説明

照明システム

【課題】LED照明を、定電流駆動でも操作性に優れ、しかも安定して使用することがで
きて、定電流駆動における大電流駆動が容易であって効率がよい等の利点を生かせること
ができる照明システムを提供する。
【解決手段】LED照明43を備えた照明システムである。被照明装置に付設されるLE
D照明43の最大電流値を設定する設定手段55と、設定手段にて設定された最大電流値
の電流をLED照明43に印加するための定電流供給手段50とを備える、判断手段52
にて、実際に付設されているLED照明43が、予め設定されたLED照明43の判定値
に基づいて、その被照明装置に対応したものかを判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個のLED照明を定電流供給手段(定電流電源)からの電流でもって点灯させる照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を製造する場合、被実装部材としてのリードフレームに半導体チップ(ダイ)を実装するダイボンディングが行なわれる。このダイボンディングには、チップを吸着するコレットを備えたダイボンダが使用される。
【0003】
このようなダイボンダは、図9に示すように、供給部2の半導体チップ1を吸着するコレット3を有するボンディングアーム(図示省略)と、供給部2の半導体チップ1を観察する確認用カメラ(図示省略)と、ボンディング位置でリードフレーム4のアイランド部5を観察する確認用カメラ(図示省略)とを備える。
【0004】
供給部2は半導体ウエハを備え、半導体ウエハが多数の半導体チップ1に分割されている。また、コレット3を保持しているボンディングアームは搬送手段を介して、ピックアップ位置とボンディング位置との間の移動が可能となっている。
【0005】
また、このコレット3は、その下端面に開口した吸着孔を介してチップ1が真空吸引され、このコレット3の下端面にチップ1が吸着する。なお、この真空吸引(真空引き)が解除されれば、コレット3からチップ1が外れる。
【0006】
次にこのダイボンダを使用したダイボンディング方法を説明する。まず、供給部2の上方に配置される確認用カメラにてピックアップすべきチップ1を観察して、コレット3をこのピックアップすべきチップ1の上方に位置させた後、矢印Aのようにコレット3を下降させてこのチップ1をピックアップする。その後、矢印Bのようにコレット3を上昇させる。
【0007】
次に、ボンディング位置の上方に配置された確認用カメラにて、ボンディングすべきリードフレーム4のアイランド部5を観察して、コレット3を矢印C方向へ移動させて、このアイランド部5の上方に位置させた後、コレット3を矢印Dのように下降移動させて、このアイランド部5にチップ1を供給する。また、アイランド部5にチップを供給した後は、コレット3を矢印Eのように上昇させた後、矢印Fのように、ピップアップ位置の上方の待機位置に戻す。
【0008】
すなわち、コレット3を、順次、矢印A、B、C、D、E、Fのように移動させることによって、ピックアップ確認用カメラの観察に基づいて位置決めされたチップ1をコレット3でピックアップし、このチップ1をアイランド部5に実装することになる。
【0009】
このようなダイボンダにおいては、画像認識のために照明システムが用いられる(特許文献1)。また、照明システムには、近年では、通常の電球や蛍光灯に比べて、低消費電力、長寿命、発熱が少ないと優れた特性をもったLED照明が用いられる。LED照明とは発光ダイオード(LED)を使用した照明器具である。
【0010】
ところで、ダイボンダにおいては、前記したように、チップをピックアップ位置でピックアップするとともに、このピックアップしたチップをボンディング位置でボンディングするものであるので、ピックアップ位置のチップ位置確認及びボンディング位置でのチップ位置確認等を必要とする。このため、ピックアップ位置とボンディング位置とで、照明する照度等を相違させることがある。このような場合、各位置において、複数個のLED照明を用いたり、各LED照明において種類を相違させたりすることになる。
【0011】
また、LED照明を点灯する場合に電源に定電流電源を使用する場合がある。LED照明を点灯する場合、照明の最大電流値を把握できないと、照度のコントロールができない。このため、このように、複数のLED照明を点灯する場合には、図10に示すシステムや図11に示すシステムが用いられていた。
【0012】
図10に示すシステムは、種類の異なるLEDを用いる照明11、照明12、照明13を備える。この場合、予め、異なる各照明11、12,13の最大電流値を電源(定電流電源)10側において設定しておいて使用するものである。
【0013】
