたものである。このとき、照射部120をx軸方向からみたときにおける光源S1,1〜S5,20のみかけの配置ピッチpyは、上記式(6)より、約1.5mmとなる。角度θ1が0°のときの配置ピッチpyは7.8mmであるが、これと比較すると大幅に短くなっており、ワーク200をより狭いピッチで照射できるようになっている。
【0024】
基板121は、板状のものであればその形状は特に限定されず、丸形や三角形等であってもよいが、本実施態様の照射装置100においては、図3に示すように、長方形のものを使用している。この基板121の隅部には、図3に示すように、ボルト孔122を設けている。このボルト孔122には、ケース123の内側に固定された図示省略のボルトが挿嵌されている。ボルト孔122は、その配置を工夫することで、線分ABをx軸に対して傾斜させて配するための角度設定手段として利用することもできる。図7にその一例を示す。図7の照射部120では、各ボルト孔122の中心を結んでできる線分が、基板121の各辺に対して傾斜(上記式(1)で求められる角度θ1で傾斜)するようになっている。角度設定手段(ボルト孔122)を設ける場所は、基板121を固定する向きや、ケース123を固定する向きや、ケース123の構造等によって適宜調整される。
【0025】
[シミュレーション結果] 図8〜図10は、m,nが5で、pm,pnが7.8mmで、θ1が11.3°で、θ2が90°で、各光源に前記発光ダイオード(型式NCCU033)を1個ずつ用いたときの本発明の照射装置において、被照射面上をワークと同じ速さ(100mm/s)でx軸方向に移動する点Pが照射部の照射領域に入ってから出るまでの間に受ける照射光の積算強度Q1〜Q3の分布(点Pのy座標による分布)を、シミュレーションにより求めた結果を示したグラフである。積算強度Q1〜Q3は、それぞれ、照射距離Lが1mm(比(L/py)が約0.65),3mm(比(L/py)が約2),10mm(比(L/py)が約6.5)のときのものである。
【0026】
一方、図11〜図13は、前記シミュレーションの比較例として、m,nが5で、pm,pnが7.8mmで、θ1が0°で、θ2が90°で、各光源に前記発光ダイオード(型式NCCU033)を1個ずつ用いたときの照射装置において、被照射面上をワークと同じ速さ(100mm/s)でx軸方向に移動する点Pが照射部の照射領域に入ってから出るまでの間に受ける照射光の積算強度Q4〜Q6の分布(点Pのy座標による分布)を、シミュレーションにより求めた結果を示したグラフである。積算強度Q4〜Q6は、それぞれ、照射距離Lが1mm,3mm,10mmのときのものである。
【0027】
θ1が0°で照射距離Lが1mmであるときの積算強度Q4(図11)をみると、谷から山までの高さが約3.5×106mW・s/m2の峻険なピークが、約7.8mmの広いピッチで現れていることが分かる。このように、照射光の積算強度に峻険なピークが広いピッチで現れると、被照射面が縞状に照射されてしまい、ワークの品質が著しく低下するおそれがある。これに対し、θ1が11.3°で照射距離が同じ1mmであるときの積算強度Q1(図8)をみると、谷から山までの高さが約1.0×105mW・s/m2の比較的緩やかなピークが、約1.5mmの比較的狭いピッチで現れているに留まっており、被照射面における照射光の積算強度の均一性が大幅に向上していることが分かる。
【0028】
同様に、照射距離Lが3mmであるときの積算強度Q2(図9)と、照射距離Lが同じ3mmであるときの積算強度Q5(図12)とを見比べると、θ1が0°のときの積算強度Q5には、峻険なピークが残っているのに対して、θ1が11.3°のときの積算強度Q2には、平滑化された緩やかなピークが残っているに留まっている。また、照射距離Lが10mmであるときの積算強度Q3(図10)と、照射距離Lが同じ10mmであるときの積算強度Q6(図13)とを見比べると、θ1が0°のときの積算強度Q6には、緩やかなピークが残っているのに対して、θ1が11.3°のときの積算強度Q3は、略完全に平滑化されている。
【0029】