また、図11に示すシステムは、専用に設定された照明15、16、17を備えるものである。この場合、最大電流値をある値に定めて数種類のバリエーションの照明を設計する方法と、特許文献2に記載されているようにフィードバック制御する方法等がある。なお、従来には、LEDの異常を検出するLED異常検出回路等がある(特許文献3)。この場合、LEDのオープンやショート等の故障を検出するためものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2001−313303号公報
【特許文献2】特許第4187565号公報
【特許文献3】特開2010−287611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
図10に示す方法では、設定を間違えれば、LEDの最大電流値を越えた電流値の電流を印加して、このLEDを損傷させる場合や、LEDに印加する電流値が小さすぎて、十分な照度を得られなかったりする。また、設定する場合、手動にてスイッチ(デジタルスイッチ)で行うものであり、操作性に劣ることになる。しかも、設定が間違っていてもその間違いを検知することができない。また、図11 に示す方法では、専用に設定された照明15、16、17に限るものであるので、使用できる照明として限られるものであり、高コスト化を招くことになる。なお、特許文献3では、LEDのオープンやショート等の故障を検出するためのものであって、LED自体の故障を検知するものであって、接続されているLED照明が間違っているかの判断を行えるものではない。
【0016】
本発明は、上記課題に鑑みて、LED照明を、定電流駆動でも操作性に優れ、しかも接続されているLED照明を間違えたまま使用することなく安定して使用することができて、定電流駆動における大電流駆動が容易であって効率がよい等の利点を生かせることができる照明システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の照明システムは、LED照明を備えた照明システムであって、被照明装置に付設されるLED照明の最大電流値を設定する設定手段と、設定手段にて設定された最大電流値の電流をLED照明に印加するための定電流供給手段と、実際に付設されているLED照明が、予め設定されたLED照明の判定値に基づいて、その被照明装置に対応したものかを判断する判断手段とを備えたものである。
【0018】
本発明の照明システムによれば、設定手段にて、被照明装置に付設されるLED照明の最大電流値を自動的に設定することができるので、最大電流値の設定を手動で行う必要がなくなる。また、判断手段によって、実際に付設されているLED照明が、被照明装置(機種)に対応したものかを判断することができるので、LED照明に対してLED照明の最大電流値を越えた電流値をLED照明に印加させることがない。しかも、最大電流値よりも大きく下回った電流値でもって照明することも防止できる。
【0019】
前記判定値は判定電流値と判定最小電圧値と判定最大電圧値とであり、定電流供給手段のLED照明に印加する電流を判定電流値よりも小さい微小電流値から順次増加していき、前記判断手段は、判定電流値に達したときの電圧値が判定最小電圧値と判定最大電圧値との範囲内にあれば、付設されているLED照明がその被照明装置(機種)に対応したものとすることができる。
【0020】
判定値を設定して、LED照明に印加する電流値を、微小電流値から順次増加していき、そのときの電圧値の変化をセンシングすることができる。従って、そのLED照明に対する過度の電流値が印加されず、しかも、判定電流値に達したときの電圧値が判定最小電圧値と判定最大電圧値との範囲内にあれば、付設されているLED照明がその被照明装置(機種)に対応したものとすることができる。また、判定電流値に達する前に電圧が判定最大電圧値を越えれば、付設されているLED照明がその被照明装置(機種)に対応しないものといえる。
【0021】
判断手段にて、付設されているLED照明がその被照明装置(機種)に対応したものと判断された場合に、そのLED照明に定電流供給手段から印加される電流の最大値がその最大電流とする照明を行うのが好ましい。これによって、安定した照度を得ることができるとともに、そのLED照明の最大電流値を越えた電流値が印加されることがない。
【0022】
判断手段にて、付設されているLED照明がその被照明装置(機種)に対応したものでないと判断した場合に、警告を発する警告発生手段を備えたものであってもよい。ここで、警告発生手段として、警告用ランプを点灯させたり、警告音を発生させたりすることができる。
【0023】
LED照明は、LEDと制限抵抗、又はLEDのみからなり、このLED照明に流れる電流値と、この電流値での電圧値とで、この制限抵抗の抵抗値を求める演算手段を備え、この抵抗値を前記判断手段の判断要素に付加するのが好ましい。