以上のシミュレーション結果から、1行1列目に配された光源S1,1の中心Aと2行1列目に配された光源S2,1の中心Bとを結ぶ線分ABをx軸に対して傾斜させることによって、被照射面における照射光の積算強度の均一性を向上できることが分かった。また、照射部をx軸方向からみたときにおける光源のみかけの配置ピッチpyに対する照射距離Lの比(L/py)が小さくなるにつれて積算強度のピークが峻険になり、比(L/py)が大きくなるにつれて照射領域が狭まることが分かった。比(L/py)は、1以上であるとより好ましく、1.5以上であるとさらに好ましい。2以上であると最適である。また、比(L/py)は、7以下であるとより好ましく、6以下であるとさらに好ましい。5以下であると最適である。
【0030】
[用途] 本発明の照射装置は、塗料の乾燥装置等、ワークを均一に照射することが要求される各種の装置に備えることができる。なかでも光硬化性樹脂を硬化させる樹脂硬化装置に備えるものとして好適である。特に、高い加工精度が要求される樹脂硬化装置に好適に用いることができる。このような装置としては、DVDやCDやMOディスク等の光ディスクにおける保護層や接着層等に用いられる光硬化性樹脂を硬化させるための光ディスク製造装置が例示される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の照射装置に用いられる照射部をz軸負側からみた状態を示した図である。
【図2】図1の照射部における光源S1,1,S2,1,Sm,1,S1,2の位置関係を示した図である。
【図3】本発明の照射装置と該照射装置によって加工されるワークとをz軸正側からみた状態を示した図である。
【図4】図3の照射装置における光源S1,1〜S5,1及びS1,2の位置関係を示した図である。
【図5】本発明の照射装置と該照射装置によって加工されるワークとをy軸負側からみた状態を示した図である。
【図6】本発明の照射装置と該照射装置によって加工されるワークとをx軸正側からみた状態を示した図である。
【図7】他の実施態様の照射部をz軸負側からみた状態を示した図である。
【図8】照射距離Lが1mmに設定された本発明の照射装置における照射光の積算強度Q1の分布を示したグラフである。
【図9】照射距離Lが3mmに設定された本発明の照射装置における照射光の積算強度Q2の分布を示したグラフである。
【図10】照射距離Lが10mmに設定された本発明の照射装置における照射光の積算強度Q3の分布を示したグラフである。
【図11】照射距離Lが1mmに設定された照射装置(比較例)における照射光の積算強度Q4の分布を示したグラフである。
【図12】照射距離Lが3mmに設定された照射装置(比較例)における照射光の積算強度Q5の分布を示したグラフである。
【図13】照射距離Lが10mmに設定された照射装置(比較例)における照射光の積算強度Q6の分布を示したグラフである。
【符号の説明】
【0032】
100 照射装置
110 ワーク移動手段
120 照射部
121 基板
122 ボルト孔
123 ケース
200 ワーク
A 1行1列目に配された光源S1,1の中心
B 2行1列目に配された光源S2,1の中心
C 1行2列目に配された光源S1,2の中心
D 線分ABをm:m-1に外分する点
E 点Cから直線ABに下ろした垂線の足
F 中心Bから、線分CDに垂直で点Aを通る直線に下ろした垂線の足
L 照射距離
Sm,n m行n列目に配された光源
pm 光源の行方向の配置ピッチ
pn 光源の列方向の配置ピッチ
py 照射部をx軸方向からみたときにおける光源のみかけの配置ピッチ
θ1 線分ABがx軸に対してなす角度
θ2 線分ACが線分ABに対してなす角度
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個の光源を有する照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル情報を記録するための媒体として、DVDやCD等の光ディスクが広く用いられるようになってきている。これらの光ディスクは、微細な凹凸が形成された樹脂基盤の表面に光反射膜を形成し、該光反射膜の表面に該光反射膜の劣化を防止するための保護層を設けることによって製造するのが一般的となっている。前記保護層は、通常、前記光反射膜の表面に塗布された光硬化性樹脂に紫外線を照射して、該光硬化性樹脂を硬化させることによって形成される。光硬化性樹脂を硬化させるのに用いられる照射装置は、これまでに種々のものが提案されているが、その殆どは、放電管を使用するものであり、光源は、1つであることが多かった。