【0024】
画像認識用照明に用いることができ、LED照明が付設される装置がダイボンダとすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の照明システムでは、最大電流値の設定を手動で行う必要がなく、作業者の手間を省くことができて、作業者の操作性の向上を図ることができる。また、LED照明に対してLED照明の最大電流値を越えた電流値を印加させることがなく、また最大電流値よりも大きく下回った電流値でもって照明することも防止できる。このため、接続されているLED照明を間違えたまま使用することなく被照明装置に付設されるLED照明は安定した照明を行うことができ、この被照明装置による作業(動作)が安定するとともに、LED照明の損傷を有効に防止できて、安心した使用が可能となる。しかも、本照明システムでは、大電流駆動が容易で効率がよい定電流駆動の利点を生かすことができる。
【0026】
判定値を設定して、LED照明に印加する電流値を、微小電流値から順次増加していき、そのときの電圧値の変化をセンシングすることができようにすれば、付設されているLED照明がその被照明装置(機種)に対応したものであるかの判断を高精度に行うことができ、しかも、LED照明に対する過度の電流値が印加されず、LED照明の損傷を有効に防止できる。
【0027】
LED照明に定電流供給手段から印加される電流の最大値がその最大電流とする照明を行うようにしたものでは、安定した照度を得ることができるとともに、そのLED照明の最大電流値を越えた電流値が印加されることがない。
【0028】
警告発生手段を備えたものであれば、警告発生手段の警告発生によって、オペレータが付設されているLED照明がその被照明装置(機種)に対応しないことを確認でき、接続間違いのままでの被照明装置での作業を有効に防止できる。
【0029】
LED照明の制限抵抗の抵抗値を前記判断手段の判断要素に付加するものであれば、接続間違いの検知率が向上する。すなわち、判断手段として、電流値と電圧値に加え、LED照明の種類に応じて相違する制限抵抗の抵抗値を判断要素に加えることによって、より精度の高い判断が可能となる。
【0030】
本照明システムを画像認識用照明に用いれば、画像認識のための最適な照度でもって被画像認識物に対して照明することができ、高精度の画像認識が可能となる。また、本照明システムをダイボンダに用いれば、被照明装置に応じたLED照明を接続でき、ダイボンディング工程を安定して行うことができ、高精度に半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態を示す照明システムの簡略全体ブロック図である。
【図2】ダイボンダの斜視図である。
【図3】前記図1に示す照明システムの使用方法を示すフロチャート図である。
【図4】LED照明の回路図である。
【図5】LED照明のLEDの電流・電圧特性を示すグラフ図である。
【図6】LED照明の制限抵抗の電流・電圧特性を示すグラフ図である。
【図7】LED照明のLEDと抵抗の合成電圧を示すグラフ図である。
【図8】LED照明の制限抵抗を判断要素に用いた場合のフローチャート図である。
【図9】ダイボンディング工程を示す簡略図である。
【図10】従来の照明システムの簡略ブロック図である。
【図11】他の従来の照明システムの簡略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下本発明の実施の形態を図1〜図8に基づいて説明する。
【0033】
図1に本発明にかかる照明システムの簡略全体ブロック図を示し、この照明システムは、例えば、図2等に示す被照明装置であるダイボンダの画像確認用に用いられる。ダイボンダは、リードフレーム24に半導体チップ(ダイ)21を実装するダイボンディングを行うものである。
【0034】
このようなダイボンダは、供給部22の半導体チップ(ダイ)21を吸着するコレット23を有するボンディングアーム30と、供給部22の半導体チップ21を観察する確認用カメラ26と、ボンディング位置でリードフレーム24のアイランド部25を観察する確認用カメラ32とを備える。
【0035】
供給部22は、ウエハ支持装置27に載置支持された半導体ウエハ28を備えるものである。半導体ウエハ28は多数の半導体チップ21に分割されている。また、コレット23はコレットホルダ29に連結され、このコレット23とコレットホルダ29等でボンディングアーム30が構成される。そして、このボンディングアーム30は搬送手段31を介して、ピックアップ位置とボンディング位置との間の移動が可能となっている。搬送手段31は、ボンディングアーム30をX、Y、θ及びZ方向に駆動させることができる。
【0036】
また、このコレット23は、その下端面に開口した吸着孔を介してチップ21が真空吸引され、このコレット23の下端面にチップ21が吸着する。なお、この真空吸引(真空引き)が解除されれば、コレット23からチップ21が外れる。
【0037】
次に、このダイボンダを使用したダイボンディング方法を説明する。まず、供給部22の上方に配置される確認用カメラ26にてピックアップすべきチップ21を観察して、コレット23をこのピックアップすべきチップ21の上方に位置させた後、このコレット23を下降させてこのチップ21をピックアップする。
【0038】
また、ボンディング位置の上方に配置された確認用カメラ32にて、ボンディングすべきリードフレーム24のアイランド部25を観察して、矢印A1に示すように、このアイランド部25上にコレット23を移動させ、その後コレット23を下降させてアイランド部25にチップ21を供給する。
【0039】
このため、ピックアップ位置での確認用カメラ26での観察の際、及びボンディング位置での確認用カメラ32での観察の際において、観察部位を照明する照明装置が必要となる。この照明に本発明の照明システムを用いる。
【0040】
照明システムは、図1に示すように、上位コントローラ41と、電源ユニット42と、電源ユニット42に接続される複数個のLED照明43と、警告発生手段44とを備える。
【0041】
電源ユニット42は、後述するデータを備えたテーブルが入力されるCPU(中央処理装置)45と、複数の定電流駆動回路46と、複数の電圧測定回路47と、複数のADC(アナログ-デジタル変換回路)48とを備える。この場合、一つのLED照明43に対して、電流を印加するために定電流供給回路(定電流供給手段)50が形成される。各定電流供給回路50は、CPU45と、定電流駆動回路46と、電圧測定回路47と、ADC48等で構成される。なお、上位コントローラ41と、電源ユニット42のCPU45とは通信ポート51を介して接続されている。電源ユニット42のCPU45が最大電流値等のデータを備えた前記テーブルを設定する設定手段55を構成する。
【0042】
定電流供給回路50は、CPU45からの指示で定電流駆動回路46が所定の電流値をLED照明43に印加する。そして、この電流の印加による電圧を電圧測定回路47で検知(測定)して、測定した電圧をADC48を介してCPU45に入力する。CPU45では入力されているテーブルのデータを比較して、電流値が所定値に達するまで等において、印加する電流値を順次増加していくものである。また、このCPU45は、後述するように、LED照明43がそれに対応する装置(ダイボンダ等)に接続されているか否かを判断する判断手段52も備える。
【0043】
ところで、上位コントローラ41と、CPU45とで、この照明システムを後述するフローチャート図に示すように制御する制御手段40を構成することになる。すなわち、制御手段40は、CPU(Central Processing Unit)を中心としてROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等がバスを介して相互に接続されたマイクロコンピューターである。また、この制御手段40は記憶手段としての記憶装置を備える。記憶装置は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)やDVD(Digital Versatile Disk)ドライブ、CD−R(Compact Disc-Recordable)ドライブ、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)等からなる。なお、ROMには、CPUが実行するプログラムやデータが格納されている。
【0044】
警告発生手段44としては、判断手段52にて判断された結果が否である場合に、警告を発生させるためのものである。警告としては、警告音を発生させるものであっても、警告ランプを点灯させるようなものであってもよい。また、警告音の発生と、警告ランプの点灯とを行うものであってもよい。
【0045】
前記テーブルのデータとしては、例えば、次の表1に示すものである。この場合、LED照明43を1ch、2ch、3chの3種類とした。そして、各LED照明43に、判定電流値、判定最小電圧値、判定最大電圧値を設定した。また、各LED照明43には最大電流値がある。
【0046】
【表1】

次に前記のように構成された照明システムの使用方法を図3に示すフローチャート図等に基づいて説明する。まず、複数種の相違している装置(この場合、ダイボンダ)にLED照明43をそれぞれ接続する。そして、本照明システムの主電源を投入する。このように電源が投入されれば、上位コントローラ41からダイボンダの機種を表す設定番号を電源ユニット42側、つまりCPU45が受信する。その機種で採用されているLED照明43の組み合わせに合わせて、最大電流値を各チャンネルにおいて設定する。すなわち、図3のステップS1のように、本照明システムをセットする。