【0003】
一方、特許文献1には、複数個の発光ダイオードを光源として配置した基板と、該基板の光源側に配されて2種類以上の配光を制御するレンズとを備え、該レンズを可動とすることにより配光を切替え可能としたことを特徴とする照明器具が記載されている([請求項1]及び[図1]参照)。これにより、発光ダイオードから発せられた光を広げたり集光させたりといった可変配光を実現することが可能になり、広い範囲を照射する場合と狭い範囲を高照度で照射する場合とのいずれであっても好適に用いることのできる照明器具を提供することができるとされている([0034]参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−199891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の照明器具は、光源とワークとの間にレンズを配するものであったために、照射光のエネルギー損失が大きく、必ずしもエネルギー効率のよいものとは言えなかった。また、特許文献1の照明器具は、レンズを配した分だけ複雑な構成になっており、照射部のコンパクト化が困難なものであった。照射光のエネルギー効率や照射部のコンパクト化の観点からは、光源とワークとの間にレンズを配さないことが好ましいが、これでは、照射光がワークを局所的に照射してしまい、光硬化性樹脂が不均一に硬化されるおそれがある。照射光の均一性は、光源の配置ピッチを短くすることで高めることができるが、光源の配置や放熱に必要なスペースを考えると、光源の配置ピッチを短くするのにも限界がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ワークをより均一に照射することのできる照射装置を提供するものである。また、照射光のエネルギー損失を少なくして、エネルギー効率を高めることもできる照射装置を提供するものである。さらに、照射部のコンパクト化も容易な照射装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、xy平面上に配されたワークをx軸方向に移動させるためのワーク移動手段と、xy平面に平行に配された基板に複数個の光源をm行n列(mは2以上の整数、nは1以上の整数)に配してなる照射部とを備えた照射装置であって、前記照射部のうち1行1列目に配された光源S1,1の中心Aと2行1列目に配された光源S2,1の中心Bとを結ぶ線分ABがx軸に対して傾斜してなる照射装置を提供することによって解決される。これにより、前記照射部をx軸方向から見たときにおける前記光源のみかけの配置ピッチpyを短くして、前記光源の実際の配置ピッチよりも短いピッチ(配置ピッチpyに一致する)でワークを照射することが可能になる。
【0008】
ここで、「xy平面上に配されたワークをx軸方向に移動させる」とは、ワークと照射部との運動を相対的に表現したものである。すなわち、ワーク移動手段は、位置固定された照射部に対してワークを移動させるものであってもよいし、位置固定されたワークに対して照射部を移動させるものであってもよい。また、ワークと照射部とを異なる速さで同時に移動させるものであってもよい。
【0009】
さらに、「複数個の光源をm行n列に配してなる照射部」とは、必ずしも「m×n個の光源のみを配してなる照射部」を意味せず、「m×n個の光源がm行n列に配された部分を有する照射部」という意味である。例えば、m×n個の光源がm行n列に配された部分の外側に、前記m×n個の光源の配列に含まれない他の光源が配されている照射部であっても、m×n個の光源がm行n列に配された部分を有することには変わらないため、その構成は、本発明の技術的範囲に含まれるものとする。
【0010】