【0047】
次に、ステップS2へ移行して、LED照明43に微小電流値の電流を印加する。その後は、ステップS3へ移行して、順次電流値を判定電流値に達するまで増加させる。この判定電流値に達するまでに、判定最大電圧値に達する場合がある。このため、ステップS4に示すように、判定最大電圧値を越えたか否かを判定する。なお、電流値の増加は連続状に増加させても、ステップ状に増加させてもよい。
【0048】
ステップS4で判定最大電圧値を越えた場合(判定電流値に達する前に判定最大電圧値を越えた場合)、ステップS5のように不合格と判定する。すなわち、各装置にNo,1〜No,3のチャンネルが付され、各チャンネルには、前記表1に示すように、判定電流値、判定最小電圧値、判定最大電圧値、及び最大電流値が設定されている。このため、例えば、チャンネル1のLED照明43が不合格と判定されるのは、電流値が1500mAに達する前に、10.0Vを越えた場合である。チャンネル2のLED照明43が不合格と判定されるのは、電流値が400mAに達する前に、12.5Vを越えた場合である。チャンネル3のLED照明43が不合格と判定されるのは、電流値が350mAに達する前に、4.0Vを越えた場合である。
【0049】
ステップS5で不合格と判定されれば、ステップS6へ移行して警告を発することになる。このように警告が発生されれば、作業者は、警告が発生された装置(ダイボンダ)にセットされているLED照明がこのダイボンダに対応したものではないと認識することができる。これによって、このような対応しないLED照明43をセットしたままダイボンディング作業を行うのを防止できる。
【0050】
また、ステップS4で最大判定電圧値を越えていない場合、ステップS7へ移行して、判定電流値になったかを判定する。ステップS4で判定電流値になっていなかったら、ステップS3に戻る。すなわち、判定電流値になるまで電流値を増加させる。そして、判定電流値になれば、ステップS8に移行して、その際の電圧値が判定電圧値が否かを判定する。すなわち、表1の判定最小電圧値と判定最大電圧値との間の範囲に入っているかを判定し、この範囲に入っていれば、合格とする。この範囲に入っていなければ、ステップS5に移行して、不合格と判定する。
【0051】
この実施形態の場合、チャンネル1では、判定電流値が1500mAであり、電圧値が、8.0Vから10.0Vの範囲であれば合格である。チャンネル2では、判定電流値が400mAであり、電圧値が、10.0Vから12.5Vの範囲であれば合格である。チャンネル2では、判定電流値が350mAであり、電圧値が、2.5Vから4.0Vの範囲であれば合格である。
【0052】
このように合格と判定されれば、被照明装置(ダイボンダ)にセットされている各LED照明がこのダイボンダに対応したものである。このため、このLED照明をセットしたまま、このダイボンダにてダイボンディング工程を行うことができる。
【0053】
本発明の照明システムでは、設定手段55にて、被照明装置(ダイボンダ)に付設されるLED照明の最大電流値を自動的に設定することができるので、最大電流値の設定を手動で行う必要がなくなる。このため、作業者の手間を省くことができて、作業者の操作性の向上を図ることができる。
【0054】
また、判断手段52によって、実際に付設されているLED照明43が、機種に対応したものかを判断することができるので、複数のLED照明43に対してLED照明43の最大電流値を越えた電流値を各LED照明43に印加させることがなく、また最大電流値よりも大きく下回った電流値でもって照明することも防止できる。このため、各機種に付設される各LED照明43は安定した照明を行うことができ、各装置による作業(動作)が安定するとともに、LED照明43の損傷を有効に防止できて、安心した使用が可能となる。しかも、本照明システムでは、大電流駆動が容易で効率がよい定電流駆動の利点を生かすことができる。
【0055】
判定値を設定して、LED照明43に印加する電流値を、微小電流値から順次増加していき、そのときの電圧値の変化をセンシングすることができる。従って、そのLED照明43に対する過度の電流値が印加されず、しかも、判定電流値に達したときの電圧値が判定最小電圧値と判定最大電圧値との範囲内にあれば、付設されているLED照明43がその機種に対応したものとすることができる。また、判定電流値に達する前に電圧が判定最大電圧値を越えれば、付設されているLED照明43がその機種に対応しないものといえる。このため、判定値を設定して、LED照明43に印加する電流値を、微小電流値から順次増加していき、そのときの電圧値の変化をセンシングすることができようにすれば、付設されているLED照明43がその機種に対応したものであるかの判断を高精度に行うことができ、しかも、LED照明43に対する過度の電流値が印加されず、LED照明43の損傷を有効に防止できる。