前記光源を配列する行数mは、2以上の整数であれば特に限定されないが、3以上であると好ましく、4以上であるとさらに好ましい。このように、行数mを増やすことによって、前記光源の列方向の配置ピッチpnを短く設定することなく、前記照射部をx軸方向から見たときにおける前記光源のみかけのピッチpyを短く設定することが可能になる。一方、前記光源を配列する列数nは、1以上の整数であれば特に限定されないが、2以上であると好ましく、3以上であるとより好ましく、4以上であるとさらに好ましい。このように、列数mを増やすことによって、前記照射部のx軸方向の長さを短く設定することが可能になり、前記照射部をよりコンパクトにすることができる。
【0011】
ここで、図1に示すように、列数nが2以上の整数である照射部を用いる場合について考えてみる。このような照射部を用いる場合には、図2に示すように、線分CDがワークの移送方向(x軸)に対して平行になる向きに照射部を配すると、ワークを最も狭いピッチで等間隔に照射でき、ワークを最適な条件で照射することが可能になる。ただし、点Cは、1行2列目に配された光源S1,2の中心であり、点Dは、線分ABをm:m-1に外分する点である。このとき、線分ABは、ワークの移送方向(x軸)に対して角度θ1で傾斜している。
【0012】
具体的に、角度θ1を求めてみる。図2に示すように、中心Cから直線ABに下ろした垂線の足を点Eとすると、tanθ1は下記式(2)で表すことができる。
【数2】
続いて、|CE|と|DE|を、前記光源の行方向の配置ピッチpm(|AB|に等しい)と、前記光源の列方向の配置ピッチpn(|AC|に等しい)と、線分ACが線分ABに対してなす角度(∠BACの大きさ)θ2とを用いて表すと、下記式(3),(4)が得られる。
【数3】
【数4】
上記式(3),(4)の|CE|と|DE|を上記式(2)に代入すると下記式(5)が得られる。
【数5】
上記式(5)をθ1について解くと下記式(1)が得られる。
【数6】
すなわち、列数nが2以上の整数である場合には、線分ABのx軸に対してなす角度θ1を、上記式(1)を満たすように設定すれば、ワークを最適な条件で照射することが可能になる。
【0013】
このとき、角度θ2は、0°より大きく180°より小さい値であれば特に限定されないが、90°であると好ましい。これにより、各光源を碁盤の目状に配することが可能になり、前記基板に対する前記光源の実装が容易になる。また、前記光源の幾つかに不良や故障等の不具合が見つかった場合に、取り外しヘッドや取り付けヘッド等の光源着脱手段を、不具合の見つかった位置に機械的かつ正確に位置決めさせて、前記光源の交換を容易に行うこともできるようになる。
【0014】
線分ABをx軸に対して傾斜させて配する角度設定手段が設けられてなることも好ましい。これにより、前記光源の位置決めを容易に行うことが可能になる。角度設定手段は、線分ABをx軸に対して傾斜させて配するためのものであれば特に限定されないが、線分ABのx軸に対してなす角度θ1を上記式(1)を満たす値に設定するものであるとより好ましい。また、角度設定手段を設ける場所は、前記基板と装置本体とを相互に位置決めできる場所であれば特に限定されず、前記基板であってもよいし、照射装置本体に設けてもよい。角度設定手段としては、貫通孔や、係合凹部や、係合凸部が例示される。
【0015】
前記光源の照射面から前記ワークの被照射面までの照射距離Lは、光源の配置や、光源を構成する発光体の種類や、ワークの種類等によっても異なり、特に限定されるものではないが、前記照射部をx軸方向からみたときにおける前記光源のみかけの配置ピッチpyに対する照射距離Lの比(L/py)が、0.5〜10になるように設定するとよい。比(L/py)が0.5未満であると、照射光の均一性が低下するおそれがあるし、比(L/py)が10を超えると、照射光の照射範囲が著しく狭くなるおそれがあるためである。ここで、みかけの配置ピッチpyは、図2における|AF|に相当し、下記式(6)で表すことができる。
【数7】
ただし、点Fは、中心Bから、線分CDに垂直で点Aを通る直線に下ろした垂線の足である。
【0016】