【0056】
判断手段52にて、付設されているLED照明43がその機種に対応したものと判断された場合に、そのLED照明43に定電流供給手段50から印加される電流の最大値がその最大電流とする照明を行うのが好ましい。これによって、安定した照度を得ることができるとともに、そのLED照明の最大電流値を越えた電流値が印加されることがない。
【0057】
警告発生手段44を備えているので、警告発生手段44の警告発生によって、オペレータが、付設されているLED照明がその機種に対応しないことを確認でき、接続間違いのままでの各装置での作業を有効に防止できる。
【0058】
この実施形態のように、電源ユニット42に前記表1に示すようなテーブルが入力されるものであれば、CPU45の処理速度を速めることができる。このため、各装置(ダイボンダ)におけるLED照明43のセット速度を速めることができ、作業性の向上を図ることができる。
【0059】
ところで、LED照明43は、一般には図4に示すように、LED60とこれに直列に接続される制限抵抗61とからなる。この図4の回路に流れる電流IをΔIだけ増加させて、電圧VがΔVだけ増加したとした場合、制限抵抗61の抵抗値rは、r≒ΔV/ΔIで求めることができる。
【0060】
図5はLED照明43のLED60の電流・電圧特性の一例を示している。この場合の電流I(mA)と電圧Vf(V)は次の表2の値である。また、図6はLED照明43の制限抵抗61の電流・電圧特性の一例を示している。この場合の電流I(mA)と電圧Vr(V)は次の表3の値である。
【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

このため、図5に示す電流・電圧特性と、図6に示す電流・電圧特性との合成電圧は図7に示す特性となる。すなわち、次の表4に示すように、電圧V(V)は、表2の値と表3の値との合成値となる。
【0063】
【表4】

図7に示すように、LED60と制限抵抗61との関係のグラフが求まれば、このグラフの傾きが制限抵抗61の抵抗値とほぼ一致することになる。そこで、前記判断手段52においては、前記したように、電圧値Vを監視しながら、電流値Iを微小な値から順次増加させて、電流値が判定電流値に達したときの電圧値Vにより、LED照明43の接続か違いを検知することに加え、この制限抵抗61の抵抗値を前記判断手段52の判断基準に付加することができる。なお、LED照明43によっては、制限抵抗61を含まないものもあり、このような場合には、図7に示すグラフの傾きはほぼ0となる。
【0064】
この場合、制限抵抗61の抵抗値を前記判断手段52の判断基準に付加ためには、LED照明43に流れる電流値と、この電流値での電圧値とで、この制限抵抗61の抵抗値を求める演算手段62を、図1の仮想線で示すように、設ける必要がある。
【0065】
すなわち、制限抵抗61は、LED照明43の種類に応じて抵抗値が相違する。このため、電流値Iと電圧値Vのみの判断であれば、間違ったLED照明43を接続しているにも係らず、間違っていないLED照明43の電流値Iと電圧値Vとの関係を示す場合がある。そこで、判断要素にこの制限抵抗61の抵抗値を加えることによって、接続されているLED照明43が間違っていないかの判断精度の向上を図ることができる。
【0066】
制限抵抗61の抵抗値を判断要素に加えた判断方法を図8を用いて説明する。この場合、図3のステップS8からスタートすることになる。ステップS11で、制限抵抗61の抵抗値を求める。すなわち、電流IをΔIだけ増加させて、電圧VがΔVだけ増加したとした場合において、制限抵抗61の抵抗値rは、r≒ΔV/ΔIで求めることができる。なお、制限抵抗61を含まないLED照明43の場合、ΔV≒0となる。このため、r≒0として求められることになる。
【0067】
この抵抗値rが、接続されるべきLED照明43の制限抵抗であるか否かの判断がなされる(ステップS12)。そして、接続されるべきLED照明43の制限抵抗であれば、ステップS13へ移行して合格(接続間違いしていない)と判断して終了する。また、ステップS12で接続されるべきLED照明43の制限抵抗でないと判断すれば、ステップS14へ移行して不合格(接続間違いしている)と判断して、ステップS15へ移行して警告を発して終了する。
【0068】
LED照明43の制限抵抗61の抵抗値を判断手段52の判断要素に付加するものであれば、接続間違いの検知率が向上する。すなわち、判断手段52として、電流値と電圧値に加え、LED照明43の種類に応じて相違する制限抵抗61の抵抗値を判断要素に加えることによって、より精度の高い判断が可能となる。
【0069】
この場合、LED照明43において、電流Iを変化させても、LED60の順方向電圧Vfの変化は無視可能な程度に小さいという、一般的なLEDに共通した特徴を利用したことになる。このため、市場に流通している市販のLED照明に対して、改造等を付加することなく、制限抵抗61の抵抗値rを測ることができる。しかも、この抵抗値rはLED照明により異なるため、判断手段の判断精度の向上を図ることが可能となる。このため、装置として複雑化やコスト高を招くことがない。
【0070】
本照明システムを画像認識用照明に用いれば、画像認識のための最適な照度でもって被画像認識物に対して照明することができ、高精度の画像認識が可能となる。また、本照明システムをダイボンダに用いれば、被照明装置に応じたLED照明を接続でき、ダイボンディング工程を安定して行うこができ、高精度に半導体装置を製造することができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、LED照明43の数としては、前記実施形態では表1に示すように3個であったが、3個に限るものではなく、少なくとも1個あればよい。また、図5に示すLED照明43のLED60の電流・電圧特性や図6に示すLED照明43の制限抵抗61の電流・電圧特性等は、図例のものに限るものではない。このため、図7に示すLED60と制限抵抗61の合成電圧も図例のものに限らない。
【0072】
警告発生手段44としては、作業者が合格か不合格かを認識できればよいので、表示画面等に合否を表示するものであってもよい。この照明システムを利用する被照明装置としては、ダイボンダに限るものではなく、照明を必要とする各種の装置に使用でき、特に、種類が相違する複数のLED照明を必要とする装置に最適となる。
【符号の説明】
【0073】
43 LED照明
44 警告発生手段
50 定電流供給回路(定電流供給手段)
52 判断手段
55 設定手段
60 LED
61 制限抵抗
62 演算手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED照明を備えた照明システムであって、
被照明装置に付設される前記LED照明の最大電流値を設定する設定手段と、
設定手段にて設定された最大電流値の電流をLED照明に印加するための定電流供給手段と、
実際に付設されているLED照明が、予め設定されたLED照明の判定値に基づいて、その被照明装置に対応したものかを判断する判断手段とを備えたことを特徴とする照明システム。
【請求項2】
前記判定値は判定電流値と判定最小電圧値と判定最大電圧値とであり、定電流供給手段のLED照明に印加する電流を判定電流値よりも小さい微小電流値から順次増加していき、前記判断手段は、判定電流値に達したときの電圧値が判定最小電圧値と判定最大電圧値との範囲内にあれば、付設されているLED照明がその被照明装置機種に対応したものとすることを特徴とする請求項1に記載の照明システム。
【請求項3】
判断手段にて、付設されているLED照明がその被照明装置に対応したものと判断された場合に、そのLED照明に定電流供給手段から印加される電流の最大値がその最大電流値とする照明を行うことを特徴とする請求項2に記載の照明システム。
【請求項4】
判断手段にて、付設されているLED照明がその被照明装置に対応したものでないと判断した場合に、警告を発する警告発生手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載の照明システム。
【請求項5】
LED照明は、LEDと制限抵抗、又はLEDのみからなり、このLED照明に流れる電流値と、この電流値での電圧値とで、この制限抵抗の抵抗値を求める演算手段を備え、この抵抗値を前記判断手段の判断要素に付加したことを特徴とする請求項1〜請求項4に記載の照明システム。
【請求項6】
画像認識用照明に用いることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載する照明システム。
【請求項7】
LED照明が付設される装置がダイボンダであることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載する照明システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−51197(P2013−51197A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−159494(P2012−159494)
【出願日】平成24年7月18日(2012.7.18)
【出願人】(000110859)キヤノンマシナリー株式会社 (179)
【Fターム(参考)】