前記光源は、発光ダイオードや電球等の各種の光源を用いることができるが、なかでも、主として紫外線を照射する発光ダイオードで構成されたものであることが好ましい。これにより、前記光源を長寿命で低消費電力なものとすることが可能になる。ここで、「主として紫外線を照射する発光ダイオード」とは、紫外線の波長領域10〜400nmにピークが現れる波長スペクトル特性を有する発光ダイオードをいう。照射部を形成する各光源は、1個の発光体(発光素子等)のみによって構成したものであってもよいし、複数個の発光体を集約して構成したものであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によって、ワークをより均一に照射することのできる照射装置を提供することが可能になる。また、照射光のエネルギー損失を少なくして、エネルギー効率を高めることができる照射装置を提供することも可能になる。さらに、照射部のコンパクト化が容易な照射装置を提供することも可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の照射装置の好適な実施態様を、図面を用いてより具体的に説明する。図3は、照射装置100とワーク200をz軸正側からみた状態を示した図である。図4は、図3の照射装置100における光源S1,1〜S5,1及びS1,2の位置関係を示した図である。図5は、照射装置100とワーク200をy軸負側からみた状態を示した図である。図6は、照射装置100とワーク200をx軸正側からみた状態を示した図である。図7は、他の実施態様の照射部をz軸負側からみた状態を示した図である。本実施態様の照射装置100では、ワーク200がDVDとなっている。
【0019】
[照射装置] 照射装置100は、図3〜図6に示すように、xy平面上に配されたワーク200をx軸方向に移動させるためのワーク移動手段110と、xy平面に平行に配された基板121に複数個の光源を配してなる照射部120とを備えたものとなっている。xy平面(ワーク移送面)は、非水平に配してもよいが、本実施態様の照射装置100においては、水平に配している。また、照射部120は、z軸負側(ワーク200の鉛直下側)に配してもよいが、本実施態様の照射装置100においては、z軸正側(ワーク200の鉛直上側)に配している。照射装置100は、複数枚の基板121をx軸方向に沿って配したものであってもよい。
【0020】
[ワーク移動手段] ワーク移動手段110は、xy平面上に配されたワークをx軸方向に移動させるものであれば特に限定されず、作業アーム等を駆動する機構のものであってもよいが、本実施態様の照射装置100においては、図3と図5と図6に示すように、ベルト式のコンベアを採用している。ワーク200は、コンベアのベルト上面に載置されて移送される。コンベアのベルトには、ワーク200を位置決めするための凹凸や突起等を設けてもよい。本実施態様の照射装置100において、ワーク移動手段110は、図示省略の固定手段によって位置固定された照射部120に対してワーク200を矢印a(図3と図5を参照)の向きに移送するものとなっている。
【0021】
[照射部] 照射部120は、図3に示すように、基板121と、基板121に配列された光源S1,1〜S5,20と、基板121及び光源S1,1〜S5,20を収めるケース123とを備えたものとなっている。各光源S1,1〜S5,20は、複数個の発光体を組み合わせて構成したものであってもよいが、本実施態様の照射装置100においては、それぞれ1個の発光体で構成しており、該発光体として、日亜化学工業株式会社製の発光ダイオード(型式NCCU033)を採用している。この発光ダイオードは、波長365nmに強度ピークを有する照射光を発するものであり、主として紫外線を照射するものとなっている。
【0022】
光源S1,1〜Sm,nを配列する行数mや列数nは、光源S1,1〜Sm,nの配置ピッチや、光源S1,1〜Sm,nに用いる発光体の種類や寸法、又はワーク200の種類や寸法等によって適宜調整され、特に限定されるものではないが、本実施態様の照射装置100においては、図3に示すように、行数mが5となっており、列数nが20となっている。また、線分ACの線分ABに対してなす角度θ2も、特に限定されるものではないが、本実施態様の照射装置100においては、図4に示すように、90°に設定されている。さらに、配置ピッチpmと配置ピッチpnも、各光源S1,1〜Sm,nの寸法等によって適宜調整され、特に限定されるものではないが、本実施態様の照射装置100においては、いずれも7.8mmに設定し、配置ピッチpmと配置ピッチpnとを一致させている。このため、各光源S1,1〜Sm,nの中心は、正方格子の各格子点に一致するようになっている。
【0023】
光源S1,1の中心Aと光源S2,1の中心Bとを結ぶ線分ABは、図3と図4に示すように、x軸に対して傾斜するように配している。本実施態様の照射装置100において、線分ABがx軸に対してなす角度θ1(図4参照)は、約11.3°に設定されている。この角度θ1は、上記式(1)の行数mに5を、配置ピッチpmに7.8mmを、配置ピッチpnに7.8mmを、角度θ2に90°を代入して求めたものである。このとき、照射部120をx軸方向からみたときにおける光源S1,1〜S5,20のみかけの配置ピッチpyは、上記式(6)より、約1.5mmとなる。角度θ1が0°のときの配置ピッチpyは7.8mmであるが、これと比較すると大幅に短くなっており、ワーク200をより狭いピッチで照射できるようになっている。
【0024】
基板121は、板状のものであればその形状は特に限定されず、丸形や三角形等であってもよいが、本実施態様の照射装置100においては、図3に示すように、長方形のものを使用している。この基板121の隅部には、図3に示すように、ボルト孔122を設けている。このボルト孔122には、ケース123の内側に固定された図示省略のボルトが挿嵌されている。ボルト孔122は、その配置を工夫することで、線分ABをx軸に対して傾斜させて配するための角度設定手段として利用することもできる。図7にその一例を示す。図7の照射部120では、各ボルト孔122の中心を結んでできる線分が、基板121の各辺に対して傾斜(上記式(1)で求められる角度θ1で傾斜)するようになっている。角度設定手段(ボルト孔122)を設ける場所は、基板121を固定する向きや、ケース123を固定する向きや、ケース123の構造等によって適宜調整される。
【0025】
[シミュレーション結果] 図8〜図10は、m,nが5で、pm,pnが7.8mmで、θ1が11.3°で、θ2が90°で、各光源に前記発光ダイオード(型式NCCU033)を1個ずつ用いたときの本発明の照射装置において、被照射面上をワークと同じ速さ(100mm/s)でx軸方向に移動する点Pが照射部の照射領域に入ってから出るまでの間に受ける照射光の積算強度Q1〜Q3の分布(点Pのy座標による分布)を、シミュレーションにより求めた結果を示したグラフである。積算強度Q1〜Q3は、それぞれ、照射距離Lが1mm(比(L/py)が約0.65),3mm(比(L/py)が約2),10mm(比(L/py)が約6.5)のときのものである。
【0026】
一方、図11〜図13は、前記シミュレーションの比較例として、m,nが5で、pm,pnが7.8mmで、θ1が0°で、θ2が90°で、各光源に前記発光ダイオード(型式NCCU033)を1個ずつ用いたときの照射装置において、被照射面上をワークと同じ速さ(100mm/s)でx軸方向に移動する点Pが照射部の照射領域に入ってから出るまでの間に受ける照射光の積算強度Q4〜Q6の分布(点Pのy座標による分布)を、シミュレーションにより求めた結果を示したグラフである。積算強度Q4〜Q6は、それぞれ、照射距離Lが1mm,3mm,10mmのときのものである。
【0027】
θ1が0°で照射距離Lが1mmであるときの積算強度Q4(図11)をみると、谷から山までの高さが約3.5×106mW・s/m2の峻険なピークが、約7.8mmの広いピッチで現れていることが分かる。このように、照射光の積算強度に峻険なピークが広いピッチで現れると、被照射面が縞状に照射されてしまい、ワークの品質が著しく低下するおそれがある。これに対し、θ1が11.3°で照射距離が同じ1mmであるときの積算強度Q1(図8)をみると、谷から山までの高さが約1.0×105mW・s/m2の比較的緩やかなピークが、約1.5mmの比較的狭いピッチで現れているに留まっており、被照射面における照射光の積算強度の均一性が大幅に向上していることが分かる。
【0028】
同様に、照射距離Lが3mmであるときの積算強度Q2(図9)と、照射距離Lが同じ3mmであるときの積算強度Q5(図12)とを見比べると、θ1が0°のときの積算強度Q5には、峻険なピークが残っているのに対して、θ1が11.3°のときの積算強度Q2には、平滑化された緩やかなピークが残っているに留まっている。また、照射距離Lが10mmであるときの積算強度Q3(図10)と、照射距離Lが同じ10mmであるときの積算強度Q6(図13)とを見比べると、θ1が0°のときの積算強度Q6には、緩やかなピークが残っているのに対して、θ1が11.3°のときの積算強度Q3は、略完全に平滑化されている。
【0029】
以上のシミュレーション結果から、1行1列目に配された光源S1,1の中心Aと2行1列目に配された光源S2,1の中心Bとを結ぶ線分ABをx軸に対して傾斜させることによって、被照射面における照射光の積算強度の均一性を向上できることが分かった。また、照射部をx軸方向からみたときにおける光源のみかけの配置ピッチpyに対する照射距離Lの比(L/py)が小さくなるにつれて積算強度のピークが峻険になり、比(L/py)が大きくなるにつれて照射領域が狭まることが分かった。比(L/py)は、1以上であるとより好ましく、1.5以上であるとさらに好ましい。2以上であると最適である。また、比(L/py)は、7以下であるとより好ましく、6以下であるとさらに好ましい。5以下であると最適である。
【0030】
[用途] 本発明の照射装置は、塗料の乾燥装置等、ワークを均一に照射することが要求される各種の装置に備えることができる。なかでも光硬化性樹脂を硬化させる樹脂硬化装置に備えるものとして好適である。特に、高い加工精度が要求される樹脂硬化装置に好適に用いることができる。このような装置としては、DVDやCDやMOディスク等の光ディスクにおける保護層や接着層等に用いられる光硬化性樹脂を硬化させるための光ディスク製造装置が例示される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の照射装置に用いられる照射部をz軸負側からみた状態を示した図である。
【図2】図1の照射部における光源S1,1,S2,1,Sm,1,S1,2の位置関係を示した図である。
【図3】本発明の照射装置と該照射装置によって加工されるワークとをz軸正側からみた状態を示した図である。
【図4】図3の照射装置における光源S1,1〜S5,1及びS1,2の位置関係を示した図である。
【図5】本発明の照射装置と該照射装置によって加工されるワークとをy軸負側からみた状態を示した図である。
【図6】本発明の照射装置と該照射装置によって加工されるワークとをx軸正側からみた状態を示した図である。
【図7】他の実施態様の照射部をz軸負側からみた状態を示した図である。
【図8】照射距離Lが1mmに設定された本発明の照射装置における照射光の積算強度Q1の分布を示したグラフである。
【図9】照射距離Lが3mmに設定された本発明の照射装置における照射光の積算強度Q2の分布を示したグラフである。
【図10】照射距離Lが10mmに設定された本発明の照射装置における照射光の積算強度Q3の分布を示したグラフである。
【図11】照射距離Lが1mmに設定された照射装置(比較例)における照射光の積算強度Q4の分布を示したグラフである。
【図12】照射距離Lが3mmに設定された照射装置(比較例)における照射光の積算強度Q5の分布を示したグラフである。
【図13】照射距離Lが10mmに設定された照射装置(比較例)における照射光の積算強度Q6の分布を示したグラフである。
【符号の説明】
【0032】
100 照射装置
110 ワーク移動手段
120 照射部
121 基板
122 ボルト孔
123 ケース
200 ワーク
A 1行1列目に配された光源S1,1の中心
B 2行1列目に配された光源S2,1の中心
C 1行2列目に配された光源S1,2の中心
D 線分ABをm:m-1に外分する点
E 点Cから直線ABに下ろした垂線の足
F 中心Bから、線分CDに垂直で点Aを通る直線に下ろした垂線の足
L 照射距離
Sm,n m行n列目に配された光源
pm 光源の行方向の配置ピッチ
pn 光源の列方向の配置ピッチ
py 照射部をx軸方向からみたときにおける光源のみかけの配置ピッチ
θ1 線分ABがx軸に対してなす角度
θ2 線分ACが線分ABに対してなす角度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
xy平面上に配されたワークをx軸方向に移動させるためのワーク移動手段と、xy平面に平行に配された基板に複数個の光源をm行n列(mは2以上の整数、nは1以上の整数)に配してなる照射部とを備えた照射装置であって、前記照射部のうち1行1列目に配された光源S1,1の中心Aと2行1列目に配された光源S2,1の中心Bとを結ぶ線分ABがx軸に対して傾斜してなる照射装置。
【請求項2】
nが2以上の整数であり、線分ABのx軸に対してなす角度θ1が、下記式(1)を満たす請求項1記載の照射装置。
【数1】
ただし、pmは、前記光源の行方向の配置ピッチであり、pnは、前記光源の列方向の配置ピッチである。また、θ2は、中心Aと前記光源のうち1行2列目に配された光源S1,2の中心Cとを結ぶ線分ACが線分ABに対してなす角度である。
【請求項3】
中心Aと前記光源のうち1行2列目に配された光源S1,2の中心Cとを結ぶ線分ACが線分ABに対してなす角度θ2が、90°である請求項1又は2記載の照射装置。
【請求項4】
線分ABをx軸に対して傾斜させて配する角度設定手段が設けられてなる請求項1〜3いずれか記載の照射装置。
【請求項5】
前記照射部をx軸方向からみたときにおける前記光源のみかけの配置ピッチpyに対する照射距離Lの比(L/py)が、0.5〜10である請求項1〜4いずれか記載の照射装置。
【請求項6】
前記光源が、主として紫外線を照射する発光ダイオードで構成されたものである請求項1〜5いずれか記載の照射装置。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか記載の照射装置を備えてなる樹脂硬化装置。
【請求項8】
請求項7記載の樹脂硬化装置を備えてなる光ディスク製造装置。
【請求項1】
xy平面上に配されたワークをx軸方向に移動させるためのワーク移動手段と、xy平面に平行に配された基板に複数個の光源をm行n列(mは2以上の整数、nは1以上の整数)に配してなる照射部とを備えた照射装置であって、前記照射部のうち1行1列目に配された光源S1,1の中心Aと2行1列目に配された光源S2,1の中心Bとを結ぶ線分ABがx軸に対して傾斜してなる照射装置。
【請求項2】
nが2以上の整数であり、線分ABのx軸に対してなす角度θ1が、下記式(1)を満たす請求項1記載の照射装置。
【数1】
ただし、pmは、前記光源の行方向の配置ピッチであり、pnは、前記光源の列方向の配置ピッチである。また、θ2は、中心Aと前記光源のうち1行2列目に配された光源S1,2の中心Cとを結ぶ線分ACが線分ABに対してなす角度である。
【請求項3】
中心Aと前記光源のうち1行2列目に配された光源S1,2の中心Cとを結ぶ線分ACが線分ABに対してなす角度θ2が、90°である請求項1又は2記載の照射装置。
【請求項4】
線分ABをx軸に対して傾斜させて配する角度設定手段が設けられてなる請求項1〜3いずれか記載の照射装置。
【請求項5】
前記照射部をx軸方向からみたときにおける前記光源のみかけの配置ピッチpyに対する照射距離Lの比(L/py)が、0.5〜10である請求項1〜4いずれか記載の照射装置。
【請求項6】
前記光源が、主として紫外線を照射する発光ダイオードで構成されたものである請求項1〜5いずれか記載の照射装置。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか記載の照射装置を備えてなる樹脂硬化装置。
【請求項8】
請求項7記載の樹脂硬化装置を備えてなる光ディスク製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−136859(P2006−136859A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−330704(P2004−330704)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(300085037)株式会社モモ・アライアンス (34)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(300085037)株式会社モモ・アライアンス (34)
【Fターム(参考)】
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